説明

花粉交配機

【課題】受粉の作業効率を改善するとともに花粉を無駄に消費することを防止する花粉交配機を提供する。
【解決手段】花粉交配機10は、長尺の作業用柄12と、作業用柄12の上端部に設ける花粉収納部14、作業用柄12に取り付ける受粉用梵天16、花粉収納部14内の花粉18を受粉用梵天16上に導出する花粉用導管20とを備えるものである。花粉用導管20の開口部には、その開口部を閉じる開閉弁28が取り付けられている。花粉交配機10に振動を与えると、開閉弁28が振動し、花粉用導管20内に貯蔵される花粉18を放出する放出口30が形成される。放出口30から放出された花粉18は受粉用梵天16に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌しべに花粉を付着させる花粉交配機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リンゴ等を生産する場合、結実を確保するためにリンゴ等の花(雌しべ)に他品種の花粉を人口的に受粉させる。この受粉は、梵天(ぼんてん、細い竹製の棒の先端に羽毛を束ね取り付けたもの)の羽毛に受粉させる花粉を付けて、その梵天を開花した花一つ一つに接触させ、花の雌しべに花粉を付ける作業である。
従来の梵天を使った受粉作業は、はしごを掛け乗り降りして作業を行っていた。また、花粉収納容器を身に付け、梵天を花粉収納容器から受粉させる花(雌しべ)に運んで行っていた。しかし、このような手作業は作業効率が悪かった。また、受粉作業は、開花時期(開花後2〜3日以内)に行わなければならないことから、その時期は多くの人員を確保しなければならないという問題があった。
さらに、強風の日は、梵天を身に付けた花粉収納容器から受粉させる花(雌しべ)に運ぶまでに、梵天に付着させた花粉のほとんどが風によって吹き飛んでしまい、花粉が無駄に消費されるという問題があった。
【0003】
上記問題を解消するため、受粉の作業効率を改善する花粉交配機が提供されている(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−115342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の花粉交配機は、長尺の管部材と、その管部材の上端部に花粉を付着させる花粉交配部を備え、管部材の下端部に連通する花粉収容部を備えるものである。花粉収容部の花粉は、モータにより送風され管部材の管内を搬送され花粉交配部に送出される。特許文献1の花粉交配機によると、長尺の管部材とその管部材の上端部に花粉交配部を備えることにより、はしごの乗り降りや梵天への花粉付着が不要となり、作業効率を改善できる。また、花粉は、管部材の管内を通って花粉交配部に搬送されることから、風の影響を受けずに、花粉交配部に花粉を確実に付着させることができ、風による花粉の無駄を防止することができる。なお、上記花粉交配機の花粉交配部は、毛ばたき状に形成されており、その羽根に花粉が付着する。
しかし、特許文献1の花粉交配機は、モータを用いて花粉を送風し運搬するものであることから、花粉収容部から送風される花粉が花粉交配部に送出されるまでにその機器内で詰まる可能性があり、作業が中断されるおそれがある。また、相当量の花粉が花粉交配部に送出されることから、花粉が無駄に消費されるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであって、受粉の作業効率を改善するとともに花粉を無駄に消費することを防止する花粉交配機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の花粉交配機は、長尺の作業用柄と、作業用柄の上端部に設ける花粉収納部と、作業用柄に取り付ける受粉用梵天、花粉収納部内の花粉を受粉用梵天上に導出する花粉用導管とを備え、前記花粉用導管の開口部に、振動によって花粉用導管内に貯蔵された花粉を放出する放出口を形成する開閉弁を設けるようにしたものである。
【0008】
本発明の花粉交配機は、前記花粉交配機に振動発生装置を備え、振動発生装置の振動によって前記放出口を形成するようにしたものである。
また、前記振動発生装置が、振動モータであるようにしたものである。
また、前記振動発生装置が、前記作業用柄にシーソー状に可動する板と、その板の一端を作業用柄に付勢するバネとからなるものであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の花粉交配機は、その交配機に振動を与え、その振動によって作業用柄の上部に設けた花粉収納部からその下方の受粉用梵天に花粉を落下させるようにしたものである。管部材の下方の花粉収容部から管部材を介して上部の花粉交配部に花粉を送風する特許文献1の花粉交配機と異なり、機器内に花粉が詰まることはなく、作業が中断されることはない。
振動によって花粉収容部から受粉用梵天に落下する花粉は適量なもの又は少量であるため、花粉が無駄に消費されることを防止することができる。また、受粉する花(雌しべ)に受粉用梵天を接触させた状態で振動させることにより、強風時における作業においても花粉の無駄な消費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の花粉交配機の構成部を表わす図である。
【図2】図1の花粉交配機の花粉用導管を表わす拡大図である。
【図3】図1の他の花粉用導管の形態を表わす拡大図である。
【図4】図1の花粉交配機の使用状態を表わす図である。
【図5】本発明の花粉交配機の振動発生装置の一例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、受粉の際に受粉用梵天に適量の花粉を付着させることを実現するものである。
【実施例】
【0012】
本発明の花粉交配機を図に基づいて説明する。図1(a)は本発明の花粉交配機の構成部を表わす図であり、同図(b)は図(a)の花粉収納部内の底部の構造を表わす図である。図2は、図1の花粉用導管の形態を表わす拡大図であり、図(a)は、図1の花粉交配機の花粉用導管の開口部を表わす図であり、同図(b)は、花粉用導管の開口部のA−A断面図(中央断面図)である。図3は、他の花粉用導管の形態を表わす拡大図であり、図(a)は、図1の花粉交配機の花粉用導管の開口部を表わす図であり、同図(b)は、花粉用導管の開口部のB−B断面図(中央断面図)である。
本発明の花粉交配機10は、長尺の作業用柄12と、作業用柄12の上端部に設ける花粉収納部14、作業用柄12に取り付ける受粉用梵天16、花粉収納部14内の花粉18を受粉用梵天16上に導出(又は落下)する花粉用導管20とを備えるものである。
作業用柄12は、所定の長さを有する棒状のものであり、受粉作業時に手で保持するものである。作業用柄12は、長さを調整できる伸縮機能(図示せず)を有するものであってもよい。
【0013】
花粉収納部14は、作業用柄12の上端部(先端部)に設けられている。花粉収納部14に収納される花粉18は、花粉収納部14の底部14aに形成される花粉導出孔14bから落下する。花粉導出孔14bは、調整弁14cによってその孔の大きさを調整でき、落下する花粉を適量又は少量に調整することができるようになっている。
【0014】
受粉用梵天16は、花粉収納部14の花粉導出孔14bの下方に位置するように、作業用柄12に取り付けられている。受粉用梵天16は、作業用柄12に着脱可能な状態で取り付けられている梵天取付部材16aを介して、作業用柄12に取付けられる。
【0015】
花粉用導管20は、その一端が花粉導出孔14bに連通し、他端(花粉用導管20の開口部)が受粉用梵天16上に配置されるように設けられている。花粉導出孔14bから落下する花粉18は、花粉用導管20を通じて、受粉用梵天16の羽毛に付着する。受粉用梵天16に付着した花粉18は、受粉用梵天16が花に接触すると、その雌しべに付着する。
受粉作業の際は、作業用柄12に取り付ける梵天取付部材16aの位置を上下、左右(又は前後)に移動させて、花粉導出孔14bから落下する花粉18が受粉用梵天16に確実に付着するように調整する。
【0016】
また、花粉用導管20は、その導管20内に花粉導出孔14bから落下する花粉18を貯蔵する開閉弁28a,28bを備える(図2、図3)。開閉弁28a,28bは、花粉用導管20の開口部20aを閉じる(又は塞ぐ)ように形成されている。花粉導出孔14bから落下する花粉18は、花粉用導管20の開口部20aを閉じた状態の開閉弁28a,28b上に降り積もり、花粉用導管20から放出されないため、一旦花粉用導管20の管内に貯蔵される。
【0017】
図2の開閉弁28aの形状は略長形のものであり、図3の開閉弁28bの形状は略円形のものである。図2および図3の開閉弁28a,28bは、花粉用導管20の開口部20aより径小のものであり、開閉弁28a,28bと花粉用導管20との間に隙間32が形成され、小さな振動でも花粉18が放出されやすいようになっている。開閉弁28a,28bの形状又は大きさは、花粉交配機10に所定の振動を与えた際にその振動により上下に振動し、その振動時に花粉用導管20内に貯蔵された花粉18を外部に放出する放出口30が形成されるように設定する。放出口30は、開閉弁28a,28bが振動により下方に下がったときに形成される(図2(b)、図3(b))。開閉弁28a,28bの大きさは、放出口30を形成するものであれば足り、開口部20aと同大もしくは径大のものであっても良い。
【0018】
花粉用導管20および開閉弁28a,28bの素材は、花粉18が付着しないものを選択する。例えば、結露を生じる素材(例えば、金属製のもの)は使用しない。
【0019】
花粉交配機10に手や道具(木槌など)を用いて所定の振動を与えると、その振動により開閉弁28a,28bが上下に振動する(図2(b)、図3(b))。開閉弁28a,28bの振動により放出口30が形成され、導管20内の花粉18が受粉用梵天16上に適量又は少量落下し、梵天16の羽毛に付着する。
【0020】
本発明の花粉交配機による受粉作業を図4に基づいて説明する。図4は、図1の花粉交配機の使用状態を表わす図である。
花粉収納部14には、雌しべに受粉させる花粉18に石松子(ピンクに染色された花粉増量剤)を混合したものを収納する。花粉導出孔14bは、花粉交配機10が振動する際適量又は少量の花粉18が落下するような大きさに調整弁14cを用いて設定する。
作業用柄14を保持し、花粉交配機10に振動を与え、花粉用導管20内の花粉18を放出口30から受粉用梵天16上に放出・落下させ、白色の梵天(羽毛の色は白である。)が花粉18の付着によりピンク色に変色したことを確認する。ピンク色になった受粉用梵天16を受粉させる花(又は雌しべ)に接触させ、受粉作業を行う。花一つ一つに接触作業(受粉作業)を続け、梵天が白色に変色したとき、再度花粉交配機10に振動を与え、花粉用導管20内の花粉18を放出口30から受粉用梵天16上に放出・落下させる。このように、本発明によると、花粉交配機10に振動を与えることで、受粉用梵天16に容易に花粉18を供給することができる。
【0021】
花粉交配機10に、振動発生装置である振動モータ24を取り付けてもよい(図1および図4)。
強風の際は、受粉させる花(雌しべ)に受粉用梵天16を接触させた状態で、花粉交配機10に振動を与える。これにより、風によって花粉18が無駄に消費されることを防止することができる。しかし、受粉用梵天16を接触させた状態で花粉交配機10に大きな振動を与えると、花を傷める可能性がある。そのため、花粉18を放出口30から適量又は少量の花粉18を放出するために必要な振動を発生する振動モータ24を花粉交配機10に取り付ける。
振動モータ24は、そのシャフトの先端部に分銅が偏って取り付けられたものである(図示せず)。モータが回転すると振動し、花粉交配機10を振動させる。振動モータ24は、振動を発生して着信を知らせる携帯電話機のバイブレーター等として利用されているものであり、公知のものである。
振動モータ24の取付場所は、振動モータ24の振動によって放出口30を形成する場所、すなわち開閉弁28a,28bを振動させることができる場所であれば、花粉交配機10のどの位置(例えば、作業用柄12の下部、花粉収納部14又は花粉用導管20等)に取り付けても良い。また、振動モータ24の大きさ、振動の強さに応じて、取付場所を選択する。
【0022】
図1において、振動モータ24は作業用柄12の上部に取り付けられている。作業用柄12のグリップ部12a(柄12の下部部分)には、振動モータ24を回転させるスイッチ26と電源(電池)28が設けられている。スイッチ26は、電源28と振動モータ24の給電端子(図示せず)との接続をオン・オフするものであり、スイッチ26をオンにすると、振動モータ24が回転し、花粉交配機10が振動するようになっている。なお、スイッチ26および電源28は、グリップ部12a以外の作業用柄12に設けても良い。
【0023】
また、花粉交配機10の作業用柄12にシーソー状に可動する板34を設け、その板34の一端34aを作業用柄12にバネ36で付勢した振動発生装置38を取り付けてもよい(図5)。振動発生装置38は、板34の一端34aが作業用柄12に衝撃を与えるものであり、その衝撃により花粉交配機10に振動が発生する。図5において、板34の他端34bを指で作業用柄12の方向(矢印C)に押すと、作業用柄12に当接した状態の板34の一端34aが作業用柄12から離れる(矢印D)。板34の他端34bから指を離すと、バネ36の付勢により板34の一端34aは作業用柄12に衝突し、花粉交配機10に振動を発生させる。なお、振動発生装置38は、板34のほぼ中心を支点としてシーソー状に可動するものであり、支点部分は作業用柄12に設ける軸34cに回動自在に取り付けられている。
振動モータ24は電池を電源とするものであるため、電池切れになると作業が中断される。受粉作業は期間が限られており、その期間も短いことから、作業の中断は作業効率を低下させる原因となる。電動の振動モータ24に代えて振動発生装置38を取り付けることにより、作業効率を高めることができる。
【0024】
本発明において、振動モータ24と振動発生装置38とを併用して使用してもよい。また、花粉交配機10に取り付ける振動発生装置は、上例の振動モータ24、振動発生装置38に限るものではなく、他のものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 花粉交配機
12 作業用柄
14 花粉収納部
16 受粉用梵天
18 花粉
20 花粉用導管
24 振動モータ
28 開閉弁
30 放出口
34 板
36 バネ
38 振動発生装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の作業用柄と、作業用柄の上端部に設ける花粉収納部と、作業用柄に取り付ける受粉用梵天、花粉収納部内の花粉を受粉用梵天上に導出する花粉用導管とを備え、前記花粉用導管の開口部に、振動によって花粉用導管内に貯蔵された花粉を放出する放出口を形成する開閉弁を設けることを特徴とする花粉交配機。
【請求項2】
請求項1記載の花粉交配機に振動発生装置を備え、振動発生装置の振動によって前記放出口を形成することを特徴とする花粉交配機。
【請求項3】
前記振動発生装置が、振動モータであることを特徴とする請求項2記載の花粉交配機。
【請求項4】
前記振動発生装置が、前記作業用柄にシーソー状に可動する板と、その板の一端を作業用柄に付勢するバネとからなるものであることを特徴とする請求項2記載の花粉交配機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34427(P2013−34427A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172674(P2011−172674)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【特許番号】特許第4876193号(P4876193)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(511193318)
【Fターム(参考)】