説明

色要素の形成方法、並びに電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器

【課題】複数種の液状体を略同時に吐出して描画することができ、且つ混色が起き難い色
要素の形成方法、並びにこの形成方法を用いた電気光学装置の製造方法、電気光学装置お
よび電子機器を提供すること。
【解決手段】色要素としてのカラーフィルタ105の形成方法は、基板W上の複数の色要
素領域Aを含む描画領域を複数の部分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描
画領域を少なくとも1回の主走査によりカラーフィルタ材料を含む複数種の液状体70R
,70G,70Bを液滴吐出ヘッド52のノズルから吐出して描画する第1の描画工程と
、第1の描画工程で描画された少なくとも1つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再
描画する主走査を少なくとも1回以上繰り返して描画する第2の描画工程とを備えている
。また、1回の主走査により吐出される液状体の吐出量は、徐々に減少している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置を用いた色要素の形成方法、並びに電気光学装置の製造方法、
電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に機能性材料を含む液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置として、イン
クジェットプリンタのインクジェットヘッドを機能液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)と
して用い、複数の機能液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジを介して複数の機能液滴吐
出ヘッドを主走査方向および副走査方向に移動させる移動手段を備えた描画装置が知られ
ている(特許文献1)。
【0003】
この描画装置は、副走査方向に均等に区分したワーク(基板)上の複数の仮想分割部位
に対応して、複数の機能液滴吐出へッドを副走査方向に分散してキャリッジに搭載してい
る。また、複数の機能液滴吐出ヘッドにより、複数の仮想分割部位に対して副走査方向の
中間部位から両外側部位に向かって、略同時並行的に液状体を吐出して描画を行うもので
ある。これにより、複数の仮想分割部位の両外側部位を先に描画する場合に比べて、両外
側部位における着弾した液状体から溶剤が気化する時期を遅らせて、乾燥処理前の溶剤の
気化量が基板上の位置によって大きく異なることを低減しようとするものである。すなわ
ち、乾燥後の機能性材料からなる成膜部の乾燥ムラをより低減しようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−267927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の描画装置を用いて、例えば、3色の色要素(絵素)を有する
カラーフィルタを成膜する場合は、色要素材料を含む液状体を基板上の所定の描画領域に
吐出して描画する描画装置が1色につき1台、すなわち3台必要であった。また、基板を
各描画装置に給除材する時間や位置決めする時間に加えて、1つの描画装置で描画を行っ
た後に、次の描画装置で描画を行う前に乾燥装置により乾燥を行っていたため、すべての
色要素を描画するまでに時間を要するという課題を有していた。
【0006】
上記課題を解決するために、同一の描画装置内で、すべての色要素を描画することが考
えられる。しかしながら、描画工程中の乾燥が省かれるため、異なる色要素材料を含む複
数種の液状体が基板に着弾して表面張力により盛り上がった状態では、異種の液状体同士
が混じり合って混色を引き起こす可能性があった。
【0007】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、複数種の液状体を略同時に吐出し
て描画することができ、且つ混色が起き難い色要素の形成方法、並びにこの形成方法を用
いた電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の色要素の形成方法は、複数の液滴吐出ヘッドと、複数の液滴吐出ヘッドと基板
とを対向配置させた状態で相対的に移動させる移動手段とを備えた液滴吐出装置を用い、
基板上に配置された隔壁部によって区画された複数の色要素領域を含む描画領域に、移動
手段による複数回の主走査に同期して、色要素材料を含む複数種の液状体を複数の液滴吐
出ヘッドのノズルから吐出して複数種の色要素を描画形成する色要素の形成方法であって
、描画領域を複数の部分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を少な
くとも1回の主走査により描画する第1の描画工程と、第1の描画工程で描画された少な
くとも1つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再描画する主走査を少なくとも1回以
上繰り返して描画する第2の描画工程と、を備え、1回の主走査では、1つの色要素領域
に色要素を形成するために必要な液状体の総量を分割した吐出量で吐出描画することを特
徴とする。
【0009】
この方法によれば、第1の描画工程では、複数の色要素領域を含む描画領域を複数の部
分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を少なくとも1回の主走査に
より描画する。そして、第2の描画工程では、第1の描画工程で描画された少なくとも1
つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再描画する主走査を少なくとも1回以上繰り返
して描画する。また、1回の主走査では、1つの色要素領域に色要素を形成するために必
要な液状体の総量を分割した吐出量で吐出描画される。したがって、第1の描画工程で描
画された少なくとも1つの部分描画領域に着弾した複数種の液状体は、各色要素領域に濡
れ拡がって表面張力により盛り上がるが、吐出量が必要な総量に対して分割されているた
め、各色要素領域を区画する隔壁部を乗り越えて異なる色要素を含む液状体が互いに混じ
り合うことが低減される。また、第2の描画工程では、再描画されるまでに所定の時間が
置かれるため、第1の描画工程で吐出された液状体の乾燥が進み減膜するので、繰り返し
主走査が行われても液状体の盛り上がりが抑制されて異なる色要素を含む液状体が混じり
合うことが低減される。すなわち、同一の液滴吐出装置により、複数種の液状体を吐出描
画しても、混色が起き難い色要素の形成方法を提供することができる。
【0010】
また、上記第2の描画工程では、少なくとも1つの部分描画領域をさらに仮想分割した
分割領域の一を主走査により描画し、所定の時間を置いて、残りの分割領域を描画する主
走査を少なくとも1回以上繰り返して行うことが好ましい。
【0011】
この方法によれば、第2の描画工程では、第1の描画工程で描画された少なくとも1つ
の部分描画領域をさらに仮想分割して、所定の時間を置いて分割領域の一を主走査により
描画し、再び所定の時間を置いて残りの分割領域を描画する。したがって、残りの分割領
域では、第1の描画工程で着弾した液状体がより長い時間を置いて乾燥が進んだ状態で、
第2の描画工程において再び描画される。ゆえに液状体の乾燥が進んだ残りの分割領域に
さらに液状体を繰り返し着弾させても、色要素領域内で盛り上がった、異なる種類の液状
体が隔壁部を越えて混じり合うことが確率的に低下する。よって、同一の液滴吐出装置に
より、複数種の液状体を吐出描画しても、より混色が起き難い色要素の形成方法を提供す
ることができる。
【0012】
また、上記第1の描画工程と第2の描画工程の間に、上記少なくとも1つの部分描画領
域以外の他の部分描画領域を少なくとも1回の主走査で描画することで、所定の時間を置
く工程を備えることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、第1の描画工程の後に、ほとんど間を置かずに第2の描画工程を実
施する場合に比べて、他の部分描画領域を少なくとも1回の主走査で描画する所定の時間
を置く工程の間に、第1の描画工程で吐出された液状体の乾燥を進めることができる。よ
って、より混色が起き難い色要素の形成方法を提供することができる。
【0014】
また、上記第1の描画工程と第2の描画工程の間に、上記少なくとも1つの部分描画領
域以外の他の部分描画領域を少なくとも2回の主走査で描画することで、所定の時間を置
く工程を備えてもよい。
【0015】
この方法によれば、第1の描画工程の後に、他の部分描画領域を少なくとも2回の主走
査で描画するより長い所定の時間を置く工程を実施してから第2の描画工程が行われる。
よって、第1の描画工程で吐出された液状体の乾燥がより進行して減膜することになり、
より混色が起き難い色要素の形成方法を提供することができる。
【0016】
また、上記描画領域を3分割以上の部分描画領域に仮想分割し、上記第1の描画工程と
第2の描画工程の間に、1つの部分描画領域以外の他の部分描画領域のすべてを1回ずつ
描画することで、所定の時間を置く工程を備えてもよい。
【0017】
この方法によれば、描画領域は3分割以上の部分描画領域に仮想分割されるので、第2
の描画工程は、他の部分描画領域のすべてを1回ずつ描画した後、すなわち2回以上の主
走査で描画する所定の時間を置いて行われる。したがって、第1の描画工程で吐出された
液状体の乾燥がより進行して減膜することになり、より混色が起き難い色要素の形成方法
を提供することができる。
【0018】
また、上記第2の描画工程では、第1の描画工程に比べて1回の主走査で吐出する液状
体の吐出量を徐々に減少させて描画することが好ましい。
【0019】
この方法によれば、1つの色要素領域に色要素を形成するために必要な液状体の総量を
単純に主走査回数で分割した吐出量で液状体を吐出する場合に比べて、着弾して濡れ拡が
った液状体により、隔壁部で区画された各色要素領域の容量が徐々に減少するが、同一色
要素領域内に繰り返し吐出される液状体の量が低下してゆくため、液状体の盛り上がり方
が後に行くほど抑制され、異なる種類の液状体が隔壁部を乗り越えて互いに混じり合うこ
とをより低減することができる。
【0020】
また、上記第1の描画工程では、少なくとも1つの部分描画領域に含まれる複数の色要
素領域のうち、互いに隣接しない色要素領域に液状体を吐出して描画し、第2の描画工程
では、第1の描画工程で液状体が吐出されなかった色要素領域に液状体を吐出して描画す
ることが好ましい。
【0021】
この方法によれば、第1の描画工程では、互いに隣接しない色要素領域に液状体が吐出
され、第2の描画工程では、第1の描画工程で吐出されなかった色要素領域を埋めるよう
に液状体が吐出される。よって、第1の描画工程では隣り合う色要素領域には液状体が吐
出されないので、隣り合う色要素領域間での異なる種類の液状体の混じり合いが低減され
る。また、第2の描画工程は、所定の時間を置いてから行われ、第1の描画工程で吐出さ
れた液状体の乾燥が進んだ状態で、再び液状体が吐出される。よって隣接する色要素領域
間で混色が発生することをより低減することができる。
【0022】
また、上記第1の描画工程では、少なくとも1つの部分描画領域に含まれる複数の色要
素領域のそれぞれに、液状体を間隔を置いて複数着弾させて描画し、第2の描画工程では
、第1の描画工程で液状体が着弾していない複数の色要素領域のそれぞれの部位に液状体
を着弾させて描画してもよい。
【0023】
この方法によれば、第2の描画工程では、第1の描画工程で液状体が着弾していない複
数の色要素領域のそれぞれに液状体を着弾させて描画する。したがって、第2の描画工程
で吐出された液状体は、第1の描画工程で吐出された液状体に重なり合って着弾しないの
で、着弾した液状体の盛り上がりを低減することができる。すなわち、盛り上がった液状
体が隔壁部を越えて異なる種類の液状体と混色することを低減することができる。
【0024】
本発明の電気光学装置の製造方法は、一対の基板を有すると共に少なくとも一方の基板
上に配置された隔壁部によって区画された複数の色要素領域を有する電気光学パネルを備
えた電気光学装置の製造方法であって、上記発明の色要素の形成方法を用いて、基板上の
複数の色要素領域に、色要素材料を含む複数種の液状体を吐出して複数種の色要素を描画
する色要素描画工程と、描画された色要素を乾燥して成膜化する成膜工程と、を備えたこ
とを特徴とする。
【0025】
この方法によれば、色要素描画工程では、混色が起き難い色要素の形成方法を用いて複
数種の液状体が基板上の複数の色要素領域に吐出され複数種の色要素が描画される。そし
て、成膜工程では、描画された色要素を乾燥して成膜化される。したがって、混色による
色ムラや表示ムラの発生を低減して歩留まりよく電気光学装置を製造することができる。
【0026】
本発明の電気光学装置は、一対の基板を有すると共に少なくとも一方の基板上に配置さ
れた隔壁部によって区画された色要素領域を有する電気光学パネルを備えた電気光学装置
であって、上記発明の電気光学装置の製造方法を用いて、基板上の複数の色要素領域に、
複数種の色要素が形成されたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、電気光学パネルの基板上の複数種の色要素は、混色が起き難い電気
光学装置の製造方法を用いて製造されているため、混色による色ムラや表示ムラの発生が
低減された高い表示品質を有する電気光学装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、上記発明の電気光学装置を備えたこと特徴とする。これによれば
、混色による色ムラや表示ムラの発生が低減された高い表示品質を有する電気光学装置を
備えているため、表示された画像等の情報を正しく認識することができる電子機器を提供
することができる。
【0028】
また、本発明の液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドと、前記複数の液滴吐出ヘッド
と基板とを対向配置させた状態で相対的に移動させる移動手段を備え、前記基板上に配置
された隔壁部によって区画された複数の色要素領域を含む描画領域に、前記移動手段によ
る複数回の主走査に同期して、色要素材料を含む複数種の液状体を前記複数の液滴吐出ヘ
ッドのノズルから吐出して複数種の色要素を描画形成する液滴吐出装置であって、前記描
画領域を複数の部分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を少なくと
も1回の主走査により描画する第1の描画と、前記第1の描画工程で描画された前記少な
くとも1つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再描画する主走査を少なくとも1回以
上繰り返して描画する第2の描画を制御する描画制御手段を備え、1回の主走査では、1
つの前記色要素領域に前記色要素を形成するために必要な前記液状体の総量を分割した吐
出量で吐出描画することを特徴とする。
この構成によれば、第1の描画では、複数の色要素領域を含む描画領域を複数の部分描
画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を少なくとも1回の主走査により
描画する。そして、第2の描画では、第1の描画で描画された少なくとも1つの部分描画
領域を、所定の時間を置いて再描画する主走査を少なくとも1回以上繰り返して描画する
。また、1回の主走査では、1つの色要素領域に色要素を形成するために必要な液状体の
総量を分割した吐出量で吐出描画される。したがって、第1の描画で描画された少なくと
も1つの部分描画領域に着弾した複数種の液状体は、各色要素領域に濡れ拡がって表面張
力により盛り上がるが、吐出量が必要な総量に対して分割されているため、各色要素領域
を区画する隔壁部を乗り越えて異なる色要素を含む液状体が互いに混じり合うことが低減
される。また、第2の描画では、再描画されるまでに所定の時間が置かれるため、第1の
描画で吐出された液状体の乾燥が進み減膜するので、繰り返し主走査が行われても液状体
の盛り上がりが抑制されて異なる色要素を含む液状体が混じり合うことが低減される。す
なわち、複数種の液状体を吐出描画しても、混色が起き難い液滴吐出装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態は、色要素材料を含む複数種の液状体を液滴として吐出可能な液滴吐
出装置を用いて、電気光学装置としての液晶表示装置を構成する液晶表示パネルにおいて
、基板上の色要素領域に色要素としてのカラーフィルタを描画形成する色要素の形成方法
を例に説明する。
【0030】
(液滴吐出装置)
まず、液滴吐出装置について図1〜図3を基に説明する。図1は、液滴吐出装置の構造
を示す概略斜視図である。
【0031】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ワークとしての基板Wを載置してX軸方向(主
走査方向)に移動させるワーク移動手段2と、複数(2つ)のキャリッジユニット5をY
軸方向(副走査方向)に移動させるヘッド移動手段3とを備えている。複数のキャリッジ
ユニット5には、複数の液滴吐出ヘッド52(図2参照)が基板Wと対向するように搭載
されたキャリッジ51(図3参照)がそれぞれ備えられている。また、ワーク移動手段2
による基板WのX軸方向への移動(主走査)に同期して、複数の液滴吐出ヘッドを選択的
に駆動して複数種の液状体を基板W上に吐出させる描画制御手段としての制御部4(図4
参照)を備えている。この制御部4により、描画領域を複数の部分描画領域に仮想分割し
て、少なくとも1つの部分描画領域を少なくとも1回の主走査により行なう描画や、少な
くとも1回は描画された少なくとも1つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再描画す
る主走査を少なくとも1回以上繰り返して行なう描画を制御する。
【0032】
ワーク移動手段2は、基板Wが載置されるセットテーブル24と、セットテーブル24
をエアスライダ(図示省略)を介してX軸方向に移動させるリニアモータ22を備えた一
対のX軸ガイドレール23とを有している。一対のX軸ガイドレール23は、床上に設置
された共通架台9上に載置されX軸方向に延在する石定盤21上に配設されている。
【0033】
セットテーブル24には、基板Wが真空吸着して固定される吸着テーブル(図示省略)
と、基板Wの表面が複数の液滴吐出ヘッド52と所定の間隔を置いて精度よく対向するよ
うに基板Wの水平調整および角度調整が可能なθテーブル(図示省略)とを備えている。
【0034】
ヘッド移動手段3は、複数のキャリッジユニット5をエアスライダ(図示省略)を介し
てY軸方向に移動させるリニアモータ31を備えた一対のY軸ガイドレール32を有して
いる。一対のY軸ガイドレール32は、共通架台9上に間隔を置いて立脚した8本の支持
スタンド8上にワーク移動手段2を跨ぐように配設されている。
【0035】
一対のY軸ガイドレール32の間には、キャリッジ51に搭載された複数の液滴吐出ヘ
ッド52のノズルの目詰まりの解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを
行うメンテナンス手段14が、複数の液滴吐出ヘッド52を臨む位置に配設されている。
【0036】
キャリッジユニット5は、一対のY軸ガイドレール32に差し渡されるようにして配置
されている。差し渡されたキャリッジユニット5のプレート上には、各液状体が貯留され
たタンクから配管を経由して送り込まれた液状体を所定量貯留して、各液滴吐出ヘッド5
2に液状体を供給する液状体供給ユニット6と、各液滴吐出ヘッド52を駆動するための
電気信号を供給するヘッド用電装ユニット7とが、載置されている。
【0037】
次に液滴吐出ヘッドについて図2に基づいて説明する。図2は、液滴吐出ヘッドを示す
概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルの配置状態を示す平面図である

【0038】
図2(a)に示すように、本実施形態の液滴吐出ヘッド52は、所謂2連のものであり
、2連の接続針54を有する液状体の導入部53と、導入部53に積層されたヘッド基板
55と、ヘッド基板55上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本
体56とを備えている。接続針54は、前述した液状体供給ユニット6に配管を経由して
接続され、液状体をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板55には、フレキシブルフラッ
トケーブル(図示省略)を介して前述のヘッド用電装ユニット7に接続される2連のコネ
クタ59が設けられている。
【0039】
ヘッド本体56は、ピエゾ素子等で構成されたキャビティを有する加圧部57と、ノズ
ル面58aに2つのノズル列62,62が相互に平行に形成されたノズルプレート58と
を有している。
【0040】
図2(b)に示すように、2つのノズル列62,62は、それぞれ複数(180個)の
ノズル61がピッチP1で並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた
状態でノズルプレート58に配設されている。この場合、ピッチP1は、およそ140μ
mである。よって、ノズル列62に直交する方向から見ると360個のノズル61がおよ
そ70μmのノズルピッチ(P2)で配列した状態となっている。尚、実際の液状体の吐
出の際には、ノズル列62の両端側の10個のノズル61を用いていない。これは、両端
側に位置するノズル61からの吐出量が他のノズル61に比べて安定しにくいことを考慮
したものである。したがって、2つのノズル列62,62を有する液滴吐出ヘッド52の
有効ノズルの全長は、ピッチP2×319(およそ22mm)である。
【0041】
液滴吐出ヘッド52は、ヘッド用電装ユニット7から電気信号としての駆動波形がピエ
ゾ素子等に印加されると加圧部57のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ
作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル61から液状体を液滴として吐
出することができる。尚、本実施形態の液滴吐出ヘッド52は、2連のノズル列62を有
しているが、これに限定されず1連のものでもよい。また、以降に述べるノズル列62と
は、有効ノズルの列を指すものとする。
【0042】
次に、キャリッジについて図3に基づいて説明する。図3は、液滴吐出ヘッドが搭載さ
れたキャリッジを示す概略平面図である。詳しくは、ノズル面58aを臨む平面図である

【0043】
図3に示すように、キャリッジ51は、平行四辺形の平面形状となっており、3つの液
滴吐出ヘッド52を1つの群として、4つのヘッド群52A,52B,52C,52Dが
、副走査方向(Y軸方向)と主走査方向(X軸方向)とにそれぞれ2群ずつ配置されてい
る。そして、主走査方向に配列した2つのヘッド群52A,52Bと、もう2つのヘッド
群52C,52Dとの間には、間隔が設けられている。
【0044】
ヘッド群52Aは、それぞれ異なる種類の液状体を吐出するヘッドR1、ヘッドG1お
よびヘッドB1の3つの液滴吐出ヘッド52がY軸方向に並列して配置されたものである
。そして、各液滴吐出ヘッド52のノズル列62の端部の位置がY軸方向において互いに
ずれて配置されている。この場合のずれ量は、(ピッチP2×320)/3すなわち有効
ノズルの全長に1ノズルピッチ加えたものの1/3となっている。他のヘッド群52B,
52C,52Dにおける液滴吐出ヘッド52の配置も同様である。
【0045】
さらに、ヘッド群52Aとヘッド群52Bとにおいて、同一種類の液状体を吐出する液
滴吐出ヘッド52(例えば、ヘッドR1とヘッドR2)のノズル列62は、主走査方向か
ら見て、1ノズルピッチを置いて連続するように配置されている。また、ヘッド群52B
とヘッド群52Cとにおいて、主走査方向から見て、最も近接して位置する同一種類の液
状体を吐出する液滴吐出ヘッド52のノズル列62の間隔が、ノズル列62の全長に1ノ
ズルピッチを加えた長さに、主走査方向(X軸方向)に配列するヘッド群の数を乗じた値
の自然数倍の値に1ノズルピッチ加えた長さとなるように設定されたものである。すなわ
ち、例えば、ヘッドR2とヘッドR3の各液滴吐出ヘッド52のノズル列62の間隔は、
有効ノズルの全長(P2×319)に1ノズルピッチ(P2)を加えたものの2倍に1ノ
ズルピッチ(P2)、すなわち(P2×320)×2+P2となっている。
【0046】
また、2つのキャリッジ51,51の間隔L1は、異なるキャリッジ51に配置された
複数の液滴吐出ヘッド52のうち、主走査方向から見て、最も近接して位置する同一種類
の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド52のノズル列62の間隔が、ノズル列62の全長に
1ノズルピッチを加えた長さに、主走査方向(X軸方向)に配列するヘッド群の数を乗じ
た値の自然数倍の値に1ノズルピッチ加えた長さとなるように設定されている。例えば、
ヘッドR4とヘッドR5の各液滴吐出ヘッド52のノズル列62の間隔が、(P2×32
0)×2+P2となるように間隔L1が設定されている。
【0047】
キャリッジ51を用いて、X軸方向への主走査とY軸方向へ(P2×320)×2+P
2の間隔で移動させる副走査とを繰り返して行えば、副走査方向に連続した描画幅で、3
種の異なる液状体を吐出することが可能となる。詳しい吐出描画の方法については、後述
する。
【0048】
次に液滴吐出装置1の制御系について説明する。図4は、液滴吐出装置の制御系を示す
ブロック図である。図4に示すように、液滴吐出装置1の制御系は、キーボード12とデ
ィスプレイ13とが本体11に接続された上位コンピュータ10と、液滴吐出ヘッド52
、ワーク移動手段2、ヘッド移動手段3、メンテナンス手段14等を駆動する各種ドライ
バを有する駆動部46と、駆動部46を含め液滴吐出装置1全体を統括制御する制御部4
とを備えている。
【0049】
駆動部46は、ワーク移動手段2およびヘッド移動手段3の各リニアモータ22,31
をそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド52を吐出駆動制御する
ヘッドドライバ48と、メンテナンス手段14の各メンテ用ユニットを駆動制御するメン
テナンス用ドライバ49とを備えている。
【0050】
制御部4は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44とを備え、
これらは互いにバス45を介して接続されている。ROM42は、CPU41で処理する
制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うた
めの制御データ等を記憶する制御データ領域とを有している。
【0051】
RAM43は、基板Wに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、基
板Wおよび液滴吐出ヘッド52の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部
を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、駆動部
46の各種ドライバのほか、ワーク認識カメラ15やヘッド認識カメラ16等が接続され
ており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うた
めの論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上位コンピ
ュータ10からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス45に取り込むと共に、C
PU41と連動して、CPU41等からバス45に出力されたデータや制御信号を、その
ままあるいは加工して駆動部46に出力する。
【0052】
そして、CPU41は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介
して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM43内の各種データ等を処
理した後、P−CON44を介して駆動部46等に各種の制御信号を出力することにより
、液滴吐出装置1全体を制御している。例えば、CPU41は、液滴吐出ヘッド52、ワ
ーク移動手段2およびヘッド移動手段3を制御して、所定の描画条件および所定の移動条
件で、基板Wと液滴吐出ヘッド52との相対的な移動(複数回の主走査)に同期して、基
板Wに対向配置された複数の液滴吐出ヘッド52のノズル61から液状体を吐出させて描
画を行う。また、1回の主走査により液滴吐出ヘッド52の各ノズル61から吐出される
液滴の量をヘッドドライバ48からの制御信号に基づいて駆動波形を選択することにより
可変することが可能である。
【0053】
(液晶表示装置)
次に本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置について図5に基づいて説明する
。図5は、液晶表示装置の構造を示す概略斜視図である。図5に示すように、本実施形態
の液晶表示装置100は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル1
20と、液晶表示パネル120を照明する照明装置116とを備えている。液晶表示パネ
ル120は、色要素としてのカラーフィルタを有する対向基板101と、画素電極110
に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子111を有する素子基板108と、一対の
対向基板101、素子基板108によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。
また、液晶表示パネル120の外面側となる一対の対向基板101、素子基板108の表
面には、透過する光を偏向させる上偏光板114と下偏光板115とが配設される。
【0054】
対向基板101は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部104
によってマトリクス状に区画された複数の色要素領域に、複数種の色要素としてRGB3
色のカラーフィルタ105R,105G,105Bが形成されている。隔壁部104は、
Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれ
る下層バンク102と、下層バンク102の上(図面では下向き)に形成された有機化合
物からなる上層バンク103とにより構成されている。また対向基板101は、隔壁部1
04と隔壁部104によって区画されたカラーフィルタ105R,105G,105Bと
を覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)106と、OC層106を覆うよう
に形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極107と
を備えている。カラーフィルタ105R,105G,105Bは後述する液晶表示装置の
製造方法を用いて製造されている。
【0055】
素子基板108は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜
109を介してマトリクス状に形成された画素電極110と、画素電極110に対応して
形成された複数のTFT素子111とを有している。TFT素子111の3端子のうち、
画素電極110に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極110を
囲むように格子状に配設された走査線112とデータ線113とに接続されている。
【0056】
照明装置116は、例えば光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これら
の光源からの光を液晶表示パネル120に向かって出射することができる導光板や拡散板
、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0057】
尚、液晶表示パネル120は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin
Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラー
フィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置される
パッシブ型の液晶表示装置でもよい。また、上偏光板114、下偏光板115は、視角依
存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わ
されたものでもよい。
【0058】
(液晶表示装置の製造方法)
次に本発明の色要素の形成方法を用いた液晶表示装置の製造方法について、図6〜図1
2に基づいて説明する。図6は、液晶表示装置の製造方法を示すフローチャートである。
図7(a)〜(g)は、液晶表示装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態の液晶表示装置100の製造方法は、対向基板101の
表面に隔壁部104を形成する工程と、隔壁部104によって区画された色要素領域を表
面処理する工程とを備えている。また、液滴吐出装置1を用いて表面処理された色要素領
域に色要素形成材料としてのカラーフィルタ形成材料を含む3種(3色)の液状体を付与
して、カラーフィルタ105を描画する色要素描画工程としての第1の描画工程および第
2の描画工程と、描画されたカラーフィルタ105を乾燥して成膜化する成膜工程とを備
えている。さらに隔壁部104とカラーフィルタ105とを覆うようにOC層106を形
成する工程と、OC層106を覆うように透明な対向電極107を形成する工程とを備え
ている。
【0060】
液滴吐出装置1を用いて色要素を描画形成する場合、実際の液晶表示パネル120の対
向基板101の製造工程では、1つの液晶表示パネル120に対応する対向基板101が
マトリクス状に配置されるよう設計されたマザー基板が用いられる。昨今、マザー基板は
、大画面の液晶表示パネル120の製造、またこれを効率的かつ安価に製造するために大
型化している。このような大型のマザー基板に複数種の色要素としてのカラーフィルタを
形成する方法として、カラーフィルタ材料を無駄なく使用してカラーフィルタを効率的に
形成するために液滴吐出法を用いている。
【0061】
図6のステップS1は、隔壁部104を形成する工程である。ステップS1では、図7
(a)に示すように、まずブラックマトリクスとしての下層バンク102を対向基板10
1上に形成する。下層バンク102の材料は、例えば、Cr、Ni、Al等の不透明な金
属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を用いることができる。下層バンク102
の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜を対向基板101
上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい
。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法
により開口部102aに対応する部分以外をレジストで膜を覆い、上記材料に対応する酸
等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部102aを有する下層
バンク102が形成される。
【0062】
次に上層バンク103を下層バンク102の上に形成する。上層バンク103の材料と
しては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、
遮光性を有することが好ましい。上層バンク103の形成方法としては、例えば、下層バ
ンク102が形成された対向基板101の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピ
ンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして
、色要素領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを対向基板101と所定の
位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク103を形成する方法が挙げら
れる。これにより対向基板101上に複数の色要素領域Aをマトリクス状に区画する隔壁
部104が形成される。そしてステップS2へ進む。
【0063】
図6のステップS2は、表面処理工程である。ステップS2では、O2を処理ガスとす
るプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、色要
素領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク103の表面(壁面を含
む)が撥液処理される。そしてステップS3へ進む。
【0064】
ここで実際に用いるマザー基板としての基板Wの描画領域に対する描画方法について図
8を基に説明する。図8は、基板の描画領域に対する描画方法を示す模式図である。詳し
くは、基板Wに対してキャリッジ51に搭載された液滴吐出ヘッド52のノズル面58a
が対向するように配置された状態に基づく模式図である。尚、図面上の各異なる種類の液
状体を吐出するヘッドR1、ヘッドG1、ヘッドB1で始まる各液滴吐出ヘッド52を示
す四角形のY軸方向の幅は、当該液滴吐出ヘッド52の有効ノズルの全長に対応した描画
幅Iwを示すものである。また、色要素領域Aならびにヘッド群52A〜52Hの大きさ
は、説明をわかりやすくするために、適当な大きさに拡大あるいは縮小して表示している

【0065】
図8(a)および(b)に示すように、マザー基板としての基板Wの描画領域Eには、
複数の色要素領域AがY軸方向に同一種類の色要素が配列するように隔壁部104によっ
て区画されている。また異なる種類の色要素がX軸方向にRGBの順に配列するように区
画されている。いわゆるストライプ方式の色要素領域Aの配置となっている。
【0066】
このような基板Wに対してキャリッジ51は、Y軸方向に2つ並ぶように位置しており
、先に説明した液滴吐出装置1のワーク移動手段2による基板WのX軸方向への移動すな
わち主走査に同期して、液滴吐出ヘッド52の各ノズル61から複数の色要素領域Aに選
択的に複数種の液状体を吐出することにより、複数色のカラーフィルタを描画可能となっ
ている。
【0067】
図8(a)に示すように、基板Wの描画領域Eは、7つの部分描画領域E1〜E7に仮
想分割されている。各部分描画領域E1〜E7の幅は、キャリッジ51に搭載された同一
種類の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド52のノズル列62が主走査方向から見て連続し
ている部分の長さ(P2×319)×2+P2、すなわち当該液滴吐出ヘッド52の有効
ノズルの全長に対応した描画幅Iwの2倍に1ノズルピッチ加えた長さとなっている。例
えば、B(青色)のカラーフィルタ材料を含む液状体を吐出するヘッドB4の有効ノズル
の端が描画領域EのY軸方向の端とほぼ同じ位置になるようにキャリッジ51を基板Wに
対して位置決めし主走査を行えば、4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7に配列し
たBの色要素領域Aに対して、Bのカラーフィルタ材料を含む液状体を隈なく吐出するこ
とが可能である。
【0068】
この場合、キャリッジ51に搭載された、異なる種類の液状体を吐出する液滴吐出ヘッ
ド52のノズル列62の端部の位置は、互いにずれて配置されている。したがって、他の
種類の液状体を略同時に吐出すると、4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7におい
て、GとRの色要素領域Aに対応する液状体がY軸方向で吐出されない部分が生じる。よ
って、ノズル列62の端部のずれ量に相当する長さで、キャリッジ51をY軸方向に副走
査した後に、主走査を行えば、異なる種類の液状体を4つの部分描画領域E1,E3,E
5,E7に配列した3種(RGB)の色要素領域Aに対して、隈なく吐出することが可能
である。尚、この場合、ノズル列62の端部のずれ量に相当する長さの2倍で副走査して
も同様に隈なく吐出することが可能であり、副走査の回数を減ずることができる。
【0069】
図8(b)に示すように、他の部分描画領域E2,E4,E6を描画する場合には、キ
ャリッジ51をY軸方向に有効ノズルの全長に対応した描画幅Iwの2倍に1ノズルピッ
チ加えた長さ、すなわち(P2×319)×2+P2に相当する長さで移動(改行)させ
る。そしてX軸方向に主走査すれば、描画領域Eの全域に渡って異なる種類の液状体を対
応する色要素領域Aに吐出することが可能である。この場合も、各ノズル列62のずれ量
に対応した副走査を行ってから主走査することを繰り返せば、他の部分描画領域E2,E
4,E6に配列した3種(RGB)の色要素領域Aに対して、隈なく吐出することが可能
である。
【0070】
尚、本実施形態では、基板Wの描画領域Eを均等に仮想7分割した部分描画領域E1〜
E7を前提に説明したが、これに限らず、基板Wのサイズに応じて仮想分割して、余った
領域が発生してもよい。例えば、部分描画領域E7の幅が、他の部分描画領域E1〜E6
に比べて狭くても対応可能である。また、基板Wの大きさが、2つのキャリッジ51を間
隔L1をおいて配置した場合よりも、大きい場合は、改行動作をさらに行うか、キャリッ
ジ51を増設すれば対応することができる。
【0071】
以上のような基本的な描画方法を踏まえて、図6のステップS3について説明する。ス
テップS3は、色要素としてのカラーフィルタの第1の描画工程である。ステップS3で
は、図7(b)に示すように、表面処理された各色要素領域Aのそれぞれに、対応する液
状体70R,70G,70Bを付与してカラーフィルタ105を描画する。液状体70R
はR(赤色)のカラーフィルタ形成材料を含み、液状体70GはG(緑色)のカラーフィ
ルタ形成材料を含み、液状体70BはB(青色)のカラーフィルタ形成材料を含むもので
ある。そして液滴吐出装置1を用い、液滴吐出ヘッド52に各液状体70R,70G,7
0Bを充填し、液滴として色要素領域Aに着弾させる。第1の描画工程では、図8(a)
に示すようにヘッドB4の端部を基準とする1回の主走査と、ノズル列62のずれ量に対
応する副走査と主走査とを少なくとも1回繰り返すことにより、4つの部分描画領域E1
,E3,E5,E7を吐出描画する。続いて図8(b)に示すように、キャリッジ51を
改行させて、ヘッドB4の端部を基準とする1回の主走査と、ノズル列62のずれ量に対
応する副走査と主走査とを少なくとも1回繰り返すことにより、残りの部分描画領域E2
,E4,E6を吐出描画する。この場合の1つの色要素領域Aに吐出される液状体の吐出
量は、必要な液状体の総量を分割して減少させている。したがって、着弾した異なる種類
の各液状体70R,70G,70Bは、色要素領域Aに濡れ拡がって表面張力により盛り
上がるが、吐出量が必要な総量に対して減じられているので、互いに隔壁部104を乗り
越えて混じり合うことが抑制される。
【0072】
また、先に吐出描画された部分描画領域E1,E3,E5,E7の色要素領域Aに着弾
した各液状体70R,70G,70Bは、残りの部分描画領域E2,E4,E6を吐出描
画する所定の時間を置く工程を備えることにより、溶媒成分が蒸発して自然乾燥が進み、
図7(c)に示すように膜減りした第1描画層105aとなる。尚、残りの部分描画領域
E2,E4,E6においても、以降に説明する第2の描画工程で再描画されるまでに、先
に4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7が再描画される所定の時間を置く工程が実
施されるので、第1の描画工程で吐出された各液状体70R,70G,70Bは、図7(
c)に示すように膜減りした第1描画層105aとなる。そしてステップS4へ進む。
【0073】
図6のステップS4は、第2の描画工程である。ステップS4では、まず4つの部分描
画領域E1,E3,E5,E7を再吐出描画する。続いて残りの部分描画領域E2,E4
,E6を再吐出描画する。この場合の各部分描画領域E1〜E7を描画する方法は、基本
的にステップS3の第1の描画工程と同様であるが、再描画時の1つの色要素領域Aに1
回の主走査によって吐出される液状体の吐出量は、先の第1の描画工程に比べて徐々に減
少させている。したがって、図7(d)に示すように、第1描画層105aの上に各液状
体70R,70G,70Bを吐出しても、表面張力で盛り上がった各液状体70R,70
G,70Bは、吐出量が減じられているので、互いに隔壁部104を乗り越えて混じり合
うことが抑制される。そしてステップS5へ進む。尚、第1の描画工程および第2の描画
工程におけるさらに詳しい色要素の形成方法については、後述する。
【0074】
図6のステップS5は、描画されたカラーフィルタ105を乾燥して成膜化する工程で
ある。ステップS5では、図7(e)に示すように、第1描画層105a上に第2描画層
105bが積層されるように吐出描画されたカラーフィルタ105を一括乾燥し、各液状
体70R,70G,70Bから溶剤成分を除去してカラーフィルタ105R,105G,
105Bを成膜する。乾燥方法としては、溶剤成分を均質に乾燥可能な減圧乾燥などの方
法が望ましい。そしてステップS6へ進む。
【0075】
図6のステップS6は、OC層形成工程である。ステップS6では、図7(f)に示す
ように、カラーフィルタ105と上層バンク103とを覆うようにOC層106を形成す
る。OC層106の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形
成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層10
6は、カラーフィルタ105が形成された対向基板101の表面の凹凸を緩和して、後に
この表面に膜付けされる対向電極107を平担化するために設けられている。また、対向
電極107との密着性を確保するために、OC層106の上にさらにSiO2などの薄膜
を形成してもよい。そしてステップS7へ進む。
【0076】
図6のステップS7は、対向電極107を形成する工程である。ステップS7では、図
7(g)に示すように、スパッタ法や蒸着法を用いてITOなどの透明電極材料を真空中
で成膜して、OC層106を覆うように全面に対向電極107を形成する。
【0077】
上記の液晶表示装置の製造方法において、4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7
に着目したが、残りの部分描画領域E2,E4,E6に着目すれば、同様に第1の描画工
程と第2の描画工程を備え、第1の描画工程後、4つの部分描画領域E1,E3,E5,
E7を吐出描画する所定の時間を置いた後に、第2の描画工程が行われることになる。
【0078】
本実施形態では、カラーフィルタ105を第1描画層105aに第2描画層105bを
積層するように形成したが、これに限らず複数の描画層が積層される構成としてもよい。
また、下層バンク102および上層バンク103により隔壁部104を形成する例を示
したが、これに限らず、遮光性のある材料を用いて1層バンクの構成としてもよい。
【0079】
上記の液晶表示装置の製造方法を用いて、対向基板101に色要素としてのカラーフィ
ルタ105を形成すれば、カラーフィルタ105の混色不良を低減して歩留まりよく対向
基板101を製造すること可能である。また、出来上がった対向基板101と画素電極1
10およびTFT素子111を有する素子基板108とを接着剤を用いて所定の位置で接
着し、一対の対向基板101、素子基板108との間に液晶を充填すれば、カラーフィル
タ105の混色が低減された見映えのよい表示品質を有する液晶表示装置100が出来上
がる。
【0080】
次に液晶表示装置100の製造方法における色要素の形成方法としての第1の描画工程
および第2の描画工程の液状体の吐出描画について、実施例1〜4を基にさらに詳しく説
明する。
【0081】
(実施例1)
図9は、実施例1の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図である。詳しくは、同図(
a)は第1の描画工程の液状体の着弾状態を示し、同図(b)は第2の描画工程の液状体
の着弾状態を示すものである。
【0082】
図9(a)に示すように、第1の描画工程では、先に図8に示した4つの部分描画領域
E1,E3,E5,E7の複数の色要素領域Aに、少なくとも2回の主走査により異なる
種類の液状体70R,70G,70Bを液滴として吐出描画する。各色要素領域Aに着弾
した液状体71の吐出量は、1つの色要素領域Aに色要素を形成するために必要な総量が
分割された量である。そして、図8に示した残りの部分描画領域E2,E4,E6を同様
にして吐出描画する所定の時間を置く工程を実施してから、再び4つの部分描画領域E1
,E3,E5,E7を再吐出描画する。この時の各色要素領域Aに着弾した液状体72の
吐出量は、先に着弾した液状体71の残量があることを考慮して液状体71の吐出量に比
べて減じられている。したがって、必要な総量を第1の描画工程ですべて吐出する場合に
比べて、所定の時間を置いて先に着弾した液状体71が色要素領域Aに濡れ拡がり自然乾
燥して減膜した後に液状体72が着弾するので、隔壁部104を超えて異なる種類の液状
体70R,70G,70Bが互いに混じり合い混色が起きることが低減される。
【0083】
(実施例2)
図10は、実施例2の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図である。詳しくは、同図
(a)は第1の描画工程の液状体の着弾状態を示し、同図(b)および(c)は第2の描
画工程の液状体の着弾状態を示すものである。実施例2は、実施例1に対して、第2の描
画工程では、部分描画領域をさらに仮想分割した分割領域の一を主走査により描画し、所
定の時間を置いて、残りの分割領域を描画する主走査を少なくとも1回以上繰り返すもの
である。
【0084】
図10(a)に示すように、第1の描画工程では、実施例1と同様にして、まず図8に
示した描画領域Eを4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7と残りの部分描画領域E
2,E4,E6とに分割して主走査を繰り返すことにより吐出描画する。そして残りの部
分描画領域E2,E4,E6を吐出描画する所定の時間を置いてから、再び描画領域Eを
再吐出描画する第2の描画工程を行う。この時、図10(b)に示すように、例えば部分
描画領域E1は、さらに2つの分割領域E1aと分割領域E1bとに仮想分割され、まず
分割領域E1aを再吐出描画する。着弾した液状体71,72の吐出量は、実施例1と同
様に徐々に減少させている。他の3つの部分描画領域E3,E5,E7においても同様に
さらに2つに仮想分割した一の分割領域を再描画する。そして、改行(副走査)を行い残
りの部分描画領域E2,E4,E6も同様に2つに仮想分割した一の分割領域を再描画す
る。次に、図10(c)に示すように、残りの部分描画領域E2,E4,E6の一の分割
領域を再描画する所定の時間を置いて、今度は、4つの部分描画領域E1,E3,E5,
E7の残りの分割領域E1bを、再吐出描画する。このようにすれば、残りの分割領域が
再吐出描画されるまでに実施例1に比べて長い時間が必要となるため、残りの分割領域に
おいて着弾した液状体71の自然乾燥が進み、より減膜した後で次の液状体72が着弾す
るので、より混色が低減される。
【0085】
(実施例3)
図11は、実施例3の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図である。詳しくは、同図
(a)、(b)は第1の描画工程の吐出描画状態を示し、同図(c)、(d)は第2の描
画工程の吐出描画状態を示すものである。実施例3は、第1の描画工程では、描画領域E
に含まれる複数の色要素領域Aのうち、互いに隣接しない色要素領域Aに液状体を吐出し
て描画し、第2の描画工程では、第1の描画工程で液状体が吐出されなかった色要素領域
Aに液状体を吐出して描画するものである。
【0086】
図11(a)に示すように、第1の描画工程では、まず描画領域EのRGB3種の色要
素が形成される複数の色要素領域Aの内、互いに隣接しない色要素領域Aに、吐出される
総量が分割された液状体71を着弾させる。そして図11(b)に示すように、さらに吐
出量が減少した液状体72を着弾させる。この時、図8に示したように描画領域Eを4つ
の部分描画領域E1,E3,E5,E7と残りの部分描画領域E2,E4,E6とに分割
して主走査を繰り返すことにより液状体71,72を吐出して描画する。次に図11(c
)に示すように、第2の描画工程では、第1の描画工程で液状体71,72が吐出されな
かった色要素領域Aに、液状体71を着弾させる。そして図11(d)に示すように、さ
らに吐出量が減少した液状体72を着弾させる。液状体71,72の吐出描画の方法は、
第1の描画工程と同様に描画領域Eを4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7と残り
の部分描画領域E2,E4,E6とに分割して主走査を繰り返す。このようにすれば、隣
接する色要素領域Aの一方に液状体71,72が着弾する。そして、液状体72は、残り
の部分描画領域E2,E4,E6に液状体71を吐出描画する所定の時間を置いてから、
4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7に吐出される。また、残りの部分描画領域E
2,E4,E6では、4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7に液状体72が吐出さ
れる所定の時間を置いてから、液状体72が吐出される。よって、1回の主走査において
隣接する色要素領域Aに液状体71,72が着弾せず、先に吐出される液状体71が上記
所定の時間を置くことで自然乾燥が進み減膜した状態になってから、液状体72が着弾す
る。ゆえに異なる種類の液状体同士が隔壁部104を超えて混じり合い混色することがよ
り低減される。
【0087】
(実施例4)
図12は、実施例4の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図である。実施例4は、第
1の描画工程では、描画領域Eに含まれる複数の色要素領域Aのそれぞれに、液状体を間
隔を置いて複数着弾させて描画し、第2の描画工程では、第1の描画工程で液状体が着弾
していない複数の色要素領域Aのそれぞれの部位に液状体を着弾させて描画するものであ
る。
【0088】
図12(a)に示すように、第1の描画工程では、描画領域EのRGB3種の色要素が
形成される複数の色要素領域Aのそれぞれに、少なくとも2回の主走査により、液状体7
1,72を間隔を置いて着弾させて描画する。この場合も、図8に示したように、描画領
域Eを4つの部分描画領域E1,E3,E5,E7と残りの部分描画領域E2,E4,E
6とに分割して主走査を繰り返すことにより液状体71,72を吐出して描画する。この
時、異なる種類の色要素が形成される色要素領域Aにおいて、互いに液状体71,72が
副走査方向にずれて着弾するように液状体71,72を吐出する。次に図12(b)に示
すように、第2の描画工程では、第1の描画工程で液状体71,72が着弾していない複
数の色要素領域Aのそれぞれの部位73に液状体71,72を着弾させて再吐出描画する
。再吐出描画でも同様に図8に示した描画領域Eを4つの部分描画領域E1,E3,E5
,E7と残りの部分描画領域E2,E4,E6とに分割して主走査を繰り返すことにより
液状体71,72を吐出して描画する。このようにすれば、第1の描画工程では、異なる
種類の色要素が形成される色要素領域Aのそれぞれに互いにずれた状態で間隔を置いて液
状体71,72が着弾するので、着弾した位置で盛り上がった液状体71,72が隔壁部
104を超えて互いに混じり合い混色となることが低減される。また、第2の描画工程で
は、分割して主走査を行う所定の時間を置いて、複数の色要素領域Aのそれぞれの部位7
3に液状体71,72が着弾するため、先に着弾した液状体71,72の自然乾燥が進み
、より減膜した状態で次の液状体71,72がその間に着弾するので、より混色が低減さ
れる。
【0089】
上記実施例1〜4では、各色要素領域Aにおいて、液状体71,72が副走査方向に1
列に並んだ状態で着弾しているが、実際には、図2に示すように液滴吐出ヘッド52は、
2連のノズル列62を有しているため、各液状体71,72をそれぞれ2列に着弾させて
もよい。また、1つの色要素領域Aに着弾する液滴の数(量)は、色要素領域Aのサイズ
や各液状体の種類によって変えてもよい。
【0090】
(電子機器)
次に上記液晶表示装置の製造方法を用いて製造された電気光学装置としての液晶表示装
置を備えた電子機器について図13に基づいて説明する。図13は、電子機器としての携
帯型情報処理装置を示す概略斜視図である。
【0091】
図13に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯型情報処理装置200は、入
力用のキーボード202を有する情報処理装置本体201と、表示部203とを備えてい
る。表示部203には、カラーフィルタ105の混色が低減された見映えのよい表示品質
を有する液晶表示装置100が搭載されている。
【0092】
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)本実施形態の液晶表示装置100の製造方法において、第1の描画工程では、基
板Wの描画領域Eを仮想分割した7つの部分描画領域E1〜E7のうち、まず4つの部分
描画領域E1,E3,E5,E7を少なくとも2回の主走査により各液状体70R,70
G,70Bを吐出描画する。そしてキャリッジ51を移動させる改行(副走査)を行って
、残りの部分描画領域E2,E4,E6を同様に吐出描画する。これにより第1描画層1
05aを形成する。残りの部分描画領域E2,E4,E6を少なくとも2回の主走査によ
り吐出描画する所定の時間を置く工程の後に、第2の描画工程では、再び4つの部分描画
領域E1,E3,E5,E7を少なくとも2回の主走査により再描画する。第1の描画工
程の1回の主走査では、色要素領域Aに色要素としてのカラーフィルタ105を形成する
ために必要な総量を分割した吐出量で各液状体70R,70G,70Bを吐出描画し、第
2の描画工程では、第1の描画工程に対して吐出量を徐々に減少させて吐出描画する。し
たがって、第1の描画工程では、隔壁部104を超えて各液状体70R,70G,70B
が互いに混じり合うことが抑制される。また第2の描画工程では、上記所定の時間を置い
てから再び吐出描画され、第1の描画工程で吐出された各液状体70R,70G,70B
が上記所定の時間において自然乾燥により減膜した後に、再び着弾するので、異なる種類
の液状体同士が隔壁部104を超えて混じり合うことが抑制される。すなわち、カラーフ
ィルタ105の混色を低減することができる。
【0093】
(2)液晶表示装置100の製造方法の実施例2の色要素の形成方法において、第2の
描画工程では、部分描画領域E1,E3,E5,E7をさらに2つに仮想分割した分割領
域の一を主走査により描画した後に、他の部分描画領域E2,E4,E6をさらに2つに
仮想分割した分割領域の一を主走査により描画する所定の時間を置いて、残りの分割領域
を少なくとも2回の主走査により描画する。したがって、残りの分割領域は、より長い時
間を置いてから第1の描画工程で着弾した液状体71の自然乾燥がより進んだ状態で、再
描画されるため、異なる種類の液状体同士が隔壁部104を超えて混じり合うことが抑制
され、よりカラーフィルタ105の混色が低減される。
【0094】
(3)液晶表示装置100の製造方法の実施例3の色要素の形成方法おいて、第1の描
画工程では、互いに隣接しない色要素領域Aに液状体71,72を吐出して描画し、第2
の描画工程では、描画領域Eを分割して主走査する所定の時間を置いて、第1の描画工程
で液状体71,72が着弾しなかった色要素領域Aに液状体71,72が着弾する。した
がって、隣接する色要素領域Aの一方に液状体71,72が着弾するので、異なる種類の
液状体同士が隔壁部104を超えて混じり合い混色することがより低減される。
【0095】
(4)液晶表示装置100の製造方法の実施例4の色要素の形成方法おいて、第1の描
画工程では、異なる種類の色要素が形成される色要素領域Aのそれぞれに互いにずれた状
態で間隔を置いて液状体71,72が着弾する。第2の描画工程では、描画領域Eを分割
して主走査する所定の時間を置いて、該間隔を埋めるように再び液状体71,72が着弾
する。したがって、先に着弾した液状体71,72の自然乾燥が進み、より減膜した状態
で次の液状体71,72がその間の部位73に着弾するので、異なる種類の液状体同士が
隔壁部104を超えて混じり合い混色することがより低減される。
【0096】
(5)本実施形態の携帯型情報処理装置200は、液晶表示装置100を搭載している
ため、色ムラ等の表示不具合の少ない、高い表示品質で文字や画像等の情報を確認するこ
とが可能な電子機器としての携帯型情報処理装置200を提供することができる。
【0097】
上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
(変形例1)上記実施例1〜4における色要素の形成方法において、先の主走査により
着弾した液状体71(あるいは液状体71,72)の乾燥は、自然乾燥に限定されない。
例えば、基板Wを加温可能なヒータを液滴吐出装置1に備えて乾燥させてもよい。また、
基板Wの表面を流れるように気流を設定し、液状体71からの溶媒の蒸発を促すようにし
て乾燥させてもよい。
【0098】
(変形例2)液晶表示装置100の製造方法において、1回の主走査で色要素領域Aに
吐出する各液状体70R,70G,70Bの吐出量は、ノズル61から吐出される1つの
液滴の量を同じとして、色要素領域Aに着弾する数を第1の描画工程と第2の描画工程と
で変えてもよい。このようにすれば、液状体71に対して液状体72の液滴の大きさを変
えるような複雑な吐出制御をせずとも、総量を分割して色要素領域Aに各液状体70R,
70G,70Bを吐出することができる。
【0099】
(変形例3)液滴吐出装置1において、キャリッジ51に搭載される液滴吐出ヘッド5
2の配置は、これに限定されない。例えば、異なる種類の液状体を吐出する各液滴吐出ヘ
ッド52をX軸方向において同じ描画範囲となるように、Y軸方向に並列させて配置して
もよい。このようにすれば、異なる種類の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド52のノズル
列62のずれ量を考慮して行う副走査と主走査の回数を減らすことができる。
【0100】
(変形例4)液滴吐出装置1において、キャリッジ51の数は、2つに限定されない。
また、キャリッジ51に搭載される液滴吐出ヘッド52の配置は、これに限定されない。
例えば、キャリッジ51を1つとして、ヘッド群52A,52Bとヘッド群52C,52
Dの異なるヘッド群列間において、同一種類の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド52のノ
ズル列62の間隔が(P2×320)×4+P2となるように各液滴吐出ヘッド52をキ
ャリッジ51に配置する。すなわち、このようなキャリッジ51を用いれば、主走査方向
に配列したヘッド群(ヘッド群列)が描画可能な描画幅の2倍の間隔を開けた状態で吐出
描画することになる。そして描画領域Eを部分描画領域E1,E4、部分描画領域E2,
E5、部分描画領域E3,E6、部分描画領域E7の4つ(3つ以上)に分割して主走査
を繰り返すように吐出描画するようにしてもよい。このようにすれば、第1の描画工程で
は、分割された描画領域Eの各領域を一ずつ改行して吐出描画し、第2の描画工程では、
例えば、部分描画領域E1,E4以外の他の部分描画領域のすべてを1回ずつ描画する所
定の時間を置いてから部分描画領域E1,E4を再描画することができる。
【0101】
(変形例5)上記実施形態の基板Wにおける、色要素領域Aの配置は、ストライプ方式
に限定されない。図14は、色要素領域の配列を示す概略図である。上記実施形態のおけ
る色要素領域Aの配列は、図14(a)に示すようなストライプ方式であるが、図14(
b)に示すモザイク方式あるいは、図14(c)に示すデルタ方式であっても、上記実施
形態と同様な色要素の形成方法を適用することができ、その効果を奏する。
【0102】
(変形例6)上記実施例1〜4に示した色要素としてのカラーフィルタ105の形成方
法は、隔壁部によって区画された色要素領域に、透明電極を形成し、形成された透明電極
上に正孔注入輸送層を積層した後に、発光層形成材料を含む複数種の液状体を吐出描画し
て色要素として有機ELなどの発光層を形成する場合にも適用することができる。
【0103】
(変形例7)液晶表示装置100が搭載される電子機器は、携帯型情報処理装置200
に限定されない。例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)と呼
ばれる携帯型情報機器や携帯端末機器、卓上型パーソナルコンピュータ、ワープロ、デジ
タルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、ビューファイン
ダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子
手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末機等々
の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても見映えのよ
い表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】液滴吐出装置の構造を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドを示す概略図。
【図3】液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジを示す概略平面図。
【図4】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図5】液晶表示装置の構造を示す概略斜視図。
【図6】液晶表示装置の製造方法を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(g)は、液晶表示装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】(a)、(b)は、基板の描画領域に対する描画方法を示す模式図。
【図9】実施例1の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図。
【図10】実施例2の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図。
【図11】実施例3の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図。
【図12】実施例4の液状体の吐出描画状態を示す概略平面図。
【図13】電子機器としての携帯型情報処理装置を示す概略斜視図。
【図14】(a)〜(c)は、色要素領域の配列を示す概略図。
【符号の説明】
【0105】
1…液滴吐出装置、2…移動手段としてのワーク移動手段、3…移動手段としてのヘッ
ド移動手段、52…液滴吐出ヘッド、61…ノズル、70R,70G,70B…色要素材
料を含む液状体、71,72…着弾した液状体、73…液状体が着弾していない複数の色
要素領域のそれぞれの部位、100…電気光学装置としての液晶表示装置、101…基板
としての対向基板、104…隔壁部、105…色要素としてのカラーフィルタ、120…
電気光学パネルとしての液晶表示パネル、200…電子機器としての携帯型情報処理装置
、A…色要素領域、E…描画領域、E1〜E7…部分描画領域、E1a,E1b…分割領
域、W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液滴吐出ヘッドと、前記複数の液滴吐出ヘッドと基板とを対向配置させた状態で
相対的に移動させる移動手段とを備えた液滴吐出装置を用い、前記基板上に配置された隔
壁部によって区画された複数の色要素領域を含む描画領域に、前記移動手段による複数回
の主走査に同期して、色要素材料を含む複数種の液状体を前記複数の液滴吐出ヘッドのノ
ズルから吐出して複数種の色要素を描画形成する色要素の形成方法であって、
前記描画領域を複数の部分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を
少なくとも1回の主走査により描画する第1の描画工程と、
前記第1の描画工程で描画された前記少なくとも1つの部分描画領域を、所定の時間を
置いて再描画する主走査を少なくとも1回以上繰り返して描画する第2の描画工程と、を
備え、
1回の主走査では、1つの前記色要素領域に前記色要素を形成するために必要な前記液
状体の総量を分割した吐出量で吐出描画することを特徴とする色要素の形成方法。
【請求項2】
前記第2の描画工程では、前記少なくとも1つの部分描画領域をさらに仮想分割した分
割領域の一を主走査により描画し、所定の時間を置いて、残りの分割領域を描画する主走
査を少なくとも1回以上繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載の色要素の形成
方法。
【請求項3】
前記第1の描画工程と前記第2の描画工程の間に、前記少なくとも1つの部分描画領域
以外の他の部分描画領域を少なくとも1回の主走査で描画することで、前記所定の時間を
置く工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の色要素の形成方法。
【請求項4】
前記第1の描画工程と前記第2の描画工程の間に、前記少なくとも1つの部分描画領域
以外の他の部分描画領域を少なくとも2回の主走査で描画することで、前記所定の時間を
置く工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の色要素の形成方法。
【請求項5】
前記描画領域を3分割以上の部分描画領域に仮想分割し、前記第1の描画工程と前記第
2の描画工程の間に、1つの部分描画領域以外の他の部分描画領域のすべてを1回ずつ描
画することで、前記所定の時間を置く工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1また
は2に記載の色要素の形成方法。
【請求項6】
前記第2の描画工程では、前記第1の描画工程に比べて1回の主走査で吐出する前記液
状体の吐出量を徐々に減少させて描画することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
一項に記載の色要素の形成方法。
【請求項7】
前記第1の描画工程では、前記少なくとも1つの部分描画領域に含まれる前記複数の色
要素領域のうち、互いに隣接しない前記色要素領域に前記液状体を吐出して描画し、前記
第2の描画工程では、前記第1の描画工程で前記液状体が吐出されなかった前記色要素領
域に前記液状体を吐出して描画することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に
記載の色要素の形成方法。
【請求項8】
前記第1の描画工程では、前記少なくとも1つの部分描画領域に含まれる前記複数の色
要素領域のそれぞれに、前記液状体を間隔を置いて複数着弾させて描画し、前記第2の描
画工程では、前記第1の描画工程で前記液状体が着弾していない前記複数の色要素領域の
それぞれの部位に前記液状体を着弾させて描画することを特徴とする請求項1ないし6の
いずれか一項に記載の色要素の形成方法。
【請求項9】
一対の基板を有すると共に少なくとも一方の前記基板上に配置された隔壁部によって区
画された複数の色要素領域を有する電気光学パネルを備えた電気光学装置の製造方法であ
って、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の色要素の形成方法を用いて、前記基板上の前
記複数の色要素領域に、色要素材料を含む複数種の液状体を吐出して複数種の色要素を描
画する色要素描画工程と、
描画された色要素を乾燥して成膜化する成膜工程と、を備えたことを特徴とする電気光
学装置の製造方法。
【請求項10】
一対の基板を有すると共に少なくとも一方の前記基板上に配置された隔壁部によって区
画された色要素領域を有する電気光学パネルを備えた電気光学装置であって、
請求項9の電気光学装置の製造方法を用いて、前記基板上の前記複数の色要素領域に、
複数種の色要素が形成されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項10の電気光学装置を備えたこと特徴とする電子機器。
【請求項12】
複数の液滴吐出ヘッドと、前記複数の液滴吐出ヘッドと基板とを対向配置させた状態で
相対的に移動させる移動手段を備え、前記基板上に配置された隔壁部によって区画された
複数の色要素領域を含む描画領域に、前記移動手段による複数回の主走査に同期して、色
要素材料を含む複数種の液状体を前記複数の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出して複数種
の色要素を描画形成する液滴吐出装置であって、
前記描画領域を複数の部分描画領域に仮想分割して、少なくとも1つの部分描画領域を
少なくとも1回の主走査により描画する第1の描画と、前記第1の描画工程で描画された
前記少なくとも1つの部分描画領域を、所定の時間を置いて再描画する主走査を少なくと
も1回以上繰り返して描画する第2の描画を制御する描画制御手段を備え、
1回の主走査では、1つの前記色要素領域に前記色要素を形成するために必要な前記液
状体の総量を分割した吐出量で吐出描画することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−34267(P2007−34267A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101641(P2006−101641)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】