説明

花粉症抑制剤

【課題】長期的に安全に摂取できる花粉症抑制剤を提供する。
【解決手段】 ラクトフェリンを含有する花粉症抑制剤を提供する。本発明の花粉症抑制剤は、特にヒノキによるアレルギーに効果が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉によるアレルギーを抑制する剤、特にヒノキの花粉によるアレルギーの抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花粉症は、目のかゆみ、くしゃみ・鼻水などの不快な症状を長期間継続的に引き起こすものであり、その有病率は年々増加傾向にある。花粉症を軽減するために、種々の薬剤が開発されているが、これらの薬剤は眠気や口の渇きなどといった副作用を有していたり、長期摂取を避けるべきであったりするなど、依然として使用上の課題を有しているものが多い。そのため、長期的に安全に摂取でき、ヒトにおいて花粉特異的IgE抗体の産生を抑制し花粉症抑制効果を有するものが望まれていた。
【0003】
近年、さまざまな食品由来物質による抗アレルギー作用が報告されている。なかでも、乳由来成分は長期的に安全に摂取可能な食品として研究が行われている。特許文献1では、ラクトフェリンまたはその加水分解物による免疫調整作用組成物について、特許文献2では乳清タンパク質分離物加水分解物等からなるアレルゲン特異的IgE産生抑制組成物等が報告されている。これらの研究では、マウスにおける卵白特異的IgE抗体産生が抑制されたことを確認しているが、ヒトでの花粉特異的IgE抗体生産抑制の効果については検証されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO01/051079
【特許文献2】特開2005−350452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、花粉症抑制剤、特にヒノキ花粉症に対して高い効果を示すヒノキアレルギー抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ラクトフェリンの摂取が、長期的に安全に花粉症を抑制し、特に顕著かつ特異的にヒノキアレルギーに対し抑制効果を示すことを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って本発明は、下記花粉症抑制剤を提供するものである。
〔1〕.ラクトフェリンを有効成分として含有する花粉症抑制剤
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特にヒノキアレルギー抑制に高い効果を有する花粉症抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の花粉症抑制剤は、ラクトフェリンを有効成分として含有するものであり、ヒノキ特異的IgE抗体を効果的に抑制しアレルギー症状を減少させる効果を有する。
【0010】
ラクトフェリンは、市販のラクトフェリン、哺乳類(例えば人、牛、羊、山羊、馬等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等から、常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離したラクトフェリン、植物(トマト、イネ、タバコ)から生産されたラクトフェリン、遺伝子組み換えによって得られたラクトフェリンが挙げられる。ラクトフェリンは、市販品を使用してもよいし、公知の方法により調製して使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、ラクトフェリンとしては、効果の高さ、入手しやすさから、牛由来のものが好ましい。
【0011】
ラクトフェリンの花粉症抑制在中の配合量は、その剤形、投与形態、投与対象によって適宜選定されるが、経口摂取で成人一人あたり好ましくは150mg/日以上、より好ましくは300〜450mg/日の範囲である。
【0012】
本発明の花粉症抑制剤には、ラクトフェリン以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。任意成分としては、例えば、油性成分、滑沢剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、ラクトフェリン以外の薬効成分、色素、香料等を挙げることができる。具体的には、下記成分をあげることができる。
【0013】
油性成分としては、各種脂肪酸エステル、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。
賦形剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール等の合成高分子、ゼラチン、アラビアゴム末、プルラン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キタンサンガム等の多糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、果糖、ブドウ糖、白糖、トレハロース、パラチノース、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノース、粉末還元麦芽糖水飴、マルチトール等の糖類および糖アルコール類、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、水酸化アルミニウムゲル等の無機賦形剤等が挙げられる。
崩壊剤としては、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール等の合成高分子、ゼラチン、アラビアゴム末、プルラン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キタンサンガム等の多糖類が挙げられる。賦型剤としては、乳糖、果糖、ブドウ糖、白糖、トレハロース、パラチノース、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノース、粉末還元麦芽糖水飴、マルチトール等の糖類および糖アルコール類等が挙げられる。
その他の成分として、カロチノイド系物質(α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン等)、コエンザイムQ10、ビタミンE、トコトリエノール、DHA、EPA、プロバイオティクス、プレバイオティクス等が挙げられる。
【0014】
本発明の花粉症抑制剤の剤型としては特に限定されず、液状、粉末、顆粒、タブレット、カプセル等が挙げられる。本発明の花粉症抑制剤としては、ラクトフェリンが腸溶化されていることが好ましい。腸溶剤とするためには、低pH領域、すなわち胃酸で溶けず、中性領域で溶ける剤型であればよく、錠剤であればシェラック、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ビール酵母細胞壁(例えば商品名イーストラップ等)、タピオカデンプン、ゼラチン、ペクチン等、通常用いられる腸溶成分にてコーティングする手法で腸溶剤とすればよい。なお、腸溶剤であるか否かは第14改正日本薬局方 崩壊試験法による。
【0015】
本発明の花粉症抑制剤の製造方法は特に限定されるものではなく、その剤型に合わせて適宜選択されるが、ラクトフェリン及び任意成分を混合した後、この混合物を圧縮成型する方法によってタブレットを調製する方法が挙げられる。さらに、シェラック等の腸溶性成分を用いて、このタブレットをコーティングする方法が好ましい。
【0016】
本発明の花粉症抑制剤の摂取方法は剤型によっても異なり、特に限定されないが、タブレットの場合は水等と一緒に服用することが好ましい。また食事の前、後、食間いずれにおいても関係なく摂取可能である。
【0017】
本発明の花粉症抑制剤は、医薬品、医薬部外品、特定保健用食品、食品等としても好適である。
【0018】
[調製例1]
ラクトフェリンは新鮮なウシ・ホエーの硫安沈殿物を水に溶解して、セファデックスG−25のカラムを通し、脱塩を行った。脱塩蛋白をpH7.3のリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、抗ウシ・ラクトフェリンモノクローナル抗体アフィニティカラムに通し、さらにリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。その後、0.15Mの食塩を含むpH3.7の0.25M酢酸ナトリウム緩衝液でカラムよりウシ・ラクトフェリンを溶出し、凍結乾燥によりラクトフェリンを得た。
【0019】
[比較組成例]
乳糖204.2mg、結晶セルロース83.8mg、カルボキシメチルセルロース−Ca6mg、及びショ糖脂肪酸エステル3mgを定法どおり打錠したタブレットに、シェラックを用いて腸溶性の皮膜をコーティングし腸溶錠とした。
[実施組成例]
ラクトフェリン100mg、乳糖110mg、結晶セルロース80mg、カルボキシメチルセルロース−Ca5mg、及びショ糖脂肪酸エステル5mgを定法どおり打錠したタブレットに、シェラックを用いて腸溶性の皮膜をコーティングし腸溶錠とした。
【0020】
[試験例]
上記実施組成例、比較組成例、の腸溶製剤を用い、下記の試験法によりヒノキアレルギー抑制効果を評価した。試験は2009年2月〜4月の期間に神奈川県内で実施した。
成人男女25名に対し、摂取前にスギ花粉とヒノキ花粉に対する血中の特異的IgEを測定し、スギ花粉に対する特異的IgEの抗体価が1以上に該当したものを被験者とした。被験者25名をヒノキ花粉に対する抗体価に有意差が無いように比較組成例摂取群13名と実施組成例摂取群12名の2群に振り分け、1日あたり3粒をかまずに水などとともに8週間摂取させた。試験期間中は生活習慣(食生活、運動等)を変えず、試験期間中の花粉症改善の医薬品をなるべく服用しないこととした。
【0021】
図1は、被験者の血中ヒノキ特異的IgE抗体の変化量の平均値を表したものであり、図2は、被験者の血中スギ特異的IgE抗体の変化量の平均値を表したものである。
図1、2に示した結果によれば、摂取4週、8週後において、スギ特異的IgE値には比較組成例摂取群と実施組成例摂取群とでの違いが少ないのに対し、ヒノキに対する特異的IgEに対しては、実施例摂取群において顕著に特異的IgEの増加が抑制されていることが確認された。
【0022】
図3は、被験者の自覚症状の評価(平均値)を表したものである。自覚症状の評価は、鼻炎の状態(鼻水)を「鼻アレルギー診療ガイドライン」(ライフサイエンス社奥田稔他2002年改定第4版)の鼻炎及び眼のアレルギー症状の5段階評価基準に従い自己評価を行った。花粉症改善の医薬品を服用、使用した場合は、使用医薬品を同ガイドラインのMedication scoreにて点数化し、自己評価に加算したSympton medication scoreを算出し、平均値を示した。花粉の飛散量については環境省花粉観測システムのデータ中の神奈川県自然環境保全センターのデータを用いた。
図3によれば、比較例摂取群に対し、実施例摂取群の鼻炎症状(鼻水)に対する自覚症状は有意な抑制が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試験例におけるヒノキ花粉に対する特異的IgE値の変化を示すグラフである。
【図2】試験例におけるスギ花粉に対する特異的IgE値の変化を示すグラフである。
【図3】試験例における2009年2月9日から4月5日の間の、花粉飛散量(個/日)と、被験者の鼻炎自覚症状(鼻水)における症状を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリンを含有する花粉症抑制剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105653(P2011−105653A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262940(P2009−262940)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】