説明

色素増感型太陽電池用封止剤及び色素増感型太陽電池

【課題】封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる色素増感型太陽電池用封止剤を提供する。また、該色素増感型太陽電池用封止剤を用いて製造される色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する色素増感型太陽電池用封止剤であって、前記カチオン重合性化合物は、主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を10〜50重量%、及び、下記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂を5〜30重量%含有する色素増感型太陽電池用封止剤。
〔化1〕


式(1)中、Xは、O、S、CH、又は、C(CHを表し、nは5以上の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる色素増感型太陽電池用封止剤に関する。また、本発明は、該色素増感型太陽電池用封止剤を用いて製造される色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池等の光電池として、シリコン半導体を用いたp−n接合の光電池が広く使用されている。光電池に用いるシリコン半導体は、光電池の光電変換効率を上げるために、高度に純粋で、かつ、高い規則性を有すものでなければならない。しかし、シリコン半導体及び光電池を製造するには多大のエネルギーを必要とし、製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
近年、色素が担持されたTiO等の半導体膜付き透明導電基板と対向電極基板との間に電解液を封入した色素増感型太陽電池が開発された。色素増感型太陽電池は、太陽光の変換効率が比較的高いことから、次世代の太陽電池として注目されている。
【0004】
色素増感型太陽電池は、具体的には例えば、図1に示すように、絶縁基板としてのガラス基板1上に透明電極層2を形成し、電極層2上に光増感色素4を吸着した半導体層3を形成してなる電極基板を作用電極とし、対電極として絶縁基板1’に透明電極層2’を形成してなる電極基板を用い、これらの電極間に電解液5を封入して作製される。電解液5としては、ヨウ素を含むレドックス系電解液が主流である。
例えば、特許文献1には、多孔質で多結晶型の酸化チタン等の金属酸化物からなる半導体に、ルテニウム金属錯体等の光増感色素を吸着させた材料を用いた色素増感型太陽電池が開示されている。
【0005】
色素増感型太陽電池において電解液を封入する際には、通常、封止剤が用いられる。色素増感型太陽電池に用いる封止剤には、特に、基板に強固に密着して電解液の漏れを防止する接着性や、外部から水分が浸入するのを防止する耐湿性が求められる(以下、これらの性能を「封止性」ともいう。)。しかしながら、従来のエチレン−メタクリル酸共重合アイオノマー樹脂等からなる封止剤を用いると、ヨウ素が封止剤に染み込み、封止剤とヨウ素とが反応して接着力が低下したり、電解液中のヨウ素の濃度が低下したりするという問題があった。そのため、封止性と耐ヨウ素染色性とを備える色素増感型太陽電池用封止剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる色素増感型太陽電池用封止剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該色素増感型太陽電池用封止剤を用いて製造される色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する色素増感型太陽電池用封止剤であって、上記カチオン重合性化合物は、主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を10〜50重量%、及び、下記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂を5〜30重量%含有する色素増感型太陽電池用封止剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、Xは、O、S、CH、又は、C(CHを表し、nは5以上の整数を示す。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を特定量含有するカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有する封止剤は、極めて耐ヨウ素染色性に優れることを見出した。このような封止剤を用いれば、ヨウ素を含むレドックス系電解液を封止した場合でも電解液の漏出及びヨウ素の染み込みを抑制することができ、極めて耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
また、封止剤の凝集力が弱い場合には封止剤と被着体の界面の接着力が強くても、封止剤自体が応力によって破壊(凝集破壊)されるため、結果的に接着力は弱くなる。本発明者は、カチオン重合性化合物として、更に、特定のフェノキシ樹脂を配合することによって封止剤の凝集力を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、カチオン重合性化合物を含有する。
上記カチオン重合性化合物は、主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を含有する。
主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を含有することにより、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる。
【0013】
上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物は特に限定されないが、下記一般式(2)で示される構造を有することが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
式(2)中、nは1〜12の整数を示す。
【0016】
上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物は、具体的には例えば、ジ{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物のうち、市販されているものとしては、例えば、アロンオキセタンOXT−221(東亞合成社製)等が挙げられる。
【0018】
上記カチオン重合性化合物における上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物の含有量の下限は10重量%、上限は50重量%である。上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物の含有量が10重量%未満であると、水分の侵入を防止し、電解液の漏出やヨウ素の染み込みを抑制する効果が充分に得られず、得られる色素増感型太陽電池が耐久性に劣るものとなる。上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物の含有量が50重量%を超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の粘度が低くなり、塗工した際に形状を維持できなくなったり、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物のガラス転移温度が低くなり、色素増感型太陽電池に用いた場合、加熱した際にヨウ素や溶剤が漏出する。上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物の含有量の好ましい下限は15重量%、好ましい上限は45重量%であり、より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0019】
上記カチオン重合性化合物は、上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂を含有する。
上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂を含有することにより、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の凝集力を向上させることができる。
【0020】
上記一般式(1)中、nは5以上の整数を示す。上記一般式(1)におけるnが4以下であると、封止剤の凝集力を向上させる効果が充分に得られない。上記一般式(1)におけるnが大きすぎると、封止剤中に溶解させることが難しく、常温で結晶化して接着力等が悪くなるため、好ましい上限は300、より好ましい上限は30である。
【0021】
上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、jER 4250、jER 4275(いずれも、一般式(1)においてXがCHのものと、一般式(1)においてXがC(CHのものとの混合物、三菱化学社製)等が挙げられる。
【0022】
上記カチオン重合性化合物における上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂の含有量の下限は5重量%、上限は30重量%である。上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂の含有量が5重量%未満であると、得られる封止剤の凝集力を向上させる効果が充分に得られない。上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂の含有量が30重量%を超えると、該フェノキシ樹脂を溶解させるために高温にて長時間加熱する工程が必要になったり、溶解した場合でも室温に戻した後に結晶化して不均一になり、得られる封止剤の凝集力を向上させる効果が充分に得られなかったりする。上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。
【0023】
上記カチオン重合性化合物に含有される、上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物、及び、上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂以外の成分は特に限定されないが、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の粘度、及び、硬化物のガラス転移温度を向上させることができることから、繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物が好適である。
【0024】
上記繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物は特に限定されないが、下記一般式(3−1)、(3−2)、及び、(3−3)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好適である。
【0025】
【化3】

【0026】
式(3−1)中、nは0〜20の整数を表し、R及びRは、水素、又は、直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。
式(3−2)中、nは0〜20の整数を表し、R〜R10は、水素、又は、直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。
式(3−3)中、nは0〜20の整数を表す。
【0027】
上記繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物としては、例えば、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち市販されているものとしては、例えば、YX−8000(水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、YX−6753(水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、YL−6800(水素化ビフェニル型エポキシ樹脂)(以上、いずれも三菱化学社製)、アデカレジンEP−4088(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0028】
上記カチオン重合性化合物における上記繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物の含有量の好ましい上限は80重量%である。上記繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物の含有量が80重量%を超えると、耐ヨウ素染色性が低下することがある。
【0029】
上記カチオン重合性化合物は、水酸基を有するエポキシ化合物又は水酸基を有するオキセタン化合物を含有してもよい。上記水酸基を有するエポキシ化合物又は上記水酸基を有するオキセタン化合物を含有することにより、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤はより高い接着性を発揮することができる。
なお、上記水酸基を有するエポキシ化合物には上記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂は含まず、上記水酸基を有するオキセタン化合物には上記主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物は含まない。
【0030】
上記水酸基を有するエポキシ化合物又は上記水酸基を有するオキセタン化合物は特に限定はされないが、例えば、グリシドール、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。なかでも、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好適である。
上記水酸基を有するエポキシ化合物又は上記水酸基を有するオキセタン化合物のうち市販されているものは、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンとしてエタナコールEHO(宇部興産社製)、アロンオキセタンOXT−101(東亞合成社製)等が挙げられる。
【0031】
上記カチオン重合性化合物における上記水酸基を有するエポキシ化合物及び上記水酸基を有するオキセタン化合物の含有量の合計の好ましい上限は30重量%である。上記水酸基を有するエポキシ化合物及び上記水酸基を有するオキセタン化合物の含有量の合計が30重量%を超えると、得られる封止剤が耐湿性に劣るものとなることがある。
【0032】
上記カチオン重合性化合物は、更に、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物又はシリコーン骨格を有するオキセタン化合物を含有してもよい。上記シリコーン骨格を有するエポキシ化合物又は上記シリコーン骨格を有するオキセタン化合物を含有することにより、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は耐ヨウ素染色性を発揮することができる。
【0033】
上記シリコーン骨格を有するエポキシ化合物又は上記シリコーン骨格を有するオキセタン化合物は特に限定されないが、下記一般式(4)で示される反応性シリコーン化合物であることが好適である。
【0034】
【化4】

【0035】
式(4)中、l及びmは0以上の整数を表し、l+m=1〜100であり、nは1〜100の整数を表し、R11〜R17は、水素、メチル基、又は、エチル基を表す。R18〜R21は、少なくとも1つが下記一般式(5)より選択される反応性基である。R18〜R21のうち、下記一般式(5)より選択される反応性基以外のものは、水素、メチル基、又は、エチル基を表す。
【0036】
【化5】

【0037】
式(5)中、R22は、下記一般式(6−1)、(6−2)、及び、(6−3)からなる群より選択されるいずれか1種の構造を表し、R23は、水素、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表す。
【0038】
【化6】

【0039】
式(6−1)中、qは1〜3の整数を表し、式(6−2)中、rは1〜3の整数を表し、式(6−3)中、R24及びR25は、水素又はメチル基を表し、Aは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環を表す。
【0040】
上記シリコーン骨格を有するエポキシ化合物又は上記シリコーン骨格を有するオキセタン化合物のうち市販されているものは、例えば、OX−SC(オキセタンシリケート)、OX−SQ(オキセタン変性シルセスキオキサン)(以上、いずれも東亞合成社製)、X−22−3000T(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0041】
上記カチオン重合性化合物における上記シリコーン骨格を有するエポキシ化合物及び上記シリコーン骨格を有するオキセタン化合物の含有量の合計の好ましい上限は50重量%である。上記シリコーン骨格を有するエポキシ化合物及び上記シリコーン骨格を有するオキセタン化合物の含有量の合計が50重量%を超えると、得られる封止剤が耐湿性に劣るものとなることがある。
【0042】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、カチオン重合開始剤を含有する。
上記カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0043】
上記カチオン重合開始剤は特に限定されず、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。
上記ヨードニウム塩は特に限定されず、例えば、(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記スルホニウム塩は特に限定されず、例えば、ジフェニル−4−チオフェニルスルホニウム−ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0044】
上記カチオン重合開始剤のうち、市販されているものとしては、RP2074(ローディア社製)、SP−170(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0045】
上記カチオン重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記カチオン重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、カチオン重合性化合物のカチオン重合が充分に進行しなかったり、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応が遅くなりすぎたりすることがある。上記カチオン重合開始剤の含有量が10重量部を超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応が速くなりすぎて、作業性が低下したり、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物が不均一となったりすることがある。上記カチオン重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0046】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、更に、充填剤を含有することが好ましい。
上記充填剤を含有することにより、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性や接着性が向上し、かつ、硬化収縮率及び熱膨張率を小さくすることができる。
【0047】
上記充填剤は特に限定されず、例えば、粉体、無機中空体、有機球状体、有機中空体、単繊維等が挙げられる。
上記粉体は特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等が挙げられる。
上記無機中空体は特に限定されず、例えば、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等が挙げられる。
上記有機球状体は特に限定されず、例えば、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ、フッ素樹脂ビーズ等が挙げられる。
上記有機中空体は特に限定されず、例えば、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーン等が挙げられる。
上記単繊維は特に限定されず、例えば、ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、セルロース等が挙げられる。
【0048】
なかでも、上記充填剤としては、平板状の無機粉体が好適である。上記平板状の無機粉体からなる充填剤を含有することにより、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤はより高い耐湿性を発揮することができる。
上記平板状の無機粉体を構成する材料としては、例えば、アルミナ、タルク、マイカ等が挙げられる。
なお、本明細書において上記平板状の無機粉体とは、長径(a)と短径(b)との比(a/b)の平均値が10以下、かつ、長径(a)と厚さ(c)との比(a/c)の平均値が10以上である無機粉体を意味する。
【0049】
上記充填剤の(a/b)の平均値が10を超えると、上記充填剤が棒状や繊維状に近くなり、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性が不充分となることがある。上記充填剤の(a/b)の平均値の好ましい上限は5である。
上記充填剤の(a/c)の平均値が10未満であると、上記充填剤が球形や立方体に近くなり、やはり本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性が不充分となることがある。上記充填剤の(a/c)の平均値の好ましい下限は12である。
更に、このような充填剤は、上述した本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性を向上させる効果のほか、接着力や揺変性付与等にも効果がある。
なお、上記充填剤の長径(a)と短径(b)との比(a/b)の平均値、及び、長径(a)と厚さ(c)との比(a/c)の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定することができる。
【0050】
上記充填剤は、マイクロトラック法により測定した平均粒子径の下限が1μm、上限が50μmであることが好ましい。上記充填剤のマイクロトラック法により測定した平均粒子径が1μm未満であると、粒子径が小さくなりすぎ、その形状が球形に近くなり、得られる封止剤の耐湿性が不充分となることがある。上記充填剤のマイクロトラック法により測定した平均粒子径が50μmを超えると、得られる封止剤において充填剤同士が邪魔をしあって、均一に分散されず得られる封止剤の耐湿性が低下することがある。上記充填剤のマイクロトラック法により測定した平均粒子径の好ましい上限は30μmである。
【0051】
上記充填剤は、表面未処理のもの、表面処理したもののいずれも使用することができる。上記表面処理した充填剤としては、例えば、メトキシ基化、トリメチルシリル基化、オクチルシリル基化、又は、シリコーンオイルで表面処理したもの等が挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記充填剤の含有量は特に限定されないが、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限は0.3重量部、好ましい上限は100重量部である。上記充填剤の含有量が0.3重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性や接着性を向上させたり、硬化収縮及び熱膨張率等を小さくさせたりする効果が充分に得られないことがある。上記充填剤の含有量が100重量部を超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応が遅くなりすぎることがある。上記充填剤の含有量のより好ましい上限は3重量部である。
【0053】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の高湿度環境下における接着性を向上させることができる。
【0054】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限は0.3重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.3重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の耐湿性や接着性、硬化収縮及び熱膨張率等を改善する効果が充分に得られないことがある。上記シランカップリング剤の含有量が10重量部を超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応が遅くなりすぎることがある。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0056】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、更に、硬化遅延剤を含有することが好ましい。
上記硬化遅延剤は、上記カチオン重合性化合物の光カチオン重合反応を阻害する機能を有することから、得られる色素増感型太陽電池用封止剤は優れた光後硬化性を有するものとなって、光照射後の使用可能時間を任意に制御することができる。このことによって色素増感型太陽電池の基板として金属板等の遮光性基板を用いることができ、基板選択の自由度が大きくなる。
【0057】
上記硬化遅延剤は特に限定されず、例えば、エーテル骨格を有する化合物、水酸基を有する脂肪族炭化水素等が挙げられ、なかでも、上記カチオン重合性化合物の光カチオン重合反応を阻害する機能が優れることから、エーテル骨格を有する化合物が好適に用いられる。これらの硬化遅延剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
上記エーテル骨格を有する化合物は特に限定されず、例えば、ポリアルキレンオキシド、クラウンエーテル、ポリアルキレンオキシド付加ビスフェノール誘導体等が挙げられる。
【0059】
上記ポリアルキレンオキシドは特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
これらのエーテル骨格を有する化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
上記ポリアルキレンオキシドの末端は特に限定されず、水酸基であってもよいし、他の化合物によりエーテル化やエステル化されていてもよいし、エポキシ基等の官能基であってもよい。なかでも、上記カチオン重合性化合物との反応性を有することから、上記ポリアルキレンオキシドの末端は水酸基又はエポキシ基であることが好適である。
【0061】
上記クラウンエーテルは特に限定されず、例えば、18−クラウン−6、15−クラウン−5、12−クラウン−4等が挙げられる。
【0062】
上記ポリアルキレンオキシド付加ビスフェノール誘導体は特に限定されないが、末端に水酸基又はエポキシ基を有する化合物が好適である。上記ポリアルキレンオキシド付加ビスフェノール誘導体のうち市販されているものとしては特に限定されず、例えば、新日本理化社製の商品名「リカレジンBPO−20E」、「リカレジンBEO−60E」、「リカレジンPO−20」等の「リカレジン」シリーズ等が挙げられる。
【0063】
上記水酸基を有する脂肪族炭化水素は特に限定されず、例えば、グリセリンやペンタエリスリトール等の多官能水酸基含有化合物等が挙げられる。これらの水酸基を有する脂肪族炭化水素は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
上記硬化遅延剤の含有量は、要求される光照射後の使用可能時間に対応して適宜設定することができ、特に限定されないが、上記カチオン重合性化合物100重量部に対し、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記硬化遅延剤の含有量が0.1重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の使用可能時間が不充分となることがある。上記硬化遅延剤の含有量が10重量部を超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応が遅くなりすぎることがある。上記硬化遅延剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0065】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、更に、光増感剤を含有することが好ましい。上記光増感剤は、上記光カチオン重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0066】
上記光増感剤は特に限定されず、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0067】
上記光増感剤の含有量は特に限定されないが、上記光カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限は0.03重量部、好ましい上限は2重量部である。上記光増感剤の含有量が0.03重量部未満であると、増感効果が充分に得られないことがある。上記光増感剤の含有量が2重量部を超えると、吸収が大きくなりすぎて深部まで光が伝わらないことがある。上記光増感剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0068】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤は、更に、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、酸化防止剤、光安定剤等の、色素増感型太陽電池用封止剤に用いられる添加剤を含有してもよい。
【0069】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上記カチオン重合性化合物、上記光カチオン重合開始剤、及び、必要に応じて添加する添加剤を混合する方法等が挙げられる。
【0070】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の粘度は特に限定されないが、好ましい下限は100mPa・s、好ましい上限は500Pa・sである。上記粘度が100mPa・s未満であると、塗工した色素増感型太陽電池用封止剤が形状を維持できなくなることがある。上記粘度が500Pa・sを超えると、均一に塗工できないことがある。上記粘度のより好ましい下限は500mPa・s、より好ましい上限は300Pa・sである。
【0071】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を基板等に塗工した後、光を照射することにより硬化反応が進行し、基板等の接着及び電解液の封入を行うことができる。
【0072】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を塗工する方法は特に限定されず、例えば、ディスペンサー、ロールコーター、ダイコーター等の塗工機やスクリーン印刷機等の印刷機を用いて行うことができる。
【0073】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤に光を照射するための光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの光源の選択に際しては、上記カチオン重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0074】
上記色素増感型太陽電池用封止剤に照射する光の波長は特に限定されないが、好ましい下限は250nm、好ましい上限は450nmである。上記光の波長が250nm未満であると、樹脂等の分解が起きることがある。上記光の波長が450nmを超えると、開始剤の活性化に必要なエネルギーが充分に得られないことがある。上記光の波長のより好ましい下限は300nm、より好ましい上限は400nmである。
【0075】
上記色素増感型太陽電池用封止剤に照射する光の積算光量は特に限定されないが、好ましい下限は100mJ/cm、好ましい上限は1万mJ/cmである。上記積算光量が100mJ/cm未満であると、上記色素増感型太陽電池用封止剤が充分に硬化しないことがある。上記積算光量が1万mJ/cmを超えても、それ以上は硬化に寄与せず、封止剤や他の部材の劣化につながるおそれがある。上記積算光量のより好ましい下限は300mJ/cm、より好ましい上限は6000mJ/cmである。
上記光源の上記色素増感型太陽電池用封止剤への照射手順は特に限定されず、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられる。
【0076】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の硬化に際しては、上記カチオン重合性化合物等の光カチオン重合をより促進して、硬化時間をより短縮するために、光照射と同時又は光照射後に加熱を行ってもよい。上記加熱を行う場合の加熱温度は特に限定されないが、50〜100℃程度であることが好ましい。
【0077】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物のガラス転移温度は特に限定されないが、好ましい下限は80℃である。上記ガラス転移温度が80℃未満であると、色素増感型太陽電池の温度が上昇した際、色素増感型太陽電池用封止剤が軟化して電解液が透過しやすくなったり、接着力が弱くなったりすることがある。
【0078】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を用いて色素増感型太陽電池基板を貼り合せる方法としては、色素増感型太陽電池用封止剤を少なくとも一方の基板に塗布し、もう一方の基板を貼り合せ後、光を照射して硬化する方法等が挙げられる。
【0079】
また、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤が硬化遅延剤を含有する場合は、光を照射した後、色素増感型太陽電池用封止剤が硬化するまでの間に基板同士を貼り合わせて接着してもよい。具体的には、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を少なくとも一方の基板に塗布し、塗布した色素増感型太陽電池用封止剤に光を照射した後、他方の基板を貼り合わせ、加熱して色素増感型太陽電池用封止剤を硬化させる方法、又は、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤に光を照射した後、この色素増感型太陽電池用封止剤を少なくとも一方の基板に塗布した後、他方の基板を貼り合わせ、加熱して色素増感型太陽電池用封止剤を硬化させて接着することができる。
【0080】
このように本発明の色素増感型太陽電池用封止剤が硬化遅延剤を含む場合は、基板を介して光を照射する必要がなく、双方の基板が光不透過性であっても、支障なく接着することができる。また、基板上の色素等が光の影響を受けて劣化することを防止できる。
【0081】
本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を用いてなる色素増感型太陽電池もまた、本発明の1つである。
本発明の色素増感型太陽電池は、本発明の色素増感型太陽電池用封止剤を用いているため、ヨウ素を含むレドックス系電解液を用いても耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる色素増感型太陽電池用封止剤を提供することができる。また、本発明は、該色素増感型太陽電池用封止剤を用いて製造される色素増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】色素増感型太陽電池の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
カチオン重合性化合物として、ジ{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル(東亞合成社製、「アロンオキセタンOXT−221」)50重量部、jER 4250(三菱化学社製、一般式(1)においてXがCHのものと、一般式(1)においてXがC(CHのものとの混合物、重量平均分子量約59000)20重量部、及び、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER YX−8000」)30重量部と、光カチオン重合開始剤として(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、「RP2074」)1重量部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、「KBM−403」)1重量部と、光増感剤としてチオキサントン系化合物(日本化薬社製、「DETX−S」)0.1重量部と、充填剤としてタルク粒子(日本タルク社製、「ミクロエースP−4」、平均粒径が4.5μm、長径(a)と短径(b)との比(a/b)の平均値が10、長径(a)と厚さ(c)との比(a/c)の平均値が25)50重量部とをホモディスパー型攪拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、攪拌速度3000rpmで均一に攪拌混合して、色素増感型太陽電池用封止剤を作製した。得られた色素増感型太陽電池用封止剤のガラス転移温度を表1に示した。
【0086】
(実施例2〜4、比較例1〜6)
用いた材料及び配合量を表1に示したものとしたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池用封止剤を作製した。
なお、表1におけるjER 4275は、一般式(1)においてXがCHのものと、一般式(1)においてXがC(CHのものとの混合物であり、重量平均分子量が約6万である三菱化学社製のフェノキシ樹脂である。また、得られた色素増感型太陽電池用封止剤のガラス転移温度を表1に示した。
【0087】
<評価>
実施例及び比較例で得られた色素増感型太陽電池用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
(1)耐ヨウ素染色性
実施例、比較例において得られた色素増感型太陽電池用封止剤を、ベーカー式アプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて365nm、3000mJ/cmの紫外線を照射した後、80℃にて30分加熱し、色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物層を有するフィルムを得た。
得られた色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物層を有するフィルム1gを0.05mol%ヨウ素の3−メトキシプロピオニトリルに浸漬し、85℃のオーブンで24時間加熱し、ヨウ素が色素増感型太陽電池用封止剤の硬化物に染み込むことによる色の変化を目視にて観察し、色の変化がほとんど無い場合を「○」、茶色に変色した場合を「×」として評価した。
【0089】
(2)初期接着力
実施例、比較例において得られた色素増感型太陽電池用封止剤を、ディスペンサーを用いて色素増感型太陽電池用FTOガラス基板に塗布し、その後もう一方のソーダガラス基板と、十字型に貼り合せ、365nm、1500mJ/cmの紫外線を照射し、80℃で30分加熱して接着試験片を作製した。得られた接着体を用い、小形卓上試験機(「Ez Graph」、島津製作所社製)を用いて接着力(N/mm)を測定した。
【0090】
(3)高温高湿試験後接着力
(2)初期接着力の評価と同様にして作製した接着試験片を用いて、温度85℃、相対湿度85%RHの環境下で1000時間放置する高温高湿試験を行った後の接着力を初期接着力と同様にして測定した。初期接着力に対する接着力の低下が10%以下であった場合を「○」、10%を超え20%未満であった場合を「△」、20%以上であった場合を「×」として評価した。
【0091】
(4)電解液との溶解性
実施例、比較例において得られた色素増感型太陽電池用封止剤を、ディスペンサーを用いてガラス基板の開口部を除いた周辺部分に塗布し、その後透明導電電極膜を有するもう一方のガラス基板と、透明導電電極膜を内側にした状態で対向して貼り合せ、365nm、3000mJ/cmの紫外線を照射し、80℃で30分加熱して周辺シールを行なった。その後、周辺シールの開口部より、電解液として0.05mol%ヨウ素の3−メトキシプロピオニトリル溶液を注入した。次いで、開口部より封口剤としてフォトレックA−783(積水化学工業社製)を注入し、365nmの紫外線を3000mJ/cm照射して封口剤を硬化させて封止し、色素増感型太陽電池を作製した。
得られた色素増感型太陽電池を温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿オーブンで250時間加熱し、電解液の重量減少を測定し、封止剤と電解液との溶解性を評価した。なお、電解液の重量変化には、外部から水蒸気が入ることによる増加、及び、電解液の蒸発による減少もあるため、電解液の重量減少を測定する際には、目視で剥離がないことを確認した。
【0092】
(5)耐湿性
JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた色素増感型太陽電池用封止剤からなるフィルムを取り付け、温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿オーブンで24時間加熱し、重量変化から透湿度(g/m)を測定した。
【0093】
(6)ディスペンス性
色素増感型太陽電池用封止剤を、ディスペンサーを用いてガラス基板に塗布した際に、良好にパターンを形成できた場合を「○」、封止剤の流れ、かすれ、線切れ等が生じ目的のパターンが形成できなかった場合を「×」としてディスペンス性を評価した。
【0094】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、封止性と耐ヨウ素染色性とに優れる色素増感型太陽電池用封止剤を提供することができる。また、本発明は、該色素増感型太陽電池用封止剤を用いて製造される色素増感型太陽電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
1,1’ ガラス基板
2,2’ 透明電極層
3 半導体層
4 光増感色素
5 電解液
6 白金蒸着膜
7 封止剤
8 封口剤
9 薄片ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する色素増感型太陽電池用封止剤であって、
前記カチオン重合性化合物は、主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素化合物を10〜50重量%、及び、下記一般式(1)で示される構造を有するフェノキシ樹脂を5〜30重量%含有する
ことを特徴とする色素増感型太陽電池用封止剤。
【化1】

式(1)中、Xは、O、S、CH、又は、C(CHを表し、nは5以上の整数を示す。
【請求項2】
主鎖にエーテル構造を有し、かつ、分子内にオキセタニル基を2官能以上有する飽和炭化水素は、下記一般式(2)で示される構造を有することを特徴とする請求項1記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【化2】

式(2)中、nは1〜12の整数を示す。
【請求項3】
カチオン重合性化合物は、繰り返し単位内に飽和多環状炭化水素基又は2個以上のシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項4】
カチオン重合性化合物は、水酸基を有するエポキシ化合物又は水酸基を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項5】
カチオン重合性化合物は、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物又はシリコーン骨格を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項6】
充填剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項7】
充填剤は、平板状の無機粉体であることを特徴とする請求項6記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項8】
シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項9】
硬化遅延剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の色素増感型太陽電池用封止剤。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の色素増感型太陽電池用封止剤を用いてなることを特徴とする色素増感型太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−54060(P2012−54060A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194689(P2010−194689)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】