説明

芯鞘コンジュゲート繊維を含む編地および衣類

【課題】素材として金属を含まずに金属的な光沢を呈し、さらに伸縮弾性が高い編地を提供すること。
【解決手段】地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを、添え糸編で編成することにより、金属光沢を呈し、さらに伸縮弾性の高い編地が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材として金属を含まなくとも金属的な光沢を呈し、さらに伸縮弾性が高い編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属的な光沢を有する編地としては、以下のようなものが知られている。たとえば、(1)ラメ糸を用いた編地、(2)アルミニウムやステンレス鋼などを真空蒸着、スパッタ蒸着などによって加工した編地、(3)反射材ビーズやアルミニウム箔片などを混合した樹脂をコーティングした編地(特許文献1)、(4)編地表面での光の干渉を利用して、玉虫色の光沢を発現させる編地(特許文献2)などである。
しかし、上記(1)〜(4)の編地は、素材に金属を含むため、肌触りが悪く、さらに、金属アレルギーを持つ人の衣類には適さないものであった。
これに対し、特許文献3および4に示されるように、金属素材を含まずに、金属光沢を有する布帛が提案されている。しかしながら、特許文献3に記載される布帛は、経編のメッシュ状編地に限定されており、緯編地ほどの伸縮弾性がない。また、特許文献4に記載される布帛は、モノフィラメントのみに限定されており、マルチフィラメントを使用した場合よりも着心地が良くない上、織物であるために伸縮弾性が低いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−131063号公報
【特許文献2】特開平07−054268号公報
【特許文献3】特開平11−117155号公報
【特許文献4】特開2007−146339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決し、素材として金属を含まなくとも金属的な光沢を呈し、さらに伸縮弾性が高い編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを、添え糸編で編成することにより、金属光沢を呈し、さらに伸縮弾性の高い編地が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
項1.地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを、添え糸編で編成した部分を有する編地。
項2.連続する4コースのうち、少なくとも1コースが添え糸編で編成されていることを特徴とする項1に記載の編地。
項3.前記芯鞘コンジュゲート繊維の繊度が、20〜120デシテックスである、項1又は2に記載の編地。
項4.前記芯鞘コンジュゲート繊維の繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比率が95/5〜30/70である項1〜3のいずれか1項に記載の編地。
項5.前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリウレタンを芯成分、熱可塑性エラストマー樹脂を鞘成分とすることを特徴とする、項1〜4のいずれか1項に記載の編地。
項6.前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリウレタン系エラストマーを芯成分とすることを特徴とする、項1〜5のいずれか1項に記載の編地。
項7.前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリエステル系エラストマーを鞘成分とすることを特徴とする、項1〜6のいずれか1項に記載の編地。
項8.前記編地の芯鞘コンジュゲート繊維が表出している側において、ウェール方向又はコース方向から測定した光反射率の最大値と最小値の差が1以上である、項1〜7のいずれか1項に記載の編地。
項9.項1〜8のいずれか1項に記載の編地を含む衣類。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
I.地編み糸
本発明の編地に用いられる地編み糸は、一般に、衣料用素材に用いられるものであれば、特に限定はないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルなどの再生繊維、綿、麻、絹、毛などの天然繊維などが用いられる。中でも、伸縮弾性や染色性の観点から、シングルカバードヤーン(SCY)やダブルカバードヤーン(DCY)などのフィラメント・ツイスティッドヤーン(FTY)、ウーリーナイロンなどを用いることが好ましい。
【0008】
II.芯鞘コンジュゲート繊維
本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維としては、特開2007−077556号公報、国際公開第2007/123214号、特開2008−231606号公報、特開2008−231614号公報に記載される芯鞘コンジュゲート繊維が挙げられる。
【0009】
すなわち、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含むコンジュゲート繊維であって、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を、鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含んでなる収縮性の高い芯鞘コンジュゲート繊維である。
【0010】
当該芯鞘コンジュゲート繊維は、繊維の伸縮弾性力を高めるために、芯部分だけでなく鞘部分にも特定のエラストマー樹脂(B)を採用する点に特徴を有している。
【0011】
また、当該芯鞘コンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように(1)複合紡糸する工程、(2)得られた繊維を加熱処理して架橋を促進する工程、(3)次いで延伸処理する工程で製造されることにより、透明性や伸縮弾性力、強度及び伸度に優れているという特徴を有している。しかし、特にこの工程は限定されるものではなく、(1)の工程のみで得られる繊維、(1)(2)の工程で得られる繊維でも良い。
【0012】
本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維の芯部分を構成する伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)は、伸長してもほぼ元の長さに戻る(伸長可能な範囲で降伏点を有しない)性質、すなわちゴム弾性(ヒステリシス曲線において10%以内に戻る)を有する熱可塑性エラストマーであれば特に限定はない。エラストマー樹脂(A)としては、ポリウレタン、ポリスチレンブタジエン系ブロックコポリマー等が例示され、特に、ポリウレタンが好適である。
【0013】
エラストマー樹脂(A)の引張強度(JIS K7311)は、30〜60MPa程度、さらに45〜60MPa程度の高強度のものが好ましい。また引張伸度(JIS K7311)が400〜900%程度、さらに400〜600%が好ましい。また、表面硬度A(JIS K7311)は、A70〜98程度、好ましくはA80〜95程度、さらにA85〜95がより好ましい。表面硬度AがA70未満であると強度の確保が難しくなり、A98を超えると伸度及び伸縮弾性が極端に悪くなる傾向にある。
【0014】
エラストマー樹脂(A)の具体例としては、例えば、クラミロンU((株)クラレ製)3195、8175等、ミラクトラン(日本ポリウレタン工業(株)製)P485、P495等が挙げられる。
【0015】
エラストマー樹脂(A)の製法一例として、ポリウレタンエラストマー樹脂の製法を以下に示す。ポリウレタンエラストマー樹脂は、例えば、芳香族ポリイソシアネートとポリオールから、ワンショット法、プレポリマー経由法等の公知の方法を用いて製造できる。
【0016】
原料である芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、これらの芳香族ジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0017】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。このうちで、特に好ましいものはMDIである。
【0018】
原料であるポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系ポリオール等が挙げられ、特にポリエーテル系又はポリエステル系ポリオールが好適である。
【0019】
ポリオールの数平均分子量は、本材料から製造される繊維のソフト感の観点から好ましくは300以上、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上であり、該繊維の弾性の観点から好ましくは4000以下、好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0020】
本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維の鞘部分を構成するエラストマー樹脂(B)は、伸縮弾性を有しており、永久伸びが25〜70%を持つ熱可塑性エラストマー樹脂である。永久伸びはJIS K 6301に定義される。つまり、この樹脂(B)は、100%以上に伸長した場合は伸縮弾性を有するものの原形に復さず、伸長した後に安定した形状に復するという性質を有している。
【0021】
これは、エラストマー樹脂(B)の原形では、エラストマー樹脂(B)を構成するハードセグメントとソフトセグメントがランダム状態にあるが、これを100%以上伸長するとハードセグメントが配向したまま復元されず、ソフトセグメントのみが伸縮弾性を有することになるためと考えられる。本発明のコンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(B)のこの特性を巧みに利用し、高いサポート性を発揮する。
【0022】
該エラストマー樹脂(B)の永久伸び(JIS K 6301)は100%伸長時25〜70%程度、好ましくは30〜70%程度、より好ましくは40〜60%程度である。この、永久伸びは、ダンベル形試験片に引張り荷重をかけて規定伸び率100%(2倍)まで引き伸ばし、10分間その状態で保持した後、速やかに荷重を除き、10分間放置した後の伸び率を原長に対して求め、永久伸び率(%)とすることが規定されている。かかる値が、25%未満であるとコンジュゲート繊維として高いサポート性が得られない。また、70%を越えると弾性体の性質で小さくなり、塑性変形が主となり、弾性体の性質すなわち伸縮弾性が低下する。
【0023】
エラストマー樹脂(B)の引張強度(ASTM D638)は、10〜40MPa程度、さらに25〜40MPa程度の高強度のものが好ましい。また、引張伸度(ASTM D638)が100〜800%程度、さらに400〜600%が好ましい。かかる値が、100%未満であると伸度不足で伸度が要求される用途には使用不可能であり、800%を越えると一般に強度が低く高いサポート性が得られない。また、表面硬度D(ASTM D2240)は、D30〜70程度、さらにD35〜60が好ましく、より好ましくはD45〜60である。D30未満になると、表面硬度が柔らかくなるため、延伸後の形状保持が難しくなると同時に肌触りも悪くなる傾向にある。また、D70を越えると、延伸後の形状保持(セット性)は高くなるが、エラストマー部分が少なくなり、伸縮弾性が悪くなる傾向にある。
【0024】
上記の特性を有するエラストマー樹脂(B)の具体例としては、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマー樹脂は、いずれも公知の方法で製造できるか、或いは、市販のものを用いることができる。
【0025】
ウレタン系エラストマーとしては、例えば、ポリオール成分からなるソフトセグメントと、有機ポリイソシアネート成分からなるハードセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエステル系のポリウレタンエラストマー、ポリカプロラクトン系のポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル系のウレタン系エラストマーなどが挙げられる。例えば、(株)クラレ社製のクラミロン、ディーアイシーバイエルポリマー(株)社製のパンデックスが例示される。
【0026】
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、芳香族ポリエステル成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分からなるソフトセグメントとから構成されるポリエーテル(又はポリエステル)エステルブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントである芳香族ポリエステル成分としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、ソフトセグメントであるポリエーテル成分又はポリエステル成分としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリカプロラクトン(PCL)等が挙げられる。本発明ではこれらのいずれをも用いることができるが、ポリエーテルエステルブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0027】
具体的には、例えば、東洋紡績(株)社製のペルプレン(Pタイプ、Sタイプ等)、東レ・デュポン社製のハイトレル等が例示される。また、例えば、特開平11-302519号公報、特開2000-143954号公報等に記載のポリエステル系エラストマーも用いることができる。
【0028】
ポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ポリアミド成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分あるいは両成分からなるソフトセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。例えば、アルケマ(株)社製のぺバックス、宇部興産社製のPAEシリーズ等が例示される。
【0029】
スチレン−ブタジエン系エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン成分からなるハードセグメントと、ポリオレフィン成分からなるソフトセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。具体的には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が例示される。
【0030】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維の芯部分と鞘部分は、偏心円型、同心円型の他、芯成分が表面に露出している構成でも良い。繊維断面積に対するエラストマー樹脂(A)からなる芯部分の占有率は、30〜95%程度、好ましくは40〜95%程度、より好ましくは50〜90%程度であればよい。換言すれば、エラストマー樹脂(A)からなる芯部分とエラストマー樹脂(B)からなる鞘部分との面積比が、95/5〜30/70程度、好ましくは95/5〜40/60程度、より好ましくは90/10〜50/50程度である。この範囲であると、地編み糸と添え糸編を編成したときに、光沢感があり、伸縮弾性のある編地にできる。芯部分の占有率が、30%未満であるとエラストマー樹脂(B)の占有率が高くなるので、高い伸縮弾性が得られ難く、また、95%を越えると伸長した後、安定した形状、長さに復し難い。
【0031】
本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維の直径は、特に限定はないが、通常、20〜120μm程度、好ましくは30〜100μm程度である。
【0032】
また、本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維は、そのまま編地に編成した際厚みが薄くまた透明感が高いという特徴も有している。
【0033】
III.芯鞘コンジュゲート繊維の製法
本発明の編地に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)を、それぞれ紡糸に適した温度で溶融し、複合口金を有した口金で、エラストマー樹脂(A)が芯部分に、エラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように複合紡糸することにより製造できる。このような複合紡糸が可能であれば、公知の紡糸方法、紡糸装置等を採用することができる。繊維断面における芯部分と鞘部分との面積比は、各樹脂の吐出量を変化させて適宜調整することができ、上記したように95/5〜30/70程度とすることが好ましい。
【0034】
さらに、繊維に染色性を付与するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)に染色可能な樹脂(例えば、ナイロン、ポリエステル等)をアロイ化したりして改質することも可能である。染色可能な樹脂としては例としてポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系など選択できるが、好ましくはポリアミド系、ポリエステル系が例示できる。これらの配合量はエラストマー(B)の染色性に応じて決定されるが、上記樹脂の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。更に好ましい上限は10重量%である。1重量%未満であると、染色による発色性が低く、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下することがある。また透明性も低下し、地編み糸に当該芯鞘コンジュゲート繊維を添えて、添え糸編を編成して得られる編地に光沢性が付与できなくなる。また紡糸性が悪くなる。
【0035】
またこれらの作製方法としては、エラストマー樹脂(B)に上記樹脂を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
【0036】
また、本発明の芯鞘コンジュゲート繊維においては、肌触りを改良するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)の表面に無機微粒子等を分散したりして改質することも可能である。
【0037】
無機微粒子としては特に限定されず、例として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;炭酸バリウム;塩基性炭酸マグネシウム等の炭酸マグネシウム;カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化チタン、
酸化亜鉛、酸化マグネシウム、フェライト粉末、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、
焼成ケイソウ土等のケイソウ土;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、無定形シリカ、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、アルミノ珪酸塩、活性白土、ベントナイト、セリサイト等の鉱物質顔料等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらのなかでは、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカが好ましい。
【0038】
また、上記無機微粒子の形状としては特に限定されず、球状、針状、板状等の定型物又は非定型物が挙げられる。
【0039】
上記無機微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.2μm、好ましい上限は3μmである。0.2μm未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、3μmを超えると衣料にした場合、風合いや肌触りが損なわれたり、繊維の強度が低下したりすることがある。
【0040】
上記無機微粒子の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は2重量%である。更に好ましい上限は0.5重量%である。0.05重量%未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、2重量%を超えると、繊維の透明度が低下することがある。また透明性も低下し、地編み糸に当該芯鞘コンジュゲート繊維を添えて、添え糸編を編成して得られる編地に、光沢性が付与できなくなる。また紡糸性が悪くなる。
【0041】
またこれらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に無機微粒子を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
【0042】
IV.編成方法
本発明の編地は、芯鞘コンジュゲート繊維を添え糸として地編み糸に添え、添え糸編を編成することにより得られる。
【0043】
「添え糸編」とは、プレーティング編とも称される編成方法の一種であり、地編み糸と共に、別糸を同一給糸口に張力を調整しつつ入れ、表裏にそれぞれの糸のみを表出させる編成方法である。
【0044】
すなわち、本発明の編地は、地編み糸と共に、芯鞘コンジュゲート繊維を同一給糸口に張力を調整しつつ入れて編成することにより得られる。当該編成方法により、表裏にそれぞれ芯鞘コンジュゲート繊維と地編み糸のみが表出した編地が得られる。当該編成方法により得られた編地は、透明性の高い芯鞘コンジュゲート繊維が表出した面が、金属光沢を有する審美性の高い編地となり、また、弾性糸として機能する芯鞘コンジュゲート繊維が引き揃えて編成されているため、伸縮弾性の高い編地となる。
【0045】
本発明の編地の編成は、連続する4コースのうち、少なくとも1コースに添え糸編が編成されていることが望ましい。上記「連続する4コースのうち、少なくとも1コースに添え糸編が編成されている」とは、たとえば、図1および図2の編成組織図に示される編成において、それぞれ(a)および(b)で地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを添え糸編で編成することを指す。残る(c)および(d)については芯鞘コンジュゲート繊維、または地編み糸のみからなる編成でよい。あるいは、図3の編成組織図に示される編成において、(a)および(c)で地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを添え糸編で編成することを指す。残る(b)および(d)については芯鞘コンジュゲート繊維、または地編み糸のみからなる編成でよい。
【0046】
本発明の編地に用いる芯鞘コンジュゲート繊維の繊度としては、20〜120デシテックス程度のものが好ましい。特に好ましくは、30〜100デシテックスである。繊度が20デシテックスよりも小さいと、弾性糸としての効果が弱くなり、強度が劣ることから、添え糸編を編成しにくい。また、光沢感も薄れてしまう。また、120デシテックスを超えると、得られる編地が厚くなりすぎてしまう。
【0047】
なお、編組織としては緯編であれば特に限定されないが、伸縮弾性や厚みの観点から、フライス編や天竺編が好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明の編地は、地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを、添え糸編で編成することにより、芯鞘コンジュゲート繊維側が一面のみに揃って現れる編地であり、当該芯鞘コンジュゲート繊維側の面は、金属光沢を有する審美性の高い編地である。また、弾性糸として機能する芯鞘コンジュゲート繊維が引き揃えて編成されているため、伸縮弾性の高い編地が得られる。
【0049】
本発明の編地は、金属光沢を有し、伸縮弾性に優れているため、美観が良く伸縮弾性に優れたストレッチ材料、特に、タイツ、レギンス、アームカバー、キャミソール等の肌着の素材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】フライス編の一種である本発明の2色ジャガード編用の編成組織図である。
【図2】フライス編の一種である本発明の変化ストライプ編用の編成組成図である。
【図3】フライス編の一種である本発明の変化リバーシブル編用の編成組成図である。
【図4】表2に示される実施例および比較例の、各光入射角度における光反射率の最大値と最小値の差を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
・編地の製造
製造例1
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、1/2法溶融温度214℃、表面硬度A92)及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、1/2法溶融温度197℃、表面硬度D52)を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、および180〜220℃で加熱溶融し、各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、前記熱可塑性ポリウレタンが芯部分に、前記ポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0053】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する常温のローラー、次に、ステッピングモーターにより300m/分−0m/分を1秒ごとに繰り返し回転するローラー、さらにステッピングモーターにより0m/分−300m/分を1秒ごとに繰り返し回転するローラー、これらの各ローラーで順々にフィードされた繊維を得た。また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0054】
製造例2
ポリエステル系エラストマーとしてペルプレンP−55B(東洋紡績(株)製、表面硬度D44)を用いた以外は、製造例1と同様にして、芯鞘コンジュゲート繊維を製造した。
【0055】
製造例3
熱可塑性ポリウレタンとして、パンデックスT−1195N(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製、表面硬度A95)を用いた以外は、製造例1と同様にして、芯鞘コンジュゲート繊維を製造した。
【0056】
製造例4
熱可塑性ポリウレタンとして、パンデックスT−1195Nを、ポリエステル系エラストマーとしてペルプレンP−55Bを用いた以外は、製造例1と同様にして、芯鞘コンジュゲート繊維を製造した。
【0057】
製造例5
熱可塑性ポリウレタンとして、パンデックスT−1495N(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製、表面硬度A95)を用いた以外は、製造例1と同様にして、芯鞘コンジュゲート繊維を製造した。
【0058】
実施例1
地編み糸(東レ(株)製のウーリーナイロン、繊度40デシテックス)と、製造例1で得られた芯鞘コンジュゲート繊維(芯成分:T−1190、鞘成分:P−90B、芯比率90%、繊度30デシテックス)と共に、18ゲージの選針機能付きフライス編機の、同一給糸口に入れて、図2に示す編成組成図の(a)および(b)において地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維を添え糸として用い、(c)および(d)において芯鞘コンジュゲート繊維のみを用いて、フライス編の一種である変化ストライプの編地を得た。繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、地編み糸のみを一般色の黒色に染色した。
【0059】
実施例2〜実施例8、実施例10
芯鞘コンジュゲート繊維を、それぞれ表1に示すものに換えた以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0060】
実施例9
図1に示す編成組成図の(a)および(b)において地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維を添え糸として用い、(c)および(d)において芯鞘コンジュゲート繊維のみを用いる編成方法に替えた以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0061】
実施例11
図3に示す編成組成図の(a)および(c)において地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維を添え糸として用い、(b)および(d)において芯鞘コンジュゲート繊維のみを用いる編成方法に替えた以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0062】
実施例12
地編み糸のみを一般色の黒色に染色する替わりに、芯鞘コンジュゲート繊維のみを一般色の黄色に染めた後、地編み糸のみを一般色の黒色に染色した以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0063】
実施例13
地編み糸のみを一般色の青色に染色した以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0064】
実施例14
地編み糸のみを一般色の赤色に染色した以外は、実施例1と同様にして、添え糸編が編成された編地を得た。
【0065】
比較例1
18ゲージの選針機能付きフライス編機で、図2に示す編成組成図の(a)、(b)、(c)および(d)において、実施例1と同じウーリーナイロンのみを用いて、添え糸編を編成せずに、フライス編の一種である変化ストライプの編地を得た。繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、当該ウーリーナイロンを一般色の黒色に染色した。
【0066】
比較例2
ウーリーナイロンを、一般色の黄色に染色した以外は、比較例1と同様にして、編地を得た。
【0067】
実施例および比較例の組成を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
・編地の金属光沢についての評価
実施例1〜14、比較例1および2において、芯鞘コンジュゲート繊維が表出している側の編地(表1における表編地)について、デジタル変角光沢計UVG−4D(スガ試験機(株)製)を用いて、入射角/受光角は各々45度/45度、60度/60度、75度/75度、85度/85度に設定し、その他の条件はJIS L−1096に準じて、編地のウェール方向およびコース方向から光を照射し、その光反射率を測定した。そして、ウェール方向およびコース方向において、光反射率の最大値と最小値との差を求めた。結果は表2に示すとおりである。
【0070】
【表2】

【0071】
表2および図4に示されるとおり、本発明品である実施例1〜14の編地は、ウェール方向およびコース方向のいずれかにおける光反射率の最大値と最小値の差が1より大きいが、比較例1および2では、どちらも0.5以下である。光の反射度合いが大きく変わるとき、人間の目には金属光沢(ギラつき)として認知されることから、本発明の実施例1〜14に示される編地は、高い金属光沢を呈するものであるといえる。一方、比較例1に示される編地は、ほとんど反射がなく、金属光沢を有さないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地編み糸と芯鞘コンジュゲート繊維とを、添え糸編で編成した部分を有する編地。
【請求項2】
連続する4コースのうち、少なくとも1コースが添え糸編で編成されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項3】
前記芯鞘コンジュゲート繊維の繊度が、20〜120デシテックスである、請求項1又は2に記載の編地。
【請求項4】
前記芯鞘コンジュゲート繊維の繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比率が95/5〜30/70である請求項1〜3のいずれか1項に記載の編地。
【請求項5】
前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリウレタンを芯成分、熱可塑性エラストマー樹脂を鞘成分とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の編地。
【請求項6】
前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリウレタン系エラストマーを芯成分とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の編地。
【請求項7】
前記芯鞘コンジュゲート繊維が、ポリエステル系エラストマーを鞘成分とすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の編地。
【請求項8】
前記編地の芯鞘コンジュゲート繊維が表出している側において、ウェール方向又はコース方向から測定した光反射率の最大値と最小値の差が1以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の編地。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の編地を含む衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77397(P2012−77397A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221616(P2010−221616)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】