説明

芯糸供給装置及び芯糸供給装置を備える紡績機械

【課題】芯糸送出部によって確実に芯糸を送り出すことが可能となる芯糸供給装置と当該芯糸供給装置を備える紡績機械を提供することを目的とする。
【解決手段】芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cを送り出す芯糸送出部13と、前記芯糸ボビン15と前記芯糸送出部13との間で前記芯糸Cに張力を付与する張力付与部11と、前記張力付与部11と前記芯糸送出部13との間で前記芯糸Cの張力を弛緩する張力弛緩部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯糸供給装置及び芯糸供給装置を備える紡績機械の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芯糸の外周に繊維を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットが知られている。このような紡績ユニットには、空気の旋回気流を利用して繊維を撚る空気紡績装置と、空気紡績装置に芯糸を供給する芯糸供給装置と、が備えられている(例えば特許文献1)。
【0003】
芯糸供給装置には、芯糸が巻かれた芯糸ボビンから芯糸を引き出して、該芯糸を送り出す芯糸送出部が設けられている。また、芯糸供給装置には、芯糸ボビンから引き出された芯糸が弛まないように、該芯糸に張力を付与する張力付与部が設けられている。このため、従来の芯糸送出部には、張力付与部によって張力が付与された芯糸を芯糸ボビンから引き出す能力が求められていた。
【0004】
しかし、張力付与部によって張力が付与された芯糸を芯糸ボビンから引き出すためには、芯糸送出部によって該芯糸に大きな引張力を加える必要が生じる。そのため、空気の作用によって芯糸を芯糸ボビンから引き出して、該芯糸を送り出すエアサッカーを芯糸送出部として用いた場合は、該エアサッカーから噴出される空気流が強くなって空気紡績装置に供給される繊維束を乱してしまうという問題が生じていた。
【0005】
このような問題は、特許文献1に示すように、張力弛緩部(芯糸に弛みを生じさせる手段)を備えた芯糸供給装置であったとしても、張力弛緩部と芯糸送出部(エアサッカー)との間に張力付与部(テンサー)が配置されていることから、大きく改善することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−302225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、芯糸送出部によって確実に芯糸を送り出すことが可能となる芯糸供給装置と当該芯糸供給装置を備える紡績機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
第1の発明は、芯糸供給装置に関する。芯糸供給装置には、芯糸送出部と、張力付与部と、張力弛緩部と、が備えられる。芯糸送出部は、芯糸ボビンから引き出された芯糸を送り出す。張力付与部は、芯糸ボビンと芯糸送出部との間で芯糸に張力を付与する。張力弛緩部は、張力付与部と芯糸送出部との間で芯糸の張力を弛緩する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る芯糸供給装置に関する。張力弛緩部には、芯糸の軌道を屈曲させる可動部材が備えられる。可動部材は、作動位置まで移動して芯糸の軌道を屈曲させた後に待機位置に移動することによって該芯糸の張力を弛緩する。
【0011】
第3の発明は、第2の発明に係る芯糸供給装置に関する。可動部材は、第一の端部に設けられた回転軸を中心に回動可能に支持された一軸アームである。一軸アームは、回動することによって該一軸アームの第二の端部に設けられた接触部が芯糸を屈曲させる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明に係る芯糸供給装置に関する。芯糸供給装置には、張力付与部と芯糸送出部との間にガイド部材が備えられる。ガイド部材は、芯糸の軌道を略一定に規制する。張力弛緩部は、張力付与部とガイド部材との間で芯糸の張力を弛緩する。
【0013】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に係る芯糸供給装置に関する。芯糸送出部は、芯糸ボビンから引き出された芯糸を空気の作用によって送り出すエアサッカーである。
【0014】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に係る芯糸供給装置に関する。張力付与部は、第一案内部と、第二案内部と、支持軸と、で構成される。第一案内部は、複数の環状部材を有する。第二案内部は、複数の梁部材を有する。支持軸は、第一案内部と第二案内部とを開閉可能に支持する。張力付与部は、環状部材に通された芯糸の軌道を梁部材が屈曲させることで張力を付与するストレージテンサーである。
【0015】
第7の発明は、芯糸供給装置を備えた紡績機械に関する。紡績機械には、芯糸供給装置と、空気紡績装置と、が備えられる。芯糸供給装置は、第1から第6のいずれかの発明に係る芯糸供給装置である。空気紡績装置は、芯糸供給装置が供給した芯糸の外周に繊維を撚る。張力弛緩部は、空気紡績装置が紡績を開始する前工程で芯糸の張力を弛緩する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
第1の発明によれば、張力弛緩部が張力付与部と芯糸送出部との間で芯糸の張力を弛緩することができる。従って、芯糸送出部は、張力が弛緩された芯糸を送り出すことができ、芯糸の送り出し時に張力付与部により付与されている張力によって芯糸が切断されたりすることがない。これにより、芯糸ボビンから引き出された芯糸を芯糸送出部によって確実に送り出すことが可能となる。
【0018】
第2の発明によれば、可動部材によって芯糸の軌道を屈曲させているため、芯糸を弛ませて、該芯糸の張力を確実に弛緩することができる。これにより、芯糸ボビンから引き出された芯糸を芯糸送出部によって確実に送り出すことが可能となる。
【0019】
第3の発明によれば、回動可能に支持された一軸アームによって芯糸の軌道を屈曲させる機構が用いられるため、簡単な構造でありながら確実に芯糸の張力を弛緩させることができる。これにより、芯糸ボビンから引き出された芯糸を芯糸送出部によって確実に送り出すことが可能となる。
【0020】
第4の発明によれば、張力弛緩部が張力付与部とガイド部材との間で芯糸の張力を弛緩するため、張力弛緩部とガイド部材の二箇所で芯糸の軌道が屈曲して該芯糸の弛み量を大きくすることができる。これにより、芯糸ボビンから引き出された芯糸を芯糸送出部によって確実に送り出すことが可能となる。
【0021】
第5の発明によれば、空気の作用によって芯糸を吸引するエアサッカーが用いられるため、小さな消費エネルギーで芯糸を送り出すことができる。
【0022】
第6の発明によれば、環状部材に通された芯糸の軌道を梁部材により屈曲させて該芯糸に張力を付与するストレージテンサーが用いられるため、芯糸が張力付与部から脱落することを防止し、該芯糸に確実に張力を付与することができる。
【0023】
第7の発明によれば、空気紡績装置が紡績を開始する前工程において張力弛緩部が芯糸の張力を弛緩するため、芯糸送出部によって確実に芯糸を送り出して空気紡績装置に供給することができる。これにより、紡績機械は、芯糸を有する紡績糸を効率良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】紡績ユニット1の全体構成を示す図。
【図2】紡績ユニット1に設けられた空気紡績装置6を示す図。
【図3】紡績ユニット1に設けられた張力安定装置8を示す図。
【図4】紡績ユニット1に設けられた芯糸供給装置10を示す図。
【図5】芯糸供給装置10を構成する芯糸送出部13を示す図。
【図6】芯糸供給装置10を構成する張力付与部11を示す図。
【図7】張力弛緩部12の駆動機構を示す図。
【図8】芯糸供給装置10の動作態様を示す一の図。
【図9】芯糸供給装置10の動作態様を示す二の図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、図1を用いて、紡績ユニット1の全体構成について説明する。
【0026】
紡績ユニット1は、芯糸Cと繊維束(以降「スライバ」という。)Fから紡績糸Yを製造してパッケージPを作成する紡績機械である。紡績ユニット1は、主にスライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って配置された、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、空気紡績装置6と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9と、で構成される。更に、紡績ユニット1には、芯糸Cを空気紡績装置6へ供給する芯糸供給装置10が設けられている。
【0027】
スライバ供給ユニット4は、紡績糸Yの原料となるスライバFをドラフト装置5へ供給する。スライバ供給ユニット4は、主にスライバケース41と、図示しないスライバガイドと、で構成される。スライバケース41に貯溜されたスライバFは、スライバガイドに案内されてドラフト装置5へ供給される。
【0028】
ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することで該スライバFの太さを均一化する。ドラフト装置5は、スライバFの送り方向に沿って配置された、バックローラ対51と、サードローラ対52と、ミドルローラ対53と、フロントローラ対54と、の四組のドラフトローラ対で構成される。
【0029】
四組のドラフトローラ対51・52・53・54は、それぞれボトムローラ51A・52A・53A・54Aと、トップローラ51B・52B・53B・54Bと、で構成される。また、ミドルローラ対53を構成するボトムローラ53A及びトップローラ53Bには、皮又は合成ゴム製のエプロンバンドが巻回されている。
【0030】
ボトムローラ51A・52A・53A・54Aは、図示しない駆動装置によって同じ方向に回転される。トップローラ51B・52B・53B・54Bは、ボトムローラ51A・52A・53A・54Aの回転によって従動し、同じ方向に回転される。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54は、スライバFの送り方向に沿って順次、回転速度が速くなるように設定されている。
【0031】
このような構成により、ドラフトローラ対51・52・53・54に挟持されたスライバFは、各ドラフトローラ対51・52・53・54を通過する度に送り速度が増していき、隣接するドラフトローラ対との間で牽伸されることとなる。このようにして、ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することで該スライバFの太さを均一化することを可能としている。
【0032】
空気紡績装置6は、芯糸Cの外周にスライバFを構成する各繊維を撚ることで紡績糸Yを製造する。図2に示すように、空気紡績装置6は、主にファイバーガイド61と、スピンドル62と、ノズルブロック63と、で構成される。なお、図中に示す黒塗りの矢印は、芯糸C、スライバF及び紡績糸Yの送り方向を示している。図中に示す白塗りの矢印は、供給された空気の流れ方向を示している。
【0033】
ファイバーガイド61は、紡績室SCの一部を構成する部材である。ファイバーガイド61は、芯糸供給装置10によって供給された芯糸Cとドラフト装置5によって牽伸されたスライバFを紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ファイバーガイド61は、紡績室SCに連通された繊維導入路61gによって該紡績室SC内へ芯糸CとスライバFを導く。また、ファイバーガイド61には、芯糸CとスライバFを沿わせて案内するニードル61nが紡績室SCの内部に突設するように設けられている。
【0034】
スピンドル62は、紡績室SCの一部を構成する部材である。スピンドル62は、紡績室SCにおいて芯糸Cの外周に繊維を撚って製造された紡績糸Yを糸欠点検出装置7へ導く。具体的に説明すると、スピンドル62は、紡績室SCに連通された繊維通過路62sによって送り方向下流側に配置された糸欠点検出装置7へ紡績糸Yを導く。
【0035】
ノズルブロック63は、紡績室SCの一部を構成する部材である。ノズルブロック63は、図示しない空気供給源から圧送された空気を紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ノズルブロック63は、紡績室SCに連通された空気孔63aによって該紡績室SC内へ空気を導く。なお、ノズルブロック63に設けられた各空気孔63aは、各空気孔63aから噴出した空気が紡績室SCの中心軸を中心として互いに同じ方向に流れるように連通されているため、該紡績室SCの内部で空気の旋回気流を発生させる(図中白矢印参照)。
【0036】
ここで、紡績室SCについて更に詳しく説明する。紡績室SCは、ファイバーガイド61と、スピンドル62と、ノズルブロック63と、で囲まれた空間である。詳細には、紡績室SCは、ノズルブロック63に設けられた略円錐形状の貫通孔63pに対して、一方から挿入された略円錐形状のスピンドル62と、他方に取り付けられたファイバーガイド61と、で囲まれた空間である。
【0037】
紡績室SCは、ファイバーガイド61とスピンドル62の間に構成される空間SC1と、スピンドル62とノズルブロック63の間に構成される空間SC2と、に分けられる。空間SC1において、スライバFを構成する各繊維は、各繊維の後端部が旋回気流によって反転される(図中二点鎖線参照)。また、空間SC2において、反転された各繊維の後端部が旋回気流によって旋回される(図中二点鎖線参照)。
【0038】
このような構成により、ニードル61nに沿って導かれた芯糸CとスライバFは、該スライバFを構成する各繊維の後端部が旋回されて、次々と芯糸Cの外周に巻き付いていく。このようにして、空気紡績装置6は、空気の旋回気流を利用して芯糸Cの外周に繊維を撚ることができ、紡績糸Yを製造する。
【0039】
なお、空気紡績装置6は、ファイバーガイド61にニードル61nが設けられていない構成であっても良い。この場合、ファイバーガイド61は、該ファイバーガイド61の下流端のエッジによってニードル61nの機能を実現する。ファイバーガイド61にニードル61nが設けられていない構成であったとしても、本発明の目的及び効果に差異はなく、本発明の技術的範囲に属する。また、ファイバーガイド61とノズルブロック63とは、一体形成されていても良い。
【0040】
糸欠点検出装置7は、紡績糸Yに生じた欠点部を検出する。糸欠点検出装置7は、主に図示しない光源部と、図示しない受光部と、図示しないケーシングと、で構成される。
【0041】
光源部は、順方向に電圧を印加することによって発光する半導体素子、即ち、発光ダイオードである。光源部は、該光源部からの光を紡績糸Yに照射できるように配置されている。
【0042】
受光部は、光信号によって電流の制御を可能とする半導体素子、即ち、フォトトランジスタである。受光部は、光源部によって照射された光を受光できるように配置されている。
【0043】
ケーシングは、光源部ならびに受光部を所定の位置に保持する部材である。ケーシングには、紡績糸Yが通過する糸通路が設けられている。ケーシングは、紡績糸Yを挟んで対向するように光源部ならびに受光部を保持している。
【0044】
このような構成により、受光部が受光する光量は、光源部から紡績糸Yへ照射された光のうち紡績糸Yによって遮光された光量を除く値となる。このようにして、糸欠点検出装置7は、糸太さに応じて変化する受光量を測定することができ、紡績糸Yに生じた欠点部を検出することを可能としている。
【0045】
なお、糸欠点検出装置7が検出できる欠点部には、紡績糸Yの一部が太過ぎたり細過ぎたりする異常の他、紡績糸Yにポリプロピレン等の異物が介在する場合も含まれる。また、糸欠点検出装置7は、上記のような光学式のセンサ以外にも、静電容量式のセンサを採用することも可能である。
【0046】
張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。図3に示すように、張力安定装置8は、主にローラ81と、動力部82と、解舒部材83と、で構成される。なお、図中に示す矢印は、紡績糸Yの送り方向を示している。
【0047】
ローラ81は、紡績糸Yを空気紡績装置6から引き出して該紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。ローラ81は、動力部82の回転軸82aに取り付けられて該動力部82によって回転される。そして、空気紡績装置6から引き出された紡績糸Yは、該ローラ81の外周面に巻回される。
【0048】
動力部82は、電力を供給されることによって駆動する電動モータである。動力部82は、ローラ81を回転させるとともに、該ローラ81の回転速度を所定の値で一定に維持する。これにより、ローラ81に巻回される紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができる。
【0049】
解舒部材83は、ローラ81と一体又は独立して回転することで巻回された紡績糸Yの解舒を補助する糸掛け部材である。解舒部材83の一端部は、ローラ81の回転軸84に取り付けられている。解舒部材83の他端部は、ローラ81の外周面に向かって湾曲するように形成されている。そして、解舒部材83は、湾曲した部位に紡績糸Yが掛けられることによって該紡績糸Yをローラ81から解舒することを可能としている。なお、解舒部材83が取り付けられた回転軸84の基部には、解舒部材83の回転に抗するように抵抗力を生じる永久磁石が配置されている。
【0050】
このような構成により、解舒部材83は、紡績糸Yに掛かる張力が低く、上述した抵抗力に打ち負ける場合、ローラ81と一体となって回転する。一方、解舒部材83は、紡績糸Yに掛かる張力が高く、上述した抵抗力に打ち勝つ場合、ローラ81から独立して回転する。このようにして、張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力に応じて解舒部材83をローラ81と一体又は独立して回転させることができ、該紡績糸Yの解舒速度を調節することを可能としている。こうして、張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。
【0051】
なお、上述したように、張力安定装置8は、空気紡績装置6から紡績糸Yを引き出す役割を有している。しかし、例えば空気紡績装置6の下流側にデリベリローラとニップローラを配置して、該デリベリローラとニップローラによって紡績糸Yを引き出すようにしても良い。更に、デリベリローラとニップローラの下流側に張力安定装置8を配置して紡績糸Yを巻回して貯溜する構成としても良い。或いは、張力安定装置8を省略し、巻取装置9によって紡績糸Yを引き出す構成としても良い。
【0052】
巻取装置9は、紡績糸Yを巻回することで略円筒形状(チーズ形状)のパッケージPを作成する。巻取装置9は、主に駆動ローラ91と、図示しないクレードルと、で構成される。クレードルは、巻取管92を回転自在に保持する。
【0053】
駆動ローラ91は、回転することによって巻取管92及びパッケージPを従動回転させる回転体である。駆動ローラ91は、パッケージPの外径の変化に応じて回転速度を調節し、該パッケージPの周速度を一定に維持する。これにより、巻取管92に巻回される紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができる。
【0054】
巻取管92は、回転することによって紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。巻取管92は、該巻取管92或いはパッケージPの外周面に接触した状態で回転する駆動ローラ91によって従動回転される。なお、巻取装置9は、図示しない綾振装置によって紡績糸Yを綾振するため、パッケージPにおける紡績糸Yの偏りを防いでいる。
【0055】
このような構成により、巻取管92に導かれた紡績糸Yは、該巻取管92の外周面に偏ることなく巻回されていく。このようにして、巻取装置9は、略円筒形状(チーズ形状)のパッケージPを作成することを可能としている。なお、巻取装置9は、図1に示されているような略円筒形状(チーズ形状)のパッケージP以外にも、例えば略円錐形状(コーン形状)のパッケージPを作成することができる。
【0056】
次に、図1及び図4を用いて、芯糸供給装置10の構成について詳細に説明する。
【0057】
上述したように、芯糸供給装置10は、芯糸Cを空気紡績装置6へ供給する。詳細に説明すると、芯糸供給装置10は、ドラフト装置5を構成するフロントローラ対54を介して芯糸Cを空気紡績装置6へ供給する。芯糸供給装置10は、主に芯糸Cの送り方向に沿って配置された、張力付与部11と、張力弛緩部12と、芯糸送出部13と、で構成される。なお、本実施形態に係る芯糸供給装置10は、張力付与部11としてストレージテンサー11を用いている。また、芯糸送出部13としてエアサッカー13を用いている。
【0058】
エアサッカー13は、芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cを送り出す。なお、芯糸ボビン15は、図示しないボビン保持部により保持されている。図5に示すように、エアサッカー13は、主に芯糸Cを案内するノズル部材131と、芯糸Cが通る円管部材132と、で構成される。
【0059】
エアサッカー13を構成するノズル部材131は、該ノズル部材131の先端部が円管部材132の内部に挿入された状態で固定されている。エアサッカー13を構成する円管部材132は、空気室133と連通した状態で固定されている。このため、図示しない空気供給源から空気室133に供給された空気は、ノズル部材131の先端部と円管部材132の隙間から該円管部材132内へ流れ込み、一方向の空気流を形成する(図中矢印参照)。このようにして、エアサッカー13は、円管部材132を流れる空気の作用によって芯糸Cに対して引張力を及ぼす。
【0060】
このように、本芯糸供給装置10には、空気の作用によって芯糸Cを吸引するエアサッカー13が用いられるため、小さな消費エネルギーで芯糸Cを送り出すことができる。芯糸Cの弛み部分を作る張力弛緩部12については後述する。
【0061】
特許文献1に記載の芯糸供給装置(芯糸の送り出し装置)は、芯糸送出部(エアサッカー)での吸引が難しい径の小さい芯糸や解舒性の悪い芯糸ボビン(芯糸パッケージ)の芯糸の場合、該芯糸送出部(エアサッカー)に供給される空気の圧力を上げていた。しかし、芯糸送出部(エアサッカー)に供給される空気の圧力を上げると、該芯糸送出部(エアサッカー)の近傍に設けられているドラフト装置によって牽伸されているスライバを芯糸送出部(エアサッカー)から排出された空気によって乱してしまう。最悪の場合、スライバが吹き飛ばされてしまい、紡績ユニットはパッケージの作成を中断する。本実施形態に係る芯糸供給装置10は、径の小さい芯糸Cや解舒性の悪い芯糸ボビン15の芯糸Cであっても、該芯糸Cを確実に送り出して、空気紡績装置6に供給することができる。
【0062】
ストレージテンサー11は、芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cが弛まないように、該芯糸Cに所定の張力を付与する。つまり、ストレージテンサー11は、エアサッカー13に引張られる芯糸Cの軌道を屈曲させて抵抗力を生じさせることで該芯糸Cに張力を掛ける。ストレージテンサー11は、芯糸ボビン15とエアサッカー13との間に配置されている。図6に示すように、ストレージテンサー11は、主に複数の環状部材111aが設けられた第一案内部111と、複数の梁部材112aが設けられた第二案内部112と、第一案内部111と第二案内部112とを開閉可能に支持する支持軸113と、で構成される。
【0063】
ストレージテンサー11を構成する第一案内部111と第二案内部112は、第一案内部111の環状部材111aと第二案内部112の梁部材112aが交互に配置されるように構成されている。また、第一案内部111と第二案内部112は、互いに近接又は離間する方向に支持軸113を中心として開閉自在に構成されている(図中矢印参照)。このため、第一案内部111の環状部材111aに通された芯糸Cは、第二案内部112の梁部材112aによって軌道が屈曲される。このようにして、ストレージテンサー11は、芯糸Cに付与する張力を調節することができる。
【0064】
このように、本芯糸供給装置10には、環状部材111aに通された芯糸Cの軌道を梁部材112aにより屈曲させて該芯糸Cに張力を付与するストレージテンサー11が用いられるため、芯糸Cが張力付与部11(ストレージテンサー11)から脱落することを防止し、該芯糸Cに張力を確実に付与することができる。
【0065】
なお、ストレージテンサー11は、動力源を必要としない。従って、張力付与部11としてストレージテンサー11を採用することにより、紡績ユニット1は、消費エネルギーの削減と構成の簡素化が実現できる。
【0066】
張力弛緩部12は、芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cをエアサッカー13によって確実に送り出すために、該芯糸Cの張力を弛緩する。張力弛緩部12は、ストレージテンサー11とエアサッカー13との間に配置されている。図7A及び図7Bに示すように、張力弛緩部12は、主に芯糸Cの軌道を屈曲させる可動部材121で構成される。本芯糸供給装置10において、可動部材121は、一端側に設けられた回転軸SHを中心に回動可能に支持された一軸アーム121である。
【0067】
図7Aに示すように、一軸アーム121は、エアアクチュエータ122によって回動自在に構成される。エアアクチュエータ122は、シリンダ122aに供給された空気の圧力を利用してピストン122bを摺動させる。このようにして、エアアクチュエータ122は、一軸アーム121を回動させる。
【0068】
具体的に説明すると、図示しない空気供給源からシリンダ122aに空気が供給されると、シリンダ122a内の空気の圧力によってピストン122bが伸張方向に摺動する(図中黒矢印方向)。この場合、ピストン122bがロッド122cを介して一軸アーム121を押し、該一軸アーム121を作動位置まで移動させる(図8参照)。一方、空気供給源からシリンダ122aへの空気の供給が停止されると、スプリングの付勢力によってピストン122bが収縮方向に摺動する(図中白矢印方向)。この場合、ピストン122bがロッド122cを介して一軸アーム121を引張り、該一軸アーム121を待機位置まで移動させる(図9参照)。このような構成により、張力弛緩部12は、一軸アーム121を作動位置まで移動させて芯糸Cの軌道を屈曲させた後に該一軸アーム121を待機位置まで移動することによって、芯糸Cを弛ませて該芯糸Cの張力を弛緩することができる。
【0069】
また、図7Bに示すように、一軸アーム121を電動モータ123によって回動自在に構成しても良い。図示しない電力供給源から正方向に電力が供給されると、電動モータ123の回転軸123aが正方向に回転する(図中黒矢印参照)。この場合、回転軸123aがギヤ123bを介して一軸アーム121を作動位置まで移動させる(図8参照)。一方、電力供給源から逆方向に電力が供給されると、電動モータ123の回転軸123aが逆方向に回転する(図中白矢印参照)。この場合、回転軸123aがギヤ123bを介して一軸アーム121を待機位置まで移動させる(図9参照)。このような構成により、張力弛緩部12は、一軸アーム121を作動位置まで移動させて芯糸Cの軌道を屈曲させた後に該一軸アーム121を待機位置まで移動することによって、芯糸Cを弛ませて該芯糸Cの張力を弛緩することができる。
【0070】
このように、本芯糸供給装置10は、可動部材121によって芯糸Cの軌道を屈曲させているため、芯糸Cを弛ませて、該芯糸Cの張力を確実に弛緩することができる。本芯糸供給装置10においては、回動可能に支持された一軸アーム121の接触部121aによって芯糸Cの軌道を屈曲させる機構が用いられるため、簡単な構造でありながら確実に芯糸Cの張力を弛緩させることができる。これにより、芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cをエアサッカー13(芯糸送出部13)によって確実に送り出すことが可能となる。
【0071】
特許文献1に記載の芯糸供給装置(芯糸の送り出し装置)において、芯糸に弛みを生じさせる手段は、芯糸ボビン(芯糸パッケージ)と張力付与部(テンサー)の間で芯糸を弛ませている。従って、芯糸に弛みを生じさせた後、芯糸送出部(エアサッカー)が芯糸を吸引する前に張力付与部(テンサー)による張力付与状態を解除する必要があり、このための特別な機構を設ける必要がある。しかし、本実施形態に係る芯糸供給装置10において、張力弛緩部12は、ストレージテンサー11の下流側の芯糸Cの張力を弛緩させるため、該ストレージテンサー11による張力付与状態を解除するための特別な機構を省略することができる。
【0072】
なお、本実施形態に係る芯糸供給装置10には、ストレージテンサー11とエアサッカー13の間にガイド部材14が設けられている。ガイド部材14は、芯糸Cの通路が設けられた環状部材であって該芯糸Cの軌道を略一定に規制する。張力弛緩部12は、ストレージテンサー11とガイド部材14との間で芯糸Cの張力を弛緩する。このような構成により、ストレージテンサー11とエアサッカー13との間に架け渡された芯糸Cは、一軸アーム121が作動位置まで移動した際に、該一軸アーム121の接触部121aとガイド部材14の二箇所で屈曲することとなる(図8中A点、B点参照)。
【0073】
このように、本芯糸供給装置10は、張力弛緩部12がストレージテンサー11(張力付与部11)とガイド部材14との間で芯糸Cの張力を弛緩するため、一軸アーム121の接触部121aとガイド部材14の二箇所で芯糸Cの軌道が屈曲して該芯糸Cの弛み量を大きくすることができる。これにより、芯糸ボビン15から引き出された芯糸Cをエアサッカー13(芯糸送出部13)によって確実に送り出すことが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態に係る芯糸供給装置10は、張力付与部11としてストレージテンサー11を用いているが、芯糸Cを挟持することによって張力を付与するディスクテンサーを用いても良い。また、本芯糸供給装置10は、張力弛緩部12の可動部材121として一軸アーム121を用いているが、芯糸Cの軌道を屈曲させる機械的機構であれば良い。更に、本芯糸供給装置10は、芯糸送出部13としてエアサッカー13を用いているが、芯糸Cを送り出せる構成であれば、その他の構成であっても良い。
【0075】
芯糸ボビン15が配置される方向は、図1に図示される方向に限らず、芯糸ボビン15の解舒側端部が紡績ユニット1の正面を向くように配置しても良く、或いは、芯糸ボビン15の解舒側端部の反対側が紡績ユニット1の正面を向くように配置しても良い。
【0076】
次に、図8及び図9を用いて、芯糸供給装置10の動作態様について詳細に説明する。ここでは、紡績糸Yの製造を中断する際と紡績糸Yの製造を再開する際の芯糸供給装置10の動作態様について説明する。
【0077】
紡績ユニット1は、糸欠点検出装置7が紡績糸Yの欠点部を発見した場合、図示しないカッターによって該紡績糸Yを切断する。このとき、芯糸供給装置10は、該芯糸供給装置10を構成するクランプ16によって芯糸Cを挟持するとともにカッター17によって該芯糸Cを切断する。
【0078】
なお、紡績ユニット1が図示しないカッターを用いずに紡績糸Yを切断する方法として、巻取装置9の巻取動作を継続させた状態でドラフト装置5の駆動を停止させても良い。また、空気紡績装置6への空気の供給を停止して紡績を停止させても良い。
【0079】
芯糸供給装置10を構成するクランプ16及びカッター17は、エアサッカー13よりも芯糸Cの送り方向下流側に配置されている。そのため、芯糸ボビン15側の芯糸Cは、該芯糸Cの端部がエアサッカー13に導かれた状態で停止することとなる。しかし、上述したように、張力付与部11が芯糸Cに対して張力を付与しているため、芯糸Cが芯糸ボビン15から引き出されることはない。
【0080】
その後、紡績糸Yの製造を再開する際において、芯糸供給装置10は、芯糸Cを空気紡績装置6に供給する必要が生じる。このとき、図8及び図9に示すように、張力弛緩部12は、一軸アーム121を回動させて芯糸Cを弛ませる。つまり、張力弛緩部12は、空気紡績装置6が紡績を開始する前工程で芯糸Cを弛ませる。
【0081】
張力弛緩部12が作成する芯糸Cの弛み長さは、少なくともクランプ16からフロントローラ対54までの距離を有する。これにより、空気紡績装置6による紡績の開始時に、芯糸供給装置10は、芯糸Cを確実にフロントローラ54まで送り出すことができる。
【0082】
張力弛緩部12が芯糸Cを弛ませた後に、紡績ユニット1は、ドラフト装置5を駆動させる。また、紡績ユニット1は、図示しない空気供給源から空気紡績装置6に空気を供給して紡績可能状態とする。芯糸供給装置10は、クランプ16が挟持している芯糸Cを離すとともに、エアサッカー13に空気を供給する。
【0083】
これにより、エアサッカー13は、芯糸Cの弛み部分を引張って該芯糸Cの端部をフロントローラ54へ送り出すことが可能となる。フロントローラ54の回転によって送り出された芯糸Cは、スライバFとともに空気紡績装置6へ供給され、紡績糸Yの製造が再開される。
【0084】
このように、本紡績ユニット1は、空気紡績装置6が紡績を開始する前工程において張力弛緩部12が芯糸Cの張力を弛緩するため、エアサッカー13(芯糸送出部13)によって確実に芯糸Cを送り出して空気紡績装置6に供給することができる。これにより、本紡績ユニット1は、芯糸Cを有する紡績糸Yを効率良く製造することが可能となる。
【0085】
空気紡績装置6による紡績糸Yの製造の再開時には、図示しない糸継台車が備える上糸案内部材が空気紡績装置6の下流側に待機している。上糸案内部材は、紡績糸Yを補足して糸継台車が備える糸継装置まで案内する。これと同時又は前後して、糸継台車が備える下糸案内部材がパッケージP側の紡績糸Yの糸端を補足して、糸継装置まで案内する。これにより、糸継装置は、空気紡績装置6側の紡績糸YとパッケージP側の紡績糸Yとを糸継ぎする。糸継動作の完了後、紡績ユニット1は、パッケージPの巻取りを再開する。
【0086】
なお、本紡績ユニット1において、空気紡績装置6が紡績を開始する前工程とは、一つのパッケージPの巻取動作が中断された後の空気紡績装置6による紡績の開始前として説明した。しかし、巻取動作の中断には、糸欠点検出装置6の検出結果に起因する中断以外にも、ドラフト装置5、空気紡績装置6、巻取装置9に起因する中断も含まれる。また、紡績ユニット1が新たなパッケージPの巻取動作を開始する場合も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 紡績ユニット
5 ドラフト装置
6 空気紡績装置
9 巻取装置
10 芯糸供給装置
11 張力付与部(ストレージテンサー)
111 第一案内部
111a 環状部材
112 第二案内部
112a 梁部材
12 張力弛緩部
121 可動部材(一軸アーム)
121a 接触部
13 芯糸送出部(エアサッカー)
132 円管部材
14 ガイド部材
15 芯糸ボビン
16 クランプ
17 カッター
C 芯糸
F 繊維束(スライバ)
P パッケージ
Y 紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸ボビンから引き出された芯糸を送り出す芯糸送出部と、
前記芯糸ボビンと前記芯糸送出部との間で前記芯糸に張力を付与する張力付与部と、
前記張力付与部と前記芯糸送出部との間で前記芯糸の張力を弛緩する張力弛緩部と、を備える、ことを特徴とする芯糸供給装置。
【請求項2】
前記張力弛緩部は、前記芯糸の軌道を屈曲させる可動部材を備え、
前記可動部材が前記芯糸の軌道を屈曲させる作動位置に移動した後に待機位置に移動することによって該芯糸の張力を弛緩する、ことを特徴とする請求項1に記載の芯糸供給装置。
【請求項3】
前記可動部材は、第一の端部に設けられた回転軸を中心に回動可能に支持された一軸アームであって、
前記一軸アームが回動することによって該一軸アームの第二の端部に設けられた接触部が前記芯糸の軌道を屈曲させる、ことを特徴とする請求項2に記載の芯糸供給装置。
【請求項4】
前記張力付与部と前記芯糸送出部との間に前記芯糸の軌道を略一定に規制するガイド部材を更に備え、
前記張力弛緩部は、前記張力付与部と前記ガイド部材との間で前記芯糸の張力を弛緩する、ことを特徴とする請求項3に記載の芯糸供給装置。
【請求項5】
前記芯糸送出部は、前記芯糸ボビンから引き出された前記芯糸を空気の作用によって送り出すエアサッカーである、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の芯糸供給装置。
【請求項6】
前記張力付与部は、複数の環状部材を有する第一案内部と、
複数の梁部材を有する第二案内部と、
前記第一案内部と前記第二案内部とを開閉可能に支持する支持軸と、を備え、
前記環状部材に通された前記芯糸の軌道を前記梁部材が屈曲させることで張力を付与するストレージテンサーである、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の芯糸供給装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の芯糸供給装置と、
前記芯糸供給装置が供給した前記芯糸の外周に繊維を撚る空気紡績装置と、を備え、
前記張力弛緩部は、前記空気紡績装置が紡績を開始する前工程で前記芯糸の張力を弛緩する、ことを特徴とする紡績機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−131591(P2012−131591A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283619(P2010−283619)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】