説明

色素増感太陽電池用電解液およびそれを用いた色素増感太陽電池

【課題】耐久性が高く、高沸点の鎖状スルホン溶媒においても効果のある、開放電圧を向上させ、もって変換効率の向上を図ることのできる該添加剤を用いて、高い耐久性と変換効率が得られる優れた色素増感太陽電池用電解液およびこれを提供する。
【解決手段】ドナー数25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物を含有することを特徴とする色素増感太陽電池用電解液およびそれを用いた色素増感太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池用電解液に関し、さらに詳細には、第一に耐久性に優れ、第二に大きな開放電圧が得られることにより優れた変換効率が得られる色素増感太陽電池用電解液およびそれを用いた色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光域を吸収する増感色素を半導体層に担持させた色素増感太陽電池について検討が行われている。この色素増感太陽電池は、使用する材料が安価であることや比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点を有しており、その実用化が期待されている。
【0003】
色素増感太陽電池は、一般に、透明導電膜付き透明基体上に金属酸化物半導体の多孔質膜を形成させ、その表面に増感色素を吸着させたアノード電極(半導体電極)と、導電性基体に触媒層を形成させたカソード電極(対極)とが対向して配置され、その間に電解液が封止された構造となっている。半導体電極に光が入射すると、増感色素が可視光を吸収して励起状態となり、増感色素から半導体電極に電子が注入され、集電体を通して外部に電流が取り出される。一方、増感色素の酸化体は電解液中の酸化還元対により還元されて再生する。酸化された酸化還元対は、半導体電極に対向して設置された対極表面の触媒層で還元されてサイクルが一周する。
【0004】
従来、色素増感太陽電池用の電解液として、アセトニトリルやメトキシプロピオニトリル溶媒にヨウ化物塩とヨウ素を、また添加剤としてt−ブチルピリジンやN−メチルベンズイミダゾールを添加したものが一般的に用いられている(非特許文献1、特許文献1、2)。ここで、ヨウ化物塩およびヨウ素は電解液中でIおよびIを形成し、酸化還元対として両電極間の電荷キャリアとして機能している。一方、t−ブチルピリジンやN−メチルベンズイミダゾールは開放電圧を向上させるための添加剤として多用されている。
【0005】
近年では、ニトリルの毒性や耐久性の低さから、ニトリルに代わる溶媒としてプロピレンカーボネートやγ−ブチロラクトンを用いた色素増感太陽電池用電解液も開示されているが(非特許文献2、特許文献3および4)、耐光性や分解時のガス発生などの課題があり、十分な耐久性は得られていない。
【0006】
色素増感太陽電池の電解液として実用的な耐久性を得るためには、200℃以上の高い沸点を有する溶媒、および添加剤を用いることが求められる。本発明者らは、新規の高耐久性電解液として鎖状スルホンを溶媒として用いた色素増感太陽電池用電解液を見出している(非特許文献3)。さらなる変換効率向上のひとつの手段として、開放電圧の向上が求められている。
【0007】
開放電圧を向上させる方法として、上述のt−ブチルピリジンやN−メチルベンズイミダゾールの他にも、塩基性の添加剤を加えることで開放電圧の向上を図った例が開示されている(特許文献5〜11)。
【0008】
ところが、添加剤を加えると、添加剤と、溶媒および他の電解質との間で相互作用が働くため、電解液としての粘度が変化する。低粘度の溶媒を用いていれば、添加剤と溶媒等の相互作用が働いても、元々の粘度が低いため電解質の移動は依然として十分な速度を確保できるものの、電解耐熱性の高い電解液とするために高沸点の溶媒を用いた場合、沸点の向上に伴って溶媒自体の粘度が高くなっているため、添加剤を加えることによる粘度の影響が大きくなってしまう。その結果、電解質の拡散が阻害されるため短絡電流密度が低くなりやすい。添加剤によって開放電圧が向上したとしても、その効果以上に電流値が低下すれば、変換効率は逆に低下してしまうという問題があった。
【0009】
特許文献5では、非共有電子対を持つ電子供与化合物を添加剤に用いること、およびその際の溶媒として多種の有機溶媒が開示されているが、実施例として挙げられているのは、著しく耐久性が不足し、かつ添加剤の粘度影響や分子サイズが無視できるほど粘度が低いアセトニトリルを溶媒として用いており、該電子供与化合物として用いられているのはアミノ−ピリミジンとt−ブチルピリジンの2例のみである。したがって、該特許からは高沸点溶媒どころか、どの有機溶媒においてどのような電子供与体がどれだけ有効なのか推測することは不可能である。
同様に、特許文献6〜9における添加剤についても全てアセトニトリルで評価されており、上述のように、高沸点溶媒を用いた場合の影響を推測することは困難である。
【0010】
特許文献10には、高温耐久性を向上させる電解液の添加剤として、1位が三級炭素であるアルキル置換基を有するピリジン、具体例として、特許文献でも例示されているt−ブチルピリジンが開示されている。しかしながら、ピリジン類は臭気が強く使用環境の悪化という問題があるとともに、臭気がするということは、すなわち室温でも揮発していることを示している。t−ブチルピリジンはピリジン化合物の中では高い沸点を有しているものの、沸点は200度にも達しておらず、耐熱性は不十分なままであった。さらに、該特許文献で最適である溶媒として挙げられているメトキシプロピオニトリルはそもそも沸点が低く、電解液として十分な耐久性が得られない。該特許文献は、低沸点・低粘度のメトキシプロピオニトリルに合せた添加剤の開示であり、高沸点溶媒おいての検討は全く行なわれていない。
【0011】
特許文献11には、窒素原子を2つ以上含みかつ置換基を持たない5員環または6員環の芳香環からなる含窒素複素環化合物を添加剤として用いた例が開示されている。
該特許明細書段落0016には、電解液粘度を極力上げることのないよう、分子サイズの極力小さな塩基性化合物を添加することが好ましいとの記載があり、さらに、かかる塩基性化合物として、置換基を持たない、したがって分子サイズの小さな環状塩基を用いるとされ、具体的には5員環ではイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、6員環としてピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンが挙げられている。また、該特許明細書段落0019には、ほぼ同一の分子量であるピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジンの沸点は大きく異なっていること、そして沸点の高いものを用いることが好ましいとある。
該特許文献に記載されているように、添加剤の分子サイズが小さい方が、電解液粘度が低くなることは一般的にも想定しうる。しかしながら、ピラゾールやイミダゾールがピリジンとほぼ同一分子量、すなわちほぼ同一の分子サイズでありながらこれらの化合物で沸点が異なっているように、主構造が異なるものはそもそも沸点や粘度等の物性も異なるため、分子サイズで比較が可能なのは、あくまで同じ主構造を有するもの同士を、同一もしくはよく類似した構造の溶媒において比較した場合のみである。該特許文献においても、低沸点・低粘度のメトキシプロピオニトリルにて評価した添加剤の開示であり、高沸点溶媒おいての検討は全く行なわれておらず、高沸点の有機溶媒に適した添加剤を判別することはできない。また、該特許文献ではイオン液体電解液に対しての添加剤の効果も比較しているが、イオン液体系電解液と有機溶媒系電解液とは、ヨウ素レドックスのキャリア輸送のメカニズムが異なっており、イオン液体系電解液における結果からも高沸点の有機溶媒に適した添加剤を判別することはできない。
【0012】
添加剤によってどの程度粘度が変化するかについては、用いる溶媒や電解質と添加剤との組合せ、およびその濃度や組成比率により相互作用が異なってくるため、複数の電解質・溶媒からなる電解液の粘度変化を事前に予測することは全く不可能であるうえ、例え低粘度の溶媒を用いた場合には問題にならなかった添加剤であっても、高沸点の溶媒を用いた場合に電流値や形状因子(「ff」と略記する。)にどのような悪影響を及ぼすかどうかは推測できない。
さらに、電流値の課題だけはなく、溶媒によってそもそもの開放電圧が異なってくることから、いずれの添加剤をどの濃度で用いれば、使用する高沸点溶媒の中で効果的に開放電圧を向上することができるのか不明である。
したがって、実際に電解液を調製し、太陽電池を組むことで初めて、その組成の電解液の特性の良し悪しを評価することができるようになるため、従来用いられているニトリル系電解液を中心にした前記先行技術文献をもとにしても、何ら優れた電解液が得られるわけでなかった。
【0013】
したがって、耐久性が高く、高沸点の鎖状スルホン溶媒においても効果のある、開放電圧を向上させ、もって変換効率の向上を図ることのできる該添加剤を用いて高い変換効率と耐久性が得られる優れた電解液およびそれを用いた色素増感太陽電池が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−327515号公報
【特許文献2】特開2011−28918号公報
【特許文献3】特開2007−220608号公報
【特許文献4】特開2000−277182号公報
【特許文献5】特開2006−12848号公報
【特許文献6】特開2005−216490号公報
【特許文献7】特開2005−38711号公報
【特許文献8】特開2003−331936号公報
【特許文献9】特開2004−47229号公報
【特許文献10】特開2010−218902号公報
【特許文献11】特開2006−134615号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics,Vol.45,No.25,2006,L638−L640
【非特許文献2】Solar EnergyMaterials&SolarCells,93(2009)893−897
【非特許文献3】Electrochemistry,3,163(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明は、上記課題に鑑み、耐久性が高く、高沸点の鎖状スルホン溶媒においても効果のある、開放電圧を向上させ、もって変換効率の向上を図ることのできる該添加剤を用いて、高い耐久性と高い変換効率が得られる優れた色素増感太陽電池用電解液が望まれており、これらの特性を全て具備する電解液を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、酸化還元性の電解質として、ヨウ素アニオンを対イオンとするヨウ化物塩およびヨウ素分子と、溶媒として鎖状スルホンと、塩基性添加剤と、を少なくとも含有する色素増感太陽電池用電解液であって、塩基性添加剤が、ドナー数25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物であることを特徴とする色素増感太陽電池用電解液およびそれを用いた色素増感太陽電池が上記課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0019】
第一の発明は、酸化還元性の電解質としてヨウ素アニオンを対イオンとするヨウ化物塩およびヨウ素分子と、溶媒として下記一般式(1)で表される鎖状スルホンと、塩基性添加剤と、を少なくとも含有する色素増感太陽電池用電解液であって、
塩基性添加剤が、ドナー数が25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物であることを特徴とする色素増感太陽電池用電解液である。
【0020】
【化1】

(式(1)中、R、Rは独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基、またはアリール基を表す。)
【0021】
第二の発明は、塩基性添加剤が、含窒素5員環化合物であることを特徴とする第一の発明に記載の色素増感太陽電池用電解液である。
【0022】
第三の発明は、塩基性添加剤が、合計炭素数が1または2であるアルキル基を置換基として有すること特徴とする第一または第二の発明に記載の色素増感太陽電池用電解液である。
【0023】
第四の発明は、塩基性添加剤が、アルキル基が2位および/または4位に置換されたイミダゾール、アルキル基が3位〜5位のいずれかに置換されたピラゾールであること特徴とする第三の発明に記載の色素増感太陽電池用電解液である。
【0024】
第五の発明は、塩基性添加剤が、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、3−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、N−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第一から第四の発明のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電解液である。
【0025】
第六の発明は、導電層上に多孔質の金属酸化物半導体層を形成し、該金属酸化物半導体層に光増感作用を有する色素を吸着させてなる光電極と、前記光電極に対向配置される対極、及び前記光電極と対極間に形成され、電解液を含む電解質層とを有する色素増感太陽電池であって、
前記電解液が第一から第五の発明のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電解液であることを特徴とする色素増感太陽電池である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電解液を用いた色素増感太陽電池は、高い変換効率が得られるとともに、その性能を高温条件下でも長期間保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の色素増感太陽電池の構成の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の色素増感太陽電池用電解液は、酸化還元性の電解質としてヨウ素アニオンを対イオンとするヨウ化物塩およびヨウ素分子と、溶媒として下記一般式(1)で表される鎖状スルホンと、塩基性添加剤と、を少なくとも含有する色素増感太陽電池用電解液であって、塩基性添加剤が、ドナー数が25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物であることを特徴とする色素増感太陽電池用電解液である。
【0029】
<酸化還元性の電解質>
本発明の電解液には、酸化還元性の電解質、すなわち酸化還元対が含有されている。具体的には、ヨウ化物アニオンとヨウ素との組合せであり上記のヨウ化物アニオンを対イオンとするヨウ化物塩とヨウ素を電解液溶媒に含有させることで調製できる。ヨウ化物塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属カチオンが例示できるが、本発明に用いる鎖状スルホンは、金属カチオンを用いると電解液の粘度上昇が大きくて良好な特性が得難い上、耐久性の低下を招く事例があることから、より好適なカチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピラゾリウム等のオニウムカチオンが挙げられる。特に、イミダゾリウム系や、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムなどのスピロ型第4級アンモニウムを好適に利用することができる。これらの1種または2種以上を混合して用いることもできる。
【0030】
ヨウ化物の濃度は、太陽電池として用いる際の入射光量などによって発生する電流量が異なるため最適な濃度は必ずしも一定ではないが、好ましくは0.01〜4.0mol/lであり、特に好ましくは0.5〜2.5mol/lである。濃度が0.01mol/lより小さいと十分な性能が得られない場合があり、一方、濃度が4.0mol/lより大きいと溶媒に溶解しにくい場合がある。
【0031】
一方、ヨウ化物塩とともにヨウ素を添加することによってI/Iの酸化還元対として作用する。電解液中に添加するヨウ素分子の含有量は、太陽電池として用いる際の入射光量などによって発生する電流量が異なるため最適な含有量は必ずしも一定ではないが、イオン導電性及び光エネルギー変換効率の観点から、好ましくは0.01mmol〜0.5mol/lであり、特に0.05mmol〜0.2mol/lが好ましい。
【0032】
<溶媒>
溶媒として用いる鎖状スルホンは下記一般式(1)で表される化合物である。
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(1)中、R、Rは独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基、またはアリール基を表す。
【0035】
具体的な鎖状スルホン化合物としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、イソブチルイソプロピルスルホン、メトキシエチルイソプロピルスルホン、フルオロエチルイソプロピルスルホン等が例示できる。これらの中でも、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、イソブチルイソプロピルスルホン、メトキシエチルイソプロピルスルホン、フルオロエチルイソプロピルスルホン等のRおよびRの炭素数の合計が5以上、好ましくは5〜10である化合物は、広範な温度で使用でき、耐久性に優れるため特に好適に使用できる。
【0036】
上記一般式(1)の鎖状スルホン化合物のその他の例としては、R、Rの少なくとも一方がフェニル基である化合物が挙げられ、例えば、フェニルイソプロピルスルホン、フェニルエチルスルホン、ジフェニルスルホン等が例示できる。これらの中でも、R、Rの一方がフェニル基であり、一方がハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基である化合物が、広範な温度で使用可能であり、耐久性に優れるため好ましく用いられ、より好ましくは、一方が置換されていない炭素数1〜5のアルキル基である化合物であり、特にフェニルイソプロピルスルホンが好適に使用できる。これらの物質は、いずれか一種を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。このような鎖状スルホンを溶媒として用いることにより、高い耐久性を得ることができる。
【0037】
<塩基性添加剤>
また、本発明の電解液には、ドナー数が25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物からなる塩基性添加剤を含有させることを特徴としている。
【0038】
ドナー数とは、ある分子のドナーとしての性質を溶媒に無関係な量として表したもので、供与性とも呼ばれる。ドナー数は、基準のアクセプターとしてジクロロエタン中10−3MのSbClを選び、ドナーとしての反応のモルエンタルピー値として定義される。
【0039】
限界拡散電流値とは、酸化還元電位の測定において、酸化電流の増加がなくなった電流値を限界拡散電流値とする。本発明の場合は、酸化還元電位の測定開始電位を自然電位とし、そこから酸化側に掃引することで、ヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化電流を測定し、電位の掃引に伴う酸化電流の増加がなくなった電流値を限界拡散電流値とした。
【0040】
このような塩基性添加剤は従来公知の材料を用いことが可能であるが、本発明において溶媒と用いる各種鎖状スルホンのドナー数は14から18程度であることが多く、また、酸化還元対であるIイオンのドナー数も14であることから、これらの溶媒や電解質よりも優位に高いドナー数を有する必要がある。本発明者らが検討した結果、25以上のドナー数を有していれば優位な開放電圧の向上が認められ、含窒素複素環化合物の中でも特に、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類などの含窒素5員環化合物が本発明の鎖状スルホン溶媒に適しており、優れた特性を得ることができる。
【0041】
上記含窒素5員環化合物は、合計炭素数が1または2であるアルキル基を置換基として有することが望ましい。アルキル置換基が導入されることで、無置換の場合よりもドナー性が向上するため、開放電圧の向上効果が増大することができる上、該塩基性添加剤の沸点も向上することで耐久性の向上にも寄与する。ただし、導入されるアルキル置換基の合計炭素数が多くなると、添加剤の分子サイズが大きくなるため電流値やffの低下が顕著になり、結果として高い変換効率を得ることはできなくなる。このため、アルキル置換基の合計炭素数が1または2の場合に良好な特性を得ることができる。
さらに、アルキル基が2位および/または4位に置換されたイミダゾール、または、アルキル基が3位〜5位のいずれかに置換されたピラゾールであることが望ましい。
また、本発明においては、特許文献6とは異なり、置換基としてアミノ基を有さないことが望ましい。本発明においては、アミノ基を含有すると抵抗の増大により、短絡電流値の低下やffの低下が起きるため、優れた特性を得ることはできない。
【0042】
ドナー数25以上で、沸点が200℃以上、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる塩基性添加剤の中でも特に、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、3−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、N−メチルピロリドンが好ましく挙げられる。
【0043】
<その他の添加剤>
また、本発明の電解液はポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーや低分子のゲル化剤などを溶媒中に添加する方法や、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを溶媒中で重合させる等の方法でこれらの溶媒をゲル化することで、電解質層7をゲル電解質として形成しても構わない。溶媒をゲル化させるためのポリマーはイオン性を有していても構わないが、電解質の移動を妨げる場合にはイオン性を有さないことが望ましい。
【0044】
また、ポリマーではなく、粒子を添加させてチクソトロピー性を持たせることで、セルに構成した際に固体状・ペースト性状・ゲル性状を持たせても構わない。このような粒子の材料としては、特には限定されず公知の材料を使用することができる。例えば、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、シリカ等の無機酸化物、ケッチェンブラックやカーボンブラック、カーボンナノチューブ等のカーボン材料、また、カオリナイトやモンモリロナイト等の層状無機化合物、すなわち粘土鉱物でも構わない。
【0045】
本発明の電解液は、常法に従って上記の各種溶媒中に上記ヨウ化物やヨウ素等の酸化還元対などとともに、本発明のホウ酸エステルを溶解させることによって得ることができる。一方、本発明の色素増感太陽電池は、この電解液を用いたものであるが、電解液以外は、一般的な色素増感太陽電池の構成を採用すればよい。
図1に本発明の色素増感太陽電池の構成の一例を示す。図1中、1は電極基体、2は透明基体、3は透明導電膜、4は多孔質金属酸化物半導体層、5は増感色素層、6は半導体電極、7は本発明の電解液を含む電解質層、8は対極、9は電極基体、10は触媒活性層、11はスペーサー、12は周縁シール部をそれぞれ示す。
【0046】
電極基体1は、透明基板2に透明導電膜3を形成させた、導電性ガラスなどの透明電極基体である。透明導電膜3には多孔質金属酸化物半導体層4が形成されており、金属酸化物半導体の表面に色素を吸着させた増感色素層5を有している。これらから、アノード電極である半導体電極6が構成される。
【0047】
<透明基体>
電極基体1を構成する透明基体2は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
【0048】
透明基体2の厚さは、太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチック等を用いた場合では、使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度であり、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、25μm〜1mm程度である。また、必要に応じて耐候性を高めるハードコート等の表面処理を用いても構わない。
【0049】
<透明導電膜>
透明導電膜3としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、ITO、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛等が好適に用いることができる。
【0050】
また、導電性材料を分散担持させるなどの処理方法や、メッシュ形状のような細線状の導電性材料を透明基体上に形成することによって、電極全体としては透光率を高めることができていれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレン等が挙げられる。また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ又はそれらの合金等が挙げられる。
【0051】
ここで、本願発明では電解液中に含まれる酸化還元対としてハロゲン分子とハロゲン化物、より具体的にはヨウ素とヨウ化物を用いることが望ましいため、透明導電膜に使用する導電性材料は電解液に対する耐蝕性が高いことが望ましい。したがって、特に金属酸化物、中でもFTOやITO、また表面を導電性の耐食処理を施した銅やアルミニウム、ニッケルやその合金等が特に好適である。
【0052】
透明導電膜3としては、上記の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなるものを、透明基体1の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体2を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体と透明導電膜を一体化して電極基体1とすることも可能である。
【0053】
透明基体2上に透明導電膜3を形成する方法として、金属酸化物を形成する場合は、ゾルゲル法や、スパッタやCVD等の気相法、分散ペーストのコーティング等がある。また、不透明な導電性材料を使用する場合は、粉体等を、透明なバインダー等とともに固着させる方法が挙げられる。
【0054】
透明基体と透明導電膜を一体化させるには、透明基体の成形時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させるなどがある。
【0055】
透明導電膜3の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01〜5μmであり、好ましくは0.1〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、大面積電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。100Ω/□を超えると太陽電池の内部抵抗が上がるため好ましくない。
【0056】
透明基体および透明導電膜から構成される電極基体1、又は透明基体と透明導電膜とを一体化した電極基体1の厚さは、上記のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
【0057】
<多孔質金属酸化物半導体>
多孔質金属酸化物半導体4としては、従来公知のものが使用できる。即ち、Ti、Nb、Zn、Sn、Zr、Y、La、Taなどの遷移金属の酸化物の他、SrTiO、CaTiOなどのペロブスカイト系酸化物などが挙げられる。特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等が挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。
【0058】
このような多孔質金属酸化物半導体は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜3上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。さらに、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましく、塗布した金属酸化物を焼結させることが望ましい。焼結条件は用いる金属酸化物半導体の種類や形成方法、基板の耐熱温度により異なるため、適宜変更して構わないが、二酸化チタンを用いた場合、450〜550℃で焼結させることが望ましい。
【0059】
また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は多孔質になっていることが望ましく、具体的には比表面積が10〜200m/gであることが望ましい。また、増感色素の吸光量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させることが望ましい。前記半導体層の厚さは、用いる酸化物及びその性状により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
【0060】
<増感色素>
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。
【0061】
増感色素は、特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)(L’)(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩及びカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、L’はLと同一、もしくは4,4’−置換2,2’−ビピリジンであり、L’の4,4’位の置換基は、長鎖アルキル基、アルキル置換ビニルチエニル基、アルキル又はアルコキシ置換スチリル基、チエニル基誘導体などが挙げられる。また、XはSCN、Cl、CNである。例えば、ビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体等が挙げられる。
【0062】
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体等が挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、スチリル系色素、エオシン系色素等の有機色素が挙げられ、具体的には三菱製紙株式会社製色素(商品名:D149色素)等が挙げられる。これらの色素には、該金属酸化物半導体層への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体層との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホニル基等が望ましい。
【0063】
増感色素を前記多孔質金属酸化物半導体層4に吸着させる方法は、特には限定されるものではなく、例としては、室温条件、大気圧下において、色素を溶解させた溶液中に、透明導電膜2上に形成させた金属酸化物半導体層4を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時間は、使用する半導体、色素、溶媒の種類、色素の濃度により、半導体層に均一に色素の単分子膜が形成されるよう、適宜調整することが望ましい。なお、吸着を効果的に行なうには加熱下での浸漬を行なえばよい。
【0064】
増感色素は多孔質金属酸化物半導体層の表面上で会合しないことが望ましい。色素単独で吸着させると会合が起きる場合には、必要に応じて、共吸着剤を吸着させても構わない。このような吸着剤としては、用いる色素により最適な種類や濃度が変わるため特には限定されないが、例えばデオキシコール酸等の有機カルボン酸が挙げられる。共吸着剤を吸着させる方法としては、特には限定されないが、増感色素を溶解させる溶媒に、増感色素とともに共吸着剤を溶解させてから金属酸化物半導体層を浸漬させることで、色素の吸着工程と同時に共吸着剤を吸着させることができる。
【0065】
増感色素を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類などが挙げられる。溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することが望ましい。例えば、5×10−5mol/L以上の濃度が望ましい。
【0066】
<対極>
半導体電極6に対向して、カソード電極である対極8が電解質層7およびスペーサー11を介して配置される。
【0067】
<対極−基体>
太陽電池の内部抵抗を小さくするため対極の基体9は電気伝導度が高いことが望ましい。また、上記のように本発明では電解質中に酸化還元対としてハロゲン分子およびハロゲン化物を用いているため、該導電性の電極基体9には電解液に対する耐蝕性が高いことが望ましい。
【0068】
このような導電性基体の材質としては、具体的には、表面に酸化皮膜を形成し耐蝕性が良好なクロム、ニッケルや、チタン、タンタル、ニオブ、及びそれらの合金であるステンレスや、表面に酸化皮膜を形成して耐蝕性を高めたアルミニウム等が挙げられる。
【0069】
また、他の好適な材料としては、導電性金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばITOやFTO、ATO、また、酸化亜鉛や酸化チタン等が好適に用いることができる。中でもFTO、ITOを好適に用いることができる。
【0070】
上記導電性の電極基体9には、耐久性やハンドリング性を高めること等を目的として支持体を兼備することができる。例えば、透明性を求める場合にはガラスや透明なプラスチック樹脂板を用いることができる。また、軽量性を求める場合にはプラスチック樹脂板、フレキシブル性を求める場合にはプラスチック樹脂フィルム等を用いることができる。また、強度を高める場合には、金属板等を用いることもできる。
【0071】
支持体の配置方法は特には限定されないが、導電性の電極基体9の表面には対極の作用部分として触媒活性層10が形成されるため、支持体は該触媒活性層が担持されない部分、特に電極基体9の裏面に配置することが好ましい。また、支持体表面に導電性材料の粉末やフィラーを埋め込む等の方法で担持することにより、導電性の電極基体と支持体を一体化することもできる。
【0072】
支持体の厚さは、対極の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチック等を用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度であり、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルム等を使用した場合は、25μm〜1mm程度である。また、必要に応じて耐候性を高めるハードコートなどの処理や、フィルム添付処理を用いても構わない。また、金属材料を支持体にした場合には、10μm〜1cm程度である。
【0073】
導電性の電極基体9の形態や厚みについては、電極として用いる際の形状や使用条件、また、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されず、任意の形態を選択することができる。例えば、上記支持体を用いることで実用上の強度が保持される場合、電極として使用する上で必要な電導度が確保できていれば、100nm程度の厚みでも構わない。また、支持体を用いず、導電性の電極基体9のみにて強度を確保する場合は、1mm程度以上の厚さが好ましい。
【0074】
また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、大面積電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは5Ω/□以下、より好ましくは1Ω/□以下である。100Ω/□を超えると太陽電池の内部抵抗が増大するため、好ましくない。
【0075】
<触媒活性層>
導電性の電極基体9の表面に担持された触媒活性層10は、電解質層7中に含まれる酸化還元対として含まれるハロゲン化物の酸化体を還元体に十分な速度で還元することができれば、具体的には三ヨウ化物アニオン(I)をヨウ化物アニオン(I)に、還元することができれば特に限定はされず、既知の物質が使用できるが、例えば、遷移金属、導電性高分子材料、又は炭素材料等を好適に用いることができる。
その形状は、用いる触媒の種類により異なるため特には限定されない。上述の触媒材料のうち少なくとも1種類以上からなる触媒材料を、電極基体9の表面に設けて形成することができる。あるいは電極基体9を構成する材料の中へ上記触媒材料を組み込むことも可能である。
【0076】
触媒となる遷移金属としては、白金やパラジウム、ルテニウム、ロジウム等が好適に利用でき、また、それらを合金としても構わない。それらの中でも特に白金、もしくは白金合金が好適である。遷移金属の導電性基体上への担持方法としては既知の方法により作製できる。例えば、スパッタや蒸着、電析により直接形成する方法や、塩化白金酸等の前駆体を熱分解する方法等を用いることができる。
【0077】
導電性高分子のモノマーとして、ピロール、アニリン、チオフェン、及びそれらの誘導体の中から、少なくとも1種類以上のモノマーを重合してなる導電性高分子を触媒として使用することができる。特に、ポリアニリンやポリ(エチレンジオキシチオフェン)であることが望ましい。導電性高分子の電極基体9の担持方法としては、既知の方法を用いることができる。例えば、前記導電性基体を、前記モノマーを含有する溶液中に浸漬して電気化学的に重合する方法や、Fe(III)イオンや過硫酸アンモニウム等の酸化剤と前記モノマーを含む溶液とを、該電極基体上で反応させる化学重合法、導電性高分子を溶融状態もしくは溶解させた溶液から成膜する方法、また、導電性高分子の粒体をペースト状、もしくはエマルジョン状、もしくは高分子溶液及びバインダーを含む混合物形態に処理した後に、該電極基体上へスクリーン印刷、スプレー塗布、刷毛塗り等により形成させる方法が挙げられる。
【0078】
また、炭素材料としては特に制限されず、酸化還元対の酸化体を還元する触媒能を有する、従来公知の炭素材料を使用することができるが、中でもカーボンナノチューブやカーボンブラック、活性炭等が望ましい。炭素材料の導電性基体への担持方法としては、フッ素系のバインダー等を用いたペーストを塗布・乾燥する方法等、既知の方法を用いることができる。
【0079】
半導体電極6と対極8の間には電解液が充填されて電解質層7が形成され、周縁シール部12によって封止されている。
【0080】
<スペーサー>
スペーサー11は、半導体電極と対極が接触して短絡することのないように電極間距離を制御・固定するものであり、電解液、または熱・光などにより劣化しない材質であれば特には限定されず既知の材料を任意の形状で用いることができる。材質としては例えば、ガラスやセラミック材料、フッ素系樹脂や光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、周辺シール部12中に、微小なガラスやセラミック材料などを混合するなどの方法で周辺シール部がスペーサーを兼ねることもできる。
【0081】
周辺シール部は、本発明の電解液が漏洩しないよう、半導体電極と対極を貼合せて封止するものであり、電解液、または熱・光などにより劣化しない材質であれば特に制限されない。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、金属、ゴム等を例示することができる。
【実施例】
【0082】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0083】
(実施例1)
以下のようにして電解液の調製および色素増感太陽電池の作製を行った。
【0084】
<電解液の調製>
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨウ化物0.7mol/l、ヨウ素0.05mol/l、塩基性添加剤として2−メチルイミダゾール0.5mol/lの割合で、エチルイソプロピルスルホンに溶解して電解液を調製した。
【0085】
<限界拡散電流値の測定>
調製した電解液に作用極としてφ10μmの白金電極、対極として白金ワイヤー、参照電極として銀・銀イオン電極を入れ、室温・アルゴン雰囲気下、掃引速度 2mV/sにてリニアスイープボルタンメトリーを行なった。測定開始電位を電解液の自然電位とし、そこから酸化側に掃引することで、ヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化電流を測定し、電位の掃引に伴う酸化電流の増加がなくなった電流値を限界拡散電流とした。
なお、該添加剤を添加することによって、添加しなかった場合の限界拡散電流値1.48×10−7Aと比較して、電流値が1%以上増大した場合を○、1%未満増大またはリファレンスより減少した場合を×として表1に示す。
【0086】
<ドナー数の測定>
本発明における検討に際し、ドナー数(以降、場合によりDNと表記)が既知の化合物については文献値をそのまま用いた。また、ヨウ素(I)のI原子間結合距離が、ヨウ素を溶解させた溶媒のドナー性によって変化する、すなわちヨウ素の吸収波長が変化することを利用してドナー数を間接的に算出する方法が知られている。そこで、ジクロロエタン(DN 0)、アセトニトリル(DN 14.1)、ピリジン(DN 33.1)をリファレンス溶媒としてそれぞれにヨウ素を溶解させた場合のヨウ素の吸収波長ピークとドナー数との関係から求めた検量線を作成しておき、既報の文献値がない塩基性添加剤のうち、室温で液体であるものについては、ヨウ素を溶解させて紫外可視吸収スペクトルからヨウ素の吸収ピーク波長を測定して、先ほどの検量線からドナー数を算出した。また、塩基性添加剤が室温で個体の場合には、まずアセトニトリルと混合させることで溶液にした上で、上記と同様にしてヨウ素の吸収スペクトルからアセトニトリル・塩基性添加剤混合溶液のドナー性を算出した。次いで、アセトニトリル・塩基性添加剤混合溶液のドナー数は、アセトニトリルおよび塩基性添加剤の混合割合(質量比)と各ドナー数の積に等しいとおくことで塩基性添加剤のドナー数を算出した。算出した結果を、ドナー数が25以上のものを○、25未満のものを×として表1に示す。
【0087】
<多孔質金属酸化物半導体層の形成>
透明導電膜付きの透明基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST−18NR)を、スクリーン印刷による印刷工程と90℃30分の乾燥工程とを3回繰り返して重ね塗りした後、大気雰囲気下500℃で60分間焼成することで15μm前後の厚さの多孔質酸化チタン層を形成させた。さらに、前記多孔質酸化チタン層の上に、酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST−400C)をスクリーン印刷で重ね塗りした後、同様に焼成を行なって、20μm前後の厚さとした多孔質金属酸化物半導体層を完成させ、多孔質酸化チタン半導体電極とした。
【0088】
<増感色素の吸着>
増感色素として、一般にN719dyeと呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。80℃にした前記多孔質酸化チタン半導体電極を、色素濃度0.5mmol/Lのアセトニトリル・t−ブチルアルコール(1:1)混合溶液中でゆっくりと振盪させながら遮光下48時間浸漬させた。その後脱水アセトニトリルにて余分な色素を洗浄してから風乾することで、太陽電池の光電極(アノード電極)として完成させた。
【0089】
<対極>
対極として、アンカー層として、スパッタ法によりガラス基板上にTi(膜厚50nm)を成膜したのち、該Ti層上にスパッタ法によりPt(膜厚50nm)を成膜させた白金対極(ジオマテック製)を使用した。
【0090】
<太陽電池セルの組み立て>
前記のように作製した光電極と、電気ドリルで0.6mmφの電解液注入孔を2個設けた対極を対向するよう設置し、両電極間に、スペーサーとして厚み50μmのFEP樹脂シートと、スペーサーの外周に熱可塑性シート(Dupont製 bynel、膜厚50μm)を重ならないように挟み、熱圧着する事により両電極を接着した。次に、前記のように作製した電解液を電解液注入孔から毛管現象にて両電極間に含浸させ、電解液注入孔上に可塑性シートを挟んで1mm厚のガラス板を置き、再度加熱圧着することで封止を実施し、太陽電池素子を作製した。
【0091】
(実施例2)
2−メチルイミダゾールに代えて4−メチルイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0092】
(実施例3)
2−メチルイミダゾールに代えて3−メチルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0093】
(実施例4)
2−メチルイミダゾールに代えて3,5−ジメチルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0094】
(実施例5)
2−メチルイミダゾールに代えて1,2,4−トリアゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0095】
(実施例6)
2−メチルイミダゾールに代えてN−メチルピロリドンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0096】
(比較例1)
2−メチルイミダゾールを含まないこと以外は実施例1と同様に電解液を調製し、太陽電池セルを作製した。
【0097】
(比較例2)
2−メチルイミダゾールに代えてイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0098】
(比較例3)
2−メチルイミダゾールに代えて1−メチルイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0099】
(比較例4)
2−メチルイミダゾールに代えてイソプロピルイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0100】
(比較例5)
2−メチルイミダゾールに代えてN−メチルベンズイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0101】
(比較例6)
2−メチルイミダゾールに代えてベンゾイミダゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0102】
(比較例7)
2−メチルイミダゾールに代えてピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0103】
(比較例8)
2−メチルイミダゾールに代えて1−メチルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0104】
(比較例9)
2−メチルイミダゾールに代えてジイソプロピルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0105】
(比較例10)
2−メチルイミダゾールに代えてアミノジメチルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0106】
(比較例11)
2−メチルイミダゾールに代えてアミノ−t−ブチルピラゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0107】
(比較例12)
2−メチルイミダゾールに代えて3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0108】
(比較例13)
2−メチルイミダゾールに代えてピリジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0109】
(比較例14)
2−メチルイミダゾールに代えてt−ブチルピリジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0110】
(比較例15)
2−メチルイミダゾールに代えてジ−t−ブチルピリジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0111】
(比較例16)
2−メチルイミダゾールに代えてN,N−ジメチルアセトアミドを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0112】
(比較例17)
2−メチルイミダゾールに代えてジメチルイミダゾリジノンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0113】
(比較例18)
2−メチルイミダゾールに代えてアジポニトリルを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0114】
(比較例19)
2−メチルイミダゾールに代えてジメチルスルホキシド(「DMSO」と略記する。)を用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0115】
(比較例20)
2−メチルイミダゾールに代えてN−オクチルピロールを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0116】
(比較例21)
2−メチルイミダゾールに代えてN−メチルピロリジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0117】
(比較例22)
2−メチルイミダゾールに代えてピリミジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0118】
(比較例23)
2−メチルイミダゾールに代えて4−アミノピペリジンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0119】
(比較例24)
2−メチルイミダゾールに代えてピロリドンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0120】
(比較例25)
2−メチルイミダゾールに代えてトリヘキシルアミンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
【0121】
(試験1)
<太陽電池セルの光電変換特性の測定>
実施例1〜6および比較例1〜25で作製した色素増感太陽電池に対し、25℃にて、5mm角の窓をつけた光照射面積規定用マスクを装着させた上で、分光計器製ソーラシュミレータを用い、光量100mW/cm、AM1.5の条件で光源の照射強度を調整した擬似太陽光を照射しながら、エーディーシー製直流電圧電流発生装置を用いて電流電圧曲線(I−Vカーブ)を計測し、光電変換効率を算出・評価した。開放電圧が向上しなかった場合を、「Vo向上せず」とした。光電変換効率(以下、「Eff」と略記する。)の測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。なお、変換効率は3.8%以上であることが好ましく挙げられる。結果を表1に示す。
また、合わせて各添加剤が含窒素複素環、含窒素5員環、沸点が200度以上にそれぞれ該当する場合には○とし、該当しない場合には×として表記した。
【0122】
【表1】

【0123】
(試験2)
<太陽電池セルの耐久性の評価>
試験1にて用いたセルのうち、塩基性添加剤の添加に伴い変換効率の向上が図れた実施例および比較例に対して、暗中85℃1000時間の耐熱性試験を実施し、試験後室温に戻した状態での変換効率を測定して初期の変換効率の維持率を算出した。その結果、維持率85%以上のものを○、85%未満のものを×として表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
実施例1〜6の電解液では、比較例1の塩基性添加剤を入れない電解液に比べて、高い変換効率を得ることができることが示された。
比較例3、24では、含窒素5員環化合物であり、置換基の炭素数も2以下ではあるが、ヨウ素アニオンの限界拡散電流値が向上しなかった例であり、この場合添加剤によって比較例1よりも変換効率が低下してしまうことが示された。
比較例4〜6および比較例9、15、22では、5員環構造ではない含窒素複素環化合物、または主構造が5員環含窒素複素環化合物であっても置換基の炭素数が大きい例を示しており、これらの電解液ではヨウ素アニオンの限界拡散電流値が小さく、塩基性添加剤によって太陽電池セルの特性が下がってしまう。
比較例13、14は、添加剤が含窒素複素環化合物で、かつヨウ素アニオンの限界拡散電流値が向上する電解液であり、比較例1の添加剤なしの電解液よりも変換効率が向上しているものの、該塩基性添加剤の沸点が200℃未満であるため、試験2の耐久性試験では十分な耐久性が得られないことが示された。
比較例2、7、8、21の電解液では、含窒素複素環、特に5員環構造を有し、アルキル置換基の炭素数も2以下で、かつヨウ素アニオンの限界拡散電流値が大きい例を示しており、いずれも比較例1の添加剤なしの電解液よりも高い変換効率を示すことがわかる。しかしながら、これら添加剤の沸点はいずれも200℃未満であり、試験2の耐久性試験の結果はいずれも十分な耐久性が得られないことが示された。
比較例10〜12、23では、いずれも含窒素複素環であるが置換基としてアミノ基を有しており、その結果限界拡散電流値が減少して比較例1の添加剤がない場合よりも特性が低下することが示された。
比較例25は含窒素複素環ではない高ドナー性の化合物を塩基性添加剤として用いた電解液で、ヨウ素アニオンの限界拡散電流値が向上しなかった例であり、この電解液は変換効率の向上は認められなかった。
比較例16、19は含窒素複素環ではない高ドナー性の化合物を塩基性添加剤として用いた電解液であり、限界拡散電流も向上して変換効率の向上も認められるが、沸点が200℃以下であり、試験2では十分な耐久性が得られなかったことが示された。
【0126】
また、以上の結果より、鎖状スルホンを溶媒とした電解液においては、特許文献5に示されているような、非共有電子対を持つ電子供与化合物を添加剤に用いさえすればよいわけでないことが示された。同様に、特許文献6〜9における添加剤についても鎖状スルホンを溶媒とした電解液においては、必ずしも有効ではないことが示された。また、特許文献10に示されたような、1位が三級炭素であるアルキル置換基を有するピリジン、具体例として、t−ブチルピリジンでありさえすれば必ずしも耐久性が十分であるわけでないこと、もしくは変換効率が大きく低下してしまう場合があることが示された。特許文献11に示されている添加剤であっても、鎖状スルホンを溶媒とした電解液においては、変換効率の向上には必ずしも結びつかないことや、メチル基がない方が変換効率に優れているわけではないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、鎖状スルホンを用いた電解液が有する高い耐久性を高温保管した場合でも低下させることなく、開放電圧を向上させることにより変換効率を向上する効果があるため、色素増感太陽電池用の電解液として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 電極基体
2 透明基体
3 透明導電膜
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 半導体電極
7 電解質層
8 対極
9 電極基体
10 触媒活性層
11 スペーサー
12 周縁シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元性の電解質としてヨウ素アニオンを対イオンとするヨウ化物塩およびヨウ素分子と、溶媒として下記一般式(1)で表される鎖状スルホンと、塩基性添加剤と、を少なくとも含有する色素増感太陽電池用電解液であって、
塩基性添加剤が、ドナー数が25以上、大気下での沸点が200℃以上であり、かつ、塩基性添加剤を色素増感太陽電池用電解液に加えることで、加えないものに対し、色素増感太陽電池用電解液中の室温におけるヨウ素アニオン(I)の3ヨウ素アニオン(I)への酸化反応に伴う限界拡散電流値を1%以上増大できる含窒素複素環化合物であることを特徴とする色素増感太陽電池用電解液。
【化1】

(式(1)中、R、Rは独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基、またはアリール基を表す。)
【請求項2】
塩基性添加剤が、含窒素5員環化合物であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解液。
【請求項3】
塩基性添加剤が、合計炭素数が1または2であるアルキル基を置換基として有すること特徴とする請求項1または2に記載の色素増感太陽電池用電解液。
【請求項4】
塩基性添加剤が、アルキル基が2位および/または4位に置換されたイミダゾール、アルキル基が3位〜5位のいずれかに置換されたピラゾールであること特徴とする請求項3に記載の色素増感太陽電池用電解液。
【請求項5】
塩基性添加剤が、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、3−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、N−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電解液。
【請求項6】
導電層上に多孔質の金属酸化物半導体層を形成し、該金属酸化物半導体層に光増感作用を有する色素を吸着させてなる光電極と、前記光電極に対向配置される対極、及び前記光電極と対極間に形成され、電解液を含む電解質層とを有する色素増感太陽電池であって、
前記電解液が請求項1から5のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電解液であることを特徴とする色素増感太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54879(P2013−54879A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191549(P2011−191549)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】