Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
花粉症ワクチンの治療効果を予測するバイオマーカー
説明

花粉症ワクチンの治療効果を予測するバイオマーカー

【課題】花粉アレルゲンによる、スギ花粉症等の花粉症に対するワクチン療法の有効性を効果的に予測するための技術を提供すること。
【解決手段】花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法であって、
(1)対象者への花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、当該対象者から単離された単核球における、CCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定すること;及び
(2)(1)において測定した発現の変化と、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性とを相関付けること
を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉アレルゲンによる、スギ花粉症等の花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測する方法、及びそれに使用する診断薬、診断キット、診断用DNA/抗体アレイ等に関する。
【背景技術】
【0002】
スギ花粉症は日本特有花粉症であり、飛散花粉数の多さから2,000万人近い患者が存在すると推定されている(鼻アレルギーガイドラインより)。近年、さらに患者数は増加傾向にあり、かつ従来は少ないとされていた小児での発症の増加も問題になっている。花粉症は、睡眠、学習、労働生産性にも大きな影響を与えることがクローズアップされ有効な治療が求められている。
精製アレルゲンによる免疫治療はアレルギー疾患の根治が期待できる治療法であり、世界保険機構(WHO)のポジションペーパーにも記載されている。従来の皮下注射法での施行は患者に少なからず痛みを伴い、通院期間が2年間、注射回数が計50回、あるいはそれ以上に及ぶ場合があるため、日本では施行数そのものが減ってきている。千葉大学ではこの弱点を改良すべく投与経路を舌下法に改めた舌下免疫療法について、2005年より臨床試験を開始し、舌下免疫療法でも皮下注射と同様に良好な花粉症症状緩和効果を奏することを報告している(非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Horiguchi,S et.al.: A Randomized Controlled Trial of Sublingual Ceder Pollinosis. Int Arch Allergy Immunol. 2008; 146: 76-84
【非特許文献2】Okubo,K et.al.: A Randomized Double-Blind Comparative Study of Sublingual Immunotherapy for Ceder Pollinosis. Allergology International. 2008; 57: 265-275
【非特許文献3】Fujimura,T et al.: Increase of regulatory T cells and the ratio of specific IgE to total IgE are candidates for response monitoring or prognostic biomarkers in 2-year sublingual immunotherapy (SLIT) for Japanese cedar pollinosis. Clin Immunology. 2011;139: 65-74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の臨床試験において、スギ花粉アレルゲンの舌下投与によるワクチン療法によって花粉症症状緩和効果が認められたため、本発明者らは実用化にむけてより簡便な飛散前8週からの連日投与を行い、スギ花粉精製アレルゲンの舌下投与によるスギ花粉症症状の治療・予防効果を検証した。その結果、スギ花粉精製アレルゲンの舌下投与によって、スギ花粉症症状が良好に緩和した群(Good Responder)と、症状の緩和が限定的な群(Poor Responder)が存在することが明らかとなった。Good Responderには、非侵襲的で負担が少なく根治に繋がる有用な治療法であることが示された一方、Poor Responderの患者群については、長期間に亘ってスギ花粉レルゲンの投与を続けても、緩和効果が限定的であるため、負担が大きいのみで、他の治療法の選択が望ましい。したがって、予めワクチン療法の有効性を予測することが可能ならば、Good Responderにはワクチン療法を積極的に採用し根治を目指し、Poor Responderに対しては長期間に亘る不要なワクチン接種を回避し、他の適切な治療法を選択することを推奨することができる。その結果、患者の負担を軽減し、医療費の有効な活用に結び付く。
【0005】
本発明の目的は、花粉アレルゲンによる、スギ花粉症等の花粉症に対するワクチン療法の有効性を効果的に予測するための技術と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、Good Responder及びPoor Responderにおいて、末梢血単核球の遺伝子発現変化をそれぞれ解析したところ、スギ花粉アレルゲン投与前後で、特定の遺伝子の発現変化について2群間で顕著な差異が存在することを知見し、この特定の遺伝子の発現変化を解析することにより花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することが可能であることを見出した。これらの知見に基づき、更に検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法であって、
(1)対象者への花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、当該対象者から単離された単核球における、CCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定すること;及び
(2)(1)において測定した発現の変化と、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性とを相関付けること
を含む、方法。
[2]花粉がスギ花粉である、[1]記載の方法。
[3]花粉アレルゲンがCryj1又はCryj2を含む、[2]記載の方法。
[4]ワクチン療法が、花粉アレルゲンを口腔粘膜投与することにより行われる、[1]記載の方法。
[5]花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための診断薬であって、
(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、診断薬。
[6]花粉がスギ花粉である、[5]記載の診断薬。
[7]以下の(A)及び(B)を含むキット:
(A)花粉アレルゲンを含む、花粉症に対するワクチン、及び
(B)(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、
からなる群から選択される少なくとも1つ。
[8]花粉がスギ花粉である、[7]記載のキット。
[9]花粉アレルゲンがCryj1又はCryj2を含む、[8]記載のキット。
[10]ワクチンが、口腔粘膜投与用製剤である、[7]記載のキット。
[11]構成要素(B)がアレイとして提供される、[7]記載のキット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を容易に予測することが可能となる。本発明の方法を用いれば、治療の有効性を予め確認しながら、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法を実施することが可能となる。その結果、例えば、当該療法が有効な患者に対しては、積極的にその療法を続行し根治を目指し、効果が限定的な患者に対しては治療方針を変更する等、治療方針の選択判断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】スギ花粉エキスを舌下投与した各スギ花粉症患者のsymptom-medication score(症状薬物スコアー)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法
本発明は、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法であって、
(1)対象者への花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、当該対象者から単離された単核球における、CCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定すること;及び
(2)(1)において測定した発現の変化と、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性とを相関付けること
を含む、方法を提供するものである。
【0011】
本明細書中、花粉症とは、風媒花の花粉が鼻、目、喉などの粘膜に接触することによって引き起こされる、季節性のI型アレルギー疾患をいう。花粉症を引き起こす花粉としては、スギ花粉、ヒノキ花粉、ブタクサ花粉、イネ科植物の花粉等が知られている。本発明においては、花粉(症)は、好ましくはスギ花粉(症)である。
【0012】
本明細書中、花粉アレルゲンとは、花粉に含まれる、花粉症(アレルギー反応)の原因となる抗原物質をいう。花粉アレルゲンとしては、ポリペプチド、脂質、糖、これらのいずれかの物質を含む抽出物等が挙げられるが、好ましくはポリペプチド又はこれを含む抽出物である。花粉アレルゲンには、花粉から抽出された物質のみならず、組換えポリペプチド等の人工的に合成された物質も、当該花粉により引き起こされる花粉症やこれに付随するアレルギー反応を引き起こす限り包含される。また、全長ポリペプチドのみならず、その部分ペプチド、これらの全長ポリペプチド、部分ペプチドと他のポリペプチドとの融合タンパク質も、当該花粉により引き起こされる花粉症やこれに付随するアレルギー反応を引き起こす限り、花粉アレルゲンに包含される。
【0013】
代表的なスギ花粉アレルゲンとして、Cryj1及びCryj2が知られている。Cryj1は、スギCryj1遺伝子の翻訳産物たるポリペプチドである。Cryj1は、N末端側に存在するシグナル領域が除去された成熟型のポリペプチドであることが好ましい。例えば、GenBankアクセッション番号:BAA07020を参照すると、Cryj1として、374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドが登録されているが、成熟型のCryj1は、BAA07020に登録された374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、22〜374番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド(例えば、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)に対応する。BAA07020に登録された374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、1〜21番目のアミノ酸残基からなる領域はシグナル領域である。成熟型のCryj1としては、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び天然に存在するそのアイソタイプ(例えば、GenBankアクセッション番号D34639、D26544、D26545、AB081309、AB081310参照)等が挙げられる。
【0014】
Cryj2は、スギCryj2遺伝子の翻訳産物たるポリペプチドである。Cryj2は、N末端側に存在するシグナル領域、並びにコーディング部分のN末端及びC末端側にそれぞれ存在する2つのプロ領域が除去された成熟型のポリペプチドであることが好ましい。例えば、GenBankアクセッション番号:P43212を参照すると、Cryj2として、514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドが登録されているが、成熟型のCryj2は、P43212に登録された514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、46〜433番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド(例えば、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)に対応する。P43212に登録された514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、1〜22番目のアミノ酸残基からなる領域はシグナル領域であり、23〜45番目のアミノ酸残基からなる領域及び434〜514番目のアミノ酸残基からなる領域はそれぞれプロ領域である。成熟型のCryj2としては、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び天然に存在するそのアイソタイプ(例えば、GenBankアクセッション番号D37765、D29772、E10716、AB081403、AB081404、AB081405参照)が挙げられる。
【0015】
本発明においては、スギ花粉アレルゲンは、好ましくはCryj1又はCryj2を含み、より好ましくは少なくともCryj1を含む。
【0016】
本明細書中、「花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法」とは、対象者(花粉症の患者又は、花粉症を発症するリスクのある者)に対して、当該花粉症の原因物質たる花粉アレルゲンを有効成分として含有するワクチンを投与することにより、該対象者へ花粉アレルゲンに対する非アレルギー性の免疫応答(花粉アレルゲン特異的なIgG産生の誘導、花粉アレルゲン特異的なCTLの誘導等)、又は花粉アレルゲンに対する免疫寛容を誘導して、花粉アレルゲンに対するアレルギー反応を抑制することを特徴とする、花粉症の予防又は治療方法をいう。
【0017】
花粉アレルゲンを有効成分として含有するワクチンは、花粉アレルゲンに加えて、医薬上許容され得る担体をさらに含み得る。医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックス、リポソームなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0018】
当該ワクチンは、ワクチン効果を高めるためのアジュバントを含んでいてもよい。アジュバントとしては、例えば、Freund Complete Adjuvant、Freund Imcomplete Adjuvant、BCG等の細菌製剤、ツベルクリン等の細菌成分製剤、keyhole limpet hemocyanineや酵母マンナン等の天然高分子物質、Alum等の水酸化アルミニウム等が挙げることができるが、これらの具体例に限定されることはなく、ワクチン効果を高める物質であればいかなるものを用いてもよい。
【0019】
当該ワクチンは、経口又は非経口で対象者に対して投与される。
【0020】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量の有効成分を溶解させた液剤、懸濁液剤、乳剤、並びに有効量の花粉アレルゲンを固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、散剤、顆粒剤、錠剤舌下錠、口腔内崩壊錠等である。
【0021】
非経口的な投与(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与、経皮投与、経鼻投与)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤及び/又はリポソーム製剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
【0022】
好ましい態様において、本発明の方法において、ワクチン療法は、花粉アレルゲンを口腔粘膜投与(好ましくは舌下投与)することにより行われる。即ち、花粉アレルゲンを有効成分として含有するワクチンは、好ましくは口腔粘膜投与用(好ましくは舌下投与用)製剤である。口腔粘膜投与用製剤は、通常、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の有効成分を溶解させた液剤、懸濁液剤又は乳剤である。口腔粘膜を介した体内への吸収を促進するため、浸透圧比を1を上回る値(例えば、1.1〜10.0、好ましくは1.1〜7、より好ましくは1.5〜5、更に好ましくは2〜4(例えば3))に調整してもよい。浸透圧の調整や安定化のために製剤中にグリセリン、ブドウ糖、食塩等の等張剤を添加することにより行うことができる。尚、添加物の存在により正確な浸透圧比を測定できない場合には、蒸留水で10倍に希釈したときの浸透圧比の値を上記数値の範囲内に調整することとする。
【0023】
ワクチン中の花粉アレルゲンの含有量は、花粉アレルゲンの種類、製剤の形態等に依存して異なり、ワクチンの投与態様に適するように設定されるが、例えばワクチンが液剤の場合には、通常0.1ng/ml〜1mg/ml、好ましくは1ng/ml〜0.1mg/mlの範囲内である。
【0024】
一実施態様において、スギ花粉アレルゲンを有効成分として含有する、スギ花粉症に対するワクチン中のスギ花粉アレルゲンの含有量は、通常1〜10000JAU/ml、好ましくは5〜5000JAU/ml、より好ましくは20〜1000JAU/mlである。
【0025】
尚、「JAU(Japanese Allergy Units)」とは、アレルギー患者の皮膚試験に基づき日本アレルギー学会により設定された日本独自のアレルギー活性単位である。JAUは、「安枝浩ほか:我が国におけるアレルゲン標準化の基本方針とスギ花粉アレルゲンエキスの標準化.アレルギー 1996;45(4),416-425」に記載された方法により測定することができる。一般には、7.3〜21μg/mlの範囲のCryj1を10000JAU/mLと表示することができるが、本発明においては、12.5μg/mlのCryj1を10000JAU/mLとして定義することとする。
【0026】
スギ花粉アレルゲンを有効成分として含有する、スギ花粉症に対するワクチンの好適な例として、鳥居薬品より市販されている標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉を挙げることができる。
【0027】
花粉アレルゲンを有効成分として含むワクチンの投与は、任意の適切な方法によって行うことができる。ワクチンの単回投与でも、対象者に対してワクチン効果を発揮するのに十分であり得るが、ワクチンを1回より多く投与することにより、単回投与よりも、より効果的にワクチン効果を発揮し得る。
【0028】
注射によるワクチン投与の場合の投与スケジュールの態様は以下の通りである。投与頻度は、例えば1〜30日間に1回、好ましくは30日間に1回である。投与回数は、治療効果を確認しながら、適宜設定することができるが、通常30回以上、好ましくは50回以上である。投与回数の上限も、治療効果を確認しながら適宜設定することができ、例えば治療効果が確認されるまで続けることができる。好適な実施態様として、例えば投与開始時期(投与用量の増量期)には、週に2回の頻度で3カ月間投与する。引き続き週に1回の頻度で1ヶ月間、2週間に1回の頻度で2ヶ月間投与し、その後、月に1回の投与頻度を維持し、全体で3年間を目安に投与を続ける。
【0029】
口腔粘膜投与(好ましくは舌下投与)の場合の投与スケジュールの態様は以下の通りである。投与頻度は、例えば1〜7日間に1回、好ましくは1〜3日間に1回、最も好ましくは1日1回である。投与期間は、治療効果を確認しながら、適宜設定することができるが、通常3ヶ月以上、好ましくは5ヶ月以上である。投与期間の上限も、治療効果を確認しながら適宜設定することができるが、通常は少なくとも花粉症の原因となる花粉飛散の終了が確認されるまで投与が続けられる。その後も良好な治療効果が確認されるまで投与を続けることができる。投与期間の上限も、特に限定されず、2年又はそれ以上の長期投与も推奨されている。
【0030】
一実施態様において、花粉アレルゲンを含むワクチンの口腔粘膜投与(好ましくは舌下投与)は、花粉飛散開始の遅くとも8週間前まで(例えば飛散開始の39〜8週間前、好ましくは20〜8週間前までのいずれかの時点)に開始され、少なくとも花粉飛散の終了が確認されるまで継続される。花粉飛散開始時期は、予め正確に予測することは困難なので、ワクチン投与を実施する地域における例年の花粉飛散開始時期、あるいは直近の花粉飛散開始時期予測などに基づき、ワクチン投与の開始時期を設定することができる。例えば、スギ花粉の飛散開始時期は、地域や気候に依存して変動するが、通常日本においては、2月上旬〜3月上旬なので、遅くとも前年の12月10日まで(例えば、前年の5月1日〜12月10日、好ましくは9月1日〜12月10日のいずれかの時点)に、ワクチン投与を開始し、少なくとも花粉飛散の終了が確認されるまで継続する。花粉飛散終了後も、更に投与を続けることができ、例えば、更に2年あるいはそれ以上の長期に亘り投与を継続することも推奨されている。
【0031】
1回の投与あたりの用量は、花粉アレルゲンの種類、製剤の形態等に依存して異なり、ワクチンの投与態様に適するように設定される。
例えば、スギ花粉症の予防又は治療のために、Cryj1を含むスギ花粉アレルゲンを含むワクチンを注射投与する場合、1回あたりの投与量は、ヒト1人あたり通常0.005〜5000JAU、好ましくは0.02〜1000JAUである。好適な実施態様として、例えば投与開始時期(投与用量の増量期)には、1回あたりの投与量を、ヒト1人あたり0.02〜1000JAUとし、投与量維持期には、40〜1000JAUとする。
また、スギ花粉症の予防又は治療のために、Cryj1を含むスギ花粉アレルゲンを含むワクチンを口腔粘膜投与(好ましくは舌下投与)する場合、1回あたりの投与量は、ヒト1人あたり通常0.1〜10000JAU、好ましくは1〜2000JAUである。好適な実施態様として、例えば投与開始時期(投与用量の増量期)には、1回あたりの投与量を、ヒト1人あたり1〜2000JAUとし、投与量維持期には、1000〜2000JAUとする。
【0032】
あるいは、花粉アレルゲン投与による、花粉症症状の悪化やアナフィラキシーの誘発リスクを回避するため、低用量から投与を開始し、漸増的に投与量を増やしてもよい。例えば、投与開始にあたり、皮膚反応が陽性の患者に皮内反応により過敏度(閾値)を求める。その閾値及びその時々の患者の症状に応じて初回投与量を設定する。例えば、花粉アレルゲンの希釈系列を作成し、その一定量を対象者の皮内に投与し、その反応を皮内反応判定基準に従って判定する。陽性反応を呈した最低濃度(最大希釈度)をもってその対象者のアレルゲンに対する閾値とする。その閾値における投与量を下回る(例えば1/10〜1/100)ように、初回投与量を設定し、漸増的に投与量を増やす。特に、ワクチンを注射投与する場合には、上述のように、ワクチン投与開始前に閾値を検査するのが、安全性確保の観点から好ましい。口腔内(舌下)投与の場合には、比較的安全性が高いことから、ある程度決められた量から投与を開始し、漸増的に投与量を増やすか、あるいは最初から、投与の終了時までの期間にわたり同一用量を維持することもまた好ましい。
【0033】
花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の対象者は、通常、ヒト及び非ヒト哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0034】
対象者は花粉症の患者及び花粉症を罹患していない者のいずれであってもよい。好ましくは、対象者はスギ花粉症の患者である。
【0035】
花粉症に対するワクチン療法の有効性とは、花粉症の症状(くしゃみ;鼻水;鼻づまり;鼻炎;目、鼻、喉又は皮膚のかゆみ;咳;目の充血;結膜炎)を緩和するという、該ワクチン療法の効果の程度又は有無をいう。
【0036】
本発明の方法においては、対象患者への花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、当該対象者から単離された単核球における、CCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定する。
【0037】
花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による各遺伝子の発現の変化は、当該ワクチン法を適用する前における遺伝子発現と、当該抗ワクチン療法を適用した後における遺伝子発現とを比較することにより測定することが出来る。例えば、上述のいずれかの投与スケジュールに基づきワクチンの投与を開始する前(例えば、第1回ワクチン投与当日の、ワクチン投与直前)における、各遺伝子の発現と、投与開始から、一定期間(例えば、少なくとも1〜15週間、好ましくは少なくとも4〜8週間(例えば、少なくとも1ヶ月間))経過した後における各遺伝子の発現とを比較する。あるいは、上述のいずれかの投与スケジュールに基づきワクチン投与を開始する前(例えば、第1回ワクチン投与当日の、ワクチン投与直前)における、各遺伝子の発現と、花粉飛散開始直前(例えば、花粉飛散開始の1〜30日前)における各遺伝子の発現とを比較する。発現の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0038】
CCL2(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2)は、MCP−1(モノサイト・ケモアトラクタント・プロテイン1)とも呼ばれる、C−Cケモカインファミリーの一員であり、CCR2又はCCR4を介して、単球、メモリーT細胞、樹状細胞等に対して走化性因子として働く、公知のケモカインである(Carr MW et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91 (9): 3652-6, 1994/Xu LL et al., J. Leukoc. Biol., 60 (3): 365-71, 1996)。CCL2はMCP−1(モノサイト ケモアトラクタント プロテイン1)とも呼ばれる。本発明において使用されるCCL2は、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のCCL2であり、好ましくはヒトCCL2である。ヒトCCL2の代表的なcDNA配列(配列番号1)及びアミノ酸配列(配列番号2)も公知である。
Ensembleアクセッション番号
cDNA配列:ENST00000225831
アミノ酸配列:ENSP00000225831
【0039】
IGHA1(イムノグロブリン・ヘビー・コンスタント・アルファ1)は、イムノグロブリンA重鎖の定常領域である。本発明において使用されるIGHA1は、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のIGHA1であり、好ましくはヒトIGHA1である。ヒトIGHA1の代表的なcDNA配列(配列番号3)及びアミノ酸配列(配列番号4)も公知である。
Ensembleアクセッション番号
cDNA配列:ENST00000390547
アミノ酸配列:ENSP00000374989
【0040】
NCF1(ニュートロフィル・サイトゾリック・ファクター1)は、NADPHオキシダーゼと呼ばれる酵素複合体の1つのサブユニットである。本発明において使用されるNCF1は、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のNCF1であり、好ましくはヒトNCF1である。ヒトNCF1の代表的なcDNA配列(配列番号3)及びアミノ酸配列(配列番号4)も公知である。
Ensembleアクセッション番号
cDNA配列:ENST00000289473
アミノ酸配列:ENSP00000289473
【0041】
「細胞の単離」とは、天然に存在する状態から、目的とする細胞以外の細胞を除去する操作がなされていることを意味する。「単離された細胞」における目的とする細胞の純度は通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは実質的に100%である。
【0042】
「単核球」とは、白血球中の顆粒球以外の細胞、すなわち単球及びリンパ球のことをいう。単核球は、公知の分離剤(例えば、Ficoll等)を用いて末梢血、動脈血、脾臓、骨髄、臍帯血、腹水等から単離することができる。採取が容易であることから、本発明で用いる単核球は、好ましくは末梢血単核球である。
【0043】
各遺伝子の発現は、各遺伝子の翻訳産物(即ち、タンパク質)を特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的手法により、該翻訳産物量を定量することにより測定することができる。免疫学的手法としては、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色等を挙げることができる。
【0044】
抗体による抗原Xの「特異的な認識」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対するアフィニティが、抗原X以外の抗原に対するアフィニティよりも強いことを意味する。
【0045】
各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体は、該翻訳産物やその抗原性を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換え技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
【0046】
各遺伝子の発現は、また、各遺伝子の転写産物(即ち、各遺伝子をコードするmRNA)やcDNA(又はcRNA)を特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを用いて、自体公知の方法により測定することが出来る。該測定方法としては、例えば、cDNA(又はcRNA)アレイ、RT−PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション等を挙げることができる。
【0047】
CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号1で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
【0048】
CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
【0049】
IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号3で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
【0050】
IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号3で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
【0051】
NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号5で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
【0052】
NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
【0053】
核酸プローブ及び核酸プライマーは、特異的検出に支障を生じない範囲で付加的配列(検出対象のポリヌクレオチドと相補的でないヌクレオチド配列)を含んでいてもよい。
【0054】
また、核酸プローブ及び核酸プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、H、14C、32P、33P、35S等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、ビオチンなどで標識されていてもよい。あるいは、蛍光物質(例:FAM、VIC等)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
【0055】
核酸プローブ及び核酸プライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、また、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖の場合は二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA/RNAハイブリッドのいずれであってもよい。従って、本明細書においてあるヌクレオチド配列を有する核酸について記載する場合、特に断らない限り、該ヌクレオチド配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、該ヌクレオチド配列と相補的な配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、それらのハイブリッドである二本鎖ポリヌクレオチドをすべて包含する意味で用いられていると理解されるべきである。
【0056】
上記核酸プローブ及び核酸プライマーは、例えば、本明細書に記載されたヌクレオチド配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
【0057】
上述の各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体、及び各遺伝子の転写産物(即ち、各遺伝子をコードするmRNA)やcDNA(又はcRNA)を特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを、適切な支持体の上に結合して、それぞれ抗体アレイ、或いは核酸アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0058】
次に、工程(1)において測定した発現の変化と、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性とが相関付けられる。
【0059】
(a)単核球におけるCCL2の発現変動を測定する場合
後述の実施例に示すように、花粉アレルゲンによる、花粉症のワクチン療法に対する応答が低く、良好な治療効果が確認されなかった患者においては、末梢血単核球におけるCCL2の発現が治療後において顕著に亢進していた。一方、該ワクチン療法に対する応答が良好であり、良好な治療効果が確認された患者においては、末梢血単核球におけるCCL2の発現は抑制傾向にあり、ほとんど亢進は認められなかった。即ち、花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2発現の亢進と、当該ワクチン療法の有効性との間の負の相関に基づき、花粉アレルゲンによる、スギ花粉症に対するワクチン療法の有効性が予測できる。
【0060】
例えば、花粉アレルゲンによるワクチン療法により、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2の発現が顕著に亢進した場合には、対象者は花粉アレルゲンによるスギ花粉症に対するワクチン療法に対して応答が低く、当該ワクチン療法が無効である可能性が高いと判定することが出来る。該発現の亢進の程度が高ければ高いほど、当該ワクチン療法が無効である可能性がより高いと判定することができる。逆に、花粉アレルゲンによるワクチン療法を施した際、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2の発現の亢進が比較的緩やかである場合、該発現の亢進が認められない場合、或いは該発現が抑制された場合には、対象者は花粉アレルゲンによるスギ花粉症に対するワクチン療法に対する応答が良好であり、当該療法が有効である可能性が高いと判定することができる。
【0061】
(b)単核球におけるIGHA1の発現変動を測定する場合
後述の実施例に示すように、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法に対する応答が低く、良好な治療効果が確認されなかった患者においては、末梢血単核球におけるIGHA1の発現が治療後において顕著に亢進しているが、該ワクチン療法に対する応答が良好であり、良好な治療効果が確認された患者においては、末梢血単核球におけるIGHA1の発現は抑制傾向にあり、ほとんど亢進は認められなかった。即ち、花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるIGHA1発現の上昇と、当該ワクチン療法の有効性との間の負の相関に基づき、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性が予測できる。
【0062】
例えば、花粉アレルゲンによるワクチン療法により、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるIGHA1の発現が顕著に亢進した場合には、対象者は花粉アレルゲンによる花粉症のワクチン療法に対して応答が低く、当該ワクチン療法が無効である可能性が高いと判定することができる。該発現の亢進の程度が高ければ高いほど、当該ワクチン療法が無効である可能性がより高いと判定することができる。逆に、花粉アレルゲンによるワクチン療法を施した際、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるIGHA1の発現の亢進が比較的緩やかである場合、該発現の亢進が認められない場合、或いは該発現が抑制された場合には、対象者は花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法に対する応答が良好であり、当該療法が有効である可能性が高いと判定することができる。
【0063】
(c)単核球におけるNCF1の発現変動を測定する場合
後述の実施例に示すように、花粉アレルゲンによる、花粉症のワクチン療法に対する応答が低く、良好な治療効果が確認されなかった患者においては、末梢血単核球におけるNCF1の発現が治療後において顕著に亢進しているが、該ワクチン療法に対する応答が良好であり、良好な治療効果が確認された患者においては、末梢血単核球におけるNCF1の発現の亢進は緩やかであった。即ち、花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるNCF1発現の亢進と、当該ワクチン療法の有効性との間の負の相関に基づき、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性が予測できる。
【0064】
例えば、花粉アレルゲンによるワクチン療法により、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるNCF1の発現が顕著に亢進した場合には、対象者は花粉アレルゲンによるスギ花粉症に対するワクチン療法に対して応答が低く、当該ワクチン療法が無効である可能性が高いと判定することができる。該発現の亢進の程度が高ければ高いほど、当該ワクチン療法が無効である可能性がより高いと判定することができる。逆に、花粉アレルゲンによるワクチン療法を施した際、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるNCF1の発現の亢進が比較的緩やかである場合、該発現の亢進が認められない場合、或いは該発現が抑制された場合には、対象者は花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法に対する応答が良好であり、当該療法が有効である可能性が高いと判定することができる。
【0065】
尚、本発明の方法においては、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定すれば足りるが、これらのうちの2つ(CCL2及びIGHA1、CCL2及びNCF1、又はIGHA1及びNCF1)、又は3つ全ての発現の変化を測定し、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性と相関付けることにより、より精度の高い予測が可能となり得る。
【0066】
例えば、3つ全ての遺伝子の発現の変化を測定する場合、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法により、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2、IGHA1及びNCF1の発現が顕著に亢進した場合には、これらの3つの遺伝子のうちの1つ又は2つのみの発現が顕著に亢進した場合と比較して、対象者は花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法に対して応答が低く、当該ワクチン療法が無効である可能性がより高いと判定することが出来る。逆に、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法を施した際、単核球(好ましくは、末梢血単核球)におけるCCL2、IGHA1及びNCF1の発現の亢進が比較的緩やかである場合、該発現の亢進が認められない場合、或いは該発現が抑制された場合には、これらの3つの遺伝子のうちの1つ又は2つのみの発現の亢進が比較的緩やかである場合、該発現の亢進が認められない場合、或いは該発現が抑制された場合と比較して、対象者は花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法に対する応答が良好であり、当該療法が有効である可能性がより高いと判定することができる。
【0067】
2.診断薬
本発明は、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための診断薬であって、
(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、診断薬を提供するものである。本発明の診断薬を用いれば、上記本発明の方法により、容易に花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することが可能となる。
【0068】
本発明の診断薬は、(a)〜(c)からなる群から選択される2つ((a)及び(b)、(a)及び(c)、又は(b)及び(c))を含んでいてもよく、3つ全てを含んでいてもよい。
【0069】
(a)〜(c)の構成要素は、通常、水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で提供される。
【0070】
(a)〜(c)の構成要素を、適切な支持体の上に結合して、それぞれ抗体アレイ、或いは核酸アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0071】
本発明の診断薬は、CCL2、IGHA1又はNCF1の発現変動の測定方法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含む診断用キットとして提供されてもよい。
例えば、本発明の診断薬が、各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体を含むものであれば、免疫学的手法により各遺伝子の発現変動を測定することにより、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することができる。この場合、本発明の試薬は、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。
【0072】
本発明の試薬が、各遺伝子をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを含むものであれば、RT-PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション、cDNAアレイ等により各遺伝子の発現変動を測定することにより、花粉アレルゲンによる、スギ花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することができる。RT-PCRを測定に用いる場合には、本発明の試薬は、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)、逆転写酵素等をさらに含むことができる。ノザンブロッティングやcDNAアレイを測定に用いる場合には、本発明の試薬は、ブロッティング緩衝液、標識化試薬、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。in situ ハイブリダイゼーションを測定に用いる場合には、本発明の試薬は、標識化試薬、発色基質等をさらに含むことができる。
【0073】
更に、本発明の試薬は、単核球(好ましくは、末梢血単核球)を単離するための分離剤(例、Ficoll)を含むことができる。
【0074】
これらの各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器内に収容される。
【0075】
3.キット
本発明は、以下の(A)及び(B)を含むキット(即ち、組み合わせ物)を提供するものである:
(A)花粉アレルゲンを含む、花粉症に対するワクチン、並びに
(B)(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、
からなる群から選択される少なくとも1つ。
【0076】
本発明のキットは、花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法用キットであり得る。当該キットを使用することにより、ワクチン療法の有効性を上記本発明の方法に従いモニターしながら、花粉アレルゲンによる花粉症に対するワクチン療法を実施することが可能となる。
【0077】
本発明のキットは、構成要素(B)として、(a)〜(c)からなる群から選択される2つ((a)及び(b)、(a)及び(c)、又は(b)及び(c))を含んでいてもよく、3つ全てを含んでいてもよい。
【0078】
(a)〜(c)の構成要素は、通常、水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で提供される。
【0079】
構成要素(B)は、アレイとして提供されてもよい。即ち、(a)〜(c)の構成要素を、適切な支持体の上に結合して、それぞれ抗体アレイ、或いは核酸アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0080】
本発明のキットは、CCL2、IGHA1又はNCF1の発現変動の測定方法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含んでいてもよい。例えば、本発明のキットが、各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体を含むものであれば、免疫学的手法により各遺伝子の発現変動を測定することにより、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することができる。この場合、本発明のキットは、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。
【0081】
本発明のキットが、各遺伝子をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを含むものであれば、RT-PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション、cDNAアレイ等により各遺伝子の発現変動を測定することにより、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測することができる。RT-PCRを測定に用いる場合には、本発明のキットは、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)、逆転写酵素等をさらに含むことができる。ノザンブロッティングやcDNAアレイを測定に用いる場合には、本発明のキットは、ブロッティング緩衝液、標識化試薬、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。in situ ハイブリダイゼーションを測定に用いる場合には、本発明のキットは、標識化試薬、発色基質等をさらに含むことができる。
【0082】
更に、本発明の試薬は、単核球(好ましくは、末梢血単核球)を単離するための分離剤(例、Ficoll)を含むことができる。
【0083】
本発明のキットに含まれる各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器中に収容される。
【0084】
本発明の診断薬及び本発明のキットに係る各用語の定義及び態様は、「1.花粉アレルゲンによる、スギ花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法」の項で述べた通りである。
【0085】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0086】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0087】
ワクチンの概要
舌下免疫療法に使用するワクチンとしては、標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」2000JAU/ml及び200JAU/mlを用いた。2mLバイアルには標準化スギ花粉エキス原液10,000JAU/mLがそれぞれ0.4mL及び0.04ml含有される。これはスギ花粉エキスを50%グリセリン食塩液で稀釈した注射剤で、無色澄明の液であり、PHは4.0〜5.5、浸透圧比は約3である。
これらの製剤を、日本薬局方濃グリセリン、10%塩化ナトリウム注射液を使用し、注射用水で希釈することにより作製したグリセリン50%(W/W)、塩化ナトリウム5%(W/W)の溶液(以下、50%グリセリン食塩液)で適宜稀釈し、20JAU/ml, 200JAU/ml, 2000JAU/mlの舌下投与用製剤を作製した。プラセボには50%グリセリン食塩液を用いた。これを1週目-3週目の投与用として、1プッシュ0.2ml排出される容器に、4週以降の投与用として、1プッシュ1.0ml排出される容器に詰めた。尚、本剤の浸透圧は添加物により測定できないため、蒸留水にて10倍に希釈した液を用いて測定した結果を参考値として示したものである。
【0088】
臨床試験対象患者
対象疾患名はスギ花粉症であり、選択基準は年齢20-65歳の血清スギ特異的IgE抗体価が陽性(class 2以上)であること、および2年以上のスギ花粉症の既往があることとした。また、下記の条件は除外基準とし、1-9項目のいずれかの項目に該当する対象者は除外した。尚、後述の遺伝子発現解析は舌下エキス投与群20名を対象に行った。
1) 効果判定の支障となる程度の鼻疾患(鼻茸、鼻中隔弯曲症等)、感染性疾患(上気道炎、副鼻腔炎等)を合併している患者
2) 通年性アレルギー性鼻炎、薬物性鼻炎、非アレルギー性鼻炎の患者
3) 効果判定を妨げる可能性のある以下の薬剤を同意取得前2週間以内に使用した患者(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬、血管収縮薬等)
4) 免疫療法中の患者
5) 同意取得前6ヶ月以内に鼻症状治療のためにレーザー治療、手術を受けた患者
6) コントロールされていない気管支喘息患者
7) 有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者
8) 妊婦、妊娠している可能性のある患者、および授乳中の患者
9) その他、担当医が有効性、安全性の上から不適当と判断した患者
【0089】
投与方法
日本で標準化されたスギ花粉標準化エキス「トリイ」を用いて舌下免疫療法を行った。安全域である20JAU/ml 0.2mlより投与を開始し、最終的には2000JAU/mlの濃度のエキスを1.0ml舌下に滴下した。投与は、舌下吐き出し法を用いた。プラセボは50%グリセリン食塩液のみとした。1週目は1プッシュ0.2ml排出される容器に、20JAU/ml の濃度のスギ花粉エキス溶液が収容された製剤、2週目は1プッシュ0.2ml排出される容器に、200JAU/ml の濃度のスギ花粉エキス溶液が収容された製剤、3週目は1プッシュ0.2ml排出される容器に、2000JAU/ml の濃度のスギ花粉エキス溶液が収容された製剤、4週以降には1プッシュ1.0ml排出される容器に、2000JAU/mlの濃度のスギ花粉エキス溶液が収容された製剤をそれぞれ用いた。被験者は毎週自宅に送られてくる容器から決められた容量を自ら舌下に投与した。投与は12月に開始し、4月末までの5ヶ月間行った。投与スケジュールを以下の表にまとめた。
【0090】
【表1】

【0091】
治療評価方法
(1)主要評価項目(Primary endpoint):2009年の花粉飛散期に被験者自身が記載した症状日記における自覚症状に基づきsymptom-medication score(症状薬物スコアー)を算出した。
(2)副次的評価項目(Secondary endpoint):プロボケーション前後のパラメーターとして、血清中IgE抗体価、スギ花粉特異的減感作療法前後のスギ花粉特異的T細胞のクローンサイズを解析した。
【0092】
【表2】

【0093】
症状解析
データの集計および統計解析方法
症状データの収集は2009年2月1日から2009年4月30日まで(花粉飛散期)の自覚症状日記により行われた。それぞれの症状スコアは中央値によって群間比較された。統計解析としてITT解析を採用した。2009年の花粉飛散期中において花粉飛散量が最大であった日の被験者のsymptom-medication scoreを抽出した。結果を図1に示す。symptom-medication scoreの数値が低い(治療効果が高いと予測される)群をSLIT good responder群(6人)、数値の高い(治療効果が低いと予測される)群をSLIT poor responder群(6人)とした。
【0094】
解析用治験者末梢血単核球ストック保存
治験者末梢血50mlを採血し、LYMPHO SEPARATION MEDIUM (MP Biomedical. LLC)が10ml入っている50mlのグライナーチューブに移した。その後、比重分離法にて遠心分離(800xg 20min)を行い、単核球層を採取して50mlのファルコンチューブに移して遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。遠心分離後にアスピレーターで上澄みを除去した。上清除去後のペレット状の細胞に50mlのPBSを再度加えて洗浄し、遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。上清除去後のペレット状の細胞にPBSを1ml加えて、細胞数を計算した。その後、細胞凍結保存用セルバンカー液(日本全薬工業株式会社)に5x106/mlの濃度で懸濁した。懸濁した液を凍結保存用チューブに移し、即座に-80℃冷凍庫で保存した。
【0095】
スギ花粉特異的減感作療法前後のスギ特異的T細胞のクローンサイズ解析
-80℃で保存して置いた末梢血単核球を37℃のwater bathで3分間解インキューベートして解凍後、10mlのPBSが入った15ml Falcon Tubeに移し、遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。遠心分離後にアスピレーターで上澄みを除去した。上清除去後のペレット状の細胞に10mlのPBSを再度加えて洗浄し、遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。末梢血単核球に、MEMアミノ酸溶液(Wako)、ピルピン酸(Wako)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Wako) と最終濃度が10%になるように加えたFCS(invitrogen)入りのファイナルRPMI1640培地(Sigma)で細胞を5mlに懸濁した。その後、6穴プレートに移し、6時間培養して細胞を完全に解凍した。培養後、細胞を回収して遠心分離した(RT 15,000rpm 10min)。上清除去後のペレット状の細胞に1mlのファイナルRPMI1640培地を加え、細胞数を計算した。
【0096】
ELISPOT用96wellプレート(Millipore)は35%エタノールを40μl加えた後、直ぐにPBSで洗浄した。その後、抗IL-4抗体(IL-4-I;MABTEC)、 抗IL-5抗体(TRFK5; BioLegend)、 抗IL-13抗体(JES10-5A2; BioLegend)をそれぞれ100μl加え、4℃で一晩静置した。プレートをPBSで洗浄後、ファイナルRPMI1640培地で30分培養し、完全に解凍した末梢血単核球を5x105/wellになるように調整し、スギ花粉ペプチドCS712の存在下で24時間培養した。その後、プレートを0.05%濃度になるようにTween20を加えたPBS(PBS-tween)で3回洗浄した。洗浄後にビオチン化した各抗IL-4抗体(IL-4-II;MABTEC)、 抗IL-5抗体(JES1-5A10; BioLegend)、 抗IL-13抗体(Poy5020;BioLegend)をそれぞれ100μl加え、4℃で一晩静置した。その後、プレートをPBS-Tweenで3回洗浄し, 37℃に温めたBCIP/NBTを100μl加え、37℃のインキューベーターで発色させた。プレートを流水で洗い、反応を止めた。プレートを37℃のインキューベーターで乾燥させ、IL-4,IL-5,IL-13 spot数をカウントした。結果を下記の表に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
尚、表中、▼は発現の低下を、△は発現の亢進を示す。▼又は△の表示のないカラムは、発現変動が無いことを示す。また、「non-SLIT」は、プラセボ投与群を意味する。
【0099】
スギ花粉特異的IL5およびIL13産生細胞は、SLIT good responder 群でのみ投与前サンプルに比べて飛散前サンプルがdown regulate しているものが有意に多かった。尚、本実施例において「飛散前」とは、ワクチン投薬開始から1ヶ月後に受診した際に測定した値を意味する。
【0100】
細胞からtotal RNA抽出
-80℃で保存して置いた末梢血単核球を37℃のwater bathで3分間解インキューベートして解凍後、10mlのPBSが入った15ml Falcon Tubeに移し、遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。遠心分離後にアスピレーターで上澄みを除去した。上清除去後のペレット状の細胞に10mlのPBSを再度加えて洗浄し、遠心分離を行った(RT 15,000rpm 10min)。上清除去後のペレット状の細胞にTrizol 1mlを加えピペッティングを行い、細胞を溶解させた。クロロホルム 200mlを加え遠心分離(4℃ 15000rpm 15min)し、水層を抽出した。抽出した水層にエタノールを終濃度55%になるように加えた。
【0101】
溶液をピペッティングした後、RNeasy Kit (Qiagen)のRNeasyカラムに溶液を移し、遠心分離(RT 10000rpm 15sec)後、ろ液を捨てた。次にRW1バッファー700μlをカラムに加え遠心分離(RT 10000rpm 15sec)した。続いて、コレクションチューブを新しくして、RPEバッファー(エタノール添加済み)500μlを加え遠心分離(RT 10000rpm 15sec)後、ろ液を捨てた。再度RPEバッファー(エタノール添加済み)500μlを加え遠心分離(RT 10000rpm 2min) 後、ろ液を捨て再度、遠心分離(RT 10000rpm 1min)した。最後に1.5mlエッペンチューブにカラムを換えNuclease free water 30μlを加え、1分間室温で放置した後、遠心分離(RT 10000rpm 1min)を行いtotal RNAを抽出した。得られたtotal RNAはサンプルごと全て-80℃で保存した。
【0102】
濃度測定及びクオリティーチェック
抽出したtotal RNAの1μlを用いて、NanoDrop(NanoDrop Technologies Inc.)により吸光度測定を行い、濃度の算出及びクオリティーチェックを行った(OD260nm/OD280nmが1.8から2.0の間の値、OD260nm/OD230nmが1.5倍以上)。続いてtotal RNAの1μlを用いて、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)により、RNAのクオリティーチェックを行った(28S rRNA/ 18S rRNAが1.5以上、RIN(RNA Integrity Number)値が7.0以上)。クオリティーが低いものは、細胞からの再抽出またはエタノール沈殿による再精製を行った。
【0103】
エタノール沈殿による再精製
抽出したtotal RNAに全量が50μlになるようにNuclease free Waterを加え、3M 酢酸ナトリウム(Applied Biosystems) 5μlと100%エタノール(Wako) 125μlを加えピペッティング後、-80℃ 30min放置した。続いて遠心分離(4℃ 15000rpm 30min)を行い、上清を取り除き、70%エタノール180μlを加え、さらに遠心分離(4℃ 15000rpm 30min)を行い、上清を取り除き、室温で放置して乾燥させた。最後にNuclease free water 30μlを加えて、再度濃度測定及びクオリティーチェックを行い、精製できたことを確認した。
【0104】
マイクロアレイの実験
ラベル化cRNAの合成
末梢血由来total RNAをQuick Amp Labeling Kit(Agilent Technologies)を用いて、各々のラベル化cRNAを調製した。詳細は以下の1)〜4)のとおりである。
【0105】
1)cDNAの合成
1-1)Spike-Mixの調製
キット付属のSpike-Mixをヒートブロックでインキュベーション(37℃ 5min)し、ボルテックス(10sce)、遠心分離(1000rpm 10sec)を行った。Spike-Mix 2μlにDilution Buffer 38μlを加え、ボルテックス(10sec)、遠心分離(1000rpm 10sec)を行い、Spike-Mix希釈溶液1を調製した。2μl のSpike-Mix希釈溶液1にDilution Buffer 8μlを加え、ボルテックス(10sec)、遠心分離(1000rpm 10sec)を行い、Spike-Mix希釈溶液2を調製した。4μl のSpike-Mix希釈溶液2にDilution Buffer 16μlを加え、ボルテックス(10sec)、遠心分離(1000rpm 10sec)を行い、Spike-Mix希釈溶液3を調製した。10μl のSpike-Mix希釈溶液3にDilution Buffer 30μlを加え、ボルテックス(10sec)、遠心分離(1000rpm 10sec)を行い、Spike-Mix希釈溶液4を調製した。
【0106】
1-2)cDNAの合成
1サンプル当たりtotal RNA250ng、Spike-Mix希釈溶液1μl、T7Promoter Primer 0.6μl、Nuclease free waterを全量が5.75μlになるように加え反応溶液を調製した。ヒートブロックでインキュベーション(65℃ 10min)後、氷上で5min放置した。続いて1サンプル当たり5×First Strand Buffer 2μl、0.1M DTT 1μl、10mM dNTP mix 0.5、MMLV-RT 0.5μl、RNase Inhibitor 0.25μlを加え、cDNAマスターミックスを調製した。ピペッティング後、各反応溶液にcDNAマスターミックスを4.25μlずつ加え(total volume 10μl)、ウォーターバスでインキュベーション(40℃ 2hr)。反応終了後、反応溶液をヒートブロックでインキュベーション(65℃ 15min)し、氷上で5min放置した。
【0107】
2)cRNAの増幅及びラベル化
1サンプル当たりNuclease free water 7.65μl、4×Transcription Buffer 10μl、0.1M DTT 3μl、NTP mix 4μl、50%PEG 3.2μl、RNase Inhibitor 0.25μl、Inorganic Pyrophosphatase 0.3μl、T7 RNA Polymerase 0.4μl、Cyanine3-CTP 1.2μlを加え、Cy3 Transcription mixを調製した。ピペッティングでよく混合させた後、Cy3 Transcription mixを各反応溶液に30μlずつ加えて、ウォーターバスでインキュベーションした(遮光 40℃ 2hr)。反応終了後、氷上で放置した。
【0108】
3)ラベル化cRNAの精製
ラベル化cRNAの精製は、RNAeasy Kit (Qiagen)を用いて行った。詳細は以下のとおりである。
各反応溶液にNuclease free water 60μl、RLTバッファー 350μl、100%エタノール250μlを加えた。ピペッティングでよく混合した後、RNeasyカラムに反応溶液を500μl程度移し、遠心分離(4℃13000rpm 30sec)を行い、ろ液は捨てた。この作業を繰り返し、サンプルごとに溶液全量をRNeasyカラムに移した。各RNeasyカラムを新しいコレクションチューブに移し、RPEバッファー 500μlをカラムに加え、遠心分離(4℃ 13000rpm 1min)を行い、ろ液は捨てた。再度RPEバッファー 500μlをカラムに加え、遠心分離(4℃ 13000rpm 1min)を行い、ろ液は捨てた。各RNeasyカラムを新しいコレクションチューブに移し、遠心分離(4℃ 13000rpm 1min)を行った。各RNeasyカラムを1.5mlエッペンチューブに移し、Nuclease free water 30μl加えて室温で1分間遮光放置した後、遠心分離(4℃ 13000rpm 1min)を行い、カラムを捨て、ろ液を-80℃で遮光して保存した。
【0109】
4)ラベル化cRNAの濃度測定とクオリティーの確認
3)で得られたラベル化cRNA 1μlを用いて、NanoDrop(NanoDrop Technologies Inc.)により吸光度測定を行い、濃度とラベル化cRNA(Cy3)の取り込み率の算出を行った(Cy3取り込み効率は9pmol/μl以上が望ましい)。続いて、total RNAの1μlを用いて、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)によりラベル化cRNAのクオリティーチェックを行った。
【0110】
ハイブリダイゼーション
各ラベル化cRNAを氷上で溶解した後、遠心分離(1000rpm 10sec)を行った。1.5ml low-bind Nuclease free tubeにラベル化cRNA1.65μg、10×Blocking Agent 11μl、25×Fragmentation Buffer 2.2μl、Nuclease free waterを最終液量55μlになるように加え、ボルテックス(10sec)、遠心分離(1000rpm 10sec) 後、ヒートブロックでインキュベーション(遮光 60℃ 30min)し、氷上で1min放置。遠心分離(1000rpm 10sec)後、2×GE Hybridization Buffer HI-RPM 55μlを加えピペッティング、遠心分離(4℃ 13000rpm 1min)後、氷上で放置し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。
【0111】
ハイブリダイゼーションチャンバー(Agilent Technologies)を用意。チャンバーベースの上に4×44k ガスケットスライドをセットし、ハイブリダイゼーション溶液 100μlをガスケットのウェルにアプライした後、Whole Human Genome 4×44k マイクロアレイスライドをガスケットスライドの上に載せ、チャンバーカバーをマイクロアレイスライドの上に載せ、クランプアッセンブリでチャンバーを固定した。チャンバーを回転させハイブリ溶液がガスケットスライド全面に行きわたることを確認(動かない気泡がある場合はチャンバーを振って気泡を移動させた)。チャンバーをハイブリダイゼイションオーブン(Agilent Technologies)にセットし、ハイブリダイゼーションを行った(65℃ 10rpm 17hr)。
【0112】
反応終了後、ガスケット解体用Agilent Gene Expression Wash Buffer1中でガスケットとマイクロアレイスライドを取り外し、新しいAgilent Gene Expression Wash Buffer1の中で室温1分間洗浄(洗浄用液の回転数は中程度)し、続いて37℃でインキュベーションしてあるAgilent Gene Expression Wash Buffer2の中で1分間洗浄(洗浄用液の回転数は中程度)した後、溶液からゆっくりマイクロアレイスライドを取り出し、遮光スライドケースに入れて乾燥保存。
【0113】
測定及びクオリティーチェックと数値化
マイクロアレイスライドをスライドホルダーに入れ、Agilent DNA microarray Scanner(Agilent Technologies)にセットし測定を行う。測定した画像データはFeature extraction software(Agilent Technologies)を用いて、クオリティーチェックと数値化を行った。
【0114】
マクロアレイデータ解析
上記で得られたマイクロアレイ数値データを基に解析を行った。SLIT good responder投与前サンプル群(n=6)と飛散前サンプル群(n=6)の2群間の比較、及びSLIT poor responder投与前サンプル群(n=6)と飛散前サンプル群(n=6) の2群間の比較を、それぞれ行った。データノーマライズ方法は、各サンプルで75%tileを行った。プローブ抽出条件は、比較サンプルにおいて全てのサンプルでraw dataの値が100以下の低シグナル値のプローブを除去し、Fold change(median)解析を用い、2群間で発現に2倍以上差があるプローブを抽出した。SLIT good responderにおける変動プローブとして67プローブが抽出された。SLIT poor responderにおける変動プローブとして135プローブが抽出された。
【0115】
Real Time PCRの実験
cDNA templateの調製
cDNA templateの調製の詳細は以下の5)〜7)のとおりである。
5)cDNAの合成
末梢血単核球由来total RNAサンプル(マイクロアレイの実験に用いたものと同様のサンプル)を濃度100ng/μlになるように小分け希釈分注をし、0.5ml PCRチューブに100ng/μl total RNA抽出スギ花粉サンプル10μl、Nuclease free water 6μl、High Capacity RNA-to-cDNA Master Mix(Applied biosystems) 4μlを加え、ピペッティング後、i-Cycler (Bio-Rad Laboratories)でPCRを行った。遠心分離(1000rpm 10sec)後、各サンプルにNuclease free water 80μlを加え、全量を100μlにしてcDNAサンプルを合成した。PCRプログラムは以下の通り。
25℃、5min → 42℃、30min → 85℃、5min → 4℃、∞
【0116】
6)Standard curveの調製
上記で合成したNo.13 cDNAサンプル(原液)及び10倍希釈した溶液を調製し、5点の希釈系列300μlを以下のように調製した。No.13 cDNAサンプル(原液) 60μl、Nuclease free water 240μlを加え希釈系列溶液1を調製。No.13 cDNAサンプル(原液) 15μl、Nuclease free water 285μlを加え希釈系列溶液2を調製した。No.13 cDNAサンプル(原液) 3.75μl、Nuclease free water 296.25μlを加え希釈系列溶液3を調製した。No.13 cDNAサンプル(10倍希釈) 9.38μl、 Nuclease free water 290.62μlを加え希釈系列溶液4を調製した。No.13 cDNAサンプル(10倍希釈 ) 2.34μl、Nuclease free water 297.66μlを加え希釈系列溶液5を調製した。
【0117】
7)cDNA templateの希釈分注
各cDNAサンプル(原液)15μlとNuclease free water 135μl加え、各スギ花粉cDNAサンプル10倍希釈溶液150μlを調製した。96PCRプレートに5点の希釈系列溶液、NTC (Nuclease free water)をアプライした。上記で調製したcDNAサンプル10倍希釈溶液を150μlずつ残りのウェルにアプライして、cDNA templateを作成した。cDNA templateの保存は-80℃で行った。
【0118】
Primer mixの調製
96穴 PCRプレートに1ウェル当たり、ターゲット遺伝子のプライマー(濃度100pmol/μl Forward Primer及びReverse Primer) それぞれ0.04μl、Universal probe Library (Roche) 0.2μl、TaqMan(R) Fast Universal PCR Master Mix(Applied biosystems) 10μl、Nuclease free water 0.72μlを加え、遠心(1000rpm 20sec)後、氷上で放置した。
【0119】
Real Time PCR測定
作成したPrimer mixに、cDNA template 9μlを12連ピペットで撹拌、分注し、プレートシールを貼り、遠心分離(1000rpm 20sec)した後、7900HT Fast Real Time PCR System(Applied biosystems)にセットして測定を行った。
【0120】
Real Time PCRデータ解析
上記で得られた測定結果を用いて解析を行った。比較サンプルはSLIT good responder投与前サンプル群と飛散前サンプル群の2群比較、及びSLIT poor responder投与前サンプル群と飛散前サンプル群の2群間の比較。ノーマライズ方法は、実験ごとに測定しているNo.13スギ花粉cDNAサンプルのStandard curveを基にサイクル数を算出し、18Sでノーマライズをしたものを解析データとした。尚、サイクル数の算出にはSDS Software 2.3(Applied biosystems)を用いた。解析方法は、比較サンプルにおいて全てFold change(median)解析を用い、2群間で発現に1.5倍以上差がある遺伝子を抽出した。SLIT good responderにおける変動遺伝子として、16遺伝子が抽出された。SLIT poor responderにおける変動遺伝子として、20遺伝子が抽出された。抽出された遺伝子を以下の表に示す(遺伝子リストの表記はGene Symbol)。
【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
マイクロアレイのデータとReal Time PCRデータ比較解析
SLIT good responder投与前サンプル群と飛散前サンプル群、及びSLIT poor responder投与前サンプル群と飛散前サンプル群で、マイクロアレイのデータとReal Time PCRデータが相関する遺伝子群を抽出した。抽出方法は、遺伝子ごとに上記2群間の無相関検定を行い、p-value<0.05以下の遺伝子を抽出。これらの遺伝子は実験系の異なる手法でも同様の結果が得られたことから、投与前後で変動が確実な遺伝子であると考えられた。抽出された遺伝子を以下の表に示す(遺伝子リストの表記はGene Symbol)。
【0124】
【表6】

【0125】
SLIT good responder群とSLIT poor responder群の比較解析
上記の抽出遺伝子において、SLIT good responder群とSLIT poor responder群で1.5倍以上の変動があるものとして、CCL2、IGHA1及びNCF1が抽出された(表7)。これらの遺伝子は、スギ花粉エキス投与による効果の有無を判別できる有効なマーカーであると考えられた。
【0126】
【表7】

【0127】
スギ花粉特異的減感作療法前、治療中のスギ特異的IL5,IL13産生細胞のクローンサイズ解析と似た挙動を示す遺伝子の解析
スギ花粉特異的IL5およびIL13産生細胞は、SLIT good responder 群でのみ投与前サンプルに比べて飛散前サンプルがdown regulate しているものが有意に多いことから、マイクロアレイデータとReal Time PCRデータを用いて、それぞれスギ花粉特異的IL5およびIL13産生細胞と似た挙動を示す遺伝子を抽出した。抽出方法は、SLIT good responder 群で投与前のサンプルに比べて飛散前でdown regulateしているサンプルが5検体中3検体以上、かつSLIT poor responder 群で投与前のサンプルに比べて飛散前でdown regulateしているサンプルが5検体中2検体以下を満たす遺伝子を抽出した。マイクロアレイの結果とスギ花粉特異的IL5およびIL13産生細胞と似た挙動を示す遺伝子として、4遺伝子が抽出された。また、Real Time PCR結果とスギ花粉特異的IL5およびIL13産生細胞と似た挙動を示す遺伝子として、8遺伝子が抽出された(表8)。
特に、CCL2とIGHA1についてはマイクロアレイ、Real Time PCRの双方で抽出されており、さらに上記の解析においても抽出されている遺伝子であることから、スギ花粉エキス投与による効果の有無を判別できる特に有効なマーカーであると考えられた。抽出された遺伝子は以下に載せた(遺伝子リストの表記はGene Symbol)。
【0128】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を容易に予測することが可能となる。本発明の方法を用いれば、治療の有効性を確認しながら、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法を実施することが可能となる。その結果、例えば、当該療法が有効な患者に対しては、その療法を続行し、効果が限定的な患者に対しては治療方針を変更する等、治療方針の選択判断が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための方法であって、
(1)対象者への花粉アレルゲンによるワクチン療法の適用による、当該対象者から単離された単核球における、CCL2、IGHA1及びNCF1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の変化を測定すること;及び
(2)(1)において測定した発現の変化と、花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性とを相関付けること
を含む、方法。
【請求項2】
花粉がスギ花粉である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
花粉アレルゲンがCryJ1又はCryJ2を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ワクチン療法が、花粉アレルゲンを口腔粘膜投与することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
花粉アレルゲンによる、花粉症に対するワクチン療法の有効性を予測するための診断薬であって、
(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、診断薬。
【請求項6】
花粉がスギ花粉である、請求項5記載の診断薬。
【請求項7】
以下の(A)及び(B)を含むキット:
(A)花粉アレルゲンを含む、花粉症に対するワクチン、及び
(B)(a)CCL2をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はCCL2を特異的に認識し得る抗体、
(b)IGHA1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はIGHA1を特異的に認識し得る抗体、及び
(c)NCF1をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー、又はNCF1を特異的に認識し得る抗体、
からなる群から選択される少なくとも1つ。
【請求項8】
花粉がスギ花粉である、請求項7記載のキット。
【請求項9】
花粉アレルゲンがCryJ1又はCryJ2を含む、請求項8記載のキット。
【請求項10】
ワクチンが、口腔粘膜投与用製剤である、請求項7記載のキット。
【請求項11】
構成要件(B)がアレイとして提供される、請求項7記載のキット。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−210167(P2012−210167A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76653(P2011−76653)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(596175810)公益財団法人かずさDNA研究所 (40)
【Fターム(参考)】