説明

芳香族およびヘテロ芳香族をCO2でカルボキシル化する方法

本発明は、COを用いる芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COを用いる芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸は、長きにわたり知られている。それらは、とりわけ、多くの医薬品のビルディングブロックであり、したがって、それらの選択的合成は決定的に重要である。挙げられ得るヘテロ芳香族カルボン酸の一例は、チオフェン-2-カルボン酸であり、その誘導体は殺菌効果を有する。
【0003】
芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の多数の異なる製造方法が存在する。全ての方法は、実質的に多段階である。芳香族またはヘテロ芳香族のアシル化と、対応するカルボン酸を与える続く酸化からなる2段階法は、特に広く用いられる。通常、対応するフリーデル-クラフトアシル化を、無水溶媒中、化学量論量のルイス酸の存在下で行う(例えば独国特許出願公開第102007032451号明細書、欧州特許出願公開第178184号明細書参照)。
【0004】
このような反応を実験室から産業スケールに移すことは、溶媒が別の角度から環境負荷であるため、相当な課題を与える。生成物を単離する際に、塩含量の高い比較的大量の廃水も生じ、これらを後処理せねばならない。アリールケトンの酸化は、通常、有機過酸化物または無機酸化剤を用いて行われる(Doddら著、「Synthesis」1993、第295〜297頁、米国特許第5739352号明細書)。酸化剤は別の角度から環境負荷であり、かつ、反応は高発熱性であるため、このような酸化を産業スケールに移すことは、同様に、相当な課題があることを意味する。
【0005】
芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の効率的な合成法は、COを用いるいわゆる直接カルボキシル化である、さらに、COは無毒であり、簡単に入手でき、費用効果があるC源である。それにも関わらず、COを用いる芳香族およびヘテロ芳香族の直接カルボキシル化の文献例はほんのわずかである。
【0006】
米国特許第2948737号明細書には、ヘテロ芳香族のそのような直接カルボキシル化が記載されている。そこには、気体状COを用いる直接カルボキシル化は、>300℃の温度で、酸結合剤の存在下、オートクレーブ中1570バールの反応圧で、高くない収率(8%)で可能であることが開示されている。
【0007】
米国特許第3138626号明細書には、気体状COを用いる直接カルボキシル化を、100℃より高い温度で、AlClの存在下で、オートクレーブ中200バールの反応圧で、高くない収率(22%)で行うことが可能であることが記載されている。
【0008】
芳香族およびヘテロ芳香族のカルボン酸の多くは、かなりより低い分解温度を有するために、そのような反応を産業スケールに移すことは高い反応温度に関して相当な課題があることを意味する。
【0009】
Ohishiらは、(「Angew. Chem Int. Ed. 2008」、第47巻、第5792〜5795頁)に、有機溶媒中、ボロン酸エステル、均一系銅-カルベン触媒およびCOからなる混合物を用いて、顕著により低い温度(70℃)で、芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸を製造した実験を記載している。
【0010】
Oshimaらは、(「Org. Lett.、2008」、第10巻、第2681〜2683頁)に、室温で、有機亜鉛化合物、均一系ニッケル-リン触媒および気体状COからなる混合物を用いて芳香族カルボン酸を製造した実験を開示している。
【0011】
これら反応を産業的方法に移す際の1つの課題は、コストが高い均一系触媒の使用であり、それらは再利用することができない。生成物を単離する際に、高い塩含量の比較的大量の廃水も生じ、これらを後処理せねばならない。
【0012】
したがって、産業的スケールで行うこともできる、簡単に実施可能な芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の費用効率的方法に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007032451号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第178184号明細書
【特許文献3】米国特許第5739352号明細書
【特許文献4】米国特許第2948737号明細書
【特許文献5】米国特許第3138626号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Doddら著、「Synthesis」1993、第295〜297頁
【非特許文献2】Ohishiら著、「Angew. Chem Int. Ed. 2008」、第47巻、第5792〜5795頁
【非特許文献3】Oshimaら著、「Org. Lett.、2008」、第10巻、第2681〜2683頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、既知の先行技術から進展し、本発明の技術的課題は、比較的簡単に実施され、費用効率的であり、より高い収率をもたらす、芳香族およびヘテロ芳香族カルボン酸の製造方法を提供することである。所望の方法は、環境的負荷ができる限り低く、安全な温度制御をも有する。大量の塩様の廃水の生成も避けるべきである。特に、チオフェンおよび/またはフランおよび/またはそれらの誘導体のカルボキシル化に、本発明の方法が使用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、上記の課題は請求項1に記載の方法により達成される。好ましい態様は、従属する請求項に見られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
芳香族およびヘテロ芳香族をカルボキシル化するための本発明の方法は、少なくとも次の工程を含む:
a)芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物を含む第1液状成分を供給する工程、
b)有機塩基および/または無機塩基を含む第2液状成分を供給する工程、
c)第1液状成分と第2液状成分とを混合する工程、
d)工程c)からの混合物とCOとを混合し、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物とCOとを反応させる工程。
【0018】
本発明の方法の工程a)において、1種の芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物を少なくとも含む第1液状成分を供給する。ここで、芳香族化合物を芳香族と略し、ヘテロ芳香族化合物をヘテロ芳香族と略する。
【0019】
1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族を出発物質として使用し、本発明の方法においてカルボキシル化させる。
【0020】
出発物質を液体状態で供給する。これに関して、出発物質(芳香族、ヘテロ芳香族)はすでに液体状態で存在し得る。この場合、工程a)において第一液状成分と称される成分は、液状出発物質であり得る。同様に、出発物質を初めに溶媒中に溶解させ、この溶液を第1液状成分として供給することも考えられる。
【0021】
芳香族およびヘテロ芳香族は、共役二重結合および/または遊離電子対または非占有p軌道の平面、環状構造モチーフを有する有機化合物を意味するとして理解される。
【0022】
共役二重結合において、結合電子について比較的低いエネルギーレベルが存在し、そのため、共役二重結合は、他の(非共役)二重結合系と比較して減少したおよび変化した反応性によって区別される。
【0023】
芳香族の環状構造モチーフは炭素原子によってのみ形成されるが、ヘテロ芳香族は、1以上のヘテロ原子、すなわち環状構造中に非炭素原子、例えば酸素、窒素および/または硫黄を有する。
【0024】
使用可能な芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物は、ベンゼン誘導体、特に側鎖においてヘテロ原子を有するもの、例えばアニソールまたはジメチルアニリン、6員環へテロ芳香族、例えばピリジン、5員環へテロ芳香族、例えばピロール、7員環芳香族、例えばアゼピン、チエピン、オキセピンである。
【0025】
π電子供与体として作用し環内の電子密度を高める1個以上のヘテロ原子を有するへテロ芳香族を使用することが好ましい。
【0026】
電子密度が6員環と比較して高いため、5員環を有する芳香族および/またはへテロ芳香族を使用することが好ましい。
【0027】
本発明の方法において、チオフェンおよび/またはフラン、および/または、チオフェン誘導体および/またはフラン誘導体を使用することがきわめて好ましい。誘導体は、基本物質(ここでは、例えばフランまたはチオフェン)から誘導することができる化合物を意味すると理解される。誘導体は、基本物質の分子内の少なくとも1箇所において、別の原子または別の原子群が存在することを特徴とする。
【0028】
カルボキシル化は、有機化合物中にカルボキシル基を導入することを意味すると理解される。カルボキシル化は、カルボン酸を製造する反応である。
【0029】
本発明の方法の工程b)において、少なくとも有機塩基および/または無機塩基を含む第2液状成分を供給する。第2液状成分は、それ自身が塩基であってよく、同様に、第2液状成分は有機塩基および/または無機塩基が存在する溶液であることが考えられる。
【0030】
使用する塩基は、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)および/またはヘキシルリチウムであることが好ましい。
【0031】
本発明の方法の工程c)において、第1液状成分と第2液状成分との混合を行う。
【0032】
液状成分の混合を、−100℃〜40℃の範囲の温度で、1〜60バールの圧力で行うことが好ましい。
【0033】
2つの液状成分のできるだけ均質な混合物を生成することが工程c)の目的である。
【0034】
本発明の方法の工程d)において、工程c)より得られる混合物とCOとの混合を行う。COを、気体状態、液体状態、固体状態または超臨界状態で、または、溶液で、塩基および芳香族および/またはヘテロ芳香族の混合物に添加することができる。COの添加を気体状態または液体状態で行うことが好ましい。
【0035】
工程d)における混合を、−100℃〜60℃の範囲の温度、1〜60バールの圧力で行うことが好ましい。
【0036】
芳香族および/またはヘテロ芳香族のカルボキシル化を、COを添加することで開始させる。芳香族および/またはヘテロ芳香族とCOとの間の反応を、所望する転化率まで、または、達成可能な転化率で行う。
【0037】
所望のカルボキシル化生成物を単離し、任意に精製するために、反応物を反応させた後で反応混合物を後処理することが好ましい。したがって、本発明の方法は、工程d)に続くさらなる工程e):
e)工程d)からの混合物を回収し、カルボキシル化生成物を単離する工程
を含むことが好ましい。
【0038】
カルボキシル化芳香族またはカルボキシル化ヘテロ芳香族を単離するため、いまだなお存在する多量の塩基を捕捉するために反応混合物にまず初めに酸を供給することが好ましい。例えば抽出および/または蒸留および/またはクロマトグラフィーにより、カルボキシル化生成物を単離することができる。
【0039】
本発明の方法は、連続的にまたは不連続に行うことができる。同様に、本発明の方法のいくつかの工程を連続的に行い、その他の工程を不連続に行うことも考えられる。少なくとも工程c)およびd)を連続的に行うことが好ましい。
【0040】
本発明の目的に対して、連続的工程は、反応器中への化合物(出発物質)の供給と反応器からの化合物(生成物)の取出しが同時に、しかし、空間的には別々に行われる工程であり、一方、不連続的な工程の場合には、一連の化合物(出発物質)の供給、任意の化学反応および化合物(生成物)の取出しが、続いて進行する。バッチ処理(不連続処理)の場合に生じるような、充填工程および排出工程の結果として生じる反応器停止時間、および、安全注意、反応器に固有の熱交換特性ならびに加熱処理および冷却処理のための長い反応時間を避けることができるため、連続的な方法は経済的に有利である。
【0041】
工程c)および/または工程d)における化合物の好ましくは連続的な混合を、好ましくは静的ミキサーを用いて、行うことが好ましい。
【0042】
動的ミキサーの場合、混合物の均質化は撹拌エレメント(例えば撹拌装置)を用いて達成されるのに対し、静的ミキサーの場合、流体の流動エネルギーが用いられる。輸送ユニット(例えばポンプ)が例えば静的混合型内部装置を備えた管に液体を通過させ、ここで、内部装置の種類によって、主流軸に続く液体が部分流に分けられ、互いに渦を巻き、混合される。
【0043】
従来方法技術において使用されるような異なる種類の静的ミキサーの総説は、例えば文献「Statische Mischer und ihre Anwendungen [静的ミキサーおよびそれらの応用]」、M. H. Pahl および E. Muschelknautz著、Chem.-Ing.-Techn. 52(1980) No.4、第285〜291頁に示される。
【0044】
ここで挙げられる静的ミキサーの例は、SMXミキサー[米国特許第4062524号明細書参照]である。それらは、ストリップの交差で互いに結合し混合する物質の主流方向に対してある角度に固定された平行なストリップからなる、互いに垂直な2以上の格子からなる。十分な混合は主流方向に対して横断する選択的な方向に沿ってのみ起こるため、個別の混合エレメントは混合機として適当ではない。したがって、結果として、互いに対して90°回転させた複数の混合エレメントを、次々に配置すべきである。
【0045】
本発明の方法または本発明の工程に対して、マイクロプロセス技術を使用することが有利である。
【0046】
モジュラーマイクロプロセス技術またはマイクロ反応技術のために、ビルディングブロックのような異なるマイクロプロセスモジュールを組み合わせて、完全な製造設備をきわめて小さい型で形成することが可能となる。
【0047】
モジュラーマイクロ反応系は、例えばEhrfeld Mikrotechnik BTS GmbHにより、市販されている。市販されているモジュールは、ミキサー、反応器、熱交換器、センサーおよびアクチュエーターなどさまざまなものを含む。
【0048】
工程c)および/または工程d)において、混合を1以上のいわゆるマイクロミキサーを用いて行うことが好ましい。
【0049】
ここで使用する「マイクロミキサー」という用語は、マイクロ反応器、ミニ反応器、マイクロ熱交換器、ミニミキサーまたはマイクロミキサーという用語で知られる、好ましくは連続操作型の、マイクロ構造化させた反応器を表す。例としては、あらゆる種類の企業(例えばEhrfeld Mikrotechnik BTS GmbH、Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH、Siemens AG、CPC-Cellulare Process Chemistry Systems GmbHなど)より提供される、マイクロ反応器、マイクロ熱交換器、T−ミキサーおよびY−ミキサー、ならびにマイクロミキサーであり、ここで、当業者に通常知られるように、本発明の目的に関して「マイクロミキサー」は、通常、特徴的な、特定する1mm以下の内部寸法を有し、静的混合内部装置を含有する。挙げられ得る静的マイクロミキサーの例は、DE20219871U1に記載されたファセットミキサー(faceted mixer)である。
【0050】
特徴的な寸法を減らすことにより、熱交換処理の他に、混合処理もマイクロミキサー中で従来のミキサーよりもかなりすばやく進行する。したがって、マイクロミキサーにおける処理速度は、従来の装置よりも桁違いに高い場合があり、混合区間は数ミリメートルまで減らされる。
【0051】
本発明の方法の工程d)における芳香族および/またはヘテロ芳香族の反応を、滞留区間に反応混合物を通過させることにより行うことが好ましい。滞留区間が1以上の静的ミキサーを有することが好ましい。
【0052】
全ての成分の計量速度および滞留区間中の反応混合物の流量は、主に、所望する滞留時間および/または達成すべき転化率によって決まる。最大反応温度が高くなるにつれて、滞留時間をより短くすべきである。原則として、反応区域中の反応物は、20秒(20sec)〜400分(400min)、好ましくは1分〜400分、きわめて好ましくは1分〜20分の滞留時間を有する。
【0053】
例えば、流れの量および反応区域の容量によって、滞留時間を制御することができる。反応過程を種々の測定装置を用いて監視することが有利である。この目的について、特に、流動する媒体中で温度、粘度、熱伝導性および/または屈折率を測定する装置および/または赤外スペクトルおよび/または近赤外スペクトル測定装置が適当である。
【0054】
一部の滞留区間の途中で、または、滞留区間全体に沿って、反応混合物中にCOを供給することが考えられる。
【0055】
本発明の方法を、好ましくは、加熱可能なフロー反応器中で行うことができる。好ましい態様において、本発明の方法を行うための反応装置は、互いに独立して加熱させることができる少なくとも2個の区域を含む。第1区域において、芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物および無機塩基および/または有機塩基を含む液状成分の混合を行う(工程c)。第2区域、反応区域において、COの添加および芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物の反応を行う(工程d)。下流工程(工程e)で所望の生成物を単離するために、反応区域の最後で生成物が好ましくは回収され、集められる。
【0056】
実施例を参照することにより本発明をより詳細に説明するが、それらに限定するものではない。
【実施例】
【0057】
〔実施例1〕
COで直接カルボキシル化することによる5-クロロチオフェン-2-カルボン酸の製造
2-クロロチオフェン12.5質量分率およびTHF87.5質量分率の溶液を、受け器1に入れた。n-ブチルリチウム23質量分率およびヘキサン77質量分率の溶液を受け器2に入れた。2つの受け器を、予備加熱区間(0℃)を介して、静的ミキサー(容量0.3ml)に接続させ、その流出流路に、4.3cmの容量および22.6cm/cm-3の容量に対する面積の割合(0℃)を有する滞留エレメントを取り付け、さらなる静的ミキサー(容量0.3ml)の入口につなげた。静的ミキサーの第2入り口に、減圧弁(1.3バール)を介して、COガスボトルを取り付け、その流出流路に0.9cmの容量および40cm/cm-3の容量に対する面積の割合(0℃)を有する滞留エレメントを取り付けた。受け器1から56ml/時の容量速度で反応器を通して溶液を連続的に注入し、受け器2から24ml/時の容積流量で反応器を通して溶液を連続的に注入した。総滞留時間は3.5分であった。反応をHPLCを用いて定期的に監視した。5-クロロチオフェン-2-カルボン酸の相対収率は、>70%であった。0℃で5.7MのHCl溶液において生成物流を消光した。相分離およびn-ヘキサンを用いる水相の洗浄に続いて、合わせた有機相を濃縮し、乾燥させた。5-クロロチオフェン-2-カルボン酸を、精製の目的で、ヘキサン50質量分率、メタノール35質量分率および水15質量分率の溶媒混合物中で溶解させた。その後、メタノールを除去するために、真空で水相を濃縮した。5-クロロチオフェン-2-カルボン酸は、母液を5℃まで冷却した後、白色針状の形状で結晶化する。
【0058】
〔実施例2〕
COで直接カルボキシル化することによる2-フロン酸の製造
フラン5質量分率およびTHF95質量分率の溶液を受け器1に入れた。n-ブチルリチウム23質量分率および77質量分率のヘキサンの溶液を受け器2に入れた。2つの受け器を、予備加熱区間(-30℃)を介して、静的ミキサー(容量0.3ml)に接続させた。その流出流路に、5.4cmの容量および26.3cm/cm-3の容量に対する面積の割合(-30℃)を有する滞留エレメントを取り付け、さらなる静的ミキサー(容量0.3ml)の入口につなげた。静的ミキサーの第2入り口に、減圧弁(1.3バール)を介して、COガスボトルを取り付け、その流出流路に、3.8cmの容量および18.2cm/cm-3の容量に対する面積の割合(0℃)を有する滞留エレメントを取り付けた。受け器1から139ml/時の容積流量で反応器を通して溶液を連続的に注入し、受け器2から40ml/時の容積流量で反応器を通して溶液を連続的に注入した。総滞留時間は2.0分であった。反応をHPLCを用いて定期的に監視した。2-フロン酸の相対収率は>80%であった。0℃で5.7MのHCl溶液において生成物流を消光した。相分離およびn-ヘキサンを用いる水相の洗浄に続いて、合わせた有機相を濃縮し、乾燥させた。5-クロロチオフェン-2-カルボン酸を、精製の目的で、ヘキサン50質量分率、メタノール35質量分率および水15質量分率の溶媒混合物中で溶解させた。その後、メタノールを除去するために、真空で水相を濃縮した。2-フロン酸は、母液を5℃まで冷却した後、黄色がかった針状の形状で結晶化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
a)芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物を含む第1液状成分を供給する工程、
b)有機塩基および/または無機塩基を含む第2液状成分を供給する工程、
c)第1液状成分と第2液状成分とを混合する工程、
d)工程c)からの混合物とCOとを混合し、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物とCOとを反応させる工程
を含む、芳香族およびヘテロ芳香族をカルボキシル化するための方法。
【請求項2】
工程d)に続くさらなる工程e):
e)工程d)からの混合物を回収し、カルボキシル化生成物を単離する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)および/または工程d)を連続的に行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)および/または工程d)における混合を、静的ミキサーを用いて行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
COと芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物との反応をマイクロ反応設備において行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
使用する芳香族化合物および/またはヘテロ芳香族化合物は、以下の系:ベンゼンの誘導体、特に側鎖においてヘテロ原子を有するもの、例えばアニソールまたはジメチルアニリン、6員環へテロ芳香族、例えばピリジン、5員環へテロ芳香族、例えばピロール、チオフェンまたはフラン、およびこれらの化合物の誘導体、7員環芳香族、例えばアゼピン、チエピンまたはオキセピンから選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
使用する無機塩基および/または有機塩基は、以下の系:n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)またはヘキシルリチウムから選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
COを気体状態または液体状態で添加することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程d)において、反応混合物が滞留区間を通過し、ここで、該滞留区間は1以上の静的ミキサーを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程d)において、反応混合物が滞留区間中で20秒〜400分の範囲の滞留時間を費やす、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−515027(P2013−515027A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545253(P2012−545253)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070051
【国際公開番号】WO2011/076679
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】