説明

芳香族オリゴマ―とその製造方法

【課題】新規芳香族オリゴマーを提供する。この芳香族オリゴマーはエポキシ樹脂組成物の改質剤として有用であり、成型性、低吸湿性、高耐熱性、異種材料との密着性に優れ、更に電気絶縁性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物とすることができる。
【解決手段】下記一般式(1)で表される単位を全体の10〜95モル%含有し、且つ数平均分子量が10000以下である芳香族オリゴマーである。また、アルケニルベンゼン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる芳香族オレフィン10〜95モル%とハロメチルスチレン類5〜90モル%とをカチオン重合してオリゴマーを得、次いでこれをチオウレアと反応させる芳香族オリゴマーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な芳香族オリゴマーに関するものである。この芳香族オリゴマーを配合して得られるエポキシ樹脂組成物は、低吸水性、速硬化性、流動性及び異種材料との密着性等に優れ、且つ、電気絶縁性に優れた硬化物を与えることができ、電気電子部品類の封止、回路基板材料等として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来よりエポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、近年その要求物性はますます高度化、多様化してきている。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的用途に半導体封止材料がある。半導体の高集積化に伴い、半導体パッケージは大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化が進行しており、半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。封止材料には低吸湿性に加え、リードフレーム、チップ等の異種材料界面での接着性、密着性の向上が強く求められている。
【0003】
これらの問題点を克服するため、主剤であるエポキシ樹脂、硬化剤系改良及びエポキシ樹脂改質剤双方の観点から様々な検討が行われている。樹脂改質剤としては、例えば、従来よりインデンクマロン樹脂が知られており、特開平1−249824号公報にはクマロン・インデン・スチレン共重合樹脂を半導体封止材へ応用することが示されている。また、異種材料、特に金属材料との密着性向上の観点からは、メルカプト変性シリコンオイルが使用されている。
【0004】
しかし、従来の芳香族オリゴマー類は樹脂原料の精製が不十分であったり、重合触媒の除去が不十分であるため電気絶縁性に劣っている。また、メルカプト変性シリコンオイルは金属材料との密着性に優れるものの、吸湿性が高くなり、何れも、特に半導体封止材に用いた場合は半導体素子の信頼性が低下する問題があった。
【0005】
一方、メルカプト基のような硫黄含有官能基を有する樹脂化合物は、これまで主として合成的観点からの検討がなされている。例えば、Frechetら(Polymer,1979,p675)、特開昭62−257909号公報及び米国特許3362938号はポリ(メルカプトメチルスチレン)の合成を示しているが、これはメルカプト基を有するポリスチレン誘導体の合成手法について述べたものであり、エポキシ樹脂改質剤等への応用に関する記述はない。また、平均分子量が約20000程度のものであり、エポキシ樹脂との相溶性に優れる数千以下の分子量を持つオリゴマーの選択的な合成例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−249824号公報
【特許文献2】特開昭62−257909号公報
【特許文献3】米国特許3362938号明細書
【特許文献4】特開昭61−227538号公報
【特許文献5】特開昭59−90846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規芳香族オリゴマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の構造及び分子量分布を有する芳香族オリゴマーが上記目的を達成するため有効であることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される単位を全体の10〜95モル%含有し、且つ、数平均分子量が10000以下である芳香族オリゴマーである。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0010】
また、本発明は、アルケニルベンゼン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる少なくとも1種の芳香族オレフィンから生じる単位10〜95モル%、前記一般式(1)で表わされる単位5〜90モル%からなり、数平均分子量が200〜10000である芳香族オリゴマーである。
【0011】
また、本発明は、アルケニルベンゼン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる芳香族オレフィン10〜95モル%とハロメチルスチレン類5〜90モル%とをカチオン重合してオリゴマーを得、次いでこれをチオウレアと反応させることを特徴とする前記芳香族オリゴマーの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の新規芳香族オリゴマーは、エポキシ樹脂改質剤として優れ、これを配合したエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、成型性、高耐熱性、低吸湿性、異種材料との密着性に優れ、更に電気絶縁性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オリゴマーAの 1H−NMRスペクトルを示す図面である。
【図2】オリゴマーBの 1H−NMRスペクトルを示す図面である。
【図3】オリゴマーCの 1H−NMRスペクトルを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記一般式(1)において、メルカプトメチル基又はアルキルメルカプトメチル基の置換位置には制限はなく、異性体の混合物であってもよい。また、Rは水素原子又は炭素数6以下の炭化水素基であるが、好ましくは水素又はメチル基である。
【0015】
本発明における芳香族オリゴマーは上記一般式(1)で表される単位を全体の5モル%以上含有していればよく、一般式(1)で表される単位のみからなる重合体であっても、種々のビニル重合可能なモノマー類由来の単位との共重合体でもよい。共重合体の場合、10〜95モル%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80モル%の範囲である。含有量がこれより少ないと、エポキシ樹脂の改質効果が得られない。
【0016】
共重合体の場合、他の単位としては、ビニル重合可能なモノマー類の単位であればよいが、好ましくは芳香族オレフィン単位であり、芳香族オレフィン単位としてはスチレン類単位、インデン類単位及びクマロン類単位から選ばれるものが好ましい。
【0017】
これらを含む本発明における芳香族オリゴマーは数平均分子量が10000以下である必要があり、好ましくは500〜5000である。数平均分子量がこれより大きいとエポキシ樹脂との相溶性に劣る。
【0018】
本発明における芳香族オリゴマーの製造法には特に制限はないが、クロロメチルスチレン又はこれと他のビニル重合可能なモノマー類とから公知の方法により得られるオリゴマーのクロロメチル基を、公知の方法でメルカプトメチル基又はアルキルメルカプトメチル基に変換する方法が好ましい方法の一つとしてある。
【0019】
オリゴマーを得る際、種々のビニル重合可能なモノマー類と共重合することができ、それにより上記一般式(1)で表される単位の含有量を制御できる。この際のビニル重合可能なモノマー類としては、イソブテン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の脂肪族ビニル化合物、スチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデン、クマロン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、アセナフチレン等の芳香族オレフィン、アクリロニトリル等のニトリル化合物などが挙げられる。好ましくは、芳香族オレフィンである。
【0020】
芳香族オレフィンとしては、スチレン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、スチレン類としては、スチレンの他、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられ、インデン類としてはインデンの他、メチルインデン等が挙げられ、クマロン類としてはクマロンの他、メチルクマロン等が挙げられる。また、クマロン樹脂、インデン樹脂、石油樹脂等の炭化水素樹脂の原料のような混合原料も使用可能である。なお、多くの炭化水素樹脂はフェノール等で末端を変性することも行われているが、本発明においてもオリゴマーを製造する際に、このような末端変性用化合物(フェノールの他、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン等)を存在させて、末端にこれから生じる単位を存在させてもよい。
【0021】
重合方法の一例としては、p−クロロメチルスチレン又はこれを含む原料を公知のカチオン重合触媒存在下に50〜120℃で1〜20時間反応させる方法がある。カチオン重合触媒としては、リン酸、硫酸、過塩素酸等のプロトン酸、塩化アルミニウム、四塩化スズ、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体等のルイス酸、固体酸などが挙げられる。触媒の使用量は、通常、使用原料に対して0.01〜20wt%の範囲である。この際、反応溶液の取り扱いや反応速度制御の観点から、公知の溶媒を使用できる。例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼン、ニトロメタン等のニトロ化合物、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素などが挙げられる。
【0022】
重合反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物で中和し、中和塩及び過剰の水酸化物を濾別し、更に必要に応じて反応溶液を水洗したのち、未反応原料、溶媒を減圧留去することによりp−クロロメチルスチレン単位を含むオリゴマーを得ることができる。
【0023】
このp−クロロメチルスチレン単位を含むオリゴマーのクロロメチル基をメルカプトメチル基にする方法としては、公知の方法を採用することができるが、チオ尿素と反応させる方法が好ましい方法の一つとして挙げられる。これは、得られたp−クロロメチルスチレン単位を含むオリゴマーを、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合物等の溶媒中、室温〜還流温度で5〜30時間、過剰量のチオ尿素と反応させる方法である。反応後、溶媒を減圧留去し、過剰量の水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリの水溶液に溶解する。この際、系内を十分に脱酸素しておくことが好ましい。更に、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸を、水溶液が酸性を示すまで加え、得られた樹脂を濾過又は抽出後溶媒を留去することによりオリゴマーを得る。
【0024】
アルキルメルカプトメチル基にする方法としては、p−クロロメチルスチレン単位を含むオリゴマーにアルキルチオナトリウムを反応させる方法がある。
【0025】
また、原料モノマーとしてp−クロロメチルスチレンを使用しない方法としては、まず公知の方法でスチレン又はこれと他のモノマーを重合させ、得られたスチレン単位を含有するオリゴマーを、公知の方法でクロロメチル化し、これを上記のような公知の方法でメルカプトメチル基又はアルキルメルカプトメチル基にする方法がある。
【0026】
本発明の芳香族オリゴマーは従来の炭化水素樹脂と同様な用途に使用できる他、スチレン構造由来の低吸水性、流動性、成型性と、硫黄原子を有するメルカプト構造由来の異種材料との密着性とが同時に達成可能という特性を有するため、エポキシ樹脂組成物の改質剤として有用である。
【0027】
次に、本発明の芳香族オリゴマーを配合したエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限がない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価フェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の多価フェノール類や、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
エポキシ樹脂組成物に配合する硬化剤としては、特に制限はなく、従来より公知のエポキシ樹脂硬化剤を使用できるが、好ましくは多価フェノール性化合物である。多価フェノール性化合物としては、エポキシ樹脂硬化剤として公知のものを使用できる他、アラルキル構造を有する多価フェノール性化合物を使用することができる。アラルキル構造を有する多価フェノール性化合物は、アルキル置換又は未置換のベンゼン環又はナフタレン環を有するフェノール性水酸基含有化合物と特定の芳香族架橋材とを反応させることにより製造される。
【0029】
多価フェノール性化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価フェノール類や、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等の3価以上のフェノール類や、更にはフェノール類、ナフトール類、又はビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価フェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル類、ジイソプロペニルビフェニル類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物である。これらの多価フェノール性化合物は1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
多価フェノール性化合物の好ましい軟化点範囲は、40〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。これより低いと保存時のブロッキング発生の問題があり、これより高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性、成形性に問題がある。また、150℃における好ましい溶融粘度は20ポイズ以下であり、より好ましくは5ポイズ以下である。これより高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性、成形性に問題がある。ここでいう軟化点はグリセリンを熱媒として測定したものであり、150℃での溶融粘度はICI社製コーンプレート型粘度測定装置を用いて測定したものである。
【0031】
エポキシ樹脂組成物に配合する無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアなどの粉末、又はこれらを球状化したビーズなどが挙げられる。これらの無機充填剤は1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
特に、無機充填剤の高充填化の観点から、球状の溶融シリカが好適である。通常シリカは数種類の粒径分布を持ったものを組み合わせて使用される。組み合わせるシリカの平均粒径は0.5〜100μm の範囲である。無機充填剤の配合量としては70wt%以上が好ましく、更に好ましくは80wt%以上である。これより少ないと半田耐熱性の向上効果が小さい。
【0033】
エポキシ樹脂組成物には従来より公知の硬化促進剤を使用することができる。例えば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスフォニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラフェニルホスフォニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスフォニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−2−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルフォリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部の範囲である。
【0034】
エポキシ樹脂組成物には、上記一般式(1)で表わされる単位を5モル%以上有する芳香族オリゴマーを配合する。芳香族オリゴマーは1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよく、この配合量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して1〜50重量部の範囲、より好ましくは2〜30重量部の範囲である。これより少ないと改質効果が得られず、これより大きいと硬化物の熱時硬度及び耐熱性が低下するとともに、難燃性も低下する。
【0035】
また、エポキシ樹脂組成物には成型時の流動性改良及びリードフレーム等との密着性向上の観点から、更に熱可塑性のオリゴマー類を配合することができる。熱可塑性オリゴマーとしてはC5 系及びC9 系の石油樹脂、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデン・スチレン共重合樹脂、インデン・スチレン・フェノール共重合樹脂、インデン・クマロン共重合樹脂、インデン・ベンゾチオフェン共重合樹脂などが例示できる。配合量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜30重量部の範囲である。
【0036】
更に、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物には臭素化エポキシ樹脂等の難燃剤、カルナバワックス、エステル系ワックス等の離型剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、酸酸化アンチモン等の難燃助剤、シリコンオイル等の低応力化剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の潤滑剤などを配合することができる。
【0037】
エポキシ樹脂組成物を調製する方法は任意であるが、一般的には、上記のような原材料を所定量配合し、ミキサー等で十分混合したのち、ミキシングロール、押し出し機等で混練し、冷却、粉砕すればよい。
【0038】
上記エポキシ樹脂組成物は、電子部品の封止材料、成形材料、積層材料等の用途に使用することができ、電子部品を封止するための方法としては、低圧トランスファー成形が最も一般的であるが、射出成形法、圧縮成型法によっても可能である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
実施例1(参考例)
p−クロロメチルスチレン30.00g を、トルエン45.00g に溶解し、90℃に加熱した。三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体0.30g を15分間かけて滴下した。90℃で3時間攪拌したのち、水酸化カルシウム0.90g を加え中和した。中和塩及び過剰の水酸化カルシウムを濾過により除去したのち、減圧下、170℃でトルエン、未反応原料を留去することにより、p−クロロメチルスチレンオリゴマー27.66g を得た。
【0041】
得られたp−クロロメチルスチレンオリゴマー22.24g とチオ尿素12.84g をメタノール500mlに溶解し、還流下、18時間攪拌したのち、溶媒を減圧留去し、固形分を得た。水酸化ナトリウム20.0g を、加熱、攪拌しながら十分に窒素ガスを吹き込んだ蒸留水250mlに溶解した水溶液に、得られた固形分を、窒素を流通させながら溶解する。ついで、水溶液が酸性を示すまで塩酸を加え、沈殿した樹脂を濾過し、水、メタノールで洗浄後、減圧乾燥することによりオリゴマーA16.76g を得た。
【0042】
得られたオリゴマーAの元素分析値及びGPCより求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを表1に示す。また、 1H−NMRスペクトルを図1に示す。 1H−NMRは、日本電子株式会社製JNM−LA400を用い、観測周波数400MHz で測定した。GPCは東ソー(株)製HLC−82Aを用いて測定した。
【0043】
実施例2(参考例)
原料としてp−クロロメチルスチレン15.00g とm−クロロメチルスチレン15.00g の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、オリゴマーB17.66g を得た。得られたオリゴマーBの元素分析値及びGPCより求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを表1に示し、 1H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0044】
実施例3
原料としてp−クロロメチルスチレン15.2g とインデン11.6g の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、オリゴマーC17.66g を得た。得られたオリゴマーCの元素分析値及びGPCより求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを表1に示し、 1H−NMRスペクトルを図3に示す。
【0045】
参考例1
インデン70g 、スチレン25g 及びフェノール5g をトルエン150g に溶解し、115℃に加熱した。その後攪拌しながら三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体1.0g を15分かけて滴下した。滴下後、3時間攪拌し、水酸化カルシウム0.90g を加え中和した。中和塩及び過剰の水酸化カルシウムを濾過により除去したのち、減圧下、170℃にてトルエン、未反応原料を留去することにより、オリゴマーD89.0g を得た。得られたオリゴマーDの元素分析値及びGPCより求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを表1に示す。
【0046】
実施例4〜5(参考例)、実施例6、比較例1〜2
エポキシ樹脂成分としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂A:日本化薬製EOCN−1020−65;エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm 、融点65℃、150℃での溶融粘度3.0ポイズ)、硬化剤としてフェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製PSM−4261;OH当量103、軟化点82℃)、充填剤として球状シリカA(平均粒径18μm )、改質剤として実施例1〜3で得られたオリゴマーA〜C及び参考例1で得られたオリゴマーDを用い、更に難燃剤としてノボラック型臭素化エポキシ(臭素化エポキシA:日本化薬製BREN−S;エポキシ当量284、加水分解性塩素600ppm 、軟化点84℃)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、表2に示す割合(重量部)で配合して混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0047】
このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で成形し、175℃で12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得たのち、各種物性測定に供した。ガラス転移点は熱機械測定装置により昇温速度10℃/分の条件で求めた。曲げ強度及び曲げ弾性率は3点曲げ法により求めた。吸水率は本エポキシ樹脂組成物を直径50mm×厚さ3mmの円盤状に成形しポストキュア後、85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させたときのものである。接着強度は、2枚の42アロイ板の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成型物を圧縮成型機により175℃で成形し、175℃で12時間ポストキュアを行った後、引っ張り専断強度を用いることにより評価した。クラック発生率はQFP−80pin(14mm×20mm×2.5mm)を成形し、ポストキュア後、吸水率と同様の条件で所定の時間吸湿させ、260℃の半田浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態で観察し求めた。結果をまとめて表3に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単位を全体の10〜95モル%含有し、且つ、数平均分子量が10000以下である芳香族オリゴマー。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
アルケニルベンゼン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる少なくとも1種の芳香族オレフィンから生じる単位10〜95モル%、一般式(1)で表される単位5〜90モル%からなり、数平均分子量が200〜10000である請求項1記載の芳香族オリゴマー。
【請求項3】
アルケニルベンゼン類、インデン類及びクマロン類から選ばれる芳香族オレフィン10〜95モル%とハロメチルスチレン類5〜90モル%とをカチオン重合してオリゴマーを得、次いでこれをチオウレアと反応させることを特徴とする請求項2記載の芳香族オリゴマーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−167430(P2009−167430A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112577(P2009−112577)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願平11−2174の分割
【原出願日】平成11年1月7日(1999.1.7)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】