説明

芳香族コポリアミドの製造方法

【課題】機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリアミドを、安定的に効率よく得る製造方法を提供する。
【解決手段】式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含み




熱分析において、200℃〜220℃の範囲に観測される第1の吸熱ピーク、および、230℃〜250℃の範囲に観測される第2の吸熱ピークを有し、かつ、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0.8以上である式(1)で表されるジアミンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族コポリアミドの製造方法に関する。さらに詳しくは、機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリアミドを、安定的に効率よく得ることのできる芳香族コポリアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミド繊維、特にポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維等のパラ系のアラミド繊維は、その強度、高弾性率、高耐熱性といった特性を活かして、産業用途、衣料用途等に広く用いられている。しかしながら、繊維強度、弾性率等の機械的物性は、用いられる用途によっては未だ十分に満足できるものではなく、機械的物性の向上を目指してさらなる開発がすすめられている。
【0003】
得られる繊維の機械的物性を向上させる目的で、例えば、特許文献1には、式(1)で表されるジアミン(以下、DAPBIと呼ぶこともある)を用いて、少なくとも式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドを、公知のアミド化合物に対して高い溶解度を有する溶媒を用いて重合する方法が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された方法によって得られる芳香族コポリアミドを原料とする芳香族コポリアミド繊維は、延伸処理後に、高い強度値と高い初期モジュラスを有する繊維となる。しかしながら、特許文献1に記載された芳香族コポリアミドの製造方法においては、ポリマー溶液の粘度が高くなるため重合度のコントロールが困難であり、その結果、機械的物性が安定した繊維を得ることは困難であった。
【0005】
【化1】

【化2】

【化3】

(ここで、式(2)および式(3)中、Ar1およびAr2は各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【0006】
従って、式(1)で表されるジアミン(DAPBI)を用いた、少なくとも式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法において、重合溶液の粘度(重合度)が制御され、かつ、未溶解物が抑制された均一なポリマー溶液の製造方法については、未だ提案されていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−278303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術を背景になされたもので、その目的は、式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含み、繊維とした場合に優れた機械的物性を有する芳香族コポリアミドを、安定的に効率よく得ることができる芳香族コポリアミドの製造方法を提供することにある。
【0009】
【化4】

【化5】

(ここで、式(2)および式(3)中、Ar1およびAr2は各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、熱分析において特定の温度範囲に吸熱ピークを有する特定のジアミンをコモノマーとして用いることにより、芳香族コポリアミド溶液の粘度(重合度)を制御し、かつ、ポリマーの未溶解物の析出を抑制することができ、その結果、繊維とした場合に優れた機械的物性を有する芳香族コポリアミドを、安定的に効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、式(1)で表されるジアミンをコモノマーとして含み、式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、前記ジアミンは、熱分析において、200℃〜220℃の範囲に観測される第1の吸熱ピーク、および、230℃〜250℃の範囲に観測される第2の吸熱ピークを有し、かつ、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0.8以上である芳香族コポリアミドの製造方法である。
【0012】
【化6】

【化7】

【化8】

(ここで、式(2)および式(3)中、Ar1およびAr2は各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法によれば、芳香族コポリアミド溶液の粘度(重合度)を制御し、かつ、ポリマーの未溶解物の析出を抑制することができるため、繊維とした場合に優れた機械的物性を有する芳香族コポリアミドを、安定的に効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<芳香族コポリアミド>
本発明の芳香族コポリアミドとは、式(1)で表されるジアミン(以下、DAPBIと呼ぶこともある)をコモノマーとして含み、式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含むものである。
【0015】
【化9】

【化10】

【化11】

(ここで、式(2)および式(3)中、Ar1およびAr2は各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【0016】
具体的には、式(1)で表されるジアミンに由来する部分を含み、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。また、2価の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基等が含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は限定されず、パラ型、メタ型のいずれであってもよい。
【0017】
<芳香族コポリアミドの製造方法>
本発明における芳香族コポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸クロライド成分と、上記式(1)で表されるジアミン(DAPBI)を必須成分として含む芳香族ジアミン成分とを反応せしめることにより、芳香族コポリアミドのポリマー溶液を得ることができる。
【0018】
[芳香族コポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法に用いられる芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分は、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、テレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4、4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド等を挙げることができる。これらのなかでは、価格面および精製グレードの豊富さ、ならびに得られる繊維の耐熱性および機械的特性の観点から、パラ型の芳香族ポリアミドが得られるテレフタル酸ジクロライドを用いることが好ましい。
【0019】
(芳香族ジアミン成分)
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法に用いられる芳香族ジアミン成分としては、少なくとも式(1)で表される5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)を必須成分として含む。本発明においては、さらに、DAPBI以外の芳香族ジアミン成分を併用する。
【0020】
【化12】

【0021】
〔5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)〕
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法において、必須成分として用いられる5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI:式(1))は、得られるポリマー溶液の粘度(重合度)を制御し、かつ、得られる芳香族コポリアミドの溶媒に対する溶解性を向上するために、その吸熱量が重要となる。
【0022】
本発明において必須成分として用いる式(1)で表されるジアミン(5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI))は、熱分析において、210℃〜230℃の範囲に観測される第1の吸熱ピーク、および、235℃〜250℃の範囲に観測される第2の吸熱ピークを有する。吸熱ピークの位置は、当該ジアミンに由来するものであり、上記の2つの範囲に吸熱ピークを有さない化合物は、異なる化合物となるため好ましくない。
【0023】
また、上記第1の吸熱ピークと第2の吸熱ピークとの吸熱量の比は、ポリマー溶液の粘度(重合度)を制御するうえで重要である。粘度(重合度)を制御し、均一なコポリアミド溶液を得るためには、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比(第1の吸熱ピーク/第2の吸熱ピーク)が0.8以上であることが必要である。0.8未満の場合には、コポリアミドの粘度(重合度)が上昇し、かつ、アミド系極性溶媒に対する溶解性が不十分となり好ましくない。
【0024】
吸熱ピークが上記範囲にある式(1)で表されるジアミン(5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI))は、130℃以上180℃以下の温度範囲にて、窒素雰囲気下30分以上熱乾燥処理を実施することにより得ることができる。乾燥温度が130℃未満の場合には、DAPBI合成の際に混入する水分を完全に除去することが困難となり好ましくない。一方で、乾燥温度が180℃を超える場合には、第2の吸熱ピークが大きくなることから、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比(第1の吸熱ピーク/第2の吸熱ピーク)が0.8未満となるため好ましくない。
【0025】
〔DAPBI以外の芳香族ジアミン成分〕
DAPBI以外の芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。また、DAPBI以外の芳香族ジアミンの芳香環は、置換されていても、あるいは非置換であってもよい。
【0026】
DAPBI以外の芳香族ジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等を挙げることができる。また、これらのDAPBI以外の芳香族ジアミン成分は、1種単独で用いても、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0027】
DAPBI以外の芳香族ジアミン成分のなかでは、得られる繊維の耐熱性および機械的特性の観点から、パラ型フェニレンジアミン、パラ型ビフェニレンジアミン等のパラ型芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、とりわけ、p−フェニレンジアミン単独、あるいは、p−フェニレンジアミンと3,4‘−ジアミノフェニルエーテルとの併用が特に好ましい。
【0028】
[反応条件]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃以上100℃以下の範囲とすること好ましく、−10℃以上80℃以下の範囲とすることがさらに好ましい。
【0029】
[原料組成比]
芳香族コポリアミドの原料となる上記の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、0.90以上1.10以下の範囲とすることが好ましく、0.95以上1.05以下の範囲とすることがより好ましい。
【0030】
[重合溶媒]
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法において用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等の有機極性アミド系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0031】
なお、本発明においては、芳香族コポリアミドの重合から得られるポリマー溶液の調整、場合によってはそのまま湿式紡糸工程に至るまでの一連の操作における取り扱い性や安定性、および、溶媒の毒性等の点から、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
【0032】
[中和反応]
反応終了後には、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加して、中和反応を実施することが好ましい。
【0033】
<芳香族コポリアミドの組成>
本発明の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドは、上記式(3)の構造反復単位が、構造単位の全体に対して30〜100モル%であることが好ましく、さらに好ましくは50〜100モル%の範囲である。該含有量が30モル%未満の場合には、芳香族コポリアミドの重合反応において反応溶液が濁るという問題が生じる場合があり、当該溶液を用いてそのまま紡糸する場合には、濁った重合溶液では製糸が困難となる。
【0034】
<芳香族コポリアミド繊維の製造方法>
本発明の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドは、従来公知の方法により製糸することができる。例えば、半乾半湿式紡糸法によりドープを凝固液中に押し出し、ドラフト率0.5〜5倍にて凝固液から凝固糸として引き取り、水洗工程にて溶媒を十分に除去し、その後、乾燥工程にて充分に乾燥したのち熱処理を行なうことにより、芳香族コポリアミド繊維を得ることができる。
【0035】
なお、本発明の製造方法で得られるコポリアミドから繊維を得る場合に、芳香族コポリアミドを紡糸した後、400℃〜550℃の範囲で熱処理を行なうことが好ましい。この温度範囲で熱処理を行えば、得られる繊維の配向結晶化が十分に進み、また、熱劣化を抑制できることから、十分な引っ張り強度、および、初期モジュラスを有するコポリアミド繊維を得ることができる。
【0036】
本発明の製造方法で得られるコポリアミドから得られる芳香族コポリアミド繊維は、引っ張り強度が25cN/dtex以上であり、初期モジュラスが500cN/dtex以上である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これに何等限定されるものではない。
<測定・評価方法>
実施例及び比較例中の各特性値は、下記の方法によって測定した。
【0038】
(1)粘度(重合度)
98wt%の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dLの溶液について30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0039】
(2)熱分析
DSC(ティー・エイ・インスツルメント社製、型式:Q−10)を用いて、窒素雰囲気下にて、下記の条件で昇温させた際の5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)と基準物質との温度差を測定する事により、吸熱ピークの温度範囲および吸熱量、吸熱量の比を算出した。
[測定条件]
測定範囲 :60〜260℃
昇温速度 :20℃/min
サンプル量 :20mg
基準物質 :酸化アルミニウム
【0040】
(3)紡糸性
コポリアミド溶液を半乾半湿式紡糸により凝固液中に押し出し、ドラフト率2.4倍にて凝固液から凝固糸として引き取り、下記の判定基準により、10分間における単糸切れの発生状況を判定した。
[判定基準]
良好 :10分間観測し単糸切れ発生無し
不良 :10分間観測し単糸切れ1本以上発生
不可 :10分間連続して紡糸できず
【0041】
(4)毛羽発生量
延伸、水洗、乾燥した後、30.0m/分の速度で温度450℃下熱処理を行い、10分間での単糸切れの発生本数により判定した。
[判定基準]
少 :10分間観測し単糸切れ発生数5本未満
多 :10分間観測し単糸切れ発生数5本以上
【0042】
(5)機械的物性
引張強度、引張伸度、初期モジュラスにつき、引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
[測定条件]
測定試料長 :500mm
チャック引張速度:250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
試験スタート法 :スラックスタート法
【0043】
<実施例1>
[芳香族ポリアミドの製造]
窒素を内部にフローしている乾燥容器に、塩化カルシウムを入れて乾燥させた。乾燥させた塩化カルシウム粉末160gとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.618Lとを、窒素フローしている攪拌翼を有する攪拌槽に投入した後、NMPに塩化カルシウム粉末を溶解させた。
次いで、パラフェニレンジアミン(PPD)10.2g(ジアミン全体に対して30mol%)と、熱分析において215℃に観測される第1の吸熱ピークと235℃に観測される第2の吸熱ピークとを有し、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0.86である、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)49.1g(ジアミン全体に対して70mol%)とを、攪拌槽に投入して溶解させた。
続いて、テレフタル酸クロライド(TPC)62.3g(加えたジアミンのモル量に対して98.0mol%)を投入して反応せしめることにより、芳香族コポリアミド溶液を得た。
さらに、得られた芳香族コポリアミド溶液には、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液100.4gを添加して、中和反応を行った。
【0044】
[芳香族コポリアミド繊維の製造]
上記で得られた芳香族コポリアミド溶液を用い、孔径0.15mm、孔数24ホールの紡糸口金から、毎分3.5ccの割合で吐出し、エアーギャップと呼ばれる空隙部分を介して、NMPと水とからなる凝固液(NMP濃度:40質量%、温度:50℃)中に紡出して、凝固糸を得た。なお、凝固糸を引き取る際のドラフト率は、2.4倍とした。
次いで、温度30℃、濃度70質量%のNMP水溶液中で、2.0倍の延伸倍率にて延伸を行った。引き続き、得られた延伸糸について、水洗、乾燥、次いで、温度450℃下での熱処理を行い、30.0m/分の速度で巻き取ることにより、42dtex/24filの芳香族コポリアミド繊維を得た。
得られた芳香族コポリアミド繊維の毛羽数は少なく、紡糸性も良好であった。また、繊維の機械的物性は、引張強度が25.6cN/dtex、引張伸度が2.79%、初期モジュラスが913cN/dtexであった。測定および評価結果を、表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
<比較例1>
熱分析において213℃に観測される第1の吸熱ピークと230℃に観測される第2の吸熱ピークとを有し、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0.34である、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)を用いた以外は、実施例1と同様にして芳香族コポリアミドを製造し、得られたポリマー溶液を用いて芳香族コポリアミド繊維を製造した。
得られた芳香族コポリアミド繊維の毛羽数は多く、紡糸性も不調であった。また、繊維の機械的物性は、引張強度が20.8cN/dtex、引張伸度が2.46%、初期モジュラスが890cN/dtexであった。測定および評価結果を、表1に示す。
【0047】
<比較例2>
熱分析において240℃に観測される第2の吸熱ピークのみを有し、このため、第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0である、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)を用いた以外は、実施例1と同様にして芳香族コポリアミドを製造したが、コポリアミドが析出して溶液とならないため、繊維を得ることはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジアミンをコモノマーとして含み、式(2)で表される構造反復単位および式(3)で表される構造反復単位を含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、
前記ジアミンは、熱分析において、210℃〜230℃の範囲に観測される第1の吸熱ピーク、および、235℃〜250℃の範囲に観測される第2の吸熱ピークを有し、かつ、
第2の吸熱ピークに対する第1の吸熱ピークの比が0.8以上である芳香族コポリアミドの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(ここで、式(2)および式(3)中、Ar1およびAr2は各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【請求項2】
前記式(3)で表される構造反復単位が、構造単位の全体に対して30〜100モル%である請求項1記載の芳香族コポリアミドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の芳香族コポリアミドの製造方法によって得られる芳香族コポリアミドから繊維を製造する方法であって、
前記芳香族コポリアミドを紡糸した後、300〜550℃の範囲で熱処理を行なう芳香族コポリアミド繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の芳香族コポリアミド繊維の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドからなる繊維であって、
引っ張り強度が20cN/dtex以上であり、初期モジュラスが500cN/dtex以上である芳香族コポリアミド繊維。

【公開番号】特開2011−37984(P2011−37984A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186539(P2009−186539)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】