説明

芳香族アルファ−ヒドロキシケトンの調製方法

塩素、塩化スルフリルまたは臭素を用いることを必要とせず、中間体の芳香族ケトンをハロゲン化水素で、酸化作用を有する化合物の存在下でハロゲン化することを含む、芳香族アルファ−ヒドロキシケトン(芳香族α−ヒドロキシケトン)の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素、塩化スルフリルまたは臭素を用いることを必要としない芳香族アルファ−ヒドロキシケトン(芳香族α−ヒドロキシケトン)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族α−ヒドロキシケトンの表現を有する本文において、本発明者らは、カルボニル基の炭素原子の置換基の1つがアリール基であり、他方が、カルボニル基に隣接する炭素原子上にヒドロキシル(−OH)を有するアルキル基であるケトンを意味する。
芳香族α−ヒドロキシケトンは、光開始剤として広く用いられている。芳香族α−ヒドロキシケトンに至るより一般的な合成経路は、重要な中間体としてα−ハロケトンを含む。
【0003】
それがEP 3002およびWO 2004099111において報告されているように、α−ハロケトンは、対応するα−ハロアルキルアリールケトンまで進行するアルキルアリールケトンの塩素、臭素または塩化スルフリルとの反応から得られる:報告された方法にはまた、ハロゲン化有機溶媒を用いることが必要である。
臭素、塩化スルフリルおよび塩素を用いることは、欠点を伴う。
臭素を用いる場合には、費用は高い;塩化スルフリルは、反応副産物、例えば無水亜硫酸を処理することができる特定の工場施設を必要とする。
【0004】
有毒ガスに分類される塩素に関する限り、特定の予防措置が、プロセスの安全を確実にするために必要である。
Can. J. Chem. 68、1990には、塩素または臭素を用いることが必要ではない、α−ヒドロキシ−イソブチロフェノンのイソブチロフェノンからの合成が報告されている。
【0005】
しかし、反応は、大過剰の試薬を用いて行われる;約1mmolのイソブチロフェノンに対して、100mmolの水酸化ナトリウムおよび900mmolの塩化カリウムが、3mmolの次亜塩素酸ナトリウムの存在下で用いられる。
【0006】
反応には、20時間を要し、α−ヒドロキシ−イソブチロフェノンにおける70%の収率を有する。容易に理解できるように、当該方法は、必要とされる莫大な量および高度な過剰の試薬のために、産業的規模で適用可能ではない。同文献において、塩素化有機溶媒を用いることを含まず、代わりにイオン性液体、例えば(BF)塩を用いることを含む、アリールケトンのα−ハロゲン化の例が、報告されている;この問題に関して、参照を、例えば、Synthetic Communications (2006), 36(6), 777-780中に見出すことができる。
【0007】
しかし、イオン性液体は、一般的に高価であり、湿気に対して敏感であり、それらの工業的使用は、かなり困難である。
比較的反応性の水素原子、例えばベンジル位におけるまたは2つのケト基に対してアルファにおける水素原子を有する化合物の酸性pHにおける次亜塩素酸塩/塩化物に基づく酸化還元系による、ハロゲン化の例もまた、知られている(例えばJP 10175891およびTetrahedron Letters (2005), 46(28), 4749-4751から)。
いくつかの臭素化反応についての過酸化水素/HBrに基づく酸化還元系への文献は、より多数である(例えば、Synthetic Communications (2003), 33(8), 1399-1403)。
ここで、塩素化溶媒もしくはすべての他の溶媒を用いること、または塩素、塩化スルフリルおよび臭素を用いることを必要としない、芳香族α−ヒドロキシケトンの調製方法を見出した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ハロゲン化化合物をin−situ生成することを含み、溶媒の非存在下でも、上述の欠点を伴わずに中間体および最終生成物を得ることを提供する。
【0009】
本出願人が知る限り、以下に詳述するハロゲン化(および特に塩素化)酸化還元系に基づいて芳香族α−ヒドロキシケトンを調製するのに有用な方法、ならびに、ハロゲン化中間体(芳香族α−ハロケトン)を調製するためにいかなる有機溶媒を用いることをも必要としない、芳香族α−ヒドロキシケトンの製造方法は、文献に記載されていない。
本発明の方法は、2つのアルキル基(またはシクロアルキル基)をカルボニル基のα位に有する芳香族α−ヒドロキシケトンを調製するのに特に適する。
【0010】
詳細な説明
したがって、本発明の基本的な目的は、芳香族α−ヒドロキシケトンおよびビス芳香族α−ヒドロキシケトンの調製方法であって、以下の段階:
a)式
ArH
または式
HAr−Y−ArH
式中、Yは、単結合、CH、O、S、CH=CHまたはNRであり、Rは、C〜C12直鎖状または分枝状アルキルであり、Arは、アリール基である、
で表される芳香族化合物を、
【0011】

XCOC(H)R
式中、Xは、BrまたはClであり、RおよびRは、独立して、非置換であるかまたは−OH、アルコキシル、アリールもしくは−NRで置換されている、C〜C12直鎖状または分枝状アルキル基であり、RおよびRは、C〜C12直鎖状もしくは分枝状アルキル基であるか、または一緒にC〜Cシクロアルキル基を形成し;あるいは、RおよびRは、一緒に、−OH、アルコキシル、アリール、−NRで置換されていてもよい、C〜Cシクロアルキルを形成し、RおよびRは、C〜C12直鎖状もしくは分枝状アルキル基であるか、または一緒にC〜Cシクロアルキル基を形成する、
で表されるハロゲン化アシルでアシル化して、
【0012】

ArCOC(H)R
または式
(H)CCOAr−Y−ArCOC(H)R
式中、Ar、Y、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する;
で表される芳香族ケトンを得る段階;
【0013】
b)芳香族ケトンを、酸化作用を有する化合物(oxidising compound)の存在下でハロゲン化水素HXと反応させることにより、ハロゲン化して、

ArCOC(X)R
または式
(X)CCOAr−Y−ArCOC(X)R
式中、Ar、Y、X、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する、
で表される芳香族α−ハロケトンを得る段階;
【0014】
c)α−ハロケトンを水溶性塩基でヒドロキシル化して、式
ArCOC(OH)R
または式
(OH)CCOAr−Y−ArCOC(OH)R
式中、Ar、Y、X、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する、
で表される芳香族α−ヒドロキシケトンを得る段階
を含む、前記方法である。
【0015】
本発明の方法は、一般的適用性を有し、光開始剤としてすでに知られ、用いられている数種のα−ヒドロキシケトンを提供する;これらの中で、最も興味深いものを、以下に報告する:
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
より一般的に、本発明の方法は、式ArHおよびHAr−Y−ArH、式中Arがフェニルであり、それが非置換であるかまたは1つもしくは2つ以上のC〜C12アルキル基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、ハロゲンで置換されていてもよく;あるいはAr、インダン環の炭素原子3との単結合を介して1,1,3−トリメチルインダン基で置換されている、で表される芳香族化合物に適用可能である。
【0023】
本発明の特に有利な側面において、例えば、アシル化反応を、式HAr−Y−ArHで表される芳香族化合物、ここで式中Arは非置換フェニルであり、YはO、SまたはCHであり、ハロゲン化アシルにおけるRおよびRはメチルである、において行う場合には、2つまたは3つ以上のα−ヒドロキシケト基を含む化合物、および特に対称の芳香族ビスα−ヒドロキシケトンを提供する。
【0024】
本発明を実現する他の形態において、芳香族化合物は、式ArHを有し、式中、Arは非置換フェニルであり、ハロゲン化アシルにおけるRおよびRはメチルであるか、または一緒にシクロヘキシル基を形成する;あるいはArは、1,1,3−トリメチルインダン基で置換されているフェニルであり、ハロゲン化アシルにおけるRおよびRはメチルである。
【0025】
段階a)のアシル化反応は、芳香族のArHまたはHAr−Y−ArH化合物と式XCOC(H)R、式中XはClまたはBrであり、RおよびRは上記で詳述した意味を有する、で表されるハロゲン化アシルとのフリーデルクラフツアシル化である;好ましくは、アシル化を、三塩化アルミニウムによって触媒し、三塩化アルミニウムを、塩化アシルに溶解した芳香族化合物に対して反応させることによって、いかなる溶媒をも用いずに行う。
この段階の間の温度を、通常0°〜60℃に保持する。
【0026】
段階a)は、アシル化の後に、反応停止または加水分解として呼ばれ、一般的に反応混合物を4〜10重量%のHCl水溶液で50〜60℃の温度にて処理することによって行う最終段階を含む。
反応停止の終了時に、触媒を、水相(反応停止水)に溶解し、反応生成物、芳香族ケトンを、水相から分離し、回収し、以下の段階(段階b)に用いることができる。
【0027】
あるいは、また本発明のさらなる有利な態様によれば、触媒およびHClを含む反応停止水を、水性媒体として用いてもよく、ここで段階b)の以下のハロゲン化を行う。この場合において、相を分離せずに、ハロゲン化を直接継続するのに適した条件にするために、ハロゲン化水素の含量を調節する必要があり得る。
【0028】
段階b)中、ハロゲン化水素は、好ましくは塩化水素、臭化水素であるか、または硫酸とアルカリ金属塩の臭化物もしくは塩化物とを混合することによってin−situ調製する。
ハロゲン化水素が、塩化水素であるか、または硫酸とアルカリ金属塩塩化物とを混合することによってin−situ調製される場合には、当該反応を、密閉した容器中で0.5〜3barの圧力にて行う。
【0029】
驚くべきことに、最良の結果は、段階b)のハロゲン化を行うことによって、いかなる有機溶媒をも伴わずに、液体形態における芳香族ケトンに対して、水性媒体中に分散して得られる;このようにして、反応体の量を顕著に減少させ、同時に有機溶媒、特にハロゲン化溶媒、例えば塩化メチレンおよびジクロロベンゼンを用いることを回避することが、可能である。芳香族ケトンの液体形態を、有利には、その融点より高い温度にて操作することによって得ることができる。
【0030】
好ましくは、本発明の方法において、過剰のハロゲン化水素および酸化作用を有する化合物を用い、酸化作用を有する化合物と芳香族ケトンとのモル比は、1.1:1〜10:1の範囲内であり、ハロゲン化水素と芳香族ケトンとのモル比は、1.1:1〜20:1の範囲内である。反応体が安価であること、いかなる有機溶媒をも伴わずに作業する可能性および塩素、臭素または塩化スルフリルを用いることを回避する方法の単純さにより、可能な限定された過剰のハロゲン化水素および酸化作用を有する化合物を大いに補償される。
【0031】
特に有利な態様において、段階a)、段階b)および段階c)を、有機溶媒の非存在下で、芳香族化合物および芳香族ケトンを液体形態で、水性媒体中に分散して行う。
ハロゲン化反応の温度は、好ましくは40°〜120℃を含む。
【0032】
次亜塩素酸塩のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩ならびに過酸化水素を、酸化作用を有する化合物として用いてもよい。
過酸化水素を、好ましくは33%水溶液として用いる。
好ましい酸化作用を有する化合物は、次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カルシウムである。次亜塩素酸ナトリウムを、段階b)において、10〜13重量%水溶液としてであるその最も一般的な市販されている形態で直接用いることができる。
【0033】
次亜塩素酸カルシウムは、約65%の塩素活性物質を有する固体として商業的に入手できる;段階b)において用いるために、それを、予め水で希釈することができるか、またはそれを、段階b)を行う水性媒体に直接加えることができる。
さらし粉をまた、本発明の方法において次亜塩素酸カルシウム源として用いることができる。
【0034】
段階b)の酸化作用を有する化合物を、0.5〜4mol/lの範囲内の濃度をで、水溶液の形態で用いる。
ハロゲン化水素を、通常段階b)において、好ましくは3〜14mol/lの範囲内の濃度を有する水溶液中で用いる。
ハロゲン化をアルカリ金属ハロゲン化物を用いて行う場合には、芳香族ケトン1molあたり4〜6molの硫酸の水性媒体に加えることが、好ましい。
【0035】
有利には、本発明の方法を、α−クロロケトンを介してα−ヒドロキシケトンを調製するために用いることができる;後者の中間体が、芳香族α−ヒドロキシケトンの合成において好ましい。その理由は、それらにより、臭素誘導体を用いることを完全に回避することが可能になるからである。
この理由によって、ハロゲン化水素は、より好ましくは塩化水素であるか、またはそれを、硫酸をアルカリ金属塩塩化物、例えば塩化ナトリウムと混合することによってin−situ調製する。
表1において、段階b)の反応を効果的に行うために用いることができるいくつかの有用な条件を、報告する。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の方法の最終段階は、段階b)の終了時に、水溶性アルカリ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化バリウムまたは水酸化カリウムを水中5〜50重量%の濃度にて用いて、好ましくはいかなる有機溶媒をも伴わずに、かつ相転移触媒、例えば塩化ベンジルトリメチルアンモニウムの存在下で得られるα−ハロケトンの反応である。
段階c)の反応は、置換反応であり、α−ハロゲン原子は、−OH基によって置き換えられ、;当該反応を、段階b)から得られる粗製のα−ハロケトンに対して行うことができる。
【0038】
反応の終了時に、α−ヒドロキシケトンを、相を分離し、それを水で洗浄し、場合によっては通常の産業的方法によって、例えば蒸留または結晶化によってそれを精製することによって回収することができる。
本発明の方法は、以下の例から明らかなように、α−ヒドロキシケトンを高収率で対応する芳香族化合物形態で提供する。
【0039】

例1
2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンの調製
a)アシル化
・2−メチル−プロピオフェノン(イソブチロフェノン)の合成
123gの塩化アルミニウム(1.02mol)を、120gのベンゼン(1.53mol)および108.2gの塩化イソブチリル(1.02mol)の溶液に、撹拌しながら温度を5℃に保持して、分割して2時間で加えた。混合物を、撹拌しながらさらに1時間冷却せずに維持した。反応を、TLC(SiO、トルエン)によってチェックした。混合物を、撹拌しながら氷中に注いた。有機層を分離し、溶媒を真空下で蒸発させ、生成物を163℃、160mmHgにて蒸留し、140gの無色油(収率95%)を得、それを、次の段階のために用いた。
【0040】
b)ハロゲン化
・2−クロロ−2−メチル−プロピオフェノンの合成(方法A)。
31gのNaClO 12%水溶液(0.05mol)を、7.4gの段階a)において得られた2−メチル−プロピオフェノン(0.05mol)を11.84gの塩酸37%(0.12mol)に懸濁させた、撹拌した懸濁液に、40℃にて90分において滴下した。温度は、57℃に上昇した。懸濁液を、さらに1時間撹拌した。冷却後、有機相を分離し、TLC(SiO、トルエン)によってチェックし、85%より高い変換を観察した。有機相(油)を、さらに精製せずに次の段階のために用いた。
【0041】
・2−ブロモ−2−メチル−プロピオフェノンの合成(方法G)。
31gのNaClO 12%水溶液(0.05mol)を、7.4gの段階a)において得られた2−メチル−プロピオフェノン(0.05mol)を20.23gの臭化水素酸48%(0.12mol)に懸濁させた、撹拌した懸濁液に、20℃にて90分滴下した。温度は、50℃に上昇した。懸濁液を、12時間撹拌した。冷却後、有機相を分離し、TLC(SiO、トルエン)によってチェックし、95%より高い変換を観察した。有機相(油)を、さらに精製せずに次の段階のために用いた。
【0042】
c)ヒドロキシル化
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンの合成。
20mmolに相当する方法Aまたは方法Gによる段階b)において得られた油のアリコートを、撹拌しながら40°から80℃まで、NaOH50%(25mmol)および塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(0.025mmol)の存在下で加熱した。60分後、TLC(SiO、トルエン/メタノール85/15)により、反応が完全であることが示された。有機相を分離し、減圧(182℃、160mmHg)下で蒸留し、2.95gの生成物(収率90%)が得られた。
【0043】
H1 NMR (300MHz, CDCb): δ: 7.96-8.04 (m,2H); 7.53-7.60 (m,1H); 7.42-7.50 (m,2H); 1 .65 (s,6H)
【0044】
例2
2−ヒドロキシ−1−{3−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,1,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンと2−ヒドロキシ−1−{1−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,3,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンとの混合物の調製。
a)アシル化
1−[4−(5−イソブチリル−1,3,3−トリメチル−インダン−1−イル)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンと1−[4−(6−イソブチリル−1,3,3−トリメチル−インダン−1−イル)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンとの混合物の合成
14.66gの塩化アルミニウム(110mol)を、11.82gの1,3,3−トリメチル−1−フェニル−インダン(50mmol)および13.38gの塩化イソブチリル(123mmol)の溶液に、1時間で撹拌しながら温度を25℃に保持して分割して加えた。混合物を加熱し、撹拌しながらさらに1時間60℃に維持した;混合物の粘性は、増大した。反応を、TLC(SiO、トルエン)によってチェックした。混合物を、112gの塩酸4%で処理し、80℃を超えなかった。有機層を、60℃にて軽油として分離し、それを、精製せずに次の段階のために用いた。
【0045】
b)ハロゲン化
・2−クロロ−1−{3−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,1,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンと2−クロロ−1−{1−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,3,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンとの混合物の合成。(方法A)
1gの段階a)において得られた油(2.66mmol)を、撹拌しながら5.2gの塩酸37%(52.7mmol)に、100℃にて圧力反応器中で懸濁させた。3.8gのNaClO 12.5%(6.4mmol)を、1時間で加えた。混合物を、100℃にてさらに1時間撹拌する。TLC(SiO、トルエン)制御の後、混合物を冷却し、有機相を、水相から分離した後に採集した。このようにして得た油(1g)を、次の段階のために用いた。
【0046】
・2−クロロ−1−{3−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,1,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンと2−クロロ−1−{1−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,3,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンとの混合物の合成。(方法B)
0.28gの段階a)において得られた油(0.74mmol)を、撹拌しながら0.88gの塩酸37%(8.9mmol)に、50℃にて圧力反応器中で懸濁させた。次に、0.36gのCa(ClO) 65%(1.64mmol)を、加えた。混合物を、60℃にて1時間撹拌する。TLC(SiO、トルエン)制御の後、混合物を冷却し、有機相を、水相を分離した後に採集した。このようにして得た油(0.3g)を、次の段階のために用いた。
【0047】
c)ヒドロキシル化
・2−ヒドロキシ−1−{3−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,1,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンと2−ヒドロキシ−1−{1−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニル]−1,3,3−トリメチル−インダン−5−イル}−2−メチル−プロパン−1−オンとの混合物の合成。
0.3gの方法AまたはBによって得られた油(0.67mmol)を、0.32gのNaOH 30%(2.42mmol)と共に、0.04gの塩化ベンジル−トリエチルアンモニウムの存在下で還流にて撹拌した。2時間後、反応は完全であった(TLC SiO、トルエン/メタノール85/15)。60℃にて放置した後、軽い有機相を採集し、5mlの水で2回洗浄した。生成物を、油(0.24g、87%)として得た。
【0048】
Hl NMR(300MHz, CDCb):δ: 7.9-8.1 (m,3H); 7.8 (s,1H); 7.2-7.4 (m,3H); 4.1 -4.2 (m,2H); 2.4-2.5 (d,1H); 2.2-2.3 (d,1H); 1 .6-1 .8 (m,15H); 1 .4 (m,3H); l .l (m,3H)
【0049】
例3
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ}−2−メチル−1−プロパン−1−オンの調製。
a)アシル化
・1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。
15.33gの塩化アルミニウム(115mmol)を、8.6gのジフェニルエーテル(50mmol)および11.97gの塩化イソブチリル(110mmol)の溶液に、撹拌しながら温度を5°〜15℃に保持して、分割して1時間で加えた。混合物を、15℃にてさらに1時間撹拌下に維持し、次に50℃にて1時間加熱した。混合物を、撹拌しながら100mlの水で処理した。有機層を分離し、11gの黄色油を得、それを、次の段階のために精製せずに用いた。試料を、石油エーテル40°〜65℃から結晶化し、融点54℃を有する白っぽい固体を得た。
【0050】
Hl NMR(300MHz, CDCb):δ: 7.98 (d, 4H); 7.04 (d, 4H); 3.45-3.55(m, 2H); 1 .21 (d, 12H)
【0051】
b)ハロゲン化
2−クロロ−1−{4−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。(方法C)
15.2gの過酸化水素33%(148mmol)を、圧力容器中で、3.03gの1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(9.8mmol)を21.67gのHCl37%(220のmmol)および18gの硫酸64%(118mmol)に懸濁させた懸濁液に加えた。次に、混合物を、120℃にて撹拌しながら加圧において加熱した。40分後、反応物を冷却し、TLC(SiO、トルエン)によってチェックし、出発物質がほぼ完全に変換されたことを観察した。有機相を、次の段階においてさらに精製せずに用いた。
【0052】
・2−クロロ−1−{4−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。(方法D)
5.06gの過酸化水素33%(49mmol)を、圧力容器中で、3.03gの1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(9.8mmol)を17.4gの硫酸64%(114mmol)および6.84gのNaCl(117mmol)に懸濁させた懸濁液に加えた。次に、混合物を、120℃にて撹拌および加圧の下で加熱した。40分後、反応を冷却し、TLC(SiO、トルエン)によってチェックし、出発物質がほぼ完全に変換されたことを観察した。有機相を濾過によって採集し、次の段階においてさらに精製せずに用いた。
【0053】
・2−クロロ−1−{4−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。(方法E)
12gのNaClO 12%(20.1mmol)を、15分で圧力容器中で、1.5gの1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(9.8mmol)および6.84gのNaCl(117mmol)を15gの硫酸64%(98mmol)に懸濁させた、撹拌した懸濁液に、70℃にて加えた。同一の条件において1時間後、反応は完全であった(TLC SiO、トルエン)。分離した有機相を、次の段階においてさらに精製せずに用いた。
【0054】
・2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。(方法F)
2.21gの過酸化水素33%(21.5mmol)を、20分で、3.03gの1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(9.8mmol)を7.04gの臭化水素酸48%(41.8mmol)に懸濁させた、撹拌した懸濁液に、20℃にて加えた。次に、混合物を、70℃にて1時間加熱した。反応を、TLC(SiO、トルエン)によってチェックした。混合物全体を、次の段階のために精製せずに用いた。
【0055】
・2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成。(方法G)
13.73gのNaClO 12%(23mmol)を、20分で、3.03gの1−[4−(4−イソブチリル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(9.8mmol)を7.04gの臭化水素酸48%(41.2mmol)に懸濁させた、撹拌した懸濁液に、45℃にてゆっくりと加えた。次に、混合物を、60℃にて20分間加熱した。反応を、TLC(SiO、トルエン)によってチェックした。混合物全体を、次の段階のために精製せずに用いた。
【0056】
c)ヒドロキシル化
・2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成(ジクロロ中間体から)
方法Dによって調製したジクロロ中間体を、10.61gのi−プロピルアルコールおよび2.6gの水に溶解した。2.3gのNaOH50%を、このようにして得られた溶液に加え、15分後に80℃にて、反応は完全であった(TLC SiO、トルエン/メタノール85/15)。冷却し、16.65gの水で希釈した後に、pHを、濃HClで3に調整した。反応生成物は、白色固体として分離し、2.3gを、濾過によって採集した(68%)。融点97°〜99℃。
【0057】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 8.10 (d,4H); 7.07 (d,4H); 3.9 (s,2H);1 .63 (s,12H)
【0058】
・2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成(ジブロモ中間体から)
方法FまたはGによって得られたジブロモ中間体の懸濁液を、3gのNa 10%水溶液と共に、85℃にて10分にわたり撹拌し、次に10.6gのi−プロピルアルコールおよび2.6gの水で希釈した。このようにして得られた溶液に、2.3gのNaOH50%を加え、15分還流後に、反応は完全であった(TLC SiO、トルエン/メタノール85/15)。冷却し、13.3gの水で希釈した後、pHを、濃HClで3に調整した。反応生成物は、白色固体として分離し、3gを、濾過によって採集した(90%)。融点97°〜99℃。
【0059】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 8.10 (d,4H); 7.07 (d,4H); 3.9 (s,2H);1 .63 (s,12H)
【0060】
例4
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンの調製。
a)アシル化
・シクロヘキシル−フェニルケトンの合成。
13.7gの塩化アルミニウム(103mmol)を、分割して1時間で、15gのシクロヘキサンカルボン酸塩化物(100mmol)を24gのベンゼンに溶解し、撹拌した溶液に、10〜15℃にて加えた。次に、混合物を、60℃にて20分にわたり加熱して、反応を完了させた。混合物を室温に冷却し、100mlの水中に注いだ。有機相を分離し、溶解物を減圧下で蒸留し、18.6gの油を得た。
【0061】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 7.90-8.00 (d,2H); 7.40-7.60 (m,3H); 3.20-3.35 (m,1H); 1.70- 2.00 (m,5H); 1.20-1 .60 (m,5H)
【0062】
b)ハロゲン化
・1−ブロモ−シクロヘキシル−フェニルケトンの合成(方法G)。
18.7gのNaClO 12%(34.8mmol)を、60℃にて30分で、4.71gのシクロヘキシル−フェニルケトン(25mmol)の11.52gの臭化水素酸48%(68.3mmol)中の撹拌した分散体に加えた。次に、混合物を、2時間で60°から100℃に加熱した。70℃にて冷却した後、有機相を分離し、50gの亜硫酸ナトリウムの10%水溶液、次に50gの水で洗浄した。有機相(6.6g)を、精製せずに次の段階のために用いた。
【0063】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 8.02-8.12 (d,2H); 7.38-7.60 (m,3H); 2.27-2.42 (m,2H); 2.10- 2.25 (m,2H); 1.75-1 .90 (m,2H); 1.47-1 .65 (m,3H); 1.35-1.46 (m,1H)
【0064】
・1−クロロ−シクロヘキシル−フェニルケトン(方法B)の合成。
4.01gのCa(ClO) 65%(18.2mmol)を、60分で、4.96gのHCl 37%(50mmol)中に60℃にて分散させた1.88gのシクロヘキシル−フェニルケトン(10mmol)を含む圧力容器に加えた。撹拌下で60℃にて30分後、有機相を分離し、10mlの水で洗浄し、10gの油を得た。油を、精製せずに次の段階のために用いた(2.3g)。
【0065】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 8.05-8.15 (d,2H); 7.38-7.60 (m,3H); 2.07-2.30 (m,4H); 1.75- 1.90 (m,2H); 1.50-1 .67 (m,3H); 1.25-1 .4 (m,lH)
【0066】
c)ヒドロキシル化
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンの合成。
方法Gで得られた6.6gの1−ブロモ−シクロヘキシル−フェニルケトン(24.7mmol)を、6gのNaOH 30%中に分散させ、80℃に加熱した;100mgの塩化ベンジル−トリエチルアンモニウムを、2分割で加え、混合物を、80℃にて1時間撹拌した。有機相を分離し、濃HClでpH3に設定した10mlの水で加温して洗浄した。有機相を、石油エーテル40°〜65℃から結晶させ、3gの白っぽい固体(59%)を得た。融点45°〜46℃。
【0067】
Hl NMR(300MHz, CDCb): δ: 7.97-8.07 (d,2H); 7.40-7.60 (m,3H); 3.45 (s,1H); 1.97-2.12 (m,2H); 1 .60-1.87 (m,7H); 1 .25-1.45 (m,lH)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族α−ヒドロキシケトンおよびビス芳香族α−ヒドロキシケトンの調製方法であって、以下の段階:
a)式
ArH
または式
HAr−Y−ArH
式中、Yは、単結合、CH、O、S、CH=CHまたはNRであり、Rは、C〜C12直鎖状または分枝状アルキルであり、Arは、アリール基である、
で表される芳香族化合物を、

XCOC(H)R
式中、Xは、BrまたはClであり、RおよびRは、独立して、非置換であるかまたは−OH、アルコキシル、アリールもしくは−NRで置換されている、C〜C12直鎖状または分枝状アルキル基であり、RおよびRは、C〜C12直鎖状もしくは分枝状アルキル基であるか、または一緒にC〜Cシクロアルキル基を形成し;あるいは、RおよびRは、一緒に、−OH、アルコキシル、アリール、−NRで置換されていてもよい、C〜Cシクロアルキルを形成し、RおよびRは、C〜C12直鎖状もしくは分枝状アルキル基であるか、または一緒にC〜Cシクロアルキル基を形成する、
で表されるハロゲン化アシルでアシル化して、

ArCOC(H)R
または式
(H)CCOAr−Y−ArCOC(H)R
式中、Ar、Y、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する;
で表される芳香族ケトンを得る段階;
b)芳香族ケトンを、酸化作用を有する化合物の存在下でハロゲン化水素HXと反応させて、式
ArCOC(X)R
または式
(X)CCOAr−Y−ArCOC(X)R
式中、Ar、Y、X、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する、
で表される芳香族α−ハロケトンを得ることによってハロゲン化する段階;
c)α−ハロケトンを塩基水溶液でヒドロキシル化して、式
ArCOC(OH)R
または式
(OH)CCOAr−Y−ArCOC(OH)R
式中、Ar、Y、X、RおよびRは、上記で詳述した意味を有する、
で表される芳香族α−ヒドロキシケトンを得る段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
Arがフェニルであり、非置換であるかまたは1つもしくは2つ以上のC〜C12アルキル基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、ハロゲンで置換されていてもよく;あるいはArが、インダン環の炭素原子3との単結合を介して1,1,3−トリメチルインダン基で置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
芳香族化合物が式ArHを有し、Arが非置換フェニルであり、RおよびRがメチルであるか、または一緒にシクロヘキシル基を形成し;あるいは、Arが1,1,3−トリメチルインダン基で置換されたフェニルであり、RおよびRがメチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
芳香族化合物が式HAr−Y−ArHを有し、ここでArが非置換フェニルであり、YがO、SまたはCHであり、RおよびRがメチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ハロゲン化水素が塩化水素もしくは臭化水素であるか、または硫酸を塩素もしくは臭素のアルカリ金属塩と混合することによってin−situ調製し、酸化作用を有する化合物が、次亜塩素酸塩のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩または過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化作用を有する化合物が、次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カルシウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ハロゲン化水素が、塩化水素であるか、または硫酸を塩素のアルカリ金属塩と混合することによってin−situ調製する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
段階b)を、有機溶媒の非存在下で、液体形態にあり、水性媒体中に分散した芳香族ケトンに対して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
段階a)および段階c)を、有機溶媒の非存在下で行い、芳香族化合物および芳香族ケトンが液体形態にあり、水性媒体中に分散している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸化作用を有する化合物と芳香族ケトンとの間のモル比が、1.1:1〜10:1の範囲内であり、ハロゲン化水素と芳香族ケトンとの間のモル比が、1.1:1〜20:1の範囲内である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アシル化反応を、三塩化アルミニウムによって触媒し、三塩化アルミニウムを水相(反応停止水)に溶解し、アシル化された反応生成物を水相から分離し終わったときに、4〜10重量%のHCl水溶液で処理することによって行う、最終の加水分解段階を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
反応停止水を、段階b)の水性媒体として用いる、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519899(P2011−519899A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507922(P2011−507922)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055518
【国際公開番号】WO2009/135895
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(501185604)ランベルティ ソシエタ ペル アチオニ (17)
【Fターム(参考)】