説明

芳香剤とそれを用いた建材

【課題】パッシブな方法で芳香成分の放散量と放散タイミングをコントロールすることができ、芳香の持続性を向上させることができる芳香剤とそれを用いた建材を提供すること。
【解決手段】夏場の気温で溶融するパラフィン、夏場の気温で溶融しないパラフィン、および芳香成分を含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤とそれを用いた建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高気密・高断熱住宅の普及や、衛生環境の快適性の向上等の観点から、室内環境、特に空気をきれいにしたいというニーズが高まっている。
【0003】
このようなニーズを背景として、消臭剤、芳香剤等のニオイに関連する商品が普及してきている。
【0004】
例えば芳香剤では、既存の商品として、置き型の濾紙等を用いて芳香成分を揮発させるタイプのもの、ビーズ等の多孔体に芳香剤を吸着させたもの、芳香剤等を寒天、ゼラチン等と混合したもの等が市販されている。
【0005】
芳香剤は、その芳香成分が揮発しガス化することで、その芳香剤のニオイを感じ取ることができる。しかしながら、放散量をコントロールしないと長期にわたって放散は持続しない。
【0006】
放散量をコントロールする方法として、例えば、アクティブな方法が用いられている。アクティブな方法では、芳香成分を含むカートリッジを電気で加熱し、あるいは芳香剤をスプレーする等により、必要に応じて芳香成分を放散させて放散タイミングをコントロールする。しかしながら、これらの方法は、芳香成分の放散タイミングをコントロールすることはできるが、電気的あるいは機械的な仕組みが必要になる。また、カートリッジを電気で加熱する方法では、カートリッジを大きくできないため交換する必要がある。
【0007】
そのため、芳香の持続性を確保するための技術として、熱や力を自然のまま利用するパッシブな技術よりも放散量と放散タイミングをコントロールできる技術が求められている。
【0008】
例えば、建具や内装材等の建材は、常に室内空間に面していることから、これにパッシブな技術で芳香剤を組み込むことができれば望ましい。例えば、季節や昼夜等の気温差を利用して芳香成分の放散量をコントロールすることが考えられるが現状ではそのような技術は達成されていない。例えば、夏場は暑いため快適性等の点から特に芳香が望まれる季節でもあるが、このような夏場に選択的に芳香成分の放散量を増やすことができれば年単位での長期的な放散の持続性も高めることができる。
【0009】
従来、パッシブな技術としては、芳香成分を多孔性材料に吸着させ、あるいはマイクロカプセルに包含させて放散量をコントロールし、徐放する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−003910号公報
【特許文献2】特開2002−345941号公報
【特許文献3】特開2008−229235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、芳香成分が常時放散し続けることを抑制することはできなかった。そのため、特に建材において、パッシブでありながら放散量と放散タイミングをコントロールできる芳香剤が望まれている。
【0012】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、季節や昼夜等の気温差に応じてパッシブな方法で芳香成分の放散量と放散タイミングをコントロールすることができ、芳香の持続性を向上させることができる芳香剤とそれを用いた建材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の芳香剤は、夏場の気温で溶融するパラフィン、夏場の気温で溶融しないパラフィン、および芳香成分を含有することを特徴としている。
【0014】
この芳香剤においては、夏場の気温で溶融するパラフィンの相転移温度は、30〜40℃であることが好ましい。
【0015】
この芳香剤においては、夏場の気温で溶融しないパラフィンの相転移温度は、45〜120℃であることが好ましい。
【0016】
この芳香剤においては、芳香成分は、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有することが好ましい。
【0017】
本発明の建材は、通気性の面材とその裏面側に配置された非通気性のカバー材とを備え、上記の芳香剤が面材の裏面に塗布または含浸されて面材とカバー材とに囲まれた空間の内部に収容されていることを特徴としている。
【0018】
本発明の建材は、上記の芳香剤が含浸または表裏面の少なくとも一方に塗布された繊維質の面材を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、季節や昼夜等の気温差に応じてパッシブな方法で芳香成分の放散量と放散タイミングをコントロールすることができ、芳香の持続性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明の芳香剤は、夏場の気温で溶融するパラフィン、夏場の気温で溶融しないパラフィン、および芳香成分を含有し、主に一年を通じて最も温度の高い夏場においてパッシブに芳香成分を放散することを特徴としている。このように夏場の気温で溶融するパラフィンと溶融しないパラフィンとを併用することにより、所定温度以上で一部のパラフィン、すなわち夏場の気温で溶融するパラフィンのみが相転移し、芳香成分を放散することができる。これにより、電気的または機械的な仕組みを用いずともパッシブな方法で放散量と放散タイミングをコントロールすることができ、芳香剤の持続性を向上させることができる。
【0022】
本発明において用いられるパラフィンは、室温で固体の炭化水素であり、飽和の直鎖、分岐、または環式の炭化水素から構成される。例えば、鉱油由来のパラフィン、フィッシャー・トロプシュ合成由来のパラフィン、プラスチックの熱分解により得られる溶融物(再循環パラフィン)由来のパラフィン等を用いることができる。
【0023】
蒸留残渣またはパラフィン・ベースの原油の重質蒸留物からの微結晶性パラフィン(マイクロワックス)もパラフィンに含まれる。
【0024】
パラフィンのうち、ノルマルパラフィンの相転移温度(融点)を例示すると概ね次の程度である。n−ヘプタデカン(炭素数17):22℃、n−オクタデカン(炭素数18):28℃、n−エイコサン(炭素数20):37℃、n−ドコサン(炭素数22):44℃、n−ペンタコサン(炭素数25):54℃、n−オクタコサン(炭素数28):61℃、n−トリアコンタン(炭素数30):66℃、炭素数40のノルマルパラフィン:82℃、炭素数50のノルマルパラフィン:92℃、炭素数100のノルマルパラフィン:115℃。
【0025】
夏場の気温で溶融するパラフィンおよび夏場の気温で溶融しないパラフィンは、好ましくは1種のパラフィンを主成分とするが、分子量や化合物の種類に分布をもつ混合物であってもよい。
【0026】
本発明においてパラフィンの相転移温度は、例えば、JIS K0064に規定される融点測定方法により測定することができる。
【0027】
本発明において「夏場の気温で溶融する」、「夏場の気温で溶融しない」については次の事項が考慮される。パラフィンの相転移温度が25〜40℃(好ましくは30〜40℃)である場合に「夏場の気温で溶融する」とする。パラフィンの相転移温度が45℃以上の場合(好ましくは45〜120℃、より好ましくは45〜90℃)である場合に「夏場の気温で溶融しない」とする。
【0028】
本発明の芳香剤は、特に、夏場の気温に室内温度が連動するような建物、施設等において好ましく用いることができる。このような建物、施設等においては、室内においても上記したような条件に準じてパラフィンの溶融、固化のサイクルが生じ、放散量のコントロール(徐放)をパッシブに達成することができる。また秋場に入ると芳香成分の放散が著しく抑制され、季節に応じて放散タイミングをコントロールできる。
【0029】
また、例えば冷房のある建物、施設等であっても、室内温度が一定の高温を超えないと冷房を入れないクールビズを実施している建物、施設等や、一部の部屋では冷房が効かない等の場合には、パラフィンの溶融、固化のサイクルが上記と同様の傾向を示す状態で用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる夏場の気温で溶融するパラフィンは、相転移温度が好ましくは25〜40℃、より好ましくは30〜40℃である。相転移温度が低過ぎると夏場の気温以外でも溶融し易くなり芳香の持続性が低下する場合がある。相転移温度が高過ぎると夏場でも比較的低い温度のときには溶融しにくくなり芳香成分の放散性が低下する場合がある。
【0031】
本発明に用いられる夏場の気温で溶融しないパラフィンは、相転移温度が好ましくは45℃以上、より好ましくは45〜120℃、より好ましくは45〜90℃である。相転移温度が低過ぎると夏場の気温で芳香の発生量が増え芳香の持続性が低下する場合がある。相転移温度が高過ぎると芳香の発生量が低下する場合がある。
【0032】
本発明の芳香剤における夏場の気温で溶融するパラフィンと夏場の気温で溶融しないパラフィンとの配合比は、質量比で好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜70:30である。夏場の気温で溶融するパラフィンの配合比が多過ぎると芳香の持続性が低下する場合がある。夏場の気温で溶融しないパラフィンの配合比が多過ぎると芳香成分の放散性が低下する場合がある。
【0033】
本発明に用いられる芳香成分は、揮散性を有し芳香性を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、香粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野において従来より用いられている香料等を用いることができる。例えば、天然香料、合成香料、調合香料等を用いることができる。
【0034】
天然香料としては、特に限定されないが、例えば、レモン油、ライム油、スペアミント油、ジャスミン油、オレンジ油、パイン油、はっか油、ユーカリ油、ラベンダー油、ムスク等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
合成香料としては、特に限定されないが、例えば、ヒノキチオール、リモネン、リナロール、オイゲノール、シトロネラール、バニリン、カルボン、ヨノン、ムスコン、ローズオキサイド、インドール、酢酸ゲラニル、安息香酸エチル等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、芳香成分は、必要に応じて溶剤、水、界面活性剤等を配合して用いることができる。
【0037】
芳香成分は、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有することが好ましい。これにより、気温が高くなり菌やカビが発育し易い夏場の時期に、抗菌性や抗カビ性を有する芳香成分を無意識のうちに放散することができる。従って、電気的または機械的な仕組みを用いずとも抗菌・抗カビ作用を発現することができ、室内を清浄に保つことができる。
【0038】
抗菌性を有する芳香成分としては、例えば、タイム油、シナモンバーク油、バジル油、ユーカリ油、クローブ油、レモングラス油、カッシャ油、スペアミント油、クミン油、タラゴン油等を用いることができる。
【0039】
抗カビ性を有する芳香成分としては、例えば、シトラール、シトロネラール、トランス−2−ヘキセナール、オクチルアルデヒド、トランス−2−ウンデセナール、ウンデシレンアルデヒド、ジメチルテトラハイドロベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、3−フェニルプロパナール、クミンアルデヒド、フルフラール、ゲラニオール、シトロネロール、9−デセノール、デカノール、オイゲノール等を用いることができる。
【0040】
本発明の芳香剤における芳香成分の配合量は、好ましくは芳香剤の全量に対して0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。芳香成分の配合量が少な過ぎると芳香性が低下する場合があり、芳香成分の配合量が多過ぎると成形性が低下する場合がある。
【0041】
本発明の芳香剤には、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて前記の成分以外の他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、消泡剤等を用いることができる。
【0042】
本発明の芳香剤は、例えば、以下の方法等により製造することができる。まず夏場の気温で溶融するパラフィン、夏場の気温で溶融しないパラフィン、およびその他の成分を加温下にて溶融混合する。さらに芳香成分を添加して撹拌しながら十分に混合し、その後放冷することにより芳香剤を製造することができる。
【0043】
本発明の芳香剤は、室内の芳香等に用いることができる。特に、パッシブであることから建材に好適に用いることができる。建材の構成は、例えば、戸、襖、ドア枠、敷居等の建具や、壁、天井、床等の内装材等に適用することができる。
【0044】
本発明の建材は、通気性の面材とその裏面側に配置された非通気性のカバー材とを備え、以上に説明した本発明の芳香剤が面材の裏面に塗布または含浸されて面材とカバー材とに囲まれた空間の内部に収容されている。
【0045】
このような構成によれば、多くの芳香成分を建材に含有させることができるので、芳香成分の放散を長期間維持できる空間を提供することができる。
【0046】
面材は、例えば芳香剤の芳香成分を透過できる通気性の材料によるボードを用いることができる。具体的には、例えば、MDFボード等の木質繊維ボード、石膏ボード等を用いることができる。
【0047】
この面材の裏面に本発明の芳香剤を塗布または含浸し、その箇所を覆うように非通気性のカバー材を配置する等の方法により、通気層を介して芳香剤を内部に有する本発明の建材を製造することができる。
【0048】
また本発明の建材は、以上に説明した本発明の芳香剤が含浸または表裏面の少なくとも一方に塗布された繊維質の面材を備えている。
【0049】
このような構成によれば、繊維質の面材を通じて建材に多くの芳香成分を含有させることができるので、芳香成分の放散を長期間維持できる空間を提供することができる。
【0050】
繊維質の面材としては、例えば、紙、不織布等を用いることができる。そして本発明の芳香剤を加熱溶融して繊維質の面材に含浸しまたは表裏面の少なくとも一方に塗布した後、冷却することで芳香剤が含浸または塗布された繊維質の面材を製造することができる。
【0051】
この繊維質の面材を、例えば建具や内装材等の表面または裏面等に配置して建材とすることができる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1.芳香剤
<実施例1>
パラフィンとして、夏場の気温で溶融するパラフィン(n-ノナデカン 相転移温度33℃、和光純薬社製)、夏場の気温で溶融しないパラフィン(パラフィン 相転移温度50〜52℃、和光純薬社製)の2種類のパラフィンを用いた。
【0053】
これら2種類のパラフィンを質量比で50:50になるように混合し、消泡剤としてステアリン酸を2種類のパラフィンの合計量に対して5質量%添加し、60℃の温水で湯煎し溶融混合させた。さらに芳香成分としてヒノキチオールをこの混合物に対して1質量%添加し混合した後、φ70のガラスシャーレにその20gを注ぎ、その後冷却して芳香剤を作製した。
【0054】
<実施例2>
2種類のパラフィンを質量比で30:70になるように混合し、それ以外は実施例1と同様にして芳香剤を作製した。
【0055】
<実施例3>
2種類のパラフィンを質量比で70:30になるように混合し、それ以外は実施例1と同様にして芳香剤を作製した。
【0056】
<比較例1>
パラフィンとして1種類(相転移温度33℃)のみを用い、それ以外は実施例1と同様にして芳香剤を作製した。
【0057】
<比較例2>
パラフィンとして1種類(相転移温度50〜52℃)のみを用い、それ以外は実施例1と同様にして芳香剤を作製した。
【0058】
<比較例3>
パラフィンを用いずに実施例1と等量の芳香成分のみをシャーレに入れて芳香剤とした。
【0059】
実施例1〜3および比較例1〜3について次の評価を行った。
[官能評価・外観評価]
恒温恒湿槽内で、それぞれの芳香剤を35℃×50%RHの雰囲気で加温し、24時間後に恒温恒湿槽から取り出し、ニオイを感じるか次の基準に基づいて官能評価を行った。
【0060】
その後、20℃×50%の雰囲気で24時間保持した後、恒温恒湿槽から取り出し、同様の官能評価を行った。
【0061】
その後、再度35℃×50%の雰囲気で加温して24時間保持した後、恒温恒湿槽から取り出し、同様の官能評価を行った。また外観状態も確認し溶融状態の外観評価を行った。
【0062】
[官能評価]
◎:芳香剤のニオイを強く感じる
○:芳香剤のニオイを感じる
△:芳香剤のニオイを弱く感じる
×:芳香剤のニオイをほぼ感じない
【0063】
評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1より、夏場の気温で溶融するパラフィンを用いた芳香剤は所定の温度で放散することが確認できた。さらに夏場の気温で溶融するパラフィンと夏場の気温で溶融しないパラフィンの2種類を併用することで、芳香の持続性が向上することも確認できた。
【0066】
2.芳香剤を用いた建材
<実施例4>
珪藻土入り表裏面普通紙貼り石膏ボード(パナソニック電工株式会社製「しつど番」、厚み9.5mm)の裏面に、60℃で湯煎した実施例1の芳香剤を刷毛塗りで200g/m2となるように塗布し1週間室温で乾燥させた。
【0067】
これを10cm角にカットし、裏面と側面をカバー材のアルミテープで覆い建材サンプルを得た。
【0068】
<実施例5>
芳香剤として実施例2のものを用い、それ以外は実施例4と同様にして建材サンプルを作製した。
【0069】
<実施例6>
芳香剤として実施例3のものを用い、それ以外は実施例4と同様にして建材サンプルを作製した。
【0070】
<比較例4>
芳香剤として比較例1のものを用い、それ以外は実施例4と同様にして建材サンプルを作製した。
【0071】
<比較例5>
芳香剤として比較例2のものを用い、それ以外は実施例4と同様にして建材サンプルを作製した。
【0072】
<比較例6>
芳香剤として比較例3のものを用い、それ以外は実施例4と同様にして建材サンプルを作製した。
【0073】
<実施例7>
市販のMDFボード(厚み2.5mm)の裏面に、60℃で湯煎した実施例1の芳香剤を刷毛塗りで200g/m2となるように塗布し1週間室温で乾燥させた。
これを10cm角にカットし、裏面と側面をアルミテープで覆い建材サンプルを得た。
【0074】
<実施例8>
芳香剤として実施例2のものを用い、それ以外は実施例7と同様にして建材サンプルを作製した。
【0075】
<実施例9>
芳香剤として実施例3のものを用い、それ以外は実施例7と同様にして建材サンプルを作製した。
【0076】
<比較例7>
芳香剤として比較例1のものを用い、それ以外は実施例7と同様にして建材サンプルを作製した。
【0077】
<比較例8>
芳香剤として比較例2のものを用い、それ以外は実施例7と同様にして建材サンプルを作製した。
【0078】
<比較例9>
芳香剤として比較例3のものを用い、それ以外は実施例7と同様にして建材サンプルを作製した。
【0079】
実施例4〜9および比較例4〜9について前記の官能評価を行った。
[官能評価]
◎:芳香剤のニオイを感じる
○:芳香剤のニオイを弱く感じる
△:芳香剤のニオイを微かに感じる
×:芳香剤のニオイをほとんど感じない
その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表2より、芳香剤を建材に用いた場合にも、夏場の気温で溶融するパラフィンを用いた芳香剤は所定の温度で放散しボード表面より芳香を放つことが確認できた。さらに夏場の気温で溶融するパラフィンと夏場の気温で溶融しないパラフィンの2種類を併用することで、芳香の持続性が向上することも確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夏場の気温で溶融するパラフィン、夏場の気温で溶融しないパラフィン、および芳香成分を含有することを特徴とする芳香剤。
【請求項2】
前記夏場の気温で溶融するパラフィンの相転移温度は、30〜40℃であることを特徴とする請求項1に記載の芳香剤。
【請求項3】
前記夏場の気温で溶融しないパラフィンの相転移温度は、45〜120℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香剤。
【請求項4】
前記芳香成分は、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の芳香剤。
【請求項5】
通気性の面材とその裏面側に配置された非通気性のカバー材とを備え、請求項1ないし4いずれか一項に記載の芳香剤が前記面材の裏面に塗布または含浸されて前記面材と前記カバー材とに囲まれた空間の内部に収容されていることを特徴とする建材。
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか一項に記載の芳香剤が含浸または表裏面の少なくとも一方に塗布された繊維質の面材を備えることを特徴とする建材。

【公開番号】特開2012−130417(P2012−130417A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283297(P2010−283297)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】