説明

芝生用穴あけ深耕機

【課題】タインを土壌内から抜き上げるときに芝生を傷めたりすることがなく、しかも作業後の整地が容易な芝生用穴あけ深耕機を提供する。
【解決手段】トラクター2の後部に取り付けられて走行補助輪3により芝生面に接地する機枠1を備え、連結ロッド12によりアーム先端側が駆動されて上下往復運動をする揺動アーム11と、この揺動アーム11に上部が軸支されて下部が進行方向の前後に揺動するタイン保持部材13と、このタイン保持部材13に取り付けられるタイン5と、揺動アーム11の下方にあって基端側が機枠1に取り付けられかつ先端側がタイン保持部材13に取り付けられる付勢部材14とを備えたものであって、無負荷状態の付勢部材14によりタイン保持部材13を固定した状態ではタイン5が芝生面に対して垂直から前方に角度の付いた前向き傾斜状態で土壌内に突き刺さるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターの後部に取り付けられてゴルフ場等の芝生上を走行し、グリーンの硬さを柔軟にし、芝生の根の成長を促進し、排水を良くするのに使用する芝生用穴あけ深耕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の芝生用穴あけ深耕機を図7〜図9を用いて説明する。図7はトラクターに取り付けられた状態の非作業時を示す側面図、図8は同じ状態での作業時を示す側面図、図9はタインの動作を説明する図である。
【0003】
図において、1はトラクター2の後部に取り付けられて走行補助輪3により芝生面に接地する機枠で、カバー4によりその全貌は隠れているが、タイン5を上下往復運動させる穴あけ深耕機構が装備されている。この機枠1は、作業時には図8に示すように下方に降りて走行補助輪3により芝生面上を走行するが、非作業時には図7に示すように上方に上がって退避している。
【0004】
前記穴あけ深耕機構の詳細な説明はここでは省略するが、この機構はトラクター2のPTO軸を駆動源として、タイン5が上下往復運動をするようになっている。タイン5は幅方向に複数本(例えば、3本1組の6組18本)配設され、全タイン5を組毎に分けて上下動のタイミングをずらせることにより全体としてタイン5の受ける下向きの力と上向きの力とが相殺されるようにしてある。このようにすることにより、トラクター2で走行しながら複数個のタイン5により芝生の土壌に穴あけ深耕を行うことができる。
なお、図中6は、タイン5を進行前方向に付勢してタイン5を定位置に保持するバネで、強度を考えてダンパーが使用されている。
【0005】
次に、タイン5の動作を図9に基づいて説明する。タイン5は、図9の(イ)に示すように芝生面に対して真直ぐ垂直に突き刺さり、トラクター2の走行によりバネ6に抗して先が後方に押しやられた図9の(ロ)に示すように後向き傾斜状態で、抜き上げられる。このようにタイン5の先端が土壌内で後方に押しやられて土を切ることにより、土壌内に排水溝を形成し、穴あけ深耕を行うようになっている。このタイン5の芝生面への突き刺し運動は、トラクター2の走行作業中かなりの高速で、相当の回数行われることにより、芝生面全域にわたり穴あけ深耕を行なうことができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題は、前記した従来のタイン5は土壌内から抜き上がるときにバネ6に抗して先端が後方に押しやられた後向き傾斜状態(図9の(ロ)に示す状態)で抜けるので、後方の上側の土壌を引っかき上げてしまうために、後方上側の芝生の根を切り裂いて芝生を傷めるし、またタイン5の直径よりも大きな穴となるために、穴あけ深耕作業後にグリーン面の整地に手間と時間が掛かるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トラクターの後部に取り付けられて走行補助輪により芝生面に接地する機枠を備え、かつこの機枠に穴あけ深耕機構として、前記機枠に軸架されてトラクターのPTO軸により回転駆動されるクランクと、前記機枠にアーム基端側が軸支された状態で前記クランクから下方に延びる連結ロッドによりアーム先端側が駆動されて上下往復運動をする揺動アームと、この揺動アームに上部が軸支されて下部が進行方向の前後に揺動するタイン保持部材と、このタイン保持部材に取り付けられるタインと、前記揺動アームの下方にあって基端側が機枠に取り付けられかつ先端側が前記タイン保持部材に取り付けられる付勢部材を備えたものであって、無負荷状態の前記付勢部材により前記タイン保持部材を固定した状態では前記タインが芝生面に対して垂直から前方に角度の付いた前向き傾斜状態で土壌内に突き刺さるようにしたことを特徴とする芝生用穴あけ深耕機である。
【0008】
本発明の芝生用穴あけ深耕機の好ましい態様では、付勢部材をコイルバネとこのコイルバネ内を貫挿する複数本の線バネとで構成し、かつ前記線バネのうちの少なくとも一本を機枠側に取り付けてその解放側を前記コイルバネの先端側に固定すると共に前記線バネの残りのものをタイン保持部材側に取り付けてその解放側を前記コイルバネの基端側に固定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の芝生用穴あけ深耕機は、タインが芝生面に対して前向き傾斜状態で突き刺さって垂直状態で真直ぐ上方に抜き上がるので、タインの抜き出し時に芝生の根を切り裂いて芝生を傷めるということがなく、グリーンの硬さを柔軟にし、芝生の根の成長を促進し、排水を良くするという理想的かつ効果的な穴あけ深耕が行えると共に、タインが真直ぐ上に抜けることで表面の穴が小さくしかも均一になるので、穴あけ深耕作業後にグリーンはすぐさま使用できるという効果がある。
【0010】
また、本発明の芝生用穴あけ深耕機は、付勢部材をコイルバネとこのコイルバネ内を貫挿する複数本の線バネとで構成したので、タインから掛かる負荷をコイルバネの圧縮により受け止められることになって、繰り返し掛かる突き刺し時のタインからの連続的かつ急激な負荷にも、この付勢部材は長期にわたって耐えることができるし、また従来のダンパーのように柔軟性のないものに比べ、構成に柔軟性を有することにより、芝生面の起伏や傾斜などで上下左右にぶれても、タインが刺さる部分では同じになって穴あけ深耕作業後の芝生面がきれいにかつ均一に仕上がるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明装置の一実施例を示すもので、トラクターに取り付けた作業状態の側面図である。
【図2】図1における本機構の構成を示す図である。
【図3】図2を後方からみた本機構の構成を示す図である。
【図4】図3を左からみた部分図である。
【図5】図4におけるタインの動作を説明する図である。
【図6】図4における付勢部材の構成を示す図である。
【図7】従来のこの種の芝生用穴あけ深耕機を示すもので、トラクターに取り付けられた状態の非作業時を示す側面図である。
【図8】図7と同じ状態での作業時を示す側面図である。
【図9】図8におけるタインの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の芝生用穴あけ深耕機は、無負荷状態の付勢部材によりタイン保持部材を固定した状態ではタインが芝生面に対して垂直から前方に角度の付いた前向き傾斜状態で土壌内に突き刺さり、そして垂直状態で真直ぐ上方に抜き上がることにより、上記効果を実現したものである。以下、本発明の芝生用穴あけ深耕機を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明装置の一実施例を示すもので、トラクターに取り付けた作業状態の側面図、図2は図1における本機構の構成を示す図、図3は図2を後方からみた本機構の構成を示す図、図4は図3を左からみた部分図、図5はタインの動作を説明する図、図6は付勢部材の構成を示す図で、各図中前記従来のものと同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0014】
図において、7はクランク8を回転駆動するクランク軸で、チェーンベルト9によりトラクター2のPTO軸10側に連動されている。11は機枠1にアーム基端側が軸支された6本の揺動アームで、そのアーム先端側が6本の連結ロッド12によりそれぞれのクランク8に連結されている。13は揺動アーム11の先端に上部が軸支されて下部が進行方向の前後に揺動するタイン保持部材で、3本のタイン5が保持されている。14はタイン5の角度を保持するための付勢部材で、機枠1とタイン保持部材13との間に設けられている。
【0015】
なお、付勢部材14は、図6(ハ)に示すようにコイルバネ14aと、3本の線バネ14bとで構成されている。そして、取り付けた無負荷の状態では、図6(イ)に示すように機枠1に取り付けた1本の線バネ14bとタイン保持部材13に取り付けた2本の線バネ14bとがコイルバネ14a内に貫挿されかつそれぞれの解放側がコイルバネ14aの両端側にそれぞれ固定されている。付勢部材14が図6(ロ)に示すように伸長した状態では、コイルバネ14aの部分が圧縮することにより全長が(R)分伸びた状態となる。かかる構成の付勢部材14は、左右両側の線バネ14bがコイルバネ14aの部分で上下左右のあらゆる方向へのぶれが可能になるので、柔軟性のある構造となっている。
【0016】
今、トラクター2の走行と共にクランク軸7がPTO軸10により駆動されると、クランク8により揺動アーム11が図2で示すように上下動するのであるが、この上下動のタイミングは図3から解るように例えば両外側のタイン5が最下位にあると、中のタイン5が最上位に位置するように全タイン5を組分けにしてずらせてある。
【0017】
そして、揺動アーム11の最下端の位置において図5(イ)に示すようにタイン5が芝生面に対して垂直から約5度、進行方向(前向き)に斜めに突き刺さり、刺さっている状態が抵抗となり、付勢部材14の作用によってタイン5自体は進行方向に引っ張られることなく、刺さった面を支点として土壌内で角度が変わる程度の動きとなる。付勢部材14の作用により芝生面から抜き上がるときには、図5(ロ)に示すように真直ぐ上方に抜き上がる。
よって、タイン5の抜けた後の芝生面は、上面はタイン5の直径ほどの穴にしか見えないが、土壌内部は図5(ハ)に示すようにほぐされた穴があいている。
【0018】
なお、タイン5が土壌内に刺さって抜け出すまでの間にタイン5がトラクター2により進む距離(図5中Lで示す)はわずかであるので、タイン5は殆どその位置で上下動することになる。つまり、タイン5の上下動の速さが、タイン5の進む速度よりも非常に速く設定されている。
【0019】
このようにタイン5が芝生面に対して前向き傾斜状態で突き刺さって垂直状態で真直ぐ上方に抜き上がるので、従来のもののように真直ぐ垂直に刺さって後向き傾斜状態で抜き上がり後方上側の芝生の根を切り裂いて芝生を傷めるというようなことがなく、グリーンの硬さを柔軟にし、芝生の根の成長を促進し、排水を良くするという理想的かつ効果的な穴あけ深耕が行えるものである。
【0020】
また、このようにタイン5が真直ぐ上に抜けることで表面の穴がタイン5の直径ほどの穴にしかも均一となるので、穴あけ深耕作業後にグリーンはすぐさま使用できる状態になる。よって、従来のように穴あけ深耕作業後に手間と時間をかけてグリーン面の整地を行わなくても良い。
【0021】
さらに、付勢部材14をコイルバネ14aと線バネ14bとで構成することにより、タイン5から掛かる負荷が図6(ロ)に示すようにコイルバネ14aの圧縮により受け止められることになって、繰り返し掛かる突き刺し時のタイン5からの連続的かつ急激な負荷にも長期にわたって耐えることができるし、また従来のダンパーのように柔軟性のないものに比べ、構成に柔軟性を有することにより、芝生面の起伏や傾斜などによる上下左右のぶれにも、タインが刺さる部分では同じになってきれいにかつ均一にグリーン面を仕上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、トラクターの後部に取り付けられてゴルフ場等の芝生上を走行し、穴あけ深耕作業を行う機械に広く活用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 :機枠
2 :トラクター
3 :走行補助輪
4 :カバー
5 :タイン
6 :バネ
7 :クランク軸
8 :クランク
9 :チェーンベルト
10 :PTO軸
11 :揺動アーム
12 :連結ロッド
13 :タイン保持部材
14 :付勢部材
14a:付勢部材14のコイルバネ
14b:付勢部材14の線バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターの後部に取り付けられて走行補助輪により芝生面に接地する機枠を備え、かつこの機枠に穴あけ深耕機構として、
前記機枠に軸架されてトラクターのPTO軸により回転駆動されるクランクと、前記機枠にアーム基端側が軸支された状態で前記クランクから下方に延びる連結ロッドによりアーム先端側が駆動されて上下往復運動をする揺動アームと、この揺動アームに上部が軸支されて下部が進行方向の前後に揺動するタイン保持部材と、このタイン保持部材に取り付けられるタインと、前記揺動アームの下方にあって基端側が機枠に取り付けられかつ先端側が前記タイン保持部材に取り付けられる付勢部材とを備えたものであって、
無負荷状態の前記付勢部材により前記タイン保持部材を固定した状態では前記タインが芝生面に対して垂直から前方に角度の付いた前向き傾斜状態で土壌内に突き刺さるようにしたことを特徴とする芝生用穴あけ深耕機。
【請求項2】
付勢部材をコイルバネとこのコイルバネ内を貫挿する複数本の線バネとで構成し、かつ前記線バネのうちの少なくとも一本を機枠側に取り付けてその解放側を前記コイルバネの先端側に固定すると共に前記線バネの残りのものをタイン保持部材側に取り付けてその解放側を前記コイルバネの基端側に固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の芝生用穴あけ深耕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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