説明

芳香族アミンを製造する方法及びその製造装置

抽出塔(1)内において、水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物から、少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物を用いて抽出を行って実質的に水から成るラフィネート流と少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む抽出流を形成することにより少なくとも一種の芳香族アミンを得る方法であって、抽出塔(1)は、分割壁(3)により2つの領域(5,7)に分割されており、分離用の液体が抽出塔(1)全体の最小断面負荷を下回る量である場合に、分離すべき液体混合物を分割壁(3)により分割された抽出塔(1)の領域(5、7)の一方に対してのみ供給することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出塔内において少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物を用いて抽出し、実質的に水から成るラフィネート流と少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び芳香族アニリンを含む抽出流を形成することによって、少なくとも一種の芳香族アミンを製造する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、対応する芳香族ニトロ化合物の触媒的水素化により芳香族アミンを製造する方法、及び少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物で抽出することで水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物を分離する抽出塔を有する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
水及び芳香族アミンを含む抽出により分離される液体混合物は、一般的に、芳香族ニトロ化合物を不均一系触媒の存在下で水素化することで芳香族アミンを製造する方法により生じる。この芳香族アミンを製造する方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
芳香族アミンを製造するために、該芳香族アミンを得るための抽出における溶媒として芳香族化合物を使用することが好ましい。抽出により、芳香族アミン及びニトロ化合物を含む抽出相が形成される。この抽出相は、続く分離段階、例えば蒸留段階で、製品として価値のある芳香族アミンとほぼ芳香族ニトロ化合物から成る流体に分離される。従って、除去された芳香族ニトロ化合物は、同様に反応物として、芳香族アミンを製造するための反応器に通過させることができる。
【0005】
対応する芳香族ニトロ化合物を用いて芳香族アミンを抽出することにより水相から芳香族アミンを得る方法の一例は、特許文献2において知られている。抽出に使用される溶媒は、好ましくは芳香族アミンの製造に使用される芳香族ニトロ化合物である。抽出の過程において、芳香族アミンは、芳香族ニトロ化合物中で溶解し、従って、その後、芳香族ニトロ化合物中から蒸留分離によって取り除かれる。
【0006】
上記抽出には、当業者により知られる一般的な装置が用いられる。この装置は、例えば混合機/セトラー(settler)又は抽出塔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP‐B0 507 118
【特許文献2】DE−A10 2006 008 000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、一般的な抽出塔は、その作動中において規定の分離性能を向上させるために、特定の水準の液体負荷が要求されるという欠点がある。しかし、供給の態様が様々である場合、部分的に負荷の渦(load vortice)が広がることとなる。これにより、過度に低い液体負荷及び抽出効率の減退が生じ、ラフィネートの濃縮が達成されなくなる。これにより、芳香族アミンとしてアニリンが使用される場合、下流段階においてアニリンブラックが生じる。
【0009】
本発明の目的は、水及び少なくとも一種の芳香族アミンから抽出により芳香族アミンを得るとともに、分離性能を低減させること無く、水及び芳香族アミンを含む分離されるべき液体混合物の体積流量を可変として作動可能な方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、抽出塔において少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物を用いて抽出を行い、実質的に水から成るラフィネート流と少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む抽出流を形成することで、水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物から少なくとも一種の芳香族アミンを得る方法であって、
抽出塔を、分割壁により2つの領域に分割し、分離用の液体が抽出塔全体の最少の断面負荷を下回る量である場合に、上記分割壁により分割された抽出塔の領域の一方のみに対して分離すべき液体混合物を供給する方法により達成される。
【0011】
本発明において、「実質的に水から成るラフィネート流」とは、ラフィネート流が、少なくとも98質量%の水、より好ましくは少なくとも99.5質量%、特に、少なくとも99.9質量%の水を含むことを意味する。
【0012】
抽出塔の上方における動作限界点は、溢水点(the flood point)により決定され、最大のカラム負荷を定める。最大カラム負荷は、一般的に洪水点負荷を下回る75〜80%である。この値は、抽出塔の最大断面負荷における操作点を定める。種々の供給流、温度、濃度の条件によっては不安定な操作点に達する危険が大きくなるので、一般的に最大カラム負荷は、これより高くは設定されない。
【0013】
抽出塔における負荷の下限は、一般的に約50%の部分負荷である。この部分負荷は、溢水点の約40%の負荷に相当する。しかし、このような低負荷においては、不規則充填物を備えたカラム内におけるバックミキシングが顕著に増加することが知られている。更に、液体を抽出塔に加える液体ディストリビュータでは、所望の液滴サイズを得ることのできる有効範囲が狭くなってしまう。本発明の分割壁によれば、抽出塔の断面積を減少させることができる。典型的には、分割壁は断面が2分割されるカラムの中央に配置される。これにより、抽出塔を極めて良好に低負荷で動作させることができる。分割壁で分割された領域の内の一方のみを動作させる場合、断面負荷は、抽出塔全体の最大カラム負荷と比較して半分の大きさとなっている。従って、分割壁の無い抽出塔と比較して抽出塔の動作範囲を大きく広げることができる。
【0014】
従って、抽出塔における分割壁によれば、少量の液体流が分離される場合であっても、当該分離性能をほとんど損失を生じさせることなく抽出を実行することが可能となる。例えば、抽出塔内で生じる渦の拡大も、分割壁により妨げられるとともに、カラム壁と分割壁の間における断面形状により減少する。抽出塔の部分的な負荷において生じる渦はカラムの径と同じサイズを有し、これによりバックミキシングが増加する。一般的に、バックミキシングが生じると、カラム高さに基づく分離性能を悪化させるので、カラムの高さを増やす必要性が生じる。上記分割壁により、抽出塔の構造物の高さを低い高さとすることができ、分割壁が無い場合において同じ負荷範囲に対して必要な高さと比較して、低い高さで極めて広い負荷範囲に対応させることができる。
【0015】
本発明にかかる方法のさらなる利点は、少なくとも1種の芳香族アミンを製造するための2つの反応器を動作させる場合であっても、水及び芳香族アミンを含み反応により生じる液体混合物を処理するために要求される抽出塔が一つのみであることである。抽出塔に接続された反応器を一つのみ動作させる場合であっても、十分に高純度の芳香族アミンを製品して得るために、十分な分離作用が実現される。
【0016】
抽出塔としては、当業者に知られる任意の抽出塔を用いることができる。好適な抽出塔は、その内部構造を構造化された又は構造化されていない充填物の形態で有する。特に構造化されていない充填物、すなわち一般的な不規則充填物が使用される。好適な不規則充填物は、当業者により知られる任意の不規則充填物である。特に好適な不規則充填物は、例えばポールリングである。
【0017】
抽出塔において構造化された充填物は、抽出塔における頂部の第1供給部及び下部の第2供給部の間に配置される。充填物の使用により、抽出塔内又は抽出塔の領域内において該抽出塔の動作中に液体が均一に分散する。
【0018】
第1の実施の形態において、分割壁は、抽出塔において液体の水位よりも下方の位置、及び頂部における第1供給装置の上方の位置で終端する。分割壁が抽出塔において液体の水位よりも下方で終端しているので、抽出塔において分割壁により分割された双方の領域からの液体は、共通の先端部分に向かって集積する。これにより、抽出塔の頂部において設ける充填レベル測定装置は1個のみで済む。抽出塔において小領域を一つのみ作動させる場合であっても、作動させる領域にかかわらず、1個のみの充填レベル測定装置をもって制御が実行され得る。
【0019】
更に、分割壁が、形成される相境界を貫通する際にそれが有効である。抽出相の底部は、分割壁により2つの領域に分割されないことが好ましい。結果として、抽出の制御に必要な全ての測定装置を抽出塔の底部において一か所のみ設ければ十分である。2つの小領域ごとに分離することは考慮する必要はない。
【0020】
抽出塔の底部における除去すべき液相に分割壁が突出するということは、分割壁の下端が、除去すべき液相と抽出塔内で使用される全ての液相を含む相との間における相境界の下方に存在するということを意味する。
【0021】
分割壁が端から端までに亘らない場合において、抽出塔の一つの領域のみを作動させるために、第2領域において液体がある状態のままにしておくことが好ましい。
【0022】
作動領域及び非作動領域の間において、抽出塔の2つの領域(分割壁により形成される)における平均密度の差異に基づいて生じる静水圧の差に起因して、分割壁の回りに循環流が発生することを防止するために、除去すべき液相と全ての混合物を含む抽出混合物との間の相境界の位置の変化の範囲によって、分割壁の下方又は上方を流れる連続相に到達することがない程度に収まるように、分割壁を抽出塔の底部の除去すべき液体に突出させる必要がある。
【0023】
相境界の高さの変化hsepは、相の密度、2相条件で動作する場合で予期されるホールドアップφ及び抽出塔の中間レベルHactにより、以下の式の通り評価することができる。
【0024】
【数1】

【0025】
また、分割壁の周りの循環流は、分割壁が例えば抽出塔の底部にトレイで終端していて抽出塔の底部が2つの領域に分割されているか、又は分割壁が抽出塔頂部の最大液体レベルを超えて突出し、例えば、抽出塔の頂部を閉塞する蓋部に結合されている場合でも上記循環流は防止される。また、分割壁により、抽出塔全体を2つの領域に分割するようにしても良い。底部又は頂部の何れか、或いは、抽出塔の他の底部及び頂部が、分割壁により2つの領域に分割されている場合、抽出塔の各小領域に別々の入口及び出口を設ける必要がある。例えば、底部を2つの領域に分割する場合、2つの分割底部にそれぞれ、底部の除去すべき液相の除去のための出口を設ける必要がある。抽出塔の頂部に存在する液相が分離されている場合、抽出塔の頂部に集積する液体を排出するために、それぞれの領域において排出スタブを設ける必要がある。対応する分割領域に分けられる場合、抽出を制御及び調節することが可能となるように、それぞれの領域において専用の測定装置を設ける必要がある。この目的のために、抽出塔の頂部に存在する液体及び抽出塔の底部に存在する液体は、分割壁によって分割されないことが好ましい。
【0026】
液体の密度の差異により、抽出塔は、一般的に、実質的に水から成るラフィネート流が抽出塔の底部から排出されるように作動する。本明細書において「実質的に水から成る」とは、抽出塔の頂部において排出されるラフィネート流が、少なくとも98質量%、好ましくは99.5質量%、特に少なくとも99.99質量%の水を含むことを意味する。
【0027】
従って、抽出塔の底部において除去すべき液相は、実質的に無水の、少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む余剰相である。本明細書において、実質的に無水とは、余剰相が無関係な相を全く含まないか、或いは無関係な相を1質量%以上含まないことを意味する。余剰相が無関係な相を含まない場合とは、余剰相における水の比率が、温度及び圧力により余剰相が溶解してしまう程度しかない比率であることを意味する。
【0028】
水及び芳香族アミンを含む分離すべき液体混合物の量に応じて抽出塔を作動させるために、完全に又は分割壁により分割される一つの領域のみにおいて、第1供給部が抽出塔の上部領域に開口され、第2供給部が、分割壁により分割される各領域における底部の上方で抽出塔の下端に開口される。
【0029】
溶媒として機能する芳香族ニトロ化合物は、通常、抽出塔の頂部において第1供給部を介して供給される。水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む分離すべき液体混合物は、底部上方で抽出塔の下端の第2供給部を介して供給される。このような供給物と抽出塔の相互の反対側端部における溶媒の供給により、溶媒及び供給物の対向流が実現される。
【0030】
更に、抽出塔において分割された各領域を作動させることが可能となるように、該抽出塔内に導入すべき液体を抽出塔の個々の領域へ分離して供給可能とする必要がある。この目的のために、例えば、個々の供給部のそれぞれにおいて、好適なバルブを用いて閉塞を行うことが可能である。バルブは、分離すべき水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物の総量に応じて制御可能であることが好ましい。
【0031】
抽出塔の1個の領域のみの作動を延長する場合において、抽出塔の第2領域において長時間同じ液体が停滞することを防止するために、定期的に間隔をとって各領域における作動を切り替えることが好ましい。
【0032】
芳香族アミンを得るために使用される芳香族ニトロ化合物は、好ましくはニトロベンゼンであり、芳香族アミンは、好ましくはアニリンである。
【0033】
更に、本発明は、芳香族アミンを、対応する芳香族ニトロ化合物を触媒的に水素化することで製造する方法であって、以下の工程:
(a)芳香族ニトロ化合物及び水素を含む反応混合物を不均一系触媒の存在下に転化し、反応平衡において、芳香族アミン、水、及び転化されていない水素を含む生成混合物を得る工程、
(b)上記生成混合物から水素を除去する工程、
(c)上記生成混合物を脱水して、生成物としての実質的に無水の芳香族アミンと、水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物と、を得る工程、
(d)水及び芳香族アミンの残留物を含み、上述の方法における工程(c)で得られる液体混合物を、ニトロ芳香族アミンで抽出することで分離させ、実質的に水から成るラフィネート流と、芳香族ニトロ化合物及び芳香族アニリンを含む抽出流と、を得る工程、
を含む。
【0034】
工程(d)において、水及び芳香族アミンを含む液体混合物を抽出するための上述の方法を用いることで、要求される芳香族アミンに応じて、種々の負荷状態において製造方法を実施することができる。また、製造方法を実行するための2つの分離した装置を一つのみの抽出塔に連結し、及び2つの反応ラインの一つのみ動作させるか、或いは両方の反応ラインを動作させることも可能である。
【0035】
芳香族アミンを製造するために使用される好適な反応器は、芳香族ニトロ化合物から芳香族アミンへの水素化に好適な、当業者により知られる任意の反応器である。従来から使用される反応器は、例えば、反応のため使用される不均一系触媒が流動微粒子として存在する流動床反応器である。このような流動床反応器において、反応は気相で実行される。この目的のために、好ましくは水素及び芳香族ニトロ化合物の両方が気相状態で添加される。しかし、また、芳香族ニトロ化合物を液相の状態で添加し、それを反応器で気化させても良い。しかし、気相状態で添加されることが好ましい。
【0036】
反応温度を調節するために、流動床反応器において、吸熱反応のための熱を供給する、又は発熱反応の場合には熱を除去するための伝熱装置を設けても良い。伝熱装置は、プレート状又は管状であり、垂直方向、水平方向、又は傾斜した態様で流動床反応器内に配置される。好適な熱媒体が、伝熱装置の管又はプレートを介して流れる。
【0037】
しかしながら、流動床反応器の他にも好適な反応器の例として、触媒を含む管状反応器又は反応塔がある。この場合、触媒は、好ましくは充填物の形態で反応塔又は管状反応器に取り付けられる。
【0038】
芳香族ニトロ化合物から芳香族アミンへの水素化のための好適な触媒は、芳香族アミンを水素化するために使用される微粒子の、担持された又は担持されていない触媒である。特に好適な触媒は、周期表の1及び/又は5〜8族の重金属を含むものである。触媒は、銅、パラジウム、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトの1以上の元素を含むことが好ましい。
【0039】
使用される芳香族ニトロ化合物のほぼ完全な転化を達成するために、余剰な水素をもって反応を実行することが好ましい。反応中に生成する生成混合物は、一般的に、気体の状態であり、未反応の水素を含む。次の工程において、先ず、生成混合物から水素を取り除く必要がある。この目的のために、芳香族アミン及び水を凝縮する凝縮器を使用することが好ましい。気体成分、特に水素が除去される。いまだ気体の状態で存在し、芳香族アミン及び水の凝縮工程において除去される水素は、再度、反応に戻されることが好ましい。この方法により生じる任意の気体不活性物質を除去するために、上記方法で生じた未反応の水素の一部を放出することも可能である。これを、例えば、精製することができ、同様に反応に戻される。一方、例えば水素を燃料として用いても良い。
【0040】
芳香族アミン、水、及び未転化の水素を含む生成混合物から水素を除去する工程の後、芳香族アミン及び水を含む状態の製造物は、生成物としての芳香族アミンを得るように処理される。この目的のために、生成混合物は、蒸留され、生成物としてのほぼ水を含まない芳香族アミンと水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物を得る。例えば、脱水は液体/液体相分離により行われる。相分離は、液体/液体相分離に好適な望ましい任意の装置に実行可能である。液体/液体相分離の他に、芳香族アミン及び水を含む生成混合物を脱水するために当業者により知られる他の好適な方法を行うことが可能である。
【0041】
脱水により、水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物、及び粗生成物としての所望の芳香族アミンを含む有機相が得られる。水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物中における芳香族アミンの量は、水中における対応する芳香族アミンの圧力及び温度に依存する溶解度に応じて決まる。水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物は、大気圧及び室温において、一般的に0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜5質量%のアニリンを含む。なお、液体混合物は、少量の副生成物を含むか、或いは含まない。
【0042】
粗生成物として芳香族アミンを含む相は、純度の高い芳香族アミンが得られるように精製される。精製は、通常、当業者により知られる方法で行われる。例えば、この精製のために、芳香族アミンを含む生成物をさらに蒸留処理しても良い。この場合において、芳香族アミンは、通常、頂部流として得られ、生成物中の残留物が、抽出塔の底部において除去される。
【0043】
上記蒸留は、当業者により知られている任意の蒸留装置で実行することが可能である。この目的のために、一般的に、蒸留塔が用いられる。好適な蒸留塔は、例えばトレイ状、構造化された充填物、又は構造化されていない充填物の内部構造を含む。蒸留塔内の好適なトレイの例は、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、又はバルブトレイである。使用される構造化された充填物は、通常、Sulzer社による商品名Mellapak(登録商標)として市販されている。使用される構造化されていない充填物は、一般的に不規則充填物である。不規則充填物を蒸留塔内に残したままとし、それを落とさないようにするために、一般的に、不規則充填物が載るグリッドトレイが使用される。蒸留塔に使用され得る好適な不規則充填物は、当業者により知られている。通常、使用される不規則充填物は、例えば、ポールリング、ラシヒリング、ベルルサドル又はイントラロックスサドルである。しかし、当業者により知られる他の任意の形態の不規則充填物を使用することができる。不規則充填物の製造において知られている材料は、例えば、金属、セラミック、又は樹脂である。材料を選択する際に、蒸留において分離されるべき媒体に対して不活性であるという性質だけは、確保すべきである。
【0044】
実質的に芳香族アミンからなる生成物流に対する生成物の所望の精製は、好適な蒸留形態により実現される。例えば、多段階の上流を実行することが可能である。また、適切な理論段数を有する蒸留塔を構成しても良い。生成物流に対する生成物の精製における他の手段は、蒸留塔の底部に気化器を設け、底部の少なくとも一部を気化して再び蒸留塔に戻すことである。
【0045】
芳香族アミンは、水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物から、上述の方法により抽出される。抽出は、芳香族ニトロ化合物、特に反応のための反応物として使用される芳香族ニトロ化合物を用いて行われる。抽出の過程において、芳香族アミンは芳香族ニトロ化合物中に溶解し、芳香族アミンを含まない水がラフィネート流として残る。
【0046】
本発明に係る芳香族アミンの製造方法における好適な実施の形態において、工程(d)で溶媒として使用される芳香族ニトロ化合物は、芳香族アミンを製造するために使用される芳香族ニトロ化合物である。これにより、抽出の過程において、他の芳香族ニトロ化合物により汚濁されることが防止される。他の物質を使用する必要はない。
【0047】
抽出において溶媒としての芳香族アミンを製造するために使用される芳香族ニトロ化合物を用いる他の利点は、抽出の後に、芳香族ニトロ化合物を、工程(a)における芳香族アミンの製造のための反応に対する反応物として供給することができる点である。この目的のために、工程(d)において得られる抽出流を再度、反応器で用いることが好ましい。また、このようにして、抽出流内に存在する芳香族アミンは、再度、反応器内で使用されて、従って、再び脱水され、生成物として得られる。このようにして、上述の抽出により除去された芳香族アミンもまた、本発明の方法における価値ある生成物として得られるので、抽出剤としての芳香族ニトロ化合物に排出されない。また、芳香族アミンを反応器で再利用することで、抽出流の最終処理の必要がないという利点もある。
【0048】
他の目的は、水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物を少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物で抽出することで分離する装置であって、抽出塔が、分割壁により2つの領域に分割され、分離のための液体が抽出塔全体の最小断面負荷を下回る量である場合に、分割壁により分割された抽出塔の領域の一方に対してのみ分離すべき液体混合物を供給するように抽出を制御する制御手段を設けた装置により実現される。
【0049】
制御手段とは、特に、例えば、充填レベルメーター、流量計、温度センサ、及び圧力センサ等の動作状態を検出する好適なセンサ、及びバルブ又は他の制御且つ調整可能な装置を制御するための適切な制御装置である。一般的に、マニュアル操作による介入が可能で、関連するパラメータを表示する調節装置も含まれる。検出されるパラメータは、特に、抽出塔内における液体レベル、除去されるべき液体の相境界の位置、成分の流入及び流出、及び供給された溶媒に対する供給された分離液体混合物の比の値である。これらのパラメータは、例えば、液体レベル、供給される液体の流量、排出される液体の質量流又は体積流を確定するために用いられる。供給される液体の量を参照することで、分割壁により分割された抽出塔の領域の内、1つの領域のみを作動させるべきか或いは両方の領域を動作させるべきかを評価することが可能となる。
【0050】
抽出塔における分割壁により、該分割壁で分割された領域の内の一つのみを作動させ、他方の領域を停止させることが可能である。分割壁は、抽出塔全体を分割する必要はなく、むしろ抽出塔の底部及び頂部における領域は分割壁により分割されていない方が好ましいので、分割壁により分割された抽出塔の一つの領域のみが作動している場合であっても、液体は他の領域に存在する。このため、既に上述した分割壁は、循環流を避けるように形成されるべきである。このように循環流を避けることは、例えば、抽出塔の底部に存在する除去すべき液相に分割壁を突出させることにより実現可能である。この場合、分割壁の下端境界部は、除去すべき液相と全成分を含む抽出混合物との間の相境界の位置変化によっても該分割壁がその下方又は上方を流れる連続相に到達しない程度に突出する。
【0051】
また、分割壁は、抽出塔における液体レベルの下方、及び抽出塔の頂部における第1供給部の上方に亘っているため、分割壁の周囲の流れは阻害され得る。
【0052】
溶媒は、通常、抽出塔の頂部における第1供給装置により供給される。抽出塔の下部領域において、分離すべき混合物は、第2供給装置により抽出塔に導入される。従って、溶媒及び分離すべき混合物は、抽出塔内の対向流内に導かれる。
【0053】
分割壁により分割された領域のそれぞれを独立に作動させるために、第1供給部を抽出塔の上部領域で開口し、第2開口部を分割壁で分割されるそれぞれの領域の底部の上方で抽出塔の下端において開口させる。従って、それぞれの領域において、溶媒を第1供給部を介して添加し、分離すべき混合物を第2供給部を介して添加することが可能となる。
【0054】
また、例えば双方の領域にカラムディストリビュータを設け、各々の領域に液体を供給するディストリビュータの一部をバルブを用いて閉塞可能としつつ、他方を開放状態とすることもできる。このようにして、一つの領域又は抽出塔全体に液体を供給するために、各々の領域に対して共通のディストリビュータを使用することができる。
【0055】
好適なディストリビュータは、当業者に知られる任意のディストリビュータである。好適なディストリビュータは、例えば、メインディストリビュータから分岐するパイプラインの形態で構成される。このパイプラインの場合、供給すべき液体が放出される出口オリフィスが、個々のパイプラインに設けられる。また、例えば、リングディストリビュータ又は当業者により知られる同様のディストリビュータを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にしたがい構成された抽出塔を示している。
【図2】抽出プロセスを示す図である。
【図3】溶媒の供給の詳細を示す図である。
【図4】分離すべき液体混合物の供給について詳細を示す図である。
【図5】芳香族アミンを製造する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明にかかる実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にしたがい構成された抽出塔を示している。
【0058】
本発明にしたがい構成された抽出塔1は、分割壁3により、第1領域5と第2領域7とに分離される。第1領域5及び第2領域7は、好ましくは、同一の構成である。また、分割壁3は、好ましくは、領域5と領域7が同一の大きさとなるように配置される。
【0059】
2つの小領域5、7のそれぞれにおいて、抽出塔1の上部領域において第1供給部9が開口されている。溶媒は、第1供給部9を介して供給される。相互に分離された第1小領域5及び第2小領域7を作動させるために、第1供給部9が、第1領域5と第2領域7のそれぞれに独立して設けられている。第1領域5と第2領域7へのそれぞれの第1供給部9は、好ましくは同一の形状を有している。第1領域5及び領域7を相互に独立して作動させることができるように、第1供給部9が、抽出塔1に、分割壁3の終端部分の下方において開口されている。
【0060】
しかしながら、第1小領域5及び第2領域7を確実に相互に分離して作動させることができるように一つの第1供給部9を設ける必要であるが、これに代えて唯一つの第1供給部9を溶媒供給のために設けても良い。この場合、当該構成のために、例えば、第1供給部9を、第1領域5又は第2領域7への供給を閉塞部材(例えばバルブ)によりそれぞれ断つことが可能となるように構成することもできる。
【0061】
分離すべき液体混合物は、抽出カラム1の下端において第2供給部11を介してそれぞれ領域5及び7に供給される。本発明においては、分離すべき液体混合物は、水及び芳香族アミンを含む混合物である。第2供給部11は、第1供給部9のように構成され、第1領域5及び第2領域7に対して分離すべき液体を別々に供給することができる。第2供給部11を介して液体混合物を領域5及び7に供給することも可能である。この目的のために、第1供給部9の場合と同様の方法で、2つの第2供給部11を領域5及び7にそれぞれ設けることが可能であるが、一つの第2供給部11を領域5及び7にそれぞれ分岐させるように設け、当該各分岐が閉塞部材(例えばバルブ)によりそれぞれ閉塞することができるようにして、第1領域5又は第2領域7を単体、或いは領域5及び7の両方を作動させることができるようにすることも考えられる。
【0062】
良好な分散及び分離すべき液体混合物を溶媒に残留させる時間を引き延ばすために、第1領域5及び第2領域7のそれぞれにおいて好適な内部構造が設けられる。好適な内部構造とは、特に構造化された又は構造化されていない充填物、特に構造化されていない充填物である。構造化されていない充填物は、通常、不規則充填物である。本発明にかかる不規則充填物とは、抽出のために好適な、例えば、ポールリング、ラシヒリング、サドル、又は他の不規則充填物であり、当業者により知られているものである。
【0063】
十分な抽出作用を実現するために、第1供給部9は、好ましくは領域5、7内の内部構造の上方に配置する。分離すべき液体混合物が添加される第2供給部11は、好ましくは領域5、7内の内部構造の下方に配置される。個々の領域5、7を作動させることを可能とするために、たとえ、図1に示すように分割壁3により抽出塔1の全体が分割されないとしても、供給部9、11が、抽出塔1内の分割壁3により分割される領域5、7に開口するように、当該分割壁を構成する。
【0064】
例えば、図1に示されているように、抽出塔の全体は分割しない分割壁3が好ましい。これにより、抽出塔の底部において液体出口13及び抽出塔の頂部において液体出口15をただ一つずつ設けるようにすることが可能だからである。2つの領域に完全に分割される場合においては、それぞれの分割領域において液体出口を底部及び頂部にそれぞれ設ける必要が生じる。更に、抽出塔1を完全に分割する場合、全ての必要な測定装置や制御装置を両方の領域に設ける必要がある。しかしながら、図1に示した上記分割壁3の場合、一つの測定装置及び制御装置をそれぞれ、抽出塔1の頂部17及び底部19に設ければ十分である。
【0065】
芳香族アミンが抽出された後の実質的に水から成る流動物は、抽出塔1の頂部17における第2液体出口15を介して排出される。芳香族アミンが溶解されている溶媒としての芳香族ニトロ化合物は、抽出塔1の底部19において集積される。芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む除去すべき液相と、水をさらに含む抽出すべき液体混合物と、の間には、相境界21が生じる。第1領域5及び第2領域7を独立に動作させるために、分割壁3を除去されるべき液体混合物(抽出塔1の底部19における液体出口13を介して排出される)における相境界21の下方まで延在させる必要がある。この場合、領域5、7の何れかを作動させた場合における循環流の発生が妨げられる程度まで、分割壁3が除去すべき液体相に突出する。
【0066】
抽出塔1は、一般的には、液体により完全には充填されない状態で作動する。本実施の形態において、抽出塔1における液体のレベルを符号23で示す。
【0067】
図2は、抽出処理のフロー図である。
【0068】
水及び芳香族アミンを含み分離すべき液体混合物は、貯留容器31に集められる。水及び芳香族アミンを含む液体混合物は、例えば、芳香族ニトロ化合物から芳香族アミンを製造する方法により得られる。芳香族アミンを製造する1以上の方法により得られる水及び芳香族アミンを含む液体混合物は、貯留容器31において集めることが可能である。例えば、唯一つのみの抽出塔1において複数種の方法により、芳香族アミン及び水を含む液体混合物を得ることが可能である。しかし、この場合、要求される芳香族アミンの製造速度に応じて、限られたいくつかの方法を実行する場合の所定の状況下では、抽出塔1を広い負荷範囲に亘って作動させる必要が生じる。この目的のために、抽出塔1は、分割壁3により2つの領域5、7に分割される。このようにして、領域5、7の内の一方のみ、或いは領域5及び7の双方を作動させることが可能となる。これにより、抽出塔1を広い負荷範囲において作動させることが可能となり、たとえ芳香族アミンを製造する2つの方法が提示される場合等であっても、その2つの方法の内の一つのみを行う場合でも十分な分離効果が実現される。貯留容器31に加えて、芳香族アミンを製造する方法により得られる、芳香族アミン及び水を含む液体混合物を、抽出塔1に直接供給することも可能であると考えられる。
【0069】
ここで示された実施の形態において、水及び芳香族アミンを含む液体混合物は、ポンプ33を用いて、抽出塔1の下部領域における第2供給部11を介して抽出塔1に供給される。供給されるべき液体の量は、バルブ35により調節することが可能である。
【0070】
溶媒、特に芳香族アミンを製造するために使用される芳香族ニトロ化合物は、抽出塔1の上部領域における第1供給部9を介して供給される。供給されるべき芳香族ニトロ化合物の量を調節するために、調節バルブ37が設けられている。
【0071】
監視操作により、相境界21の位置が監視される。相境界21の位置がある下限値を下回ると、供給部39を介して底部に溶媒を供給することが可能である。これにより、抽出塔1の底部19において除去すべき液体の量を増加させることができ、相境界21を上方に移動させることができる。これは、特に、領域5及び7の何れか一方のみを作動させている場合において、相境界21の位置が分割壁3の下端のより下方になって循環流が生じてしまわないように必要となることである。
【0072】
除去すべき液体混合物は、溶媒としての芳香族ニトロ化合物及び該溶媒に溶解している芳香族アミンを含んでおり、抽出塔1の底部19にある液体出口13から排出される。好ましい実施の形態として、抽出流動物が、芳香族アミンを製造する反応物として供給される。ここで示される実施の形態において、液体出口13は2つの分離ライン41、43に分割されており、ライン41、43のそれぞれは、例えば、芳香族アミンの製造のための反応器へ開口している。各反応器を別々に作動させるために、ポンプ45がライン41、43のそれぞれに設けられている。ポンプ45は、抽出流動物を、特定のライン41又は43を介して、ライン41、43に接続された反応器に移送するために使用される。流量計47は、ライン41、43を介して排出される反応物流を測定するために使用される。このようにして、供給される芳香族ニトロ化合物の量を調整することが可能である。
【0073】
実質的に水から成る流動物は、芳香族アミンが抽出された結果として得られ、抽出塔1の頂部17における液体出口15から排出される。第2液体出口15から排出されるラフィネートの量は、例えば、ポンプ49及び調節バルブ51を用いて調節される。ポンプ49は、特に、ラフィネート流を移送する機能を果たし、調節バルブ51は上記排出量を設定するように機能する。より好ましくは、ポンプ49及び調節バルブ51は、抽出塔1の液体レベル23を調節するために使用され得る。液体レベル23は、適切な充填レベルメーター53により監視される。
【0074】
端から端までは伸張しない分割壁3により、抽出塔の頂部の充填レベルメーター53及び相境界21の位置を監視する液体レベルメーター55をそれぞれ設ければ十分である。抽出塔が完全に分離する場合、充填レベルメーター53又は液体レベルメーター55が、分割壁3により分割された抽出塔1の各領域毎に必要となる。
【0075】
抽出塔が誤作動を確実に起こさないようにするために、分離すべき混合物の供給流及び溶媒流の間の流量比を調節することも好ましい。この制御は、通常、バルブ35、37を用いて実行する。抽出塔1内の内部構造物における圧力差を監視することも好ましい。
【0076】
図3は、溶媒が加えられる第1供給部9を詳細に示している。抽出塔の第1領域5及び第2領域7をそれぞれ独立に作動させるために、溶媒を第1領域5及び第2領域7の双方に供給可能である必要がある。従って、ここで示されている好ましい実施の形態において、第1供給部9は、抽出塔1の第1領域5への供給路61と、抽出塔1の第2領域7への第2供給路63と、に分割される。第1領域5への供給路61及び第2領域7への供給路63は、バルブ65により、それぞれ独立に閉塞又は開口するようにしても良い。バルブ65を開口することで、溶媒が特定の供給路61、63を介して抽出塔に流れる。バルブ65を閉塞すると、これら特定の供給路が閉塞される。このようにして、第1領域5、第2領域7を独立に、又はこれら双方を同時に動作させることができる。監視のために、液体の表示部67が供給路61、63にそれぞれ設けられている。使用される一つの制御パラメータは、本方法から得られる抽出流の流量である。
【0077】
図4は、分離すべき液体混合物の供給部について詳細に示している。分離すべき液体混合物は、供給路71を介して抽出塔の第1領域に供給され、供給路73を介して抽出塔の第2領域に供給される。供給路71、73のそれぞれには、該供給路71、73を介して抽出塔1に供給されるべき液体の量を調節するためのバルブ75が設けられている。領域5と領域7の何れか一方を動作させようとする場合、抽出塔1において作動していない領域5又は7に開口する供給路71又は73を閉塞することが可能である。溶媒を供給する場合と同様にして、第1領域5又は第2領域7の独立した作動を確保するために、上記閉塞が必要となる。バルブ75は、第1に溶媒の供給流と分離すべき混合物の供給流の流量比、及び貯留容器31の充填レベルに基づいて制御される。対応してバルブ75を制御することが可能となるように、流量比、特定の供給路71、73を介した流量、及び貯留容器31の液体レベルが、バルブの制御装置に送信される。
【0078】
溶媒を抽出塔に導入する供給路61、63のバルブ65を制御するために、供給路61、63からの流量及び排出される抽出流の流量がともに制御装置に送信される。流量比は、制御パラメータとして、分離すべき液体混合物のための供給路71、73用の制御部に送られる。
【0079】
図5は、芳香族アミンの製造方法を説明する概略である。
【0080】
芳香族ニトロ化合物が反応物として、反応物供給路81を介して反応器83に供給される。製造される芳香族アミンがアニリンである場合、使用される芳香族ニトロ化合物は、ニトロベンゼンである。水素は、第2供給路85を介して反応器83に供給される。反応器83において、芳香族ニトロ化合物及び水素は、芳香族アミンに転化される。製造された混合物は、凝縮器87に送られる。反応で生成した芳香族アミン及び水は、凝縮器87において凝縮される。転化されていない水素は、第2供給路85を介して再度、反応器83で使用される。消費された水素は、水素供給路89により置き換えられる。凝縮の後、水及び芳香族アミンを含む残留している液体混合物は、脱水装置91に送られる。好適な脱水装置91は、例えば、液相/液相分離器である。脱水装置91において、水及び芳香族アミンを含む液体混合物は、芳香族アミン及び残留物を含む第1流動物と、水及び芳香族アミンの残留物を含む第2流動物と、に分離する。
【0081】
芳香族アミン及び残留物を含む流動物は、蒸留塔93に送られる。蒸留塔93において、芳香族アミンを含む流動物は、純粋生成物として芳香族アミンを含む頂部流95と残留物を含む底部流97に分離される。
【0082】
水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物は、発明の抽出塔1に送られる。抽出塔1は、例えば、図1のように構成されている。芳香族アミンを製造するために使用される芳香族ニトロ化合物は、第1供給部9を介して溶媒として抽出塔1に送られる。水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物は、抽出塔1の下部領域における第2供給部11を介して供給される。実質的に水から成るラフィネート流は、抽出塔1の頂部において第2液体出口15を介して排出され、芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む抽出流動物は、抽出塔1の底部における液体出口13を介して排出される。抽出塔1の底部の液体出口13から排出される抽出流動物は、第3供給部99を介して再度、反応器83で使用される。この芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む抽出流動物を反応器83で再度使用すること、及び残留物処理工程において他の芳香族アミンの導入することにより、芳香族アミンの生産量が増加する。より好ましいのは、抽出塔1の底部の液体出口13から排出された抽出物流を別途処理する必要が無いことである。
【符号の説明】
【0083】
1 抽出塔
3 分割壁
5 第1領域
7 第2領域
9 第1供給部
11 第2供給部
13 底部における液体出口
15 第2液体出口
17 頂部
19 底部
21 相境界
23 液体レベル
31 貯留容器
33 ポンプ
35 バルブ
37 調節バルブ
39 供給部
41 ライン
43 ライン
45 ポンプ
47 流量計
49 ポンプ
51 調節バルブ
53 充填レベルメーター
55 液体レベルメーター
61 第1領域における供給部
63 第2領域における供給部
65 バルブ
67 液体表示
71 第1領域における供給部
73 第2領域における供給部
75 バルブ
81 反応物供給部
83 反応器
85 第2供給部
87 凝縮器
89 水素供給部
91 脱水装置
93 蒸留塔
95 頂部流
97 底部流
99 第3供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出塔(1)内において、水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む液体混合物から、少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物を用いて抽出を行って実質的に水から成るラフィネート流と少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び芳香族アミンを含む抽出流を形成することにより少なくとも一種の芳香族アミンを得る方法であって、
抽出塔(1)は、分割壁(3)により2つの領域(5,7)に分割されており、
分離用の液体が抽出塔(1)全体の最小断面負荷を下回る量である場合に、分離すべき液体混合物を分割壁(3)により分割された抽出塔(1)の領域(5、7)の一方に対してのみ供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
分割壁(3)が、抽出塔(1)の液体レベル(23)の下方、及び抽出塔(1)の頂部(17)にある第1供給装置(9)の上方で終端している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分割壁(3)が、抽出塔(1)の底部(19)における除去すべき液相に突出している請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
抽出塔(1)の底部(19)における除去すべき液相が、少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む実質的に無水の抽出相であり、
実質的に水から成るラフィネート流を、抽出塔(1)の頂部(17)で排出する請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
分割壁(3)により分割された領域(5、7)のそれぞれにおいて、第1供給部(9)が抽出塔(1)の上部領域に開口し、第2供給部(11)が底部(19)の上方で抽出塔(1)の下部に開口している請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一種の芳香族ニトロ化合物を、抽出塔(1)の上部領域において第1供給部(9)を介して添加し、
水及び少なくとも一種の芳香族アミンを含む分離すべき液体混合物を、第2供給部(11)を介して添加する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
芳香族ニトロ化合物が、ニトロベンゼンであり、
芳香族アミンがアニリンである請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
芳香族アミンを、対応する芳香族ニトロ化合物の触媒的水素化により製造する方法であって、以下の工程:
(a)芳香族ニトロ化合物及び水素を含む反応混合物を反応器(83)内で不均一系触媒の存在下に転化させ、平衡反応で、芳香族アミン、水、及び転化されていない水素を含む生成混合物を得る工程、
(b)上記生成混合物から水素を除去する工程、
(c)上記生成混合物を脱水して、生成物としての実質的に無水の芳香族アミンと、水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物と、を得る工程、
(d)請求項1〜7の何れか1項に記載の方法における工程(c)で得られる、水及び芳香族アミンの残留物を含む液体混合物を、ニトロ芳香族アミンで抽出することで分離させ、実質的に水から成るラフィネート流と、芳香族ニトロ化合物及び芳香族アニリンを含む抽出流と、を得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
工程(d)において溶媒として使用される芳香族ニトロ化合物が、芳香族アミンを製造するために使用される芳香族ニトロ化合物であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)において得られる抽出流を、反応器(83)で再利用する請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
芳香族アミンを含む工程(c)において得られる生成物が、蒸留により残留物を含んでいない請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
水及び芳香族アミンを含む液体混合物を、少なくとも一種の芳香族アミンを用いて抽出することにより分離する装置であって、
抽出塔(1)を有し、
該抽出塔(1)が、分割壁(3)により2つの領域(5、7)に分割され、
さらに制御手段が設けられ、
該制御手段による上記抽出は、分離用の液体が抽出塔(1)全体の最小断面負荷よりも少ない量である場合に、分割壁(3)により分割された抽出塔(1)の領域(5、7)の内の一方に対してのみ分離すべき液体混合物を供給するように制御可能である装置。
【請求項13】
分割壁(3)が、抽出塔(1)の液体レベル(23)の下方、及び抽出塔(1)の頂部(17)にある第1供給装置(9)の上方で終端している請求項12に記載の装置。
【請求項14】
分割壁(3)が、抽出塔(1)の底部(19)における除去すべき液相に突出している請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
分割壁(3)により分割された領域(5、7)のそれぞれにおいて、第1供給部(9)が抽出塔(1)の上部領域に開口し、第2供給部(11)が底部(19)の上方で抽出塔(1)の下端に開口している請求項12〜14の何れか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−526085(P2012−526085A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509044(P2012−509044)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056209
【国際公開番号】WO2010/128118
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】