説明

芳香族エチニル化合物、樹脂組成物、ワニス、樹脂膜、半導体装置

【課題】高弾性率かつ密着性に優れる樹脂膜が得られる芳香族エチニル化合物、これを含む樹脂組成物及びワニスを提供し、また、前記樹脂膜を用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】1つ以上のエチニル基と、1つ以上のo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する芳香族エチニル化合物により達成される。前記芳香族エチニル化合物は、一般式(1)で表される構造を有するものである。


(式(1)中、Rはo−ヒドロキシアミドフェニル基を含む基を示し、式(1)で表される構造における水素原子上の水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。n1及びn2は、それぞれ、1以上4以下の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族エチニル化合物、樹脂組成物、ワニス、樹脂膜、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用の層間絶縁膜としては、現在、CVD法(化学蒸着法)等で作製した酸化膜(SiOx膜)が主に使用されている。しかし、酸化膜等の無機絶縁膜は、誘電率が高いため、半導体の高速化、高性能化に対応するのが困難である。そこで、低誘電率の層間絶縁膜として、有機材料の適用が検討されている。層間絶縁膜に用いられる有機材料としては、耐熱性、電気特性、高弾性率かつ密着性に優れていることが要求される。
【0003】
従来、有機材料としては、例えば、1,3,5−トリエチニルベンゼン、1,3−ジエチニルベンゼン及びエチニルベンゼンを塩化銅(I)触媒下で重合して得られる組成物が検討されているが(例えば、非特許文献1参照。)、該組成物からなる絶縁膜の機械強度と密着性は充分なものではなかった。
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules 2006,39,1850−1853
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高弾性率かつ密着性に優れる樹脂膜が得られる芳香族エチニル化合物、これを含む樹脂組成物及びワニスを提供することにあり、また、前記樹脂膜を用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、第(1)項から第(9)項の本発明により達成される。
(1) 1つ以上のエチニル基と、1つ以上のo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する芳香族エチニル化合物。
(2) 前記芳香族エチニル化合物は、一般式(1)で表される構造を有するものである、第(1)項に記載の芳香族エチニル化合物。
【0007】
【化1】

(式(1)中、Rはo−ヒドロキシアミドフェニル基を含む基を示し、式(1)で表される構造における水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。n1及びn2は、それぞれ、1以上4以下の整数である。)
【0008】
(3) 前記芳香族エチニル化合物は、一般式(2)で表される構造を有するものである、第(1)項又は第(2)項に記載の芳香族エチニル化合物。
【0009】
【化2】

(式中、A1及びA2は、それぞれ、独立した有機基であり、同じであっても異なっていても良く、少なくとも一方はエチニル基である。一般式(2)中、該有機基上の水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。式中、n3は0以上5以下の整数を示し、n4は0以上4以下の整数を示し、少なくとも一方は1以上を示す。)
【0010】
(4) 第(1)項乃至第(3)項のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物同士を反応させて得られる重合体。
(5) 前記重合体は、遷移金属触媒又は活性気体触媒を用いて、前記芳香族エチニル化合物のエチニル基同士を反応させて得られるものである、第(4)項に記載の重合体。
(6) 第(1)項乃至第(3)項のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物及び/又は第(4)項又は第(5)項に記載の重合体を含む樹脂組成物。
(7) 第(1)項乃至第(3)項のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物及び/又は第(4)項又は第(5)項に記載の重合体を含むワニス。
(8) 第(6)項に記載の樹脂組成物又は第(7)項に記載のワニスを用いて、加熱処理して得られる樹脂膜。
(9) 第(8)項に記載の樹脂膜を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高弾性率かつ密着性に優れる絶縁膜が得られる芳香族エチニル化合物、これを含む樹脂組成物及びワニスを提供することができ、前記樹脂膜は、比誘電率が低く、誘電特性に優れることから、それを用いた半導体装置は接続信頼性と電気特性も良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明は、1つ以上のエチニル基と、1つ以上のo−ヒドロキシアミドフェニル基とを含む芳香族エチニル化合物である。前記芳香族エチニル化合物及び/又は前記芳香族エチニル化合物のエチニル基同士を反応させた重合体を含む樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散することによりワニスとすることができる。前記用ワニスを用いて加熱処理して得られる樹脂膜は、機械特性および密着性に優れる。また、本発明の半導体装置は、上記樹脂膜を有するものである。
前記芳香族エチニル化合物において、エチニル基同士を反応させる際に、酢酸銅(I)
などの遷移金属や酸素などの活性気体を触媒として用いると、ブタジイニル基を有する重合体を得ることができる。前記ブタジイニル基は、上記樹脂膜にした際に、耐熱性に優れるものとなる。
【0013】
まず、本発明の芳香族エチニル化合物について説明する。
本発明の芳香族エチニル化合物は、1つ以上のエチニル基と、o−ヒドロキシアミドフェニル基とを含む構造を有するものである。前記芳香族エチニル化合物としては、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基とo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する化合物、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基を有するo−ヒドロキシアミドフェニル基を有する化合物、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基と、エチニル基を有するo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する化合物などが挙げられ、これらの芳香族基には有機基が置換されていても良い。
【0014】
前記芳香族エチニル化合物は、エチニル基同士を反応させて重合体とすることができる。この時、酢酸銅(I)などの遷移金属や酸素などの活性気体を触媒として反応させると
、ブタジイニル基を含む重合体となる。前記芳香族エチニル化合物の重合体を含む樹脂組成物から得られる樹脂膜は、o−ヒドロキシアミドフェニル基が、加熱処理により脱水閉環して、フェニル基に隣接したオキサゾール基となるため、密着性に優れるものとなる。前記重合体がブタジイニル基を含む場合、得られる樹脂膜は、より耐熱性に優れるものとなる。
【0015】
前記芳香族エチニル化合物の具体例として、一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられ、エチニル基がフェニル基上に存在するため、樹脂膜とした場合に耐熱性に優れるものとなる。前記一般式(1)で表される構造を有する芳香族エチニル化合物は、式(1)で表される構造における水素原子は炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。特にアダマンタン構造を含む基で置換されている場合、樹脂膜とした場合、耐熱性、機械特性、電気特性に優れたものとなる。前記式(1)で表される構造における水素原子は、前記式(1)において、o−ヒドロキシアミドフェニル基のフェニル基上の水素原子、o−ヒドロキシアミドフェニル基とエチニル基とを有するフェニル基上の水素原子である。
【0016】
前記一般式(1)で表される構造における水素原子と置換される炭素数1以上20以下のアルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられ、前記アダマンタン構造を含む基の具体例として、アダマンチル基、3−メチルアダマンチル基、3−エチルアダマンチル基、3−プロピルアダマンチル基、3−ブチルアダマンチル基、3−ヘキシルアダマンチル基、3−ヘプチルアダマンチル基、3−オクチルアダマンチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、3,5−ジエチルアダマンチル基、3,5−ジプロピルアダマンチル基、3,5−ジブチルアダマンチル基、3,5,7−トリメチルアダマンチル基及びジアダマンチル基などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0017】
さらに、前記芳香族エチニル化合物の具体例として、一般式(2)で表される構造を有するものが挙げられ、o−ヒドロキシアミドフェニル基上、又は隣接するフェニル基に、エチニル基を有することから、重合体が剛直な構造となり、樹脂膜とした場合、機械特性にも優れるものとなる。前記一般式(2)で表される構造を有するエチニル化合物は、A1及びA2として、独立した有機基を有し、これらは、同じであっても良く、異なっていても良いが、少なくとも一方はエチニル基である。A1がエチニル基でA2がエチニル基でない場合、又は、A2がエチニル基でA1がエチニル基でない場合、得られる重合体中、側鎖にo−ヒドロキシアミドフェニル基を有し、これを用いてワニスとした場合、より溶解性に優れるものとなる。A1およびA2がともにエチニル基の場合、前記重合体の主鎖中にo−ヒドロキシアミドフェニル基を有するため、これを前記樹脂膜とした時に、より耐熱性に優れるものとなる。
前記A1及びA2としての独立した有機基としては、エチニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、アダマンチル基、3−メチルアダマンチル基、3−エチルアダマンチル基、3−プロピルアダマンチル基、3−ブチルアダマンチル基、3−ヘキシルアダマンチル基、3−ヘプチルアダマンチル基、3−オクチルアダマンチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、3,5−ジエチルアダマンチル基、3,5−ジプロピルアダマンチル基、3,5−ジブチルアダマンチル基、3,5,7−トリメチルアダマンチル基及びジアダマンチル基などの脂肪族基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メトキシフェニル基及びフェノキシフェニル基などの芳香族基などが挙げられ、特にアダマンチル基、3−メチルアダマンチル基などのアダマンタン構造を含む脂肪族基や芳香族基が優れた耐熱性を有するものとしてより好ましいが、これに限られるものではない。
【0018】
前記一般式(2)で表される構造を有する芳香族エチニル化合物において、前記A1及びA2としての有機基上の水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。
前記一般式(1)で表される構造において前記有機基上の水素原子と置換される炭素数1以上20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられ、前記アダマンタン構造を含む基としては、アダマンチル基、3−メチルアダマンチル基、3−エチルアダマンチル基、3−プロピルアダマンチル基、3−ブチルアダマンチル基、3−ヘキシルアダマンチル基、3−ヘプチルアダマンチル基、3−オクチルアダマンチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、3,5−ジエチルアダマンチル基、3,5−ジプロピルアダマンチル基、3,5−ジブチルアダマンチル基、3,5,7−トリメチルアダマンチル基及びジアダマンチル基などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0019】
このような前記芳香族エチニル化合物の具体例としては、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基とo−ヒドロキシアミドフェニル基を有する化合物である場合、例えば、2−(2−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(3−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,3−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,5−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,6−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(3,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(3,5−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,3,4−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,3,5−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,3,6−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,4,5−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(2,4,6−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、2−(3,4,5−トリエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−アダマンチル−2−(2,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−アダマンチル−2−(3,5−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−フェニル−2−(2,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−ジメチルアダマンチル−2−(2,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノールなどが挙げられ、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基を有するo−ヒドロキシアミドフェニル基を有する化合物である場合、例えば、3−エチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、5−エチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、6−エチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,4−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,5−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,6−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、4,5−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、4,6−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、5,6−ジエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,4,5−トリエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,4,6−トリエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、3,5,6−トリエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、4,5,6−トリエチニル−2−ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(4−アダマンチル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(4−アダマンチル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(4−フェニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(4−ジメチルアダマンチル)ベンゾイルアミノフェノール、3,5−ジエチニル−2−(4−アダマンチル)ベンゾイルアミノフェノール、4,5−ジエチニル−2−(4−アダマンチル)ベンゾイルアミノフェノールなどが挙げられ、フェニル基などの芳香族基に、エチニル基とエチニル基を有するo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する化合物である場合、例えば、3−エチニル−2−(2−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(2−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、5−エチニル−2−(2−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、6−エチニル−2−(2−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、3−エチニル−2−(3−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(3−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、5−エチニル−2−(3−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、6−エチニル−2−(3−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、3−エチニル−2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、4−エチニル−2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、5−エチニル−2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、6−エチニル−2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール、3−エチニル−2−(2,4−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール、などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0020】
本発明の芳香族エチニル化合物の合成方法としては、エチニル化合物とアミノフェノール化合物とを反応させる方法などが挙げられるが、前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、エチニルフェニル基を有する酸塩化物と2−アミノフェノール誘導体を反応させて、又は、エチニルフェニル基を有する2−アミノフェノール誘導体と酸塩化物を反応させて、製造することができる。
より具体的な合成方法を説明するために、前記一般式(2)で表される構造を有する化合物を例に説明すると、例えば、以下のルートによって合成することができる。
【0021】
【化3】

(式中、A1、A2は独立した有機基であり、一方又は両方はエチニル基である。一般式(2)中、ベンゼン環上の水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基を有していても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。式中、n3は0以上5以下の整数を示し、n4は0以上4以下の整数を示す。)
式中、n3は0以上5以下の整数を示し、n4は0以上4以下の整数であるが、重合時にゲル化せず、樹脂膜としたときに高弾性率を示すために、それぞれ1〜2が好ましい。
【0022】
前記一般式(2)で表される構造を有する化合物は、まず、一般式(4)で表される化合物を、適当な溶媒に、溶解するか、懸濁させ、一般式(3)で表される化合物を添加し、混合して反応させることにより、製造することができる。このとき、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の仕込みは、同時に一括で行っても良い。また、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物は、固体のまま添加しても、予め適当な溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0023】
前記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジクロロメタン、クロロホルム及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。このとき、一般式(3)で表される化合物が、水分により分解するために、使用する溶媒は、無水の極性溶媒を用いることが好ましい。あるいは、予め、一般式(3)で表される化合物に含まれる水分量を把握して、原料としての使用量を調整して、理論的な当量より多く仕込んでおくことが望ましい。
また、反応を促進するために、トリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド及びピリジンなどの塩基を添加しても良い。
【0024】
反応に使用される原料のモル比は、一般式(3)で表される化合物に対して一般式(4)で表される化合物が、1当量倍以上、2当量倍以下であることが望ましく、好ましくは、1当量倍以上、1.2当量倍以下である。
【0025】
反応時は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物の水酸基とが反応することを防ぐために、反応雰囲気の温度を低温で行う。反応温度としては、−80℃以上、50℃以下が望ましく、好ましくは、前記溶媒の凝固点以上、30℃以下である。
【0026】
反応時間としては、それぞれの化合物が有する反応の活性度や反応温度により、適宜決定すればよいが、5分間以上、7日間以下が望ましく、好ましくは、10分以上、12時間以下である。
【0027】
上記の条件で反応させて得られる生成物は、水やヘキサンなどのような、生成物が溶解しない溶媒に、反応液を敵下又は注入して、析出物を析出させ、これを濾過や遠心分離法などにより、溶液から分離して得ることができる。
また、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを過不足なく反応させる場合、生成物が溶解する適当な溶媒中で反応を行い、反応終了後に、生成した塩などの不溶物が存在する場合には、それを除去し、目的物のみが溶解している状態の反応液をそのまま目的の用途に用いても構わない。
【0028】
前記一般式(3)で表される化合物としては、A1がエチニル基である場合、例えば、2−エチニル安息香酸塩化物、3−エチニル安息香酸塩化物、4−エチニル安息香酸塩化物、2,3−ジエチニル安息香酸塩化物、2,4−ジエチニル安息香酸塩化物、2,5−ジエチニル安息香酸塩化物、2,6−ジエチニル安息香酸塩化物、3,4−ジエチニル安息香酸塩化物、3,5−ジエチニル安息香酸塩化物、2,3,4−トリエチニル安息香酸塩化物、2,3,5−トリエチニル安息香酸塩化物、2,3,6−トリエチニル安息香酸塩化物、2,4,5−トリエチニル安息香酸塩化物、2,4,6−トリエチニル安息香酸塩化物及び3,4,5−トリエチニル安息香酸塩化物などが挙げられ、A1がエチニル基でない場合でない場合、例えば、安息香酸塩化物、4−フェニル安息香酸塩化物などがあげられ、A1がエチニル基でない場合でない場合で特にアダマンタン構造を含む基を有するものとしては、例えば、4−アダマンチル安息香酸塩化物、3,5−ジアダマンチル安息香酸塩化物及び4−ジメチルアダマンチル安息香酸塩化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記一般式(4)で表される化合物としては、A1がエチニル基である場合、例えば、3−エチニル−2−アミノフェノール、4−エチニル−2−アミノフェノール、5−エチニル−2−アミノフェノール、6−エチニル−2−アミノフェノール、3,4−ジエチニル−2−アミノフェノール、3,5−ジエチニル−2−アミノフェノール、3,6−ジエチニル−2−アミノフェノール、4,5−ジエチニル−2−アミノフェノール、4,6−ジエチニル−2−アミノフェノール、5,6−ジエチニル−2−アミノフェノール、3,4,5−トリエチニル−2−アミノフェノール、3,4,6−トリエチニル−2−アミノフェノール、3,5,6−トリエチニル−2−アミノフェノール、4,5,6−トリエチニル−2−アミノフェノール、などが挙げられ、A1がエチニル基でない場合でない場合、例えば、2−アミノフェノール、4−フェニル−2−アミノフェノールなどがあげられ、A1がエチニル基でない場合でない場合で特にアダマンタン構造を含む基を有するものとしては、例えば、4−アダマンチル−2−アミノフェノール、4,6−ジアダマンチル−2−アミノフェノール、4−ジメチルアダマンチル−2−アミノフェノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の芳香族エチニル化合物を反応させて成る重合体は、上記で得られたo−ヒドロキシアミドフェニル基を含む芳香族エチニル化合物を用いて、該芳香族エチニル化合物同士を反応させて得られる。前記反応においては、2種以上の前記o−ヒドロキシアミドフェニル基を含むエチニル化合物を重合させて共重合体としてもよいし、前記o−ヒドロキシアミドフェニル基を含むエチニル化合物を、o−ヒドロキシアミドフェニル基をもたないエチニル化合物と反応させてもよい。
前記o−ヒドロキシアミドフェニル基をもたないエチニル化合物の例としては、エチニルベンゼン、1,2−ジエチニルベンゼン、1,3−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルベンゼン、1,2,3−トリエチニルベンゼン、1,2,4−トリエチニルベンゼン、1,2,4−トリエチニルベンゼン、1,2,5−トリエチニルベンゼン、1,3,4−トリエチニルベンゼン、1,3,5−トリエチニルベンゼン、1,2,3,4−テトラエチニルベンゼン、1,2,3,5−テトラエチニルベンゼン、1,2,4,5−テトラエチニルベンゼン、2−エチニルナフタレン、3−エチニルナフタレン、2,3−ジエチニルナフタレン、2,4−ジエチニルナフタレン、2,5−ジエチニルナフタレン、2,7−ジエチニルナフタレン、2,8−ジエチニルナフタレン、2,9−ジエチニルナフタレン、2,10−ジエチニルナフタレン、3,4−ジエチニルナフタレン、3,8−ジエチニルナフタレン、3,9−ジエチニルナフタレン、2−エチニルビフェニル、3−エチニルビフェニル、4−エチニルビフェニル、2,3−ジエチニルビフェニル、2,4−ジエチニルビフェニル、2,5−ジエチニルビフェニル、2,6−ジエチニルビフェニル、2,8−ジエチニルビフェニル、2,9−ジエチニルビフェニル、2,10−ジエチニルビフェニル、3,4−ジエチニルビフェニル、3,5−ジエチニルビフェニル、3,9−ジエチニルビフェニル、3,10−ジエチニルビフェニル、3,11−ジエチニルビフェニル、4,10−ジエチニルビフェニル、1−エチニルアダマンタン、1,3−ジエチニルアダマンタン、1,3,5−トリエチニルアダマンタン、1,3,5,7−テトラエチニルアダマンタン、1−エチニル−3−メチルアダマンタン、1−エチニル−3,5−ジメチルアダマンタン、1−エチニル−3,5,7−トリメチルアダマンタン、1,3−ジエチニル−5−メチルアダマンタン、1,3−ジエチニル−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリエチニル−7−メチルアダマンタン、3−エチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,5−ジエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,3’−ジエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,7−トリエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,3’−トリエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,7,3’−テトラエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,3’,5’−テトラエチニル−1,1’−ビアダマンタン、3−エチニル−3’−メチル−1,1’−ビアダマンタン、3−エチニル−5−メチル−1,1’−ビアダマンタン、3−エチニル−5,3’−ジメチル−1,1’−ビアダマンタン、3−エチニル−5,3’,5’−トリメチル−1,1’−ビアダマンタン、3,5−ジエチニル−3’,5’−ジメチル−1,1’−ビアダマンタン、3,3’−ジエチニル−5,5’−ジメチル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,7−トリエチニル−3’−メチル−1,1’−ビアダマンタン、3,5,3’−トリエチニル−5’−メチル−1,1’−ビアダマンタンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の重合体における、芳香族エチニル化合物同士の反応の具体例としては、まず、前記芳香族エチニル化合物を、適当な溶媒に溶解するか、懸濁させ、前記芳香族エチニル化合物のエチニル基同士を、加熱又は活性放射線の照射により、反応させることにより、製造することができる。このとき、適当な触媒を添加してもよい。添加する触媒としては、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリドなどのパラジウム触媒、塩化モリブデン(V)及び酢酸銅(I)などの遷移金属触媒や、酸素などの活性気体などが挙げ
られ、この中でも、前記遷移金属触媒や活性気体を用いることにより、耐熱性の優れるブタジイニル基を形成することができ、酢酸銅(I)、酸素などが好ましいが、これに限ら
れるものではない。
【0032】
前記溶媒としては、用いる触媒や反応物の溶解性により、適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メタノール、ピリジン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジクロロメタン、クロロホルム及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0033】
前記触媒としては、反応させる化合物の活性度や反応温度により、適宜決定すればよいが、酢酸銅(I)などを添加してもよいし、酸素などの気体をバブリングなどにより系内に祖挿入してもよい。
【0034】
反応温度としては、0℃以上、150℃以下が望ましく、好ましくは、20℃以上、110℃以下である。
【0035】
反応時間としては、それぞれの化合物が有する反応の活性度や反応温度により、適宜決定すればよいが、5分間以上、7日間以下が望ましく、好ましくは、10分以上、12時間以下である。
【0036】
上記の条件で反応させて得られる生成物は、塩酸水溶液、水、ヘキサンなどのような、生成物が溶解しない溶媒に、反応液を敵下又は注入して、析出物を析出させ、これを濾過や遠心分離法などにより、溶液から分離して得ることができる。また、生成物が溶解する適当な溶媒中で反応を行い、反応終了後に、触媒などの不要物が存在する場合には、それを除去し、目的物のみが溶解している状態の反応液をそのまま目的の用途に用いても構わない。
このようにして得られる重合体は、オリゴマーであってもポリマーであっても良いが、その分子量としては、1000以上300000以下が好ましく、塗布膜作製時に必要な溶解性を保つためには、1000以上100000以下がより好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、前記芳香族エチニル化合物、前記重合体、又は前記芳香族エチニル化合物と前記重合体との混合物を含むものであり、これらの成分を混合して得られる。これらを用いて、均一な樹脂膜を得るためには、前記重合体、又は前記芳香族エチニル化合物と前記重合体の混合物からなることが好ましい。前記芳香族エチニル化合物と前記重合体の混合物の場合、前記芳香族エチニル化合物の含有量は、1重量%から60重量%が好ましく、さらには、1重量%から30重量%がより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、これらの成分のほかに、前記o−ヒドロキシアミドフェニル基をもたないエチニル化合物、前記o−ヒドロキシアミドフェニル基をもたないエチニル化合物の重合体、また、後述するワニスにおいて、任意に用いることができる添加剤を混合しても良い。前記添加剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤、加熱により酸素ラジカルやイオウラジカルを発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒等、ナフトキノンジアジド化合物等の感光剤、ナノサイズの微細孔を形成する発泡剤(ポロゲン、ポア・ジェネレーター)などが挙げられ、前記発泡剤としては、例えば、中空構造を有するカーボンナノチューブやフラーレン、かご型シルセスキオキサン、シクロデキストリン、融点の高い有機化合物、アゾビス化合物、有機化酸化物、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー等が挙げられる。
【0038】
本発明のワニスは、前記芳香族エチニル化合物、前記重合体、又は前記芳香族エチニル化合物と前記重合体との混合物を含むものであり、前記樹脂組成物を適当な有機溶媒に溶解又は分散させることによって得ることができる。前記樹脂組成物は、乾燥させて固形としたものを有機溶剤に溶解又は分散させてワニスとしてもよいし、前記樹脂組成物の製造により得られた反応溶液を直接ワニスとして用いてもよい。
前記ワニスに用いる有機溶媒としては、前記樹脂組成物を溶解又は分散させることができるものであれば、特に限定されないが、上記重合体の反応に用いる有機溶媒と同様のものを挙げることができる。前記ワニスの濃度としては、前記樹脂組成物の構造や分子量により適宜決めればよいが、前記ワニス中に前記樹脂組成物が、0.1重量%から50重量%が好ましく、さらには0.5重量%から15重量%がより好ましい。
【0039】
また、前記ワニスには、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤、加熱により酸素ラジカルやイオウラジカルを発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒等の各種添加剤を添加して、樹脂組成物として用いることができる。
また、前記ワニスに、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を添加することにより、感光性を有する表面保護膜として用いることもできる。
また、前記ワニスに、ナノサイズの微細孔を形成する発泡剤(ポロゲン、ポア・ジェネレーター)を添加しても良い。
前記発泡剤としては、例えば、中空構造を有するカーボンナノチューブやフラーレン、かご型シルセスキオキサン、シクロデキストリン、融点の高い有機化合物、界面活性剤、アゾビス化合物、有機化酸化物、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー等が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤又はハイパーブランチポリマーが好ましい。これにより、発泡剤を、樹脂組成物中に、均一に分散することが可能となる。発泡剤を均一に分散できると、更に加熱、抽出処理により、微細孔を有する有機膜を得ることができる。
【0040】
次に、樹脂膜ついて説明する。
本発明の樹脂膜は、例えば、上記で得られたワニスを、基板などの支持体に塗布し、これを、加熱などの処理をすることで製造できる。また、上記で得られた重合溶液をそのまま、又は樹脂組成物を加熱して溶解して、支持体に塗布して製造しても良い。前記加熱などの処理を行うことにより、前記芳香族エチニル化合物、又は前記重合体、又は前記芳香族エチニル化合物及び前記重合体の構造中に含まれるo−ヒドロキシアミドフェニル基が閉環し、ベンゾオキサゾール基を形成されることから、基板などに対して強い密着力を発現するものである。また、前記ワニスにおいて、前記芳香族エチニル化合物を含む場合は、ワニスを塗布した後に、前記芳香族エチニル化合物と同様の方法により、前記芳香族エチニル化合物を重合体とすることができる。
【0041】
また、前記芳香族エチニル化合物が反応して生成した官能基や、その重合体を得る時に反応せず残存したエチニル基が、加熱などの処理において、架橋反応することにより、弾性率に優れる熱硬化性樹脂を提供することができる。さらに、特に、前記芳香族エチニル化合物が、アダマンタン構造を含む基を有する場合、低誘電率の樹脂膜を得ることができる。
【0042】
本発明の樹脂膜の製造方法について、前記ワニスを用いる場合の具体例を説明すると、まず、前記ワニスを、適当な支持体、例えば、シリコンウエハやセラミック基板等の基材に、塗布して塗膜を形成する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。その後、塗膜を乾燥し、加熱等の処理をして、溶媒除去に続いて、加熱による方法や活性放射線を照射する方法などにより、縮合反応及び前記重合体を構成する架橋基などを架橋反応させ、ベンゾオキサゾール基を有する樹脂として、それを含む樹脂で構成される樹脂膜とすることができる。前記加熱による方法においては、例えば、150〜425℃×5分〜24時間で加熱して行うことができる。前記活性放射線としては、マイクロ波、可視光、UV光及びX線などの活性エネルギー光線ならびに電子線などが挙げられる。また、前記樹脂組成物を、そのまま支持体に直接塗布して塗膜を形成し、上記同様にして樹脂膜を形成することができる。
【0043】
前記樹脂膜の用途としては、例えば、半導体用の層間絶縁膜や表面保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜、エッチング保護膜(エッチングストッパー)、接着剤等が挙げられる。これらの中でも、半導体用の層間絶縁膜及び表面保護膜、エッチング保護膜として好適に用いられる。
【0044】
前記樹脂膜の厚さは、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜などにおいては、0.01〜20μmが好ましく、特に0.05〜10μmが好ましく、最も0.1〜0.7μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、半導体の製造プロセス適合性に優れる。
【0045】
ここで用いる樹脂膜のガラス転移温度は、特に限定されないが、400℃以上が好ましく、特に420℃以上が好ましく、最も450〜500℃が好ましい。ガラス転移温度が前記範囲内であると、前記樹脂膜の線膨張係数を低下することができる。
【0046】
また、樹脂膜が前記半導体用の保護膜の場合も、前記層間絶縁膜同様に、前記絶縁膜用ワニスを適当な支持体、例えば、シリコンウエハやセラミック基板等に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。その後、乾燥し、加熱処理をして、溶媒除去に続いて、縮合反応及び架橋反応させ、ベンゾオキサゾール基を含む樹脂とし、それを含む樹脂組成物で構成される保護膜とすることができる。
【0047】
前記半導体用保護膜の厚さは、特に限定されないが、0.05〜70μmが好ましく、特に0.1〜50μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に半導体素子の保護特性及び加工性の両方に優れる。
【0048】
次に、半導体装置について好適な実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
半導体装置100は、素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の上側(図1上側)に設けられた窒化珪素膜2と、窒化珪素膜2の上に設けられた層間絶縁膜3及びバリア層6で覆われた銅配線層7を有している。
層間絶縁膜3には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層7が設けられている。
層間絶縁膜3と、銅配線層7との間には、改質処理層5が設けられている。
また、層間絶縁膜3の上側(窒化珪素膜2と反対側面)には、ハードマスク層4が形成されている。
【0049】
本実施の形態では、層間絶縁膜3を用いた半導体装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0050】
本発明の半導体装置は、上述したような層間絶縁膜を用いているので寸法精度に優れ、絶縁性を十分に発揮できるので、それにより接続信頼性が優れている。
また、上述したような層間絶縁膜は、配線層との密着性に優れるので、半導体装置の接続信頼性をさらに向上できる。
また、上述したような層間絶縁膜は、弾性率に優れているので、半導体装置の配線を形成するプロセスに適合することができる。
また、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
(1)芳香族化合物の製造
4−アダマンチル−2−アミノフェノール2.43g(10mmol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン30mLに溶解し、この溶液に、3,5−ジエチニル安息香酸塩化物1.89g(10mmol)を、乾燥窒素下10℃で添加した。添加後、10℃で1時間撹拌した。攪拌後、10℃でトリエチルアミン1.21g(12mmol)を添加した。添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過して、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、ろ過した液を、イオン交換水200mLとイソプロパノール100mLの混合溶液に滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、4−アダマンチル−2−(3,5−ジエチニル)ベンゾイルアミノフェノール3.51gを得た。
【0053】
(2)重合体とワニスの製造
実施例1(1)で得られた化合物2gをメタノール10gとピリジン10gに溶解させ、酢酸銅(I)1水和物6gを添加した。乾燥窒素下90℃で1時間反応させた。反応液
を2mol/L塩酸水溶液200mlに滴下させて1時間洗浄した。析出物を濾過し、濾物を2mol/L塩酸水溶液200mlで1回、水200mlで2回洗浄した後、60℃、真空下で乾燥させることにより、重合体1.9gを得た。この重合体0.3gをシクロヘキサノン10mlに溶解させることにより、ワニスを得た。
また、得られた重合体の分子量を、東ソー株式会社製ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めたところ、重量平均分子量69,700であった。
【0054】
(3)層間絶縁膜及び半導体装置の製造
上記で得たワニスを、テフロン(登録商標)フィルターで濾過して、コーティング用のワニスをとした。
半導体基板の上に窒化珪素層を形成し、該窒化珪素層上に上記コーティング用ワニスを塗布して、400℃で1時間加熱処理して、厚さ0.1μmの層間絶縁膜を形成した。
次に、前記層間絶縁膜に、所定のパターンを形成するように、金属配線を形成して、半導体装置を得た。
【0055】
(実施例2)
実施例1(1)において、4−アダマンチル−2−アミノフェノール2.43g(10mmol)を、4,5−ジエチニル−2−アミノフェノール1.57g(10mmol)とし、3,5−ジエチニル安息香酸塩化物1.89g(10mmol)を、4−アダマンチル安息香酸塩化物2.75g(10mmol)とする以外は実施例1(1)と同様に行うことにより、4,5−ジエチニル−2−(4−アダマンチル)ベンゾイルアミノフェノール4.85gを得た。さらに、得られた化合物を、実施例1(2)(3)と同様に行うことにより、半導体装置を得た。ここで得られた重合体は、重量平均分子量が41,300であった。
【0056】
(実施例3)
実施例1(1)において、4−アダマンチル−2−アミノフェノール2.43g(10mmol)を、4−エチニル−2−アミノフェノール1.33g(10mmol)とし、3,5−ジエチニル安息香酸塩化物1.89g(10mmol)を、4−エチニル安息香酸塩化物1.65g(10mmol)とする以外は実施例1(1)と同様に行うことにより、4−エチニル−2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール2.57gを得た。さらに、得られた化合物を、実施例1(2)(3)と同様に行うことにより、半導体装置を得た。ここで得られた重合体は、重量平均分子量が56,300であった。
【0057】
(実施例4)
実施例1(1)において、4−アダマンチル−2−アミノフェノール2.43g(10mmol)を、2−アミノフェノール1.09g(10mmol)とし、3,5−ジエチニル安息香酸塩化物1.89g(10mmol)を、4−エチニル安息香酸塩化物1.65g(10mmol)とする以外は実施例1(1)と同様に行うことにより、2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール2.10gを得た。実施例1(2)において、実施例1(1)で得られた化合物2gを、実施例4(1)で得られた2−(4−エチニル)ベンゾイルアミノフェノール1gおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン1gとする以外は実施例1(2)と同様に行い、ワニスを得た。さらに、得られたワニスを用いて実施例1(3)と同様に行うことにより、半導体装置を得た。ここで得られた重合体は、重量平均分子量が92,600であった。
【0058】
(実施例5)
(1)実施例1(2)において、実施例1(1)と同様にして得られた化合物2gを、1,3,5−トリエチニルベンゼン1gとエチニルベンゼン1gとする以外は、実施例1(2)と同様に行うことによりワニスを得た。得られた重合体は、重量平均分子量が81,800であった。
(2)このワニス10mlに、実施例1(1)と同様にして得られた化合物0.1gを添加した。こうして得られたワニスについて、実施例1(3)と同様に行うことにより、半導体装置を得た。
【0059】
(比較例1)
実施例5(1)において、得られたワニスについて、実施例1(3)と同様に行うことにより、半導体装置を得た。
【0060】
実施例1〜5及び比較例1で得られた層間絶縁膜及び半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を方法と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1. 弾性率
エリオニクス社製の超微小硬度計ENT−1100を用い、最大荷重10mg、負荷速度1mg/secで測定を行った。
【0061】
2. 比誘電率
JIS−K6911に準拠し、周波数100kHzで、ヒューレットパッカード社製HP−4284A Precision LCRメーターを用いて、半導体用接着フィルムの容量測定を行い、下記計算式により比誘電率を算出した。
比誘電率=(容量測定値×フィルムの厚み)/(真空の誘電率×測定面積)
【0062】
3. 耐熱性
耐熱性は、ガラス転移温度及び熱分解温度で評価した。ガラス転移温度は、得られた樹脂膜を、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100)で、窒素ガス300mL/min.フロー下、昇温速度3℃/min.、周波数1Hzの条件により測定し、tanδのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
また、熱分解温度は、得られた絶縁膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を、熱分解温度とした。
【0063】
4. 密着性
密着性はテープテストで評価した。カッターナイフで1mm角の正方形の升目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を張った。1分後、基盤を抑えてセロテープ(登録商標)を剥がし、基盤から樹脂膜がいくつ剥がれるかを数えた。
【0064】
【表1】

【0065】
表1より、実施例1〜6は、比較例に対して密着性に優れていることが示された。また、実施例1〜6は弾性率が高く、機械特性にも優れていた。また、実施例1〜5は、比較例に対して比誘電率が低く、誘電特性に優れていることが示された。さらに、実施例1〜6は熱分解温度高く、耐熱性に優れていることが示された。
【0066】
次に、得られた半導体装置について、配線遅延速度を評価した。
実施例1〜6の層間絶縁膜を用いて得られた半導体装置と、この半導体装置と同様な構成でSiO2絶縁膜を有する半導体装置との配線遅延の程度を比較した。評価の基準には、リングオシュレータの発信周波数から換算して求めた信号遅延時間を採用した。両者を比較した結果、本発明で得られた半導体装置では、配線遅延が少なく、約20%の速度の向上があることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 半導体基板
2 窒化珪素膜
3 層間絶縁膜
4 ハードマスク層
5 改質処理層
6 バリア層
7 銅配線層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエチニル基と、1つ以上のo−ヒドロキシアミドフェニル基とを有する芳香族エチニル化合物。
【請求項2】
前記芳香族エチニル化合物は、一般式(1)で表される構造を有するものである、請求項1に記載の芳香族エチニル化合物。
【化1】

(式(1)中、Rはo−ヒドロキシアミドフェニル基を含む基を示し、式(1)で表される構造における水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。n1及びn2は、それぞれ、1以上4以下の整数である。)
【請求項3】
前記芳香族エチニル化合物は、一般式(2)で表される構造を有するものである、請求項1又は2に記載の芳香族エチニル化合物。
【化2】

(式中、A1及びA2は、それぞれ、独立した有機基であり、同じであっても異なっていても良く、少なくとも一方はエチニル基である。一般式(2)中、該有機基上の水素原子は、炭素数1以上20以下のアルキル基で置換されていても良く、アダマンタン構造を含む基で置換されていても良い。式中、n3は0以上5以下の整数を示し、n4は0以上4以下の整数を示し、少なくとも一方は1以上を示す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物同士を反応させて得られる重合体。
【請求項5】
前記重合体は、遷移金属触媒又は活性気体触媒を用いて、前記芳香族エチニル化合物のエチニル基同士を反応させて得られるものである、請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物及び/又は請求項4又は5に記載の重合体を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族エチニル化合物及び/又は請求項4又は5に記載の重合体を含むワニス。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂組成物又は請求項7に記載のワニスを用いて、加熱処理して得られる樹脂膜。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂膜を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−63451(P2008−63451A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243160(P2006−243160)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】