説明

艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂フィルム積層フィルム又はシート及び艶消し熱可塑性樹脂積層体の製造方法

【課題】良好な艶消し外観と印刷適性を有し、インサート成形、インモールド成形時にブツ戻り及び艶戻りが少ないフィルムを提供する。
【解決手段】予めフィルム状に成形し、熱変形温度以下に冷却した透明熱可塑性樹脂フィルム状物を、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の熱変形温度以上の設定温度で、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の片面を鏡面ロール又は鏡面ベルト、他方の面をゴムロール、シボ入りロール、ゴムベルト又はシボ入りベルトで挟持して熱処理する、片面の60度表面光沢度が100%以下である艶消し熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。前記艶消しフィルムを熱可塑性樹脂フィルム又はシートに積層するフィルム又はシート製造方法。これらのフィルム又はシートを基材に積層する艶消し透明熱可塑性樹脂積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂フィルム積層フィルム又はシート及び艶消し熱可塑性樹脂積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法やインモールド成形法等が挙げられる。インサート成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシートを、あらかじめ真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要なフィルム又はシート部分を除去した後、射出成形金型内に移し、次いで基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。一方、インモールド成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のシート又はフィルムを射出成形金型内に設置し、真空成形を施した後、同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。
【0003】
特に、このインモールド成形法によれば、シート又はフィルムと基材とを生産性良く一体化したり、印刷部のみを転写したりすることができる。このようにして得られた、表層にアクリル樹脂フィルムを有する部材が、車輌用途の部品として用いられている。
【0004】
近年、メタリック調等の高輝度印刷が施されたアクリル樹脂フィルムの表面を艶消し状態として、高級感や深み感等の意匠性や加飾性を付加することが求められてきている。このような要求は、艶消しアクリル樹脂フィルムに印刷を施すことによって実現できる。
【0005】
一般に、アクリル樹脂フィルムに印刷を施す場合、印刷抜けが多数発生すると、意匠性、外観を損なうばかりか、歩留まりの低下を招いてしまう。特に、艶消しアクリル樹脂フィルムの場合、表面の凹凸が大きく、凹部に印刷インクが入りにくいことから、印刷柄が不鮮明になったり、凸部で印刷抜けが発生する問題があった。
【0006】
そこで、こうした問題を解決するために、印刷を施した際の印刷抜けが少ない等の良好な印刷適性を有するアクリル樹脂フィルムやその製造方法が開示されている(例えば、特許文献1〜5)。
【0007】
特許文献1〜3には、アクリル樹脂組成物をフィルム状に成形するに際し、ロールで挟持することにより、片面を低光沢の艶消し面としつつ他面を平滑面とした印刷適性に優れたアクリル樹脂フィルムの製造方法が開示されている。これらのアクリル樹脂組成物は、いずれも艶消し材を配合することにより艶消し性を付与しているため、物性低下が少なからずあり、改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献1〜3記載の製造方法により得られたアクリル樹脂フィルムでは、一旦はロールで挟持することによりフィッシュアイのような表面凸状欠陥を見かけ上改善させることが出来るものの、インモールド成形等の二次加工を施す際に、熱により再びフィルム表面凸状欠陥が発現する現象(以下「ブツ戻り」という)が認められることもあった。この欠陥は、特にアクリル樹脂フィルムの平滑面側にシルバーメタリック調等の高輝度印刷を施したときに非常に目立ち、良好な加飾フィルム及び積層成形品を得ることが出来なかった。
【0009】
更に特許文献1〜3の製造方法では、アクリル樹脂組成物をフィルム状に成形する時点でロールに挟持することから、フィッシュアイのような表面凸状欠陥が発現した状態ではないため、それ以降の工程でフィッシュアイのような表面欠陥を検査できる手段が事実上無かった。このため、積層成形品を得る工程で初めてブツ戻りによるフィッシュアイの欠陥が判明し、製造コストの観点から工業的利用価値が低く、改善の余地があった。
【0010】
また、インモールド成形等の二次加工を施す際、フィルム加熱条件によっては、艶消し面側の光沢値が上昇する現象(以下「艶戻り」という)が認められることもあった。
【0011】
特許文献4及び5には、印刷抜け防止効果の観点から、樹脂組成物の両面をロール表面又は金属ベルト表面に接触させてフィルム状に成形する方法が開示されている。しかしながら、これら特許文献では艶消しフィルムを得るための方法に関しては記載されていない。尚、これら特許文献記載の方法でも、樹脂組成物に接触させるロール種を選択すれば、艶消しフィルムが得られることが予想されるが、上記したブツ戻り、艶戻りを改善することはできず、同時にフィッシュアイのような欠陥を検査できる手段を提供する方法でもない。
【特許文献1】特開2002−361712号公報
【特許文献2】特開2002−254495号公報
【特許文献3】特開2001−81266号公報
【特許文献4】特開平10−279766号公報
【特許文献5】特開平10−306192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、良好な艶消し外観と良好な印刷適性を有し、且つ、インサート成形やインモールド成形を施したときにブツ戻り及び艶戻りが少ない艶消し熱可塑性樹脂フィルム、及びこのフィルムを積層した積層体を提供すると共に、後工程での該艶消しアクリル樹脂フィルムのブツ戻りの有無を確認することが可能となる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、予めフィルム状に成形し、熱変形温度以下に冷却した透明熱可塑性樹脂フィルム状物を、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の熱変形温度以上の設定温度で、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の片面を鏡面ロール又は鏡面ベルト、他方の面をゴムロール、シボ入りロール、ゴムベルト又はシボ入りベルトで挟持し、熱処理する、片面の60度表面光沢度が100%以下である艶消し熱可塑性樹脂フィルムの製造方法にある。
【0014】
また、本発明は、上記方法で得られた艶消し熱可塑性樹脂フィルムを熱可塑性樹脂フィルム又はシートに積層する艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの製造方法にある。
【0015】
更に、本発明は、前記方法で得られた艶消し熱可塑性樹脂フィルム又は上記の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム若しくはシートを基材に積層する艶消し熱可塑性樹脂積層体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な艶消し外観と良好な印刷適性を有し、且つ、インサート成形やインモールド成形を施したときにブツ戻り及び艶戻りが少ない艶消し熱可塑性樹脂フィルム、及びこのフィルムを積層した積層体を提供すると共に、後工程での該艶消し熱可塑性樹脂フィルムのブツ戻りの有無を確認することが可能となる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においては、透明熱可塑性樹脂フィルム状物は予めフィルム状に成形し熱変形温度(以下「T」という)以下に冷却したものが使用される。
【0018】
本発明において、TはASTM D648に基づき、荷重0.45MPaにて測定して得られた値を示す。尚、上記Tの測定は、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の原料ペレットを射出成形にて成形後、60℃で4時間アニールした測定試験片を用いて実施される。
【0019】
透明熱可塑性樹脂としては熱変形温度を有するものであれば特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中では、耐候性等の点でアクリル樹脂が好ましい。
【0020】
本発明で使用される透明熱可塑性樹脂フィルム状物は、Tが80℃以上であることが好ましい。Tが80℃以上の熱可塑性樹脂フィルムの場合、原料の樹脂組成物を溶融押出法によりフィルム形状に成形する際に樹脂組成物の溶融粘度が適度に高くなって、鏡面ロールからの剥離性が良好となり、鏡面ロールに巻きつく等の問題を防止できる。また、例えば車輌用途において、本発明で得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルム状物の熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を使用したフィルム、加飾フィルム、及びこれらを含む積層成形品は、フロントコントロールパネル等、車内で直射日光を受ける部分にも使用することができる。用途が更に拡大するという観点から、Tが90℃以上であることが好ましい。また、特に限定されないが、フィルムの製膜性等の観点から、本発明における透明熱可塑性樹脂フィルム状物のTは130℃以下であることが好ましい。
【0021】
透明アクリル樹脂フィルム状物としては、例えば、車輌用に使用可能な、耐擦り傷性、鉛筆硬度、耐熱性、耐薬品性等を有するものとして特開平8−323934号公報、特開平11−147237号公報、特開2002−80678号公報、特開2002−80679号公報及び特開2005−97351号公報に開示されているものが好ましい。また、インサート成形やインモールド成形を行った場合の耐成形白化性の観点からは、特開2005−163003号公報及び特開2005−139416号公報に開示されているものが好ましい。
【0022】
例えば、車輌用に使用可能な耐擦り傷性、鉛筆硬度、耐熱性、耐薬品性等に優れた透明アクリル樹脂フィルム状物の具体例として以下に示すゴム含有重合体(I)単独、又はゴム含有重合体(I)及び低粘度熱可塑性重合体からなるアクリル樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。
【0023】
ゴム含有重合体(I)の具体例としては、以下に示すゴム含有重合体(I−1)及びゴム含有重合体(I−2)が挙げられる。
【0024】
ゴム含有重合体(I−1)の具体例としては、アクリル酸アルキルエステルを含有する単量体(i)を重合して得られた弾性重合体の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体(ii)をグラフト重合して硬質重合体を形成した、弾性重合体と硬質重合体からなる重合体が挙げられる。ここで、弾性重合体及び硬質重合体の重合方法としては、単量体(i)、(ii)をそれぞれ重合する際に、一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
【0025】
単量体(i)の構成成分であるアクリル酸アルキルエステルとしては、従来より知られる各種のアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基が直鎖状、分岐鎖状のもののいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が好ましい。
【0026】
アクリル酸アルキルエステルの使用量は、単量体(i)100質量%中、35〜99.9質量%が好ましく、50〜99.9質量%が更に好ましい。アクリル酸アルキルエステルの使用量が35質量%以上であるとフィルムの成形性が良好となる。
【0027】
弾性重合体を得る際には、目的に応じて単量体(i)を一括して重合しても、2段階以上に分けて重合することも可能であり、2段階以上に分けて重合する場合も、アクリル酸アルキルエステルの使用量は、単量体(i)中に35質量%以上であればよい。例えば、2段階以上に分けて重合した弾性重合体の場合、各重合段階でのアクリル酸アルキルエステルの総使用量が35質量%以上であれば、1段階目のアクリル酸アルキルエステルの使用量は任意に設定することもできる。
【0028】
単量体(i)としては、アクリル酸アルキルエステルと共に、これと共重合可能な他のビニル単量体を使用することもできる。他のビニル単量体の使用量は、単量体(i)100質量%中、64.9質量%以下が好ましい。
【0029】
他のビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
単量体(i)の一部として、架橋性単量体を用いることが好ましい。架橋性単量体としては、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体が用いられる。架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが好ましい。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。これらは単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0031】
架橋性単量体の使用量は、単量体(i)100質量%中、0.1〜10質量%が好ましい。
【0032】
グラフト重合に用いられる単量体(ii)の主成分であるメタクリル酸アルキルエステルとしてはアルキル基が直鎖状、分岐鎖状のもののいずれでもよい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0033】
メタクリル酸アルキルエステルの使用量は、単量体(ii)100質量%中、50質量%以上が好ましい。
【0034】
単量体(ii)として、メタクリル酸アルキルエステルと共に、これと共重合可能な他のビニル単量体を使用することもできる。このような他のビニル単量体の使用量は、単量体(ii)100質量%中、50質量%以下が好ましい。このような他のビニル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
ゴム含有重合体(I−1)を重合する場合、単量体(ii)の量は単量体(i)100質量部に対して、好ましくは10〜400質量部、より好ましくは20〜200質量部である。
【0036】
ゴム含有重合体(I−1)の質量平均粒子径は0.01〜0.5μmが好ましく、0.08〜0.3μmがより好ましい。特に、製膜性、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの取り扱い性の観点より、ゴム含有重合体(I−1)の質量平均粒子径は0.08μm以上が好ましい。
【0037】
本発明において、質量平均粒子径は、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法で測定される。
【0038】
ゴム含有重合体(I−1)の弾性重合体及び硬質重合体を製造するための重合法としては、例えば、従来より知られる乳化重合法を用いることができる。重合温度は、使用する重合開始剤の種類及び量によって最適値が異なり、通常は40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、120℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、公知のものを使用できる。重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられ、これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、特に、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。重合開始剤の添加量は、重合条件等に応じて適宜決めればよい。
【0040】
重合開始剤の添加方法としては、水相、単量体相(油相)のいずれか片方又は双方に添加する方法が挙げられる。
【0041】
乳化剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等が挙げられる。このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が好ましい。上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業(株)製のNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA,フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407(以上、商品名)等が挙げられる。
【0042】
上記の方法で得られたゴム含有重合体(I−1)を含む重合体ラテックスを、必要に応じて濾材、例えば、目開きが100μm以下のフィルターを配した濾過装置を用いて濾過処理することが好ましい。この濾過処理は、重合中に発生するスケールをラテックスから除去したり、重合原料中又は重合中に外部から混入する夾雑物を除去したりするための処理である。
【0043】
濾材を配した濾過装置としては、袋状のメッシュフィルターを利用したISPフィルターズ・ピーテーイー・リミテッド社のGAFフィルターシステム;円筒型濾過室内の内側面に円筒型の濾材を配し、濾材内に攪拌翼を配した遠心分離型濾過装置;又は、濾材が濾材面に対して水平の円運動及び垂直の振幅運動をする振動型濾過装置が好ましい。
【0044】
ゴム含有重合体(I−1)は、上記の方法で製造した重合体ラテックスからゴム含有重合体(I−1)を回収することによって製造することができる。重合体ラテックスからゴム含有重合体(I−1)を回収する方法としては、塩析又は酸析凝固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の方法が挙げられる。次いで凝固させた重合体を、更に、洗浄、脱水、乾燥処理等し、最終的に粉状で回収する。
【0045】
金属塩を用いた塩析凝固によってゴム含有重合体(I−1)を回収する場合、最終的に得られたゴム含有重合体(I−1)中の残存金属含有量を800ppm以下にすることが好ましい。特に、マグネシウム塩、ナトリウム塩等、水との親和性の強い金属塩を塩析剤として使用する際は、残存金属含有量を極力少なくしないと、最終的に得られるゴム含有重合体(I−1)を原料とした艶消しアクリル樹脂フィルムを沸騰水中に浸漬した際、白化現象を生じ易い傾向にある。尚、カルシウム塩を用いた塩析凝固又は硫酸を用いた酸析凝固を行うと、比較的良好な傾向を示すが、いずれにしても優れた耐水白化性を与えるためには、残存金属量を800ppm以下にすることが好ましく、微量であるほどよい。
【0046】
ゴム含有重合体(I)として、インモールド成形やインサート成形時の耐成形白化性の観点から、以下に示すゴム含有重合体(I−2)が好ましいものとして挙げられる。
【0047】
ゴム含有重合体(I−2)は、下記表1の(1)〜(3)の各単量体成分を順次重合して得られる。ここで、(2)中間重合体(I−2−B)の単量体組成は(1)弾性重合体(I−2−A)の単量体組成と少なくとも1成分の種類又は量が異なるものである。
【表1】

【0048】
表1において、アクリル酸アルキルエステル(A1、B1、C2)、メタクリル酸アルキルエステル(A2、B2、C1)及び架橋性単量体(A4、B4)は、ゴム含有重合体(I−1)の重合の際に使用されるものと同様である。
【0049】
表1において、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A3、B3、C3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
架橋性単量体(A4、B4)は、例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合等、目的に応じて任意に添加できる。
【0051】
表1において、グラフト交叉剤(A5、B5)は、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体をいう。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル、又はクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、又はフマル酸のアリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。これらは単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
アクリル酸アルキルエステル(A1)の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、50〜99.9質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性の観点から、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。また、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度、耐熱性の観点から、79.9質量%以下がより好ましく、69.9質量%以下が特に好ましい。
【0053】
メタクリル酸アルキルエステル(A2)の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、0〜49.9質量%が好ましい。より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。また、より好ましくは44.9質量%以下、特に好ましくは39.9質量%以下である。
【0054】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A3)の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは15質量%以下である。
【0055】
架橋性単量体(A4)の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、0〜10質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性の観点から、0.1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与する観点から、6質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0056】
グラフト交叉剤(A5)の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、0.1〜10質量%であることが好ましい。グラフト交叉剤(A5)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性が良好となり、透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。より好ましくは0.5質量%以上である。また、グラフト交叉剤(A5)の含有量を10質量%以下とすることにより、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与することができる。より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0057】
弾性重合体(I−2−A)単独のガラス転移温度(以下「Tg」という)は10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。Tgが10℃以下であれば、得られるゴム含有多段重合体(I)は好ましい耐衝撃性を発現する。
【0058】
本発明におけるTgは、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている単独重合体の値を用いてFOXの式から算出される。
【0059】
弾性重合体(I−2−A)を重合する場合、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体の量は、ゴム含有重合体(I−2)の原料である単量体の総量100質量%中、15〜50質量%が好ましい。弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体の量を15質量%以上とすることにより、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに耐成形白化性を付与することができ、製膜性と、インサート成形又はインモールド成形に必要な靭性とを両立させることができる。また、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体の含有量を50質量%以下とすることにより、車輌用部材の積層体に必要な表面硬度及び耐熱性を兼ね備えたフィルムが得られる。より好ましくは35質量%以下である。
【0060】
弾性重合体(I−2−A)を得る際、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体は、一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。2段階以上に分けて重合することが好ましい。2段階以上に分けて重合する場合、各重合段階での単量体の構成比は、それぞれ異なっていることが好ましい。
【0061】
例えば、弾性重合体(I−2−A)を2段階に分けて重合する場合、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性、耐衝撃性、耐熱性及び表面硬度の観点から、第1段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−1)のTgは第2段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−2)のTgよりも低いことが好ましい。具体的には、第1段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−1)のTgは、耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、−30℃未満が好ましく、第2段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−2)のTgは、表面硬度、耐熱性の観点から、−15℃〜10℃が好ましい。
【0062】
また、表面硬度、耐熱性の観点から、第1段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−1)を得るために重合した単量体量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、1〜20質量%が好ましく、第2段階目に重合した弾性重合体(I−2−A−2)を得るために重合した単量体量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量%中、80〜99質量%が好ましい。
【0063】
弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体は連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。連鎖移動剤の含有量は、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体100質量部に対して、0〜5質量部が好ましい。
【0064】
アクリル酸アルキルエステル(B1)の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量%中、9.9〜90質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性、表面硬度及び耐熱性の観点から、19.9質量%以上がより好ましく、29.9質量%以上が特に好ましい。また、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
【0065】
メタクリル酸アルキルエステル(B2)の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量%中、9.9〜90質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性、表面硬度及び耐熱性の観点から、39.9質量%以上がより好ましく、49.9質量%以上が特に好ましい。また、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
【0066】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B3)の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量%中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは15質量%以下である。
【0067】
多官能性単量体(B4)の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量%中、0〜10質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与する観点から、6質量%以下が好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0068】
グラフト交叉剤(B5)の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量%中、0.1〜10質量%が好ましい。グラフト交叉剤(B5)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性が良好となり、透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。より好ましくは0.5質量%以上である。また、グラフト交叉剤(B5)の含有量を10質量%以下とすることにより、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与することができる。より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0069】
中間重合体(I−2−B)単独のTgは25〜100℃であることが好ましい。Tgが25℃以上であれば、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度及び耐熱性が、車輌用部材に必要なレベルとなる。より好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。また、Tgが100℃以下であれば、耐成形白化性及び製膜性の良好なフィルムが得られる。より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。
【0070】
このように、特定の組成及びTgを有する中間重合体(I−2−B)を設けることで、これまで実現困難であった、耐成形白化性と、表面硬度及び耐熱性とが両立したアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【0071】
中間重合体(I−2−B)を重合する場合、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体の量は、ゴム含有重合体(I−2)の原料である単量体の総量100質量%中、5〜35質量%が好ましい。この範囲内であれば、上述の耐成形白化性と、表面硬度及び耐熱性とを両立するために重要な中間重合体(I−2−B)の機能を発現させることができるとともに、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムのその他の物性、例えば、製膜性、インサート成形又はインモールド成形に必要とされる靭性を付与することができる。より好ましくは20質量%以下である。
【0072】
中間重合体(I−2−B)の原料である単量体は連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。連鎖移動剤の含有量は、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体100質量部に対して、0〜5質量部が好ましい。
【0073】
中間重合体(I−2−B)を得る際、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体は一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
【0074】
メタクリル酸アルキルエステル(C1)の含有量は、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体100質量%中、80〜100質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度、耐熱性の観点から、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上が特に好ましい。また、より好ましくは99質量%以下である。
【0075】
アクリル酸アルキルエステル(C2)の含有量は、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体100質量%中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは1質量%以上である。また、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下である。
【0076】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(C3)の含有量は、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体100質量%中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは15質量%以下である。
【0077】
硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体の重合時に連鎖移動剤を使用し、硬質重合体(I−2−C)の分子量を調整することができる。
【0078】
本発明において、連鎖移動剤は通常のラジカル重合に用いられるものの中から選択できる。具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。連鎖移動剤の含有量は、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。より好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上である。
【0079】
硬質重合体(I−2−C)単独のTgは60℃以上が好ましい。Tgが60℃以上であれば、車輌用部材に適した表面硬度及び耐熱性を有するフィルムが得られる。より好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。
【0080】
硬質重合体(I−2−C)を重合する場合、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体の量は、ゴム含有重合体(I−2)の原料である単量体の総量100質量%中、15〜80質量%が好ましい。硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体の量が15質量%以上であれば、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度及び耐熱性が良好となる。より好ましくは45質量%以上である。硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体の量が80質量%以下であれば、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムに、耐成形白化性、及びインサート成形やインモールド成形に必要な靭性を付与することができる。
【0081】
硬質重合体(I−2−C)を得る際、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体は、一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
【0082】
ゴム含有重合体(I−2)のゲル含有率は、より優れた耐成形白化性を得る観点から、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。耐成形白化性の観点からは、ゲル含有率は大きい程有利であるが、易成形性の観点からは、ある量以上のフリーポリマーの存在が必要であるため、ゲル含有率は80%以下が好ましい。ゲル含有率とは、所定量(抽出前質量)のゴム含有重合体(I−2)をアセトン溶媒中還流下で抽出処理し、この処理液を遠心分離により分別し、乾燥後、アセトン不溶分の質量を測定し(抽出後質量)、下記式にて算出される値である。
【0083】
ゲル含有率(%)=抽出後質量(g)/抽出前質量(g)×100
ゴム含有重合体(I−2)の質量平均粒子径は0.03〜0.3μmが好ましい。得られる熱可塑性樹脂フィルム状物の機械的特性の観点から、より好ましくは0.07μm以上、特に好ましくは0.09μm以上である。また、最終的に得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルムの耐成形白化性及び透明性の観点から、より好ましくは0.15μm以下、特に好ましくは0.13μm以下である。
【0084】
ゴム含有重合体(I−2)の製造法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法であるが、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体の重合を懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
【0085】
ゴム含有重合体(I−2)を乳化重合により製造する場合は、ゴム含有重合体(I−2)中の弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体をあらかじめ水及び乳化剤と混合して調製した乳化液を、反応器に供給して重合した後、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体、及び硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
【0086】
弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体を、予め水及び乳化剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、アセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有重合体(I−2)100gあたり0〜50個であるゴム含有重合体(I−2)を容易に得ることができる。このようして得られたゴム含有重合体(I−2)を原料に用いたフィルムはフィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、特に印刷抜けが発生しやすい、印圧の低い淡色の木目柄のグラビア印刷、又はメタリック調、漆黒調等のベタ刷りのグラビア印刷を施した場合でも、印刷抜けが少なく、高いレベルでの印刷性を有するため、好ましい。
【0087】
乳化液を調製する際に使用される乳化剤としては、ゴム含有重合体(I−1)を乳化重合により製造する場合に使用される乳化剤と同様のものが使用される。
【0088】
乳化液を調製する方法としては、水中に単量体を仕込んだ後、乳化剤を投入する方法;水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体を投入する方法;単量体中に乳化剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体を仕込んだ後、乳化剤を投入する方法、及び水中に乳化剤を仕込んだ後、単量体を投入する方法が好ましい。
【0089】
乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等が挙げられる。
【0090】
乳化液は、単量体の油中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体の油滴が分散したO/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体の油滴が分散したO/W型で、且つ分散相の油滴の直径が100μm以下であるものが好ましい。
【0091】
弾性重合体(I−2−A)、中間重合体(I−2−B)、及び硬質重合体(I−2−C)を形成する際に使用する重合開始剤としては、ゴム含有重合体(I−1)を製造する際に使用されるものと同様のものが使用される。
【0092】
ゴム含有重合体(I−2)の製造方法としては、反応器に仕込んだ硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩及びロンガリットを含む水溶液を重合温度にまで昇温した後、弾性重合体(I−2−A)の原料である単量体及び過酸化物等の重合開始剤を水及び乳化剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給して重合し、次いで、中間重合体(I−2−B)の原料である単量体を過酸化物等の重合開始剤とともに反応器に供給して重合し、次いで、硬質重合体(I−2−C)の原料である単量体を過酸化物等の重合開始剤等とともに反応器に供給して重合する方法が好ましい。
【0093】
重合温度は用いる重合開始剤の種類及び量によって異なり、通常、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、また、120℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。
【0094】
上記の方法で得られたゴム含有重合体(I−2)を含む重合体ラテックスを、ゴム含有重合体(I−1)の場合と同様に、必要に応じて濾材を配した濾過装置を用いて濾過処理することが好ましい。濾材を配した濾過装置としては、ゴム含有重合体(I−1)の場合と同様のものが使用される。
【0095】
ゴム含有重合体(I−2)は、上記の方法で製造した重合体ラテックスからゴム含有重合体(I−1)の場合と同様の方法で回収することができる。
【0096】
透明アクリル樹脂フィルム状物の原料として、前述のゴム含有重合体(I)を単独で用いてもよいが、ゴム含有重合体(I)と以下に示す低粘度熱可塑性重合体とからなるアクリル樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0097】
低粘度熱可塑性重合体としてはメタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とするものが好ましい。具体的には、炭素数1〜4のメタクリル酸アルキルエステル50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル0〜50質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜50質量%の組成で構成される単量体成分を重合して得られるものであり、還元粘度が0.15L/g以下である重合体が好ましい。
【0098】
尚、本発明において、還元粘度は重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定したときに得られる値をいう。
【0099】
このような低粘度熱可塑性重合体を併用することで、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度、耐熱性を高めることができる。この場合、低粘度熱可塑性重合体のTgは80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0100】
メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルとしては、ゴム含有重合体(I)を製造する際と同様のものが使用される。
【0101】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、ゴム含有重合体(I)の製造に使用される各種単量体が挙げられ、これらの単量体は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0102】
メタクリル酸アルキルエステルの含有量は、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度及び耐熱性の観点から、低粘度熱可塑性重合体の原料である単量体成分100質量%中、50〜100質量%が好ましい。より好ましくは80質量%以上であり、99.9質量%以下である。
【0103】
アクリル酸アルキルエステルの含有量は、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの製膜性、インサート成形又はインモールド成形に必要な靭性を付与する観点から、低粘度熱可塑性重合体の原料である単量体成分100質量%中、0〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.1質量%以上であり、20質量%以下である。
【0104】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体の含有量は、低粘度熱可塑性重合体の原料である単量体成分100質量%中、0〜50質量が好ましい。
【0105】
低粘度熱可塑性重合体の還元粘度は、最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムのインサート成形性、インモールド成形性、及び製膜性の観点から0.1L/g以下がより好ましい。また、製膜性の観点から、0.01L/g以上が好ましく、0.03L/g以上がより好ましい。
【0106】
低粘度熱可塑性重合体の製造方法としては、特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法が挙げられる。
【0107】
ゴム含有重合体(I−1)を使用した場合、ゴム含有重合体(I−1)の含有量は、製膜性、鉛筆硬度、成形性の観点から、アクリル樹脂組成物100質量部中、5〜30質量%が好ましい。製膜性、成形性の観点から10質量%以上がより好ましく、鉛筆硬度の観点から25質量%以下がより好ましい。
【0108】
また、ゴム含有重合体(I−2)を使用した場合、ゴム含有重合体(I−2)の含有量は、アクリル樹脂組成物100質量%中、1〜99質量%が好ましい。最終的に得られる艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性の観点から、ゴム含有重合体(I−2)の含有量は、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。低粘度熱可塑性重合体の含有量は、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0109】
アクリル樹脂組成物のゲル含有率は、耐成形白化性及び製膜性の観点から、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。また、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
【0110】
本発明においては、必要に応じ、透明アクリル樹脂フィルム状物の原料として、還元粘度が0.15L/gを超える高粘度熱可塑性重合体を使用してもよい。
【0111】
高粘度熱可塑性重合体は、具体的には、メタクリル酸メチル50〜100質量%及びこれと共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜50質量%の組成で構成される単量体を重合して得られるものである。他の単量体としてはゴム含有重合体(I)の製造に使用される各種単量体が挙げられ、これらの単量体は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0112】
高粘度熱可塑性重合体を添加することにより透明アクリル樹脂フィルム状物のフィルム製膜性をより良好とすることができる。高粘度熱可塑性重合体は、アクリル樹脂組成物100質量部に対して20質量部以下の範囲で使用することが好ましい。更に好ましくは、フィルム製膜性の観点から1〜10質量部の範囲である。
【0113】
本発明において、透明熱可塑性樹脂フィルム状物は、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含んでいてもよい。
【0114】
透明熱可塑性樹脂フィルム状物に耐候性を付与するために紫外線吸収剤が添加されることが好ましい。紫外線吸収剤としては、公知のものを用いることができ、共重合タイプのものを使用してもよい。紫外線吸収剤の分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。紫外線吸収剤の分子量が300以上であれば、射出成形金型内で真空成形又は圧空成形を施す際の紫外線吸収剤の揮発による金型汚れ等を防止することができる。また一般的に、紫外線吸収剤の分子量が高いほどフィルムに加工した後のブリードアウトが起こりにくく、分子量が低いものよりも紫外線吸収性能が長期間に渡り持続される。更に、紫外線吸収剤の分子量が300以上であると、透明熱可塑性樹脂フィルム状物がTダイから押し出され冷却ロールで冷やされるまでの間で紫外線吸収剤が揮発しにくい傾向にある。また、揮発した紫外線吸収剤がTダイ上部にあるTダイを吊すチェーン又は排気用のフードの上で再結晶して経時的に成長し、これがやがてフィルム上に落ちて、外観上の欠陥になるという問題も少なくなる。
【0115】
紫外線吸収剤としては、分子量400以上のベンゾトリアゾール系、又は分子量400以上のトリアジン系の紫外線吸収剤が特に好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としてはチバスペシャリティケミカルズ社製のチヌビン234(商品名)、旭電化工業(株)製のアデカスタブLA−31(商品名)が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としてはチバスペシャリティケミカルズ社製のチヌビン1577(商品名)等が挙げられる。
【0116】
紫外線吸収剤の添加量は特に限定されるものではないが、前述のゴム含有重合体(I−1)又はゴム含有重合体(I−2)、低粘度熱可塑性重合体及び高粘度熱可塑性重合体の合計(以下「アクリル樹脂原料」と称する)100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。耐候性改良の観点から、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。製膜時ロール汚れ、耐薬品性、透明性の観点から、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0117】
光安定剤としては、公知のものを用いることができ、中でも、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
【0118】
ヒンダードアミン系光安定剤は、アクリル樹脂原料100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で用いることが好ましい。耐光性改良の観点から、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上である。製膜時ロール汚れの観点から、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。
【0119】
配合剤の添加方法としては、押出機に透明熱可塑性樹脂フィルム状物を成形するための樹脂原料と共に供給する方法、樹脂原料に予め配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法等が挙げられる。
【0120】
後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
【0121】
透明熱可塑性樹脂フィルム状物の製造法は特に限定されず、公知の方法が用いられる。具体的には、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法、カレンダー法等各種方法が挙げられるが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0122】
透明熱可塑性樹脂フィルムの原料である樹脂組成物をTダイ法等の溶融押出法によりフィルム形状に成形する際に溶融状態にある透明熱可塑性樹脂組成物を冷却固化する方法として、二本の鏡面金属ロール及び/又は二枚の鏡面金属ベルトで挟持する方法又は挟持しない方法のいずれの方法も選択できる。この方法で得られた透明熱可塑性樹脂フィルム状物は公知のフィルム用表面欠陥システムでフィッシュアイ等の表面凸状欠陥を容易に検出することが出来る。
【0123】
フィルム用表面欠陥システムとしては、特に限定されず、一般的に公知な装置を用いることができる。具体的には、LSC−3000シリーズ(三菱レイヨンエンジニアリング社製、ラインCCDカメラ;7450画素・20MHz駆動、照明装置;光ファイバー照明・透過方式、画像処理装置;LSC−300)等が挙げられる。
【0124】
尚、溶融押出法でフィルム状物を製造する場合には、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物をろ過しながら押出することが好ましい。
【0125】
透明熱可塑性樹脂フィルム状物の厚さは10〜500μmが好ましい。厚さ500μm以下とすることにより、最終的に得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルムはインサート成形及びインモールド成形に適した剛性を得ることができ、また、より安定に艶消し熱可塑性樹脂フィルムを製造することができる。
【0126】
また、厚み10μm以上とすることにより、基材である熱可塑性樹脂層の保護性を高めると共に、得られる積層体に深み感をより十分に付与することができる。厚み30μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。また、厚み300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0127】
本発明においては、上記方法で製造された透明熱可塑性樹脂フィルム状物を再び熱変形温度T以上の温度に設定して、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の片面を鏡面ロール又は鏡面ベルト、他方の面をゴムロール、シボ入りロール、ゴムベルト又はシボ入りベルトで挟持して熱処理する工程を経ることにより、片面の60度表面光沢度が100%以下である艶消し熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0128】
熱処理の設定温度(以下「T」という)を透明熱可塑性樹脂フィルム状物の熱変形温度T以上とすることによって鏡面ロール又は鏡面ベルトで挟持された透明熱可塑性樹脂フィルム状物面(以下「平滑面」という)の鏡面転写性が良好となり、平滑面の平滑性が増し、印刷抜けが軽減される。更に、ゴムロール、シボ入りロール、ゴムベルト又はシボ入りベルトへの透明熱可塑性樹脂フィルム状物面(以下「艶消し面」という)の追従性も良好となり、艶消し面に良好な艶消し性が発現する。より好ましいTはT+40℃以上、最も好ましくはT+80℃以上である。
【0129】
艶消し熱可塑性樹脂フィルムの片面、即ち艶消し面の60度表面光沢度は100%以下である。60度表面光沢度は、グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製、GM−26D型)を用い、フィルムの艶消し面側を60度の角度で測定した光沢度の値である。60度表面光沢度は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0130】
また、透明熱可塑性樹脂フィルム状物を上記ロール又はベルトで挟持する際の面圧は特に限定されないが、0.2MPa以上の面圧で挟持することが好ましい。より好ましくは0.5MPa以上、最も好ましくは1MPa以上である。
【0131】
本発明における鏡面ロール又は鏡面ベルトとしては、公知の各種のものを用いることができる。特に、クロムメッキ加工を施した表面粗度が0.5S(最大高さRy=0.5μmともいう)以下のものが好ましい。
【0132】
本発明におけるゴムロール及びゴムベルトとしては、公知の各種のものを用いることができる。耐熱性の観点から、材質はシリコーンゴムが好ましい。また、良好な艶消し性を得るために、アルミナ入りのシリコーンゴムが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムは、用途によって好ましい艶消し外観が異なるため、シリコーンゴムに添加されるアルミナの粒度や量は用途に応じて変えればよい。アルミナ入りのシリコーンゴムの具体的としては、例えば、平均粒度が40μmのアルミナが50質量%添加されているシリコーン性ゴム等を用いることができる。
【0133】
本発明で使用されるシボ入りロール及びシボ入りベルトとしては、公知の各種のものを用いることができ、材質としては金属、ゴム等、特に限定されない。
【0134】
本発明により得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルムの硬度は特に限定されないが、艶消し面側の鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)が2B以上であることが好ましい。更にHB以上が好ましく、最も好ましくはF以上である。鉛筆硬度が2B以上の艶消し熱可塑性樹脂フィルムを用いると、インサート成形又はインモールド成形を施す工程中で、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、及び後述する絵柄、印刷、蒸着等の各種加飾熱可塑性樹脂フィルムに傷がつきにくく、更にこれらを積層した積層成形品の耐擦傷性も良好である。
【0135】
例えば車輌用途に使用される場合、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの鉛筆硬度はHB以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を使用した、鉛筆硬度がHB以上のアクリル樹脂フィルム、加飾アクリル樹脂フィルム、及びこれらを積層した積層成形品は、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等、各種車輌用部材に好適に使用することができることから、用途拡大の観点から工業上非常に有用である。更に、鉛筆硬度がF以上であると、ガーゼ等表面の粗い布で擦傷しても傷が目立たなく、鉛筆硬度が2Hの熱可塑性樹脂フィルムを用いた成形品と同等の実用上の耐擦傷性能を付与することができるため、工業的利用価値は極めて高くなる。
【0136】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、各種基材に積層して意匠性を付与するために、絵柄層を形成してもよい。この場合、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの平滑面上に絵柄層を形成することが好ましい。また、艶消し熱可塑性樹脂フィルムを、基材である熱可塑性樹脂層に積層して積層体を製造する際には、絵柄層が基材と接着するように積層することが加飾面の保護及び高級感の付与の点から好ましい。
【0137】
絵柄層は公知の方法で形成することができる。絵柄層としては、印刷法で形成された印刷層、及び/又は蒸着法で形成された蒸着層が好ましい。
【0138】
印刷層は、インサート成形又はインモールド成形によって得られた積層体表面で模様又は文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。
【0139】
印刷層のバインダーとしては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、前述のゴム含有重合体(I−2)を含むアクリル樹脂組成物を用いてもよい。
【0140】
印刷層の形成には、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキを含むバインダーを用いるとよい。
【0141】
顔料としては、例えば、次のものが挙げられる。黄色顔料として、アゾ系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料として、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料等の有機顔料や弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料として、フタロシアニンブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料として、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料として、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0142】
染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
【0143】
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法;ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法;フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。
【0144】
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよい。例えば、インサート成形又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、インサート成形又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚さを選択すればよい。通常、0.5〜30μmである。
【0145】
印刷層における印刷抜けの個数は、意匠性、加飾性の観点から、10個/m以下が好ましい。印刷抜けの個数を10個/m以下とすることにより、艶消しアクリル樹脂フィルムを用いた積層体の外観がより良好となる。印刷層における印刷抜けの個数は、5個/m以下がより好ましく、1個/m以下が特に好ましい。
【0146】
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、又はこれらの合金、又は化合物で形成される。蒸着層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が挙げられる。
【0147】
蒸着層の厚さは特に限定されるものではなく、例えば、インサート成形又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、インサート成形又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚みを選択すればよい。
【0148】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層は艶消し熱可塑性樹脂フィルムの平滑面側の表面に形成することが好ましい。接着層を形成する接着剤としては目的に応じて公知のものが使用できる。
【0149】
また、本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムには、更にカバーフィルムを設けてもよい。このカバーフィルムは、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの表面の防塵に有効である。カバーフィルムは、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの艶消し面側、平滑面側のいずれの面にも設けることができる。少なくとも艶消し面側に設けることが好ましい。
【0150】
カバーフィルムを艶消し面側に設けた場合、カバーフィルムは、インモールド成形あるいはインサート成形する前まで艶消し面側に密着し、インモールド成形、インサート成形する際は直ちに剥離するため、艶消し面側に対して適度な密着性及び良好な離型性を有していることが好ましい。カバーフィルムとしては、このような条件を満たしたフィルムであれば、任意のフィルムを選択して用いることができる。そのようなフィルムとして、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
【0151】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムを、更に熱可塑性樹脂フィルム又はシートに積層して積層フィルム又はシートとしてもよい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムを熱可塑性樹脂フィルム又はシートに積層する場合、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの平滑面側が熱可塑性樹脂フィルム又はシートに接するように積層することが好ましい。
【0152】
熱可塑性樹脂フィルム又はシートは、艶消し熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を高める目的から、艶消し熱可塑性樹脂フィルムと相溶性を有する材料からなるものが好ましい。また、後述の基材樹脂との密着性を高める目的から、基材樹脂と相溶性を有する材料からなるものが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム又はシートは、基材樹脂と同じ材料からなるものがより好ましい。
【0153】
熱可塑性樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等;又は、これらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体若しくは混合物、複合体及び積層体等が挙げられる。
【0154】
これらの内、絵柄層の形成性(艶消し熱可塑性樹脂フィルムに絵柄層を形成する代わりに熱可塑性樹脂フィルム又はシートに形成する場合)、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの二次成形性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン又はポリカーボネートが好ましい。
【0155】
熱可塑性樹脂フィルム又はシートには、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等を配合してもよい。
【0156】
熱可塑性樹脂フィルム又はシートの厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常20〜500μm程度とすることが好ましい。
【0157】
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートを得る方法としては、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知の方法が挙げられる。また、押出しラミネーションにより艶消し熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層とを積層することもできる。
【0158】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合、積層フィルム又はシート化する際の熱によるブツ戻り及び艶戻りを抑えることができ、積層フィルム又はシート化前後で意匠を保持することが可能となる。また、積層フィルム又はシート化の温度条件範囲を幅広く設定することが出来るため、工業的利用価値は高い。
【0159】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムを積層フィルム又はシートとすることで、衝撃、変形等の外力に対して取り扱い上十分な強度が発現する。例えば、インサート成形等でフィルムを真空成形した後に金型から取り外したり、その真空成形品を射出成形用金型に装着したりするときに被る衝撃、変形等に対しても、本発明の熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートを使用することにより、割れ等が生じ難く、取り扱い性が良好となる。更に、後述する艶消し熱可塑性樹脂積層体を製造する場合、例えば、積層体を構成するための、射出成形された基材の表面欠陥が艶消し熱可塑性樹脂フィルムに伝搬されることを最少にするといった利点、又は基材を射出成形する際に絵柄層が消失しにくくなるといった利点を与える。
【0160】
本発明においては、必要に応じて、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの片面や、積層フィルム又はシートにおける熱可塑性樹脂フィルム又はシート側の表面に、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー処理、プライマー処理等の表面処理を施してもよい。これらの処理を実施することにより、艶消し熱可塑性樹脂フィルムと絵柄層との間、熱可塑性樹脂フィルム又はシートと絵柄層との間、艶消し熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂フィルム又はシートとの間等の密着性を向上させることができる。
【0161】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又は、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム若しくはシートを基材に積層することができる。このとき、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの平滑面側又は艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム若しくはシートの、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの面が基材に接するように、艶消し熱可塑性樹脂フィルム又は艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム若しくはシートを基材に積層して積層体とする。
【0162】
基材の材質として、樹脂;木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板;木質繊維板等の木質板;鉄、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0163】
樹脂としては、種類は問わず、公知の樹脂が使用可能である。樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の汎用の熱可塑性又は熱硬化性樹脂;ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリング樹脂;ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂等;ガラス繊維又は無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂又は各種変性樹脂等が挙げられる。
【0164】
これらの内、基材の材料としては、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又は熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートと溶融接着可能なものが好ましい。例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。接着性の点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、又はこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特にABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。
【0165】
ポリオレフィン系樹脂等の熱融着しない樹脂であっても、前述した接着層を設けることで、艶消し熱可塑性樹脂フィルム又はその積層フィルム若しくはシートと基材とを成形時に接着させることは可能である。
【0166】
積層体の製造方法としては、二次元形状の積層体の場合で、且つ基材が熱融着できるものの場合は、熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の水質板、鉄、アルミニウム等の金属等、熱融着しない基材に対しては、接着層を介して貼り合わせることが可能である。
【0167】
三次元形状の積層体の場合は、インサート成形法、インモールド成形法等の公知の方法を用いて積層成形体を得ることができる。
【0168】
インモールド成形法は、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又はその積層フィルム若しくはシートを加熱した後、真空引き機能を持つ金型内で真空成形を行い、次いで、同じ金型内において基材となる樹脂を射出成形することにより、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又はその積層フィルム若しくはシートと基材とを一体化させた積層体を得る方法である。インモールド成形法はフィルムの成形と射出成形を一工程で行えるため、作業性、経済性の点から好ましい。
【0169】
絵柄層を有する公知のアクリル樹脂フィルムを用いてインモールド成形を行った場合、金型の形状、射出成形の条件によっては、ゲート付近の絵柄層が消失することがある。ゲートは、ゲート部で樹脂流路が狭められない非制限ゲートと、流路が狭められる制限ゲートとに大別される。後者の代表例としてピンポイントゲート、サイドゲート、サブマリンゲート等が挙げられる。制限ゲートの場合、ゲート付近の残留応力は小さくなるものの、ゲート通過樹脂の温度上昇を伴ったり、ゲート付近のアクリル樹脂フィルム面にかかる単位面積あたりの射出樹脂圧力が大きくなったりするため、絵柄層が消失しやすい。一方、本発明のゴム含有重合体(I)を含有する艶消しアクリル樹脂フィルムを用いると、従来から知られているアクリル樹脂フィルムを用いた場合と比較して、絵柄層の消失を軽減することができる。
【0170】
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートは、熱可塑性樹脂フィルム又はシート層が存在するために絵柄層の消失をより軽減することができる点で好ましい。
【0171】
インモールド成形時の加熱温度は、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又はその積層フィルム若しくはシートが軟化する温度以上が好ましい。具体的には、艶消し熱可塑性フィルム又は積層フィルム若しくはシートの熱的性質や形状によって適宜設定すればよく、通常70℃以上である。また、あまり温度が高いと、表面外観が悪化したり、離型性が悪くなる傾向にある。通常は170℃以下である。更に、エネルギー効率の観点からは、真空成形時の予備加熱温度は低い方が好ましい。具体的には135℃以下が好ましい。また、予備加熱温度が低くても成形できるフィルムは、予備加熱温度を低くする代わりに予備加熱時間を短くすることもできる。この場合は、真空成形のハイサイクル化が可能となり、工業的利用価値が高い。
【0172】
また、本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合、真空成形時の予備加熱する際の熱によるブツ戻り及び艶戻りを抑えることができ、加熱前後で意匠を保持することが可能となる。また、予備加熱温度の条件範囲を幅広く設定することが出来るため、工業的利用価値は高い。
【0173】
真空成形によりフィルムに三次元形状を付与する場合、本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又はその積層フィルム若しくはシートは、高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
【0174】
射出成形される樹脂としては、種類は問わず、射出成形可能な全ての樹脂が使用可能である。射出成形後の樹脂の収縮率を、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、又はその積層フィルム若しくはシートの収縮率に近似させることが、インモールド成形、インサート成形によって得られた積層体の反り、又はフィルムやシートの剥がれ等の不具合を解消できるため好ましい。
【0175】
本発明により製造した艶消し熱可塑性樹脂フィルムを含む積層体は、特に、車輌用部材、建材に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器、家具製品等のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料;景品、小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0176】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。尚、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。また、実施例中の略号は以下の通りである。
【0177】
MMA メチルメタクリレート
MA メチルアクリレート
n−BA n−ブチルアクリレート
St スチレン
1,3−BD 1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
AMA アリルメタクリレート
CHP クメンハイドロパーオキサイド
t−BH t−ブチルハイドロパーオキサイド
n−OM n−オクチルメルカプタン
EDTA エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
また、ゴム含有重合体(I)、低粘度熱可塑性重合体及び高粘度熱可塑性重合体の物性、実施例1〜9及び比較例1〜4において製造した透明熱可塑性樹脂フィルム状物、艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシート及び艶消し熱可塑性樹脂積層体の物性は、以下の試験法により測定、評価した。
【0178】
(1)[ゴム含有重合体(I)の質量平均粒子径]
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(I)の重合体ラテックスについて、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法で測定した。
【0179】
(2)透明熱可塑性樹脂フィルム状物の熱変形温度(T
透明熱可塑性樹脂フィルム状物の原料ペレットを、射出成形にてASTM D648に基づく熱変形温度測定試験片に成形し、60℃で4時間アニールした。そして、この試験片を使用し、低荷重(0.45MPa)で、ASTM D648に従って測定した。
【0180】
(3)艶消し熱可塑性樹脂フィルムの表面光沢
グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製、GM−26D型)を用い、フィルムの艶消し面側を60度の角度で測定した。
【0181】
(4)印刷抜け個数
艶消し熱可塑性樹脂フィルムの平滑面側に、絵柄をグラビア印刷した後、5mの目視検査を行い、印刷抜け個数を計測して1m当たりの個数で表示した。
【0182】
(5)艶消し熱可塑性樹脂フィルムのブツ戻り性
最終的に得られた艶消し熱可塑性樹脂フィルムにおいて、透明熱可塑性樹脂フィルム状物を製造する際にフィルム用表面欠陥システムLSC−3000(三菱レイヨンエンジニアリング社製)でフィッシュアイとして検知された箇所を中心に100mm角のフィルムを切り出して、これをサンプルとしてアルミニウム枠に固定し、140℃のオーブン内で1分間保持した後のフィルム外観を以下のように評価した。
【0183】
○:ブツ戻りなし(10サンプル中全てのサンプルでブツ戻りなし)
△:ブツ戻りほとんどなし(10サンプル中ブツ戻り2サンプル以下)
×:ブツ戻りあり(10サンプル中ブツ戻り3サンプル以上)
(6)積層成形体の表面光沢
前記(3)の測定方法に従って積層成形体の艶消し面側の光沢値を測定した。
【0184】
〔製造例1〕(ゴム含有重合体(I−2)の製造)
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、n−BA4.5部、1,3−BD0.2部、AMA0.05部及びCHP0.025部からなる単量体混合物を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
【0185】
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。更に、脱イオン水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、上記乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、弾性重合体の第1段階目の重合を完結した(I−2−A−1)。続いて、MMA9.6部、n−BA14.4部、1,3−BD1.0部及びAMA0.25部からなる単量体混合物を、CHP0.016部と共に、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性重合体の二段階目重合体の重合を完結させ(I−2−A−2)、弾性重合体(I−2−A)を得た。重合体(I−2−A−1)単独のTgは−48℃であり、重合体(I−2−A−2)単独のTgは−10℃であった。
【0186】
続いて、MMA6部、MA4部及びAMA0.075部からなる単量体混合物を、CHP0.0125部と共に、45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(I−2−B)を形成させた。中間重合体(I−2−B)単独のTgは60℃であった。
【0187】
続いて、MMA57部、MA3部、n−OM0.264部及びt−BH0.075部からなる単量体混合物を140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(I−2−C)を形成して、ゴム含有重合体(I−2)の重合体ラテックスを得た。硬質重合体(I−2−C)単独のTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有重合体(I−2)の質量平均粒子径は0.11μmであった。
【0188】
得られたゴム含有重合体(I−2)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(I−2)を得た。ゴム含有重合体(I−2)のゲル含有率は70%であった。
【0189】
また、得られたゴム含有重合体(I−2)214.3gを目開き25μmのナイロンメッシュで濾過した後にアセトン1500mlに投入し、3時間攪拌して、ゴム含有重合体(I−2)のアセトン分散液を調製した。この分散液を目開き32μmのナイロンメッシュで濾過した後、ナイロンメッシュごとクロロホルム中で15分間超音波洗浄した。アセトン150mlに上記超音波洗浄後の捕捉物をナイロンメッシュごと投入し、この液を15分間超音波処理した後、ナイロンメッシュを除去して、メッシュ上の捕捉物のアセトン分散液150mlを調製した。この分散液70mlについて、リオン(株)製自動式液中微粒子計測器(型式:KL−01)にて25℃下で測定し、直径55μm以上の粒子の数を求めたところ、10個であった。
【0190】
〔製造例2〕(ゴム含有重合体(I−1)の製造)
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。そして、表2に示す(イ)を添加し、撹拌しながら、弾性重合体の一段階目重合用の原料(ロ)(単量体(i)−1)の1/15を仕込み、15分間保持した。次いで、原料(ロ)の残りを、水に対する原料(ロ)の単量体の増加率が8%/hrとなる速度で、連続的に添加した後、60分間保持し、弾性重合体の一段階目重合体のラテックスを得た。得られた重合体のTgは24℃であった。
【0191】
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、弾性重合体の二段階目重合用の原料(ハ)(単量体(i)−2)を、水に対する原料(ハ)の単量体の増加率が4%/hrとなる速度で、連続的に添加した後、120分間保持し、弾性重合体の二段階目重合体を形成し、弾性重合体のラテックスを得た。二段階目重合体単独のTgは−38℃であった。
【0192】
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、硬質重合体用の原料(ニ)(単量体(ii))を、水に対する原料(ニ)の単量体の増加率が10%/hrとなる速度で、連続的に添加した後、60分間保持し、硬質重合体を形成し、ゴム含有重合体(I−1)の重合体ラテックスを得た。硬質重合体単独のTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有重合体(I−1)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
【0193】
得られたゴム含有重合体(I−1)の重合体ラテックスに酢酸カルシウムを添加し、凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後、乾燥して、粉体状のゴム含有重合体(I−1)を得た。ゴム含有重合体(I−1)のゲル含有率は90%であった。
【表2】

【0194】
〔製造例3〕(高粘度熱可塑性重合体の製造)
反応容器に窒素置換した脱イオン水200部を仕込み、更に乳化剤として花王(株)製、商品名「ラテムルASK」1部及び過硫酸カリウム0.15部を仕込んだ。
【0195】
次に、MMA40部、n−BA2部及びn−OM0.004部を仕込み、窒素雰囲気下、65℃で3時間攪拌し、重合を完結させた。
【0196】
続いて、MMA44部及びn−BA14部からなる単量体混合物を2時間にわたって滴下した後、2時間保持し、重合を完結した。
【0197】
得られた重合体ラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸析させた後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状の熱可塑性重合体を回収した。得られた高粘度熱可塑性重合体の還元粘度は0.38L/gであった。
【0198】
(実施例1)
製造例2で得たゴム含有重合体(I−1)16部、別途懸濁重合法で製造された還元粘度0.06L/gの低粘度熱可塑性重合体(1)(MMA/MA共重合体、三菱レイヨン(株)社製;アクリペットMD#001(商品名))84部に、配合剤として製造例3で得た高粘度熱可塑性重合体1部、チバスペシャリティケミカルズ社製;商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業社製;商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、及び旭電化工業社製;商品名「LA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーにて混合した。得られたアクリル樹脂組成物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)社製;商品名「PCM−30」)に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレットを得た。
【0199】
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm巾のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度180〜240℃の条件で、500メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、Tダイ温度240℃、Tダイのスリット幅0.3mmの条件で押し出しした溶融状態のアクリル樹脂フィルムの片面を75℃の温調した冷却用ロール(クロムメッキ加工した表面粗度が0.2Sのロール)に接触させ、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって厚さ125μmの透明アクリル樹脂フィルム状物を製膜した。このとき、フィルム用表面欠陥システムLSC−3100V(三菱レイヨンエンジニアリング社製、ラインCCDカメラ;7450画素・20MHz駆動、照明装置;光ファイバー照明・透過方式、画像処理装置;LSC−300)を用いたところ、フィッシュアイの欠陥は容易に検出することが出来た。
【0200】
尚、この透明アクリル樹脂フィルム状物のTは90℃であった。
【0201】
得られた透明アクリル樹脂フィルム状物を、表面粗度が0.5Sの鏡面ベルト及びシボ入りベルトの組み合わせで、T180℃(T=T+90℃)、1MPaの条件下で2分間挟持し、片面鏡面化、片面艶消し面化した艶消しアクリル樹脂フィルムを得た。尚、艶消し面側の表面光沢度は7%であった。
【0202】
得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの平滑面側に、MEKとトルエンの混合溶液にアクリル系樹脂を溶解した溶液(三菱レイヨン(株)社製;ダイヤナールLR469(商品名))10部に対し、鱗片状のアルミ顔料を2部添加したインキを用いて、シルバーメタリック調の印刷をグラビア印刷にて実施した。尚、印刷層の厚みは5μmであった。印刷抜け個数は1m当たり0.2個と良好であった。
【0203】
次に、基材用樹脂として耐熱性ABS樹脂バルクサムTM25B(商品名;UMGABS社製)、及び上述のグラビア印刷を施した艶消しアクリル樹脂フィルムを用いて、真空引き機能を有し、金型(成形品形状:縦150mm×横120mm×厚み2mm、深さ10mmの箱型、ゲート位置:成形品中央に1箇所と、中央ゲートの上下(成形品縦方向)40mmの位置に各1箇所の計3箇所、ゲート形状:直径1mmのピンポイントゲート)を用いて、J85ELII型射出成形機(商品名;日本製鋼所社製)及びホットパックシステム(日本写真印刷社製)を組み合わせたインモールド成形装置により、インモールド成形(フィルム真空成形条件:ヒーター温度350℃、加熱時間12秒、ヒーターとフィルムの距離15mm、フィルム表面温度約140℃、射出成形条件:シリンダー〜ノズル温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃、非加飾面が金型と接する向きに真空成形し、加飾面側から基材樹脂を射出した)を行って積層成形体を得た。
【0204】
(実施例2)
実施例1において、低粘度熱可塑性重合体(1)の代わりに、還元粘度0.06L/gの低粘度熱可塑性重合体(2)(MMA/MA共重合体、三菱レイヨン(株)社製;アクリペットVH#001(商品名))を用いる以外は実施例1と同様にして積層成形品を得た。透明アクリル樹脂フィルム状物のフィッシュアイ欠陥の検出の可能性評価、艶消しアクリル樹脂フィルム及び積層成形体についての各種評価結果を表3に示す。
【0205】
尚、透明アクリル樹脂フィルム状物の熱変形温度Tは100℃であり、T=T+80℃であった。
【0206】
(実施例3)
実施例2において、ゴム含有重合体(I−1)の代わりに、製造例1で製造したゴム含有重合体(I−2)75部と低粘度熱可塑性重合体(2)25部とを用いる以外は実施例2と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0207】
尚、透明アクリル樹脂フィルム状物の熱変形温度Tは88℃であり、T=T+92℃であった。
【0208】
(実施例4)
実施例1において、Tを140℃(T=T+50℃)とする以外は、実施例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0209】
(実施例5)
実施例2において、Tを140℃(T=T+40℃)とする以外は、実施例2と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0210】
(実施例6)
実施例3において、Tを140℃(T=T+52℃)とする以外は、実施例3と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0211】
(実施例7)
実施例1において、Tを100℃(T=T+10℃)とし、得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの平滑面側に印刷を施した後、インモールド成形を施す際、フィルム真空成形条件における加熱時間を9秒(フィルム表面温度約100℃)とした以外は、実施例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0212】
(実施例8)
実施例2において、Tを100℃(T=T)とし、得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの平滑面側に印刷を施した後、インモールド成形を施す際、フィルム真空成形条件における加熱時間を9秒(フィルム表面温度約100℃)とした以外は、実施例2と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0213】
(実施例9)
実施例3において、Tを100℃(T=T+12℃)とし、得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの平滑面側に印刷を施した後、インモールド成形を施す際、フィルム真空成形条件における加熱時間を9秒(フィルム表面温度約100℃)とした以外は、実施例3と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0214】
(比較例1)
実施例1と同様にして押し出しして得られた溶融状態のアクリル樹脂フィルムを2本の金属製冷却ロール間に通し、バンク(樹脂溜まり)のない状態で樹脂を挟持し、圧延せずに面転写した後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって厚さ125μmの透明アクリル樹脂フィルム状物を製膜した。このとき、フィルム用表面欠陥システムLSC−3100Vを用いたところ、フィッシュアイの欠陥を容易に検出することが出来た。
【0215】
また、T70℃(T=T−20℃)とする以外は実施例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0216】
(比較例2)
比較例1において、低粘度熱可塑性重合体(1)の代わりに低粘度熱可塑性重合体(2)を用いる以外は比較例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0217】
(比較例3)
比較例1において、ゴム含有重合体(I−1)16部の代わりにゴム含有重合体(I−2)75部とし、低粘度熱可塑性樹脂(1)84部の代わりに低粘度熱可塑性樹脂(2)25部とする以外は比較例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0218】
(比較例4)
実施例1と同様にして押し出しして得られた溶融状態のアクリル樹脂フィルムを、75℃に温調した冷却用ロール(クロムメッキ加工した表面粗度が0.2Sのロール)と、平均粒度40μmのアルミナを50部含有したシリコーンゴムロール間に通し、バンク(樹脂溜まり)のない状態で樹脂を挟持し、圧延せずに面転写した後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって製造した厚さ125μmの艶消しアクリル樹脂フィルムを用いる以外は、実施例1と同様にして積層成形体を得て、各種評価を実施し、結果を表3に示した。
【0219】
尚、この艶消しアクリル樹脂フィルムを製造する際、フィルム用表面欠陥システムLSC−3100Vを用いたところ、フィッシュアイの欠陥を検出することは不可能であった。
【表3】

【0220】
表3より明らかなように、予めフィルム状に成形し、熱変形温度T以下に冷却した透明アクリル樹脂フィルム状物を、再びT以上の設定温度Tで鏡面ベルト及びシボ入りベルトで挟持することにより製造した実施例1〜9では、片面に良好な艶消し性を有するフィルムが得られた。このフィルムは、その平滑面側に印刷を施す工程において、印刷適性に優れ、また、加熱によるブツ戻り現象に対しても優れた耐性を有していた。更に、印刷を施した加飾アクリル樹脂フィルムを用いてインモールド成形を施す工程において、加熱による艶戻り現象に対して優れた耐性を有していた。更に、実施例1〜9及び比較例1〜3の工法では、フィッシュアイ等の表面欠陥のインライン検知が可能であった。
【0221】
一方、鏡面ベルト及びシボ入りベルトの設定温度Tが透明アクリル樹脂フィルム状物の熱変形温度Tに対して適当な範囲にない比較例1〜3のフィルムは加熱によるブツ戻り現象及び艶戻り現象に対する耐性を有さなかった。
【0222】
更に、アクリル樹脂組成物のペレットをフィルム状に成形するに際し、冷却用鏡面ロールとアルミナ入りシリコーンゴムロールとで挟み込み、125μm厚みの艶消しアクリル樹脂フィルムを製造した比較例4の場合、印刷適性には優れるものの、ブツ戻り及び艶戻りが発生することがあった。また、この工法ではフィッシュアイ等の表面欠陥のインライン検知は不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めフィルム状に成形し、熱変形温度以下に冷却した透明熱可塑性樹脂フィルム状物を、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の熱変形温度以上の設定温度で、透明熱可塑性樹脂フィルム状物の片面を鏡面ロール又は鏡面ベルト、他方の面をゴムロール、シボ入りロール、ゴムベルト又はシボ入りベルトで挟持して熱処理する、片面の60度表面光沢度が100%以下である艶消し熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1で得られた艶消し熱可塑性樹脂フィルムを熱可塑性樹脂フィルム又はシートに積層する艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1で得られた艶消し熱可塑性樹脂フィルム又は請求項2で得られた艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートを基材に積層する艶消し熱可塑性樹脂積層体の製造方法。

【公開番号】特開2007−138001(P2007−138001A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332996(P2005−332996)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】