説明

芳香シート

【課題】 本発明は、個々の人間の必要に応じて香りを効率よく放たせることが可能な芳香シートを提供する。
【解決手段】 帯状の本体シート2の一方面側に粘着層3を設け、該本体シート2の他方面側に複数の突起4を整列形成しており、該突起4は、内部に空洞部6を形成するとともに空洞部6に芳香物質8を収納してなり、該空洞部6は、連通孔7を通じて外部に連通している芳香シート1を、製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香シートに関する。
【背景技術】
【0002】
香りには、精神安定や集中力向上等といった人間に対する様々な効能が期待される。ところが、生活環境や時々の状況によって期待される香りの効能には違いがあり、香りの効能を必要に応じて発揮させることが期待される。
【0003】
そこで、芳香物質を収納した袋状の層を表示部に積層してなる香りシートが提案されている(特許文献1)。この香りシートは、表示部の内容と芳香物質の内容を適宜選択することで、使用者の時々の状況にあわせた香りを放たせようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−24505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ状況下にいる人間同士の間でも特に香りを効率的に放ってほしい時には個人差がある。この点、特許文献1の香りシートは、特に効果的に香りを放ってほしい時に、意図的に、香りを効果的に放つものではない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、個々の人間が必要に応じて香りを効率よく放たせることを可能にする芳香シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(1)帯状の本体シートの一方面側に粘着層を設け、該本体シートの他方面側に複数の突起を整列形成しており、該突起は、内部に空洞部を形成するとともに空洞部に芳香物質を収納してなり、該空洞部は、連通孔を通じて外部に連通している、ことを特徴とする芳香シート、
(2)突起に加えられる荷重に応じて該突起を圧縮状態に弾性変形可能に構成してなる、上記(1)に記載の芳香シート、
(3)突起は、本体シートの長手方向に、1列に整列形成されている、上記(1)または(2)に記載の芳香シート、
(4)連通孔は、突起の基端部に形成されている上記(1)から(3)のいずれかに記載の芳香シート、
(5)突起は、側面部と該側面部に連なる前面部を有しており、突起の前面部は、該前面部の周縁部よりも中心部のほうが肉厚になるように形成されている、上記(1)から(4)のいずれかに記載の芳香シート、
(6)芳香物質は、芳香性組成物を含むコア粒子を被包してなる粒状体である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の芳香シート、
(7)突起を表面に向けつつ筆記具の握り部に巻き付けて粘着層にて該筆記具に固定されて使用されるものである、上記(1)から(6)のいずれかに記載の芳香シート、を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、個々の人間が必要に応じて香りを効率よく利用することが可能になる。また、本発明は、様々な被着物に貼り付けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の芳香シートの実施例を説明するための概略平面図である。
【図2】(A)図1のA−A線縦断面を模式的に示す概略断面模式図である。(B)図1の領域Xの部分を拡大した状態を模式的に説明するための、一部を破断させた概略拡大図である。
【図3】本発明の芳香シートの他の例において、図1のA−A線縦断面と同様の断面の状態を模式的に説明するための概略断面模式図である。
【図4】(A)芳香シートを筆記具に取り付けた状態を模式的に説明するため概略模式図である。(B)図4(A)のB−B線縦断面を模式的に示す概略断面模式図である。
【図5】(A)本発明の芳香シートの他の実施例を説明するための概略平面図である。(B)他の実施例の芳香シートを筆記具に取り付けた状態を模式的に説明するため概略模式図である。
【図6】(A)突起形成材を製造するためのエンボス型の第2型を模式的に示す平面模式図である。(B)図6(A)のC−C線縦断面を模式的に示す概略断面模式図である。(C)エンボス型を用いて突起形成材を製造する工程を模式的に示す工程断面模式図である。(D)エンボス型を用いて突起形成材を製造する工程を模式的に示す工程断面模式図である。(E)突起形成材の例を部分的に示す平面模式図である。(F)図6(E)のD−D線縦断面を模式的に示す概略断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(芳香シート1)
本発明の芳香シート1は、図1の例では、本体部の一方面に粘着部を形成してなるテープをなしている。具体的に、芳香シート1は、その本体部をなす本体シート2の一方面側に粘着層3を設けている。そして、本体シート2の他方面側に突起4が形成されている。
【0011】
(本体シート2)
本体シート2は、平面視略帯状に形成されており、その片面に複数の突起4を整列形成している。
【0012】
本体シート2の幅(W)(mm)は、芳香シート1の幅に相当する。本体シート2の幅は、芳香シート1の使用形態に応じて適宜選択される。たとえば、芳香シート1が、筆記具の握り部に巻きつけ固定されて用いられる場合には、本体シート2の幅(W)は、4mm以上20mm以下程度であることが好ましい。
【0013】
本体シート2の長手方向の長さは、芳香シート1の長手方向の長さに相当しており、適宜選択される。
【0014】
(突起4)
突起4は、本体シート2の片面に形成される。突起4は、粘着層3の非積層面側に、芳香シート1の長手方向に沿って間隔をあけて1列に整列している。
【0015】
突起4は、その突起4に加えられる荷重に応じて圧縮状態に弾性変形可能に構成される。突起4に加えられる荷重の大きさは、人間の指等による押圧荷重程度の大きさである。また、突起4は、その突起4の外部から加えられる熱を空洞部6に向けて伝導可能に構成される。すなわち、突起4は、弾性と熱伝導性を兼ね備えるものである。
【0016】
突起4の材質は、弾性と熱伝導性を確保できるものであれば、特に限定されない。突起4の材質としては、樹脂材料を好ましく採用することができる。突起4を形成するための樹脂材料としては、ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリウレタンなどのウレタン系樹脂などを好ましく用いることができるほか、オレフィンとブタジエンの共重合体や、ポリオレフィンにゴム成分を添加したエラストマーなどを好ましく用いることができる。ゴム成分としては、たとえば、天然ゴムや、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムといったジエン系合成ゴムなどを挙げることができる。
【0017】
隣り合う2つの突起4,4の間隔(T)は一定であることが好ましく、具体的に4mm以上40mm以下の範囲にあることが好ましい。Tの値が4mm以上であることで、使用者が1本の指で一度に複数の突起4に触れてしまって個々の突起4に触れられなくなる虞が抑制され、Tの値が40mm以下であることで、芳香シート1における空洞部6の形成箇所が少なくなりすぎる虞や突起4,4の間の部分にのみ指が触れてしまう虞を抑制できる。なお、2つの突起4,4の間隔とは、それらの中心間距離を示すものとする。
【0018】
突起4の大きさについて、突起4の外径(S)が1mm以上20mm以下であることが好ましい。突起4の外径Sが、このような範囲にあることで、使用者の掌や指等からの感覚(触覚)で個々の突起4を認識させることが容易となる。
【0019】
突起4の突出高さ(H)は、1mm以上20mm以下であることが好ましい。突起4の突出高さHが、この範囲にあることで、突起4の外径Sが上記の好ましい範囲にあるときと同様に、使用者の触覚で個々の突起4を認識させることが容易となる。
【0020】
突起4には、内部に空洞部6が形成されている。空洞部6は、連通孔7にて外部と連通されている。空洞部6の大きさは、後述の芳香物質8を収納可能な程度の大きさがあればよく、特に限定されない。
【0021】
連通孔7の形成位置は、特に限定されるものではなく、突起4の中心に形成されてよいが(図3の連通孔7a)、連通孔7は、突起4の平面視上、突起4の中心部よりも、より突起4の周縁部(基端)に近い位置に形成されているものである(図3の連通孔7b)ことが好ましく、突起4の基端17に形成されていることが更に好ましい(図2(A))。連通孔7が突起4の周縁部近傍に形成されると、突起4の中央部に形成された場合に比べて、人間が指で芳香シート1の突起4に触れた場合に、指で連通孔7が塞がれてしまう虞を効果的に抑制できる。
【0022】
連通孔7の形成数は、特に限定されるものではないが(図1、図5)、1個以上20個以下であることが好ましく、2個以上10個以下であることがより好ましい。連通孔7が少なくとも1つ存在することで、空洞部6に収納された芳香物質8から芳香成分を確実に外部に放散させることができ、連通孔7の形成数が20個以下であると、空洞部6に収納された芳香物質8から芳香成分が短時間のうちに外部に過剰に放散されてしまう虞を効果的に抑制できる。なお、図1の例では、1個の突起4に、連通孔7が4つ形成されており、図5(A)の例では、連通孔7が1つ形成されている。
【0023】
連通孔7の孔径(直径)は、特に限定されるものではないが、直径が0.03mm以上5mm以下であることが好ましい。連通孔7の直径が0.03mm以上であると、空洞部6に収納された芳香物質8から気体の芳香成分を効率的に放散させることができ、連通孔7の直径が5mm以下であると、空洞部6に収納された芳香物質8が外部に噴き出てしまう虞を効果的に抑制できる。
【0024】
連通孔7の形成パターンは特に限定されない。連通孔7は、突起4の平面視上、所定の4箇所に、形成されてよい(図2)。図2では、これらの4箇所は、突起4の基端17となる部分より、突起4の中心から放射状に選択される。
【0025】
突起4の外形は、円柱や多角柱状などの柱状のほか、円錐上、半球状、など適宜選択されてよい。図1,2の例に示すように、突起4が略柱状に形成されている場合、突起4は基端17の位置から立設された側面部10a(10)と、側面部10a前端(先端)に連なる前面部11a(11)とを有する。
【0026】
突起4の厚みについては、前面部11が、側面部10と同じ程度の厚みを有して、全体に均一な厚みで形成されていてよいが(図3の前面部11b、側面部10b)、図2に示す前面部11aのように、側面部10aや前面部11aの周縁部に比べて前面部11aの中心寄りの所定の部分(中心部)を肉厚に形成して肉厚部18をなしていることが、好ましい。
【0027】
肉厚部18は、その周囲を取り巻く周縁部に比べて前方に隆起していることが好ましい。このとき、肉厚部18は、特に突起4の中心位置ほど隆起するように形成されていることが好ましい。このとき、前面部11の肉厚部18は、突起4の前面部11の中心位置で最大となる。肉厚部18の厚みについて、肉厚部18の中心の厚み、すなわち前面部11の中心位置の厚み(h1)が、側面部10の厚み(h2)の1倍以上2倍以下である(2≧(h1/h2)≧1)ことが好ましい。この場合、使用者の指が突起4に触れたときに、前面部11のなかでも肉厚部18の中心位置にて使用者の指が特に強く接触するような状態が、効果的に形成される。
【0028】
肉厚部18が形成されていると、突起4は、肉厚部18でその周囲や側面部10よりもコシのある状態となる。すると、使用者が指で突起4を押圧して突起4を圧縮状態としようとする場合に、使用者の指が肉厚部18で特に強く接触した状態が形成されやすくなる。人間の指には、ツボが存在するといわれており、突起4の押圧だけでもツボの刺激効果をもたらすことが可能であるが、さらに肉厚部18が形成されていることで、突起4のうちの肉厚部18にて人間の指のツボを効率よく刺激することが可能となる。
【0029】
突起4には、その内部に形成された空洞部6に芳香物質8を収納している。芳香物質8は、空洞部6内に空きスペースが存在するように、空洞部6内に収納されることが好ましい。空洞部6に空きスペースがあると、芳香物質8に含まれる芳香成分を空洞部6内の空きスペースに充満させることができる。また、突起4が圧縮状態となったときに空洞部6の体積が小さくなるので、芳香成分が空洞部6から連通孔7を通じて外部に効率的に押しだされる。
【0030】
(本体シート2の形成)
本体シート2は、基材シート5の一方面の所定位置に突起形成材12を接合して形成されている。
【0031】
(基材シート5)
基材シート5は、特に限定されないが、適度な柔軟性と破断強度を有するシート材を好ましく用いることができる。このシート材としては、布巾、紙材、不織布、樹脂製シートなどを挙げることができる。布巾としては、木綿、絹、麻などの織布を挙げることができる。紙材としては、和紙、洋紙、パルプ層の表面を樹脂でコーティングしたコート紙などを挙げることができる。不織布としては、スパンレース不織布、スパンボンド不織布など公知の不織布を適宜使用できる。不織布を構成する繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製の繊維、これらを鞘芯型やサイドバイサイド型の複合繊維としたもの等が挙げられる。樹脂製シートとしては、ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルや、ポリ塩化ビニルなどからなるプラスチックシートなど、公知のプラスチックシートを適宜用いることができる。
【0032】
基材シート5の厚みは、芳香シート1の用途に応じた適度な柔軟性と破断強度を有するのであれば特に限定されない。
【0033】
(突起形成材12)
突起形成材12は、突起4の形状および配置パターンに対応する形状とパターンにて凸部13を形成したシート材である(図6(E)(F))。このシート材には、凸部13の真裏に凹部19が形成されており、凹部19の形状は、空洞部6の形状に対応した形状となっている。突起形成材12の凸部13の基端4箇所には、連通孔7の形成を予定された位置に貫通孔20が形成されている。
【0034】
突起形成材12の材質は、突起4の材質と同じであれば、特に限定されない。また、突起形成材12と基材シート5とが異なる材質であってもよいが、同じ材質であるほうが、親和性の強さにより両者の接合が容易となって好ましい。
【0035】
突起形成材12は、原反シート21にエンボス加工を施すことにより形成することができる。このとき、突起形成材12は、貫通孔20を形成する加工も施される。
【0036】
まず、突起4の形状と配置パターンと空洞部6の形状と配置パターンに応じた凸部13と凹部19を形成するためのエンボス型を準備する。エンボス型は、突起4の外側面を形成するための型部材(第1型22)と、突起4の空洞部6側の面を形成するための型部材(第2型23)とを備えてなる。第2型23には、貫通孔20の形成を予定された位置に、貫通孔20のサイズと形状に応じた大きさと形状の突起部24を備える(図6(A)(B))。
【0037】
第1型22と第2型23の間に原反シート21を配し(図6(C))、第1型22と第2型23で原反シート21を挟み込む(図6(D))。このとき、エンボス型には熱が加えられており、原反シート21が軟化される。これにより、原反シート21に突起4と空洞部6の形状・配置パターンに応じた凸部13と凹部19が形成され、さらに、貫通孔20が形成される(図6(E)(F))。こうして、突起形成材12が得られる。
【0038】
突起形成材12は、基材シート5の一方面の所定位置に接合され、このとき、本体シート2が形成され、凸部13が突起4をなし、凹部19が空洞部6を構成し、貫通孔20が連通孔7をなす。なお、空洞部6は、凹部19によって突起形成材12と基材シート5との間にできる空間にて形成され、連通孔7を通じて外部と連通する状態となる。
【0039】
突起形成材12と基材シート5との接合には、熱融着による方法、接着剤を用いた接着による方法など、公知の接合方法を適宜用いることができる。
【0040】
(突起形成材12の形成方法の他例)
上記の突起形成材12の形成方法では貫通孔20が凸部13凹部19の形成と同時に形成されたが、これに限られず、凸部13と凹部19を形成した後に、貫通孔が形成されてよい。例えば、凸部13と凹部19を形成したシートを準備し、それとは別に回転ロールの外周面の所定位置に細針を突設して針ロールを準備する。そして、凸部13と凹部19を形成したシートを針ロールに通ずることで、連通孔7の形成を予定された位置に貫通孔が形成されてもよい。
【0041】
(芳香物質8)
芳香物質8は、粒状剤型の芳香粒子8aである。芳香粒子8aは、1以上のコア粒子をカプセル基剤で被包してなる粒状体であり、例えばカプセル体である。コア粒子は、芳香成分を含む芳香性組成物を、ロウなどの固化剤に練りこんで形成される。
【0042】
カプセル基剤は、気化した芳香成分をわずかでも透過させる性質を有する。カプセル基剤は、多孔質構造を有することが好ましい。また、カプセル基剤の材質は、熱によって徐々に分解する性質を有するものであることが好ましい。このようなカプセル基剤にコア粒子を充填したカプセル体を芳香粒子8aとして用いた場合、温度に応じて芳香粒子8aからの芳香成分の拡散を徐々に生じさせることができる。
【0043】
芳香性組成物は、芳香シート1の用途に応じて選択されればよく、特に限定されない。芳香性組成物としては、香料化合物を含む香料や、芳香油を挙げることができる。香料化合物は、芳香成分をなし、脂肪族ケトン、テルペン系環状ケトン、環状ケトン等を挙げることができる。芳香油は、通常多種の芳香成分を含むものであり、例えば、ラベンダー、ユーカリ、ヒノキ、バニラ、ココア、ペパーミント、サンダルウッド、レモングラス、スペアミント、ジャスミン、イランイラン、ジャコウ、龍脳等が挙げられる。なお、芳香成分は、香りの源となるものを示すものであり、通常、揮発性を有している。
【0044】
コア粒子は、芳香性組成物を固化剤に練りこむ場合に限られず、芳香性組成物そのものから形成されてもよい。
【0045】
空洞部6には、芳香ペレット8bが配置されている。空洞部6に芳香ペレット8bを配置するには、突起形成材12を基材シート5に接合する前に、予め基材シート5面上、突起4の形成を予定された位置に、芳香ペレット8bを配置しておけばよい。
【0046】
(芳香物質8の他の形態)
芳香物質8は、カプセル体に限定されない。芳香物質8は、コーティング剤でコア粒子の表面をコーティングして形成されてなるものであってもよい。
【0047】
また、芳香物質8は、芳香性組成物を粒子状の担体に含ませた担持体として形成されていてもよい。この場合、担持体の担体としては、デキストリンなどの有機高分子やそのゲル状化合物、シリカ、ゼオライトなどの無機化合物など、従前より公知なものを適宜選択して用いることができる。担体に芳香性組成物を含ませた場合、芳香成分を徐放する性質(徐放性)を容易に付与することができる。
【0048】
また、芳香物質8は、芳香性組成物そのものであってもよい。
【0049】
芳香物質8の剤型は、粒子剤型に限られず、粉末剤型でもよく、さらに、図3に示すように、多数の粉体や粒子を一体的に固めて所定形状に成形されたペレット(芳香ペレット8b)でもよい。図3の芳香ペレット8bは、芳香性組成物を既述したロウなどの固化剤に混ぜ込んで円盤状に成型してなる。
【0050】
(粘着層3)
粘着層3は、本体シート2の一方面の全面にわたって形成されてよいし、部分的に形成されてもよい。また、粘着層3は、所定のパターンにて形成されていてもよい。粘着層3は、筆記具などの被着物に芳香シート1を貼り付けることが可能であるように、形成されていればよい。
【0051】
粘着層3は、被着物に対して芳香シート1を貼剥自在に形成されていてもよいし、被着物に芳香シート1を接着固定可能に形成されていてもよい。粘着層3が被着物に対して芳香シート1を貼剥自在であると、芳香シート1を被着物に取り付け固定した後においても、使用者の必要に応じて被着物から芳香シート1を容易に剥がすことができる。
【0052】
粘着層3は、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤など公知の接着剤を粘着剤組成物をとして好ましく用いて形成することができる。
【0053】
(芳香シート1の製造方法)
突起4の形成パターンに応じた凹凸を形成した突起形成材12を、基材シート5の他方面の所定位置に接合して本体シート2を形成する。次に、粘着層3を構成する粘着剤組成物を調製し、粘着剤組成物を基材シート5の一方面(突起形成材12の非接着面)に塗布することにより粘着層3を得ることができる。これにより、芳香シート1を得ることができる。
【0054】
(芳香シート1による効果)
芳香シート1は、本体シート2に突起4が形成されており、この突起4内部の空洞部6に芳香物質8が収納されている。ここに突起4は、熱伝導性を有しており、使用者が指等で芳香シート1の突起4に触れると、突起4の空洞部6の気体が使用者の体温で温められる。このとき、空洞部6にある芳香物質8に含まれる芳香成分の揮発拡散が促進され、空洞部6内に芳香成分が充満する。さらに、突起4は弾力性を有する。突起4は、使用者の指等で押圧されると、突起4は非圧縮状態から圧縮状態となる。この突起4が非圧縮状態から圧縮状態に推移する際、空洞部6内の芳香成分が連通孔7を通って外部に押し出され、芳香シート1の外側周囲に香りが解き放たれる。このように、芳香シート1によれば、使用者が必要に応じて突起4に触れてその突起4を押圧することにより、芳香成分が効率的に外部に放散されるようになり、使用者の必要に応じた香りの利用を実現することができるようになる。
【0055】
芳香シート1は、本体シート2の裏面側に粘着層3を形成しているので、様々な被着物に貼り付けて利用することができる。芳香シート1は、帯状に形成されるため、後述の筆記具など棒状の被着物に対して巻きつけることができる。
【0056】
芳香シート1は、突起4を整列形成しているため、被着物において突起4を配置したい場所に的確に突起4が配置されるように、芳香シート1を被着物に貼り付けることが容易となる。例えば、被着物が筆記具である場合に、その握り部の位置を狙って突起4が配置されるように、芳香シート1を貼り付けることも可能である。
【0057】
芳香シート1は、突起4の空洞部6は、突起4ごとに形成された空間となっている。このため、芳香シート1が、隣り合う突起4,4の間の位置で裁断されていれば、空洞部6が露出するおそれが確実に抑制されることとなり、芳香シート1の裁断時に芳香物質8が外部に露出して意図せずに芳香成分を放散させてしまう事態を招くことがない。すなわち、この芳香シート1によれば、意図しない芳香成分の放散を防止しつつ、芳香シート1を必要な大きさに裁断することが容易となる。
【0058】
(芳香シート1の他の形態)
(突起4の形成パターン)
芳香シート1は、突起4を本体シート2の長手方向に沿って整列して1列に形成される場合に限定されない。芳香シート1において、突起4は、本体シート2の幅方向に横並びに複数列形成されていてもよい(図5(A))。図5(A)の例では、突起4は、芳香シート1の幅方向に3列形成されている。なお、突起4が複数列配置される場合、突起4の形成パターンは、格子状、千鳥状など、特に限定されるものではないが、格子状に突起4が配置されることが、必要に応じて芳香シート1を適宜寸法に裁断することが容易となって好ましい。このとき、例えば、芳香シート1の長手方向に隣り合う突起4,4の間を横断するように、芳香シート1の幅方向にそってミシン目25をいれておくことが好ましい。ミシン目25が設けられていることにより、隣りあう突起4,4の間で必要に応じて芳香シート1を分割することができる。
【0059】
(芳香シート1の利用)
芳香シート1は、たとえば、物品や部品(被着物)に取り付けて使用可能である。被着物としては、車両のハンドルや、機器のグリップ、筆記具などを例示することができる。なお、芳香シート1は、その突起4形成面側を外向きにするともに粘着層3面を被着物面に向けて、被着物に貼り付けられる。
【0060】
具体的に、筆記具に芳香シートを取り付ける場合について説明する。図4(A)に示すように、芳香シート1は、筆記具15の握り部14に取り付けて使用される。なお、図4では、筆記具15として鉛筆が用いられ、筆記時に使用者によって握られる部分が握り部14とされる。
【0061】
芳香シート1は、筆記具15の少なくとも握り部14を含む筆記具15の周面の所定領域を覆うように巻きつけられる。このとき、芳香シート1は、突起4を外側に向け、粘着層3の形成面を筆記具15の周面に対面させるように、筆記具15に巻きつけられる。芳香シート1は、筆記具15に対して位置ずれしないように粘着層3にて固定される。
【0062】
芳香シート1は、筆記具15の周面に沿って巻き回して取り付けられる。このとき、芳香シート1は、図4(A)に示すように、筆記具15の周面に沿って、らせん状にまきつけられている。らせん状に巻きつけられていると、芳香シート1同士の重なりあいを防止しながら芳香シート1を筆記具15に複数周巻きつけることができる。
【0063】
なお、筆記具15が鉛筆である場合、鉛筆は、先端より1cmから2cm程度の範囲を先が細くなるように削られて鉛筆の芯を露出させて先細端部を形成する。鉛筆が使用されてその先端(先細端部側の先端)がまるくなると、さらに鉛筆が削られる。このため、鉛筆の長さは徐々に短くなり、芳香シート1を巻きつけた部分を削る必要を生じる。このとき、芳香シート1をらせん状に巻きつけ固定した鉛筆では、芳香シート1のうち鉛筆の周面に沿った1周分の部分が剥がされて、そのはがされた部分が切断される。図4(A)では、芳香シート1のうち、鉛筆の先細端側に位置する芳香シート1の先端部から破線Qまでの部分が剥がされて、さらに芳香シート1が破線Qの位置で切断される。これにより、鉛筆の削り先細端側の周面が露出し、更に鉛筆を削ることができる。
【0064】
(筆記具15に取り付けられる芳香シート1の好ましい形態)
筆記具15が使用される際、使用者は3本から5本の指で筆記具15を握っていることが多く、これらの指のそれぞれが、1つ1つの突起4を押さえることができるように突起4が配置されることが好ましい。その場合、筆記具15の周囲に沿って1周あたり1個から5個の突起4が存在することが好ましい。なかでも、筆記具15の周囲に沿って1周あたり3個の突起4が存在することがより好ましい(図4(B))。筆記具15の周囲1周あたり突起4が1個以上存在すれば、指で突起4を触れるようにすることができる。筆記具15の周囲1周あたり突起4が5個以下存在すれば、1本の指で一度にあまりに多数の突起4に触れて、芳香物質8を過剰に外部に放散させてしまう虞が抑制される。さらに、筆記具15の周囲1周あたり3個の突起4が存在することがより好ましいが、この場合には、個々の突起4を3本の指でより確実を触れて体温を空洞部6に伝達するとともに各突起4を押圧することができるようになり、芳香物質8を効率的に放散させることができるようになる。また、1本の指で1つの突起4を押圧することができ、1つの突起4から1本の指のツボを効率的に刺激することができる。
【0065】
また芳香シート1について、筆記具15の周囲に1周巻きつけられた場合に1個以上5個以下の突起4が筆記具15の周囲に配置されるために、隣り合う突起4,4の間隔が、筆記具15の周囲に1周巻きつけられると1個以上5個以下の突起4が筆記具15の周囲に配置されるような間隔であることが好ましいことになる。具体的には、隣り合う突起4,4の間隔(T)は、R≧T≧(R/5)を満たすような値であることが好ましい。ただし、Rは、筆記具15の握り部14の周長さ(mm)である。
【0066】
隣り合う突起4,4の間隔を、筆記具15の周囲に1周巻きつけられると3個の突起4が筆記具15の周囲に配置されるような間隔とするには、長手方向に2つおきに選ばれた2つの突起4,4の間隔(L)(すなわち、間隔Tの3倍の長さ)が、筆記具15の握り部14の周長さ(R)程度であればよい。したがって、筆記具15の周囲に1周巻きつけられた場合に3個の突起4が筆記具15の周囲に配置されるために、間隔Tは、R/3程度の値であることが好ましいことになる。
【0067】
(筆記具15に対する芳香シート1の取り付け方の他例)
芳香シート1は、筆記具15にらせん状に巻きまわして取り付けられる場合に限定されない。芳香シート1は筆記具15の周囲に1周巻きつけられたものでもよい。この場合、筆記具15に巻きつけられる芳香シート1として、たとえば、図5(A)に示すような突起4を複数列整列形成しているものを好ましく用いることができる。この場合、芳香シート1の長手方向と筆記具15の長手方向とをそろえるようにしつつ芳香シート1を筆記具15の周面にあてがって、芳香シート1を筆記具15の周面に一周巻きつけるだけでも、筆記具15の握り部14全体を覆うことができる(図5(B))。また、この芳香シート1については、その幅(W)が筆記具15の周囲1周分となるように形成されている。また、芳香シート1は、筆記具15を1周したときに3個の突起4が筆記具15の周りに配置されるように隣り合う突起4の列間の離間距離(図5においてU)をとって形成されている。
【0068】
さらに、筆記具15が鉛筆である場合、芳香シート1として、隣り合う突起4の間に幅方向にミシン目25がいれられているものを用いられることが更に好ましい。このような芳香シート1を取り付けた筆記具15によれば、鉛筆の使用によって鉛筆の先細端部を削る必要に迫られたとき、鉛筆の先細端部に近い位置にあるミシン目25(25a)に沿って芳香シート1の先細端側に取り付けられた部分をちぎりながらその部分を剥がし取ることができる。このとき、芳香シート1に覆われていた鉛筆の周面が新たに露出するので、さらに鉛筆を削ることができるようになる。
【0069】
(芳香シート1を用いた筆記具15の効果)
芳香シート1を巻きつけた筆記具15を用いて筆記を行うにあたり、既述したように、使用者は、握り部14に3本の指をかけることにより筆記具15を握ることが多い。芳香シート1は筆記具15の握り部14に巻きつけられるので、使用者が筆記具15を握ると使用者の指が突起4に触れることとなり、使用者の体温が突起4からその内部の空洞部6に伝達され、空洞部6内が体温によって温められる。これに伴い、突起4内部に収納された芳香物質8から芳香成分が効率的に気化する。さらに、筆記具15を握って筆記を行う際には筆記具15が指で強く握り締められることになるため、指が突起4を押圧する。このとき、突起4が圧縮状態となるとともに連通孔7から外部に芳香成分が効率よく外部に放散される。このように、芳香シート1を用いた筆記具15によれば、人が筆記具15を使用する時を狙って、芳香成分を外部に放散させることが可能となる。
【0070】
ところで、人間には、異なる時機に香りを嗅いだ時、その香りが引き金となって、それと同じ香りをかいだときの過去の状況を鮮明に思い起こすことがある。すなわち、人間にとって嗅覚刺激は過去の記憶を呼び覚ますための手助けとして働くと言われる。この点、芳香シート1によれば、個々の人間が必要に応じて芳香成分を放散させることができるものであるので、異なる時機に同じ香りを生じさせることができる。このため、芳香シート1は、最初にある香りを嗅いだときの状況を後で思い起こそうとする際の手助けとなりうるものである。
【0071】
特に、芳香シート1を用いた筆記具15によれば、この筆記具15を用いて紙などに筆記を実施記載した際に、芳香成分が外部に放散され、使用者は芳香成分に応じた香りを嗅ぐことになる。そして、その後、使用者がその筆記具15を握ることで、最初に筆記具15を使って紙に記載したときにかいだはずの香りを再びかぐことができる。このとき、その香りは、最初に紙に記載した当時の状況を思い浮かべる可能性を高める手助けとなる。また、芳香シート1においては突起4が突出しているので突起4を指で押さえることにより使用者にツボの刺激効果がもたらされる。この刺激効果については、筆記時の集中力を高めるなど人間にとって好ましい効果の存在があるとされている。そして、こうした刺激効果は、紙に記載した当時の状況を思い浮かべる際のさらなる手助けとなる。このように、芳香シート1を用いた筆記具は、それを用いて紙に記載した当時の状況を思い浮かべる際の手助けとなりうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、筆記具などに取り付けて用いられ、使用者の必要に応じて芳香成分を放散可能な芳香シートとして有益である。
【符号の説明】
【0073】
1 芳香シート
2 本体シート
3 粘着層
4 突起
5 基材シート
6 空洞部
7 連通孔
8 芳香物質
8a 芳香粒子
8b 芳香ペレット
10 側面部
11 前面部
12 突起形成材
13 凸部
14 握り部
15 筆記具
17 突起の基端
18 肉厚部
19 凹部
20 貫通孔
21 原反シート
22 第1型
23 第2型
24 突起部
25 ミシン目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の本体シートの一方面側に粘着層を設け、該本体シートの他方面側に複数の突起を整列形成しており、該突起は、内部に空洞部を形成するとともに空洞部に芳香物質を収納してなり、該空洞部は、連通孔を通じて外部に連通している、ことを特徴とする芳香シート。
【請求項2】
突起に加えられる荷重に応じて該突起を圧縮状態に弾性変形可能に構成してなる、請求項1に記載の芳香シート。
【請求項3】
突起は、本体シートの長手方向に、1列に整列形成されている、請求項1または2に記載の芳香シート。
【請求項4】
連通孔は、突起の基端部に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の芳香シート。
【請求項5】
突起は、側面部と該側面部に連なる前面部を有しており、突起の前面部は、該前面部の周縁部よりも中心部のほうが肉厚になるように形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の芳香シート。
【請求項6】
芳香物質は、芳香性組成物を含むコア粒子を被包してなる粒状体である、請求項1から5のいずれかに記載の芳香シート。
【請求項7】
突起を表面に向けつつ筆記具の握り部に巻き付けて粘着層にて該筆記具に固定されて使用されるものである、請求項1から6のいずれかに記載の芳香シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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