説明

色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体及びポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の精製方法

【課題】 色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、及びポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の精製方法を提供する。
【解決手段】 黄色度が−20以下である色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、及びポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に塩素系炭化水素を添加し、沸点以上で加熱溶解しポリマー溶液とした後、該ポリマー溶液をアルコール、水及び炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に添加しポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出し回収するポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体及び色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体とするための精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物由来のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は植物を原料として得られることから、環境負荷の少ない材料として近年注目を集めている。
【0003】
該ポリ3−ヒドロキシブチレートをプラスチックとして利用するためには、微生物体内で生成したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を微生物と分離し微生物の体内から取り出すという工程が必要である。ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を微生物から分離回収する方法としては、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体が可溶である有機溶媒を用いて微生物からポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を抽出する方法、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体以外の微生物の構成成分を破砕もしくは可溶化させて除くことによりポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を得る方法、等が提案されている。
【0004】
有機溶媒を利用したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の分離回収方法としては、例えば1,2−ジクロロエタンやクロロホルムのようなポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体が可溶である塩素化炭化水素を用いて抽出する方法(例えば特許文献1、2参照。)、ジオキサンのような溶媒を用い抽出する方法(例えば特許文献3参照。)、等が提案されている。
【0005】
一方、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体以外の微生物の構成成分を、機械的処理、化学的処理、酵素的処理で可溶化させて除くことによりポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を得る方法としては、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を含有する微生物を界面活性化剤で処理した後に、微生物から放出された核酸を過酸化水素で処理して分解し、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を分離する方法(例えば特許文献4参照。)、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を含有する微生物を高圧ホモジナイザーで破砕してポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を分離する方法(例えば特許文献5参照。)、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を含有する微生物の懸濁液にアルカリを添加して加熱し、細胞を破砕してポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を分離する方法(例えば特許文献6参照。)、等が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−118394号公報
【特許文献2】特開昭57−065193号公報
【特許文献3】特開昭63−198991号公報
【特許文献4】特表平08−502415号公報
【特許文献5】特開平07−031488号公報
【特許文献6】特開平07−031487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜6に提案の分離回収方法では、一応のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を得ることは可能であったが、該ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、溶解しなかった微生物残渣、可溶化した微生物残渣等をその系内に多量に残存するもので有り、それら残渣がポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の色調悪化(高黄色度)、異臭の原因となり、その使用は制限されるものであった。
【0008】
そこで、その使用に制限を受けにくい、色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の出現が期待された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の黄色度を示すポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体がその使用に制限を受けにくい色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、黄色度(JIS K 7105(反射法)を準拠し、厚さ120μmのフィルムを2枚重ねて測定したときの値)が−20以下であることを特徴とする色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、及び、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に塩素系炭化水素を添加し、沸点以上で加熱溶解しポリマー溶液とした後、該ポリマー溶液をアルコール、水及び炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に添加しポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出し回収することを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の精製方法に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、黄色度が−20以下のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体である。ここで、黄色度が−20より大きい場合、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、色調に劣るものとなる他、異臭等を伴ったものとなりその使用に制限を受けるものとなる。なお、本発明における黄色度とは、JIS K 7105(反射法)に準拠し、厚さ120μmのポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体フィルムを2枚重ねて測定したものである。
【0013】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体としては、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエート共重合体、等が挙げられ、共重合体である場合の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとしては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシラウリレートが挙げられる。中でも、特に耐熱性に優れたものとなることから、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート/4−ヒドロキシブチレート共重合体が好ましい。また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体中の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートの共重合成分量としては、0〜20モル%であることが好ましく、特に0〜10モル%であることが好ましい。
【0014】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、その融点が160〜190℃であることが好ましく、特に165〜180℃であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、機械的強度、成形加工性に優れるものとなることから、クロロホルムに溶解し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、Mwと記す。)が100000〜3000000であることが好ましく、特に120000〜1000000であることが好ましい。
【0016】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の製造方法としては、黄色度−20以下のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を得ることが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に塩素系炭化水素を添加し、沸点以上で加熱溶解しポリマー溶液とした後、該ポリマー溶液をアルコール、水及び炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に添加し、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出し回収する精製方法により得ることができる。
【0017】
ここで、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体としては、上記に例示したものを挙げることができ、該ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は市販品として入手することが可能である。また、その製造方法としては、例えば米国特許4477654号公報、国際公開特許94/11519号公報、米国特許5502273号公報に開示されている方法等により入手することも可能である。
【0018】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を加熱溶解しポリマー溶液とする際の塩素系炭化水素としては、塩素を含む炭化水素であれば特に制限は無く、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン等の塩素含有脂肪族炭化水素;1−クロロナフタレン等の塩素含有芳香族炭化水素が挙げられ、その中でも、揮発性が高くポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の回収効率に優れることからクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンが好ましく、特にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を溶かした溶液の取扱いが容易であることからクロロホルムが更に好ましい。
【0019】
該ポリマー溶液とする際にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に添加する塩素系炭化水素の量は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の回収効率に優れることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対して100重量部〜20000重量部が好ましく、更に好ましくは150重量部〜10000重量部であり、200重量部〜5000重量部が特に好ましい。
【0020】
また、加熱溶解し該ポリマー溶液とする際には、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は高結晶性高分子であるため溶媒への溶解性に劣ることから塩素系炭化水素の沸点以上に加熱するものである。また、その際には0.05MPa以上の加圧状態になる温度以上であることが好ましい。そして、塩素系炭化水素としてクロロホルムを使用する際には、80℃以上150℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以上150℃以下である。また、加熱溶解し該ポリマー溶液とする際は、均一に溶解させるために撹拌することが好ましく、撹拌する手段に特に制限は無く、撹拌槽等の乱流を生じさせる方法が挙げられる。
【0021】
該精製方法においては、より黄色度が低く色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体が得られる精製方法となることから、加熱溶解した該ポリマー溶液を濾過することが好ましい。濾過する方法に特に制限は無く、例えば自然濾過、遠心濾過、加圧濾過、減圧濾過、デカンテーション等が挙げられる。濾材としては、例えば金属網、積層金網焼結体、金属布織布焼結体、樹脂織布、樹脂不織布、樹脂メンブラン、濾布、紙等が挙げられ、樹脂メンブランが好ましい。孔径は30μm以下が好ましく、10μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましい。濾過する際の溶液の温度は室温以上塩素系炭化水素の沸点以下が好ましい。
【0022】
該精製方法は、該ポリマー溶液から、アルコール、水及び炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒によりポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出するものであり、アルコール、水、炭化水素であれば特に制限は無く、アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等を挙げることができ、炭化水素としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられ、水としては通常水の範疇として知られているものを用いればよく、その中でも特にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の回収効率に優れることからメタノール、エタノール、2−プロパノール、水、ヘキサンが好ましく、メタノールが特に好ましい。また、該溶媒の量としては、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を溶解させたポリマー溶液の1倍量以上20倍量以下が好ましく、より好ましくは3倍量以上10倍量以下である。
【0023】
該溶媒に該ポリマー溶液を添加しポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出させる際の該ポリマー溶液の温度は、特に制限は無く、その中でも室温以上塩素系炭化水素の沸点以下が好ましい。また、該溶媒の温度は0℃以上50℃以下が好ましく、10℃以上40℃以下が特に好ましい。
【0024】
析出したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を回収する際の回収法としては、上記した濾過法により濾過して回収し、乾燥することが好ましい。乾燥方法に制限は無く、例えば加熱乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられ、減圧乾燥法が好ましい。
【0025】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体には、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物、ヒドロキシアクリレート系化合物、硫黄含有化合物、スズ系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物、ビタミンE系化合物、アリルアミン系化合物、アミン−ケトン系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ベンツイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量に特に制限なく、該ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0026】
また、本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体には、例えば染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の公知の添加剤を加えることができる。
【0027】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体には、無機充填材及び/又は有機充填材を添加してもよい。また、分散性を高めるために、表面改質された無機充填材を用いることも可能である。無機充填材及び/又は有機充填材の添加量は該ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、特に3〜50重量部が好ましい。
【0028】
さらに、本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、熱可塑性エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂、特に生分解性樹脂と称される熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
【0029】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体にこれらの安定剤、添加剤、無機充填材、有機充填材等を混合する方法としては、例えば溶液混合、溶融混合等の方法が挙げられ、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。該溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜200℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂の温度が160℃以上185℃以下になるように温度設定することが好ましい。
【0030】
本発明の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、例えば電子機器、家電製品、パソコン、自動車内装、自動車外装、機器、船、車両、航空機、原子力発電所等の部品;磁気テープ、キャリアテープ等のテープ;写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ用フィルム等のフィルム;液晶表示装置用部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルム;偏光板、光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラスに用いられる反射防止用フィルム;ディスプレイ防爆用フィルムのベースフィルム;液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等の光学シート;光学レンズ、スクリーン等に用いるレンズシート;救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;トレイ、コップ等の食器;静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;半導電フィルム、帯電防止フィルム、医薬フィルム等のフィルム;カード等に使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は色調に優れることから、各種用途への制限を受けず使用することが可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0033】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0034】
〜重量平均分子量の測定〜
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を60℃のクロロホルムに2時間溶解して得られた溶解成分のみを用いて、GPCによる分子量測定を行った。尚、Mwは標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。測定条件を以下に示す。
【0035】
機種:商品名HLC8020GPC(東ソー(株)製)
溶媒:クロロホルム
サンプル溶解条件:60℃、2時間
カラム温度:40℃
測定濃度:50mg/50mL
注入量:100μL
カラム:商品名TSKgel GMHHR−H(東ソー(株)製)2本
〜黄色度の測定法〜
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を圧縮成形により厚さ120μmのフィルムに成形した。圧縮成形は、185℃で270秒間加熱した後、40℃で300秒間冷却して行った。得られたフィルムを2枚重ねて、JIS K 7105(反射法)に準拠して、測色色差計(日本電色工業(株)製、商品名SMカラーコンピューター)を用いて黄色度を測定した。
【0036】
〜融点の測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分、室温〜200℃の範囲で測定を行い、融点を求めた。
【0037】
〜共重合体組成の測定〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名GSX400型)を用い、重水素化クロロホルム中、室温の条件でH−NMRを測定し、ピークの強度比より算出した。
【0038】
実施例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200)5g及びクロロホルム(沸点:62℃)108gをガラス製オートクレーブに入れ90℃に加熱したところ内圧が0.1MPaになり、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体が溶解したポリマー溶液が得られた。該ポリマー溶液を室温まで冷却し、孔径3μmの四フッ化エチレン樹脂製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、商品名T300A047A)を用いて加圧濾過した。そして、2リットルのメタノールを撹拌しながら、濾過したポリマー溶液を少しずつメタノールに注ぎ、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体を析出させた。一晩放置後、孔径3μmの四フッ化エチレン樹脂製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、商品名T300A047A)を用いて減圧濾過し、固形分を室温で8時間減圧乾燥して、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体を得た。
【0039】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体の黄色度を測定した結果、黄色度は−27であり、黄色度の非常に低いポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体であった。また、得られたポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体のMwは660000、融点は173℃であった。
【0040】
実施例2
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200)5gの代わりに3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100;3−ヒドロキシバレレート共重合成分量6モル%)10g、クロロホルム108gの代わりに40gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリ3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体の精製を行った。
【0041】
得られた3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体の黄色度を評価した結果、黄色度は−21であり、黄色度の非常に低い3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体であった。また、得られた3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体のMwは300000、融点は168℃であった。
【0042】
実施例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200)5gの代わりに10gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体の精製を行った。
【0043】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体の黄色度を評価した結果、黄色度は−23であり、黄色度の非常に低いポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体であった。
【0044】
比較例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200)の黄色度を測定した結果、黄色度は8であり、黄色度の高いものであった。
【0045】
比較例2
3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100)の黄色度を測定した結果、黄色度は10であり、黄色度の高いものであった。
【0046】
比較例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200)5g及びクロロホルム108gをガラス製オートクレーブに入れ60℃に加熱したところ、ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体は溶解せず、不透明な懸濁液となった。該懸濁液を室温まで冷却し、孔径3μmの四フッ化エチレン樹脂製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、商品名T300A047A)を用いて加圧濾過することを試みたが、濾過できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色度(JIS K 7105(反射法)に準拠し、厚さ120μmのフィルムを2枚重ねて測定したときの値)が−20以下であることを特徴とする色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体。
【請求項2】
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が100000〜3000000であることを特徴とする請求項1に記載の色調に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体。
【請求項3】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に塩素系炭化水素を添加し、沸点以上で加熱溶解しポリマー溶液とした後、該ポリマー溶液をアルコール、水及び炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に添加しポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体を析出し回収することを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の精製方法。

【公開番号】特開2008−189861(P2008−189861A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27662(P2007−27662)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】