説明

色素及び香料含有低粘度組成物

【課題】粘度増加が有意に抑制されてなる色素・香料含有組成物の提供。粘度増加をもたらさないような色素と香料との組み合わせの提供。
【解決手段】カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、混合24時間後の25℃における組成物の粘度が、500cP以下である低粘度組成物、カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料がフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択されるいずれか少なくとも一種と炭化水素系香料との組み合わせからなるものである上記低粘度組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素及び香料を含有する低粘度組成物に関する。詳細には、本発明はカルボニウム染料と2種類以上の香料との組み合わせからなる組成物であって、製造上ないしは最終製品において好ましくない粘度増加を有意に抑制してなる低粘度組成物に関する。
【0002】
当該組成物は、食品、化粧品及び医薬品の分野のみならず、塗料インキなどの工業的分野、入浴剤,芳香消臭剤等を取り扱う一般家庭用品分野等といった広い分野に亘って有用な組成物である。
【背景技術】
【0003】
従来から、色素は繊維の染色にとどまらず、食品、化粧品、医薬品、紙、雑貨、印刷インキ、サインペン等の文房具等の分野で、多種多様に使用されている。また、食品、化粧品、医薬品等の分野ではとりわけ視覚及び臭覚上の感覚的要素が重要視されるため、製品製造に際して色素と香料とが同時に用いられるのが通例であり、また近年の消費者のニーズの多様化により印刷、繊維、文房具、雑貨の分野においても色素に加えて様々の香料が用いられている。
【0004】
しかし、色素の中には香料と組み合わせることにより粘度が急激に増加してしまうものがあり、この粘度の増加は製造工程を煩雑、非効率的なものとし、また製品の観点からも好ましくない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、色素及び香料を含有する組成物であって、粘度増加が有意に抑制されてなる低粘度組成物を提供することを目的とする。また、本発明は粘度増加をもたらさないような色素と香料との組み合わせを提供することをも目的とする。
【0006】
本発明によれば、色素と香料とを単純に混合した場合でも該組成物の粘度を増加させることがないので、製造に際して高価な高粘度対応攪拌機を採用する必要がなく、また従来粘度増加のために攪拌に時間や手間がかかっていたのを軽減することができる。また、本発明によれば、粘度低減剤が不要のため組成物は該剤の添加による物性変化等の影響を受けることなく、また経時的な粘度上昇等の物性変化を追跡しそれをコントロールする労力を低減することができるといった点でも有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、色素に香料を配合すると粘度が急激に増加する現象に着目し、カルボニウム染料に属する色素について各種香料単品との組み合わせによる粘度上昇を研究していたところ、これらの色素と香料との間には粘度に関して一定の関係があることを見出した。そこでこの知見に基づいて更に研究を進めたところ、カルボニウム染料に香料単品を配合すると粘度が増加する場合であっても、2種以上の香料を組み合わせて配合することによってそれらを含有する組成物の粘度の増加が有意に抑制されることが確認され、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のいずれかの態様からなる色素及び香料含有低粘度組成物である。
(1) カルボニウム染料及び二種以上の香料を含有する組成物であって、混合24時間後の25℃における組成物の粘度が、500cP以下であることを特徴とする低粘度組成物。
(2) カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料がフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択されるいずれか少なくとも一種と炭化水素系香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする(1)記載の低粘度組成物。
(3) カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料が1級アルコール系またはアルデヒド系に属する香料の少なくとも一種と天然香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする(1)記載の低粘度組成物。
(4) カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料がエステル系,3級アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択される少なくとも一種と1級アルコール系香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする(1)記載の低粘度組成物。
(5) カルボニウム染料が、キサンテン染料又はトリフェニルメタン系染料に属するものであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の色素及び香料含有低粘度組成物。
(6) キサンテン染料がフルオレセン系若しくはローダミン系に属する染料であり、またトリフェニルメタン系染料がフタレイン系に属するものであることを特徴とする(5)記載の色素及び香料含有低粘度組成物。
(7) 香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれる炭化水素系香料が少なくとも30重量部であることを特徴とする(1)、(2)、(5)又は(6)のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。
(8) 香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれる天然香料が少なくとも50重量部であることを特徴とする(1)、(3)、(5)又は(6)のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。
(9) 香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれるエステル系,3級アルコール系及びアルデヒド系に属する香料の割合が総量として50重量部であることを特徴とする(1)、(4)、(5)又は(6)のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられる色素は、直接染料,酸性染料,塩基性染料,食用染料,反応染料,可溶性建築用染料等として使用される染料、具体的にはカルボニウム染料である。カルボニウム染料に属するものであれば特に制限されないが、好ましくは水溶性の染料である。
【0010】
カルボニウム染料としてより具体的には、キサンテン環を有するキサンテン染料、トリフェニルメチル基を有するトリフェニルメタン系染料が挙げられる。
【0011】
キサンテン染料としては特に制限はないが、好ましくは中心炭素のパラ位に水酸基を有するいわゆるフルオレセイン系染料、又は中心炭素のパラ位にアミノ基を有するいわゆるローダミン系染料等が挙げられる。
【0012】
フルオレセイン系染料に属する色素としては、具体的には9−オルト−カルボキシフェニル−6−ヒドロキシ−3−イソキサントン、即ちフルオレッセインのジアルカリ金属塩(ウラニン又はウラニンK)、9−オルト−カルボキシフェニル−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラブロム−3−イソキサントンのジアルカリ金属塩(エオシンYS又はエオシンYSK)、9−オルト−カルボキシフェニル−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラヨード−3−イソキサントンのジアルカリ金属塩(エリスロシン等)、9−オルト−カルボキシフェニル−6−ヒドロキシ−4,5−ジヨード−3−イソキサントンのジアルカリ金属塩(エオシン黄NA)、9−(3,4,5,6−テトラクロル−オルト−カルボキシフェニル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラブロム−3−イソキサン
トンのジアルカリ金属塩(フロキシンB、フロキシンBK)、9−(3,4,5,6−テトラクロル−オルト−カルボキシフェニル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラヨード−3−イソキサントンのジアルカリ金属塩(ローズベンガル、ローズベンガルK)等が例示される。尚、ここでアルカリ金属塩としては好適にはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0013】
フルオレセイン系染料に属する色素として好ましくは、9−オルト−カルボキシフェニル−6−ヒドロキシ−3−イソキサントンのジナトリウム塩(ウラニン)、またはそのジカリウム塩(ウラニンK)等が例示される。
【0014】
ローダミン系染料に属する色素としては、具体的には9−(4’−スルホ−2’−スルホニウムフェニル)−6−ジエチルアミノ−3−(N,N−ジエチルイミノ)−3−イソキサンテンのモノナトリウム塩(アシッドレッド)等が例示される。好ましくは9−(4’−スルホ−2’−スルホニウムフェニル)−6−ジエチルアミノ−3−(N,N−ジエチルイミノ)−3−イソキサンテンのモノナトリウム塩(アシッドレッド)である。
【0015】
トリフェニルメタン系染料としても特に制限はないが、好ましくはフタリド型のフタレイン系染料であり、例えば3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタリド〔フェノールフタレイン〕、チモールスルホンフタレイン等が挙げられる。
【0016】
また本発明で用いられる香料も特に制限されず、一般に食品、医薬品、化粧品、医薬部外品、家庭用品の分野で使用されているものを広く挙げることができる。これらの香料を大まかに分類すると、例えばアルコール系、アルデヒド系、エステル系、オキサイド系、ケトン系、炭化水素系、アセタール系、ラクトン系、アルデヒド系乃至フェノール系のそれぞれに属する香料又は天然香料を挙げることができる。
【0017】
更に詳細には、アルコール系に属する香料は1級アルコール系、2級アルコール系又は3級アルコール系、ないしは芳香族アルコール系又は脂肪族アルコール系、さらにはオキサイド系に分類することができる。またラクトン系香料はδ−ラクトン系又はγ−ラクトン系に、アルデヒド系香料は直鎖脂肪族アルデヒド系又は芳香族アルデヒド系に分類することができる。
【0018】
各系統に属する、より具体的な香料としては、表1〜表5に掲げる化合物を例示することができる。
【0019】
本発明は、前述するカルボニウム染料に上記の各種香料を2種以上配合、混合してなる組成物であって、混合してから24時間後の25℃での組成物の粘度が大きくとも500cP程度であることを特徴とする低粘度組成物である。
【0020】
組成物の粘度は上記条件下において前述するように500cP程度以下であれば特に制限されないが、好ましくは、300cP程度以下であり、より好ましくは混合してから5日後においても25℃での粘度が大きくても500cP程度、好適には300cP程度以下である。なお、粘度は、回転粘度計(例えば、B型粘度計、回転数60rpm程度)で測定することができる。
【0021】
カルボニウム染料と配合する2種以上の香料としては、上に挙げる各種の香料の中から任意に選択採用することができるが、好ましい組み合わせとしては、下記の(1)〜(3)の態様のものを例示することができる。
【0022】
(1) フェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系,アルデヒド系及びラクトン系からなる群、好ましくはフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系及びアルデヒド系からなる群から選択される少なくとも一種と炭化水素系香料との組み合わせ、
(2) 1級アルコール系,アルデヒド系,フェノール系及びラクトン系からなる群、好ましくは1級アルコール系及びアルデヒド系からなる群から選択される少なくとも一種と天然香料との組み合わせ、
(3) エステル系,3級アルコール系,アルデヒド系,オキサイド系,ケトン系及びアセタール系からなる群、好ましくはエステル系,3級アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択される少なくとも一種と1級アルコール系香料との組み合わせ。
【0023】
以下、各態様について説明する。
(1)の態様の組み合わせ
ここで用いられる炭素水素系香料としては、特に制限されないが、炭素数10〜20の直鎖状または分枝状の脂肪族炭化水素(飽和、不飽和を問わない)、ピネン(α体、β体)、リモネン(d体、dl体)、テルピネン(α体、β体、γ体)、ロンギホレン(longifolene)が挙げられる。好ましくはα−ピネン、d−リモネン、炭素数10〜20の分枝状飽和脂肪族炭化水素である。
【0024】
またここで挙げるフェノール系、1級アルコール系、低級芳香族アルコール系、アルデヒド系及びラクトン系の香料はいずれもそれら単独では、カルボニウム染料に配合した場合に組成物の粘度が上昇してしまうものであり、この性質を有するものであれば特に制限はされない。
【0025】
具体的には、例えばフェノール系の香料としては、オイゲノール、イソオイゲノール等を挙げることができる。
【0026】
また1級アルコール系の香料としては、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、シトロネロール(α体、β体)、ネロール、トランス−2−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、炭素数6〜12の直鎖状の脂肪族アルコール、炭素数8〜15の分枝状の脂肪族アルコール、ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコール,フェニルプロピルアルコール,シンナミルアルコール又はアニスアルコール等の芳香族アルコール、3−メトキシ−3−メチル−ブタノール又はジエチレングリコールモノエチルエーテル等のオキサイドが挙げられる。好ましくは、シトロネロール、3−メトキシ−3−メチル−ブタノール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコールである。
【0027】
低級芳香族アルコール系の香料としては、スチラリルアルコール(styrallyl alcohol)等の2級芳香族アルコール、ジメチルベンジルカルビノールまたはジメチルフェニルエチルカルビノール等の3級芳香族アルコールが例示される。
【0028】
アルデヒド系の香料としては、n−オクチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド、並びにベンズアルデヒド,フェニルアセトアルデヒド,アニスアルデヒド,シンナムアルデヒド,シクラメンアルデヒド(cyclamen aldehyde),リリアール(lilial),ピペロニルプロパナール等の芳香族アルデヒドが例示される。
【0029】
ラクトン系の香料としては、γ−又はδ−オクタラクトン、γ−又はδ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、ジャスモラクトン及びジャスミンラクトンが例示される。好ましくはδ型のラクトン、ジャスモラクトン及びジャスミンラクトンである。
【0030】
なお、上述するフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系,アルデヒド系及びラクトン系に属する香料、好ましくはフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系及びアルデヒド系に属する香料はそれら単独で炭化水素系香料に配合することもできるが、それらを任意に2種以上組み合わせて炭化水素系香料に配合することもできる。
【0031】
また、各種香料の配合割合は、それらをカルボニウム染料に配合した場合に粘度が増加しないようなものであれば特に制限されないが、通常全香料100重量部あたりに炭化水素系香料が少なくとも30重量部、好ましくは50重量部以上含まれるような割合を挙げることができる。
【0032】
具体的にはフェノール系、ラクトン系並びにトランス−2−ヘキセノール,シス−3−ヘキセノール,ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコール,フェニルプロピルアルコール,シンナミルアルコール又はアニスアルコール,3−メトキシ−3−メチル−ブタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの1級アルコール系の香料の場合は、炭化水素系香料が少なくとも80重量部、好ましくは90重量部以上含まれるように調製するのが望ましく;またアルデヒド系香料の場合は炭化水素系香料が少なくとも50重量部、好ましくは70重量部以上含まれるように調製するのが望ましく;さらにゲラニオール,テトラヒドロゲラニオール,シトロネロール(α体、β体),ネロール,2−エチルヘキサノール,3,3,5−トリメチルヘキサノール,2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール,炭素数6〜12の直鎖状の脂肪族アルコール,炭素数8〜15の分枝状の脂肪族アルコール等の1級アルコール系香料並びにスチラリルアルコール,ジメチルベンジルカルビノール,ジメチルフェニルエチルカルビノール等の低級芳香族アルコール系香料の場合は炭化水素系香料が少なくとも30重量部、好ましくは50重量部以上含まれるように調製することが望ましい。
【0033】
(2)の態様の組み合わせ
ここで用いられる天然香料としては、特に制限されなることなく天然に由来する種々の香料が挙げられるが、具体的にはアニス油、アルモイス油(armoise oil)、バジル油、ベルガモット油、ボイス・デ・ローズ油(bois de rose oil)、しょうのう油、セダーウッド油、シトロネラ油、クラリィ・セージ油(clary sage oil)、コリアンダー油、ユーカリプトス油(eucalyptus oil)、ガルバヌム油(galbanum oil) 、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ヒバ油(hiba oil)、ヒノキ油、ホ・リーフ油(ho leaf oil)、ジュニペルベリー油(juniperberry oil)、ラバンディン油(lavandin oil)、ラベンダー油、レモングラス油、ライム油(lime oil dist)、マルジョラム油(marjoram oil)、オリバナム油(olibanum oil)、パチュウリ油(patchouli oil)、ペパーミント油、ペチグレン油(petitgrain oil)、松葉油(pine needle oil)、スペアミント油、タイム油
(thyme red oil)、テレビン油、イランイラン油(ylang ylang oil)、レモン油、マンダリン油、オレンジ油等が例示される。好ましくはユーカリプトス油、ライム油(lime oil dist)、オレンジ油である。
【0034】
1級アルコール系、アルデヒド系、フェノール系及びラクトン系の香料としては、いずれもそれら単独ではカルボニウム染料に配合した場合に組成物の粘度が上昇してしまうものを挙げることができ、前述の(1)に掲げたものが同様に例示できる。好ましくは1級アルコール系及びアルデヒド系の香料であり、中でもフェニルエチルアルコール及びn−オクチルアルデヒドを好適に例示することができる。
【0035】
なお、上述する1級アルコール系、アルデヒド系、フェノール系及びラクトン系の香料は各々それら単独で天然香料に配合することもできるが、それらを任意に2種以上組み合わせて天然香料に配合することもできる。
【0036】
また、各種香料の配合割合は、それらをカルボニウム染料に配合した場合に粘度が増加しないようなものであれば特に制限されないが、通常全香料100重量部あたり天然香料が少なくとも50重量部、好ましくは70重量部以上含まれるような割合が挙げられる。
【0037】
具体的にはトランス−2−ヘキセノール,シス−3−ヘキセノール,ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコール,フェニルプロピルアルコール,シンナミルアルコール又はアニスアルコール,3−メトキシ−3−メチル−ブタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの1級アルコール系の香料の場合は、天然香料が少なくとも80重量部、好ましくは90重量部以上含まれるように調製するのが望ましく;またアルデヒド系香料の場合は天然香料が少なくとも50重量部、好ましくは70重量部以上含まれるように調製するのが望ましく;さらにゲラニオール,テトラヒドロゲラニオール,シトロネロール(α体、β体),ネロール,2−エチルヘキサノール,3,3,5−トリメチルヘキサノール,2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール,炭素数6〜12の直
鎖状の脂肪族アルコール,炭素数8〜15の分枝状の脂肪族アルコール等の1級アルコール系香料の場合は天然香料が少なくとも30重量部、好ましくは50重量部以上含まれるように調製することが好ましい。
【0038】
(3)の態様の組み合わせ
ここで用いられる1級アルコール系香料としては、その単品をカルボニウム染料に配合した場合に組成物の粘度を上昇させてしてしまうものが挙げられ、具体的には、前述の(1)で掲げたものが例示される。好ましくはトランス−2−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノール、ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコール,フェニルプロピルアルコール,シンナミルアルコール及びアニスアルコール等の芳香族アルコール、3−メトキシ−3−メチル−ブタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテル等のオキサイドであり、特に芳香族アルコール、オキサイドを好適に挙げることができる。
【0039】
またここで挙げられるエステル系,3級アルコール系,アルデヒド系,オキサイド系,ケトン系及びアセタール系の香料としては、本発明が対象とするカルボニウム染料と相溶性が低いもの、具体的にはそれら単独をカルボニウム染料に配合した場合に該組成物の粘度を上昇させないか、上昇させてもわずかであるようなものが挙げられる。好ましくは、エステル系,3級アルコール系,アルデヒド系の香料である。
【0040】
より具体的にはこのようなエステル系香料しては、3,5,5−トリメチルヘキシルアセテート、アニシルアセテート、ベンジルアセテート、ベンジルベンゾエート、シトロネリルアセテート、ジエチルフタレート、ジヒドロテルピニルアセテート、ゲラニルアセテート、イソアミルアセテート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、メチルアントラニレート、メチルジヒドロジャスモネート、ノピルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、フェニルエチルアセテート、テルピニルアセテート、トリシクロデセニルアセテートが例示される。好ましくは、ベンジルアセテート、シトロネリルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、フェニルエチルアセテートである。
【0041】
また3級アルコール系香料としては、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、ジヒドロミルセノール(dihydromyrcenol)、リナロール、テルピネオール、ミルセノール、テトラヒドロリナロールが挙げられる。好ましくはテルピネオールである。
【0042】
アルデヒド系香料としては、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルビキシアルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラール、イソシクロシトラール、シトロネラール(d体,α体)等が例示される。好ましくはシトラール、シトロネラールである。
【0043】
オキサイド系香料としては、1,8-シネオール、アネトール、アニソール、ジフェニルオキサイド、フェニルエチルイソアミルエーテル及びローズオキサイドを例示することができる。
【0044】
ケトン系香料としては、2−オクタノン、アセトフェノン、アセチルセドレン、アニシルアセトン、カルボン、シス−ジャスモン、ダマスコン、イオノン、メントン、メチルヘプテノン及びメチルイオノンを例示することができる。
【0045】
アセタール系香料としては、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルエチルアセタール、シトラール及びフェニルアセトアルデヒドを例示することができる。
【0046】
なお、上述するエステル系,3級アルコール系,アルデヒド系,オキサイド系,ケトン系及びアセタール系に属する香料はそれら各々単独で1級アルコール系香料に配合することもできるが、それらを任意に2種以上組み合わせて1級アルコール系香料に配合することもできる。
【0047】
また、各種香料の配合割合は、それらをカルボニウム染料に配合した場合に粘度が増加しないようなものであれば特に制限されないが、例えば1級アルコール系香料としてゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、シトロネロール(α体、β体)、ネロール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、炭素数6〜12の直鎖状の脂肪族アルコール及び炭素数8〜15の分枝状の脂肪族アルコールのいずれかを用いる場合は、通常全香料100重量部あたりにエステル系,3級アルコール系,アルデヒド系,オキサイド系,ケトン系及びアセタール系に属する香料から選択される香料がそれらの総量として少なくとも50重量部、好ましくは70重量部以上含まれるように調製されることが望ましく;また1級アル
コール系香料としてトランス−2−ヘキセノール,シス−3−ヘキセノール,ベンジルアルコール,フェニルエチルアルコール,フェニルプロピルアルコール,シンナミルアルコール,アニスアルコール,3−メトキシ−3−メチル−ブタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルのいずれかを用いる場合は、通常全香料100重量部あたりにエステル系,3級アルコール系,アルデヒド系,オキサイド系,ケトン系及びアセタール系に属する香料から選択される香料がそれらの総量として少なくとも80重量部、好ましくは90重量部以上含まれるように調製されることが好ましい。
【0048】
本発明の色素及び香料含有低粘度組成物は、上記色素及び香料を配合し、25℃における粘度が前述のように、500cP程度以下であるものであれば、その配合組成等によって特に制限されるものではないが、通常香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部程度、好ましくは30〜70重量部程度の範囲で含むものが望ましい。
【0049】
本発明で開示する組み合わせからなる色素及び香料の混合組成物によれば、色素と香料とを単純に混合した場合でも該組成物の粘度を増加させることがないので、製造に際して高価な高粘度対応攪拌機を採用する必要がなく、また従来粘度増加のために攪拌に時間や手間がかかっていたのを軽減することができる。また、本発明によれば、粘度低減剤が不要のため組成物は該剤の添加による物性変化等の影響を受けることなく、また経時的な粘度上昇等の物性変化を追跡しそれをコントロールする労力を低減することができるといった点でも有用である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例及び参考例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例に何ら限定されるものではない。
参考例
表1〜5に列挙する各種の香料を用いて、これらの香料単品をカルボニウム染料に配合した場合の組成物の粘度の上昇度合いを評価した。
【0051】
具体的には、容量40mlの広口透明ガラス瓶にフルオレセインナトリウム(ウラニン:住友化学工業(株)(三国)製)3gを入れ、これに各種香料10gを加えて栓をしてよく振って攪拌した後、25℃で放置した際の24時間後及び5日後の組成物の粘度上昇の割合を調べた。尚、組成物の粘度は、B型粘度計(回転数60rpm、No.2又はNo.3のローター使用)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
【0052】
○:組成物の粘度が300cP未満
△:組成物の粘度が300cP以上500cP未満
×:組成物の粘度が500cP以上(測定不能の場合を含む)
結果を表1〜表5に併せて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
これらの結果から、相溶性の高いもの、物性的には水溶性の高い香料ほど、カルボニウム系染料に配合した場合に該組成物の粘度を上昇させる傾向が強く、また構造的には下記の傾向が認められた。
【0059】
高 ← 粘度上昇 → 低
アルコール系香料: 1級 > 2級 > 3級
ラクトン系香料 : δ系 > γ系
アルコール系香料: 芳香族 > 脂肪族
アルデヒド系香料: 直鎖脂肪族 > 芳香族。
【0060】
また、グリコール系又はフェノール系に属する香料は、カルボニウム系染料との関係で粘度上昇の傾向が著しく強く、一方、炭化水素系、エステル系、ケトン系、アセタール系香料は粘度の上昇を起こさないことが判明した。
【0061】
実施例1
容量40mlの広口透明ガラス瓶にフルオレセインナトリウム(ウラニン:住友化学工業(株)(三国)製)3gを入れ、これに表6〜13に示す各種組み合わせ、配合割合からなる香料を10g加えて栓をしてよく振って攪拌した後、25℃で放置した際の24時間後及び5日後の組成物の粘度上昇の割合を調べた。
尚、組成物の粘度の測定及び評価は、参考例に記載する方法に従った。結果を表6〜表13に併せて示す。
【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
【表11】

【0068】
【表12】

【0069】
【表13】

【0070】
なお、表中の総合評価において、問題なく使用できるものを○をして表示する。これらの結果から、参考例で示した評価×、△の香料であっても、評価○の香料と組み合わせることによって粘度の上昇を抑えた組成物を調製することができることが分かる。特に評価○の香料のうち、粘度抑制効果に優れているのは炭化水素系香料である。評価が△または×の香料とともに、30%程度の当該炭化水素系香料と組み合わせることで粘度の上昇を有意に抑制して使用することが可能となる。
【0071】
一方、ジプロピレングリコールなどのようなグリコール系の香料は、他の香料と組み合わせても粘度上昇を抑えることはできず、少なくともフルオレセインナトリウムとは組み合わせて使用できなかった(データ示さず)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、混合24時間後の25℃における組成物の粘度が、500cP以下であることを特徴とする低粘度組成物。
【請求項2】
カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料がフェノール系,1級アルコール系,低級芳香族アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択されるいずれか少なくとも一種と炭化水素系香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする請求項1記載の低粘度組成物。
【請求項3】
カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料が1級アルコール系またはアルデヒド系に属する香料の少なくとも一種と天然香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする請求項1記載の低粘度組成物。
【請求項4】
カルボニウム染料と二種以上の香料を含有する組成物であって、当該香料がエステル系,3級アルコール系及びアルデヒド系に属する香料からなる群から選択される少なくとも一種と1級アルコール系香料との組み合わせからなるものであることを特徴とする請求項1記載の低粘度組成物。
【請求項5】
カルボニウム染料が、キサンテン染料又はトリフェニルメタン系染料に属するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の色素及び香料含有低粘度組成物。
【請求項6】
キサンテン染料がフルオレセン系若しくはローダミン系に属する染料であり、またトリフェニルメタン系染料がフタレイン系に属するものであることを特徴とする請求項5記載の色素及び香料含有低粘度組成物。
【請求項7】
香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれる炭化水素系香料が少なくとも30重量部であることを特徴とする請求項1、2、5又は6のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。
【請求項8】
香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれる天然香料が少なくとも50重量部であることを特徴とする請求項1、3、5又は6のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。
【請求項9】
香料100重量部に対してカルボニウム染料を20〜100重量部の割合で含む組成物であって、香料100重量部に含まれるエステル系,3級アルコール系及びアルデヒド系に属する香料の割合が総量として50重量部であることを特徴とする請求項1、4、5又は6のいずれかに記載される色素及び香料含有低粘度組成物。

【公開番号】特開2006−28527(P2006−28527A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257115(P2005−257115)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【分割の表示】特願平10−362892の分割
【原出願日】平成10年12月21日(1998.12.21)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】