説明

芝用肥料および懸濁組成物、ならびに芝用肥料の施肥方法

【課題】芝の「葉焼け」を防止することができ、かつ高濃度で肥料を芝に散布することが可能な芝用肥料、懸濁組成物及び芝用肥料の施肥方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の肥効成分を含有する肥料組成物から形成された肥料であって、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験において、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない粒状体の割合が50重量%以下であることを特徴とする芝用肥料、
前記芝用肥料を0.1〜10重量%含んでなることを特徴とする懸濁組成物、及び
前記芝用肥料と水とを混合して前記芝用肥料を0.1〜10重量%で含んでなる懸濁組成物を調製し、この懸濁組成物を50〜2000g/mの割合で芝に散布することを特徴とする芝用肥料の施肥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝用肥料および懸濁組成物ならびに芝用肥料の施肥方法に関するものである。さらに詳細には、本発明は、高濃度で散布した場合でも芝の「葉焼け」を生じさせない芝用肥料およびこれからなる懸濁組成物、ならびに芝用肥料の施肥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴルフ場、競馬場、公園、庭および遊歩道等において、芝を植えることが行われており、そして、芝の成長の促進、病気の予防や回復のために、芝に肥料を施すことが行われている。
【0003】
そのような肥料としては、保存安定性や取り扱いの容易さ等から、肥効成分を含有する肥料組成物を粒状にした粒状肥料が広く使用されている。このような粒状肥料は、一定の分散状態になるように粒状で芝上に散布され、その後の散水や雨水等によって肥効成分が溶解して芝に吸収されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、肥料粒子が散水、雨水等によって溶解される迄の間、肥料粒子は粒状で芝上に留まることになることから、その粒子と芝との接触部およびその周辺部は肥効成分濃度が過度に高くなりやすかった。肥効成分が過度である場合には、所謂「葉焼け」と言われている芝の変色が斑点状に生じることがある。
【0005】
粒状肥料を散布した後、早期に散水を行うことによって「葉焼け」を抑制することができるが、肥料粒子の散布と散水との両作業を連続して行うことは効率的でなく、また「葉焼け」を完全に防止するために多くの散水量が必要になることから、この点でも経済的とは言えなかった。なお、多量の散水は肥料の流亡を伴うことからも避けた方が良いことは言うまでもない。
【0006】
植物の実や根等の生育を目的とする場合とは異なって、葉の色調や艶および例えば弾力性等の性状が重視される芝の肥料にあっては、過度に肥効成分濃度が高い部分が生じないようにすることは特に重要である。そして、散布回数の減少等、肥料散布の効率化を図るために、「葉焼け」を防止しつつ高濃度で肥料を散布できることも重要となる。
【0007】
肥料に含有される全成分が水溶性の場合は液肥での対応が可能だが、非水溶性成分を含む肥料の場合はそれが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による芝用肥料は、少なくとも1種の肥効成分を含有する肥料組成物から形成された肥料であって、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験において、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない粒状体の割合が50重量%以下であること、を特徴とするものである。
【0009】
このような、本発明による芝用肥料は、好ましくは、平均粒径0.01〜0.045mmの範囲の粒子からなるもの、を包含する。
【0010】
このような本発明による芝用肥料は、好ましくは、酸化マグネシウム、珪酸、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトからなる群から選ばれた少なくとも1種の肥効成分を含んでなるもの、を包含する。
【0011】
そして、本発明による懸濁組成物は、前記の芝用肥料を0.1〜10重量%含んでなること、を特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明による芝用肥料の施肥方法は、前記の芝用肥料と水とを混合して前記芝用肥料を0.1〜10重量%で含んでなる懸濁組成物を調製し、この懸濁組成物を50〜2000g/mの割合で芝に散布すること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による芝用肥料は、少なくとも1種の肥効成分を含有する肥料組成物から形成された肥料であって、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験において、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない肥料の割合が50重量%以下のものであることから、水と混合することにより容易に懸濁組成物を調製できるものである。
【0014】
この懸濁組成物は、肥効成分の沈殿や偏りなどがなく、肥効成分濃度が高い場合であっても良好な懸濁状態を長期間維持可能なものであることから、芝に散布しやすいものである。
【0015】
そして、この懸濁組成物は、前記の通りに、肥効成分濃度が高い場合であっても良好な懸濁状態が維持されていることから、肥効成分濃度が過度に高くなる部分を生じさせることなく、均一に芝上に散布可能なものである。
【0016】
従って、本発明によれば、芝の「葉焼け」を防止することができ、かつ高濃度で肥料を芝に散布することが可能になる。このことにより、「葉焼け」の防止ための散水作業を省略することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<芝用肥料>
本発明による芝用肥料は、少なくとも1種の肥効成分を含有する肥料組成物から形成された肥料であって、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験において、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない肥料の割合が50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは5%以下、であること、を特徴とするものである。
【0018】
目開き0.25mmの試験用ふるいを通過しない粒状体(即ち、粒径が大きすぎる粒状体)は、良好な懸濁液を調製することが困難となり、好ましくない。良好な懸濁液を作るためには、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない粉粒物の割合は、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、とする。 このような粉粒物は、平均粒径0.01〜0.045mmの範囲の粒子から主として構成される。
【0019】
本発明における肥効成分は特に限定がなく、従来から芝用肥料の肥効成分をして利用されたきたものを本発明でも使用することができる。本発明の芝用肥料の好ましい肥効成分としては、例えば、酸化マグネシウム、珪酸、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、コバルト、窒素、リン酸、加里、石灰を例示することができる。酸化マグネシウムの配合量は、1〜40重量%、好ましくは10〜25重量%であり、珪酸の配合量は、1〜40重量%、好ましくは10〜30重量%であり、マンガンの配合量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%であり、ホウ素の配合量は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%であり、鉄の配合量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%であり、銅の配合量は、0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%であり、亜鉛の配合量は、0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%であり、モリブデンの配合量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.01重量%であり、コバルトの配合量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.01重量%である。
【0020】
肥料組成物を試験用ふるいに付す前には、必要に応じて、肥料組成物を造粒処理または粉砕処理に付すことができる。
【0021】
本発明における造粒処理は特に限定されず、従来同様の造粒処理を採用することができる。たとえば、肥料組成物にアンモニア水および(または)適当なバインダー等を加えた後、円筒状、皿状、その他の公知の造粒機等を用いて造粒処理を行うことができる。
【0022】
目開き0.25mmの試験用ふるいを通過しない粉粒物は、粉砕処理した後、再度ふるい分け処理に付すことができる。
【0023】
<懸濁組成物>
本発明による懸濁組成物は、前記の芝用肥料を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜2重量%、含んでなること、を特徴とするものである。
【0024】
この懸濁組成物は、前記の芝用肥料と水とを混合することによって得ることができる。なお、本発明による懸濁組成物には、必要に応じて、この懸濁組成物に溶解または懸濁可能な各種の成分を配合することができる。そのような配合可能な成分としては、好ましくは、液体肥料、例えば窒素、リン酸、加里および石灰ならびに懸濁組成物の懸濁状態と維持または向上させる各種の懸濁助剤等を挙げることができる。
【0025】
水の温度は、通常、常温であるが、必要に応じて、加熱または冷却することができる。
【0026】
このような本発明による懸濁組成物は、前記の芝用肥料の各種の肥効成分のうち、水溶性の肥効成分が水に溶解し、そして非水溶性の肥効成分が水中に懸濁したものである。
【0027】
非水溶性の肥効成分の代表例は珪酸であるが、前記の通りに、本発明の芝用肥料は目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない粒状体の割合が50重量%以下のものであることから、非水溶性の肥効成分、例えば珪酸の粒径が均一でありかつ適当な範囲内に制御されている。
【0028】
従って、非水溶性の肥効成分が沈殿することなく懸濁液中に均一に分散していることから、芝に散布した際に、肥効成分の偏りがなく、均一に施肥することが可能になる。
【0029】
<芝用肥料の施肥方法>
本発明による芝用肥料の施肥方法は、前記の芝用肥料と水とを混合して前記芝用肥料を0.1〜10重量%で含んでなる懸濁組成物を調製し、この懸濁組成物を50〜2000g/m、好ましくは200〜1000g/m、の割合で芝に散布すること、を特徴とするものである。
【0030】
懸濁組成物を散布する際は、懸濁組成物を貯留可能なタンクを備えた車両を使用して、走行しながら前記懸濁組成物をスプレーで芝に散布することが好ましい。
【0031】
本発明による懸濁組成物は、肥効成分が沈殿することなく懸濁液中に均一に分散していることから、芝に散布した際に肥効成分の偏りがないので、50〜2000g/m、好ましくは200〜1000g/m、という高濃度で散布しても、芝の「葉焼け」が生じることがない。
【0032】
本発明による芝用肥料は、例えばゴルフ場、公園、競技場、庭の芝に好適なものである。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、本発明の特に好ましい具体例についてより詳細に記載するものである。
【0034】
<実施例1>
肥効成分として、苦土(酸化マグネシウム)を14重量%、珪酸(SiO)を13重量%、マンガン(MnO)を0.4重量%、ホウ素(B)を0.3重量%、鉄を1.2重量%、銅を0.02重量%、亜鉛を0.03重量%、モリブデンを0.004重量%含有する肥料を製造した。
【0035】
この肥料100kgを、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験に従い、遠心ローラーミルで粉砕して、目開き0.25mmのふるいにかけた後、引き続き、目開き0.15mmのふるいにかけて、本発明による芝用肥料99kgを得た。この得られた芝用肥料は、平均粒径が0.045mm以下のものであった。
この芝用肥料10kgと水1000kgとをタンク車の中で混合した。その結果、良好な懸濁状態を有する本発明による懸濁組成物を調製することができた。
【0036】
<実施例2>
実施例1で調製された懸濁組成物を、散水のようにして、芝(品種:ペンクロスベント)に、1000g/mの割合で散布した。
散布直後、散布1時間後、散布2時間後に、芝の状態を目視によって観察して、芝の「葉焼け」の有無およびその状態を調べた。
結果は、表1に示される通りである。
【0037】
<比較例1>
実施例1と同様の肥効成分を含有する肥料を製造し、この肥料をふるい分け試験に付し、目開き0.25mmのふるいにかけた後、目開き0.15mmのふるいにかけて、目開き0.15mmのふるいを通過しない粒状体の割合が60重量%の肥料を得た。 実施例1と同様に、肥料10kgと水1000kgとをタンク車の中で混合したが、良好な状態の懸濁液を得ることはできなかった。
【0038】
一方、上記で得られた肥料を、実施例1と同様に、芝(品種:ペンクロスベント)に、10g/mの割合で散布した後、水を1リットル/mの割合で散水した。
散布直後、散布1時間後、散布2時間後に、芝の状態を目視によって観察して、芝の「葉焼け」の有無およびその状態を調べた。
結果は、表1に示される通りである。
【0039】
<比較例2>
水のみを芝(品種:ペンクロスベント)に1000g/mの割合で散水した。
結果は、表1に示される通りである。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の肥効成分を含有する肥料組成物から形成された肥料であって、JIS Z8801の「試験用ふるい」に規定されるふるい分け試験において、目開き0.25mmの試験用ふるいを通過し、目開き0.15mmの試験用ふるいを通過しない肥料の割合が50重量%以下であることを特徴とする、芝用肥料。
【請求項2】
平均粒径0.01〜0.045mmの範囲の粒子からなる、請求項1に記載の芝用肥料。
【請求項3】
酸化マグネシウム、珪酸、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトからなる群から選ばれた少なくとも1種の肥効成分を含んでなる、請求項1または2に記載の芝用肥料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の芝用肥料を0.1〜10重量%含んでなることを特徴とする、懸濁組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の芝用肥料と水とを混合して前記芝用肥料を0.1〜10重量%で含んでなる懸濁組成物を調製し、この懸濁組成物を50〜2000g/mの割合で芝に散布することを特徴とする、芝用肥料の施肥方法。

【公開番号】特開2007−153654(P2007−153654A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349568(P2005−349568)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(592060260)ダイヤケミカル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】