説明

色素増感型太陽電池

【課題】 電解質溶液の漏れるおそれを排除し、スペーサを省略して部品点数の削減を図ることができ、しかも、強い耐久性を得ることのできる色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】 僅かな隙間を介して相対向する第一、第二の透明基板1・1Aと、これら第一、第二の透明基板1・1Aの周縁部間を接着する封止周壁5と、第一、第二の透明基板1・1Aの間に封入される電解質溶液6とを備え、封止周壁5を定形のシリコーン接着剤10とする。封止周壁5を、接着性、耐薬品性、耐水性、耐候性、環境条件に優れるシリコーン接着剤製としたので、電解質溶液6の漏れるおそれがない。したがって、スペーサを省略して部品点数の削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光線等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する色素増感型太陽電池(色素増感太陽電池ともいう)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、従来シリコン半導体のpn接合タイプが広く知られていたが、1991年に色素増感タイプが提案されて以降、色素増感タイプが注目されている。この色素増感型太陽電池は、内部に電解質溶液が封入される関係上、湿式太陽電池とも呼ばれ、製造設備やコストが安価であるという特徴を有している。
【0003】
この種の色素増感型太陽電池は、図示しないが、対向する第一、第二の透明基板と、これら第一、第二の透明基板の周縁部間に介在する封止剤と、第一、第二の透明基板間に介在されて密着するスペーサと、第一、第二の透明基板の間に封入される電解質溶液とから構成されている(特許文献1、2、3、4、5、6参照)。
【0004】
第一の透明基板は、その内面に、電極である透明導電膜が形成され、この透明導電膜上に、酸化チタン粒子を均一に塗布・加熱することにより多孔質膜が形成されており、この多孔質膜には色素が吸着されている。第二の透明基板は、その対向面に透明導電膜が形成されて導電性基板とされている。また、封止剤は、例えば液状のポリイソブチレン等を使用して枠形に形成される。
【0005】
このような構成の色素増感型太陽電池は、第一の透明基板に光線が当たると、色素が光線を吸収して電子を放出し、この電子が多孔質膜に移動して透明導電膜に伝わる。そして、電子は、第二の透明基板の透明導電膜に移動して電解質溶液中のイオンを還元し、還元されたイオンが色素上で再度酸化される。これらの繰り返しにより、電気エネルギーが発生する。
【特許文献1】特開2004‐95248号公報
【特許文献2】特開2000‐173680号公報
【特許文献3】特開平11‐288745号公報
【特許文献4】特開2000‐348783号公報
【特許文献5】特開2001‐185244号公報
【特許文献6】特開2000‐30367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の色素増感型太陽電池は、以上のように第一、第二の透明基板の周縁部間に封止剤が単に介在され、第一、第二の透明基板の圧縮に伴い封止剤が流れ出て電解質溶液の漏れるおそれがあるので、固形のパッキンからなるスペーサを省略して部品点数の削減を図ることができないという問題がある。また、電解質溶液の種類によっては、強い耐久性が必要とされるが、従来の封止剤とスペーサでは係る必要性を到底満たすことができない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、電解質溶液の漏れるおそれを排除し、スペーサを省略して部品点数の削減を図ることができ、しかも、強い耐久性を得ることのできる色素増感型太陽電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、一対の透明基板の周縁部を接合する封止周壁と、一対の透明基板の間に充填される電解質溶液とを備え、光エネルギーを変換利用するものであって、
封止周壁を定形のシリコーン接着剤としたことを特徴としている。
なお、シリコーン接着剤の未硬化時の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合に30〜500の範囲とすることが好ましい。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における一対の透明基板は、同じ大きさでも良いし、そうでなくても良く、又可撓性の有無を問わない。透明基板としては、耐候性を有するFTO付きのガラス、表面が平滑なITO付きのガラス、あるいは導電性のPETフィルム等があげられる。また、電解質溶液の支持電解質としては、リチウムイオン等の陽イオン、塩素イオン等の陰イオン等があげられる。電解質中の酸化還元体としては、ヨウ素−ヨウ素混合物や臭素−臭素混合物等があげられる。さらに、電解質溶液の溶媒は、アセトニトリルとエチレンカーボネートの混合溶液等が使用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色素増感型太陽電池から電解質溶液の漏れるおそれを排除できるので、スペーサを省略して部品点数の削減を図ることができるという効果がある。また、強い耐久性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における色素増感型太陽電池は、図1ないし図3に示すように、30〜50μmの僅かな隙間を介して相対向する第一、第二の透明基板1・1Aと、これら第一、第二の透明基板1・1Aの周縁部間を接着するエンドレスの封止周壁5と、第一、第二の透明基板1・1A及び封止周壁5の間に封入される電子授受用の電解質溶液6とを備え、封止周壁5をシリコーン接着剤10とするようにしている。
【0012】
第一、第二の透明基板1・1Aとしては、例えばガラス板に、95%の酸化インジウムと5%の酸化錫からなる化合物(ITO)の薄く蒸着された導電性ガラス(TCO)が使用され、500℃程度の熱に対する耐熱性を有している。
【0013】
第一の透明基板1は、その第二の透明基板1Aとの対向面に、電極である透明導電膜2が積層形成され、この透明導電膜2上に、酸化チタン粒子を均一に塗布・加熱することにより多孔質膜3が積層形成されており、この多孔質膜3には、太陽光(図2の矢印参照)を効率的に吸収するルテニウム錯体等からなる色素4が吸着される。第二の透明基板1Aは、その対向面に電極である透明導電膜2Aが積層形成されて導電性基板とされる。
【0014】
電解質溶液6としては、リン酸、硫酸、これらの混酸、グリセリン塩基と金属酢酸塩を溶解した水溶液等が使用される。グリセリン塩基としては、グリセロリン酸ナトリウム、グリセロリン酸カルシウムがあげられるが、水に溶けやすいグリセロリン酸カルシウムが好ましい。また、金属酢酸塩は、特に限定されるものではないが、特にアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)の酢酸塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)の酢酸塩が良い。
【0015】
シリコーン接着剤10は、耐候性や耐熱性等を有する定形のシリコーン材料からなり、線条、テープ形、帯形、紐形に成形されており、第一の透明基板1の多孔質膜周縁部と第二の透明基板1Aの透明導電膜周縁部に接着されるとともに、中空の封止周壁5の他にスペーサとしても機能する。このシリコーン接着剤10は、ゴム架橋体上から逸脱せず、形状を保持することが必要である。このため未硬化のシリコーン接着剤10の可塑度は、ウイリアムス可塑度計で測定した場合、30〜500の範囲であることが好ましい。
【0016】
これは、可塑度が30未満の場合には、シリコーン接着剤10を未硬化の定形成形体にする際、又は成形後の形状保持性が低下し、任意の形状保持が困難になるからである。逆に、シリコーン接着剤10の可塑度が500を超える場合には、シリコーン接着剤10を第一、第二の透明基板1・1Aに接着する際、界面に残留した気泡を取り除くことが極めて困難になり、界面に気泡が残留すると、シリコーン接着剤10と第一、第二の透明基板1・1Aの接触面積が低下し、接着力の低下を招くからである。
【0017】
シリコーン接着剤10も又ラジカル反応、白金系触媒による付加反応、縮合反応、紫外線、電子線硬化等、どのような架橋方法によるシリコーンゴム接着剤も使用され得る。しかしながら、実際には、経済的、物理的観点から、付加反応あるいは縮合反応により架橋するシリコーン接着剤10が好ましい。
【0018】
I)縮合硬化型シリコーン接着剤
この接着剤は、概ね以下の基本組成を有している。
(1)ポリオルガノシロキサン:縮合硬化型シリコーン接着剤の主剤成分であり、下記一般式(1)又は(2)で表されるジオルガノポリシロキサンである。
【0019】
【化1】

(式中、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基、nはジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100,000mPa・s以上、好ましくは1,000,000mPa・s以上とする数である)
【0020】
【化2】

(式中、Yは加水分解性基、aは2又は3、R、X、nは上記と同様である)
【0021】
ここでRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフロロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基等から選択される同一又は異種の非置換若しくは置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10の一価炭化水素基である。
【0022】
Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、この二価炭化水素基は−(CH2m−(mは1〜8)で表される。これらの中でも、酸素原子、−CH2CH2−が好ましい。
【0023】
nはジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100,000mPa・s以上、好ましくは1,000,000mPa・s以上とする数である。
Yは加水分解性基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等があげられる。
【0024】
このようなジオルガノポリシロキサンは、各種オルガノポリシロキサンの単量体である環状シロキサン若しくは線状オリゴマーを酸若しくは塩基触媒による平衡反応によって得る等の公知の方法により製造することができる。
【0025】
ジオルガノポリシロキサンに分岐構造を導入する場合、上記平衡化重合中にSiO3/2単位及び/又はSiO4/2単位を含むシラン若しくはシロキサンをジオルガノポリシロキサンがゲル化しないレベルで添加するのが常法である。さらに、ジオルガノポリシロキサンは、ストリップや洗浄等により低分子シロキサンを除去しておくことが好ましい。このようなオルガノシロキサンを用いた場合、初期の汚れを低減することができる。
【0026】
(2)架橋剤:架橋剤としては、加水分解性の基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するシラン、あるいはその部分加水分解縮合物が使用される。この場合、加水分解性の基として、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のアミノ基、N−メチルアセトアミド基等のアミド基等があげられる。これらの中でも、アルコキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が好ましい。
【0027】
架橋剤の配合量は、ジオルガノポリシロキサン100部(質量部、以下同様)に対して1〜50部、好ましくは2〜30部、より好ましくは5〜20部が良い。
【0028】
(3)硬化触媒:本発明に係るシリコーンゴム接着剤組成物は、硬化触媒の使用により硬化が促進する。硬化触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示される。これらは、1種に限定されず、2種若しくはそれ以上の混合物として使用しても良い。
【0029】
なお、硬化触媒の配合量は、上記ジオルガノポリシロキサン100部に対して0〜20部、好ましくは0.001〜10部、より好ましくは0.01〜5部が良い。
【0030】
(4)充填剤:本発明に係るシリコーンゴム接着剤の組成物には、上記成分以外に補強等の目的で1種以上の充填剤を用いることが好ましい。この充填剤としては、例えば煙霧質シリカ、沈降性シリカ、これらのシリカ表面を有機珪素化合物で疎水化処理したシリカ、石英粉末、カーボンブラック、タルク、ゼオライト及びベントナイト等の補強剤、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維及び有機繊維等の繊維質充填剤、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セライト等の塩基性充填剤等が例示される。これらの充填剤中、シリカ、炭酸カルシウム、ゼオライト等が好ましく、特に表面を疎水化処理した煙霧質シリカ、炭酸カルシウムが良い。
【0031】
充填剤の配合量は、目的や充填剤の種類により選択すれば良いが、ベースポリマーのジオルガノポリシロキサン(1)成分100部に対して1〜500部、特に5〜100部であることが好ましい。
【0032】
(5)接着剤賦与成分:接着促進剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有オルガノアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有オルガノアルコキシシラン、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物が例示される。本成分の配合量は、通常、(1)成分100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0033】
II)付加反応硬化型シリコーン接着剤
この接着剤は、概ね以下の基本組成を有している。
(1)’ポリオルガノシロキサン:付加反応硬化型シリコーン接着剤組成物の主剤であり、一分子中に平均2個以上のアルケニル基を有することを特徴とする。このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくはビニル基が良い。
【0034】
本成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはメチル基とされる。
【0035】
本成分の分子構造としては、例えば直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状があげられる。本成分の25℃における粘度は100,000mPa・s以上、好ましくは1,000,000mPa・s以上である。
【0036】
この成分のポリオルガノシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:(CH3)3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのビニル基の一部又は全部をアリル基、プロペニル基等のアルケニル基で置換したポリオルガノシロキサン、及びこれらのポリオルガノシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0037】
(2)’水素化ポリオルガノシロキサン:このポリオルガノシロキサンは、本組成物の硬化剤として作用するものであり、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することを特徴とする。本成分中のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはメチル基である。
【0038】
本成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状が例示される。本成分の25℃における粘度は、限定されるものではないが、好ましくは1〜1,000,000mPa・sの範囲内、より好ましくは1〜10,000mPa・sの範囲内である。
【0039】
この成分のポリオルガノシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、式:(CH3)2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したポリオルガノシロキサン、及びこれらのポリオルガノシロキサンの二種以上の混合物が例示され、得られる硬化物の機械的特性、特には伸びが向上することから、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するポリオルガノシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0040】
本組成物において、本成分の含有量は、(1)´成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20の範囲内となる量であり、好ましくは0.1〜10の範囲内となる量、特に好ましくは0.1〜5の範囲内となる量である。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる接着剤が十分に硬化しなくなる傾向にあるからである。一方、上記範囲の上限を超えると、得られる接着剤硬化物の機械的特性が低下する傾向にあるからである。
【0041】
本成分として、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するポリオルガノシロキサンの混合物を用いる場合には、前者のポリオルガノシロキサンの含有量は、(1)´成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜10の範囲内となる量、好ましくは0.1〜10の範囲内となる量、特には0.1〜5の範囲内となる量が良い。
【0042】
後者のポリオルガノシロキサンの含有量は、(1)´成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜20の範囲内となる量であることが好ましく、さらには0.5〜10の範囲内となる量であることが好ましく、特には0.5〜5の範囲内となる量が最適である。
【0043】
(3)’硬化触媒:付加反応用白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィン類の錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体、及びこれらをアルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に担持させたものが例示される。これらの中でも、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体が付加反応触媒としての触媒活性が高いので好ましく、特に特公昭42−22924号公報に開示されているような塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が好適である。
本成分の添加量は、(1)´成分100万質量部に対し、白金金属原子として1〜1000質量部、好ましくは1〜100質量部である。
【0044】
(4)’充填剤:充填剤は、本組成物の機械的強度を向上させるために添加されるものであり、通常シリコーンゴムの配合に用いられる化合物が用いられる。この成分としては、例えばヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、粉砕石英、及びこれらのシリカ粉末をオルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物で表面処理した粉末があげられる。特に、得られる接着剤硬化物の機械的強度を十分に向上させるため、本成分としてBET比表面積が50m2/g以上であるシリカ粉末を用いることが好ましい。
【0045】
本組成物において、本成分の含有量は任意であるが、得られるシリコーンゴム硬化物の機械的強度を向上させるためには、(1)´成分100質量部に対して1〜1000質量部の範囲内、さらには1〜400質量部の範囲内であることが好ましい。また、本組成物には、その他任意の成分として、例えばヒュームド酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ケイ藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミナケイ酸塩、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、銀、金、ニッケル等の無機質充填剤、金又は銀メッキを施した無機及び有機充填剤;これらの充填剤の表面を上記有機ケイ素化合物で処理した充填剤を含有しても良い。
【0046】
(5)’接着性付与成分:本付加反応硬化型シリコーン接着剤を接着剤として機能させるため、その接着性を賦与、向上させるためのものである。これには、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のシランカップリング剤及びこれらの部分加水分解物;エポキシ基、酸無水物基、αシアノアクリル基を有する有機化合物及びこれらの基を含有するシロキサン化合物、あるいはこれらの基とアルコキシシリル基を併有する有機化合物若しくはシロキサン化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物を含有しても良い。これらの接着付与剤の含有量は、限定されるものではないが、好ましくは(1)´成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内である。
【0047】
本組成物には、硬化性を調整するため、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の1分子中にビニル基を5重量%以上持つオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含有することが好ましい。これらの硬化抑制剤の含有量は、限定されるものではないが、(1)´成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であるのが良い。
【0048】
本組成物を調製する方法は、限定されるものではなく、必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、予め(1)又は(1)´成分と(4)又は(4)´成分を加熱混合して調製したベースコンパウンドに、残余の成分を添加することが好ましい。
【0049】
なお、その他任意の成分を添加する必要がある場合、ベースコンパウンドを調製する際に添加しても良い。また、これが加熱混合により変質する場合、(2)〜(4)成分又は(2)´〜(4)´成分を添加する際に添加することが好ましい。また、ベースコンパウンドを調製する際、上記有機ケイ素化合物を添加して(3)又は(3)´成分の表面をin−situ処理しても良い。本接着剤を調製する際には、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。
【0050】
III)有機化酸化物硬化型シリコーン接着剤
オルガノポリシロキサン組成物が有機過酸化物による硬化型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、ガム状のものが好ましく、25℃における粘度が100,000mPa・s以上、好ましくは1,000,000mPa・s以上で分子鎖末端及び/又は分子鎖中にビニル基等のアルケニル基を少なくとも2個有するものが良い。
【0051】
硬化触媒としては有機過酸化物が使用される。この有機過酸化物の例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のアルキル系有機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド等のアシル系有機過酸化物が好適な化合物として用いられる。その配合量は、ベースポリマーのオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.2〜5質量部が良い。
【0052】
IV)放射線硬化型シリコーン接着剤
オルガノポリシロキサン組成物が放射線硬化型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端及び/又は分子鎖中にビニル基、アリル基、アルケニルオキシ基、アクリル基、メタクリル基等の脂肪族不飽和基、メルカプト基、エポキシ基、ヒドロシリル基等を2個以上有するものが用いられる。その25℃における粘度は、100,000mPa・s以上、好ましくは1,000,000mPa・s以上である。
【0053】
反応開始剤として、公知のアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4'−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントール、3,9−ジクロロキサントール、3−クロロ−8−ノニルキサントール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントール等があげられる。その配合量は、ベースポリマーのオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.5〜10質量部であるのが好ましい。
【0054】
第一、第二の透明基板1・1Aには、プライマーを塗布すれば、シリコーン接着剤10の接着性を高めることができる。プライマーは、各種の物質を含む表面処理剤を溶媒に分散したものが殆どである。このプライマーにおいて、上記表面処理剤はシランカップリング剤であることが好ましい。このシランカップリング剤は、上記溶媒100質量部に対して1〜50質量部配合するのが好ましい。
【0055】
ここで、シランカップリング剤の好ましい配合量を上記分散溶媒100質量部に対して1〜50質量部の範囲としたのは、この範囲を下回る場合には、十分な接着力が得られないという弊害が生じるからである。逆に、この範囲を上回る場合には、加工性が低下するという弊害が生じるからである。
【0056】
上記シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、(メタ)アクリル基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、ビニル基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、環状シロキサン、鎖状シロキサン、及びシアヌル環含有有機ケイ素化合物、からなる群から選択される1又は2以上の物質を用いるのが好ましい。
【0057】
上記エポキシ基含有シランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)トリエトキシシラン等があげられる。
【0058】
上記(メタ)アクリル基含有シランの例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン等があげられる。上記ビニル基含有シランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等があげられる。
【0059】
上記環状シロキサンの例としては、3−グリシドキシプロピル基含有メチルハイドロジェン環状テトラシロキサン、3−メタクリロキシプロピル基含有メチルハイドロジェン環状テトラシロキサン、3−グリシドキシプロピル基含有メチルメトキシ環状シロキサン、3−グリシドキシプロピル基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルハイドロジェン環状シロキサン、3−メタクリロキシプロピル基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルハイドロジェン環状シロキサン、2−[(3−トリメトキシシリル)プロピルオキシカルボニル]プロピル基含有メチルハイドロジェン環状シロキサンなどがあげられる。
【0060】
上記鎖状シロキサンの例としては、3−グリシドキシプロピル基含有メチルメトキシシロキサン、3−グリシドキシ基とビニル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン、3−グリシドキシ基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルシロキサン等があげられる。また、上記シアヌル環含有有機ケイ素化合物の例としては、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等があげられる。
【0061】
これらのプライマーについては、スプレーコーターやロールコーター等のコーティング機によって塗布するか、又はプライマー溶液中に第一、第二の透明基板1・1Aをディッピングして塗布させることが可能である。
【0062】
シリコーン接着剤10の表面、裏面、あるいは内部には、耐久性を確保する観点から図示しない金属箔、フィルム、及び又は繊維布が選択的に設けられたり、積層被覆される。金属箔としては、特に限定されるものではないが、金、銀、銅、ニッケル、鉄、錫、アルミニウム箔等があげられる。金属箔の厚みは5〜500μmの範囲が良い。5μm未満では作業性が困難となり、500μmを超えると柔軟性が損なわれるからである。
【0063】
フィルムは、特に材質が限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートや塩化ビニル等からなる各種の有機高分子フィルム等が使用される。このフィルムの厚みは5〜500μmであれば良い。これは、5μm未満では作業性が困難であり、500μmを超えると柔軟性が損なわれるからである。また、繊維布は、特に材質が限定されるものではないが、厚みが5〜500μmの範囲内とされる。これは、5μm未満の場合には作業性が困難であり、500μmを超える場合には柔軟性が損なわれるからである。
【0064】
上記構成によれば、第一、第二の透明基板1・1Aの周縁部間に介在接着される封止周壁5を、接着性、耐薬品性、耐水性、耐候性、環境条件に優れる定形のシリコーン接着剤製としたので、電解質溶液6の漏れるおそれがない。したがって、スペーサを省略して部品点数の削減を図ることができる。また、封止周壁5の耐久性を向上させることができる。また、封止周壁5が液状ではないので、接着剤をきわめて容易にセットすることができる。さらに、シリコーン接着剤10の粘度を特に高める必要がないので、接着剤の接着が困難になったり、厚さが不均一になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る色素増感型太陽電池の実施形態を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る色素増感型太陽電池の実施形態を示す要部断面説明図である。
【図3】本発明に係る色素増感型太陽電池の実施形態におけるシリコーン接着剤を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 第一の透明基板
1A 第二の透明基板
2 透明導電膜
3 多孔質膜
4 色素
5 封止周壁
6 電解質溶液
10 シリコーン接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基板の周縁部を接合する封止周壁と、一対の透明基板の間に充填される電解質溶液とを備え、光エネルギーを変換利用する色素増感型太陽電池であって、
封止周壁を定形のシリコーン接着剤としたことを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項2】
シリコーン接着剤の未硬化時の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合に30〜500の範囲とした請求項1記載の色素増感型太陽電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12673(P2006−12673A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189788(P2004−189788)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】