説明

芝生の直貼緑化工法

【課題】掘削量を減らしてコストを低減するとともに、掘削の深さを浅くした場合であっても水捌けをよくすることのできる芝生直貼緑化工法を提供することを目的とする。
【解決手段】芝生マットを地面に直貼りする場合、地面を掘削してスリットを形成し、そのスリットに主管と枝管を形成するための暗渠配水管を敷設する。そして、そのスリットの隙間にボラ土を埋め、また、地表面の不陸を整えた後に、その表面にボラ土の層を形成していく。そして、必要によりそのボラ土の層の上に真砂土の層を薄く形成し、その上に芝生マットを直貼りしていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生マットや芝生ロールを地面に直貼りする直貼緑化工法に関するものであり、より詳しくは、水捌けをよくするとともに、低価格で芝生を貼れるようにした芝生の直貼緑化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、庭や公園、広大な敷地などに芝生を貼ることが多くなってきている。このような地面に芝生を貼る場合の一般的な工法について、図4を用いて説明する。
【0003】
1.土壌作り
まず、芝生を貼るための地面を20cm〜30cmほど耕し、その耕した部分に新たな土を入れる場合は、黒土やまさ土などのような水捌けのよい土を入れる。そして、その土に元比となる鶏糞や油かすなどの有機肥料を入れて混合させ、不陸を整えて平らな状態にしておく。
【0004】
2.芝貼り
このように下地の準備ができたら芝生マットを貼っていく。この芝生マットを貼る場合には、あらかじめ紐を真っ直ぐ引っ張って目印を作っておき、その紐に合わせて芝生を並べていく。このとき、芝生マットは一列目と二列目とがそれぞれ交互になるように貼っていき、所定の目地を空けるように貼っていくか、もしくは、目地を空けずに密着させるように貼っていく。
【0005】
3.目土入れ
芝生を並べ終わったら、次に、目土を入れる。目土は通気性と水捌けのよいものを選び、砂やボラ土の細かいものを用いる。そして、その目土を芝生がちょっと見えるくらい表面にまき、板などを用いて目土を平らにしていく。
【0006】
4.押圧処理
目土を入れ終わったら、今度は、芝生と土とを密着させるように上から押圧していく。この押圧処理をする場合、ローラーを用いたり、あるいは、ローラーがない場合は足で踏んだり板材で押圧したりする。
【0007】
5.最終処理
このように押圧処理が終わったら、最後に水やりを行い養生していく。この水やりは、土壌に十分水がしみ込むぐらい水を散布させ、また、養生期間中は2〜3日おきにこまめに水をやる。
【0008】
以上の工法が一般的な工法であるが、近年ではこのような工法において、養生期間を早くするために難腐敗性土壌改良資材を土に混和させない層を設けるようにした技術なども多数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−335749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の工法で芝生を貼る場合、次のような問題を生じる。すなわち、従来の工法では、全面にわたって地盤を20cm〜30cmの深さまで掘削し、その掘削部分に新しい真砂土などの改良土を入れて芝生を貼るようにしているため、その掘削作業に手間がかかり、運び出される産業廃棄物も膨大になってしまう。また、この深さに真砂土などの改良土を入れる場合、掘削の深さを深くすればするほど水捌けがよくなるが、あまりに深く改良土を入れと、コストが高くついてしまう。また、このとき、仮に深く改良土を入れたとしても、一般家庭の庭などのようにブロック塀で仕切られた空間内では、そのブロック塀で水の逃げ場所がなくなってしまい、長雨が続いた場合は水が浮いて根腐れを起こしてしまう可能性もある。一方、公園などのように比較的広い場所では、水の逃げ場をどこかに確保することができるが、広大な場所で深く掘削すると、掘削作業や改良土代などが非常に高くつくといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、掘削量を減らしてコストを低減するとともに、掘削の深さを浅くした場合であっても水捌けをよくすることのできる芝生直貼緑化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、芝生マットを地面に直貼りする芝生直貼緑化工法において、地面を掘削してスリットを形成する工程と、当該形成されたスリットに暗渠配水管を敷設し、ボラ土をその隙間に埋める工程と、地表面の不陸を整えた後に、その表面にボラ土の層を形成する工程と、当該ボラ土の層の上に芝生マットを貼る工程とを備えるようにしたものである。
【0013】
このようにすれば、現状の地表面にスリットを掘削するだけか、もしくは、表面の不陸を整えるように軽く掘削するだけで芝生を直貼りすることができ、低コストで芝生を貼ることができるようになる。しかも、地面に溜まった雨水などについては暗渠配水管を通して排水することができるため、水捌けをよくして根腐れなどを防止することができるようになる。
【0014】
また、このような発明において、前記ボラ土の層の下層面よりも下方に前記暗渠配水管を収まるようにスリットを形成する。
【0015】
このようにすれば、ボラ土の層を浸透してきた雨水をボラ土の下層の表面を伝ってスリットまで運ぶことができ、そのスリット内に収まって入る暗渠配水管で多くの雨水を流すことができるようになる。
【0016】
さらには、前記ボラ土の層の上に真砂土の層を形成し、当該真砂土の層の上に芝生マットを貼るようにすることもできる。
【0017】
このようにした場合は、地表面の不陸を真砂土で整えることができるとともに、芝生を上から押圧した際に、ボラ土の凹凸によって芝生の裏側を傷つけてしまうようなこともなくなる。
【0018】
加えて、このような層を形成する場合、ボラ土の層の上面からスリットの下端までの距離を10cm〜15cmとなるようにする。
【0019】
このようにすれば、深い掘削を行うことなく低価格で芝生を直貼りすることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、芝生マットを地面に直貼りする場合、地面を掘削してスリットを形成して暗渠配水管を敷設し、その上からボラ土を散布してスリットの隙間に埋めるとともに地表面の上にもボラ土の層を形成し、その上から芝生マットを貼るようにしたので、従来のように20cm〜30cmも掘削する必要がなくなり、低コストで芝生を貼ることができるようになる。しかも、地面に溜まった雨水などについては配水管を通して排水することができるため、水捌けをよくして根腐れなどを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態における芝生の直貼りを行った地面の断面図
【図2】同実施の形態における暗渠配水管とスリットの斜視図
【図3】同実施の形態における暗渠配水管の断面図
【図4】従来の芝生貼り方を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態における芝生直貼緑化工法について説明する。この実施の形態における工法は、家屋の庭や校庭のグラウンド、ゴルフ場などに芝生を貼れるようにしたものであって、図1や図2に示すように、地面1にスリット2を形成する工程と、そのスリット2に透水性の暗渠配水管4を埋設させる工程と、その暗渠配水管4のスリット2の隙間と地表面の上にボラ土5を散布して覆う工程と、そのボラ土5の上もしくは、そのボラ土5の上に真砂土6の層を形成して芝生マット7を直貼りする工程とを備えるようにしたものである。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
まず、地面1にスリット2を形成する工程では、図2に示すように、地面1に主管と枝管からなる暗渠配水管4を埋めるためのスリット2を形成する。この暗渠配水管4の主管を埋めるスリット2は図示しない排水口まで繋がるよう設けられており、枝管を埋めるためのスリット2はその主管に連結されるように形成されている。これらのスリット2の深さとしては、図1に示すように、そのスリット2内に暗渠配水管4がちょうど収まるような幅および深さに設定されており、例えば、深さ50mm、幅50mm程度に設定されている。
【0024】
このスリット2内に埋設される暗渠配水管4は、図2や図3に示すように、その表面に透水性の無数の孔3を設けて形成されるもので、その孔3を介して浸入してきた水を暗渠配水管4の軸方向に沿って流せるようにしている。ところで、この暗渠配水管4を埋設させる場合、その孔3が管の下方に存在していると、暗渠配水管4を通ってきた水がその孔3を介して地中に流れてしまい、せっかく排水しようとした水を地中に戻してしまう。一方、孔3を上面側に設けていると、その孔3よりも小さな砂などが浸入してしまい、暗渠配水管4や排水口などに砂が溜まってしまうといった問題がある。そこで、このような水漏れや砂による目詰まりを防止するために、図3に示すような暗渠配水管4を用いるようにしてもよい。
【0025】
この図3に示す暗渠配水管4は、半分より上側にのみ孔3を形成し、半分より下側には孔3を形成しないような構造を有するもので、上側の孔3から浸入した水を底面部に沿って流せるようにしたものである。ただし、この構成では上側の孔3から砂などが浸入してその孔3に目詰まりを起こしてしまう可能性があるため、この暗渠配水管4を埋設させる場合は、砂などの浸入を防止するための目詰まり防止シート41などを被せるようにする。また、この暗渠配水管4の上面に散布されるボラ土5の厚みが薄いと、その上に重量物(例えば、ゴルフカートなど)が載った際、暗渠配水管4に亀裂を生じさせたり破壊されたりして芝生が凹んでしまう可能性がある。このような凹みが生じた場合、その部分にボラ土5を被せて凹みをなくすようにすることもできるが、亀裂や割れを生じた状態のままであると、その暗渠配水管4に砂などが入り込んで排水口を詰まらせてしまう可能性がある。そこで、図3に示すように、この暗渠配水管4の中空部分に装填材を挿入し、圧力がかかった場合であっても、その圧力に耐えて亀裂などを生じさせないようにする。このような装填材としては、水の流通を阻害することなく圧力に耐えられるようなものであればどのようなものであってもよく、例えば、この工事で使用されるボラ土5などを装填材として用いるようにしてもよい。
【0026】
このように暗渠配水管4を埋設した次の工程では、この暗渠配水管4(もしくは、その上の目詰まり防止シート41)を隠すようにボラ土5を散布する。このボラ土5は、軽石の変質した多孔質の岩石で、弱酸性(PH5〜6)であって雑菌が少なく、水捌けがよく、粒が硬くて崩れにくいという性質を有するものである。このような硬いボラ土5を用いることによって押圧時における崩れを防止する。また、そのボラ土5の隙間に雨水を通して排水性を確保し、その多孔性質によって、それ自体の保水性で芝生に適度な水を与えることができる。このようなボラ土5を散布してボラ土5の層を形成する場合、地表面から10cm程度の厚さでボラ土5を散布し、その後、その表面を押圧して不陸を出来る限り整える。
【0027】
次の工程では、必要により、このボラ土5の層の上に新たな真砂土6の層を形成する。この真砂土6の層の形成は必要な場合に行われるもので、不要な場合は、そのボラ土5の層の上に直接芝生マット7を直貼りしていく。この真砂土6の層を形成する場合は、ボラ土5の表面の不陸をならすことができる程度に1cm〜2cm程度の薄さで形成する。
【0028】
そして、このように基礎を形成した後、ボラ土5の層もしくは真砂土6の層の表面に芝生マット7を直貼りしていく。この直貼りにおいては、矩形状にカットされた芝生マット7を隙間なく直貼りしていき、最後に、その表面に目土などを被せて数日間養生を行うようにする。
【0029】
このように芝生を直貼りした後、雨が降った場合、その雨は芝の根で吸収された分を除いて真砂土6やボラ土5の層から地面側へと浸透していく。その際、ボラ土5は多孔性の性質を有しているため、その大部分がボラ土5内に吸収され、余った分がボラ土5の下層との表面に堆積され、その表面を伝ってスリット2側まで流れていく。そして、そのスリット2側まで流れていった水は、目詰まり防止シート41を介して細かな土砂をフィルタリングした後、暗渠配水管4の孔3を介して浸透していく。そして、枝管や主管を介してその水を排水口まで導き、芝生上での水たまりを防止できるようにして根腐れを防止できるようにする。
【0030】
このように上記実施の形態によれば、地面1を掘削してスリット2を形成して暗渠配水管4を敷設し、その上からボラ土5を散布してスリット2の隙間に埋めるとともに地表面の上にもボラ土5の層を形成し、その上から芝生マット7を貼るようにしたので、従来のように20cm〜30cmも掘削する必要がなくなり、低コストで芝生を貼ることができるようになる。しかも、地面に溜まった雨水などについては暗渠配水管4を通して排水することができるため、水捌けをよくして根腐れなどを防止することができるようになる。
【0031】
また、ボラ土5の下層面よりも下方に暗渠配水管4が収まるようにスリット2を形成したので、ボラ土5の層を浸透してきた雨水をボラ土5の下層の表面を伝ってスリット2まで運ぶことができ、多くの雨水を暗渠配水管4に導くことができるようになる。
【0032】
さらには、ボラ土5の層の上に真砂土6の層を形成し、その真砂土6の層の上に芝生マット7を貼るようにしたので、地表面の不陸を真砂土6で整えることができるとともに、芝生を上から踏み付けるなどして押圧した際に、ボラ土5の凹凸によって芝生の裏側を傷つけてしまうようなこともなくなる。
【0033】
加えて、このような層を形成する場合、ボラ土5の層の上面からスリット2の下端までの距離を10cm〜15cmとなるようにしたので、深い掘削を行うことなく低価格で芝生を直貼りすることができるようになる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、暗渠配水管4として断面円形状をなすパイプを用いるようにしたが、断面形状が中空の矩形状をなすパイプを用い、その上半分側にのみ孔3を設けるようにして水を流せるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、真砂土6の上にボラ土5を散布し、さらにその上に真砂土6の層を設けるようにしたが、ボラ土5の下側との境界に防水シートを敷き、その上にボラ土5を散布するようにしてもよい。このようにすれば、より多くの水を暗渠配水管4側に導くようにすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・現状の地面
2・・・スリット
3・・・孔
4・・・暗渠配水管
41・・・目詰まり防止シート
5・・・ボラ土
6・・・上層の真砂土
7・・・芝生マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝生マットを地面に直貼りする芝生直貼緑化工法において、
地面を掘削してスリットを形成する工程と、
当該形成されたスリットに暗渠配水管を敷設し、ボラ土をその隙間に埋める工程と、
地表面の不陸を整えた後に、その表面にボラ土の層を形成する工程と、
当該ボラ土の層の上に芝生マットを貼る工程と、
を備えたことを特徴とする芝生直貼緑化工法。
【請求項2】
前記ボラ土の層の下層面よりも下方に前記暗渠配水管が収まるようにスリットを形成するようにした請求項1に記載の芝生直貼緑化工法。
【請求項3】
前記ボラ土の層の上に真砂土の層を形成し、当該真砂土の層の上に芝生マットを貼るようにした請求項1に記載の芝生直貼緑化工法。
【請求項4】
前記ボラ土の層の上面からスリットの下端までの距離を10cm〜15cmとした請求項1に記載の芝生直貼緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177133(P2011−177133A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46082(P2010−46082)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(510058830)株式会社OHC (1)
【Fターム(参考)】