説明

芳香族アミン誘導体及びアントラセン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】色純度の高い青色発光を高い発光効率で得ることが可能な有機EL素子を提供する。
【解決手段】陰極と陽極の間に少なくとも発光層を含む1以上の有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が式(1)で表される芳香族アミン誘導体(Ar〜Arのうち少なくとも1つが式(2)で表される複素環基(Xは酸素原子又は硫黄原子))と、式(5)で表されるアントラセン誘導体とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族アミン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、寿命が長く、高発光効率、色純度の高い有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する芳香族アミン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質を使用した有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層及び該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する。
【0003】
従来の有機EL素子は、無機発光ダイオードに比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。最近の有機EL素子は徐々に改良されているものの、さらなる高発光効率、長寿命、色再現性の向上等が要求されている。
【0004】
有機EL用発光材料の改良により有機EL素子の性能は徐々に改善されてきている。特に青色有機EL素子の色純度向上(発光波長の短波長化)はディスプレイの色再現性向上につながる重要な技術である。
発光層に使用される材料の例として、特許文献1にはジベンゾフランを有する発光材料が開示されており、短波長の青色発光が得られているが、発光効率が低くさらなる改良が求められていた。
【0005】
また、特許文献4,5には、ジアミノピレン誘導体が開示されている。特許文献2には、アントラセンホストとアリールアミンとの組み合わせが開示されている。また、特許文献3〜5には、特定の構造のアントラセンホストとジアミノピレンドーパントとの組み合わせが開示されている。さらに、特許文献6〜8には、アントラセン系のホスト材料が開示されている。
【0006】
いずれの材料及びいずれの組合せにおいても発光特性の改良が認められるものの、十分ではなく、高い発光効率を発現し、さらなる短波長発光を実現する発光材料が求められていた。
【0007】
また、特許文献9には、中心にアリーレン基を有し、ジベンゾフラン環が窒素原子に結合した芳香族アミン誘導体を正孔輸送材料として用いることが開示され、特許文献10には、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等がアリーレン基を介して窒素原子に結合した芳香族アミン誘導体を正孔輸送材料として用いることが開示されているが、発光材料として用いた例は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/128800号パンフレット
【特許文献2】WO2004/018588号パンフレット
【特許文献3】WO2004/018587号パンフレット
【特許文献4】特開2004−204238号公報
【特許文献5】WO2005/108348号パンフレット
【特許文献6】WO2005/054162号パンフレット
【特許文献7】WO2005/061656号パンフレット
【特許文献8】WO2002/038524号パンフレット
【特許文献9】特開平11−35532号公報
【特許文献10】WO2007/125714号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
本発明は、色純度の高い青色発光を高い発光効率で得ることが可能な有機EL素子、及び当該有機EL素子の有機薄膜層に用いることができる材料を提供することを目的とする。
【0010】
本発明によれば、以下の芳香族アミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
1.下記式(1)で表される芳香族アミン誘導体。
【化1】

(式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基を示す。
Ar〜Arは、それぞれ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を示す。
ただし、Ar〜Arのうち少なくとも1つが下記式(2)で表される複素環基である。
【化2】

(式(2)において、R11〜R17は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R11〜R17は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
は酸素原子又は硫黄原子を示す。))
2.下記式(3)で表される1記載の芳香族アミン誘導体。
【化3】

(式(3)において、R〜R,Ar,Arは、式(1)と同じである。
21〜R27、R31〜R37は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R21〜R27、R31〜R37は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。
3.Ar及びArが下記式(4)で表される複素環基である2記載の芳香族アミン誘導体。
【化4】

(式(4)において、R41〜R48のいずれか1つは窒素原子との結合に用いられ、残りは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R41〜R48は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。)
4.R〜Rが水素原子である1〜3のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
5.Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、R、R〜Rが水素原子である1〜3のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
6.R、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、R、R、R、R、R、Rが水素原子である1〜3のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
7.X、X、X、Xが酸素原子である1〜6のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
8.有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である1〜7のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
9.有機エレクトロルミネッセンス素子用ドーピング材料である1〜8のいずれか記載の芳香族アミン誘導体。
10.陰極と陽極の間に少なくとも発光層を含む1以上の有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が、1〜9のいずれか記載の芳香族アミン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記少なくとも一層が、発光層である10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記少なくとも一層が1〜9のいずれか記載の芳香族アミン誘導体と、下記式(5)で表されるアントラセン誘導体とを含有する10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】

(式(5)において、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、置換もしくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基、又は前記単環基と前記縮合環基との組合せから構成される基であり、
101〜R108は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、置換もしくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基、単環基と縮合環基との組合せから構成される基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ、置換もしくは無置換のシリル基、ハロゲン原子、シアノ基から選ばれる基である。)
13.前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50の縮合環基である12記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
14.前記式(5)において、Ar11及びAr12の一方が置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基であり、他方が置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基である12記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
15.前記式(5)において、Ar12がナフチル基、フェナントリル基、ベンゾアントリル基、ジベンゾフラニル基であり、Ar11が無置換又は、単環基又は縮合環基が置換されたフェニル基である14記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
16.前記式(5)において、Ar12が置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基であり、Ar11が無置換のフェニル基である14記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
17.前記式(5)において、Ar11及びAr12が、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基である12記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
18.前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ独立に置換若しくは無置換のフェニル基である17記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
19.前記式(5)において、Ar11が無置換のフェニル基であり、Ar12が単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である18記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
20.前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ独立に単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である18記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0011】
本発明によれば、色純度の高い青色発光を高い発光効率で得ることが可能な有機EL素子、及び当該有機EL素子の有機薄膜層に用いることができる材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の芳香族アミン誘導体は下記式(1)で表わされる。
【化6】

【0013】
(式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基を示す。
Ar〜Arは、それぞれ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を示す。
ただし、Ar〜Arのうち少なくとも1つが下記式(2)で表される複素環基である。
【0014】
【化7】

【0015】
(式(2)において、R11〜R17は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R11〜R17は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
は酸素原子又は硫黄原子を示す。))
【0016】
芳香族アミン誘導体は、好ましくは下記式(3)で表される。
【化8】

【0017】
式(3)において、R〜R,Ar,Arは、式(1)と同じである。
21〜R27、R31〜R37は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R21〜R27、R31〜R37は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0018】
好ましくは上記式(1),(3)において、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、R、R〜Rが水素原子である。
【0019】
他の好ましい形態として、上記式(1),(3)において、R、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、R、R、R、R、R、Rが水素原子である。
、Rの置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。R、Rの置換もしくは無置換のシリル基は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数3〜30のアルキルシリル基であり、より好ましくは炭素数3〜12のアルキルシリル基である。
【0020】
他の好ましい形態として、上記式(1),(3)において、好ましくはR〜Rは水素原子である。
【0021】
上記式(2)〜(4)において、X、X、X、Xは好ましくは酸素原子である。
上記式(2)において、好ましくはR11〜R17は水素原子である。
上記式(3)において、好ましくはR21〜R27,R31〜R37は水素原子である。
上記式(4)において、好ましくはR41〜R48は水素原子である。
【0022】
上記式(1)において、上記式(2)で表される複素環基以外のAr〜Arが無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
上記式(3)において、Ar及びArが無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される複素環基以外のAr〜Arが、無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基である場合、このアリール基はフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、アントラセニル基、クリセニル基、フルオランテニル基であることが好ましい。特に好ましくは、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基である。
【0023】
他の好ましい形態として、上記式(1)において、上記式(2)で表される複素環基以外のAr〜Arが置換基を有する環形成炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
他の好ましい形態として、上記式(3)において、Ar及びArが置換基を有する環形成炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
上記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アリール基、又はシアノ基が挙げられる。
上記一般式(2)で表される複素環基以外のAr〜Arが、置換基を有するアリール基である場合、このアリール基はフェニル基であることが好ましい。
【0024】
他の好ましい形態として、上記式(3)において、Ar及びArは好ましくは下記式(4)で表される複素環基である。
【化9】

【0025】
式(4)において、R41〜R48のいずれか1つは窒素原子との結合に用いられ、残りは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R41〜R48は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0026】
本明細書において、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、及び芳香環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
また、「置換もしくは無置換の・・・」における置換基としては、後述するようなアルキル基、置換又は無置換のシリル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、シクロアルキル基、複素環基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
ここで、「無置換」とは、水素原子が置換したことを意味し、本発明の水素原子には、軽水素、重水素、三重水素が含まれる。
上記式(1)〜(4)におけるR〜R、R11〜R17、R21〜R27、R31〜R37、R41〜R48、Ar〜Arで示される各基及び、「置換もしくは無置換の・・・」における置換基について、以下に詳細に述べる。
【0027】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、アルキレン基とアリール基等を組み合わせた置換基(例えば、フェニルメチル基、2−フェニルイソプロピル基等)でもよい。
上記炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がさらに好ましい。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が好ましい。
【0028】
置換のシリル基としては、炭素数3〜30のアルキルシリル基、環形成炭素数8〜30のアリールシリル基等が挙げられ、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0029】
アルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアルキルの例が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基である。
【0030】
11〜R17、R21〜R27、R31〜R37、R4148として記載のアルケニル基は好ましくはビニル基であり、アルキニル基は好ましくはエチニル基である。
【0031】
アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、トリフェニレニル基、1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、9−フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、ターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。
【0032】
〜Rとして記載のアリール基は、環形成炭素数が6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜12であり、上述したアリール基の中でもフェニル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、1−ナフチル基が特に好ましい。
【0033】
アリールオキシ基は、−OZと表され、Zの例として上記のアリール基又は、後述する単環基及び縮合環基の例が挙げられる。アリールオキシ基は、例えばフェノキシ基である。
【0034】
アラルキル基は、−Y−Zと表され、Yの例として上記のアルキルの例に対応するアルキレンの例が挙げられ、Zの例として上記のアリールの例が挙げられる。アラルキル基は、炭素数7〜50アラルキル基(アリール部分は炭素数6〜49(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12)、アルキル部分は炭素数1〜44(好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6))であることが好ましく、例えばベンジル基、フェニルエチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基である。
【0035】
シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。環形成炭素数は、3〜10が好ましく、5〜8がさらに好ましい環形成炭素数3〜8がより好ましくは、環形成炭素数3〜6が特に好ましい。
【0036】
複素環基としては、例えば、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられる。
【0037】
上記複素環基の環形成原子数は、5〜20が好ましく、5〜14がさらに好ましい。
好ましくは、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基である。
【0038】
ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
ハロゲン化アルキル基として、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチルメチル基等が挙げられる。
【0039】
具体的な芳香族アミン誘導体の例を以下に示す。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0040】
上記の芳香族アミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、例えば、ドーパントとして使用できる。
【0041】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と陽極の間に少なくとも発光層を含む1以上の有機薄膜層が挟持されていて、該有機薄膜層の少なくとも一層が、上記の芳香族アミン誘導体を単独又は混合物の成分として含有している。
好ましくは、発光層が、芳香族アミン誘導体を含有する。発光層は芳香族アミン誘導体のみから構成することも、ホストとして、又はドーパントとして含むこともできる。
【0042】
また本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は好ましくは、有機薄膜層の少なくとも一層に、上記の芳香族アミン誘導体と下記式(5)で表されるアントラセン誘導体又は下記式(6)で表されるピレン誘導体を少なくとも1種とを含有する。好ましくは、発光層が、芳香族アミン誘導体をドーパントとして、アントラセン誘導体をホストとして含有する。
【0043】
(アントラセン誘導体)
式(5)で表されるアントラセン誘導体は、下記化合物である。
【化24】

(式(5)中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基、又は単環基と縮合環基との組合せから構成される基であり、R101〜R108は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基、単環基と縮合環基との組合せから構成される基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のシリル基、ハロゲン原子、シアノ基から選ばれる基である。)
【0044】
式(5)における、単環基とは、縮合構造を持たない環構造のみで構成される基である。
環形成原子数5〜50の単環基(好ましくは環形成原子数5〜30、より好ましくは環形成原子数5〜20)として具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基等の芳香族基と、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、フリル基、チエニル基等の複素環基が好ましい。
中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましい。
【0045】
式(5)における、縮合環基とは、2環以上の環構造が縮環した基である。
前記環形成原子数8〜50の縮合環基(好ましくは環形成原子数8〜30、より好ましくは環形成原子数8〜20)として具体的には、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、クリセニル基、ベンゾアントリル基、ベンゾフェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾクリセニル基、インデニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基等の縮合芳香族環基や、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、キノリル基、フェナントロリニル基等の縮合複素環基が好ましい。
中でも、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、フルオランテニル基、ベンゾアントリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基が好ましい。
【0046】
式(5)における、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子の具体例は、上述の式(1)〜(4)におけるR〜R、R11〜R17、R21〜R27、R31〜R37、R41〜R48、Ar〜Arで示される各基及び、「置換もしくは無置換の・・・」における置換基の具体例と同様である。以下に、式(5)における好ましい具体例のみを挙げる。
【0047】
Ar11、Ar12、R〜R、の「置換若しくは無置換」の好ましい置換基として、単環基、縮合環基、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(特にフッ素)が好ましく、特に好ましくは、単環基、縮合環基であり、好ましい具体的な置換基は上述の式(5)の各基及び上述の式(1)〜(4)における各基と同様である。
【0048】
式(5)で表されるアントラセン誘導体は、下記アントラセン誘導体(A)、(B)、及び(C)のいずれかであることが好ましく、適用する有機EL素子の構成や求める特性により選択される。
【0049】
(アントラセン誘導体(A))
当該アントラセン誘導体は、式(5)におけるAr11及びAr12が、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基となっている。当該アントラセン誘導体としては、Ar11及びAr12が同一の置換若しくは無置換の縮合環基である場合、及び異なる置換若しくは無置換の縮合環基である場合に分けることができる。
【0050】
式(5)におけるAr11及びAr12が異なる(置換位置の違いを含む)置換若しくは無置換の縮合環基であるアントラセン誘導体が特に好ましく、縮合環の好ましい具体例は上述した通りである。中でもナフチル基、フェナントリル基、ベンズアントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ジベンゾフラニル基が好ましい。
【0051】
(アントラセン誘導体(B))
当該アントラセン誘導体は、式(5)におけるAr11及びAr12の一方が置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基であり、他方が置換若しくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基となっている。
好ましい形態として、Ar12がナフチル基、フェナントリル基、ベンゾアントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ジベンゾフラニル基であり、Ar11が単環基又は縮合環基が置換されたフェニル基である。
好ましい単環基、縮合環基の具体的な基は上述した通りである。
別の好ましい形態として、Ar12が縮合環基であり、Ar11が無置換のフェニル基である。この場合、縮合環基として、フェナントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾアントリル基が特に好ましい。
【0052】
(アントラセン誘導体(C))
当該アントラセン誘導体は、式(5)におけるAr11及びAr12が、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基となっている。
好ましい形態として、Ar11、Ar12ともに置換若しくは無置換のフェニル基である。
さらに好ましい形態として、Ar11が無置換のフェニル基であり、Ar12が単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である場合と、Ar11、Ar12がそれぞれ独立に単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である場合がある。
前記置換基としての好ましい単環基、縮合環基の具体例は上述した通りである。さらに好ましくは、置換基としての単環基としてフェニル基、ビフェニル基、縮合環基として、ナフチル基、フェナントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾアントリル基である。
【0053】
式(5)で表されるアントラセン誘導体の具体例としては、以下が挙げられる。
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】


【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【0054】
他の形態として、前記有機薄膜層の少なくとも一層が、前記式(1)で表わされる芳香族アミン誘導体と、下記式(6)で表されるピレン誘導体とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。より好ましくは、発光層が、芳香族アミン誘導体をドーパントとして、ピレン誘導体をホストとして含有する。
【化50】

式(6)中、Ar111及びAr222は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基である。
及びLは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の2価のアリール基または複素環基を示す。
mは0〜1の整数、nは1〜4の整数、sは0〜1の整数、tは0〜3の整数である。
また、L又はAr111はピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr222はピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
【0055】
一般式(6)におけるL及びLは、好ましくは置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、置換もしくは無置換のターフェニレン基及び置換もしくは無置換のフルオレニレン基及びこれら置換基の組合せからなる2価のアリール基である。
また、この置換基としては、上記(1)〜(4)における「置換もしくは無置換の・・・」における置換基と同様である。L及びLの置換基は、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基である。
【0056】
一般式(6)におけるmは、好ましくは0〜1の整数である。一般式(6)におけるnは、好ましくは1〜2の整数である。一般式(6)におけるsは、好ましくは0〜1の整数である。
一般式(6)におけるtは、好ましくは0〜2の整数である。
Ar111及びAr222のアリール基は、上記(1)〜(4)における各基と同様である。
好ましくは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜16のアリール基、アリール基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニル基、アントリル基、ピレニル基である。
【0057】
芳香族アミン誘導体をドーパントとして含むとき、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0058】
芳香族アミン誘導体とアントラセン誘導体又はピレン誘導体は、発光層の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層に用いることもできる。
【0059】
本発明において、有機薄膜層が複数層型の有機EL素子としては、(陽極/正孔注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極)等の構成で積層したものが挙げられる。
【0060】
有機EL素子は、前記有機薄膜層を複数層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することができる。また、ドーピング材料により、発光輝度や発光効率が向上する場合がある。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されてもよい。その際には、正孔注入層の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入層の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層又は金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0061】
本発明の芳香族アミン誘導体と共に発光層に使用できる上記式(5)以外の材料としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン等の縮合多環芳香族化合物及びそれらの誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機金属錯体、トリアリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、オキサゾン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラジン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ベンジジン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン等と、それらの誘導体、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明の有機EL素子において使用できる正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、フタロシアニン誘導体である。
【0064】
フタロシアニン(Pc)誘導体としては、例えば、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
また、正孔注入材料にTCNQ誘導体等の電子受容物質を添加することによりキャリアを増感させることもできる。
【0065】
本発明の有機EL素子において使用できる好ましい正孔輸送材料は、芳香族三級アミン誘導体である。
芳香族三級アミン誘導体としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラビフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等、又はこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマー若しくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。
【0067】
本発明の有機EL素子において、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物及び含窒素複素環誘導体である。
前記金属錯体化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記含窒素複素環誘導体としては、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、フェナントロリン、ベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等が好ましく、中でもベンズイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体が好ましい。
好ましい形態として、これらの電子注入材料にさらにドーパントを含有し、陰極からの電子の受け取りを容易にするため、より好ましくは第2有機層の陰極界面近傍にアルカリ金属で代表されるドーパントをドープする。
ドーパントとしては、ドナー性金属、ドナー性金属化合物及びドナー性金属錯体が挙げられ、これら還元性ドーパントは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
本発明の有機EL素子においては、発光層中に、式(1)で表される芳香族アミン誘導体から選ばれる少なくとも一種の他に、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料、正孔輸送材料及び電子注入材料の少なくとも一種が同一層に含有されてもよい。また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
【0070】
本発明の有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、フッ化リチウム等及びそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0071】
本発明の有機EL素子では、効率良く発光させるために、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板も透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保されるように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。
【0072】
本発明の有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0073】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解又は分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであってもよい。
このような湿式成膜法に適した溶液として、有機EL材料として本発明の芳香族アミン誘導体と溶媒とを含有する有機EL材料含有溶液を用いることができる。
【0074】
前記有機EL材料が、ホスト材料とドーパント材料とを含み、前記ドーパント材料が、本発明の芳香族アミン誘導体であり、前記ホスト材料が、式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
【0075】
いずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0076】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。また、本発明の化合物は、有機EL素子だけでなく、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても使用できる。
【実施例】
【0077】
製造例1
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−1を製造した。
【化51】

【0078】
(1)中間体M1の合成(反応A)
アルゴン気流下、1000mLのナスフラスコに、ジベンゾフラン30.0g、脱水テトラヒドロフラン(THF)300mLを入れ、−65℃に冷却した後、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.65M)120mLを入れ、徐々に昇温し、室温下3時間反応した。−65℃に再び冷却した後、1,2−ジブロモエタン23.1mLを滴下して、徐々に昇温し、室温下3時間反応した。
2N塩酸、酢酸エチルを加えて分液、抽出した後、上水、飽和食塩水で有機層を洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製し、得られた固体を減圧乾燥したところ、43.0gの白色固体を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M1と同定した。
【0079】
(2)中間体M2の合成(反応B)
アルゴン気流下、300mLナスフラスコに、中間体M1 11.7g、アニリン10.7mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)〔Pd(dba)〕0.63g、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル〔BINAP〕0.87g、ナトリウムtert−ブトキシド9.1g、脱水トルエン131mLを入れ、85℃にて6時間反応した。
冷却後、反応溶液をセライトろ過し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン(3/1))で精製し、得られた固体を減圧乾燥したところ、10.0gの白色固体を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M2と同定した。
【0080】
(3)化合物D−1の合成(反応C)
アルゴン気流下、300mLのナスフラスコに、中間体M2 8.6g、既知の方法で合成した1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレン5.9g、ナトリウムtert−ブトキシド2.5g、酢酸パラジウム(II)〔Pd(OAc)〕150mg、トリ−tert−ブチルホスフィン135mg、脱水トルエン90mLを入れ、85℃にて7時間反応した。
反応溶液をろ過し、得られた租生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、得られた固体をトルエンで再結晶して得られた固体を減圧乾燥したところ、9.3gの黄白色固体を得た。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長λmaxを以下に示す。
【0081】
FDMS,calcd for C5844=800,found m/z=(M+)
UV(PhMe);λmax=419nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=452nm
【0082】
製造例2
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−2を製造した。
【化52】

【0083】
(1)中間体M3の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに4−イソプロピルアニリンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M3と同定した。
【0084】
(2)化合物D−2の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M3を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
【0085】
FDMS,calcd for C6456=884,found m/z=884(M+)
UV(PhMe);λmax=425nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=457nm
【0086】
製造例3
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−3を製造した。
【化53】

【0087】
(1)中間体M4の合成(反応D)
アルゴン気流下、300mLナスフラスコに、中間体M1 18.7g、アセトアミド3.4g、ヨウ化銅(I)0.81g、炭酸カリウム15.7g、キシレン90mLを入れ、撹拌した後、N,N’−ジメチルエチレンジアミン0.9mLを入れ、170℃にて18時間反応した。
反応溶液をろ過し、得られた租生成物をトルエン、上水、メタノールで洗浄し、得られた固体を減圧乾燥したところ、8.2gの固体を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M4と同定した。
【0088】
(2)中間体M5の合成(反応E)
300mLナスフラスコに、中間体M4 8.2g、水酸化カリウム12.2g、上水14mL、トルエン37mL、エタノール74mLを入れ、110℃にて8時間反応した。
酢酸エチルを加えて分液、抽出した後、上水、飽和食塩水で有機層を洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(1/1))で精製し、得られた固体を減圧乾燥したところ、6.6gの白色固体を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M5と同定した。
【0089】
(3)中間体M6の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに中間体M5、中間体M1の代わりに1−ブロモ−4−(トリメチルシリル)ベンゼンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M6と同定した。
【0090】
(4)化合物D−3の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M6を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
【0091】
FDMS,calcd for C6460Si=944,found m/z=944(M+)
UV(PhMe);λmax=419nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=452nm
【0092】
製造例4
化合物D−29の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−29を製造した。
【化54】

【0093】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C5232=716,found m/z=716(M+)
UV(PhMe);λmax=420nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=449nm
【0094】
製造例5
化合物D−30の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−30を製造した。
【化55】

【0095】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモピレンを用いて、中間体M2の代わりに中間体M3を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C5844=800,found m/z=800(M+)
UV(PhMe);λmax=426nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=455nm
【0096】
製造例6
化合物D−32の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−32を製造した。
【化56】

【0097】
(1)中間体M7の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに中間体M5を用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M7と同定した。
【0098】
(2)化合物D−32の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M7を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C7048=980,found m/z=980(M+)
UV(PhMe);λmax=419nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=448nm
【0099】
製造例7
化合物D−46の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−46を製造した。
【化57】

【0100】
(1)中間体M8の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに4−アミノベンゾニトリルを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M8と同定した。
【0101】
(2)化合物D−46の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M8を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6042=850,found m/z=850(M+)
UV(PhMe);λmax=398nm、FL(PhMe、λex=370nm);λmax=444nm
【0102】
製造例8
化合物D−53の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−53を製造した。
【化58】

(1)中間体M9の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりにo−ビフェニルアミンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M9と同定した。
【0103】
(2)化合物D−53の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M9を用いて、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6040=868,found m/z=868(M+)
UV(PhMe);λmax=429nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=452nm
【0104】
製造例9
化合物D−54の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−54を製造した。
【化59】

【0105】
(1)中間体M10の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに4−アミノ−3−フェニルベンゾニトリルを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M10と同定した。
【0106】
(2)化合物D−54の合成(反応C)
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモピレンを用いて、中間体M2の代わりに中間体M10を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6638=918,found m/z=918(M+)
UV(PhMe);λmax=424nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=449nm
【0107】
製造例10
化合物D−68の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−68を製造した。
【化60】

【0108】
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M9を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C7052=952,found m/z=952(M+)
UV(PhMe);λmax=432nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=456nm
【0109】
製造例11
化合物D−76の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−76を製造した。
【化61】

【0110】
(1)中間体M11の合成(反応B)
中間体M2の合成において、アニリンの代わりに中間体M5を用いて、中間体M1の代わりに1−ブロモナフタレンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M11と同定した。
【0111】
(2)化合物D−76の合成(反応C)
D−1の合成において、中間体M2の代わりに中間体M11を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6648=900,found m/z=900(M+)
UV(PhMe);λmax=424nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=451nm
【0112】
製造例12
化合物D−81の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−81を製造した。
【化62】

【0113】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモ−3,8−ジシクロプロピルピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C5840=796,found m/z=796(M+)
UV(PhMe);λmax=426nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=457nm
【0114】
製造例13
化合物D−83の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−83を製造した。
【化63】

【0115】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモ−3,8−ジシクロペンチルピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6248=852,found m/z=852(M+)
UV(PhMe);λmax=420nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=453nm
【0116】
製造例14
化合物D−88の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−88を製造した。
【化64】

【0117】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモ−3,8−ジシクロペンチルピレンを用いて、中間体M2の代わりに中間体M6を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6864Si=996,found m/z=996(M+)
UV(PhMe);λmax=419nm、FL(PhMe、λex=390nm);λmax=453nm
【0118】
製造例15
化合物D−89の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−89を製造した。
【化65】

【0119】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモ−3,8−ジシクロブチルピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6044=824,found m/z=824(M+)
UV(PhMe);λmax=425nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=456nm
【0120】
製造例16
化合物D−90の合成(反応C)
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−90を製造した。
【化66】

【0121】
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモ−3,8−ジ−m−トリルピレンを用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C6644=896,found m/z=896(M+)
UV(PhMe);λmax=432nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=468nm
【0122】
製造例17
化合物D−96の合成
以下のようにして芳香族アミン誘導体D−96を製造した。
【化67】

【0123】
(1)中間体M12の合成(反応A)
中間体M1の合成において、ジベンゾフランの代わりにジベンゾチオフェンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M12と同定した。
【0124】
(2)中間体M13の合成(反応B)
中間体M2の合成において、中間体M1の代わりに中間体M12を用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体M13と同定した。
【0125】
(3)化合物D−96の合成(反応C)
D−1の合成において、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレンの代わりに1,6−ジブロモピレンを、中間体M2の代わりに中間体M13を用いて同様の方法で合成した。得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析をした。トルエン溶液中の紫外線吸収極大波長λmax及び蛍光発光極大波長を以下に示す。
FDMS,calcd for C5232=748,found m/z=748(M+)
UV(PhMe);λmax=423nm、FL(PhMe、λex=400nm);λmax=455nm
【0126】
以下に説明する実施例1〜112の中で、製造例の無い化合物については、製造例1〜15と同様の方法で合成した。
【0127】
実施例1
25mm×75mm×1.1mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。この透明電極は、陽極として働く。続いて、このガラス基板に紫外線及びオゾンを照射して洗浄したのち、真空蒸着装置に設置した。
【0128】
まず、正孔注入層として、N’,N’’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−N’,N’’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジアミンを60nmの厚さに蒸着したのち、その上に正孔輸送層として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ビフェニル)−4,4’−ベンジジンを20nmの厚さに蒸着した。次いで、ホスト材料であるアントラセン誘導体EM2と、ドーピング材料である芳香族アミン誘導体D−1とを、質量比40:2で同時蒸着し、厚さ40nmの発光層を形成した。
【0129】
この発光層上に、電子注入層として、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウムを20nmの厚さに蒸着した。
【0130】
次に、弗化リチウムを1nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nmの厚さに蒸着し、有機EL素子を作製した。尚、このアルミニウム/弗化リチウムは陰極として働く。
【0131】
こうして得られた有機EL素子について、電流密度10mA/cmにおける駆動時の素子性能(発光効率)、及び色度CIE1931のx,yを以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0132】
発光輝度:分光放射輝度計(CS−1000、ミノルタ製)により測定した。
色度CIE1931のx,y:分光放射輝度計(CS−1000、ミノルタ製)により測定した。
発光効率(L/J):L/Jは輝度と電流密度の比である。SOURCEMEASURE UNIT 236(KEITHLEY製)を用いて電流と電圧を測定すると同時に、分光放射輝度計にて輝度を測定し、電流値と発光面積より電流密度を計算し、L/Jを算出した。発光効率(lm/W)は以下の式により求めた。
発光効率(lm/W)=L/J/電圧×円周率
【0133】
実施例2
実施例1において、芳香族アミン誘導体D−1の代わりに、芳香族アミン誘導体化合物D−2を用いて有機EL素子を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0134】
実施例3
実施例1において、芳香族アミン誘導体D−1の代わりに、芳香族アミン誘導体D−3を用いて有機EL素子を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0135】
比較例1
実施例1において、芳香族アミン誘導体D−1の化合物の代わりに、下記に示す化合物H−1を用いて有機EL素子を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【化68】

【0136】
【表1】

【0137】
表1より、実施例で用いたジベンゾフラン誘導体は、公知化合物H−1と比較して、高効率化し、かつCIEy値が大幅に小さくなる(大幅に短波長発光する)。本発明の化合物では、窒素原子の孤立電子対は、ジベンゾフラニル基・ジベンゾチオフェニル基において、窒素原子と結合している方の芳香族環の電子密度に影響を与え、酸素原子・硫黄原子の孤立電子対は、窒素原子と結合していない方の芳香族環に影響を与えることにより、炭素原子よりも電気陰性度の大きい酸素原子・硫黄原子の電子吸引性効果が、窒素原子と結合している方の芳香族環に表れるため、H−1のような芳香族炭化水素基のみを有する化合物と比較して、短波長発光すると推測する。
【0138】
実施例4
25mm×75mm×1.1mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。この透明電極は、陽極として働く。続いて、このガラス基板に紫外線及びオゾンを照射して洗浄したのち、真空蒸着装置にこの基板を設置した。
まず、正孔注入層として、下記構造のHT−1を50nmの厚さに蒸着したのち、その上に正孔輸送層として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ビフェニル)−4,4’−ベンジジンを45nmの厚さに蒸着した。次いで、ホスト材料であるアントラセン誘導体EM9と、ドーピング材料である芳香族アミン誘導体D−1とを、質量比25:5で同時蒸着し、厚さ30nmの発光層を形成した。
この発光層上に、電子注入層として、下記構造のET−1を25nmの厚さに蒸着した。
次に、弗化リチウムを1nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nmの厚さに蒸着し、有機EL素子を作製した。なお、このアルミニウム/弗化リチウムは陰極として働く。
こうして得られた有機EL素子について実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【化69】

【0139】
実施例5〜42、比較例2
ホスト材料とドーピング材料を表2のように変更した他は実施例4と同様に有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
外部量子収率の測定方法は以下の通りである。
得られた有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を通電し、分光放射輝度計(CS1000:ミノルタ製)で発光スペクトルを測定し、下記数式(1)により外部量子収率を算出した。
【数1】

:光子数
:電子数
π:円周率=3.1416
λ:波長(nm)
φ:発光強度(W/sr・m・nm)
h:プランク定数=6.63x10−34(J・s)
c:光速度=3x10(m/s)
J:電流密度(mA/cm
e:電荷=1.6x10−19(C)
【0140】
【表2】

【0141】
実施例43〜71、比較例3
ホスト材料とドーピング材料を表3のように変更した他は実施例1と同様に有機EL素子を作製し、評価した。結果を表3に示す。
外部量子収率の測定方法は上記と同じである。
【化70】

【0142】
【表3】

【0143】
実施例72
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚50nmの下記化合物A−1を成膜した。A−1膜の成膜に続けて、このA−1膜上に膜厚45nmの下記化合物A−2を成膜した。
さらに、このA−2膜上に膜厚25nmでホスト材料である化合物EM31と、ドーピング材料である本発明の化合物D−1を20:1の膜厚比で成膜し青色系発光層とした。
この膜上に電子輸送層として膜厚25nmで下記構造のET−2を蒸着により成膜した。この後、LiFを膜厚1nmで成膜した。このLiF膜上に金属Alを150nm蒸着させ金属陰極を形成し有機EL発光素子を形成した。
こうして得られた有機EL素子について実施例1と同様に評価した。外部量子収率の測定方法は上記と同じである。結果を表4に示す。
【0144】
【化71】

【0145】
実施例73〜112、比較例4,5
ホスト材料とドーピング材料を表4のように変更した他は実施例72と同様に有機EL素子を作製し、評価した。外部量子収率の測定方法は上記と同じである。結果を表4に示す。
【化72】

【0146】
【表4】

【0147】
表1〜4から、実施例の素子は、高い効率を維持し、色再現性の高い。このことにより、低消費電力で色再現性の高いディスプレイデバイスを実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。
【0149】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献の内容を全てここに援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極の間に少なくとも発光層を含む1以上の有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が下記式(1)
【化73】

(式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基を示す。
Ar〜Arは、それぞれ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を示す。
ただし、Ar〜Arのうち少なくとも1つが下記式(2)で表される複素環基である。
【化74】

(式(2)において、R11〜R17は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基を示す。R11〜R17は隣接する置換基同士で飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
は酸素原子又は硫黄原子を示す。))で表される芳香族アミン誘導体と、下記式(5)で表されるアントラセン誘導体とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化75】

(式(5)において、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基である。
ただし、前記単環基が置換基として複素環基を有する場合、該複素環基は、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基である。
101〜R108は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基、置換もしくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ、置換もしくは無置換のシリル基、ハロゲン原子、及びシアノ基から選ばれる基である。)
【請求項2】
前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50の縮合環基である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記式(5)において、Ar11及びAr12の一方が置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基であり、他方が置換若しくは無置換の環形成原子数10〜50の縮合環基である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記式(5)において、Ar12がナフチル基、フェナントリル基、ベンゾアントリル基、ジベンゾフラニル基であり、Ar11が無置換又は、単環基又は縮合環基が置換されたフェニル基である請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記式(5)において、Ar12が置換もしくは無置換の環形成原子数8〜50の縮合環基であり、Ar11が無置換のフェニル基である請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記式(5)において、Ar11及びAr12が、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の単環基である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ独立に置換若しくは無置換のフェニル基である請求項6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記式(5)において、Ar11が無置換のフェニル基であり、Ar12が単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記式(5)において、Ar11、Ar12がそれぞれ独立に単環基、縮合環基を置換基として持つフェニル基である請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2013−80961(P2013−80961A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1975(P2013−1975)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2011−510233(P2011−510233)の分割
【原出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】