説明

芳香族スルホン架橋を有するポリマー電解質

スルホン酸基またはそれらの前駆物質によって芳香族架橋剤または芳香族架橋側基と架橋させて芳香族スルホンを形成することによってスルホン酸側基を有する架橋ポリマーを得るための方法が提供される。かかる架橋ポリマーを用いて燃料電池などの電解槽に使用できるポリマー電解質膜(PEM)を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基またはそれらの前駆物質によって芳香族架橋剤または芳香族架橋側基と架橋させて芳香族スルホンを形成することによってスルホン酸側基を有する架橋ポリマーを得る方法に関する。かかる架橋ポリマーを用いて燃料電池などの電解槽に使用できるポリマー電解質膜(PEM)を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン(TFE)と式:FSO2−CF2−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2のコモノマーとのコポリマーが公知であり、スルホン酸の形で、すなわち、FSO2−末端基がHSO3−に加水分解されて、デラウェア州、ウィルミントンのデュポン・ケミカル・カンパニー(DuPont Chemical Company,Wilmington,Delaware)によって商品名ナフィオン(Nafion)(登録商標)として販売されている。ナフィオン(登録商標)燃料電池に使用するためのポリマー電解質膜の作製に一般に用いられる。
【0003】
テトラフルオロエチレン(TFE)と式:FSO2−CF2−CF2−O−CF=CF2のコモノマーとのコポリマーが、燃料電池に使用するためのポリマー電解質膜の作製において公知であり、スルホン酸の形で、すなわち、FSO2−末端基がHSO3−に加水分解されて、販売されている。
【0004】
2002年、12月19日に出願された米国特許出願第10/325,278号明細書には、高フッ素化主鎖と、式:
YOSO2−CF2−CF2−CF2−CF2−O−[ポリマー主鎖]
(上式中、YがH+またはアルカリ金属カチオンなどの一価カチオンである)の反復側基とを含むポリマーを含む90ミクロン以下の厚さのポリマー電解質膜が開示されている。典型的に、膜はキャスト膜である。典型的に、前記ポリマーは、22,000より多い水和物を有する。典型的に、前記ポリマーは、800〜1200の当量を有する。
【0005】
国際公開第01/27167号パンフレットには、フッ素化架橋基と架橋される親水性官能基を有する架橋フルオロカーボンポリマー組成物が開示されているとされている。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0032739号明細書には、ハロ芳香族化合物を含めてもよい架橋剤とポリマー上のスルフィネート基−SO2Meとの反応によって架橋されて:ポリマー−SO2−アリーレン−SO2−ポリマーを含有することができる架橋を形成する、カチオン交換基の前駆物質を有してもよい1つ以上のポリマーからなる共有結合によって架橋されたポリマーまたはポリマー膜が開示されている。
【0007】
米国特許第6,090,895号明細書には、酸性官能基を生成する種と架橋することによって架橋スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスチレン、および他の酸性ポリマーなどのイオン伝導性膜として有用な架橋酸性ポリマーを製造する方法が開示されている。架橋剤は、酸基をイミド官能基に変換することによって酸官能基に結合するのが好ましく、それは、その中のN−H結合の酸度のために、酸基の占有によって失われた酸度を補い、従って、膜強度および膨張に対する耐性に寄与しながら膜導電率を維持する。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0092940号明細書には、芳香族種と式:
(X−SO2−)m−QH−(−SO2−R1n
[上式中、QがCまたはNであり、各Xが独立して、ハロゲン、典型的にFまたはClからなる群から選択され、各R1が独立して、脂肪族および芳香族基からなる群から選択され、直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化または置換されるかまたはされなくてもよく、mが0より大きく、QがNであるとき、m+n=2であり、QがCであるとき、m+n=3である]の反応体との反応によって芳香族イミドおよび芳香族メチリジントリススルホニル種を製造する方法が開示されている。Arは、芳香族高分子化合物から誘導されてもよい。さらに、前記文献には、式:(Ar−SO2−)m−QH−(−SO2−R1nの化合物(R1が、スルホン酸、カルボン酸およびホスホン酸から選択された高度に酸性の基を含み、Arが芳香族化合物から誘導される)が開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、架橋ポリマーおよび架橋ポリマーの製造方法を提供するものであり、この方法は、a)式−SO2X(各Xが独立して、F、Cl、Br、I、−OHまたは−O−SO22から選択され、R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよい)の基を含有する側基を含む高フッ素化ポリマーを提供する工程と、b)前記ポリマーを式Arn1(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよく、R1が直接結合または芳香族もしくは脂肪族結合基であり、R1が直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化されるかまたは置換されてもよく、nが少なくとも2である)の架橋剤と反応させて式(−SO2Ar)n1の単位を含む架橋を形成する工程と、を含む。1つの実施態様において、ポリマーが、−SO2Fを含有する側基を含み、次いで−SO2F基の少なくとも一部を−SO2Clまたは−SO2−O−SO22に変換して反応させる。1つの実施態様において、ポリマーは、架橋する前に膜に、典型的に90ミクロン以下の厚さの膜に形成される。典型的に、残りの−SO2X基は、架橋した後にスルホン酸基に変換される。
【0010】
別の態様において、本発明は、スルホン酸基を含む主鎖、側基と、式(−SO2Ar)n1(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよく、R1が直接結合または芳香族もしくは脂肪族結合基であり、Rが直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化されるかまたは置換されてもよく、nが少なくとも2である)の単位を含む架橋とを含む高フッ素化架橋ポリマーを提供する。1つの実施態様において、ポリマーは、典型的に90ミクロン以下の厚さのポリマー電解質膜である。代表的な側基には、式−O−(CF24−SO3Hの基および式−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hの基などがある。
【0011】
別の態様において、本発明は、a)式−SO2X(各Xが独立して、F、Cl、Br、I、−OHまたは−O−SO22から選択され、R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよい)の基を含有する第1の側基と、基−Ar(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよい)を含有する第2の側基とを含む高フッ素化ポリマーを提供する工程と、b)前記ポリマーを反応させて式−SO2Ar−の単位を含む前記第1および第2の側基の間の架橋を形成する工程とを含む、架橋ポリマーの製造方法を提供する。1つの実施態様において、前記ポリマーは、−SO2Fを含有する第1の側基を含み、次いで−SO2F基の少なくとも一部を−SO2Clまたは−SO2−O−SO22に変換して反応させる。1つの実施態様において、前記ポリマーは、架橋する前に膜に、典型的に90ミクロン以下の厚さの膜に形成される。典型的に、残りの−SO2X基は、架橋した後にスルホン酸基に変換される。
【0012】
別の態様において、本発明は、スルホン酸基を含む主鎖、側基と、式−SO2Ar−(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよい)の単位を含む架橋とを含む高フッ素化架橋ポリマーを提供する。1つの実施態様において、ポリマーは、典型的に90ミクロン以下の厚さのポリマー電解質膜である。代表的な側基には、式−O−(CF24−SO3Hの基および式−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hの基などがある。
【0013】
本出願において、
ポリマーの「当量」(EW)は、塩基の1当量を中和するポリマーの重量を意味する。
ポリマーの「水和物」(HP)は、膜中に存在するスルホン酸基の1当量当たり膜によって吸収された水の当量数(モル)にポリマーの当量を乗じた値を意味する。
「高フッ素化」は、40重量%以上、典型的に50重量%以上およびより典型的に60重量%以上の量においてフッ素を含有することを意味する。
「置換された」は、化学種について、所望の生成物または方法を妨げない通常の置換基によって置換されることを意味し、例えば、置換基は、アルキル、アルコキシ、アリール、フェニル、ハロ(F、Cl、Br、I)、シアノ、ニトロなどであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
簡潔に言えば、本発明は、スルホン酸基またはそれらの前駆物質によって芳香族架橋剤または芳香族架橋側基と架橋させて芳香族スルホンを形成することによって、スルホン酸側基を有する架橋ポリマーを得る方法を提供する。かかる架橋ポリマーを用いて燃料電池などの電解槽に使用できるポリマー電解質膜(PEM)を製造することができる。
【0015】
燃料電池に使用するための膜電極接合体(MEA)の製造において本発明による架橋ポリマーから製造されたPEMを用いてもよい。MEAは、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心的要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤との触媒組合せによって有用な電気を生じる電気化学電池である。代表的なMEAは、固体電解質として機能する、ポリマー電解質膜(PEM)(イオン導電性膜(ICM)としても知られている)を含む。PEMの一方の面は、アノード電極層と接触しており、反対側の面は、カソード電極層と接触している。各電極層は、電気化学触媒を含有し、典型的に白金金属を含有する。気体拡散層層(GDL)は、アノードおよびカソード電極材料へのおよびそれらからの気体輸送を容易にし、電流を伝導する。GDLはまた、流体輸送層(FTL)または拡散体/集電体(DCC)と呼ばれることがある。アノードおよびカソード電極層を触媒インクの形でGDLに適用してもよく、得られたコーティングされたGDLをPEMで挟んで5層MEAを形成してもよい。代わりに、アノードおよびカソード電極層を触媒インクの形でPEMの対向した面に適用してもよく、得られた触媒コーティングされた膜(CCM)を2つのGDLで挟んで5層MEAを形成してもよい。5層MEAの5層は、順に、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、およびカソードGDLである。代表的なPEM燃料電池において、水素の酸化によってプロトンがアノードに形成され、PEMを横切ってカソードに輸送されて酸素と反応し、電極に接続する外部回路に電流を流させる。PEMは反応体ガスの間に耐久性、非多孔性、電気非導電性機械的バリアを形成し、しかもそれはまた、H+イオンを容易に通過させる。
【0016】
架橋されるポリマーは、分岐または非分岐であってもよいが典型的に非分岐である主鎖を含む。主鎖はフッ素化されており、典型的に高フッ素化されており、より典型的に過フッ素化されている。主鎖は、テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導された単位、すなわち、典型的に−CF2−CF2−単位と、典型的に少なくとも、式CF2=CY−R10のコモノマーを含めた、コモノマーから誘導された単位とを含んでもよく、上式中、Yが典型的にFであるが同様にCF3であってもよく、R10が、式−SO2Xの基を含有する第1の側基であり、Xが、F、Cl、Br、I、−OHまたは−O−SO22から選択される(R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよい)。−SO2Xがスルホニルハリドである場合、Xは最も典型的にFである。別の実施態様において、第1の側基R10をグラフトによって主鎖に付加してもよい。典型的に、第1の側基R10は高フッ素化されており、より典型的に過フッ素化されている。R10は芳香族または非芳香族であってもよい。典型的に、R10は−R11−SO2Xであり、R11は、1〜15個の炭素原子と0〜4個の酸素原子とを含む分岐または非分岐のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である。R11は典型的に−O−R12−であり、R12は、1〜15個の炭素原子と0〜4個の酸素原子とを含む分岐または非分岐のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である。R11は、より典型的に−O−R13−であり、R13は、1〜15個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。R11の例には、
−(CF2n−(nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である)、
(−CF2CF(CF3)−)n(nが1、2、3、4、または5である)、
(−CF(CF3)CF2−)n(nが1、2、3、4、または5である)、
(−CF2CF(CF3)−)n−CF2−(nが1、2、3または4である)、
(−O−CF2CF2−)n(nが1、2、3、4、5、6または7である)、
(−O−CF2CF2CF2−)n(nが1、2、3、4、または5である)、
(−O−CF2CF2CF2CF2−)n(nが1、2または3である)、
(−O−CF2CF(CF3)−)n(nが1、2、3、4、または5である)、
(−O−CF2CF(CF2CF3)−)n(nが1、2または3である)、
(−O−CF(CF3)CF2−)n(nが1、2、3、4または5である)、
(−O−CF(CF2CF3)CF2−)n(nが1、2または3である)、
(−O−CF2CF(CF3)−)n−O−CF2CF2−(nが1、2、3または4である)、
(−O−CF2CF(CF2CF3)−)n−O−CF2CF2−(nが1、2または3である)、
(−O−CF(CF3)CF2−)n−O−CF2CF2−(nが1、2、3または4である)、
(−O−CF(CF2CF3)CF2−)n−O−CF2CF2−(nが1、2または3である)、
−O−(CF2n−(nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14である)などがある。
【0017】
10は典型的に−O−CF2CF2CF2CF2−SO2Xまたは−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO2Xであり、最も典型的に−O−CF2CF2CF2CF2−SO2Xである。重合する間、−SO2X基は最も典型的に−SO2Fであり、すなわち、XはFである。−SO2X基は典型的に、ポリマー電解質としてフルオロポリマーを使用する前に或る時点において−SO3Hに変換される。第1の側基R10を提供するフルオロモノマーは、米国特許第6,624,328号明細書に開示された方法などのいずれの適した手段によって合成されてもよい。
【0018】
前記ポリマーは、2003年10月30日に出願された米国特許出願第10/697,768号明細書[代理人整理番号58585US002]およびそこに引用された文献に開示された方法など、乳化重合、押出重合、超臨界二酸化炭素中での重合、溶液重合または懸濁重合等のいずれの適した方法によって製造されてもよい。
【0019】
重合する間、−SO2X基が−SO2Fである場合、架橋する前に−SO2F基の一部が、より反応性の基、例えば−SO2Cl、−SO2Br、−SO2Iまたは−O−SO22(R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよく、より典型的に1〜8個の炭素原子を含有し、最も典型的にメチルまたはエチルである)に変換されうる。典型的に、−SO2F基の1〜50%がより反応性の基に変換される。−SO2F基はいずれの適した方法によって変換されてもよい。−SO2F基はいずれの適した方法によって−SO2Cl基に変換されてもよい。1つのかかる方法において、適した還元剤、例えばヒドラジンまたはメルカプトエタノールなどのメルカプタンを使用して−SO2F基を−SO2Hに還元し、引き続いて、ハイポクロリドによって−SO2Clに変換する。別のかかる方法において、ピリジン触媒を用いて乾燥トルエン中でオキサリルクロリドと反応させることによって−SO2F基を−SO2Cl基に変換してもよい。いずれの適した方法によって−SO2F基を−O−SO22基に変換してもよい。1つのかかる方法において、−SO2F基は、R2−SO2−O−SO22、例えばCH3−SO2−O−SO2−CH3との交換によって変換される。別のかかる方法において、−SO2F基は、R2−SO3HおよびP25との反応によって変換される。
【0020】
本発明の1つの実施態様において、前記ポリマーは、基−Ar(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよい)を含有する第2の側基をさらに含む。代表的なAr基には、フェニル、ナフチル、アントラシル、フェナントラシル、ビフェニル、テルフェニル、フルオリル、インジル、フルオランチル、ピリジル、プリル等がある。置換基が存在するとき、それらは典型的に、アルコキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキル等の電子供与置換基である。CF2=CY−R20(Yが典型的にFであるがCF3であってもよく、R20が第2の側基である)などのモノマーとの三元共重合によって前記第2の側基を前記ポリマーに導入してもよい。別の実施態様において、第1の側基R20をグラフトによって主鎖に付加してもよい。第2の側基R20は式−R11−Arであってもよく、R11は上記の通りである。本発明のこの実施態様において、前記ポリマーは、第1および第2の側基を接合することによって架橋される。以下に記載された付加的な架橋剤が添加されてもよいが必要ではない。第2の側基が、第1の側基の量より少ない数量(モル)においてポリマー中に存在し、第1の側基の量に対して典型的に90%より少なく、より典型的に50%より少ない。
【0021】
本発明の1つの実施態様において、前記ポリマーは、式Arn1(Arが上記の通りであり、R1が直接結合または芳香族もしくは脂肪族結合基であり、R1が直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化されるかまたは置換されてもよく、nが少なくとも2である)の架橋剤との反応よって架橋される。nは典型的に2〜4、より典型的に2〜3、最も典型的に2である。R1は典型的に1〜120個の炭素、酸素または窒素原子を含有するが、ポリマーである場合、もっと大きくてもよい。R1は典型的に脂肪族である。R1はより典型的に、1〜20個の炭素または酸素原子を含有する直鎖または分岐状アルキレン、アルコキシまたはポリエーテル基である。R1はまた、特に、nがもっと大きな数、例えば4より大きい場合、ポリマーまたはオリゴマーであってもよい。R1は典型的にフッ素化されており、より典型的に高フッ素化、最も典型的に過フッ素化されている。R1が直接結合である場合、nは2でなければならず、架橋剤はAr−Ar、例えば、ビフェニルである。典型的に、R1は酸素原子によって各Arに結合する。典型的にR1は−O−R3−O−であり、そこにおいてR3は、1〜18個の炭素または酸素原子を含有する、より典型的に1〜8個の炭素または酸素原子を含有する脂肪族結合基である。本発明による架橋剤の例には、ジフェニルエーテル、ジフェノキシアルカン、ジフェノキシエーテル、ジフェノキシポリエーテル等がある。
【0022】
架橋剤およびポリマーは、溶液または懸濁液中での混合、混練、ミル粉砕等のいずれの適した方法によって混合されてもよい。ポリマーと混合された架橋剤の量は典型的に、得られた架橋ポリマーが以下に記載された水和物および当量パラメーターを満たすように選択される。
【0023】
本発明の1つの実施態様において、ポリマーまたはポリマー/架橋剤ブレンドは架橋する前に膜に形成される。膜を形成するいずれの適した方法を用いてもよい。ポリマーは典型的に、懸濁液からキャストされる。バーコーティング、噴霧コーティング、スリットコーティング、ブラシコーティング等のいずれの適したキャスチング方法を用いてもよい。あるいは、膜を押出などの溶融方法でニートポリマーから形成してもよい。形成した後に、膜をアニールしてもよい。典型的に膜は、厚さ90ミクロン以下、より典型的に60ミクロン以下、最も典型的に30ミクロン以下である。膜を薄くするとイオンの通過に対する抵抗を小さくすることができる。燃料電池の使用時に、これは、より低温の運転を可能にし、有用なエネルギーの出力を大きくする。より薄い膜は、使用時にそれらの構造結合性を維持する材料から作製されなければならない。
【0024】
架橋反応は、いずれの適した方法によって行なわれてもよい。典型的に、反応は、典型的に160℃以上の温度まで熱を加えて行なわれる。典型的に、ルイス酸などの触媒を導入する。ポリマーを架橋する工程は、膜をアニールする間、全部または一部行なわれてもよく、もしくは一切のアニール工程とは別に行われてもよい。架橋工程の間、芳香族スルホン基は、式:−SO2Ar−によって形成される。架橋剤が用いられる場合、得られた架橋は式(−SO2Ar)n1の単位を含む。第1および第2の側基が接合して架橋を形成する場合、それらは式−SO2Ar−の単位を含む。
【0025】
架橋した後、側基の残りの硫黄含有部分をいずれかの適した方法によってスルホン酸の形に変換することができる。スルホニルハリド基を加水分解によって変換することができる。代表的な方法において、ポリマーを強塩基の水溶液に浸漬し、次いで酸性にした。1つの代表的な実施態様において、ポリマー膜を1時間、80℃の15%KOH水溶液に浸漬し、次いで80℃の20%硝酸中で2回洗浄し、次いで脱イオン水中で2回煮沸した。スルホニル無水物基を加水分解によって変換することができ、残りのR2−SO3Hを除去する。
【0026】
酸官能性側基は典型的に、15,000より多い、より典型的に18,000より多い、より典型的に22,000より多い、最も典型的に25,000より多い水和物(HP)をもたらすのに十分な量において存在する。概して、より多いHPは、より大きいイオン伝導度と相関する。
【0027】
酸官能性側基は典型的に、1200より小さい、より典型的に1100より小さい、より典型的に1000より小さい、より典型的に900より小さい当量(EW)をもたらすのに十分な量において存在する。
【0028】
さらに別の実施態様において、ポリマーまたはポリマー/架橋剤ブレンドは、典型的に厚さ90ミクロン以下、より典型的に60ミクロン以下、最も典型的に30ミクロン以下の薄い膜の形状で、架橋する前に多孔性支持母材中に膨潤されてもよい。過剰圧力、真空、吸上、浸漬等、前記ポリマーを支持母材の細孔中に膨潤するいずれの適した方法を用いてもよい。前記ポリマーは、アミジン基の反応時に母材中に埋め込まれる。いずれの適した支持母材を用いてもよい。典型的に支持母材は非導電性である。典型的に、支持母材はフルオロポリマーからなり、より典型的に過フッ素化されている。代表的な母材には、二軸延伸PTFEウェブなどの多孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。
【0029】
本発明のこの方法によって作製された膜は、架橋の構造、架橋の配置、酸官能基の配置等において他の方法によって作製された膜と化学構造が異なってもよいことは理解されよう。
【0030】
本発明は、燃料電池などの電解槽に使用するためのポリマー電解質膜の製造において有用である。
【0031】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく実施できることは、当業者には明らかであり、本発明は、上記の例示的な実施態様に不当に制限されるものではないことは理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式−SO2X(各Xが独立して、F、Cl、Br、I、−OHまたは−O−SO22から選択され、R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよい)の基を含有する側基を含む高フッ素化ポリマーを提供する工程と、
b)前記ポリマーを式Arn1(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよく、R1が直接結合または芳香族もしくは脂肪族結合基であり、R1が直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化されるかまたは置換されてもよく、nが少なくとも2である)の架橋剤と反応させて架橋を形成する工程と、を含む、架橋ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記架橋が式(−SO2Ar)n1の単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)式−SO2X(各Xが独立して、F、Cl、Br、I、−OHまたは−O−SO22から選択され、R2が、1〜18個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、置換されてもよい)の基を含有する第1の側基と、基−Ar(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよい)を含有する第2の側基とを含む高フッ素化ポリマーを提供する工程と、
b)前記ポリマーを反応させて前記第1および第2の側基の間の架橋を形成する工程と、を含む、架橋ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記架橋が式−SO2Ar−の単位を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程b)の前に、c)前記ポリマーを膜に形成する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程b)の後に、d)式−SO2Xの一切の残りの基をスルホン酸基に変換する工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
高フッ素化ポリマーを提供する工程a)が、
e)式−SO2Fの基を含有する側基を含む高フッ素化ポリマーを提供する工程と、
f)前記−SO2F基の少なくとも一部を−SO2Clに変換する工程と、を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スルホン酸基を含む主鎖、側基と、式(−SO2Ar)n1(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよく、R1が直接結合または芳香族もしくは脂肪族結合基であり、R1が直鎖、分岐状、環状、ヘテロ原子、ポリマー、ハロゲン化、フッ素化されるかまたは置換されてもよく、nが少なくとも2である)の単位を含む架橋とを含む、高フッ素化架橋ポリマー。
【請求項9】
スルホン酸基を含む主鎖、側基と、式−SO2Ar−(各Arが独立して、6〜24個の炭素または窒素原子を含有する芳香族基から選択され、各Arが置換されてもよい)の単位を含む架橋とを含む、高フッ素化架橋ポリマー。
【請求項10】
請求項9に記載の高フッ素化架橋ポリマーを含むポリマー電解質膜。

【公表番号】特表2007−515514(P2007−515514A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541568(P2006−541568)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/039023
【国際公開番号】WO2005/053076
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】