説明

芳香族コポリアミドの製造方法および当該製造方法で得られた芳香族コポリアミドからなる繊維

【課題】単糸強度の変動率が小さく、引張強度に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる、異物の低減された芳香族コポリアミドを提供すること。
【解決手段】下記化学式(1)および化学式(2)で示される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法において、濁度が10NTU以下の化学式(3)で示される芳香族ジアミンおよび化学式(4)で示される芳香族ジアミンを含むジアミン溶液を用いる。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族コポリアミドの製造方法および当該製造方法で得られた芳香族コポリアミドからなる繊維に関する。さらに詳しくは、単糸強度の変動率が小さく、引張強度に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる、異物の軽減された芳香族コポリアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミド繊維、特にポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維等のパラ系のアラミド繊維は、その強度、高弾性率、高耐熱性といった特性を活かして、産業用途、衣料用途等に広く用いられている。しかしながら、繊維強度、弾性率等の機械的物性は、用いられる用途によっては未だ十分に満足できるものではなく、機械的物性の向上を目指してさらなる開発がすすめられている。
【0003】
このような状況の中、得られる繊維の機械的物性を向上させる目的で、例えば、特許文献1には、化学式(3)で表されるジアミン(以下、DAPBIと呼ぶこともある)および化学式(4)で表されるジアミンを用いて、少なくとも化学式(1)で表される構造反復単位および化学式(2)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドを、公知のアミド化合物に対して高い溶解度を有する溶媒を用いて重合する方法が記載されている。
【0004】
そして、特許文献1に記載された方法によって得られる芳香族コポリアミドを原料とする芳香族コポリアミド繊維は、延伸処理後に、高い強度値を有する繊維となる。しかしながら、特許文献1に記載された芳香族コポリアミドの製造方法においては、ポリマー溶液中の異物(未溶解物)の除去が困難であるという問題があった。得られる芳香族コポリアミドに異物(未溶解物)が含まれていると、得られる繊維の単糸強度の変動率が大きくなり、その結果、引張強度に優れた繊維を得ることが困難となる。
【0005】
【化1】

【化2】

(式中、Ar2は非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【化3】

(式中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である)
【化4】

(式中、Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【0006】
したがって、少なくとも化学式(1)で表される構造反復単位および化学式(2)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドであって、異物(未溶解物)の含有量が低減された均一なポリマーの出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−278303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術を背景になされたもので、その目的は、単糸強度の変動率が小さく、引張強度に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる、異物の低減された芳香族コポリアミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、ジアミン溶媒への溶解条件を制御し、濁度が特定値以下に制御されたジアミン溶液を用いて芳香族コポリアミドを重合することにより、得られる芳香族コポリアミドに含まれる異物(未溶解物)を低減し、その結果、単糸強度の変動率が小さく、引張強度に優れた芳香族コポリアミド繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記化学式(1)および化学式(2)で示される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、化学式(3)および化学式(4)で示される芳香族ジアミンを含む濁度が10NTU以下のジアミン溶液を用いる芳香族コポリアミドの製造方法である。
【0011】
【化5】

(式中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である)
【化6】

(式中、Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【化7】

【化8】

(式中、Ar2は非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単糸強度の変動率が小さく、引張強度に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる、異物の低減された芳香族コポリアミドが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<芳香族コポリアミド>
本発明の製造方法の対象となる芳香族コポリアミドは、下記化学構造式(1)、および下記化学構造式(2)の構造反復単位からなり、1種類又は2種類以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、一般に公知の方法に従って、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライドと芳香族ジアミンの重縮合反応により得られる。このとき、該芳香族基は2個の芳香族環が酸素、硫黄、アルキル基で結合されたものであっても特に差しつかえない。また、これらの2価の芳香環は、非置換またはメチル基やメチル基等の低級アルキル基や、メトキシ基、または塩素基等のハロゲン基で置換されたものであっても、複素環等が結合されたものであっても特に差しつかえなく、その置換基の種類や置換基の数は特に限定されるものではない。
【0014】
【化9】

(式中、ArおよびArは独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【化10】

(式中、Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【0015】
[芳香族コポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド)
前記化学式(1)あるいは化学式(2)の構造反復単位に用いられる芳香族ジカルボン酸ジクロライドとしては、例えば、テレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライドなどが挙げられる。これらの中では、汎用性や繊維の機械的物性などの面から、テレフタル酸ジクロライドが最も好ましい。また、これら芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。
【0016】
(第1のジアミン)
また、本発明において使用されるジアミンのうち、前記化学式(1)で表される構造反復単位(1)に用いられるジアミン(以下「第1のジアミン」ともいう)は、下記化学式(4)で示される芳香族ジアミンである。
【0017】
【化11】

(式中、Ar2は非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【0018】
このような第1のジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第1のジアミンは、単独あるいは2種以上を併用することもできる。
中でも、第1のジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、および3,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれるジアミンを、単独あるいは2種以上使用することが好ましい。
【0019】
(第2のジアミン)
また、芳香族コポリアミドの製造に用いられるジアミンのうち、前記式(2)で表される構造反復単位(2)に用いられるジアミン(以下「第2のジアミン」ともいう)は、下記化学式(3)で示される置換または非置換のフェニルベンジミダゾール基を有する芳香族ジアミンである。
【0020】
【化12】

【0021】
このような第2のジアミンとしては、入手のし易さ、得られる繊維の引張強度および初期モジュラスなどの観点から、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾールを用いることが好ましい。
【0022】
(ジアミンの組成)
本発明の製造方法の対象となる芳香族コポリアミドは、式(1)および式(2)の構造反復単位を構成するために、少なくとも1種類ずつの「第1のジアミン」と「第2のジアミン」とが用いられる。その組み合わせとしては、汎用性や繊維の機械的物性などの面から、パラフェニレンジアミンなどの第1のジアミンと、5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾールなどの第2のジアミンとの組み合わせが最も好ましい。
【0023】
「第1のジアミン」と「第2のジアミン」とのモル比、換言するならば、構造反復単位(1)と構造反復単位(2)とのモル比は、10:90〜70:30とすることが好ましく、さらに好ましくは30:70〜50:50程度である。構造反復単位(2)、すなわち、第2のジアミンの割合が70モル%を超える場合には、重縮合反応の際に反応液が濁るばかりでなく、製糸作業性や得られる繊維の機械的物性が低下する問題がある。一方、構造反復単位(2)、すなわち、第2のジアミンの割合が30モル%未満の場合には、重合反応において反応溶液が濁るという問題が生じ、このような濁ったドープでは製糸することが困難となる。
【0024】
[ジアミン溶液の濁度]
本発明においては、芳香族コポリアミドの重合に際して、原料となる上記第1のジアミンおよび第2のジアミンを含むジアミン溶液の濁度を、10NTU以下とする必要がある。好ましくは、7NTU以下である。濁度の値が10NTUを超えるの場合には、ジアミン溶液中の未溶解物の量が多くなり、本発明の効果を得ることが困難となる。
【0025】
[ジアミンの溶解条件]
原料となる上記第1のジアミンおよび第2のジアミンを含むジアミン溶液の濁度を制御するためには、溶媒への芳香族ジアミンの溶解条件が重要となる。すなわち、濁度を上記の値以下とするためには、芳香族ジアミンを溶媒に溶解する際の溶解温度を、90℃以上130℃以下の範囲とする必要がある。溶解温度が90℃未満の場合には、ジアミン未溶解物が生じてしまい、得られる繊維の単糸強度の変動率が大きくなるため、優れた引張強度を有する繊維を得ることが困難となる。一方で、溶解温度が130℃を超える場合には、極性溶媒の劣化が起こるため好ましくない。
【0026】
また、原料となる上記第1のジアミンおよび第2のジアミンを含むジアミン溶液の濁度を制御するためには、ジアミン溶液中に含有させる無機塩濃度も重要である。すなわち、無機塩の濃度を3重量%以上10重量%以下の範囲とする必要がある。無機塩の濃度が3重量%未満の場合には、ジアミン未溶解物が生じてしまい、得られる繊維単糸強度の変動率が大きくな、優れた引張強度を有する繊維を得ることが困難となる。また、無機塩の濃度が10重量%を超える場合には、無機塩の未溶解物が生じてしまい、得られる繊維単糸強度の変動率が大きくなり、優れた引張強度を有する繊維を得ることが困難となる。
【0027】
(ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドとの組成)
また、芳香族コポリアミドを製造する際には、前記のジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドのモル比を、ジアミン成分対酸クロライド成分のモル比として、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05とする。
【0028】
[溶媒]
芳香族コポリアミドを重合する際の溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒が挙げられる。特に、芳香族コポリアミドの重合からドープ調製、湿式紡糸工程に至るまでの取扱い性や安定性、および該溶媒の有害性などの観点から、N−メチル−2−ピロリドンが最も好ましい。
これらの溶媒は、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、前記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0029】
[無機塩]
本発明においては、得られる芳香族コポリアミドのアミド系極性溶媒に対する溶解性を上げるために、重合の前、途中、終了時などに一般に公知の無機塩を適当量添加してもよい。このような塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。前記塩類の添加量としては、3〜10重量%とすることが好ましい。添加量が10重量%を超えるとアミド系極性溶媒に対し、全量溶解させることが困難となるため好ましくない。一方、3重量%未満の場合には、溶解性向上の効果が不十分となり好ましくない。
【0030】
[濃度]
得られる芳香族コポリアミド溶液のポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。ポリマー濃度が0.5重量%未満の場合には、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30重量%を超える場合には、ノズルから吐出する際に不安定流動が起こりやすくなり、安定的に紡糸することが困難となる。特に、均質な高重合度のポリマーを得るためには、生成したポリマー濃度として、10重量%以下とすることが好ましい。とりわけ3〜8重量%の範囲が、安定したポリマーを得るのに好都合である。
【0031】
[その他]
本発明で製造される芳香族コポリアミドは、その末端が封止されたものであってもよい。末端封止剤を用いて封止する場合には、その末端封止剤としては、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
【0032】
また、酸クロライドとジアミンの反応において一般的に用いられる、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するための脂肪族や芳香族アミン、第4級アンモニウム塩などを併用することができる。
【0033】
反応の終了後、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し中和反応を実施する。
反応条件は、特別な制限を必要としない。酸クロライドとジアミンとの反応は、一般に急速であり、反応温度は例えば−25℃〜100℃好ましくは−10℃〜80℃である。
【0034】
また、本発明の芳香族コポリアミドの製造方法によって得られるポリマーは、アルコール、水といった非溶媒に投入して沈殿せしめ、パルプ状にして取り出すこともできる。これを再度他の溶媒に溶解して成形に供することもできるが、芳香族コポリアミドの重合反応によって得た溶媒を含むポリマー溶液を、そのまま成形用溶液(ドープ)として用いることもできる。再度溶解させる際に用いる溶媒としては、芳香族コポリアミドを溶解するものであれば特に限定はされないが、前記芳香族コポリアミドの重合に使用されるアミド系溶媒が好ましい。
【0035】
<芳香族コポリアミド繊維の製造方法>
芳香族コポリアミド繊維の具体的な製造方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、前記で得られた芳香族コポリアミド、およびアミド系溶媒からなる紡糸用溶液(ドープ)を調製し、得られたドープをノズルより吐出し、貧溶媒からなる凝固浴中で凝固、脱溶媒し、延伸、乾燥、熱処理させることにより製造することができる。
紡糸用ドープのポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0036】
また、紡糸用ドープには、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、染料、帯電防止剤、難燃剤、導電性ポリマー、その他の重合体等を添加することができる。
なお、芳香族コポリアミド繊維を製造する場合には、芳香族コポリアミドを紡糸した後、300℃〜550℃の範囲で熱処理を行うことが好ましい。特に好ましくは、400℃〜500℃の範囲で熱処理を行う。この温度範囲で熱処理を行えば、得られる繊維の配向結晶化が十分に進み、また、熱劣化を抑制できることから、十分な引張強度を有するコポリアミド繊維を得ることができる。
【0037】
<芳香族コポリアミド繊維の物性>
[引張強度]
本発明の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドを原料として得られる繊維の引張強度は、20cN/dtex以上となり、好ましくは25cN/dtex以上となる。強度が20cN/dtex未満の場合には、長期間の使用に対し強度が十分でないために、優れた耐久性を得ることが困難である。
【0038】
[単糸強度の変動率]
また、本発明の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドを原料として得られる繊維は、単糸強度の変動率が5%以下となる。単糸強度の変動率が5%を超える場合には、安定して優れた機械的物性を有する芳香族コポリアミド繊維を得ることが困難である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性値は下記の方法で測定した。
【0040】
<測定・評価方法>
(1)濁度
ジアミン溶液の濁度は、濁度計(日立製作所製、商品名:分光光度計、型式:U−3010)を用いて、以下の条件で測定した。
測定範囲 :350nm〜750nm
スキャンスピード:120nm/min
光源 :無調整重水素ランプ
【0041】
(2)繊度
JIS−L−1015 B法に準じ、測定した。
【0042】
(3)引張強度
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、糸試験用チャックを用いて、以下の条件の引張試験を行い、引張強度を測定した。
温度 :室温
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
チャック間距離 :500mm
試験スタート法 :スラックスタート法
【0043】
(4)単糸強度の変動率
引張試験機(INTESCO社製、商品名:INTESCO、型式:201X型)を用いて、糸試験用チャックを用いて以下の条件の引張り試験を行い、単糸100本の測定結果より、単糸強度の変動率を算出した。
(測定条件)
温度 :室温
測定試料長 :25.4mm
チャック引張速度 :10mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
チャック間距離 :25.4mm
試験スタート法 :スラックスタート法
【0044】
<実施例1>
(ジアミン溶液の調製)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.832Lに塩化カルシウム60g(3重量%)を溶解させた後、パラフェニレンジアミン10.8g(30mol%)と、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール52.0g(70mol%)とを秤量して投入し、溶解温度100℃で溶解させ、ジアミン溶液を得た。得られたジアミン溶液の濁度は、4.5NTUであった。
【0045】
(芳香族コポリアミドの重合)
得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド60.0g(99.0mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5重量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液108.4gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0046】
(芳香族コポリアミド繊維の製造)
得られたポリマー溶液を、孔径0.15mm、孔数24ホールの紡糸口金から、毎分3.5ccの割合で吐出し、エアーギャップと呼ばれる空隙部分を介して、NMP濃度30重量%、温度50℃の水溶液中に紡出し、凝固糸を得た。
次いで、温度30℃、濃度70%のNMP水溶液中で、2.0倍の延伸倍率で延伸を行った。延伸後、水洗、乾燥し、次いで、温度450℃下で熱処理を行い、30.0m/分の速度で巻き取って、42dtex/25filの糸条を得た。
得られた芳香族コポリアミド繊維は、引張強度24.5cN/dtex、単糸強度の変動率は4.2%であった。
【0047】
<比較例1>
ジアミン溶解温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にしてジアミン溶液を調整した。ジアミン溶液の濁度は13.5NTUであった。
引き続き、得られた芳香族ジアミン溶液を用いて、実施例1と同様にして芳香族コポリアミドを重合し、得られたポリマー溶液を紡糸して、46dtex/25filの芳香族コポリアミド糸条を得た。得られた繊維についての測定結果を、表1に示す。
【0048】
<比較例2>
塩化カルシウムの濃度を2重量%とした以外は、実施例1と同様にしてジアミン溶液を調整した。ジアミン溶液の濁度は24.3NTUであった。
引き続き、得られた芳香族ジアミン溶液を用いて、実施例1と同様にして芳香族コポリアミドを重合し、得られたポリマー溶液を紡糸して、43dtex/25filの芳香族コポリアミド糸条を得た。得られた繊維についての測定結果を、表1に示す。
【0049】
<比較例3>
塩化カルシウムの濃度を15重量%とした以外は、実施例1と同様にしてジアミン溶液を調整した。ジアミン溶液の濁度は40.0NTUであった。
引き続き、得られた芳香族ジアミン溶液を用いて、実施例1と同様にして芳香族コポリアミドポリマー溶液を重合したが、未溶解の塩化カルシウムが多いため断糸が発生し、繊維を得ることができなかった。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)および化学式(2)で示される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、
化学式(3)および化学式(4)で示される芳香族ジアミンを含む濁度が10NTU以下のジアミン溶液を用いる芳香族コポリアミドの製造方法。
【化1】

(式中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である)
【化2】

(式中、Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【化3】

【化4】

(式中、Ar2は非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【請求項2】
請求項1記載の芳香族コポリアミドの製造方法によって得られる芳香族コポリアミドから繊維を製造する方法であって、
前記芳香族コポリアミドを紡糸した後、300〜550℃の範囲で熱処理を行う芳香族コポリアミド繊維の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の芳香族コポリアミドの製造方法によって得られる芳香族コポリアミドからなる繊維であって、
引張強度が20cN/dtex以上であり、単糸強度の変動率が5%以下である芳香族コポリアミド繊維。

【公開番号】特開2011−213815(P2011−213815A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81936(P2010−81936)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】