説明

芳香族ジアミン化合物および芳香族ジニトロ化合物

【課題】 高耐熱、低誘電率、低誘電正接、低吸水率である高分子材料を得るための原料となる新規な芳香族ジアミン化合物および芳香族ジニトロ化合物を提供する。
【解決手段】 特定の2官能フェニレンエーテルオリゴマーの両末端に芳香族アミノ基を導入した芳香族ジアミン化合物、および特定の2官能フェニレンエーテルオリゴマーの両末端に芳香族ニトロ基を導入した芳香族ジニトロ化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する2官能フェニレンエーテルオリゴマーを原料とする新規な芳香族ジアミン化合物および芳香族ジニトロ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジアミン化合物はビスマレイミド、ポリイミド、熱硬化性エポキシ樹脂といった機能性高分子材料の原料として広範に用いられている。近年これらの応用分野における要求性能の高度化に伴い、機能性高分子材料として求められる物性はますます厳しくなってきている。かかる物性として、例えば、耐熱性、耐候性、耐薬品性、低吸水性、高破壊靭性、低誘電率、低誘電正接、成形性、屈曲性、溶剤溶解性、接着性等が求められている。
情報通信・計算機の分野においては、例えば、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、絶縁体による電気信号の減衰を抑制するために絶縁体には誘電率及び誘電正接の小さな材料が求められている。
また、プリント配線板、半導体パッケージの分野においては、例えば、近年の鉛フリー半田の導入により半田実装時の温度が上昇し、より高い実装信頼性を確保するためにプリント配線板、半導体パッケージ、電子部品の構成材料に対して高耐熱性、低吸水特性、等が要求されている。
さらに、これら電子材料用途では、ワニスの形で使用されることが多く、作業性の面で、溶剤溶解性に優れることが求められる。
このような要求に応えるべく、種々の芳香族ジアミンおよびその原料である芳香族ジニトロ化合物が提案されている。例えば、フッ素原子を有する芳香族ジアミンは、低誘電率、低誘電正接である高分子材料を与えるが、耐熱性が低下することが問題であり、フルオレン骨格を有する芳香族ジアミンは、低誘電率で耐熱性の高い高分子材料を与えることが知られているが、溶剤溶解性等の作業性に劣るという問題がある(例えば、特許文献1参照)。
ところで、低誘電特性、耐熱性、低吸水特性、溶剤溶解性に優れるオリゴマー構造を有する芳香族ジアミン化合物を開発することでも、上記の要求特性に応えられると考えられるが、このようなオリゴマー構造を有する芳香族ジアミンは、未だ見出されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平10-152559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高耐熱、低誘電率、低誘電正接、低吸水率である高分子材料を得るための原料となる新規な芳香族ジアミン化合物および芳香族ジニトロ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、ポリフェニレンエーテル骨格の優れた低誘電特性・耐熱性を引継いだ、特定の構造を有する2官能フェニレンエーテルオリゴマーならびにこれを用いた各種誘導体を開発してきた。更なる鋭意検討を加えた結果、2官能フェニレンエーテルオリゴマーから末端芳香族ジニトロ化合物を経由して、末端芳香族ジアミン化合物が誘導できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される芳香族ジアミン化合物に関する。
【化1】


(式中、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。アミノ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかである。)
【化2】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【0005】
更に本発明は、一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物に関する。
【化5】


(式中、-(O-X-O)-は、一般式(11)または一般式(12)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(13)で定義される1種類の構造または一般式(13)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。c,dは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。ニトロ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかである。)
【化6】


(R25,R26,R27,R31,R32は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R28,R29,R30は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化7】


(R33,R34,R35,R36,R37,R38,R39,R40は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化8】


(R41,R42は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R43,R44は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
本発明はさらに、一般式(19)または一般式(20)で表されるHO-X-OHなる構造の2官能フェノール化合物と一般式(21)で表されるY-OHなる構造の1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物とを反応させることを特徴とする、請求項5記載の芳香族ジニトロ化合物の製造方法。
【化9】


(式中、R49,R50,R51,R55およびR56は同一でも異なっても良く、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R52,R53およびR54は同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化10】


(式中、R57,R58,R59,R60,R61,R62,R63およびR64は、同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、-A-は炭素原子数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化11】


(式中、R65およびR66は同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R67およびR68は、同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明の芳香族ジアミン化合物は、ビスマレイミドの原料、ポリイミドの原料、ポリウレタンの硬化剤、エポキシ樹脂の硬化剤等として用いることができ、耐熱性、低誘電特性、低吸水性に優れた高機能性高分子材料の原料として極めて有用であり、得られる高機能性高分子材料は電気特性、成形性に優れた材料として電気絶縁材料、成形材料、銅張り積層板用樹脂、レジスト用樹脂、電子部品の封止用樹脂、液晶のカラーフィルター用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、ビルドアップ積層板材料、フレキシブル基板用樹脂、機能性フィルムなどの幅広い用途に使用することができる。
本発明の芳香族ジニトロ化合物は、ニトロ基を還元することにより、前記のように優れた特性を有する高分子材料の原料となる芳香族ジアミン化合物に容易に変換可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一般式(1)で表される芳香族ジアミン化合物とは、一般式(1)において、-(O-X-O)-、は一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。一般式(2)において、R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R4,R5,R6,は同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、一般式(3)において、R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基であり、-(Y-O)-は、一般式(1)において、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。
【0008】
一般式(3)における-A-としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明における芳香族ジアミン化合物の中では、R1,R2,R3,R7,R8,R17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R4,R5,R6,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R19,R20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基である芳香族ジアミン化合物が好ましく、特に一般式(2)または一般式(3)で表される-(O-X-O)-が、式(5)あるいは一般式(6)または一般式(7)であり、一般式(1)において、一般式(4)で表される-(Y-O)-が一般式(8)または一般式(9)あるいは一般式(8)と一般式(9)がランダムに配列した構造を有する芳香族ジアミン化合物であることがより好ましい。
【化12】


【化13】


(式中、R21,R22,R23,R24は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化14】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化15】


【化16】

【0010】
本発明の芳香族ジアミン化合物の製法は特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。好ましくは、一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物を還元することにより得ることができる。
【0011】
前記還元方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法を用いることができる。芳香族ジニトロ化合物の還元反応は、例えば、ニッケル、パラジウム、白金等の金属触媒や、これら金属を適宜の担体に担持させた担持触媒、あるいはニッケル、銅等のラネー触媒等の水素化触媒の存在下で、反応に不活性な反応溶媒中、温度20〜200℃、圧力を常圧〜50kgf/cm2 とし、水素を用いて、芳香族ジニトロ化合物を芳香族ジアミノ化合物に還元することにより実施される。前記反応溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられるが、芳香族ジニトロ化合物が溶解する溶媒であれば、これらに限定されることはない。また、これらの反応溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
本発明の芳香族ジアミン化合物の数平均分子量は500〜3000の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満では、フェニレンエーテル骨格の有する電気特性が得られにくく、また、3000を超えると、末端官能基の反応性が低下し、溶剤への溶解性も低下する。
【0013】
一般式(1)で表される芳香族ジアミン化合物のアミノ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかであれば、特に限定されることはない。
【0014】
続いて、本発明の芳香族ジニトロ化合物について説明する。本発明の一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物とは、一般式(10)において、-(O-X-O)-、は一般式(11)または一般式(12)で定義される構造からなる。一般式(11)において、R25,R26,R27,R31,R32は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R28,R29,R30は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。一般式(12)において、R33,R34,R35,R36,R37,R38,R39,R40は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基であり、-(Y-O)-は、一般式(10)において、一般式(13)で定義される1種類の構造または一般式(13)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、R41,R42は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R43,R44は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、c,dは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。
【0015】
一般式(12)における-A-としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明における芳香族ジニトロ化合物の中では、R25,R26,R27,R31,R32,R41,R42が炭素数3以下のアルキル基であり、R28,R29,R30,R33,R34,R35,R36,R37,R38,R39,R40,R43,R44が水素原子または炭素数3以下のアルキル基である芳香族ジニトロ化合物が好ましく、特に一般式(11)または一般式(12)で表される-(O-X-O)-が、一般式(14)あるいは一般式(15)または一般式(16)であり、一般式(10)において、一般式(13)で表される-(Y-O)-が一般式(17)または一般式(18)あるいは一般式(17)と一般式(18)がランダムに配列した構造を有する芳香族ジニトロ化合物であることがより好ましい。
【化17】


【化18】


(式中、R45,R46,R47,R48は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化19】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化20】


【化21】

【0017】
前記一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物の製法は特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。好ましくは、一般式(19)または一般式(20)で示される2官能フェノール化合物と一般式(21)で表される1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物とを有機溶媒中、塩基性化合物の存在下で、温度50〜250℃、好ましくは50〜180℃にて0.5〜24時間反応させることにより実施される。
【0018】
前記2官能フェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、2官能フェノール化合物、1官能フェノール化合物、触媒を溶剤に溶解させた後、加熱撹拌下で酸素を吹き込むことで製造することができる。2官能フェノール化合物としては、一般式(19)または一般式(20)で示され、R49,R50,R51,R55,R56が炭素数3以下のアルキル基でありR52,R53,R54,R57,R58,R59,R60,R61,R62,R63,R64が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるものが好ましく、特にR49,R50,R51,R54,R55,R56,R57,R58,R63,R64がメチル基でありR59,R60,R61,R62が水素原子またはメチル基でありR52,R53が水素原子である物がより好ましい。例えば、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジフェニルプロパン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。1官能フェノールとしては、一般式(21)で表され、R65,R66が炭素数3以下のアルキル基でありR67,R68が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるものが好ましく、特にR65,R66がメチル基でありR67が水素原子またはメチル基でありR68が水素原子であるものがより好ましい。例えば2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。触媒としては、例えば、CuCl、CuBr、CuI、CuCl2、CuBr2等の銅塩類とジn-ブチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N,N'N’-テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等のアミン類を組合せたものが使用できるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、メチルエチルケトン、キシレン、等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
前記ニトロハロベンゼン化合物の具体例としては、4-クロロニトロベンゼン、3-クロロニトロベンゼン、2-クロロ-4-ニトロトルエン、2-クロロ-5-ニトロトルエン、2-クロロ-6-ニトロトルエン、3-クロロ-5-ニトロトルエン、3-クロロ-6-ニトロトルエン、4-クロロ-2-ニトロトルエン、4-フルオロニトロベンゼン、3-フルオロニトロベンゼン、2-フルオロ-4-ニトロトルエン、2-フルオロ-5-ニトロトルエン、2-フルオロ-6-ニトロトルエン、3-フルオロ-5-ニトロトルエン、3-フルオロ-6-ニトロトルエン、4-フルオロ-2-ニトロトルエン等を挙げることができ、前記ジニトロベンゼン化合物の具体例としては、1,3-ジニトロベンゼン、1,4-ジニトロベンゼン、4-メチル-1,3-ジニトロベンゼン、5-メチル-1,3-ジニトロベンゼン、2-メチル-1,4-ジニトロベンゼン等を挙げることができる。これらの中で、ニトロ基の置換位置がパラ位の芳香族ジニトロ化合物を得るためには、4-クロロニトロベンゼンが好ましく、ニトロ基の置換位置がメタ位の芳香族ジニトロ化合物を得るためには、1,3-ジニトロベンゼンが好ましい。
【0020】
前記有機溶媒の好ましい具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられるが、2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物が溶解する溶媒であれば、これらに限定されることはない。また、これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。前記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のアルコキシド化合物等を挙げることができる。これら塩基性化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
本発明の芳香族ジニトロ化合物の数平均分子量は500〜3000の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満では、フェニレンエーテル骨格の有する電気特性が得られにくく、また、3000を超えると、末端官能基の反応性が低下し、溶剤への溶解性も低下する。
【0022】
一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物のニトロ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかであれば、特に限定されることはない。
【0023】
このようにして得られる本発明の芳香族ジアミン化合物および芳香族ジニトロ化合物は、ビスマレイミド、ポリイミド(ポリエーテルイミド)の原料として、あるいはポリウレタン、エポキシ樹脂の硬化剤等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。なお、数平均分子量および重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により求めた(ポリスチレン換算)。GPCの展開溶媒はTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。水酸基当量は末端水酸基を滴定により定量することにより求めた。
【0025】
合成例1
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2,600gを仕込んで混合物を得た。この混合物を反応温度40℃にて撹拌した。あらかじめ2,300gのメタノールに2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)を溶解させて混合溶液を得た。この混合溶液を、混合物に、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら、230分かけて滴下した。滴下中混合物の撹拌を継続した。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「A」)のトルエン溶液を833.40g得た。樹脂「A」の数平均分子量は930、重量平均分子量は1,460、水酸基当量が465であった。
【0026】
合成例2
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr2 9.36g(42.1mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.81g(10.5mmol)、n-ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン 2,600gを仕込んで、混合物を得た。反応温度40℃にて撹拌した。あらかじめ2,300gのメタノールに、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n-ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)を溶解させて混合溶液を得た。この混合溶液を、混合物に、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下した。滴下中混合物の撹拌を継続した。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「B」)のトルエン溶液を1981g得た。樹脂「B」の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
【0027】
合成例3
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込んで混合物を得た。この混合物を反応温度40℃にて撹拌した。あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)410.2g(1.6mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を溶解させて混合溶液を得た。この混合溶液を、混合物に、2 L/minの空気のバブリングを行いながら120分かけて滴下した。滴下中混合物の撹拌を継続した。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「C」)を946.6g得た。樹脂「C」の数平均分子量は801、重量平均分子量は1081、水酸基当量が455であった。
【0028】
合成例4
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込んで混合物を得た。この混合物を反応温度40℃にて撹拌した。あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)82.1g(0.32mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を溶解させて混合物溶液を得た。この混合溶液を、混合物に、2 L/minの空気のバブリングを続けながら120分かけて滴下した。滴下中混合物の撹拌を継続した。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「D」)を632.5g得た。樹脂「D」の数平均分子量は1884、重量平均分子量は3763、水酸基当量が840であった。
【0029】
合成例5
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた2Lの縦長反応器に4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジフェニルプロパン(ビスフェノールA )18.0g(78.8mmol)、CuBr20.172g(0.77mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.199g(1.15mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.10g(2.07mmol)、メタノール139g、トルエン 279gを仕込んで混合物を得た。この混合物の液温を40℃にして撹拌した状態の反応器の中へ、メタノール133gとトルエン266gに溶解させた2,6-ジメチルフェノール48.17g(0.394mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.245g(1.44mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.628g(25.9mmol)の混合溶液を、空気を0.5 L/minの流速でバブリングを行いながら132分かけて滴下し、滴下終了後さらに120分撹拌を行った。エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム2.40gを溶解した水400gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間真空乾燥して、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「E」)を54.8g得た。樹脂「E」の数平均分子量は1348、重量平均分子量は3267、水酸基当量が503であった。
【0030】
合成例6
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2,600gを仕込んで混合物を得た。この混合物を反応温度40℃にて撹拌した。あらかじめ2,300gのメタノールに2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.3g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6-トリメチルフェノール 64.9g(0.48mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)を溶解させて混合溶液を得た。この混合溶液を、混合物に、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下した。滴下中、撹拌を継続した。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「F」)のトルエン溶液を836.5g得た。樹脂「F」の数平均分子量は986、重量平均分子量は1,530、水酸基当量が471であった。
【0031】
実施例1
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.3g、樹脂「A」70.4g、4-クロロニトロベンゼン52.0g(0.33mol)、炭酸カリウム24.9g(0.18mol)を装入し、トルエン19.1gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を291.9gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「G」)64.7gを得た。樹脂「G」の数平均分子量は1457、重量平均分子量は2328であった。樹脂「G」の赤外吸収スペクトル(IR)は、図1に示すように、N-O結合に対応する波数1520cm-1および波数1343cm-1の吸収を示した。樹脂「G」の1H NMRスペクトルは、図2に示すように、8.2ppm付近にニトロ基のオルト位についたベンゼン環のプロトンに相当するピークが観測された。樹脂「G」のFDマス スペクトルは、図3に示すようなオリゴマー構造が観測され、これは樹脂「G」の理論分子量と一致する。
【0032】
実施例2
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「G」1.16g、N,N-ジメチルホルムアミド30.0g、5%Pd/C触媒167mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「H」)1.01gを得た。樹脂「H」の数平均分子量は1758、重量平均分子量は3411であった。樹脂「H」の赤外吸収スペクトル(IR)は、図4に示すように、N-H結合に対応する波数3448cm-1および波数3367cm-1の吸収を示した。樹脂「H」の1H NMRスペクトルは、図5に示すように、3.5ppm付近にアミノ基に相当するプロトンのピークが観測された。樹脂「H」のFDマス スペクトルは、図6に示すようなオリゴマー構造が観測され、これは樹脂「H」の理論分子量と一致する。
【0033】
実施例3
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド250.2g、樹脂「B」148.5g、4-クロロニトロベンゼン52.1g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン20.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を320.1gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「I」)140.3gを得た。樹脂「I」の数平均分子量は3081、重量平均分子量は5587であった。樹脂「I」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1519cm-1および波数1342cm-1の吸収を示した。
【0034】
実施例4
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「I」1.20g、N,N-ジメチルホルムアミド35.0g、5%Pd/C触媒156mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で8hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「J」)0.99gを得た。樹脂「J」の数平均分子量は2905、重量平均分子量は6388であった。樹脂「J」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3447cm-1および波数3365cm-1の吸収を示した。
【0035】
実施例5
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.2g、樹脂「C」68.3g、4-クロロニトロベンゼン52.2g(0.33mol)、炭酸カリウム24.9g(0.18mol)を装入し、トルエン19.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を290.2gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「K」)63.8gを得た。樹脂「K」の数平均分子量は1250、重量平均分子量は1719であった。樹脂「K」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1522cm-1および波数1340cm-1の吸収を示した。
【0036】
実施例6
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「K」1.15g、N,N-ジメチルホルムアミド29.9g、5%Pd/C触媒160mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「L」)0.88gを得た。樹脂「L」の数平均分子量は1205、重量平均分子量は2009であった。樹脂「L」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3446cm-1および波数3367cm-1の吸収を示した。
【0037】
実施例7
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド250.5g、樹脂「D」126.0g、4-クロロニトロベンゼン51.9g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン19.2gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を330.3gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「M」)115.0gを得た。樹脂「M」の数平均分子量は2939、重量平均分子量は5982であった。樹脂「M」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1518cm-1および波数1343cm-1の吸収を示した。
【0038】
実施例8
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「M」2.13g、N,N-ジメチルホルムアミド35.1g、5%Pd/C触媒189mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で8hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「N」)1.89gを得た。樹脂「N」の数平均分子量は2733、重量平均分子量は6746であった。樹脂「N」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3449cm-1および波数3366cm-1の吸収を示した。
【0039】
実施例9
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.1g、樹脂「E」75.5g、4-クロロニトロベンゼン52.0g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン20.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を300.2gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「O」)72.1gを得た。樹脂「O」の数平均分子量は2103、重量平均分子量は5194であった。樹脂「O」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1516cm-1および波数1340cm-1の吸収を示した。
【0040】
実施例10
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「O」1.31g、N,N-ジメチルホルムアミド30.0g、5%Pd/C触媒165mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「P」)1.10gを得た。樹脂「P」の数平均分子量は2051、重量平均分子量は6142であった。樹脂「P」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3450cm-1および波数3365cm-1の吸収を示した。
【0041】
実施例11
(芳香族ジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.0g、樹脂「F」70.7g、4-クロロニトロベンゼン52.0g(0.33mol)、炭酸カリウム25.1g(0.18mol)を装入し、トルエン19.3gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を300.3gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、芳香族ジニトロ化合物(樹脂「Q」)64.1gを得た。樹脂「Q」の数平均分子量は1538、重量平均分子量は2432であった。樹脂「Q」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1522cm-1および波数1344cm-1の吸収を示した。
【0042】
実施例12
(芳香族ジアミン化合物の合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「Q」1.50g、N,N-ジメチルホルムアミド30.0g、5%Pd/C触媒170mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6hr反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、芳香族ジアミン化合物(樹脂「R」)1.14gを得た。樹脂「R」の数平均分子量は1465、重量平均分子量は2809であった。樹脂「R」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3447cm-1および波数3360cm-1の吸収を示した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1における樹脂「G」のIRスペクトル
【図2】実施例1における樹脂「G」の1H NMRスペクトル
【図3】実施例1における樹脂「G」のFDマス スペクトル
【図4】実施例2における樹脂「H」のIRスペクトル
【図5】実施例2における樹脂「H」の1H NMRスペクトル
【図6】実施例2における樹脂「H」のFDマス スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される芳香族ジアミン化合物。
【化1】

(式中、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。アミノ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかである。)
【化2】

(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】

(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】

(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項2】
-(O-X-O)-が一般式(5)、一般式(6)または一般式(7)であり、-(Y-O)-が一般式(8)または一般式(9)あるいは一般式(8)と一般式(9)がランダムに配列した構造を有する請求項1記載の芳香族ジアミン化合物。
【化5】

【化6】

(式中、R21,R22,R23,R24は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化7】

(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化8】

【化9】

【請求項3】
数平均分子量が500〜3000である請求項1または2記載の芳香族ジアミン化合物。
【請求項4】
一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物を還元する事を特徴とする、請求項1記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。
【化10】

(式中、-(O-X-O)-は、一般式(11)または一般式(12)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(13)で定義される1種類の構造または一般式(13)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。c,dは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。ニトロ基の置換位置はパラ位またはメタ位のいずれかである。)
【化11】

(R25,R26,R27,R31,R32は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R28,R29,R30は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化12】

(R33,R34,R35,R36,R37,R38,R39,R40は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化13】

(R41,R42は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R43,R44は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項5】
請求項4記載の一般式(10)で表される芳香族ジニトロ化合物。
【請求項6】
-(O-X-O)-が一般式(14)、一般式(15)または一般式(16)であり、-(Y-O)-が一般式(17)または一般式(18)あるいは一般式(17)と一般式(18)がランダムに配列した構造を有する請求項5記載の芳香族ジニトロ化合物。
【化14】

【化15】

(式中、R45,R46,R47,R48は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化16】

(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化17】

【化18】

【請求項7】
数平均分子量が500〜3000である請求項5記載の芳香族ジニトロ化合物。
【請求項8】
一般式(19)または一般式(20)で表されるHO-X-OHなる構造の2官能フェノール化合物と一般式(21)で表されるY-OHなる構造の1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物とを反応させることを特徴とする、請求項5記載の芳香族ジニトロ化合物の製造方法。
【化19】

(式中、R49,R50,R51,R55およびR56は同一でも異なっても良く、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R52,R53およびR54は同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化20】

(式中、R57,R58,R59,R60,R61,R62,R63およびR64は、同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、-A-は炭素原子数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化21】

(式中、R65およびR66は同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R67およびR68は、同一でも異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−62530(P2009−62530A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206792(P2008−206792)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】