説明

色素内包シリカ系粒子の製造方法および色素内包シリカ系粒子ならびに該粒子の用途

【課題】滲みを生ぜず、滑性に優れた、色素内包シリカ系粒子の製造方法の提供。
【解決手段】(a)色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程、(b)色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程、および、(c)乾燥・加熱処理する工程、からなる色素内包シリカ系粒子の製造方法。該色素含有珪酸アルカリ水溶液は、SiO/MOモル比(但し、Mはアルカリ金属を示す。)は1〜5の範囲にあり、SiO濃度(C)が1〜30重量%の範囲にあり、色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が0.0002〜1の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素内包シリカ系粒子の製造方法および色素内包シリカ系粒子ならびに該粒子の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、染料、顔料はインク、塗料、化粧料等種々の用途に使用されている。
例えば、化粧料ではメークアップ化粧料やスキンケア化粧料に使用されているが、染料、顔料をそのまま化粧料に配合しようとすると、その色相調節が難しく、また使用顔料によっては皮膚に塗った際の感触が必ずしも良くないことが知られている。
また、染料を配合した場合、そのまま皮膚などに塗った場合、滲みが生じる場合があり、また、一度乾燥させると皮膚から落ちにくいという欠点を有している。また、酸性染料においては、水道水中に含まれる塩素や光によって退色しやすいことが知られている。
昨今、このような問題を解決することを目的として、染料を着色剤として用いた着色粒子やこれを配合してなる化粧料が開発されている。
【0003】
このような着色粒子としては、(1)基盤となる粉体粒子表面を、水膨潤性粘土鉱物の層間にポリ塩基基と酸性染料を閉じ込めた酸性染料包摂粘土物質で被覆してなる酸性染料積層顔料(特許文献1)、(2)無機化合物粒子の表面を、染料または染料と無機化合物の混合物で被覆した複合顔料(特許文献2)、(3)二酸化珪素球体の表面を、酸化鉄等の金属酸化物または該金属酸化物と有機染料等の着色物質で被覆してなる無機球状吸収顔料(特許文献3)、(4)染料をマイクロカプセル化したポリマーマトリックス物質(特許文献4)、(5)溶媒和染料を樹脂中に組み込んだ顔料(特許文献5)、(6)粒子表面に、染料等の機能性有機化合物で修飾された官能基を有するモノマーをグラフト重合して得られる重合体層を形成してなる化粧料用改質無機微粒子(特許文献6)、(7)アミノ基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された微粒子の表面に、該アミノ基を介して反応性染料を吸着させた着色球状シリコーン微粒子(特許文献7)などがある。
また、本願出願人は、多孔質アルミナ・シリカ粒子の外部表面およびその細孔内表面に存在するアルミナ成分に染料を固定化させた着色アルミナ・シリカ粒子を開示している(特許文献8)。
【0004】
しかしながら、これらの着色粒子物質を製造するには、いずれの技術においても複雑な工程を必要とするため、その製造コストが嵩んでしまうという欠点を有している。
また、染料あるいは顔料自体の色がそのまま現れず、場合によっては染料が溶出したり、色あせたものとなる場合があった。さらに、例えば化粧料に配合して用いると、改良されているとはいえ依然として滲みを生じたり、また、一度乾燥させると皮膚から落ちにくい場合があり、これらの改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−331878号公報
【特許文献2】特開平1−157908号公報
【特許文献3】特開2001−49142号公報
【特許文献4】特表2006−519211号公報
【特許文献5】特開平3−258712号公報
【特許文献6】特開2003−63932号公報
【特許文献7】特開2003−335632号公報
【特許文献8】特開2009−120753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、所定濃度の珪酸アルカリ水溶液を噴霧乾燥し、噴霧して得た粒子中のアルカリを除去するに充分な量の酸を含む水溶液に浸漬してアルカリを除去して粒子をシリカ化することによって内部が中実または空洞の球状シリカ粒子が得られることを見出した。
このとき、珪酸アルカリ水溶液に染料を分散させて用いると、使用した染料と同じ色調に着色した染料内包シリカ系粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、色素内包シリカ系粒子の製造方法および色素内包シリカ系粒子ならびに該粒子の用途を提供することを目的としている。
さらに詳しくは、(1)内部が多孔質または非孔質(無孔質)のシリカ相である球状色素内包シリカ系粒子、あるいは(2)外殻を有し、外殻内部に空洞を有し、外殻が多孔質または非孔質のシリカ相である色素内包シリカ系粒子、さらには(3)前記空洞が負圧である色素内包シリカ系粒子において、シリカ相および/または空洞に色素が封じ込まれているために色素が容易に溶出したり褪色(変色)することがなく、このため化粧料に配合して用いた場合に滲みを生じることもなく、さらに粒子が球状であるために滑性に優れた色素内包シリカ系粒子の製造方法および色素内包シリカ系粒子ならびに該粒子の用途を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る色素内包シリカ系粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴としている。
(a)色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)乾燥・加熱処理する工程
【0009】
前記色素含有珪酸アルカリ水溶液の、SiO/MOモル比(但し、Mはアルカリ金属を示す。)は1〜5の範囲にあり、SiO濃度(C)が1〜30重量%の範囲にあり、色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が0.0002〜1の範囲にあることが好ましい。
前記色素が水溶性染料あることが好ましい。
【0010】
前記工程(a)の噴霧乾燥における熱風の入口温度が100〜600℃の範囲にあり、出口温度が40〜300℃の範囲にあることが好ましい。
前記工程(b)において、色素含有シリカ系粒子前駆体粒子中のMOモル数(Ms)と酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)が0.6〜4.7の範囲にあり、色素含有シリカ系粒子前駆体粒子の濃度が固形分として1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜300℃の範囲にあることが好ましい。
本発明の色素内包シリカ系粒子の製造方法は、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、色素の含有量が固形分として0.5〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記工程(a)の噴霧乾燥における入口温度が100〜300℃の範囲にあり、出口温度が40〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の空隙率が5体積%未満であることが好ましい。
このとき、前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が多孔質であることが好ましい。
また、このとき、前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が90〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が非孔質であることが好ましい。
【0012】
前記工程(a)の噴霧乾燥における入口温度が300〜600℃の範囲にあり、出口温度が120〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が外殻シリカ層を有し、外殻内部の空隙率が5〜95体積%の範囲にあることが好ましい。
このとき、前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻シリカ層が多孔質であることが好ましい。
また、このとき、前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が90〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻シリカ層が非孔質であることが好ましい。
このとき更に、前記工程(c)における乾燥・加熱処理を減圧下で行い、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻層内部が負圧であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る色素内包シリカ系粒子は、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、色素の含有量が固形分として0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴としている。
前記色素が、天然染料および/または合成染料であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る第1の態様の色素内包シリカ系粒子は空隙率が5体積%未満であることが好ましい。
前記色素内包シリカ系粒子は多孔質であっても非孔質であってもよい。
本発明に係る第2の態様の色素内包シリカ系粒子は、外殻シリカ層を有し、外殻内部の空隙率が5〜95体積%の範囲にあることが好ましい。
前記外殻シリカ層が多孔質であってもよいが、非孔質であることが好ましく、外殻層内部が負圧であることがより好ましい。
【0015】
本発明に係る化粧料は、前記いずれかに記載した製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子、または、前記いずれかに記載した色素内包シリカ系粒子を配合してなることを特徴としている。
色素内包シリカ系粒子の配合量は、0.1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明に係る断熱材は、前記いずれかに記載した製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子、または、前記いずれかに記載した色素内包シリカ系粒子を配合してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、(1)内部が多孔質または非孔質(無孔質)のシリカ相である球状シリカ系粒子、あるいは(2)外殻を有し、外殻内部に空洞を有し、外殻が多孔質または非孔質のシリカ相である球状シリカ系粒子、さらには(3)前記空洞が負圧である球状シリカ系粒子において、シリカ相および/または空洞、空洞の内壁に色素封じ込まれているために色素が容易に溶出することがなく、また褪色することもない。このため、本発明の色素内包シリカ系粒子を化粧料に配合して用いた場合に滲みを生じたり変色することがなく、さらに粒子が球状であるために滑性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[色素内包シリカ系粒子の製造方法]
以下に、まず、本発明に係る色素内包シリカ系粒子の製造方法について説明する。
本発明に係る色素内包シリカ系粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴としている。
(a)色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)乾燥・加熱処理する工程
【0019】
工程(a)
色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する。
まず、色素含有珪酸アルカリ水溶液を調製する。
本発明に用いる珪酸アルカリとしては、通常、水に可溶の珪酸ナトリウム、珪酸カリウムが用いられる。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比(但し、Mはアルカリ金属を示す。)は1〜5、さらには2〜4の範囲にあることが好ましい。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比が1未満の場合は、アルカリ量が多すぎるために後述する工程(b)における酸によるアルカリ除去が困難となるだけでなく、噴霧乾燥品の潮解性が顕著となるために色素内包シリカ系粒子が得られない場合がある。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比が5を越えると、珪酸アルカリの可溶性が低下し、水溶液の調製が困難であり、できたとしても水溶液中では数nm以下のシリカ微粒子が発生する場合があり、噴霧乾燥しても本発明に使用できる色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られない場合がある。
【0020】
珪酸アルカリ水溶液の濃度は後述する色素含有珪酸アルカリ水溶液の濃度が後述する範囲となれば特に制限はないが概ねSiOとしての濃度が1〜30重量%、さらには5〜28重量%の範囲にあることが好ましい。
【0021】
色素
本発明に用いる色素としては染料を用いることが好ましく、特に水溶性染料が好ましい。
染料としては、水溶性の天然染料、合成染料を用いることができる。
天然染料としては、アカネ、アイ、ウコン、ベニバナ、ムササキ(紫根)などの植物由来の染料、イボニシ等から得られる貝紫、エンジムシなから得られるコチニールなどの動物性染料が挙げられる。
合成染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、建染染料、ナフトール染料、媒染染料、金属錯体塩染料、分散染料、蛍光増白染料などが挙げられる。
【0022】
また、上記染料以外に紫外線吸収色素、近赤外線吸収色素、液晶表示用2色性色素、カラーフィルタ用色素、偏光フィルム用色素、エレクトロクロミック色素、エレクトロルミネッセンス色素、インクジェット用色素、感熱用色素、感圧用色素、昇華転写用色素、溶融転写用色素、ジアゾ感光材料、電子写真用色素、トナー用電荷調整剤 、レーザー記録用色素、発色現像法カラー写真、銀色素漂白法カラー感光材、増感色素、フォトクロミック色素、サーモクロミック色素、化学発光用色素、ドライフィルム用色素、文具用色素、プラスチックメガネレンズ用色素、色煙用色素、有機非線形光学用色素、不可視色素、エネルギー変換用色素(有機光電変換用色素)等の水溶性の機能性色素も用いることができる。
【0023】
また、本発明の色素内包シリカ系粒子を化粧料に配合する場合には、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、13th Edition 2010)等に収載されている染料からなる色素を使用することが好ましい。
【0024】
前記した珪酸アルカリ水溶液に前記色素を溶解または分散させて色素含有珪酸アルカリ水溶液を調製する。
色素含有珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度(C)は1〜30重量%、さらには5〜28重量%の範囲にあることが好ましい。
色素含有珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度(C)が1重量%未満の場合は、生産性を考慮した場合に非効率となる場合がある。
色素含有珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度(C)が30重量%を越えると、色素含有珪酸アルカリ水溶液としての安定性が著しく低下して高粘性になり噴霧乾燥が困難となる場合があり、噴霧乾燥できたとしても粒子径分布、外殻の厚さ等が極めて不均一になる場合があり、用途が制限される場合がある。
【0025】
また、色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が0.0002〜1、さらには0.002〜0.9の範囲にあることが好ましい。
色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が0.0002未満の場合は、色素の種類によっても異なるが、得られる色素内包シリカ系粒子中の色素含有量が少ないために、化粧品その他の用途に使用する場合、充分な着色効果が得られない場合がある。
色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が1を越えると、色素が多すぎて、一部の色素がシリカ相または外殻内部の空洞に内包され難くなるために、容易に溶出したり褪色しやすくなる場合がある。
【0026】
上記した色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する。
噴霧乾燥方法としては、後述する色素内包シリカ系粒子が得られれば特に制限は無いが、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。
本発明では、内部に空洞を有する粒子を得る場合、2流体ノズル法が好適である。
【0027】
噴霧乾燥における熱風の入口温度が100〜600℃の範囲にあり、出口温度が40〜300℃の範囲にあることが好ましい。
熱風の入口温度が100℃未満の場合は、乾燥が不充分となる場合があり、内部に空洞を有する色素内包シリカ系粒子前駆体粒子は得られないばかりか、内部に空洞のない色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られたとしても、乾燥が不充分で噴霧乾燥室壁面等への付着が激しく、収率が著しく低下する場合がある。
熱風の入口温度が600℃を越えると、内部に空洞の無い色素含有シリカ系粒子前駆体粒子も得られなくなる。更には、内部に空洞を有する色素含有シリカ系粒子前駆体粒子が得られたとしても、乾燥が速すぎるために、粒子径が大きくなるとともに外殻の厚みが薄くなり、割れやすい色素内包シリカ系粒子前駆体粒子となるために好ましくない。
【0028】
熱風の出口温度が40℃未満の場合は、乾燥が不充分となり、内部に空洞を有する色素内包シリカ系粒子前駆体粒子は得られないばかりか、内部空洞の無い色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られたとしても、噴霧乾燥室壁面等への付着が激しく、収率が著しく低下する場合がある。
熱風の出口温度が300℃を越えると、内部に空洞の無い色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られなくなる。更には、内部に空洞を有する色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られたとしても、乾燥が速すぎるために、粒子径が大きくなるとともに外殻の厚みが薄くなり、割れやすい色素内包シリカ系粒子前駆体粒子となるために好ましくない。
【0029】
ここでいう前駆体粒子とは、色素含有珪酸アルカリ水溶液を噴霧乾燥して得られた色素含有珪酸アルカリ粒子のことであり、後述する後工程(b)にて、酸水溶液浸漬工程によりアルカリ除去することによって色素内包シリカ系粒子となる前段階の粒子である。
【0030】
本発明において内部に実質的に空洞のない中実の色素内包シリカ系粒子(第1の態様)を製造する場合は、前記噴霧乾燥における入口温度が100〜300℃、さらには150〜250℃の範囲にあり、出口温度が40〜120℃、さらには50〜100℃の範囲にあることが好ましい。
この時、噴霧乾燥における入口温度が100℃未満の場合は、内部に実質的に空洞のない色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が得られたとしても、乾燥が不充分で噴霧乾燥室壁面等への付着が激しく、収率が著しく低下する場合がある。
噴霧乾燥における入口温度が300℃を越えると、出口温度によっても異なるが、内部に空洞の無い粒子を得ることが困難となる場合がある。
【0031】
熱風の出口温度が40℃未満の場合は、乾燥が不充分となり、噴霧乾燥室壁面等への付着が激しく、収率が著しく低下する場合がある。
熱風の出口温度が120℃を越えると、入口温度によっても異なるが、内部に空洞の無い粒子を得ることが困難となる場合がある。
【0032】
本発明において内部に空洞を有する中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)を製造する場合は、前記噴霧乾燥における入口温度が300〜600℃、さらには350〜550℃の範囲にあり、出口温度が120〜300℃、さらには130〜250℃の範囲にあることが好ましい。
この時、噴霧乾燥における入口温度が300℃未満の場合は、出口温度によっても異なるが、内部に空洞を有する色素内包シリカ系粒子が得られない場合がある。
噴霧乾燥における入口温度が600℃を越えると、破裂状態の色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が形成されるようになり、内部に空洞有する色素内包シリカ系粒子を得ることが困難となる場合があり、得られたとしても外殻の厚みが薄くなり、得られる色素内包シリカ系粒子の強度が不充分となる場合がある。
【0033】
熱風の出口温度が120℃未満の場合は、内部に空洞を有する色素内包シリカ系粒子が得られない場合がある。
熱風の出口温度が300℃を越えると、破裂状態の色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が形成されるようになり、内部に空洞有する色素内包シリカ系粒子を得ることが困難となる場合があり、得られたとしても外殻の厚みが薄くなり、得られる色素内包シリカ系粒子の強度が不充分となる場合がある。
【0034】
なお、色素内包シリカ系粒子(第2の態様)を製造する場合、噴霧乾燥における入口温度および出口温度が前記範囲にあると、内部に空洞を有する粒子が形成されるが、その際、色素が空洞内部(空洞壁面)に存在する傾向があり、最終的に色素が溶出し難い色素内包シリカ系粒子が得られる。この理由は必ずしも明らかではないが、噴霧して形成された色素含有珪酸アルカリ水溶液の液滴は、先ず液滴表面が乾燥してシリカ層(被膜)を形成し、乾燥の進展に伴いシリカ層(被膜)が厚くなるとともに、色素が内部に押しやられるものと推測される。
【0035】
工程(b)
色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する。
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸等を用いることができる。通常、この様な酸を用いるが、陽イオン交換樹脂等を用いることもできる。本発明では塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸が好適に用いられる。
【0036】
色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬する際、色素内包シリカ粒子前駆体粒子中のMOモル数(Ms)と酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)が0.6〜4.7、さらには1〜4.5の範囲となるように浸漬することが好ましい。
前記モル比(Ma)/(Ms)が0.6未満の場合は、MOに対して酸の量が少なすぎるために、アルカリの除去とともに起きると考えられる珪酸の縮合、ケイ酸のシリカ骨格化が進行せず、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が部分的に溶解したり、溶解した珪酸アルカリがゲル化する場合がある。
前記モル比(Ma)/(Ms)が4.7を越えてもさらに、上記した珪酸の縮合、骨格化が進むこともなく、乾燥条件、色素の種類、酸の種類およびこれらの使用量等によっては色素の一部が溶出する場合がある。
【0037】
また、酸水溶液に浸漬した際の色素内包シリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして1〜30重量%、さらには5〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
酸水溶液に浸漬した際の色素内包シリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして1重量%未満の場合は、アルカリ除去、洗浄性に問題はないが製造効率が低下する。また、前記した酸とシリカのモル比、珪酸アルカリのシリカとアルカリのモル比によっては、酸の濃度が低くなる場合があり、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子が部分的に溶解したり、溶解した珪酸アルカリがゲル化する場合がある。
酸水溶液に浸漬した際の色素内包シリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして30重量%を越えると、濃度が濃すぎてアルカリ除去、洗浄効率が低下する場合があり、また、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子の粒子径が小さい場合には特に分散液の粘度が高くなりアルカリ除去、洗浄効率が低下する場合がある。
【0038】
アルカリを除去する条件としては、アルカリを除去できれば特に制限はないが、概ね温度が5〜70℃の範囲、時間は0.5〜24時間の範囲で浸漬する。
ついで、従来公知の方法で洗浄する。例えば、純水にて濾過洗浄すればよい。
なお、本発明では、必用に応じて上記アルカリの除去および洗浄を繰り返し行うこともできる。
【0039】
洗浄後のアルカリの残存量は、用途によっても異なるが、MOとして0.5重量%以下、さらには0.1重量%以下であることが好ましい。
本発明の方法により、色素内包シリカ系粒子前駆体を前記した条件で酸水溶液に浸漬した場合、アルカリの残存量がMOとして0.5重量%を越えることはないが、0.5重量%を越えると、化粧料として使用する際、たとえば水に分散した場合に、分散液のpHが著しく高くなるために化粧品処方における安定性を著しく阻害する他、化粧料の効能を阻害する場合がある。
【0040】
工程(c)
ついで、乾燥・加熱処理する。
乾燥・加熱処理温度は30〜300℃、さらには50〜250℃の範囲にあることが好ましい。
本発明に係る中実の色素内包シリカ系粒子(第1の態様)であって多孔質なものおよび内部に空洞を有する中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)であって外殻が多孔質なものを製造する場合は、乾燥・加熱処理温度が30〜120℃、さらには40〜100℃の範囲にあることが好ましい。
【0041】
乾燥・加熱処理温度が30℃未満の場合は、付着水が多く残存し、用途に制限がある他、乾燥処理に長時間を要し生産性が低下する問題がある。
乾燥・加熱処理温度が120℃を越えると、アルカリを除去した際にできる細孔が消滅して多孔質の色素内包シリカ系粒子、外殻が多孔質な色素内包シリカ系粒子が得られない場合がある。
なお、例えば、乾燥・加熱処理を120℃以下で実施し、ついで、さらに高温で第2回目の乾燥・加熱処理を行っても細孔が消滅することなく、多孔質色素内包シリカ系粒子および外殻が多孔質な色素内包シリカ系粒子が得られる場合がある。
【0042】
本発明に係る中実の色素内包シリカ系粒子(第1の態様)であって非孔質なものおよび中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)であって外殻が非孔質なものを製造する場合は、乾燥・加熱処理温度が90〜300℃、さらには110〜250℃の範囲にあることが好ましい。
乾燥・加熱処理温度が90℃未満の場合は、細孔が消失しない場合があり、非孔質な色素内包シリカ系粒子または外殻が非孔質な色素内包シリカ系粒子が得られない場合がある。
乾燥・加熱処理温度が300℃を越えると、使用する色素によっては変色する場合がある。
【0043】
なお、本発明で得られる色素内包シリカ系粒子で、中実の色素内包シリカ系粒子(第1の態様)であって多孔質なものおよび中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)であって外殻が多孔質なものは、色素の種類あるいは色素内包シリカ系粒子の用法によっては、色素の一部が溶出する場合がある。一方、中実の色素内包シリカ系粒子(第1の態様)であって非孔質なものおよび中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)であって外殻が非孔質なものは溶出のおそれがなく、種々の用途に好適に用いることができる。
【0044】
本発明で非孔質の色素内包シリカ系粒子とは、粒子の比表面積(SA)が概ね27m/g以下となる粒子をいう。
比表面積が概ね27m/g以下であると、平均粒子径、色素の含有量によっても異なるが、色素内包シリカ系粒子はSAに寄与する微細孔を実質的に有してなく、すなわち非孔質である。
一方、本発明で多孔質の色素内包シリカ系粒子とは平均粒子径、色素の含有量によっても異なるが、粒子の比表面積(SA)が概ね27m/gを越える粒子をいう。
【0045】
[色素内包シリカ系粒子]
つぎに、本発明に係る色素内包シリカ系粒子について説明する。
本発明に係る色素内包シリカ系粒子は、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、色素の含有量が固形分として0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴としている。
色素としては、前記した色素が用いられる。
【0046】
本発明に係る第1の態様の色素内包シリカ系粒子は内部に実質的に空洞を有しておらず、空隙率が5体積%未満であることが好ましい。
空隙率が5体積%未満であると、粒子強度に優れた色素内包シリカ系粒子を得ることができる。
この場合、色素内包シリカ系粒子は多孔質であっても非孔質であってもよいが、用途、用法によっては色素の溶出(ブリードアウトと言うことがある)が無いことから非孔質の色素内包シリカ系粒子が好適に用いられる。
【0047】
本発明に係る第2の態様の色素内包シリカ系粒子は、外殻シリカ層を有し、外殻内部の空隙率が5〜95体積%、さらには20〜90体積%の範囲にあることが好ましい。
空隙率が5体積%未満の場合は、屈折率が充分に低くならず、化粧料に配合して用いても充分な暈かし効果が得られない場合がある。
空隙率が95体積%を越えるものは得ることが困難であり、得られたとしても粒子径によっては殻が薄くなり、粒子強度が不充分となる場合がある。
前記外殻シリカ層は多孔質であっても非孔質であってもよいが、用途、用法によっては色素の溶出(ブリードアウトと言うことがある。)が無いことから非孔質の色素内包シリカ系粒子が好適に用いられる。
【0048】
ここで、空隙率は、粒子のTEM写真を測定し、50個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として平均粒子径を測定し、次に、粒子を1/2に破断し、50個の破断切片について空洞部の直径を測定して空洞部の平均直径を求め、計算により空洞部の平均空洞体積率を求める。なお、空洞部は概ね球状である。また、空隙率には多孔質部分の細孔容積は含まない。
【0049】
本発明の色素内包シリカ系粒子はいずれの態様のものも、粒子形状が球状で、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にある。平均粒子径が0.1μm未満のもの、また、平均粒子径が200μmを超えるものは、生産性を考慮した場合、噴霧乾燥法を用いて製造することが困難である。
【0050】
また、本発明の色素内包シリカ系粒子はいずれの態様のものも、色素内包シリカ系粒子中の色素の含有量が0.5〜50重量%、好ましくは1〜45重量%の範囲にある。
色素の含有量が0.5重量%未満のものは、色素の種類によっても異なるが、化粧品その他の用途に使用する場合、充分な着色効果が得られない場合がある。
色素の含有量が50重量%を超えるものは、色素が多すぎて、一部の色素がシリカ相または外殻内部の空洞に内包され難くなるために、容易に溶出したり褪色しやすくなる場合がある。
【0051】
本発明での色素の含有量は、色素内包シリカ系粒子を調製したときの色素と水ガラスの使用量から算出した。
【0052】
上記中空の色素内包シリカ系粒子(第2の態様)を製造する場合、乾燥・加熱処理を減圧下で行うと、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻層内部が負圧の色素内包シリカ系粒子を得ることができる。
この時得られる球状の色素内包シリカ系粒子は、内部の空隙に存在する酸素濃度が少ないために、例えば紫外線により分解されやすい色素を含有する場合に、紫外線による分解を抑制でき、変色あるいは退色を抑制できる場合がある。
【0053】
従って、上記減圧下で乾燥・加熱処理して得られる色素内包シリカ系粒子は、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、外殻シリカ層の内部に空洞を有し、該空洞の空隙率が5〜95重量%の範囲にあり、外殻シリカ層が非孔質であり、空洞内部が負圧であることを特徴としている。
前記空洞内部の負圧が133hPa以下あることが好ましい。
空洞内部が負圧であるシリカ系粒子は、屈折率が低く、断熱性に優れている。
【0054】
[化粧料]
本発明に係る化粧料は、前記したいずれかの製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子を配合してなることを特徴としている。
本発明に係る化粧料は、前記色素内包シリカ系粒子の配合量が0.1〜30重量%の範囲にあり、特に1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。色素内包シリカ系粒子の配合量が0.1重量%未満では、色素による着色効果、滑性、皮膚の欠点を暈かす効果や透明感など色素内包シリカ系粒子の配合効果が得られず、30重量%を越えると本来化粧料に求められる油分感等が損なわれることがある。
【0055】
なお、本発明の色素内包シリカ系粒子を化粧料に配合するに際し、その表面を従来公知の表面処理剤、例えば、シリコーン化合物、フッ素化合物、金属石鹸類、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノ酸類、レシチン類等で処理しても良い。
本発明の化粧料は、前記色素内包シリカ系粒子と、通常、化粧料に配合されることのある成分、例えば、オリーブ油、ナタネ油、牛脂等の油脂類、ホホバ油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等のロウ類、パラフィン、スクワラン、合成及び植物性スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素類、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、α−ヒドロキシ酸等の脂肪酸類、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール類、アルキルグリセリルエーテル類、ミリスチン酸イソプロピル、パルチミン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、ラウリル酸セチル、オレイン酸デシル等のエステル類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコール類、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖、トレハロース等の糖類、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーン油、各種変性シリコーン油、環状ジメチルシリコン油等のシリコーン油、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油、アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、アルブミン、プルラン、カルボキシビニルポリマー、セルロース及びその誘導体、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の各種高分子、アニオン、カチオン、ノニアオン系各種界面活性剤類、動植物抽出物、アミノ酸及びペプチド類、ビタミン類、パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系、サリチル酸系、安息香酸エステル系、ウロカニン酸系、ベンゾフェノン系をはじめとした紫外線防御剤、殺菌・防腐剤、酸化防止剤、変性又は未変性の粘土鉱物、酢酸ブチル、アセトン、トルエンなどの溶剤、各種粒子径、粒子径分布及び形状の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、マイカ、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、硫酸バリウム、パール光沢を有する雲母チタン、及びそれらの複合物、各種有機顔料、有機染料、水、香料などの少なくとも1 種を含んでいる。ここで、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機化合物はシリコン処理、フッ素処理、金属石鹸処理等の表面処理をして用いてもよい。
【0056】
また、ポリアクリル酸メチル、ナイロン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂粒子を含んでいてもよい。
さらに、美白効果を有する有効成分としてアルブチン、コウジ酸、ビタミンC 、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、ジ−パルチミン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド、その他のアスコルビン酸誘導体、プラセンタエキス、イオウ、油溶性甘草エキス、クワエキス等の植物抽出液、リノール酸、リノレイン酸、乳酸、トラネキサム酸等を含むことができる。
肌荒れ改善効果を有する有効成分としてビタミンC 、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、カフェー誘導体、リグナン、サポニン、レチノイン酸及びレチノイン酸構造類縁体、N − アセチルグルコサミン、α − ヒドロキシ酸等の抗老化効果を有する有効成分、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類、混合異性化糖、トレハロース、プルラン等の糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン・キトサン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の生体高分子類、アミノ酸、ベタイン、セラミド、スフィンゴ脂質、コレステロール及びその誘導体、ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、各種ビタミン類等を含むことができる。
【0057】
本発明の化粧料には、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、13th Edition 2010)等に収載されている化粧料成分を特に制限なく使用することができる。
本発明による化粧料は、従来公知の一般的な方法で製造することができる。
【0058】
このような方法で製造された化粧料は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ジェル状、ムース状、液状、クリーム状などの各種形態で使用され、さらに具体的に述べれば、石鹸、クレンジングフォーム、メーク落とし用クリーム等の洗浄用化粧料、保湿・肌荒れ防止、アクネ、角質ケア、マッサージ、しわ・たるみ対応、くすみ・くま対応、紫外線ケア、美白、抗酸化ケア用等のスキンケア化粧料、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、ムースファンデーション、プレスドパウダー、化粧下地等のベースメークアップ化粧料、アイシャドウ、アイブロー、アイライナー、マスカラ、口紅等のポイントメークアップ化粧料、育毛用、フケ防止、かゆみ防止、洗浄用、コンディショニング・整髪、パーマネント・ウエーブ用、ヘアカラー・ヘアブリーチ用等のヘアケア化粧料、洗浄用、日焼け防止、手荒れ防止、スリミング用、血行改善用、かゆみ抑制、体臭防止、制汗、体毛ケア、リペラント用、ボディパウダー等のボディーケア化粧料、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、シャワーコロン等、練香水、ボディーロ−ション、バスオイル等のフレグランス化粧料、歯磨き、マウスウォッシュ等のオーラルケア製品などが挙げられる。
【0059】
[断熱材]
本発明の製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子は断熱材として好適に用いることができる。
断熱材に用いる色素内包シリカ系粒子としては、内部に空洞を有する中空のシリカ系粒子(第2の態様)であって外殻が非孔質な色素内包シリカ系粒子が好ましい。
断熱材に用いる用法としては、従来公知の方法に準拠して用いることができ、例えば、断熱用の隔壁に充填して使用することができ、さらには住宅建材(壁材、窓材等)に配合して用いたり、断熱フィラーとして含むシート、あるいは断熱フィラーとして含み断熱効果を有する断熱塗料等として用いる等種々の用途が提案されている。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
色素内包シリカ系粒子(1)の調製
水ガラス水溶液(SiO/NaOモル比3.2、SiO濃度24重量%)3000gに、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を14.4g溶解させた色素含有珪酸アルカリ水溶液を2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を31800L/hr(空/液体積比63600)の流量で、入口温度400℃の熱風に噴霧して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)を得た。この時、出口温度は150℃であった。このとき、(C)/(C)=0.02であった。
ついで、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬して1.5時間撹拌した。この時、SiO濃度は10.2重量%、分散液の温度は35℃、pHは3.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)は1.2であった。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理して青色に着色された色素内包シリカ系粒子(1)を調製した。
【0061】
得られた色素内包シリカ系粒子(1)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度と言うことがある)および感触特性を以下の方法で測定し、結果を表に示した。
色素内包シリカ系粒子(1)は、空隙率40%の非孔質中空粒子であることが分かり、透過率が充分に高いため、色素の溶出が無く、着色度合いが充分であることが分かった。更には、感触特性についても化粧品材として充分な機能を有することが分かった。
【0062】
平均粒子径
色素内包シリカ系粒子(1)3ccをレーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製:LMS−30)により粒度分布を測定し、算出されたメジアン径を平均粒子径とした。
比表面積
色素内包シリカ系粒子(1)を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g採取し、BET法比表面積測定装置(マウンテック社製:M−1220型)を用いて比表面積(m/g)を測定した。
【0063】
粒子密度
色素内包シリカ系粒子(1)を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを15ml採取し、全自動ピクノメーター(QUANTACHROME社製:Ultrapyc1200e)を用いて真比重を測定し粒子密度とした。
空隙率
色素内包シリカ系粒子(1)のTEM写真を測定し、50個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として平均粒子径を測定し、次に、粒子を1/2に破断し、50個の破断切片について空洞部の直径を測定して空洞部の平均直径を求め、計算により空洞部の平均空洞体積率を求めた。
【0064】
アルカリ残存量
色素内包シリカ系粒子(1)を原子吸光法(日立製作所社製、原子吸光光度計Z−2310型)を用いてNa含有量を測定し、NaOに換算してアルカリ残存量とした。
色素含有量
色素内包シリカ系粒子(1)調製時の色素の使用量から計算した値を示した。
【0065】
吸油量
顔料試験方法JIS−K5101に準拠して測定した。概略は、一定の条件下で色素内包シリカ系粒子(1)に吸収される煮あまに油の量を測定し、吸油量を色素内包シリカ系粒子(1)の重量で除して求める。本発明においては、吸油量をml/100gで表示した。
【0066】
色素溶出量
色素内包シリカ系粒子(1)を0.5g採取し、100mlビーカーに移す。次に、蒸留水と濃度48重量%のNaOH水溶液を用いて調製したpH9.0のNaOH水溶液を49.5g加えて懸濁し、1時間攪拌する。更に、超音波発生機(iuch社製:US−2型)にて10分間分散し、1日静置する。次に、遠心分離機で色素内包シリカ系粒子(1)を分離し、更に残留した水溶液を0.2μmの目開きを持つマイクロフィルターにてろ過し、石英セル(長さ:10mm、幅:10mm、高さ:45mmのサイズ)に入れた後、分光光度計(HITACHI社製:U−2000)を用いて波長400〜800nmにおける透過率を測定し、この範囲における最も低い値を透過率とした。この透過率が低いほど色素溶出量が多いことを示す。
【0067】
着色度合い(彩度)
色素内包シリカ系粒子(1)を測色用のステンレスカップいっぱいに採取し、試料の表面を平らなガラス板を使用して平滑にする。次に、分光光度計(ミノルタ社製:CM2002型)にカバーガラス(ミノルタ社製:CM−A40)をセットし、光源D−60、視野10度、SCI法にてL表色系にて測色して、以下の式より彩度を算出した。
彩度 = [(a+(b]1/2
【0068】
感触特性
色素内包シリカ系粒子(1)の粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、(1)さらさら感、(2)しっとり感、(3)転がり感、(4)均一な延び広がり性、(5)肌への付着性、(6)転がり感の持続性、および(7)色素内包シリカ系粒子(1)のシャリシャリ感の低さの7つの評価項目に関して聞き取り調査を行う。その結果を以下の評価点基準(a)に基づき評価する。次いで、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づき色素内包シリカ系粒子の感触に関する評価を行う。
【0069】
評価点基準(a
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
【0070】
[実施例2]
色素内包シリカ系粒子(2)の調製
実施例1において、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を8.8g溶解させて(C)/(C)=0.012で実施した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(2)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(2)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0071】
[実施例3]
色素内包シリカ系粒子(3)の調製
実施例1において、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を576g溶解させて(C)/(C)=0.8で実施した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(3)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(3)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0072】
[実施例4]
色素内包シリカ系粒子(4)の調製
実施例1において、入口温度320℃の熱風に噴霧して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(4)を得た。この時、出口温度は130℃であった。
以下、実施例1と同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(4)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(4)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0073】
[実施例5]
色素内包シリカ系粒子(5)の調製
実施例1において、入口温度450℃の熱風に噴霧して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(5)を得た。この時、出口温度は175℃であった。
以下、実施例1と同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(5)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(5)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0074】
[実施例6]
色素内包シリカ系粒子(6)の調製
実施例1において、80℃で60時間乾燥・加熱処理した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(6)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(6)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0075】
[実施例7]
色素内包シリカ系粒子(7)の調製
実施例1において、入口温度250℃、出口温度50℃で噴霧乾燥した以外は同様にして色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(7)を得た。
ついで、120℃で24時間乾燥・加熱処理した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(7)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(7)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0076】
[実施例8]
色素内包シリカ系粒子(8)の調製
実施例1において、入口温度250℃、出口温度50℃で噴霧乾燥した以外は同様にして色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(8)を得た。
ついで、80℃で60時間乾燥・加熱処理した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(8)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(8)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0077】
[実施例9]
色素内包シリカ系粒子(9)の調製
実施例1において、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液2670gに浸漬した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(9)を調製した。この時、分散液の温度は35℃、pHは3.5であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)は1.0であった。
得られた色素内包シリカ系粒子(9)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0078】
[実施例10]
色素含有シリカ系粒子(10)の調製
実施例1において、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液8000gに浸漬した以外は同様にして青色に着色された色素含有シリカ系粒子(10)を調製した。この時、分散液の温度は35℃、pHは2.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)は3.0であった。
得られた色素内包シリカ系粒子(10)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0079】
[実施例11]
色素内包シリカ系粒子(11)の調製
実施例1において、色素として赤色酸性染料(癸巳化成社製:赤色3号)14.4g溶解した以外は同様にして赤色に着色した色素内包シリカ系粒子(11)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(11)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0080】
[実施例12]
色素内包シリカ系粒子(12)の調製
実施例1と同様にして調製した色素含有珪酸アルカリ水溶液を、2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を63600L/hr(空/液体積比127200)の流量で、入口温度420℃の熱風に噴霧して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(12)を得た。この時、出口温度は150℃であった。
ついで、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(12)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬して1.5時間撹拌した。この時、SiO濃度は10.2重量%、分散液の温度は35℃、pHは3.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)は1.2であった。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理して青色に着色された色素内包シリカ系粒子(12)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(12)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0081】
[実施例13]
色素内包シリカ系粒子(13)の調製
実施例1と同様にして調製した色素含有珪酸アルカリ水溶液を、2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を15900L/hr(空/液体積比31800)の流量で、入口温度380℃の熱風に噴霧して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(13)を得た。この時、出口温度は150℃であった。
ついで、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(13)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬して1.5時間撹拌した。この時、固形分(SiO)濃度は10.2重量%、分散液の温度は35℃、pHは3.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)は1.2であった。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理して青色に着色された色素内包シリカ系粒子(13)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(13)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0082】
[実施例14]
色素内包シリカ系粒子(14)の調製
実施例1と同様にして調製した色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)を酸処理した後、真空ポンプにて、減圧度1hPaで排気しながら、乾燥・加熱処理を120℃で24時間行った以外は同様にして内部が負圧の色素内包シリカ系粒子(14)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(14)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
【0083】
[比較例1]
色素内包シリカ系粒子(R1)の調製
実施例1において、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を0.06g溶解させて(C)/(C)=0.00008で実施した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(R1)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(R1)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
色素内包シリカ系粒子(R1)は、空隙率41%の非孔質中空粒子であり、透過率が充分に高いため、色素の溶出が無いことが分かったが、着色度合いが低いために、着色材料としての機能に乏しいものであった。
【0084】
[比較例2]
色素内包シリカ系粒子(R2)の調製
実施例1において、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を1200g溶解させて(C)/(C)=1.67で実施した以外は同様にして青色に着色された色素内包シリカ系粒子(R2)を調製した。
得られた色素内包シリカ系粒子(R2)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
色素内包シリカ系粒子(R2)は、空隙率40%の非孔質中空粒子であり、着色度合いは高いものの、透過率が低く色素の溶出が顕著であった。
【0085】
[比較例3]
色素内包シリカ系粒子(R3)の調製
実施例1において、色素内包シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度2重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬した。この時、分散液の温度は35℃、pHは9.5であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Msp)は0.24であった。
しかし、酸の量が少なすぎたために、浸漬中に粒子の溶解が顕著に見られ、粒子を得ることが出来なかった。このため粒子の評価は実施しなかった。
【0086】
[比較例4]
色素含有多孔質アルミナ・シリカ粒子(R4)の調製
比表面積100m/g、平均粒子径0.2μmのδ−アルミナ粒子(degussa社製、AEROXIDE Alu C)90gを純水850gに加えて30分間撹拌して前記アルミナ粒子の懸濁液を得た。次いで、これをディスパーミル(ホソカワミクロン社製、D−1型)にかけて前記懸濁液中に含まれる前記アルミナ粒子の凝集物などを解砕して、前記アルミナ粒子を分散させた水分散液を得た。
【0087】
次に、この水分散液に、平均粒子径0.007μmのシリカ系粒子をSiO基準で16.5重量%含む水分散ゾル60g(日揮触媒化成製、Cataloid SN−350)を加えて15分間撹拌して、前記アルミナ粒子および前記シリカ粒子が均一またはほゞ均一に分散された混合スラリーA1000gを調製した。
このようにして得られた混合スラリーA中に含まれる固形分濃度は10重量%であり、また前記アルミナ粒子をAlで表し、さらに前記シリカ粒子をSiOで表したとき、その重量比(Al/SiO)は90/10であった。
【0088】
次いで、前記混合スラリーAを2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を31800L/hr(空/液体積比63600)の流量で、入口温度250℃の熱風に噴霧してアルミナ・シリカ粒子の粉体を得た。さらに、得られたアルミナ・シリカ粒子の粉体を110℃の温度で18時間乾燥させて、ほゞ球状の形状を有する平均粒子径5μmの多孔質アルミナ・シリカ粒子650gを得た。
【0089】
次に、青色酸性染料(癸巳化成社製 青色2号)1.4gを撹拌下で純水1398.6gに加えて溶解させた水溶液を得た。次いで、この水溶液に、前記多孔質アルミナ・シリカ粒子A100gを添加して30分間撹拌し、さらに1時間放置した。これにより、前記多孔質アルミナ・シリカ粒子Aの外部表面およびその細孔内表面に存在する前記アルミナ成分に前記酸性染料を吸着させた多孔質アルミナ・シリカ粒子Bを含む混合スラリーB2600gを得た。
このようにして得られた混合スラリーB中に含まれる固形分濃度は3.85重量%であり、また前記酸性染料をDxで表し、さらに前記多孔質アルミナ・シリカ粒子をAl・SiOで表したとき、その重量比(Dx/Al・SiO)は0.02であった。
【0090】
次いで、前記混合スラリーBをヌッチェにて脱水して得られた洗浄ケーキを110℃の
温度で18時間乾燥した。なお脱水において得られた濾液の色は無色透明であった。これにより、前記多孔質アルミナ・シリカ粒子Bの外部表面およびその細孔内表面に存在する前記アルミナ成分に前記酸性染料を固定化させた、青色に着色した色素含有多孔質アルミナ・シリカ粒子(R4)102gを得た。
【0091】
得られた色素含有多孔質アルミナ・シリカ粒子(R4)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
色素含有多孔質アルミナ・シリカ粒子(R4)は、多孔質粒子であり、着色度合いは高いものの透過率が低く、色素の溶出が顕著であった。
なお、中性領域(pH=7)では色素は溶出しないが弱アルカリ領域(pH=9)では色素が溶出することが認められた。
【0092】
[比較例5]
シリカ系粒子(R5)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:S−20L、平均粒子径19nm、SiO濃度20重量%)3600gに、青色酸性染料(癸巳化成社製:青色1号)を7.2g溶解させた色素含有シリカゾルを2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を31800L/hr(空/液体積比63600)の流量で、入口温度250℃の熱風に噴霧して担体用粉体(R5)を得た。この時、出口温度は50℃であった。このとき、(C)/(C)=0.02であった。
得られたシリカ系粒子(R5)の平均粒子径、比表面積、粒子密度、空隙率、アルカリ残存量、色素含有量、吸油量、色素溶出量、着色度合い(彩度)および感触特性を測定し、結果を表に示した。
シリカ系粒子(R5)は、多孔質粒子であり、着色度合いは高いものの、透過率が低く色素の溶出が顕著であった。すなわち、シリカ系粒子(R5)は、色素を充分に内包できないことが分かった。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
[実施例15〜28]および[比較例6]
パウダーファンデーションの調製
下記表に示す配合比率(重量%)となるように、実施例1〜14および比較例5で得られたシリカ系粒子成分(1)および(2)〜(9)をそれぞれミキサーに入れて撹拌し、均一に混合した。次に、下記化粧料成分(10)〜(12)をこのミキサーに入れて撹拌し、さらに均一に混合した。次いで、得られたケーキ状物質を解砕処理した後、その中から約12gを取り出し、46mm×54mm×4mmの角金皿に入れてプレス成型した。
これにより、シリカ系粒子を配合した実施例化粧料P1〜P14、比較例化粧料PR5を得た。
【0097】
【表4】

【0098】
次いで、このようにして得られた実施例化粧料P1〜P14、比較例化粧料PR5の使用感を塗布中の感触および仕上がり感(塗布後の感触)について、下記の試験法で評価した。その結果を表に示す。
【0099】
試験法
シリカ系粒子の粉体を配合したパウダーファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、(1)肌への塗布中の均一な延び、(2)しっとり感、(3)滑らかさ、および(4)肌に塗布後の化粧膜の均一性、(5)しっとり感、(6)やわらかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行う。その結果を以下の評価点基準(a)に基づき評価する。次いで、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感に関する評価を行う。
【0100】
評価点基準(a
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0101】
評価基準(b
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
その結果、前記実施例化粧料は、その使用感が塗布中および塗布後においても非常に優れていることが分かった。
【0102】
【表5】

【0103】
[実施例29〜42]および[比較例7]
ローションの調製
下記表に示す配合比率(重量%)となるように、80℃に加温し均一に混合した成分(1)〜(3)に、80℃に加温し均一に混合した実施例1〜14および比較例5で得られたシリカ系粒子成分(4)および(5)〜(8)を加え撹拌し、均一に混合した。次に、50℃まで冷却し、成分(9)〜(11)を加えて撹拌し、さらに均一に混合した。次いで、室温まで冷却し、シリカ系粒子を配合した実施例化粧料L1〜L14、比較例化粧料LR5を得た。
【0104】
【表6】

【0105】
次いで、このようにして得られた実施例化粧料L1〜L14、比較例化粧料LR5の使用感(使用前のシリカ系粒子の再分散性と塗布中の感触)および仕上がり感(塗布後の感触)について、下記の試験法で評価した。その結果を表に示す。
【0106】
試験法
シリカ系粒子の粉体を配合したローションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、1)使用前のシリカ系粒子の再分散性、2)肌への塗布中の均一な延び、および3)肌に塗布後の化粧膜のソフトフォーカス性の3つの評価項目に関して聞き取り調査を行う。その結果を以下の評価点基準(a)に基づき評価する。次いで、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感に関する評価を行う。
【0107】
評価点基準(a
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0108】
評価基準(b
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
その結果、前記実施例化粧料は、その使用感が塗布中および塗布後においても非常に優れていることが分かった。
【0109】
【表7】

【0110】
[実施例43〜46]および[比較例8、9]
断熱材の調製
ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレートDPE-6A)4.4g、および1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレート1,6HX−A)4.4gを混合し、これに光開始剤2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、DAROCUR TPO)0.7gを混合した。これをポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製、MFG)2.3gに溶解させて、混合樹脂溶液を調製した。
【0111】
ついで、混合樹脂溶液11.8g(樹脂比重:1.1g/ccより、樹脂体積:8.0cc)に、実施例1、4、5、14で得られた各シリカ系粒子を粒子密度換算により33体積%(3.9cc)となるようにそれぞれ5.2g、6.9g、3.5g、5.2gを加えた後、ホーン型超音波装置(海上電波社製)で1分間分散処理して断熱材形成用樹脂溶液4点を調製した。粒子密度換算をする理由は、粒子個数を等しくして比較できるようにするためである。
【0112】
各断熱材形成用樹脂溶液を各々バーコーター(バーNo.18)を用いてPET基材に塗布し、80℃で2分間乾燥し、更にUV照射(300mJ/cm)により硬化させて実施例断熱性薄膜付基材H1〜H4を得た。
また、シリカ系粒子を配合しない以外は同様にして調製した樹脂溶液、および比較例5で得られたシリカ系粒子については、粒子密度換算により33体積%となるように、8.6gを配合した以外は同様にして調製した樹脂溶液2点を、同様に塗布し、乾燥し、硬化させて比較例断熱性薄膜付基材RH1〜RH2を得た。
得られた各断熱性薄膜付基材について、以下のようにして断熱性を評価し、結果を表 に示す。
【0113】
断熱性評価
薄膜付基材を専用冶具に設置し、薄膜(付き基材)表面から30cm離れた真上から赤外線ランプ(185W)を用いて30分間照射し、薄膜の反対側で、基材から8cm離れた真下に温度センサーを設置して温度を測定した。その際、赤外線照射前の温度は、24.0〜24.5℃の範囲であった。結果を表8に示す。
【0114】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴とする色素内包シリカ系粒子の製造方法。
(a)色素含有珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥して色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)色素内包シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)乾燥・加熱処理する工程
【請求項2】
前記色素含有珪酸アルカリ水溶液の、SiO/MOモル比(但し、Mはアルカリ金属を示す。)は1〜5の範囲にあり、SiO濃度(C)が1〜30重量%の範囲にあり、色素濃度(C)とSiO濃度(C)との濃度比(C)/(C)が0.0002〜1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項3】
前記色素が水溶性染料あることを特徴とする請求項1または2に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)の噴霧乾燥における熱風の入口温度が100〜600℃の範囲にあり、出口温度が40〜300℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、色素含有シリカ系粒子前駆体粒子中のMOモル数(Ms)と酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Ms)が0.6〜4.7の範囲にあり、色素含有シリカ系粒子前駆体粒子の濃度が固形分として1〜30重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜300℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項7】
平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、色素の含有量が固形分として0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項8】
前記工程(a)の噴霧乾燥における入口温度が100〜300℃の範囲にあり、出口温度が40〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の空隙率が5体積%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項9】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が多孔質であることを特徴とする請求項8に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項10】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が90〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が非孔質であることを特徴とする請求項8に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項11】
前記工程(a)の噴霧乾燥における入口温度が300〜600℃の範囲にあり、出口温度が120〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子が外殻シリカ層を有し、外殻内部の空隙率が5〜95体積%の範囲にあることを特徴とするとする請求項1〜7のいずれかに記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項12】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が30〜120℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻シリカ層が多孔質であることを特徴とする請求項11に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項13】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理温度が90〜300℃の範囲にあり、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻シリカ層が非孔質であることを特徴とする請求項11に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項14】
前記工程(c)における乾燥・加熱処理を減圧下で行い、得られる色素内包シリカ系粒子の外殻層内部が負圧であることを特徴とする請求項13に記載の色素内包シリカ系粒子の製造方法。
【請求項15】
平均粒子径が0.1〜200μmの範囲にあり、色素の含有量が固形分として0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴とする色素内包シリカ系粒子。
【請求項16】
前記色素が、天然染料および/または合成染料であることを特徴とする請求項15に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項17】
空隙率が5体積%未満であることを特徴とする請求項15または16に記載の色素内包シリカ系粒子
【請求項18】
多孔質であることを特徴とする請求項17に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項19】
非孔質であることを特徴とする請求項17に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項20】
外殻シリカ層を有し、外殻内部の空隙率が5〜95体積%の範囲にあることを特徴とする請求項15または16に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項21】
前記外殻シリカ層が多孔質であることを特徴とする請求項20に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項22】
前記外殻シリカ層が非孔質であることを特徴とする請求項20に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項23】
外殻層内部が負圧であることを特徴とする請求項22に記載の色素内包シリカ系粒子。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれかに記載した製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子、または、請求項15〜23のいずれかに記載した色素内包シリカ系粒子を配合してなる化粧料。
【請求項25】
色素内包シリカ系粒子の配合量が0.1〜30重量%の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の化粧料。
【請求項26】
請求項1〜14のいずれかに記載した製造方法で得られた色素内包シリカ系粒子、または、請求項15〜23のいずれかに記載した色素内包シリカ系粒子を配合してなる断熱材。

【公開番号】特開2013−95797(P2013−95797A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237895(P2011−237895)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】