説明

色素増感型太陽電池

【課題】 必要な接着耐久性、耐熱性、耐湿性、耐候性等を得ることができ、しかも、第一、第二の極板間の隙間を適切に確保したり、優れた保存性と硬化性により生産性を向上させ、電解質溶液の漏洩を抑制できる色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】 第一、第二の極板1・1Aを相対向させてその狭い間に電解質溶液10を2液分別塗布型のシール材20を介して充填封止する。シール材20は、第一、第二の極板1・1Aの対向面周縁部に、溶媒により希釈された二種類の組成物(A)、(B)溶液が各々塗布された後に溶媒が揮発され、さらに貼り合わされることにより硬化して第一、第二の極板1・1Aをシリコーン樹脂21・21Aを介し硬化接着し、電解質溶液10をシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期接着性と高い耐候性を有するシリコーンゴムを備えた色素増感型太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、シリコン半導体のpn接合タイプが古くから広く知られているが、1991年に色素増感タイプが提案されて以降、色素増感タイプが注目されている。この色素増感型太陽電池は、その内部に電解質溶液が封入される関係上、湿式太陽電池とも呼ばれ、製造設備やコストを安価にできるという特徴を有している。
【0003】
この種の色素増感型太陽電池は、図示しないが、対向する第一、第二の透明基板と、これら第一、第二の透明基板の周縁部間に介在する封止材と、第一、第二の透明基板の間に介在されて密着するスペーサと、第一、第二の透明基板の間に封入される電解質溶液とを備えて構成されている(特許文献1、2、3、4、5、6参照)。
【0004】
第一の透明基板は、その対向面である内面に電極である透明導電膜が積層形成され、この透明導電膜には、酸化チタン粒子が均一に塗布・加熱されることにより多孔質膜が積層形成されており、この多孔質膜には色素が吸着されている(第一極)。また、第二の透明基板は、その内面に透明導電膜が積層されることにより、導電性の基板に形成されている(第二極)。封止材は、アイオノマー樹脂やエポキシ樹脂等を使用してエンドレスの枠形に成形されている。
【0005】
このような構成の色素増感型太陽電池は、第一極に光線が照射されると、色素が光線を吸収して電子を放出し、この電子が多孔質膜に移動して透明導電膜に伝わる。そして電子は、第二極の透明導電膜に移動して電解質溶液中のイオンを還元し、この還元されたイオンが色素上で再度酸化される。これらの繰り返しにより、電気エネルギが発生することとなる。
【特許文献1】特開2004‐95248号公報
【特許文献2】特開2000‐173680号公報
【特許文献3】特開平11‐288745号公報
【特許文献4】特開2000‐348783号公報
【特許文献5】特開2001‐185244号公報
【特許文献6】特開2000‐30367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における色素増感型太陽電池は、以上のように封止材がアイオノマー樹脂やエポキシ樹脂等を使用して単に成形されるに止まるので、必要な耐久接着性、耐熱性、耐湿度、耐候性等を得ることができないという問題がある。
【0007】
係る問題を解消する方法として、封止材にシリコーンRTVを用いる手法が考えられるが、このシリコーンRTVは、液状であるので、対向する第一、第二の透明基板の貼り合せの際に潰れて食み出し、第一、第二の透明基板間の隙間を適度に維持することができない虞が少なくなく、しかも、封止材の目付け幅を一定にするのも困難である。また、食み出したシリコーンRTVを除去したり、清掃する必要があるので、生産性が非常に悪化するという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0008】
また、シリコーンRTVを使用した場合、その未硬化時に、第一、第二の透明基板の自重やその他の応力により、電解質溶液の漏れ出る虞もある。また、シリコーンRTVの硬化については、加熱して硬化させるものが多くあり、一般的な電解質溶液の耐熱性はシリコーンRTVの加熱硬化温度以下であるから、電解質溶液を封入してシリコーンRTVを硬化させることは実質的に不可能である。
【0009】
また、縮合型のシリコーンRTVは常温で硬化するが、これは空気中の水分により硬化するもので、空気と接触していない内部の硬化がきわめて遅く、さらには絶対湿度の低い環境下での硬化は遅々として進まないという問題もある。さらにまた、シリコーンRTVのごく一部に、室温で硬化するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンRTVもあるが、これは可使時間が極めて短かく、実用性に欠けるという問題がある。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、必要な接着耐久性、耐熱性、耐湿性、耐候性等を得ることができ、しかも、第一、第二の極板間の隙間を適切に確保したり、優れた保存性と硬化性により生産性を向上させ、電解質溶液の漏洩を抑制することのできる色素増感型太陽電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、第一、第二の極板を対向させてその間に電解質溶液をシール材を介して封止したものであって、
第一の極板は、光透過性を有する基板と、この基板に積層される透明導電層と、この透明導電層に設けられるn型の半導体層と、この半導体層に付着される色素とを含み、
第二の極板は、光透過性を有する基板と、この基板に積層されて色素に対向する透明導電層とを含み、
シール材は第一、第二の極板に、溶媒により希釈された二種類の組成物(A)、(B)溶液が各々塗布された後に溶媒が揮発され、さらに貼り合わされることにより硬化して第一、第二の極板を硬化したシール材を介し硬化接着して電解質溶液をシールするものであることを特徴としている。
【0012】
なお、組成物(A)溶液は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃での粘度が100,000mPa・S以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)ヒドロシリル化触媒 組成物(A)及び(B)の硬化に十分な量
3)充填材 1〜2000重量部
4)接着付与剤 0〜10重量部
5)溶媒 10〜2000重量部
を含有し、
組成物(B)溶液は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃での粘度が100,000mPa・S以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)少なくとも2個のヒドロシリル基を有する粘度が10〜1000mPa・Sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物(A)及び(B)由来のアル
ケニル基の合計に対してケイ素原子
結合水素原子の量がモル比で0.0
1〜20.0となる量
3)充填材 1〜2000重量部
4)接着付与剤 0〜10重量部
5)溶媒 10〜2000重量部
を含有し、
4)の総量は、1)の総量200重量部に対して0.1〜20.0重量部であると良い。
【0013】
また、溶媒揮発後におけるシール材の表面粘着性を、JIS Z 0237に基づく試験を実施した場合にボールナンバーが4〜21の範囲とすることが好ましい。
また、溶媒揮発後におけるシール材の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合に、30〜500の範囲とすることが好ましい。
さらに、組成物(A)、(B)溶液の溶媒揮発後におけるシリコーン樹脂の厚みを、各々1mm以下とすることが好ましい。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における第一、第二の極板や基板は、矩形が主ではあるが、円形、楕円形、多角形等に形成することもできる。シール材は、中空形、リング形、枠形等に形成され、高い密着性が要求される場合には、シランカップリング剤等を用いるプライマー処理が施される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シール材が組成物(A)、(B)溶液からなる二液分別塗布型であるので、溶媒の乾燥条件を自由に設定することができるとともに、シール材である各々のシリコーン樹脂を貼り合わせるまでは硬化しないので、良好な保存性や生産性が期待できる他、必要な接着耐久性、耐熱性、耐湿性、耐候性等を得ることができるという効果がある。また、第一、第二の極板間の隙間を適切に確保したり、電解質溶液の漏洩を抑制することができるという効果がある。
【0016】
また、溶媒揮発後におけるシール材の表面粘着性を、JIS Z 0237に基づく試験を実施した場合にボールナンバーが4〜21の範囲とすれば、第一、第二の極板に対する粘着性を維持することができ、しかも、接着時に界面に生じた気泡を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における色素増感型太陽電池は、図1に示すように、第一、第二の極板1・1Aを相対向させてその狭い空間に電解質溶液10を2液分別塗布型でエンドレスのシール材20を介して充填封止するようにしている。
【0018】
第一の極板1は、正方形あるいは長方形の薄い透明基板2を備え、この透明基板2の内面である対向面に透明導電膜3が積層形成され、この透明導電膜3には、酸化チタン粒子が均一に塗布・加熱されることによりn型半導体層である多孔質膜4が積層形成されており、この多孔質膜4には、第二の極板1Aに対向するハイビスカス等の色素5が多数吸着される。また、第二の極板1Aは、正方形あるいは長方形の薄い透明基板2を備え、この透明基板2の内面である対向面に透明導電膜3が積層されることにより、導電性基板に形成される。
【0019】
シール材20は、第一の極板1の対向面周縁部に塗布される組成物(A)溶液と、第二の極板1Aの対向面周縁部に塗布される組成物(B)溶液とを含むヒドロシリル化反応硬化型シリコーン接着剤からなり、硬化速度に優れるという特徴を有している。
【0020】
このシール材20は、第一、第二の極板1・1Aの対向面周縁部に、溶媒により希釈された二種類の組成物(A)、(B)溶液が各々塗布された後に溶媒が揮発され、さらに貼り合わされることにより硬化して第一、第二の極板1・1Aを組成物のシリコーン樹脂21・21Aを介し硬化接着し、電解質溶液10をシールするよう機能する。このシール材20の溶媒揮発後における可塑度は、ウイリアムス可塑度計で測定された場合に、30〜500の範囲とされる。
【0021】
シール材20の溶媒揮発後における表面粘着性は、JIS Z 0237(球転法)に基づく試験が実施された場合にボールナンバーが4〜21の範囲とされる。これは、ボールナンバーが4未満の場合には、第一、第二の極板1・1Aに対する粘着性を十分に維持することができなくなるからである。また、ボールナンバーが21を超える場合には、貼り合わせの際に界面に生じた気泡を除去するのが困難になるからである。
【0022】
組成物(A)溶液は、以下の1)オルガノポリシロキサン100重量部、2)ヒドロシリル化触媒、3)充填材1〜2000重量部、4)接着付与剤0〜10重量部、5)溶媒10〜2000重量部を含有する。
【0023】
1)オルガノポリシロキサン
組成物(A)溶液の主剤であり、一分子中に平均2個以上のアルケニル基を有することを特徴とする。このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくはビニル基である。また、本成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはメチル基である。
【0024】
本成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状があげられる。本成分の25℃における粘度は、100,000mPa・S以上、好ましくは1,000,000mPa・S以上である。
【0025】
この成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:(CH3)3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのビニル基の一部又は全部をアリル基、プロペニル基等のアルケニル基で置換したオルガノポリシロキサン、及びこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物があげられる。
【0026】
2)ヒドロシリル化触媒(ヒドロシリル化反応用白金系触媒)
ヒドロシリル化触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィン類の錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体、及びこれらをアルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に担持させたものがあげられる。
【0027】
これらの中でも、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体がヒドロシリル化反応触媒としての触媒活性が高いので好ましく、特に特公昭42−22924号公報に開示されているような塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が好ましい。本成分の添加量は、組成物(A)及び(B)の硬化に十分な量、具体的には、1)成分100万重量部に対し、白金金属原子として1〜1000重量部、好ましくは1〜100重量部である。
【0028】
3)充填材
充填材は、シリコーン樹脂21の機械的強度を向上させるために添加されるものであり、通常シリコーンゴムの配合に用いられる化合物からなる。この成分としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、粉砕石英、及びこれらのシリカ粉末をオルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物で表面処理した粉末があげられる。特に、得られる接着剤硬化物の機械的強度を十分に向上させるためには、本成分として、BET比表面積が50m2/g以上のシリカ粉末を用いることが好ましい。
【0029】
組成物(A)溶液には、その他の任意成分として、例えばヒュームド酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ケイ藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、銀、金、ニッケル等の無機質充填材、金又は銀メッキを施した無機及び有機充填材;これらの充填材の表面を上記有機ケイ素化合物で処理した充填材を含有しても良い。
【0030】
4)接着付与剤
接着付与剤は、シール材20を接着剤として機能させるために接着性を賦与、向上させるという特徴を有する。これには、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のシランカップリング剤及びこれらの部分加水分解物;エポキシ基、酸無水物基、α‐シアノアクリル基を有する有機化合物及びこれらの基を含有するシロキサン化合物、あるいはこれらの基とアルコキシシリル基を併有する有機化合物若しくはシロキサン化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物を含有しても良い。これらの接着付与剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1)成分100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0.01〜10重量部の範囲内である。
【0031】
本成分には、硬化性を調整するため、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の1分子中にビニル基を5重量%以上持つオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含有しても良い。これらの硬化抑制剤の含有量は、特に限定されるものではないが、1)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲内が良い。
【0032】
5)溶媒
溶媒は特に限定されるものではなく、有機高分子を溶解する有機溶媒を使用すれば良い。この有機溶媒としては、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系、n−へキサン、リグロイン、ケロシン、ミネラルスプリット等の脂肪族炭化水素系、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環式炭化水素系、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトロヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類やマロン酸エステル類、コハク酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類等のエステル系の溶媒があげられる。
【0033】
溶媒の配合量については、1)オルガノポリシロキサン100重量部に対して10〜2000重量部が良い。これは、溶媒の配合量が10重量未満の場合には、シール材20の粘度が高くなり、塗工が不可能になるからである。逆に、2000重量部を超える場合には、シール材20の粘度が低くなり、溶媒の揮発に長時間を要することから、塗工物が流動して作業性の低下を招くという理由に基づく。
【0034】
組成物(B)溶液は、以下の1)オルガノポリシロキサン100重量部、2)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、3)充填材1〜2000重量部、4)接着付与剤0〜10重量部、5)溶媒10〜2000重量部を含有する。1)オルガノポリシロキサン、3)充填材、4)接着付与剤、5)溶媒については、組成物(A)溶液と同様であるので、2)オルガノハイドロジェンポリシロキサンについて説明する。
【0035】
なお、組成物(A)、(B)溶液における接着付与剤の総量は、組成物(A)、(B)溶液におけるオルガノポリシロキサンの総量200重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内とされる。
【0036】
2)オルガノハイドロジェンポリシロキサン(水素化ポリオルガノシロキサン)
水素化ポリオルガノシロキサンは、組成物(B)の硬化剤として作用するものであり、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することを特徴とする。本成分中のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはメチル基である。
【0037】
本成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状が例示される。本成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、1〜1,000,000mPa・Sの範囲内であり、特に好ましくは、1〜10,000mPa・Sの範囲内である。
【0038】
本成分として、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するポリオルガノシロキサンの混合物を用いる場合には、前者のポリオルガノシロキサンの含有量は、1)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜10の範囲内となる量、好ましくは0.1〜10の範囲内となる量、特に0.1〜5の範囲内となる量が良い。後者のポリオルガノシロキサンの含有量は、1)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜20の範囲内となる量、好ましくは0.5〜10の範囲内となる量、特に0.5〜5の範囲内となる量が良い。
【0039】
組成物(A)、(B)溶液の溶媒揮発後におけるシリコーン樹脂21・21Aの厚みは、それぞれ1mm以下、合計2mm以下とされる。これは、2mmを超える場合には、シリコーン樹脂21・21Aの貼着面から1mmを超える部分で未硬化部分が生じるおそれがあるからである。本組成物(A)、(B)溶液を調製する方法は、特に限定されるものではなく、必要に応じてその他の任意の成分を混合することにより調製することができるが、予め1)オルガノポリシロキサンと、3)充填材とを加熱混合して調製したベースコンパウンドに、残余の成分を添加することが好ましい。
【0040】
組成物(A)、(B)溶液に、1)〜5)以外の任意の成分を添加する必要がある場合には、ベースコンパウンドを調製する際に添加しても良い。また、これが加熱混合により変質する場合には、硬化触媒、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び充填材を添加する際に添加することが好ましい。
【0041】
このベースコンパウンドを調製する際、上記有機ケイ素化合物を添加して3)充填材の表面をin−situ処理しても良い。シール材20を調製する際、2本ロール、ニーダーミキサ、ロスミキサ等の周知の混練装置を用いることができる。また、上記ベースコンパウンドを溶媒にて溶解する場合には、万能ミキサ、高速ミキサ、ボールミル等の密閉系の混練装置を用いることが好ましい。
【0042】
また本発明において、被着体にプライマーを塗布することにより、シール材20の接着性を高めることができる。このプライマーは、各種の物質を含む表面処理剤を溶媒に分散したものを使用することができる。このプライマーにおいて、表面処理剤はシランカップリング剤であることが好ましく、シランカップリング剤は溶媒100重量部に対して1〜50重量部配合するのが良い。
【0043】
鎖状シロキサンとしては、3−グリシドキシプロピル基含有メチルメトキシシロキサン、3−グリシドキシ基とビニル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン、3−グリシドキシ基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルシロキサン等があげられる。また、シアヌル環含有有機ケイ素化合物の例としては、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等があげられる。
【0044】
これらのプライマーは、被着体に対し刷毛等を用いて塗布するか、スプレーコーターやロールコーター等のコーティング機によって塗布するか、あるいはプライマー溶液中に被着体をディッピングして塗布させることが可能である。
【0045】
上記によれば、シール材20が組成物(A)、(B)溶液からなる二液分別塗布型であるので、溶媒の乾燥条件を自由に設定することができるとともに、シール材20である各々のシリコーン樹脂21・21Aを貼り合わせるまでは硬化しないので、良好な保存性や生産性が期待できる他、必要な接着耐久性、耐熱性、耐湿性、耐候性等を得ることができる。また、従来のシートと比較して良好なハンドリング性を得ることができる。
【0046】
また、対向する第一、第二の極板1・1Aの接着の際、シール材20が液状ではなく、半固形で潰れて食み出すことがないので、第一、第二の極板1・1A間の隙間や目付け幅を適度に維持したり、生産性を大幅に向上させることが可能になる。さらに、溶媒の揮発により、一度定型化した後に貼り合わせて硬化接着することができるので、第一、第二の極板1・1Aの自重やその他の応力により、電解質溶液10が漏れ出るおそれもない。
【実施例】
【0047】
以下、本発明に係る色素増感型太陽電池の実施例を説明する。この実施例において、粘度は25℃における値であり、表面タックはJIS Z 0237に基づく数値である。
【0048】
組成物(A)、(B)溶液の調製
先ず、1,000,000mPa・S以上の粘度を有する生ゴム状の側鎖にメチルビニル基を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン100重量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ10重量部、シリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン1.5重量部、及び水1重量部を均一に混合した後、減圧下、170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0049】
次いで、係るベースコンパウンド100重量部に、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(上記ベースコンパウンド中のポリジメチルシロキサン100万重量部に対して本触媒中の白金金属が30重量部となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部を混合した後、密閉可能な万能攪拌機によりこの組成物100重量部に対してトルエン400重量部を配合し、均一に溶解するまで混練して組成物(A)溶液を調製した。この組成物(A)溶液の粘度をB型粘度計により測定したところ、100ポイズであった。
【0050】
次いで、上記ベースコンパウンド100重量部に、粘度10mPa・Sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2となる量)、一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する粘度6mPa・Sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子水素原子のモル比が2.8となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部混合を混合した後、密閉可能な万能攪拌機によりこの組成物100重量部に対してトルエン400重量部を配合し、均一に溶解するまで混練して組成物(B)溶液を調製した。この組成物(B)溶液の粘度をB型粘度計により測定したところ、110ポイズであった。
【0051】
次いで、組成物(A)、(B)溶液を120℃×5分間加熱して溶媒を十分に揮発させた後、ウイリアムス可塑度:JIS K6249:1997「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定する可塑度試験に準じて測定した。
【0052】
すなわち、溶媒を揮発させた組成物(A)、(B)2gを球状の試験片とし、この試験片をセロハン紙に挟んでダイヤルゲージの付いた平行板可塑度計(上島製作所製;ウイリアムスプラストメータ)中にセットし、49Nの荷重を加えて3分間放置するとともに、ダイヤルゲージの目盛りをミリメートルの1/100まで読み取って試験片の厚さを記録し、この数値を100倍して可塑度としたところ、表1に示す通りの結果が得られた。
【0053】
【表1】

【0054】
また、組成物(A)、(B)溶液の乾燥後の厚さが1mmとなるように厚さ125μmのPETフィルム上にアプリケーターで塗工し、120℃×5分間乾燥させて溶媒であるトルエンを全て揮発させ、15×400×1mmの試料片を作製した。こうして試料片を作製したら、この試料片を用いてJIS Z 0237に基づき、表面タックを測定したところ、表1に示す通りの結果となった。
【0055】
また、組成物(A)、(B)の試料片を端部から順に重ね合わせたところ組成物(A)、(B)間には気泡の混入が見られず、さらに上記貼り合わせ試料片を室温で放置してその硬化状態を調べたところ、表2に示す結果を得た。
【0056】
【表2】

【0057】
色素増感型太陽電池の作製
先ず、チタニア基板の作製のため、日本アエロジル社製の超微粒子チタニア(P−25)1重量部を、界面活性剤(和光純薬工業社製Trinton X−100)を0.5重量%含む水20重量部に分散させた。超微粒子チタニアを分散させたら、この分散液を、フッ素をドープした酸化スズ透明電極付きガラス基板(50×50mm)にバーコーターで塗布し、100℃で1時間乾燥させた後、450℃で1時間焼成した。
【0058】
これに上記と同じ塗布、乾燥、焼成をもう一度繰返して厚さ10μmの多孔質の基板とし、この基板を濃度1重量%の四塩化チタン水溶液に一晩浸漬し、水洗して100℃で1時間乾燥させた後、450℃で1時間焼成して多孔質チタニア基板を作製した。多孔質チタニア基板を作製したら、増感色素(シス−ジシアネート−ビス(2,2’−ジピリジル−4、−4’−ジカルボキシレート)ルテニウムII)を0.3ミリモル含むエタノール溶液に上記チタニア基板を浸漬し、溶液の沸点まで加熱して2時間の還流条件で色素を付着させ、増感色素付きチタニア基板を得た。
【0059】
そして、チタニア基板の表面に、組成物(A)溶液をスクリーン印刷により電極の周囲にシール幅2mmで印刷し、さらに120℃×5分間加熱して溶媒のトルエンを全て揮発させた。このとき、溶媒揮発後の組成物(A)の厚みは15μmであった。
【0060】
次いで、表面被覆処理した色素付きチタニア基板を一方の電極とし、対向電極としてドープした酸化スズ透明電極付きガラス基板に白金をスパッタによりコートしたものを用いた。
【0061】
そして、チタニア基板の表面に、組成物(B)溶液をスクリーン印刷により電極の周囲にシール幅2mmで印刷し、さらに120℃×5分間加熱し溶媒のトルエンを全て揮発させた。このとき、溶媒揮発後の組成物(B)の厚みは15μmであった。そしてその後、シール材の内側に電解質溶液を注入するとともに、対極を貼り合せ、室温で60分間硬化接着させ、その後電極にリード線を接続して色素増感太陽電池を作製した。
【0062】
なお、上記電解質溶液としては、体積比が1:4であるメトキシプロピオニトリル/エチレンカーボネートの混合溶媒にヨウ化テトラプロピルアンモニウムとヨウ素とをそれぞれの濃度が0.46モル/リットル、0.06モル/リットルとなるように溶解した溶液を用いた。
【0063】
太陽電池セルの発電性能及び寿命試験
キセノンランプを光源とし、UVカットフィルターとAM1.5フィルターを通して500W/m2 の強度の疑似太陽光を上記太陽電池セルに当てることで発電性能を測定した。測定の結果、開回路状態の電圧(VOC)は0.66V、短絡電流(ISC)は7.0mA/cm2 、曲線因子(FF)は0.63、変換効率は5.8%であり、太陽電池として有用であることが確認された。
【0064】
さらに、寿命試験として、セルを0℃で4時間、100℃で4時間放置するサイクルを50サイクル繰り返した後の電解質溶液の状態を確認したところ、シール材からの漏れが一切発生せず、良好な接着耐久性を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る色素増感型太陽電池の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 第一の極板
1A 第二の極板
2 透明基板(基板)
3 透明導電膜
4 多孔質膜(半導体層)
5 色素
10 電解質溶液
20 シール材
21 組成物(A)溶液のシリコーン樹脂
21A 組成物(B)溶液のシリコーン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二の極板を対向させてその間に電解質溶液をシール材を介して封止した色素増感型太陽電池であって、
第一の極板は、光透過性を有する基板と、この基板に積層される透明導電層と、この透明導電層に設けられるn型の半導体層と、この半導体層に付着される色素とを含み、
第二の極板は、光透過性を有する基板と、この基板に積層されて色素に対向する透明導電層とを含み、
シール材は第一、第二の極板に、溶媒により希釈された二種類の組成物(A)、(B)溶液が各々塗布された後に溶媒が揮発され、さらに貼り合わされることにより硬化して第一、第二の極板を硬化したシール材を介し硬化接着して電解質溶液をシールするものであることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項2】
組成物(A)溶液は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃での粘度が100,000mPa・S以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)ヒドロシリル化触媒 組成物(A)及び(B)の硬化に十分な量
3)充填材 1〜2000重量部
4)接着付与剤 0〜10重量部
5)溶媒 10〜2000重量部
を含有し、
組成物(B)溶液は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃での粘度が100,000mPa・S以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)少なくとも2個のヒドロシリル基を有する粘度が10〜1000mPa・Sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物(A)及び(B)由来のアル
ケニル基の合計に対してケイ素原子
結合水素原子の量がモル比で0.0
1〜20.0となる量
3)充填材 1〜2000重量部
4)接着付与剤 0〜10重量部
5)溶媒 10〜2000重量部
を含有し、
4)の総量は、1)の総量200重量部に対して0.1〜20.0重量部である請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項3】
溶媒揮発後におけるシール材の表面粘着性を、JIS Z 0237に基づく試験を実施した場合にボールナンバーが4〜21の範囲とした請求項1又は2記載の色素増感型太陽電池。
【請求項4】
溶媒揮発後におけるシール材の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合に、30〜500の範囲とした請求項1、2、又は3記載の色素増感型太陽電池。
【請求項5】
組成物(A)、(B)溶液の溶媒揮発後におけるシリコーン樹脂の厚みを、各々1mm以下とした請求項1ないし4いずれかに記載の色素増感型太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−214075(P2007−214075A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35214(P2006−35214)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】