説明

芯鞘複合繊維及びその用途

【課題】フィブリル化が容易で、ヒートシール紙等に好適なヒートシール性を有する芯鞘複合繊維、フィブリル化芯鞘複合繊維を開発することを目的とする。
【解決手段】融点が70〜110℃の範囲にあるエチレン共重合体からなる芯部及び脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物からなる鞘部を有してなることを特徴とする芯鞘複合繊維、当該芯鞘複合繊維の鞘部をフィブリル化してなるフィブリル化芯鞘複合繊維、フィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布及びその用途に係わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化が容易で、ヒートシール紙等に好適なヒートシール性を有する芯鞘複合繊維、フィブリル化芯鞘複合繊維、それを含む不織布及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
極細繊維を製造する方法の一つとして、合成繊維、中でも二種以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維をフィブリル化する方法が種々提案されている。熱可塑性樹脂の組合せとしては、例えば、第一成分をポリエステルとポリアミドからなる5μm未満の島成分を有する海島構造とし、第二成分をポリエステルあるいはポリアミドからなる分割可能な複合繊維をフィブリル化することにより、島成分をフィブリル状にする方法(特開平4−361618号公報:特許文献1)、ポリエステルとポリスチレンからなる海島型複合繊維をフィブリル化して不織布とする方法(特開平11−241259号公報:特許文献2)、高密度ポリエチレンとポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートからなる分割型あるいは芯鞘型複合繊維をフィブリル化して不織布とする方法(特開2002−61060号公報:特許文献3)、鞘成分をメタクリル酸・エチレンコポリマーにポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を混在させ、芯成分をポリプロピレンなどとし、鞘成分をフィブリル化する方法(特開2000−282330号公報:特許文献4)などが提案されている。
また、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて放射状配列型、サイドバイサイド型、海島型、芯鞘型からなる複合繊維を叩解処理してフィブリル化する方法が提案されている(特開2008−179922号公報:特許文献5)が、特許文献5の実施例にはポリエチレンとポリプロピレンからなる複合繊維の記載しか為されていない。
フィブリル化が容易な複合繊維は、特許文献1で提案された鞘成分を海島構造とした芯鞘型複合繊維であるが、ポリエステルとポリアミドを用いて得られるフィブリル化複合繊維は、ポリエステル及びポリアミドは融点が高いのでヒートシール性に劣り、また、特許文献4で提案された鞘成分にメタクリル酸・エチレンコポリマーにポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を混在させた場合はフィブリル化が十分でないなどの欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−361618号公報
【特許文献2】特開平11−241259号公報
【特許文献3】特開2002−61060号公報
【特許文献4】特開2000−282330号公報
【特許文献5】特開2008−179922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フィブリル化が容易で、ヒートシール紙等に好適なヒートシール性を有する芯鞘複合繊維、フィブリル化芯鞘複合繊維を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、融点が70〜110℃の範囲にあるエチレン共重合体からなる芯部及び脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物からなる鞘部を有してなることを特徴とする芯鞘複合繊維、当該芯鞘複合繊維の鞘部をフィブリル化してなるフィブリル化芯鞘複合繊維、フィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布及びその用途に係わる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の芯鞘複合繊維は、紡糸性に優れ、フィブリル化が容易で、低温ヒートシール性、ホットタック性を有する。本発明の芯鞘複合繊維をフィブリル化してなるフィブリル化芯鞘複合繊維は、比表面積が向上し、保水性が向上するため、不織布の製造に適している。
本発明の芯鞘複合繊維を含む不織布は、低温ヒートシール性及びホットタック性を有し、フィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布は、フィブリル化により、芯成分が露出するので、より、低温ヒートシール性及びホットタック性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】フィブリル化芯鞘複合繊維の電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0008】
<エチレン共重合体>
本発明の芯鞘複合繊維の芯部を形成するエチレン共重合体は、融点(JIS K7121)が70〜110℃、好ましくは80〜105℃の範囲にあるエチレンを主体とする共重合体である。
融点が90℃未満の共重合体は、例えばティーバッグ用途など、温水中でシール紙を使用する場合には、シール部が溶融して強度が低下し、内容物が漏れ出す虞がある。一方、融点が110℃を超える共重合体は低温ヒートシール性に劣る。
【0009】
本発明に係わるエチレン共重合体で、エチレンと共重合される化合物(モノマー)は、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどのα−オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチルなどの不飽和カルボン酸エステル、スチレンなどのビニル基含有化合物である。かかるビニル基含有化合物は1種に限らず2種以上の共重合体であってもよい。
【0010】
本発明に係わるエチレン共重合体としては、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン・塩化ビニル共重合体;エチレン・スチレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体あるいはそのアイオノマー;エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチルなどのエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体などが挙げられる。
本発明に係わるエチレン共重合体としては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が、低温ヒートシール性およびホットタック性に優れる芯鞘複合繊維が得られるので好ましい。
【0011】
本発明に係わるエチレン共重合体は、鞘部に用いる脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物と共に溶融紡糸し得る限り、特に限定はされないが、通常、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは3〜60g/10分の範囲にある。
【0012】
本発明に係わるエチレン共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、耐候安定剤、親水化剤等の種々公知の添加剤、樹脂類を必要に応じて配合してもよい。
【0013】
<エチレン・不飽和カルボン酸共重合体>
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体であって、エチレンと不飽和カルボン酸の二元共重合体のみならず、エチレン、不飽和カルボン酸及びさらに他の単量体が共重合された多元共重合体であってもよい。本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体における不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また該共重合体の重合成分となることができる上記他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリ酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリ酸n−ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素などを挙げることができる。
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン・メタクリル酸共重合体が、低温ヒートシール性およびホットタック性に優れる芯鞘複合繊維が得られるので好ましい。
【0014】
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、通常、不飽和カルボン酸含量が、2〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、他の単量体含量を含む場合は、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲にある。
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、融点(JIS K7121)が70〜110℃、好ましくは80〜105℃の範囲にある。
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、鞘部に用いる脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物と共に溶融紡糸し得る限り、特に限定はされないが、通常、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは3〜60g/10分の範囲にある。
【0015】
<エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー>
本発明の芯鞘複合繊維の芯部を形成するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部、好ましくは10%以上、より好ましくは30〜90%、さらに好ましくは60〜90%を金属イオンで中和した重合体である。カルボキシル基を中和する金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムのような一価金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムのような多価金属の各イオンを例示することができる。このような金属イオンは1種である必要はなく、2種以上であってもよく、またアイオノマーは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明に係わるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、鞘部に用いる脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物と共に溶融紡糸し得る限り、特に限定はされないが、通常、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは3〜60g/10分の範囲にある。
【0017】
<脂肪族ポリエステル>
本発明の芯鞘複合繊維の鞘部を構成する成分の一つである脂肪族ポリエステルは、通常、融点が80〜170℃、好ましくは110〜170℃の範囲にある、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分と脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分からなるポリエステル、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分を重合させたポリエステル、及びラクトン類を重合させてなる分子鎖の主要部が脂肪族化合物から導かれてなるポリエステルである。本発明に係わる脂肪族ポリエステルは、上記脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分と脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分あるいはラクトン類を共重合させたポリエステルであってもよい。
【0018】
本発明に係わる脂肪族ポリエステルの具体例としては、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下のL−乳酸若しくはD−乳酸の単独重合体若しくは共重合体であるポリ乳酸、コハク酸・1、4−ブタンジオールポリエステル、コハク酸・アジピン酸・1、4−ブタンジオールポリエステル、コハク酸・1、4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル、コハク酸・アジピン酸・1、4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル、ポリε―カプロラクトン、ポリδ―バレロラクトンなどが挙げられる。
中でも、ポリ乳酸及びコハク酸・1、4−ブタンジオールポリエステルが紡糸性の点で好ましく、特に、ガラス転移温度が室温以上で、且つ融点が120〜170℃、好ましくは150〜170℃の範囲にあるポリ乳酸が、ポリオレフィンとブレンド後にフィブリル化が容易であるので、より好ましい。
【0019】
本発明に係わる脂肪族ポリエステルはポリオレフィンと混ぜて、芯部に用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマーと共に溶融紡糸し得る限りメルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、190℃、荷重2160g)は、特に限定はされないが、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜60g/10分の範囲にある。
【0020】
本発明に係わる脂肪族ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、耐候安定剤、親水化剤等の種々公知の添加剤、樹脂類を必要に応じて配合してもよい。
【0021】
<脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分>
本発明に係わる脂肪族ポリエステルを構成する成分である脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
【0022】
また、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
【0023】
かかる脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステル又はジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独か又は2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、コハク酸又はそのアルキルエステル又はそれらの混合物が好ましく、アジピン酸を併用してもよい。
【0024】
<脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分>
本発明に係わる脂肪族ポリエステルを構成する成分である脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれ又は線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
【0025】
かかる脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0026】
<2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分>
本発明に係わる脂肪族ポリエステルを構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体などを挙げることができる。
【0027】
<ラクトン類>
本発明に係わる脂肪族ポリエステルを構成する成分であるラクトン類としては、具体的には、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトンなどを挙げることができる。
【0028】
<ポリオレフィン>
本発明の芯鞘複合繊維の鞘部を構成する成分の一つである脂肪族ポリエステルとともに鞘部を構成するポリオレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体であって、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;プロピレン単独重合体、プロピレンと少量のエチレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンの単独重合体及び/又はプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体との組成物であるブロック共重合体などのポリプロピレン;1−ブテン単独重合体、1−ブテンと少量のエチレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体などのポリブテン;4−メチル・ペンテン−1単独重合体、4−メチル・ペンテン−1と少量のα−オレフィンとのランダム共重合体などのポリ4−メチル・ペンテン−1などであり、結晶性の重合体である。
【0029】
本発明に係わるポリオレフィンとしては、ポリプロピレンが紡糸性、フィブリル化の点で好ましく、とくに融点が110〜170℃、さらには110〜130℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が低温ヒートシール性を得られる点で好ましい。
【0030】
本発明に係わるポリオレフィンは前記脂肪族ポリエステルと混ぜて、芯部に用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマーと共に溶融紡糸し得る限りメルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、荷重2160g、ポリエチレン、ポリブテンは190℃、ポリプロピレンは230℃、ポリ4−メチル・ペンテン−1は260℃で測定)は、特に限定はされないが、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜70g/10分の範囲にある。
【0031】
本発明に係わるポリオレフィンには、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、耐候安定剤、親水化剤等の種々公知の添加剤、樹脂類を必要に応じて配合してもよい。
【0032】
<芯鞘複合繊維>
本発明の芯鞘複合繊維は、芯部が前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマー及び鞘部が前記脂肪族ポリエステルと前記ポリオレフィンとの組成物、好ましくは前記脂肪族ポリエステルが10〜90質量%、さらに好ましくは30〜70質量%と前記ポリオレフィンが90〜10質量%、さらに好ましくは70〜30質量%からなる芯鞘複合繊維である。
鞘部を形成する脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物が、前記範囲にあると、紡糸時に低融点成分が露出しないため金属ロールに巻き付きにくいので紡糸性に優れ、脂肪族ポリエステル及びポリオレフィンをフィブリル化した場合に、多数のフィブリルを有するので好ましい。
【0033】
本発明の芯鞘複合繊維は、芯部が好ましくは30〜95体積%、より好ましくは50〜95体積%、さらに好ましくは70〜95体積%及び鞘部が好ましくは70〜5体積%、より好ましくは50〜5体積%、さらに好ましくは30〜5体積%の範囲にすると芯鞘複合繊維の紡糸安定性が増し、且つ、フィブリル化した場合により低温ヒートシール性を有する得るフィブリル化芯鞘複合繊維が得られるので好ましい。
中でも、芯部がエチレン・メタクリル酸共重合体から形成され、鞘部がポリ乳酸とポリプロピレンとの組成物から形成される芯鞘複合繊維は、紡糸性に優れ、フィブリル化が容易であり、低温ヒートシール性及びホットタック性の発現の点で好ましい。
本発明の芯鞘複合繊維は、通常、繊維径が1〜100μm、好ましくは5〜60μmの範囲にある。
【0034】
<芯鞘複合繊維の製造方法>
本発明の芯鞘複合繊維は、種々公知の製造方法で製造し得る。具体的には、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマー及び前記脂肪族ポリエステルと前記ポリオレフィンとの組成物を別個の押出機で溶融した後、芯鞘構造を有するノズルを備えた紡糸用ダイに供給して、溶融紡糸した後冷却し、必要に応じて延伸して芯鞘複合繊維とする方法が挙げられる。
また、本発明の芯鞘複合繊維は、用途に応じて長繊維の状態でも使用し得るが、不織布の原料として、単独で、あるいは、他の繊維と混合して用いる場合は、通常、1〜10mm、好ましくは1〜6mmの長さにカットして用いる。
【0035】
<フィブリル化芯鞘複合繊維>
本発明のフィブリル化芯鞘複合繊維は、前記芯鞘複合繊維を、リファイナー、ホモジナイザーなどを用いて叩解するなどの種々公知の方法で、鞘部の少なくとも一部を芯部から剥離させると共に、鞘部を形成する脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとを分割(剥離)させて、フィブリル化することにより得られる繊維である。フィブリル化することにより繊維の表面積が増えるので、フィブリル化芯鞘複合繊維を用いた不織布は、ヒートシール性、ホットタック性等が更に優れる。
本発明のフィブリル化芯鞘複合繊維は、芯部から一部が剥離した鞘部を形成する脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとが分割(剥離)した、0.1〜10μmの径を有するフィブリルを多数有している。
【0036】
<不織布>
本発明の不織布は、本発明の芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布である。本発明の不織布は、本発明の芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を含むので、低温ヒートシール性、ホットタック性、抄紙性等に優れる。
本発明の不織布は、本発明の芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維のみからなる不織布であっても、本発明の芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維以外に他の繊維状物を混合した不織布であってもよい。他の繊維状物としては、特に限定はされないが、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの合成繊維;針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、アバカパルプなどのパルプ;ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などが挙げられる。
芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を混合繊することにより得られる不織布は、高融点で且つ低温ヒートシール性に劣るポリエステル繊維、ポリアミド繊維又はポリオレフィン繊維からなる不織布のヒートシール性が改良され、また、本質的に融点を有せずヒートシール性がないパルプからなる不織布に、ヒートシール性、ホットタック性を付与する。
本発明の不織布は、乾式不織布でも、湿式不織布のいずれであってもよい。
【0037】
本発明の不織布が他の繊維状物を含む場合は、通常、前記芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を5〜95質量%、好ましくは20〜80質量%の範囲、他の繊維状物を95〜5質量%、好ましくは80〜20質量%の範囲で含む。芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を上記範囲で含むことにより、得られる不織布は、低温域でも優れたヒートシール性、ホットタック性を有する。
また、他の繊維状物として、パルプを用いた場合は、通気性を有するヒートシール紙が得られるので好ましい。その場合、芯鞘複合繊維及び/又はフィブリル化芯鞘複合繊維を20〜80質量%、パルプを20〜80質量%含むのが好ましい。
本発明の不織布は、他の基材、例えば、天然パルプからなる紙、他の合成繊維からなる合成紙、混抄紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布など、合成繊維紗のような織物など種々公知の基材と積層して用いてもよい。
【0038】
<不織布の製造方法>
本発明の不織布は、前記芯鞘複合繊維を種々公知の方法で抄紙をする、前記芯鞘複合繊維を抄紙後、高圧水流処理などの機械的処理を加えて芯部を露出させることでフィブリル化する、或いは、予めリファイナーやホモジナイザーなどで前記芯鞘複合繊維を叩解処理した前記フィブリル化芯鞘複合繊維を抄紙することで得られる。抄紙の際、本発明の目的を損なわない範囲で、通常抄紙にて用いられる分散剤、粘剤、紙力剤等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
また、他の繊維状物を用いる場合は、本発明の芯鞘複合繊維或いはフィブリル化芯鞘複合繊維と混合して抄紙等をすることで不織布を得ることができる。
【0039】
<用途>
本発明の不織布はヒートシール性、ホットタック性、抄紙性に優れるので、種々の用途に使用することができる。例えば、本発明の不織布をヒートシール層として、ヒートシール紙、ティーバッグ等に用いることができる。また、本発明の不織布をヒートシール層として、他の基材と積層して用いてもよい。例えば、紙の片面に、本発明の不織布からなるヒートシール層を積層してティーバックとすることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0041】
(1)カナダ標準フリーネス(略号=CSF):
JIS P−8121に準拠して測定した。単位:cc
(2)比表面積測定
液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着法にて、測定を行った(BET法)。試料前処理は、真空乾燥機での加熱脱気(40℃×24hrs)を加え、その後、装置脱気部にて、室温での真空脱気を行った。
(3)ヒートシール性:
2枚の2層ハンドシートを前記芯鞘複合繊維層面同士で重ね合わせ、130℃、150℃、170℃、190℃の各温度で、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mmの条件でヒートシールした後、放冷した。次いで、各温度でヒートシールされたハンドシートからそれぞれ15mm幅の試験片を切取り、各試験片について、クロスヘッドスピード100mm/分でヒートシール部を剥離し、その際の剥離強度(N/15mm)を測定してヒートシール強度とした。
(4)ホットタック性:
2枚の2層ハンドシートを前記芯鞘複合繊維層面同士で重ね合わせ、その2枚のハンドシートの各々の端に10gの錘をかけておく。このサンプルに130℃、150℃、170℃、190℃の各温度で、0.1MPaの圧力で0.5秒間ヒートシールした後、シールバーを離すことで、2枚のハンドシートの各々に錘の荷重がかかりシール部が剥離した距離(mm)を測定し、その距離をもってホットタック性の評価を行った。
(5)抄紙性:
実験室用角型手抄きシートマシンを用いて2層紙ティーバッグのシール層(5g/m:芯鞘複合繊維:4g/m+NBKP:1g/m)を抄紙した際の水への分散性、壁面、網上への繊維残りなど目視により、以下の基準で評価した。なお、ティーバッグ構成は、基材層(アバカパルプ:12g/m)と上記シール層を抄き合せた2層紙として作成した。
◎:抄紙マシン壁面、網上への残りが少なく、水への分散もしやすく、抄紙性に問題なし。
○:抄紙マシン壁面、網上への残りがややあるが、抄紙可能。
【0042】
〔実施例1〕
<芯鞘複合繊維の製造>
芯部にエチレン・メタクリル酸共重合体(EMA)(融点:95℃、MFR:35g/10分、メタクリル酸含有量:10質量%;三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名:ニュクレルN1035)を、鞘部に、ポリ乳酸(PLA)(融点:169℃、MFR:37g/10分、三井化学(株)販売 商品名 LACEA(登録商標)H900)60質量%及びプロピレン・エチレンランダム共重合体(r−PP)(融点:117℃、MFR:60g/10分;メタロセン触媒系)40質量%からなる組成物を用い、芯鞘成分を別個の押出機で溶融した後、芯部:90体積%、鞘部:10体積%となるようにギヤポンプ回転数を合わせ、芯鞘構造を有するノズルを備えた紡糸用ダイに供給して巻取り速度500m/分で紡糸し芯鞘複合繊維を得た。得られた芯鞘複合繊維の平均繊維径はデジタル光学顕微鏡を用いて測定した。
次いで、得られた芯鞘複合繊維を3mm長にカットし、直径12インチのディスク型リファイナーで叩解し、鞘部をフィブリル化してフィブリル化芯鞘複合繊維を得た。
得られたフィブリル化芯鞘複合繊維のCSF及び比表面積の測定結果を表1に、電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0043】
<不織布の製造>
熱融着層に用いる不織布を、前記フィブリル化芯鞘複合繊維80質量%とNBKP20質量%とを混合し、実験室用角型手抄きシートマシンを用いて抄紙して(5g/m:芯鞘複合繊維:4g/m+NBKP:1g/m)フィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布を作製した。
別途基材層を、アバカパルプ(CSF:550ml)を用いてを抄紙して〔アバカパルプ(CSF:550ml):12g/m〕作製した。
次に、湿潤状態で、熱融着層に用いる不織布及び基材層を重ね合わせた後、ロータリードライヤーで、90℃、2分間乾燥し、次いで熱風乾燥機を用い、温度190℃で1分間熱処理を行って、不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1で用いたフィブリル化芯鞘複合繊維に替えて、実施例1で得た叩解処理前の3mm長にカットした芯鞘複合繊維を用いる以外は、実施例1と同様に行い不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1の芯鞘比を芯部:70体積%、鞘部:30体積%に替えて、実施例1と同様に紡糸し芯鞘複合繊維を得た。
次いで、得られた芯鞘複合繊維を、3mm長にカットし、IKA JAPAN(株)製のコーンミル型ホモジナイザーで叩解し、鞘部をフィブリル化してフィブリル化芯鞘複合繊維を得た。
得られたフィブリル化芯鞘複合繊維のCSF及び比表面積の測定結果を表1に示す。
次に、得られたフィブリル化芯鞘複合繊維を用い、実施例1と同様に行い不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例1〕
芯部にエチレン・メタクリル酸共重合体(EMA)(融点:95℃、MFR:35g/10分、メタクリル酸含有量:10質量%;三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名:ニュクレルN1035)を、鞘部に、ポリ乳酸(PLA)(融点:169℃、MFR:37g/10分、三井化学(株)販売 商品名 LACEA(登録商標)H900)を用い、芯鞘成分を別個の押出機で溶融した後、芯部:90体積%、鞘部:10体積%となるようにギヤポンプ回転数を合わせ、芯鞘構造を有するノズルを備えた紡糸用ダイに供給して巻取り速度500m/分で紡糸し芯鞘複合繊維を得た。
次いで、得られた繊維を3mm長にカットした。叩解処理を行わないこと以外は、実施例1と同様に行い不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例2〕
比較例1の芯鞘比を芯部:70体積%、鞘部:30体積%に替えて、比較例1と同様に紡糸し芯鞘複合繊維を得た。
次いで、得られた繊維を3mm長にカットした。叩解処理を行わないこと以外は、実施例1と同様に行い不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0048】
〔参考例1〕
芯成分、鞘成分ともにエチレン・メタクリル酸共重合体(融点:95℃、MFR:35g/10分、メタクリル酸含有量:10質量%;三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名:ニュクレルN1035)を用い、実施例1と同様の設備を用いて巻取り速度250m/分で紡糸し、単一の繊維を得た。エチレン・メタクリル酸共重合体単独での紡糸は、250m/分を超える巻取り速度では糸切れが発生し、連続運転が不可能であった。
次いで、得られた繊維を3mm長にカットした。叩解処理を行わないこと以外は、実施例1と同様に行い不織布積層体(2層紙)を得た。
得られた不織布積層体(2層紙)の物性を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から、芯部がエチレン・メタクリル酸共重合体、鞘部がポリ乳酸とプロピレン・エチレンランダム共重合体である芯鞘複合繊維は紡糸性が改良され、且つ、得られた芯鞘複合繊維をパルプに混合することにより、ヒートシール性及びホットタック性を有する不織布が得られる(実施例2)ことが分かる。
そして、当該芯鞘複合繊維をフィブリル化することにより、CSF及び比表面積が改良され、且つ、得られたフィブリル化芯鞘複合繊維をパルプに混合する際の抄紙性が改良され、より、ヒートシール性及びホットタック性に優れる不織布が得られる(実施例1)ことが分かる。
また、芯鞘複合繊維の芯部が細くなると(実施例3)、幾分、ヒートシール性及びホットタック性が低下する傾向にある。
それに対して、鞘部がポリ乳酸単独の芯鞘複合繊維(比較例1、比較例2)は、ヒートシール性及びホットタック性が低下する傾向にある。
一方、単一のエチレン・メタクリル酸共重合体からなる(参考例1)は、紡糸性が劣り、低速巻取りでも糸切れが発生し易く、巻取りロールなどに巻きつき易く、繊維同士のブロッキング現象などが起こるなど、生産面での問題がある。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の芯鞘複合繊維及びフィブリル化芯鞘複合繊維は、不織布にした際に、低温でのヒートシール性、ホットタック性等の特性が優れるので、当該特性が特に必要とされるヒートシール層に好ましく用いることができる。例えば、ヒートシール層としてティーバッグに利用することで優れた低温熱特性を有するティーバッグ紙を作製することができる。特に本発明のフィブリル化芯鞘複合繊維は繊維がフィブリル形状を有することで、近年、ティーバッグ紙として用いられる2層紙の作製時にも、基材層との接合が保持できる。またそのフィブリル化構造により、適度に水を保持することから、抄紙時には、通常の短繊維より優れた抄紙性が確保できる。
また、紡糸製造時には、鞘部に低融点成分が露出しないため、金属ロールへの巻き付きといったトラブルが起こりにくく、安定した稼動と生産性とを確保できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が70〜110℃の範囲にあるエチレン共重合体からなる芯部及び脂肪族ポリエステルとポリオレフィンとの組成物からなる鞘部を有してなることを特徴とする芯鞘複合繊維。
【請求項2】
エチレン共重合体が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマーである請求項1記載の芯鞘複合繊維。
【請求項3】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が、エチレン・メタクリル酸共重合体である請求項2記載の芯鞘複合繊維。
【請求項4】
鞘部を構成する組成物が、脂肪族ポリエステルが10〜90質量%とポリオレフィンが90〜10質量%の範囲にある請求項1記載の芯鞘複合繊維。
【請求項5】
脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である請求項1または4記載の芯鞘複合繊維。
【請求項6】
ポリオレフィンがポリプロピレンである請求項1または4記載の芯鞘複合繊維。
【請求項7】
芯鞘複合繊維が、芯部が30〜95体積%及び鞘部70〜5体積%からなる請求項1〜6のいずれかに記載の芯鞘複合繊維。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の芯鞘複合繊維の鞘部をフィブリル化してなるフィブリル化芯鞘複合繊維。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の芯鞘複合繊維を含む不織布。
【請求項10】
請求項8に記載のフィブリル化芯鞘複合繊維を含む不織布。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の芯鞘複合繊維を5〜95質量%及びパルプを95〜5質量%含む請求項9記載の不織布。
【請求項12】
請求項8に記載のフィブリル化芯鞘複合繊維を5〜95質量%及びパルプを95〜5質量%含む請求項10記載の不織布。
【請求項13】
請求項9又は10記載の不織布をヒートシール層に用いてなるティーバッグ。
【請求項14】
紙の片面に、請求項9又は10記載の不織布からなるヒートシール層を積層してなるティーバッグ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275676(P2010−275676A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132197(P2009−132197)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】