説明

色温度成分分析装置

【課題】等色関数に近似した分光感度を持つ測色手段によって色度図座標を介さずに、最近接の黒体放射色温度に基づく色温度及び黒体放射軌跡からの乖離量を検出可能な色温度成分分析装置を提供する。
【解決手段】光を測定して色温度情報を出力する色温度成分分析装置を、等色関数と近似した少なくとも3色の分光感度を有し光量に応じた測光信号を出力する測色手段と、測色手段が出力する測光信号を用いてプランク黒体放射式に基づいた黒体放射エネルギ2色比色温度値を色の組み合わせを異ならせて複数求める2色比色温度出力手段と、2色比色温度出力手段が異なった色の組み合わせに基づいてそれぞれ算出した複数の黒体放射エネルギ2色比色温度値の平均値である平均黒体放射色温度値を色温度情報として出力する色温度情報出力手段と、2色比色温度出力手段が求めた黒体放射エネルギ2色比色温度値と平均黒体放射色温度値との差分である黒体放射分布からの乖離量を出力する乖離量情報出力手段とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光源等の色を測定し、色温度及び黒体放射分布からの乖離量などの色補正情報等を出力する色温度成分分析装置に関し、特には、装置の複雑化や演算負荷の増大を防止しつつ高精度に色温度及び黒体放射分布からの乖離量を測定可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば写真やムービー等の撮影に用いられる撮影用光源には、自然光(太陽光)、タングステン光(白熱電球)、フラッシュ光、蛍光灯、水銀灯、さらにはこれらのミックス光などがあり、これらの光源の性質の違いは、画像、映像の色の違いとして表れる。
このため、照明された被写体が適切な色バランスで記録されるためには、撮影時に光源の種類に応じてフィルタを用いたり、撮影時色温度設定を変更する等の色補正をするか、あるいは光源自体を調節してその色温度、乖離量等を適切に設定する必要がある。
【0003】
色温度成分分析装置は、光源からの光を測定してこのようなカメラや光源の設定、調節に有用な色温度情報や乖離量を出力する計測機器である。
従来このような色温度成分分析装置として、3つの受光部にRGB各色のフィルタを設けて分光感度を異ならせ、各受光部の出力に基づいて光源の色温度を測定する色温度計が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような色温度等の測定方法に関する従来技術として、例えば、非特許文献1には、光源の分布温度及び色温度、相関色温度の測定方法が記載されている。
これによると、相関色温度は、光源色の三刺激値XYZを測定し、これによってCIE1960色度図上の色度座標u,vを求め、この値と色度図上の黒体放射軌跡との関係から決定し、特に試料光源の色度座標u,vが黒体放射軌跡上にあるときを色温度というものとされている。
また、黒体放射軌跡からずれた場合には、最も近い色温度を採用して、黒体放射軌跡からの座標上の乖離量とともに一組で表記することが相関色温度として定義されている。
また、同文献に記載された異なった公知技術では、プランクの黒体放射分布における分布内の異なる2波長のエネルギ比の対数値が、黒体放射温度の逆数と相関することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、色温度算出方法に関する従来技術として、照明条件の黒体軌跡からのずれが大きい場合であっても高精度な色温度の算出を行うことを目的として、x−y色度図上の黒体軌跡および黒体軌跡よりずれた1以上の仮想的軌跡を利用して、第1、第2の色温度をそれぞれ求め、第1、第2の色温度差が最小である一対の色温度を加算平均して色温度を算出する色温度算出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−223643号公報
【特許文献2】特許第3538963号
【0007】
【非特許文献1】日本工業規格JIS Z8725-1999「光源の分布温度及び色温度・相関色温度の測定方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
黒体放射分布とは異なる光源の色温度及び黒体放射分布からの乖離量を精度良く得るためには、高度に等色関数と一致した分光感度を有するセンサ又は分光型センサによって得られた三刺激値XYZからxy色度座標を介して精度良く換算し読み取る複雑な処理が必要となる。
上述した非特許文献1に記載された従来技術においては、三刺激値XYZを如何に精度よく測定できるかが重要となる。すなわち、等色関数の分光感度にセンサの特性をどれだけ近似させられるかによって精度が左右される。
しかし、等色関数に近似したセンサを精度よく作るためには、波長毎にセンサが必要な分光方式や、複数のセンサ出力に重み付けをして合成する合成感度分光方式が必須となり、装置が大型となりコストも高くなってしまう。また、設計上では等色関数に近似したセンサを作れたとしても、部品のばらつきや環境による特性変化に対して、現物合わせの補正値を用いても等色関数との近似性を維持し、精度を確保することは困難である。
また、特許文献2に記載された技術は、xy色度図上の座標値を扱う必要があることから、色温度等を算出する際の演算負荷が大きくなるか、あるいは予め演算結果をテーブル化したものを保持する必要があり、装置が複雑となってしまう。
【0009】
今日、蛍光灯、LED等の多くの光源が、黒体放射分布とは等しくない状況のもとで、多くの色温度測定装置においては、黒体放射分布との乖離量を除いた色温度値だけが表記されている。
また、規格に忠実な色度図座標上での相関色温度値と、座標上の黒体軌跡との距離を、黒体放射からの乖離量として表示する場合であっても、制御単位としては産業上の利用が困難な状況であり、例えば照明光源や電子カメラ等の制御に適用可能な色補正情報を提供することが要望されている。
【0010】
本発明の課題は、等色関数に近似した分光感度を持つ測色手段によって色度図座標を介さずに、最近接の黒体放射色温度に基づく色温度及び黒体放射軌跡からの乖離量を検出可能な色温度成分分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、光を測定して色温度情報を出力する色温度成分分析装置であって、等色関数と近似した少なくとも3色の分光感度を有し光量に応じた測光信号を出力する測色手段と、前記測色手段が出力する測光信号を用いてプランク黒体放射式に基づいた黒体放射エネルギ2色比色温度値を色の組み合わせを異ならせて複数求める2色比色温度出力手段と、前記2色比色温度出力手段が異なった色の組み合わせに基づいてそれぞれ算出した複数の黒体放射エネルギ2色比色温度値の平均値である平均黒体放射色温度値を前記色温度情報として出力する色温度情報出力手段と、前記2色比色温度出力手段が求めた黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差分である黒体放射分布からの乖離量を出力する乖離量情報出力手段とを備えることを特徴とする色温度成分分析装置である。
【0012】
請求項2の発明は、前記2色比色温度出力手段は、青成分及び赤成分に基づいて第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値を出力するとともに、青成分及び緑成分に基づいて第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値を出力し、前記色温度情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値との平均値である平均黒体放射色温度値を、前記色温度情報として出力し、前記乖離量情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差である平均色温度値の黒体放射分布からの赤成分乖離量、及び、前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差である平均色温度値の黒体放射分布からの緑成分乖離量を、前記乖離量情報として出力することを特徴とする請求項1に記載の色温度成分分析装置である。
【0013】
請求項3の発明は、所定の基準色温度を設定する基準色温度設定手段を備え、前記乖離量情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記基準色温度値との差である基準色温度値の黒体放射分布からの赤成分乖離量、及び、前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記基準色温度値との差である基準色温度値の黒体放射分布からの緑成分乖離量を、前記乖離量情報として出力することを特徴とする請求項2に記載の色温度成分分析装置である。
【0014】
請求項4の発明は、前記色温度情報及び前記乖離量情報と、前記乖離量情報に基づいて求められる色補正情報との少なくとも一方を同時に表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の色温度成分分析装置である。
【0015】
請求項5の発明は、前記測色手段の出力に基づいて三刺激値及びxy色度値を出力する機能を備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の色温度成分分析装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、プランクの黒体放射式において、黒体放射温度の逆数値(ミレッド)が2色比の対数との関数となる公知の法則を活用している。
上述した関数は、分光感度が異なる2色比の組み合わせによって導き出される第1の関数と、異なる分光感度の2色比の組み合わせによって導き出される第2の関数となる。
黒体放射分布の内の可視領域を包括する分光感度をもった第1、第2の2組の2色比色温度(ミレッド)の平均値が可視領域における平均黒体放射色温度となる。
光源が黒体放射分布と近似し、または等しい場合には、平均黒体放射色温度と2組の2色比色温度(ミレッド)は限りなく等しくなる。すなわち、平均値は最も近接する黒体放射色温度となる。
【0017】
上述した第1、第2の関数から異なる色温度を得るには、関数のミレッド値の差が関数の2色比の対数の差となり、その差が入力測定信号の補正係数値(乖離量情報)となることがわかる。
光源が黒体放射分布と等しくない場合は、2組の2色比色温度(ミレッド)は等しくなく、平均値との差を第1、第2の関数から求め、それぞれの領域における例えば青領域を基準とした、緑領域及び赤領域での入力信号の補正係数として算出できる。
以上説明したように、本発明によれば、等色関数に近似した分光感度を持つ測色手段によって色度図座標を介さずに、最近接の黒体放射色温度に基づく色温度及び黒体放射軌跡からの乖離量を検出可能な色温度成分分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した色温度成分分析装置の実施形態における外観図である。
【図2】図1の色温度成分分析装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1の色温度成分分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1の色温度成分分析装置の表示部の表示の一例を示す図である。
【図5】図1の色温度成分分析装置の表示部の表示の他の例を示す図である。
【図6】図1の色温度成分分析装置における演算結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した色温度成分分析装置の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の色温度成分分析装置の外観図である。
色温度成分分析装置1は、本体部10及びセンサ収容部50を備えている。
本体部10は、操作部20、表示部30、外部インターフェイス40等を備えている。
【0020】
操作部20は、電源ボタン21、測光ボタン22、基準色温度設定ボタン23、メニューモードボタン24、プリセット切換ボタン25、レンジ切換ボタン26、測光モード切換ボタン27、表示切換ボタン28、ダイアル29等を備えて構成されている。
【0021】
電源ボタン21は、色温度成分分析装置1の電源のオンオフ操作が入力される。
測光ボタン22は、測定開始操作が入力される。
基準色温度設定ボタン23は、あるポイントでの測定値を基準とし、他のポイントを同じ色温度にしたい時、基準としたい測定値を基準値として記憶させる際に操作される。
【0022】
メニューモードボタン24は、測光モード等を選択するメニュー画面を表示する際に操作される。
プリセット切換ボタン25は、予めユーザがプリセットした測光設定を呼び出す際に操作される。プリセットされた測光設定の呼び出しは、プリセット切換ボタン25を押しながらダイアル29を回すことによって行われる。
前述の基準色温度設定ボタン23では、あるポイントの測定値を記憶させるが、基準色温度を数値入力する場合は、このボタンを操作する。
【0023】
レンジ切換ボタン26は、フラッシュ光を測光する場合に、フラッシュ光の光量の大小に応じて測光レンジを切り換える操作が入力される。フラッシュ光の測光レンジは、例えば、H(ハイ)レンジ、L(ロー)レンジの2段階が用意される。ユーザは、測光時に表示部30にアンダー表示又はオーバー表示が出た場合には、レンジ切換ボタン26を押しながらダイアル29を回すことによってレンジの切換を行う。
【0024】
測光モード切換ボタン27は、定常光測定、コードレスフラッシュ光測定、コードインフラッシュ光測定、電波フラッシュ光測定の各測定モード、及び、電波トリガチャンネル設定モードの切換時に操作される。各モードの選択は、測光モード切換ボタン27を押しながらダイアル29を回すことによって行う。
【0025】
表示切換ボタン28は、測光結果を表示する表示モードの選択時に操作される。色温度成分分析装置1は、複数の表示モードを備えている。
表示モードは、以下の5モードからなる。
D1:色補正値%表示 (目標:平均色温度)
D2:色補正値%表示 (目標:ユーザが設定した基準色温度)
D3:色補正値EV表示 (目標:平均色温度)
D4:色補正値EV表示(目標:ユーザが設定した基準色温度)
D5:三刺激値・色度・照度表示
EVとは、エクスポージャー・バリューの略で、写真分野で一般的に用いられている単位である。
表示モードの切換は、表示切換ボタン28を押しながらダイアル29を回すことによって行う。
ダイアル29は、上述した各種操作に用いられる回転式の操作部である。
【0026】
表示部30は、本体部10の前面に設けられた液晶表示装置(LCD)である。
外部インターフェイス40は、例えばコンピュータ等の外部の情報処理装置と接続され通信を行うためのものである。外部インターフェイス40は、例えばUSB端子を備えている。
外部インターフェイス40は、受光部51の4つの測光センサそれぞれの出力値、重み係数、色補正情報等を外部の情報処理装置に転送することが可能となっている。また、色温度成分分析装置1は、外部インターフェイス40を介して外部の情報処理装置から、各種操作を行えるようになっている。
【0027】
センサ収容部50は、本体部10の上部に設けられ、本体部10に対して回転可能に支持されている。
センサ収容部50は、測定対象となる光が入射される受光部51を備えている。
受光部51は、例えば乳白色の半透明樹脂材料を用いて形成されたフラットなカバーの内部に、異なった分光感度を有する4つの図示しない測光センサSnλ(n=1〜4)を備えて構成されている。受光部51は、明るさに応じた各レンジ毎のAD変換値を出力する。
【0028】
図2は、色温度成分分析装置1の内部構成を示すブロック図である。
色温度成分分析装置1は、さらに情報処理部100を有する。情報処理部100は、四色測光値算出部110、三色信号処理部120、ミレッド値算出部140、色補正値算出部160、平均色温度算出部170等を備えて構成されている。
【0029】
四色測光値算出部110は、受光部からのAD変換値を四色信号値化する。
ここで、各信号値は、以下の式1によって表される。

=∫Pλ・Snλ・dλ (n=1〜4) ・・式1
但し、Pλ=光源

【0030】
三色信号処理部120は、四色測光値算出部110からの四色信号値に基づいて、三色値RGBを算出するものである。
三色信号処理部120は、三色値算出部121、分光感度発生部122を備えている。
三色値算出部121は、以下示す式2及び式3のように、四色信号値S(n=1〜4)に所定の分光感度変換係数(aij)によって重み付け処理を行って三色値RGBを算出する。三色値算出部121は、本発明にいう測色手段である。分光感度変換係数(aij)は、この重み付け処理を行う際の重み付け係数である。

【数1】


【数2】



分光感度発生部122は、所定の分光感度変換係数(aij)を三色値算出部121に提供する。本実施形態においては、合成三色分光感度を等色関数に近似させるようにしている。
等色関数とは、W.G.WrightとJ.Guildの等色実験に基づき、CIEで定められた等エネルギスペクトルに対する目の感度であるスペクトル刺激値の感度曲線である。
【0031】
ミレッド値算出部140は、三色値算出部121が算出した三色値RGBの2色比BR、BG(またはRG)の対数変換値を以下の式4、式5のように算出し、2種類のミレッド値BRミレッド(MRDred)、BGミレッド(MRDgreen)を算出する。

【数3】


【数4】



ここで、α、rはともに所定の係数であり、Rfo、Gfo、Bdoは各色の三色値(出力)を示している。また、mred及びmgreenはそれぞれ重み付けの係数である。
【0032】
平均色温度算出部170は、ミレッド値算出部140からのミレッド値から、平均色温度値(擬似相関色温度)である色温度K、乖離量ΔMRDred、及び、乖離量ΔMRDgreenを、以下の式6、式7、式8により算出する。

K=1000000/((MRDred+MRDgreen)/2) ・・・式6
ΔMRDred=MRDred−((MRDred+MRDgreen)/2)・・・式7
ΔMRDgreen=MRDgreen−((MRDred+MRDgreen)/2)・・・式8

【0033】
色補正値算出部160は、ミレッド値算出部140からのミレッド値、及び、平均色温度算出部170からの乖離量から、選択された制御単位、目標色温度に対応した色補正量(乖離量情報)を算出する。
ここで、色補正量として、R成分の補正量、G成分の補正量等が含まれる。
色補正値算出部160は、本発明にいう乖離量情報出力手段である。

例えば、選択された制御単位が%で、目標色温度が平均色温度のときは、
R成分の補正量(ΔR)=−(1−2e((14/1000)・ΔMRDred))・100・・式9
G成分の補正量(ΔG)=−(1−2e((7/1000)・ΔMRDgreen))・100・・式10

選択された制御単位がEVで、目標色温度が平均色温度のときは、
R成分の補正量(ΔREV)−(14/1000)・ΔMRDred・・式11
G成分の補正量(ΔGEV)−(7/1000)・ΔMRDgreen・・式12

選択された制御単位が%で、目標色温度がユーザが設定した基準色温度のときは、
R成分の補正量
(ΔR)=1−2e((14/1000)・((1000000/K)−MRDred))・100・・式13
G成分の補正量
(ΔG)=1−2e((7/1000)・((1000000/K)−MRDgreen))・100・・式14
但し、K=ユーザが設定した基準色温度(ケルビン)

選択された制御単位がEVで、目標色温度がユーザが設定した基準色温度のときは、
R成分の補正量
(ΔREV)=(14/1000)・((1000000/K)−MRDred)・・式15
G成分の補正量
(ΔGEV)=(7/1000)・((1000000/K)−MRDgreen)・・式16
但し、K=ユーザが設定した基準色温度(ケルビン)

なお、式9から式16の(14/1000)と(7/1000)は一例であり、他の値も採り得る。
【0034】
次に、色温度成分分析装置1の動作について説明する。
図3は、色温度成分分析装置1の動作の一例を示すフローチャートである。以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0035】
<ステップS01:測光ボタン押下>
ユーザによる測光ボタン22の長押し操作に応じて、色温度成分分析装置1は以下説明する測光シーケンスを開始する。ステップS02に進む。
<ステップS02:測光処理>
情報処理部100の四色測光値算出部110は、受光部51の各センサから出力値のカウントS〜Sを取得する。ステップS03に進む。
<ステップS03:ベースカウント補正>
四色測光値110は、各センサの出力特性を揃えるため、カウント値S1〜S4からそれぞれ所定のベース値S1BASE〜S4BASEを減算し、三色信号処理部120に提供する。ステップS04に進む。
【0036】
<ステップS04:マトリックス演算>
三色信号処理部120は、上述した式2、式3に示すマトリックス演算を行い、各センサの出力値に重み付けを行って、選択されたモードにおける三色値RGBを生成する。三色信号処理部120は、得られた三色値RGBをミレッド値算出部140に提供する。ステップS05に進む。
【0037】
<ステップS05:ミレッド値算出>
ミレッド値算出部140は、上述した式4、式5によりミレッド値MRDred、MRDgreenを算出する。ステップS06に進む。
【0038】
<ステップS06:平均色温度算出>
平均色温度算出部170は、上述した式6により平均色温度値Kを算出し、式7によりΔMRDredを算出し、式8によりΔMRDgreenを算出する。
ステップS07に進む。
【0039】
<ステップS07:表示モード判別>
ユーザによって色補正値%表示(目標:平均色温度)モードが選択されている場合は、ステップS10に進む。
また、色補正値EV表示(目標:平均色温度)モードが選択されている場合は、ステップS20に進む。
また、色補正値%表示(目標:ユーザが設定した基準色温度)モードが選択されている場合は、ステップS30に進む。
また、色補正値EV表示(目標:ユーザが設定した基準色温度)モードが選択されている場合は、ステップS40に進む。
また、三刺激値・色度・照度表示モードが選択されている場合は、ステップS50に進む。
【0040】
<ステップS10:色補正値%表示(目標:平均色温度)>
表示部30は、式6によって得られたK、式7によって得られたΔMRDred、式8によって得られたΔMRDgreen、式9によって得られたΔR、式10によって得られたΔGを表示する。
図4は、このときの表示例である。
【0041】
<ステップS20:色補正値EV表示(目標:平均色温度)>
表示部30は、式6によって得られたK、式7によって得られたΔMRDred、式8によって得られたΔMRDgreen、式11によって得られたΔREV、式12によって得られたΔGEVを表示する。
【0042】
<ステップS30:色補正値%表示(目標:ユーザが設定した基準色温度)>
表示部30は、式6によって得られたK、式7によって得られたΔMRDred、式8によって得られたΔMRDgreen、式13によって得られたΔR、式14によって得られたΔGを表示する。
【0043】
<ステップS40:色補正値EV表示(目標:ユーザが設定した基準色温度)>
表示部30は、式6によって得られたK、式7によって得られたΔMRDred、式8によって得られたΔMRDgreen、式15によって得られたΔREV、式16によって得られたΔGEVを表示する。
【0044】
<ステップS50:三刺激値・色度・照度表示>
表示部30は、受光部51の出力に基づく三刺激値XYZ、xy色度値、及び、受光部51のセンサのうち緑領域に相当するセンサのベースカウント補正後の出力値S3に基づいて算出される照度を表示する。
図5は、このときの表示部30における表示例を示している。
【0045】
以下、実施形態の色温度成分分析装置1における色温度演算結果の一例について説明する。
図6は、試料光源の分光エネルギ分布と、それを各色温度測定方式で算出した色温度値をプランク放射式で表した分光エネルギ分布を表したグラフである。図6において、横軸は波長を示し、縦軸はエネルギを示している。
M1は、試料光源の分光エネルギ分布を示している。
M2は、試料光源のX波長(R)とZ波長(B)の応答の比による分布温度を、プランク放射式で表した分光エネルギ分布を示している。
M3は、試料光源のY波長(G)とZ波長(B)の応答の比による分布温度を、プランク放射式で表した分光エネルギ分布を示している。
M4は、試料光源のX波長とZ波長の応答の比による分布温度と、試料光源のY波長とZ波長の応答の比による分布温度との平均値を、プランク放射式で表した分光エネルギ分布を示している。
M5は、試料光源の相関色温度(Tc)を、プランク放射式で表した分光エネルギ分布を示している。
【0046】
図6に示すように、この試料光源の場合には、相関色温度M5に対して、X波長とZ波長の応答比による分布温度M2は高く出て、Y波長とZ波長の応答比による分布温度M3は低く出る。
しかし、本実施形態の場合には、分布温度M2と分布温度M3との平均温度M4をとることによって、測定値を相関色温度M5に近づけることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、3つの波長をサンプリング対象とし、組み合わせの異なるサンプリング波長からそれぞれ算出したミレッド値(黒体放射エネルギ2色比色温度値)の平均からケルビン値(3色色温度)を算出することによって、3色色温度の測定精度を向上することができる。このため、仮に等色関数に近似した分光感度特性を有するセンサを利用できない場合であっても、算出されたケルビン値を擬似的な相関色温度として扱うことが可能となる。また、等色関数に近似したセンサを利用可能な場合には、よりいっそう測定精度を高めることができる。
【0048】
また、異なった色の組み合わせに基づいてそれぞれ算出した黒体放射エネルギ2色比色温度値の差は、黒体放射軌跡からの乖離量を示し、この乖離量に基づいて求められるパラメータが試料光源と黒体放射との乖離を調整する調整量となることから、ミレッド値MRDredとMRDgreemとの差に基づいて、光源の調整等に有益な色補正情報を得ることができる。
【0049】
さらに、受光部の4つの測光センサの出力値、重み係数、乖離量情報等を外部の情報処理装置に送信する外部インターフェイスを設けたことによって、本体内で保持していない重み付け係数を用いた三色感度の合成や、本体内では実行困難な複雑な処理であっても外部の情報処理装置内で実行することができ、色温度成分分析装置1の機能を拡張することができる。このとき、個々の色温度成分分析装置1毎に工場出荷時等に校正された固有のセンサ重み係数を情報処理装置側へ送信することによって、情報処理装置側において適切な処理を行うことができる。また、各種操作を例えばコンピュータのキーボードや、マウス等のポインティングデバイスを用いて行うことができるため、操作性が向上する。
【0050】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、三色分光感度を得る方式は、実施形態のような合成分光感度方式に限らず、例えば刺激値直読方式、分光測光方式など他の手法によるものであってもよい。
また、表示部の表示態様や表示される情報の組み合わせも、特に限定されない。
また、基準色温度との乖離量の算出方法の別の方法として、平均色温度値と基準色温度のミレッド差をもって公知の方法で色温度変換フィルターを算出し、同時に式7、式8で算出した乖離量とを併せて、基準色温度との乖離量とすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 色温度成分分析装置 10 本体部
20 操作部 21 電源ボタン
22 測光ボタン 23 基準色温度設定ボタン
24 メニューモードボタン 25 プリセット切換ボタン
26 レンジ切換ボタン 27 測光モード切換ボタン
28 表示切換ボタン 29 ダイアル
30 表示部 40 外部インターフェイス
50 センサ収容部 51 受光部
100 情報処理部 110 四色測光値算出部
120 三色信号処理部 121 三色値算出部
122 分光感度発生部
140 ミレッド値算出部 150 白色感度設定部
160 色補正値算出部 170 平均色温度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を測定して色温度情報を出力する色温度成分分析装置であって、
等色関数と近似した少なくとも3色の分光感度を有し光量に応じた測光信号を出力する測色手段と、
前記測色手段が出力する測光信号を用いてプランク黒体放射式に基づいた黒体放射エネルギ2色比色温度値を色の組み合わせを異ならせて複数求める2色比色温度出力手段と、
前記2色比色温度出力手段が異なった色の組み合わせに基づいてそれぞれ算出した複数の黒体放射エネルギ2色比色温度値の平均値である平均黒体放射色温度値を前記色温度情報として出力する色温度情報出力手段と、
前記2色比色温度出力手段が求めた黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差分である黒体放射分布からの乖離量を出力する乖離量情報出力手段と
を備えることを特徴とする色温度成分分析装置。
【請求項2】
前記2色比色温度出力手段は、青成分及び赤成分に基づいて第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値を出力するとともに、青成分及び緑成分に基づいて第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値を出力し、
前記色温度情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値との平均値である平均黒体放射色温度値を、前記色温度情報として出力し、
前記乖離量情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差である平均色温度値の黒体放射分布からの赤成分乖離量、及び、前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記平均黒体放射色温度値との差である平均色温度値の黒体放射分布からの緑成分乖離量を、前記乖離量情報として出力すること
を特徴とする請求項1に記載の色温度成分分析装置。
【請求項3】
所定の基準色温度を設定する基準色温度設定手段を備え、
前記乖離量情報出力手段は、前記第1の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記基準色温度値との差である基準色温度値の黒体放射分布からの赤成分乖離量、及び、前記第2の黒体放射エネルギ2色比色温度値と前記基準色温度値との差である基準色温度値の黒体放射分布からの緑成分乖離量を、前記乖離量情報として出力すること
を特徴とする請求項2に記載の色温度成分分析装置。
【請求項4】
前記色温度情報及び前記乖離量情報と、前記乖離量情報に基づいて求められる色補正情報との少なくとも一方を同時に表示する表示手段を備えること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の色温度成分分析装置。
【請求項5】
前記測色手段の出力に基づいて三刺激値及びxy色度値を出力する機能を備えること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の色温度成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122942(P2012−122942A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275676(P2010−275676)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000132518)株式会社セコニック (22)
【Fターム(参考)】