説明

花粉症の予防剤または改善剤

【課題】花粉症の各種症状に対して、症状が出る前に摂取することによる花粉症の予防効果、並びに花粉症の各種症状が発症した後に摂取することによる花粉症の症状の改善効果を、より多くの人が確実に実感できる方法を提供すること。
【解決手段】還元型補酵素Q10を有効成分とする、花粉症の予防または改善剤。好ましくは、一日あたりの還元型補酵素Q10の摂取量が100mg以上となるように投与される上記花粉症の予防または改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症の予防剤および改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症とは、植物の花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされる、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状が特徴的な症候群のことである。これらの花粉症の症状は、長期間にわたり患者に著しい不快感を与えるだけでなく、患者の日常生活に多大な支障をもたらしている。
【0003】
このような花粉症の症状を和らげるために様々な検討が行われている。特許文献1には、補酵素Q10が花粉などに対するアレルギー症状に有効であることを利用した入浴剤が記載されており、特許文献2には、補酵素Q10がアレルギー性疾患に有効であることと実際に花粉症の症状の指標としての鼻をかむ回数が補酵素Q10の摂取により減少することが示されている。しかしながら、補酵素Q10摂取による花粉症のあらゆる症状に対する効果は不明であり、また補酵素Q10摂取時の吸収の程度は個人差が大きく(非特許文献1)、そのため補酵素Q10を1年以上摂取しているにも拘らず、効果が感じられないという人がいたり、症状は若干軽くなると感じるものの、不快感を大きく低減するには不十分という人もいるなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−115400号公報
【特許文献2】特開2003−306429号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山本順寛著 臨牀透析 Vol.24 No.13 56-57ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点を鑑み、花粉症の各症状に対して、症状が出る前に摂取することによる予防効果、並びに各症状が発症した後に摂取することによる症状改善効果を、より多くの人が確実に実感できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が上記課題を解決するために鋭意研究した結果、還元型補酵素Q10を含有する組成物を摂取することにより花粉症の複数の各症状を予防できること、また症状が出てからも、還元型補酵素Q10を含有する組成物を摂取することにより、複数の不快な症状を大幅に緩和できることを見出した。すなわち、本発明は、還元型補酵素Q10を含有する花粉症の予防剤、及び改善剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によって、花粉症の各症状を予防、改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る花粉症の各症状の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の範囲は、実施形態および実施例によって限定されるものではない。
【0011】
本発明における花粉症の予防剤及び/又は改善剤は、還元型補酵素Q10をその有効成分として含有する組成物である。
【0012】
本発明で用いられる還元型補酵素Q10は、化学合成品、発酵品、天然物からの抽出物など、形態を問わず使用することができる。例えば還元型補酵素Q10を含有する微生物(細菌、酵母など)そのもの、あるいはその粗精製物でもよく、また、これらから還元型補酵素Q10を精製したものでもよく、精製の程度も制限されない。補酵素Q10には、酸化型と還元型が存在するが、本発明で用いられる還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10との混合物であってもよい。還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の混合物の場合、それらの混合割合は特に制限されないが、効果を確実に得る観点からは、還元型補酵素Q10の割合が高いことが望ましい。具体的には、総補酵素Q10量(すなわち、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の合計量)に対する還元型補酵素Q10の割合が、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましく、90重量%以上であることがとりわけ好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。その上限は特に限定されないが、混合物の場合は99.5重量%以下が好ましく、もちろん還元型補酵素Q10のみ、つまりは総補酵素Q10量に対する還元型補酵素Q10の割合が、100重量%であってもかまわない。
【0013】
本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤は、還元型補酵素Q10を含有する組成物として、経口サプリメント、特定保健用食品、健康食品、栄養補助食品などの形態で主に経口的に摂取することにより、健康の維持あるいは改善を目的とする製品を意味している。本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤を作製する際の還元型補酵素Q10の含有量、剤型、保存方法および保存形態は、用途に応じて適宜決定できる。
【0014】
本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤には、還元型補酵素Q10の他に、種々の添加剤を加えることができる。例えば、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、胚芽油、ヒマワリ油、牛脂、イワシ油などの動植物油、MCTなどの加工油脂、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、乳糖、澱粉、結晶セルロースなどの賦形剤、および甘味料、着色料、香料などを挙げることができる。
【0015】
また、本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤は、さらにビタミン類を含有しても良い。ビタミン類としては、例えばビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが挙げられる。
【0016】
本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤における還元型補酵素Q10の含有量は、特に限定されないが、還元型補酵素Q10を効率的に摂取する観点から、製剤1単位中30mg以上であることが好ましく、50mg以上であることがより好ましく、100mg以上であることが特に好ましい。ここでいう製剤一単位とは、カプセル剤の場合は1カプセル分、錠剤の場合は錠剤1つ分、散剤等の場合は1包装単位を意味する。また、本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤を摂取する場合の摂取量は特に限定されないが、成人に投与する場合、その有効成分である還元型補酵素Q10の摂取量として、効果を確実に得る観点から、一日平均100mg以上であることが好ましく、120mg以上であることがより好ましく、150mg以上であることがさらに好ましく、200mg以上であることがとりわけ好ましく、300mg以上であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤の摂取開始時期は、花粉症の症状が出始めてからでもかまわないが、効果を確実に得る観点からは、花粉症の症状が現れる1ヶ月以上前が好ましく、2ヶ月以上前がより好ましく、3ヶ月以上前がさらに好ましく、4ヶ月以上前がとりわけ好ましく、5ヶ月以上前が特に好ましい。
【0018】
なお、本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤を毎日摂取することは必ずしも必要ではないが、一定期間内の還元型補酵素Q10の一日あたりの平均摂取量が上記好ましい摂取量となるよう継続して摂取するのが好ましい。ここでいう一定期間とは、花粉症の流行時期を含んで1ヶ月間以上が好ましく、2ヶ月間以上がより好ましく、3ヶ月間以上がさらに好ましく、4ヶ月間以上がとりわけ好ましく、5ヶ月間以上が特に好ましい。また継続投与とは、毎日でも隔日でもかまわない。
【0019】
本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤は、花粉症に付随する各種症状の発生の抑制や軽減に有効である。花粉症に付随する各種症状としては、水っぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目の他、倦怠感や微熱等も含まれる。本発明の花粉症の予防剤及び/又は改善剤は、上記各種症状のうち少なくとも一つ、より好ましくは2つ以上の症状に有効である。
【実施例】
【0020】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
あらかじめ被験者7名に、例年花粉症の症状が現れる時期(以下、花粉症時期とする)及びその時期の花粉症症状の程度を確認した。花粉症症状の程度は、6項目の症状(水っぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目)について、5:非常に重い、4:重い、3:中くらい、2:軽い、1:症状なしの5段階の指標で確認した。その上で、還元型補酵素Q10を含有する市販のカプセルを継続的に摂取(一日あたり還元型補酵素Q10を100mg摂取)してもらった。還元型補酵素Q10含有カプセルの摂取時期は、対象7人のうち、4名が花粉症の症状が現れ始める時期に摂取を開始し、残り3名はそれぞれ、花粉症の症状が例年現れる時期の2ヶ月前,7ヶ月前,8ヶ月前から摂取を開始した。そして、還元型補酵素Q10含有カプセルを摂取する以前の花粉症の各種症状と、継続的摂取を始めた最初の年(摂取後1年目)と、2年目のそれぞれの花粉症時期の各種症状の程度を比較した。その結果を図1に示す。図1からわかるように、還元型補酵素Q10を含有する市販のカプセルを継続的に摂取することにより、すべての花粉症症状において改善されていく傾向がみられ、還元型補酵素Q10の継続的な摂取が、花粉症症状の予防、改善に有効であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型補酵素Q10を有効成分とする、花粉症の予防または改善剤。
【請求項2】
一日あたりの還元型補酵素Q10の摂取量が100mg以上となるように投与される請求項1記載の花粉症の予防または改善剤。
【請求項3】
花粉症の流行時期を含む1ヶ月以上の間、継続投与される請求項1記載の花粉症の予防または改善剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171941(P2012−171941A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37412(P2011−37412)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】