説明

芳香化学物質

本発明は、化学式(I)、(II)のいずれかを有する化合物を提供する。式中、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはC1〜5アルキルである(但し、式(I)においてRがメチルである場合、RはHまたはC2〜5アルキルであることを条件とする)。Rは、炭素原子1個〜12個を有する直鎖状もしくは分枝状の脂肪族基、または環式基、複素環基、もしくは芳香族基である。RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCH3である。これらの化合物の混合物、これらの製造方法、様々な基材に適用するための芳香物質としてのこれらの使用、ならびに香味料および製品におけるこれらの使用も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に香味料および香料の分野に関する。より具体的には本発明は、従来の化合物の改良された誘導体に関し、これらの誘導体は、これらが誘導されたもとの従来の化合物とは共有しない性質および利点を、香水および他の製品にもたらす。これらの誘導体は、これらが誘導されたもとの従来の化合物によって付与される香りおよび芳香を必要とする任意の全ての用途に有用である。本発明は、これらの誘導体の混合物、これらの製造方法、および様々な基材に適用するための芳香物質としてのこれらの使用、ならびに、これらの誘導体を含有する香味料および製品におけるこれらの使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
多くの数と種類の既知の香味料および香料が、香水および多様な他の製品において成分として用いられている。例えば、織物繊維に用いることが意図された、洗濯洗剤、柔軟剤、リンスコンディショナー、および他の製品は、本来香料を含有する。しかし多くの芳香化学物質は、潜在的に反応の影響を受け易くその結果有用寿命が限られることになる、二重結合および/または他の反応性基を含んでいる。さらに、多くの精油香料はアレルギー反応を引き起こすことが最近確認されており、こうした香料を含む製品を市場に出すことは増々困難になってきている。
【0003】
リナロールは、その高く珍重される香気プロファイル:天然の花の特徴(ほのかなシトラスの香りを有するフローラルウッディ)に起因して広く用いられている香料/香味料である。エチルリナロールも非常に人気があり、ラベンダー、ベルガモット、コリアンダの特徴を有する。エチルリナロールは、リナロールよりフローラルであり、より甘く、かつ、田舎くさくない。リナロールと同様に、フローラルブーケのための様々な香りに用いられる。
【0004】
リナロールアセテートは、甘いグリーンシトラス、ベルガモット、ラベンダー、ウッディの特徴を有し、同様に非常に人気のある香料/香味料である。
【0005】
しかし、これらの化合物の使用は、これらの化合物が比較的高いアレルギー率を有するとの発見によって、近年削減されてきた。(例えば、http://europa.eu.int/comm/enterprise/chemicals/legislation/detergents/legislation/allergenic_subst.pdf、またはhttp://www.leco.org/customersupport/apps/separationscience/-236.pdfを参照。)
【0006】
本明細書中のリストまたは先の公表書類についての議論は、その書類が当分野の技術水準または周知慣用技術であることを認めるものと受け取られるべきではない。
【特許文献1】米国特許第4,587,129号公報
【非特許文献1】「Solomon’s Organic Chemistry」4th Edition(John Wiley and Sons出版)342および343、ならびに837および843
【非特許文献2】S.Arctander、「Perfume and Flavor Chemicals」、1969年、Montclair,N.J.、USA
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の芳香化合物の新規な誘導体および関連化合物を提供することである。これらの誘導体は、典型的には、従来の化合物を同様の香気プロファイルを有するが、アレルゲン性がより低く、かつ/あるいは改善された有用寿命を有する。いくつかの場合には、これらの誘導体は、改善された香気の強さおよび安定性も有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(I)および式(II):
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはC1〜5アルキルであり(但し、式(I)においてRがメチルである場合、RはHまたはC2〜5アルキルであることを条件とする);
は、炭素原子1個〜約12個を有する直鎖状もしくは分枝状の脂肪族基、または環式基、複素環基、もしくは芳香族基であり;かつ、
およびRは、それぞれ独立して、HまたはCH3である)
を有する化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好ましくは、Rは、最高で12個までの炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、またはアリールオキシである。Rが複素環基である場合、好適なヘテロ原子には、酸素、窒素、および硫黄が含まれる。言い換えれば、Rは、炭素原子1個〜12個を有する、エステル化している脂肪族カルボン酸、複素環カルボン酸、または芳香族カルボン酸である。例えば、エステルは、アセテート、アセトアセテート、アントラニレート、ベンゾエート、ブチレート、iso-ブチレート、カプロエート、カプリレート、シンナメート、シトロネレート、クロトネート、エトキシアセテート、ホルメート、フロエート、ヘプトエート、N-メチルアントラニレート、メチルチグレート、メトキシアセテート、ノナノエート、ペラルゴネート、ペンタノエート、フェニルアセテート、プロピオネート、ピルベート、サリチレート、チグレート、バレレート、またはiso-バレレートであってよい。
【0010】
R基およびR基は、同じであっても異なっていてもよい。Rおよび/またはRがC1〜5アルキル基である場合、これらの基は、独立して、1個、2個、3個、4個、または5個の炭素原子を含んでいてよく、直鎖状または分枝状または環状であってよい。
【0011】
RまたはRの1つがメチルであり、RおよびR残りの1つが2個、3個、4個、または5個の炭素原子を有するアルキルである式(I)の化合物が好ましい。例えば、Rはメチルであってよく、Rはエチルであってよい(エチルリナロールのシクロプロパン化誘導体)。
【0012】
式(II)の化合物において、RおよびRの少なくとも1つがメチルであることが好ましい。例えば、RおよびRの両方がメチルであってよい。好適な式(II)の化合物は、Rが直鎖状または分枝状のC1〜12アルキル基、より好ましくはC1〜6アルキル基、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0013】
式(II)の特に好ましい化合物は、RまたはRの両方がメチルであり、Rがメチルである化合物である(すなわち、式(II)の化合物は、リナロールアセテートがシクロプロパン化された誘導体であってよい)。RまたはRがメチルである式(II)の他の化合物の例としては、他方のRまたはRが水素またはC3〜5アルキルである化合物を挙げることができる。好適な式(II)の化合物の他の例としては、リナリルアントラニレート、リナリルベンゾエート、リナリルシンナメート、リナリルホルメート、リナリルイソブチレート、リナリルフェニルアセテート、およびリナリルプロピオネートのシクロプロパン化誘導体を挙げることができる。
【0014】
式(I) および(II)の化合物において、RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。言い換えれば、RおよびRの両方がHであってよく、あるいはRおよびRの1つがHであり、他の1つがメチルであってよく、あるいはRおよびRの両方がメチルであってよい。
【0015】
式(I)の化合物の具体例として:
【化2】

〔式中、RおよびRの両方がH、あるいはRおよびRの両方がメチル、あるいはRおよびRの一方がHであり、他方がメチルである(すなわち、エチルリナロールのシクロプロパン化誘導体である)〕
を挙げることができる。
【0016】
式(II)の化合物の具体例として:
【化3】

〔式中、RおよびRの両方がH、あるいはRおよびRの両方がメチル、あるいはRおよびRの一方がHであり、他方がメチルである(すなわち、リナロールアセテートのシクロプロパン化誘導体である)〕
を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、用語「シクロプロパン化誘導体」または「シクロプロパン誘導体」は、あらゆるメチルシクロプロパン誘導体ジメチルシクロプロパン誘導体、および未置換シクロプロパン誘導体を含む。すなわち、RおよびRの可能性のある任意の組合せを含む。
【0018】
本発明は、式(I)および式(II)の化合物の合成方法も提供する。
【0019】
本発明の化合物は、「親」芳香化学物質から、式(II)のエステルの場合には対応するアルコールから合成することができるが、この方法で進める必要はない。すなわち、これらの化合物は、「親」芳香化学物質を含まない合成ストラテジーから得ることができる。
【0020】
式(I)の化合物は、下記式の親化合物のシクロプロパン化によって調製することができる:
【化4】

(式中、RおよびRは、式(I)の化合物に対して先に定義したものと同様である)。
【0021】
従来知られているシクロプロパン化の適切な方法のいずれを用いてもよい。本発明の化合物の製造に典型的に用いられる親化合物における6,7-位の二重結合は、比較的電子が豊富である。したがって、電子が豊富な二重結合で容易に進行する任意のシクロプロパン化反応を用いることができる。好適な方法としては、カルベノイド反応、例えば、Simmon-Smith(Zn−Cuカップル)シクロプロパン合成〔「Vogel’s textbook of Practical Organic Chemistry」5th Edition (1989)、1106-1108頁、または「Solomon’s Organic Chemistry」4th Edition、342および343頁、John Wiley and Sons出版〕を挙げることができる。ジエチル亜鉛および塩化アシルを触媒として用いるFriedricks反応、またはハロカルベン反応も用いることができる。あるいは、式(I)の化合物は、親化合物にハロホルム反応を受けさせてジクロロシクロプロピル誘導体またはジブロモシクロプロピル誘導体を生成させ、次いで、例えばリチウムを用いて脱ハロゲン化反応させて所望の生成物にすることによって合成することができる。
【0022】
式(I)の化合物のこの製造方法は、下記反応スキームにまとめることができる:
【化5】

(式中、RおよびRは、式(I)の化合物に対して先に定義したものと同様である)。
【0023】
より具体的には、エチルリナロールのシクロプロパン化反応は、下記式で表すことができる:
【化6】

【0024】
式(II)の化合物は、対応する下記式のアルコール:
【化7】

(式中、RおよびRは、式(II)の化合物に対して先に定義したものと同様である)
のシクロプロパン化反応、次いでヒドロキシ基のエステル化反応によって調製することができる。シクロプロパン化の任意の好適な方法(例えば、上述した方法の1つ等)を用いることができる。当分やで公知の任意のエステル化法を用いることができる。例えば、エステルは、アルコールを適切な塩化アシルと反応させることによって得ることができる。他のエステル化反応方法は、例えば、「Solomon’s Organic Chemistry」4th Edition(John Wiley and Sons出版)837および843に記載されている。
【0025】
式(II)の化合物を製造するためのこの方法は、下記式にまとめることができる。
【化8】

(式中、RおよびRは、式(II)に対して先に定義したものと同様である)。
【0026】
より具体的には、リナロールアセテートのシクロプロパン化誘導体の調製は、下記式で示すことができる:
【化9】

【0027】
本発明の化合物は、少なくとも2個の不斉中心を有している。OH基またはエステル基を有する炭素原子と、6-位の炭素原子の両方がキラルである。RとRとが異なる場合、7-位の炭素原子もキラルになる。RとRとが異なる場合、これらの基を有する7-位の炭素原子もキラルになる。本明細書における本発明の化合物への言及はいずれも、混合物(例えば、立体異性体のラセミ混合物など)への言及および個々の立体異性体への言及を意図している。必要であれば、個々の立体異性体は、当分やでよく知られている技術を用いて分離することができる。
【0028】
本発明は、本発明の化合物が、親芳香化学物質と実質的に同じ香味/香気プロファイルを有するが、親芳香化学物質のアレルゲン性が実質的に低下していることを実現したことに基礎を置いている。リナロールまたは関連化合物の6,7-位の二重結合での自動酸化によって形成されたヒドロペルオキシドが、強力な感作物質であることが示唆されており、これらの化合物およびこれらのエステル類の使用が制限される結果になっていた。電子が豊富な、容易に酸化することができる二重結合が、本発明の化合物においては存在しない。したがって、これらの感作物質生成の可能性は、低減され、あるいは除去されている。
【0029】
本明細書の化合物は、これらの化合物がそれからもたらされる化合物に対して「イソドニック(isodonic)」であると考えることができる。「イソドニック」によって、本質的に同じ香気プロファイルを有することを意味する。しかし、これらの化合物は、典型的には、改良された安定性、香気の強さ、ならびに/または改良された他の物理的特性および/もしくは化学的特性を有しうる。
【0030】
本発明は、本発明の化合物およびこれらの混合物の、香味料および/または香料としての使用を提供する。
【0031】
本発明はまた、改良された芳香、香り、または香気の特性を有する組成物、製品、調合物、または物品であって、上述した本発明の化合物または化合物混合物を含むものを提供する。
【0032】
本発明はまた、組成物、製品、調合物、または物品の味特性または香味特性を付与、改善、増強、または修正するための方法であって、前記組成物、製品、調合物、または物品に、香味に有効な量の上述した本発明の化合物または化合物混合物を添加する工程を含む方法を提供する。
【0033】
組成物、製品、調合物、または物品の芳香、香り、または香気の特性を付与、改善、増強、または修正するための方法であって、前記組成物、製品、調合物、または物品に、芳香、香り、または香気に有効な量の、上述した本発明の化合物または化合物混合物を添加する工程を含む方法も提供する。
【0034】
本明細書の化合物は、誘導体化されていない香料または香味料化合物を含むことができる実質的に任意の製品中、あるいは天然か合成かにかかわらず他の香料中に含めることができる。例としては、漂白剤、洗剤、香味料および香料、アルコール飲料を含む飲料などを挙げることができる。本発明の化合物は、石鹸、シャンプー、ボディデオドラント剤および発汗抑制剤、繊維処理用の固形もしくは液体洗剤、織物用柔軟剤、(家庭用および工業用の使用の両方のための食器または様々な表面の洗浄用の)洗剤組成物および/または多目的洗浄剤などの用途に使用することができる。もちろん本化合物の使用は上記製品に限定されない。香料工業における他の最近の用途、すなわち、石鹸およびシャワーゲル、衛生用品、またはヘアケア製品の香り付け、ならびにボディデオドラント剤、エアフレシュナーおよび化粧品調合物、またさらには高級香料、すなわち香水およびコロンなどがある。
【0035】
本発明の化合物には、食品、香味料、飲料(例えば、ビールおよびソーダ)、義歯洗浄剤(タブレット)、香味が付けられた経口送達製品(例えば、ロゼンジ、キャンディ、チューインガム、マトリックス、薬剤等)などにおける用途も見出される。これらの用途を以下により詳細に説明する。
【0036】
本発明の化合物は、芳香成分として、単一化合物またはその混合物として、好ましくは芳香組成物の少なくとも約30重量%の量、より好ましくは芳香組成物の少なくとも約60重量%の量で使用することができる。これらの化合物は添加成分なしで、その純粋な状態であるいは混合物で使用することができる。個々の化合物の香気的な特徴はそれらの混合物中にも存在し、これらの化合物の混合物を芳香成分として使用することができる。このことは、化合物の混合物を使用することによって分離および/または精製工程を回避できる場合に特に有利である。
【0037】
上述した用途のいずれにおいても、本発明の化合物は単独で、あるいは互いに混合して、あるいは他の芳香成分、溶媒、または当分野で通常使用される補助剤と混合物して使用することができる。これらの共成分の性質および多様さをここでより詳細に説明する必要はなく、さらにそれはあまり労力を要するものではない。当分野の技術者は、その一般的な知識によって、また、香り付けされる製品の性質および所望の臭覚的効果の関数として、共成分を選択することができるであろう。
【0038】
これらの芳香成分は一般に、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、亜硝酸エステル、テルペン炭化水素、硫黄および窒素含有複素環化合物、ならびに天然もしくは合成由来のエッセンシャルオイルなどの多様な化学品物質種に属する。これらの数多くの成分が、S.Arctander、「Perfume and Flavor Chemicals」、1969年、Montclair,N.J.、USAなどの参考書に記載されている。その内容全体またはそのより最近の版、あるいは同種の他の出版物を参照により本明細書に組み込む。
【0039】
本発明の化合物をさまざまな製品中に組み込ませうる割合は、広い範囲の値で変化する。これらの値は、香り付けしようとする物品または製品の性質、および追求する香りの効果、ならびに、本化合物が芳香共成分、溶媒、または当分野の現在の補助剤と混合して使用される場合には所与の組成物中の共成分の性質に応じて決まる。
【0040】
例として、本発明の化合物は、典型的には、これらが組み込まれた芳香組成物の重量に対して約0.1〜約10重量%、またはそれ以上の濃度で存在する。本化合物を上述した様々な消費者用製品を香り付けするために直接適用する場合、上述した濃度よりはるかに低い濃度を用いることができる。
【0041】
本化合物は、漂白剤を含有する洗剤、および活性剤〔例えば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、次亜ハロゲン酸塩(特に、次亜塩素酸塩)、過酸化漂白剤(例えば、過ホウ酸塩等)など〕に使用することができる。本化合物は、ボディデオドラント剤および発汗抑制剤(例えば、アルミニウム塩を含有するものなど)にも使用することができる。これらの実施態様を以下により詳細に説明する。
【0042】
本発明の化合物に加えて、本明細書の組成物は、洗浄用界面活性剤、および任意で、1種以上の追加の洗剤成分〔クリーニング性能の補助または向上のための物質、洗浄される基材の処理のための物質、あるいは洗剤組成物の審美性を改変するための物質(例えば、香水、着色剤、染料等)を含む〕を含む。本明細書で典型的に約0.5〜約90重量%の濃度で有用である合成洗浄用界面活性剤の非限定的な例としては、従来のC1~18アルキルベンゼンスルホネート(「LAS」)、および一級の、分枝鎖の、かつランダムなC10~20アルキルスルフェート(「AS」)などを挙げることができる。合成洗剤だけを組み込む好適な組成物は、約0.5~50%の洗剤濃度を有する。石鹸を含む組成物は、約10〜約90%の石鹸を含むことが好ましい。
【0043】
本明細書に記載の組成物は、いずれも当技術分野でよく知られている他の成分(例えば、酵素、漂白剤、織物柔軟剤、移染抑制剤、泡抑制剤、およびキレ−ト剤など)を含むことができる。
【0044】
本発明の化合物を、飲料に混入させて、飲料に様々な香味を付与することができる。飲料組成物は、コーラ飲料組成物であってよく、さらに、コーヒー、茶、乳製品飲料、果汁飲料、柑橘飲料、レモン−ライム飲料、ビール、モルト飲料、または他の着香飲料であってもよい。これらの飲料は液体形態でも粉末形態でもよい。飲料組成物はさらに、1種以上の香味料;合成着色料;ビタミン添加剤;保存料;カフェイン添加剤;水;酸味料;増粘剤;緩衝剤;乳化剤;および/または果汁濃縮物を含むこともできる。
【0045】
使用することができる人工着色剤には、カラメル色素、黄色6号、および黄色5号が含まれる。有用なビタミン添加剤には、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC(アスコルビン酸)、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン酸、および葉酸が含まれる。適切な保存料には、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸カリウムが含まれる。使用することができる塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化マグネシウムを挙げることができる。乳化剤の例は、アラビアゴムおよび高純度ゴムであり、有用な増粘剤は、ペクチンである。適切な酸味料には、クエン酸、リン酸およびリンゴ酸が含まれ、潜在的な緩衝剤には、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸カリウムが含まれる。
【0046】
飲料は、例えば、炭酸コーラ飲料であってよい。pHは一般に約2.8であり、これらの組成物用のシロップを作製するために以下の成分:香味料濃縮物(本発明の化合物を1種以上含む)(22.22 ml)、80%リン酸(5.55 g)、クエン酸(0.267 g)、カフェイン(1.24 g)、人工甘味料、シュガーまたはコーンシロップ(味をつけるため、実際の甘味料に応じて)、およびクエン酸カリウム(4.07 g)を用いることができる。飲料組成物は、例えば、炭酸水250mlに対してシロップ50 mlの割合で、前記のシロップを炭酸水と混ぜることによって調製することができる。
【0047】
本発明の化合物を1種以上含む、着香された食品および薬剤組成物も調製することができる。当分野の技術者によく知られている技術を用いて、本発明の化合物を従来の食材に混ぜ込むことができる。あるいは、本化合物をポリマー性粒子中に組み込み、次いでこれを、通常固体または半固体の基材である経口送達可能なマトリックス材料内および/または表面上に分散させることができる。咀しゃくできる組成物に使用する場合、この組成物が咀しゃくされたときに、経口送達可能なポリマー性マトリックス材料中に本発明の化合物が放出され、口の中に保持され、それによって組成物の香味が長引く。乾燥した粉末および混合物の場合、香味は、製品が消費されたときにもたらされ、あるいは組成物がさらに加工されたときにマトリックス材料中に放出される。2つの香味料をポリマー性粒子と混合する場合、添加剤の相対的な量を選択して、化合物を同時に放出させ且つ用い尽くすことができる。
【0048】
本発明の香味剤組成物には、経口送達可能なマトリックス材料;経口送達可能なマトリックス材料中に分散された多数の水溶性ポリマー性粒子(ポリマー性粒子が個々に内部細孔の網目構造を形成し、かつ消化管中で非分解性であるもの);および、経口送達可能なマトリックス材料中に分散された、および内部細孔の網目構造内に捕捉された1種以上の本発明の化合物を含んでいてよい。本発明の化合物は、マトリックスが口内で噛まれて溶解した時、あるいは、液体の添加、ドライブレンド、攪拌、混合、加熱、ベーキングおよび調理からなる群から選択されるさらなる加工を受けた時に放出される。経口送達可能なマトリックス材料は、ガム、ラテックス材料、結晶化した砂糖、無定形の砂糖、フォンダン、ヌガー、ジャム、ゼリー、ペースト、パウダー、ドライブレンド、脱水食品ミックス、焼成製品、バター、生地、錠剤およびロゼンジからなる群から選択される。
【0049】
香味のないガムベースを、本発明の化合物または化合物混合物と混合して、所望の香味料濃度にすることができる。このようなガムをベースにした製品を製造する方法の1つでは、ブレードミキサーを約110F(43℃)に加熱し、軟化させるためにガムベースを予備加熱し、次いでガムベースをミキサーに加え、約30秒間混合する。次いで、本発明の化合物または化合物混合物をミキサーに加え、適度の時間混合する。次いで、ガムをミキサーから取り出し、暖かい間にワックス紙上でロールしてスティックの厚さにする。
【0050】
本発明の化合物は、制御された方法で香料を放出することができる系に組み込むことができる。これらには、エアフレッシュナー、洗濯用洗剤、織物用柔軟剤、脱臭剤、ローション、および他の家庭用品などの基材が含まれる。香料は、一般に、本明細書に記載されたエッセンシャルオイルの1種以上の誘導体であり、それぞれさまざまな量で存在する。米国特許第4,587,129号には、最高で90重量%の香料または香油を含有するゲル製品の調製方法が記載されている。この内容全体を参照により本明細書に組み込む。これらのゲルはヒドロキシ(低級アルコキシ)2-アルケノエート、ヒドロキシ(低級アルコキシ)低級アルキル2-アルケノエート、またはヒドロキシポリ(低級アルコキシ)低級アルキル2-アルケノエート、およびポリエチレン系不飽和架橋剤を有するポリマーから調製することができる。これらの材料は、継続的な徐放特性、すなわち、芳香成分を長期間にわたって放出する特性を有する。有利には、アルデヒド基を含むこれらの誘導体の全部または一部を改変してアセタール基を含むようにすることができる。このアセタール基は加水分解してアルデヒド化合物を生成しながら、配合物に長期間にわたる芳香の放出をもたらすことができる。
【0051】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
無水N-ヘキサンおよびカリウムtert-ブトキシド(3.0当量)中のリナロールの混合物に、CHBr3(2.0当量)を、窒素雰囲気下、-20℃で、2時間に亘って滴下した。次いで、この混合物の温度を室温に上昇させ、一晩攪拌した。
【0053】
塩水を添加し、溶液を石油エーテルで抽出した。合わせた有機抽出液をNa2SO4で乾燥し、濾過し、蒸発させてリナロールのジブロモシクロプロパン誘導体を得た。
【0054】
上記のジブロモシクロプロパン誘導体の、無水THF溶液および無水tert-ブタノール(4.4当量)溶液に、リチウム顆粒(11当量)を少しずつに分けて40℃で添加した。この混合物を、この温度で30分攪拌した後、適当な時間75℃にて加温した。この混合物を塩水にゆっくりと添加し、石油エーテルで抽出し、Na2SO4で乾燥し、蒸発させて、リナロールのシクロプロパン化誘導体を得た。
【0055】
次いで、リナロールのシクロプロパン化誘導体を塩化アセチルと反応させてリナロールアセテートのシクロプロパン化誘導体を製造した。
【0056】
本発明の主題を開示してきたが、本発明の多くの変更形態、置換形態および変異形態が本発明に照らして可能であることは明らかである。具体的に説明した態様以外で本発明を実施できることを理解されたい。こうした変更形態、置換形態および変異形態は本出願の範囲内であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはC1〜5アルキルであり(但し、式(I)においてRがメチルである場合、RはHまたはC2〜5アルキルであることを条件とする);
は、炭素原子1個〜約12個を有する直鎖状もしくは分枝状の脂肪族基、または環式基、複素環基、もしくは芳香族基であり;かつ、
およびRは、それぞれ独立して、HまたはCH3である)
のいずれかを有する化合物。
【請求項2】
Rがメチルであり、Rがエチルである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
R、R、およびRが、それぞれメチルである、請求項1に記載の式(II)の化合物
【請求項4】
請求項1または2で定義した式(I)の化合物の製造方法であって、下記式:
【化2】

(式中、RおよびRは、式(I)に対して定義したものと同様である)
の親化合物をシクロプロパン化する工程を含む、製造方法。
【請求項5】
請求項1または3で定義した式(II)の化合物の製造方法であって、下記式:
【化3】

(式中、RおよびRは、式(II)に対して定義したものと同様である)
の親化合物をシクロプロパン化して下記式:
【化4】

の生成物を生成させる工程と、
前記生成物をエステル化して式(II)の化合物を生成させる工程と
を含む、製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した化合物の、香味料または香料としての使用。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した化合物で処理された基材。
【請求項8】
基材を処理して前記基材に香味/香り放出特性を付与する方法であって、前記基材を請求項1〜3のいずれか一項で定義した化合物で処理する工程を含む、方法。
【請求項9】
芳香、香味、または香気の放出特性を有する組成物、製品、調合物、または物品であって、請求項1〜3のいずれか一項で定義した化合物または化合物混合物を、任意で、他の芳香成分、溶媒、または当分野で現在用いられている補助剤と混合して含む、組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した前記化合物または化合物混合物が、少なくとも30重量%の量で存在する、請求項9に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した前記化合物または化合物混合物が、少なくとも60重量%の量で存在する、請求項10に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項12】
香水、香料またはコロン、石鹸、バス用またはシャワー用ゲル、シャンプーまたは他のヘアケア製品、化粧品調合物、ボディオドラント剤、デオドラント剤または発汗抑制剤、エアフレッシュナー、液状または固形の繊維用洗剤または柔軟剤、漂白剤製品、殺菌剤、または汎用性の家庭用または工業用洗浄剤の形態の、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した前記化合物または化合物混合物が、他の洗剤成分、溶媒、または補助剤と混合されている、請求項12に記載の洗剤組成物、洗剤製品、洗剤調合物、または洗剤物品。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した前記化合物または化合物混合物が、他の漂白剤成分、溶媒、または補助剤と混合されている、請求項12に記載の漂白剤組成物、漂白剤製品、漂白剤調合物、または漂白剤物品。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した前記化合物または化合物混合物が、他の殺菌剤成分、溶媒、または補助剤と混合されている、請求項12に記載の殺菌剤組成物、殺菌剤製品、殺菌剤調合物、または殺菌剤物品。
【請求項16】
前記化合物または化合物混合物が、他のボディオドラント剤成分、デオドラント剤成分、もしくは発汗抑制剤成分、溶媒、または補助剤と混合されている、ボディオドラント剤、デオドラント剤または発汗抑制剤の形態の、請求項12に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項17】
請求項1〜3のいずれか一項で定義した化合物または化合物混合物を含む、改良された香味または味の特性を有する組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項18】
他の飲料成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、飲料の形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項19】
他の香味料成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、香味料の形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項20】
他の食品成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、食品の形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項21】
他のチューインガム成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、チューインガムの形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項22】
他の薬剤成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、薬剤の形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項23】
他のマトリックス材料成分、溶媒、または補助剤を任意で含む、経口送達可能なマトリックス材料の形態の、請求項17に記載の組成物、製品、調合物、または物品。
【請求項24】
組成物、製品、調合物、または物品の味特性または香味特性を付与、改善、増強、または修正するための方法であって、前記組成物、製品、調合物、または物品に、香味に有効な量の請求項1〜3のいずれか一項に定義した前記化合物または化合物混合物を添加する工程を含む、方法。
【請求項25】
前記組成物、製品、調合物、または物品が、飲料、香味料、食品、チューインガム、薬剤、または経口送達可能なマトリックスの形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組成物、製品、調合物、または物品の芳香、香り、または香気の特性を付与、改善、増強、または修正するための方法であって、前記組成物、製品、調合物、または物品に、芳香、香り、または香気に有効な量の請求項1〜3のいずれか一項に定義した前記化合物または化合物混合物を添加する工程を含む、方法。
【請求項27】
前記組成物、製品、調合物、または物品が、香水、ボディオドラント剤、デオドラント剤もしくは発汗抑制剤、洗剤、漂白剤製品、または殺菌剤の形態である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
パッケージング材料と、パッケージング材料の中に入った芳香、香気、香り、味、または香味の増強剤とを含む製品であって、
前記増強剤が、それが添加された組成物、製品、調合物、または物品の芳香、香気、香り、味、または香味の増強に有効であり、
前記パッケージング材料が、芳香、香気、香り、味、または香味を増強するために前記増強剤を用いることができることを表示するラベルを含み、かつ、
前記増強剤が、請求項1〜3のいずれか一項に定義した化合物または化合物混合物である、製品。
【請求項29】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
請求項4、5、6、8、24、および25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項7、9、10〜23、および28のいずれか一項に記載の組成物または製品。

【公表番号】特表2008−530196(P2008−530196A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555703(P2007−555703)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000575
【国際公開番号】WO2006/087571
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(506426328)フレクシトラル・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】