説明

芳香族スルホン酸エステルおよびスルホン化ポリアリーレン系重合体

【課題】高いプロトン伝導性の付与と、高温加湿条件下でも膨潤抑制された材料設計が可能な新規芳香族スルホン酸エステルおよびスルホン化ポリアリーレン系重合体に関する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸エステル誘導体。


[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、Yは−CO−または−S
2−を示す。Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは
2〜5の整数を示す。Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な芳香族スルホン酸エステルおよびスルホン化ポリアリーレン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基などのプロトン酸基を有する高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオンまたは陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維または膜状に成形されて各種の用途に利用されている。
【0003】
たとえば、固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜(プロトン伝導膜)の両面に一対の電極を設け、改質ガス等の水素を含む燃料ガスを一方の電極(燃料極)へ供給し、空気等の酸素を含む酸化剤ガスを他方の電極(空気極)へ供給し、燃料が酸化する際に発生する化学エネルギーを、直接電気エネルギーとして取り出す電池である。
【0004】
固体高分子型燃料電池は、電池の作動温度が高くなるほど、発電効率が高くなることが知られている。また、プロトン伝導膜の両面に接合される電極には、白金系の電極触媒が含まれているが、白金は微量の一酸化炭素であっても被毒され、燃料電池の出力を低下させる原因となる。しかも、白金系電極触媒の一酸化炭素による被毒は、低温ほど著しくなることが知られている。そのため、微量の一酸化炭素を含むメタノール改質ガスなどを燃料ガスとして用いる固体高分子型燃料電池においては、発電効率を向上させるとともに、電極触媒の一酸化炭素による被毒を低減するために、作動温度を高くすることが望まれている。また、高分子電解質膜は、発電時にプロトン伝導性能を発現させるため、膜中の水分が重要であるが、そのため一般に十分に加湿した燃料ガスが用いられている。
【0005】
しかしながら、高温加湿条件下での使用では、高分子電解質の寸法変化などの問題、また、プロトン伝導性を有する高分子電解質として知られるナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系電解質は、非架橋であることから耐熱性が低いため、高温で使用できないといった問題がある。
【0006】
一方、高温耐久性改善のために、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの炭化水素系ポリマーに、スルホン酸基などを導入した高分子電解質も研究されている(たとえば、特許文献1、非特許文献1〜3)。
【特許文献1】米国特許第5,403,675号公報
【非特許文献1】Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p.730 (1993)
【非特許文献2】Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.7,p.2490〜2492 (1993)
【非特許文献3】Polymer Preprints,Japan,Vol.43,No.3,p.735〜736 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般にこれらの高分子電解質は、高温加湿条件下での吸水率および膨潤が大きく、寸法安定性に優れないという問題点がある。また、膨潤抑制のためにスルホン酸濃度を下げるとプロトン伝導度が著しく低下してしまう。さらに、高温条件下で使用し続けるとスルホン酸基が脱離または分解してしまうため、耐久性が低いという問題も存在する。
【0008】
上記の様な問題点があることに加え、燃料ガスを加湿するという煩雑なシステムが必要とされる点から、燃料電池システムの効率化のために高温低加湿での作動も求められている。しかし、電解質膜は、高温低加湿環境においては、逆に膜の保水性が低下し、やはりプロトン伝導度が低下してしまうという問題点もある。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、スルホン酸基の導入量を増加して高い電気的性質を付与でき、高温加湿条件下でも優れた膨潤抑制効果を有し、かつ高温低加湿条件下でも優れた電気的性質を有した膜を与えることができるスルホン化ポリマーおよびその原料である、芳香族スルホン酸エステル誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく、鋭意研究した。その結果、特定の構成単位を有する、スルホン化ポリアリーレンによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の態様は、以下[1]〜[5]に示される。
[1]下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸エステル誘導体。
【0012】
【化1】

【0013】
[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、Yは−CO−または−S
2−を示す。Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは
2〜5の整数を示す。Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。
[2]下記一般式(1’)で表される構成単位を有することを特徴とするポリアリーレン系重
合体。
【0014】
【化2】

【0015】
[式(1’)中、Yは−CO−または−SO2−を示す。Zは直接結合または−CO−または
−SO2−または−SO−を示す。nは2〜5の整数を示す。
[3]さらに、一般式(2)で表される構成単位を有する[2]のポリアリーレン系共重合体。
【0016】
【化3】

【0017】
[式(2)中、A、Dはそれぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2
、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2)j−(jは1〜10の整数である)、−CR’’2−(R’’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、sおよびtはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
[4]上記一般式(1’)が下記一般式(1’a)で表される構成単位である[2]または[3]のポ
リアリーレン系共重合体。
【0018】
【化4】

【0019】
[式(1’a)中、Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。n
は2〜5の整数を示す。]
[5][3]および[4]のポリアリーレン系共重合体を含む固体高分子電解質膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のスルホン酸エステル基を位置選択的に、特定の芳香環に導入した芳香族化合物、該化合物から誘導される複数のスルホン酸基を側鎖の末端部にのみ有する芳香族ユニットと、スルホン酸基を有さないユニットとを有する共重合体を提供することができる。本発明の複数のスルホン酸基を側鎖の末端部にのみ有する芳香族ユニットの効果により、スルホン酸基を有さない芳香族ユニットとの共重合体中においても、複数のスルホン酸基を側鎖の末端部にのみ有する芳香族ユニットの主鎖部分の疎水性が十分に発揮される。このため、高いスルホン酸濃度の共重合体が合成できることによる、高いプロトン伝導性の付与と、高温加湿条件下でも膨潤抑制された材料設計が可能となる。さらに、同一の芳香環に複数のスルホン酸が結合していることにより、スルホン酸の酸性度が向上する上、親水部のスルホン酸密度が高いために高温低湿環境でも優れたプロトン伝導性を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の芳香族スルホン酸エステル誘導体について詳細に説明する。
<芳香族スルホン酸エステル誘導体>
本発明の芳香族スルホン酸エステル誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0022】
【化5】

【0023】
[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、ハロゲン原子が好ましい。Yは−CO−または−SO2−を示し、−CO−が好ましい。Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、直接結合が好ましい。nは2〜5の整数を示し、好ましくは2〜3である。
【0024】
Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。具体的には、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、アダマンチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基などが挙げられる。
【0025】
後述する、共重合体とする場合、これらの中でも、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、ネオペンチル基がより好ましい。
【0026】
このような芳香族スルホン酸エステルとしては、以下のものが例示される。
【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
また、本発明の上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステルには、上記例示した化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物なども挙げることができる。さらに、塩素原子が、−OSO2CH3および−OSO2CF3に置き換わった化合物も挙げられる。
【0033】
このような芳香族スルホン酸エステル誘導体の合成方法としては、式(1)で表される化合物が合成できれば特に制限されるものではない。しかしながら、主たる骨格を合成してから、スルホン化剤などを用いる方法を利用して複数のスルホン酸エステル基を導入する場合、導入位置の限定が困難となる場合が多い。本発明のようなスルホン酸エステル誘導体を合成するには、先に複数のスルホン酸エステル基を有する芳香環部分を合成し、後に特定の主鎖部分を構成する構造体とカップリング反応させる方法等がある。具体的には、以下のような方法がある。
【0034】
複数のスルホン酸エステル基を有する芳香環部分の合成は、ハロゲン化ベンゼンを、一般的に知られる方法でスルホン化し、得られたスルホン化ベンゼンを保護基で保護することで、ハロゲン化ベンゼンスルホン酸エステルが得られる。このとき、スルホン化剤の種類や温度などの条件を調節することで、複数のスルホン酸を導入した骨格を合成することができる。
【0035】
本発明の複数のスルホン酸エステル基を有する芳香環部分にはベンゼン環を用いるのが好ましい。一つの環に複数のスルホニル基が導入されることにより、環の電子密度が低くなることにより、スルホン酸の脱離を抑制する効果も期待できる。ナフタレンやアントラセン等種々の多環芳香族化合物を用いても同様に合成は可能であるが、分子内のスルホン酸エステル基の導入位置の制御の困難さが増すために合成時の収率低下などの問題や、環構造や分子自体が大きくなりすぎることによりスルホン酸の高密度化の効果が薄れてしまうといった問題を招いてしまう。
【0036】
主鎖部分を構成する骨格は、ベンゾフェノン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホンといった主骨格で、一方のフェニル基に、ポリマー化する際に必要である、2つのフッ素以外のハロゲン基を有し、もう一方のフェニル基には、上記複数のスルホン酸を導入した骨格とカップリングするための官能基を有するものを用いると良い。カップリング
に用いる官能基としては、ハロゲン、メルカプト基、ボロン酸などを用いることができるが、ポリマー化に用いる主鎖のハロゲン基と異なる官能基を用いることが、収率良く目的物を得る上で好ましい。具体的には、ポリマー化する際に主鎖を形成する芳香環に置換された官能基が塩素の場合、臭素、ヨウ素、ボロン酸などを用いることができる。
【0037】
この骨格の合成は、一般に知られる合成方法を用いることができる。具体的に例示すると、ベンゾイルクロリドを経由するフリーデルクラフツ反応を利用する方法、フェニルチオールとフッ化フェニルの求核置換反応によるチオエーテル化を経由し、過酸化物によるスルフィニル基やスルホニル基への酸化反応を用いる方法などが挙げられる。
【0038】
上記のようにして得られた複数のスルホン酸エステル基を有する芳香環部分と、主鎖部分を構成する部分とのカップリングには、一般に知られる方法を用いることができる。例えば、スルホン酸エステル基を有するハロゲン化ベンゼンを、亜鉛などの金属で処理し有機金属化合物に変換する。このときマグネシウムやリチウムなどの活性の高い金属は、保護されたスルホン酸エステルと反応してしまうため、亜鉛やインジウムなど適度な活性を有する金属が好ましい。次に主鎖部分を構成する部分と、パラジウム触媒やニッケル触媒を用いてクロスカップリング反応することで、目的とする芳香族スルホン酸エステル誘導体を得ることができる。
【0039】
得られた芳香族スルホン酸エステル誘導体は、必要に応じて精製される。
芳香族スルホン酸エステル誘導体の同定方法としては、特に制限されるものではなく、公知の、NMRなどの方法が採用される。
【0040】
<スルホン化ポリアリーレン系重合体>
本発明に係るポリアリーレン系重合体は、下記一般式(1')で表される構成単位を有す
る。
【0041】
【化11】

【0042】
[式(1’)中、Yは−CO−または−SO2−を示し、−CO−が好ましい。
Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、直接結合が好ましい。nは2〜5の整数を示し、好ましくは2〜3である。
【0043】
<スルホン化ポリアリーレン系共重合体>
本発明に係るポリアリーレン系重合体は、上記式(1')で表される構成単位の単独重
合体であってもよく、通常、一般式(4)で表される構成単位を含むことが望ましい。このような構成単位を含んでいると、重合体の強度や耐水性を向上させることができる。
【0044】
【化12】

【0045】
式(4)中、AおよびDは、それぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−S
2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2)j−(jは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を示す。これらの中では、直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−CR’2−、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基が好ましい。R’としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、これらの置換基中の水素原子の一部もしくはすべてがハロゲン化された置換基などが挙げられる。
【0046】
Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、酸素原子が好ましい。
1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル
基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
【0047】
上記アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。
上記ハロゲン化アルキル基としては、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0048】
上記アリル基としては、たとえば、プロペニル基などが挙げられる。上記アリール基としては、たとえば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
sおよびtは0〜4の整数を示す。rは0または1以上の整数を示し、上限は通常100、好ましくは1〜80である。
【0049】
上記構成単位(4)の好ましい構造としては、上記式(4)において
(1)s=1およびt=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオ
レニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(2)s=1およびt=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−で
あり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(3)s=0およびt=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオ
レニリデン基、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子、フッ素原子またはニトリル
基である構造が挙げられる。
【0050】
上記構成単位(4)となりうるモノマーもしくはオリゴマー(以下「化合物(4’)」とも
いう)は、たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法を参照することに
より合成することができる。
【0051】
<スルホン化ポリアリーレン系重合体の製造方法>
本発明のスルホン化ポリアリーレン系重合体は、たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法で合成することができる。
【0052】
具体的には、まず、上記式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体、および上記化合物(4)の前駆体である下記一般式(4’)で表される化合物を触媒の存在下で共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、該スルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成す
ることができる。
【0053】
【化13】

【0054】
式(4’)中、Xは、フッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3
および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、塩素または臭素が好ましい。A、B、D、R1〜R16、s、t、rは、上記式(4)中のA、B、D、R1〜R16、s、t、rと同義である。
【0055】
上記重合の際に用いられる触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、このような触媒系としては、(i)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。) 、または、配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、(ii)還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。
【0056】
これらの触媒成分の具体例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件などは、特開2001−342241号公報に記載されている化合物および条件等を参考にして使用または設定することができる。
【0057】
上記のような方法により製造されるスルホン化ポリアリーレンのイオン交換容量は、通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜4meq/g、さらに好ましくは0.8〜3.5meq/gである。イオン交換容量が上記範囲よりも低いと、プロトン伝導度が低く、発電性能が低くなる傾向にあり、上記範囲を超えると、耐水性が大幅に低下する傾向にある。
【0058】
ただし、今回開発した多スルホン化モノマーを用いると、従来のモノスルホン化モノマーを用いた場合と比較して、イオン交換量を大幅に大きくできた。このため、今回合成したポリマーは、従来のポリマーと比較して高いプロトン伝導度を有する傾向にある。
【0059】
上記イオン交換容量は、たとえば、上記化合物(1’)および化合物(4’)の種類、使用割合、組み合わせなどを変えることにより、調整することができる。なお、本発明のスルホン化ポリアリーレンは、構成単位(1)を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、構成単位(4)を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有することが望ましい。
【0060】
このようにして得られるスルホン化ポリアリーレンの重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で、1万〜100万、好ましくは2万〜50万、より好ましくは10万〜40万である。
【0061】
このようなポリアリーレン系重合体は、プロトン伝導性が高く、燃料電池のプロトン伝導膜、電極電解質、結着剤として好適に使用できる。また、このようなポリアリーレン系重合体を含む電極電解質は、膜電極接合体としても好適である。
【0062】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各種の測定項目は、下記のようにして求めた。
【0063】
(分子量)
重合体の分子量は、GPCによってポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。溶媒として臭化リチウムを添加したN−メチル−2−ピロリドンを用いた。
【0064】
(イオン交換容量)
得られたスルホン化ポリマーの水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、フリーの残存している酸を除去して十分に洗浄し、乾燥した後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解させ、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点からイオン交換容量を求めた。
【0065】
(プロトン伝導度)
まず、短冊状の試料膜(40mm×5mm)の表面に、白金線(φ=0.5mm)を5mm間隔に5本押し当て、恒温恒湿装置((株)ヤマト科学製「JW241」)中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定により交流抵抗を求めた。測定は、抵抗測定装置として(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用いて、85℃、相対湿度を変化させた環境下、交流10kHzの条件で、線間距離を5〜20mmに変化させて行った。次いで、線間距離と抵抗の勾配から膜の比抵抗Rを下記式に従って算出し、比抵抗Rの逆数からプロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
(耐水性試験)
まず、2×3cmに切削した試料膜の長辺と短辺の長さを精密に測定した。同試料膜を耐熱性樹脂容器に入れ、十分な量の水を加えて密栓した後、オーブンまたはプレッシャークッカー試験機を用い、それぞれ95℃、120℃で24時間加熱処理した。加熱終了後、室温まで放冷し、試料膜を取出し、表面の水滴を軽く拭き取った後、各辺の長さ及び膜厚、重量を測定した。得られた数値を用い、試料の耐水性について以下の通り算出した。寸法変化率(%)=(試験後の長辺(cm)/試験前の長辺(cm))+(試験後の短辺(cm)/試験前の短辺(cm))/2×100
<実施例1>
(1)ブロモベンゼン−2,4−ジスルホン酸ネオペンチルの合成
滴下ロート、温度計、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でクロロスルホン酸186g(1.2mol)を取り、撹拌下ブロモベンゼン31.4g(0.2mol)を滴下ロートから約30分かけて滴下した。120℃で6時間反応させた後、反応液を氷水に注ぎ、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、ブロモベンゼン−2,4−ジスル
ホニルクロリドの粗生成物70gを得た。
【0066】
三口フラスコにピリジン118.9g(1.5mol)、2,2−ジメチル−1−プロ
パノール17.4g(0.198mol)を加え、0℃まで冷却した。上記で得られたスルホニルクロリドの粗生成物を、この溶液に徐々に加えた。
氷浴で5℃以下を保ちながら4時間反応させた後、氷浴を取り除き室温までゆっくりと昇温させた。反応液を500mlの塩酸水溶液に注ぎ、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を塩酸水溶液、5%炭酸水素ナトリウム溶液、ついで飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた粗生成物を酢酸エチル/ヘキサン溶液から再結晶し、目的物の粗結晶72gを得た。
(2)4−(2,5−ジクロロベンゾイル)−ベンゼンボロン酸−2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールエステルの合成
ディーンスターク管、温度計を取り付けた三口フラスコに、トルエン300mlを取り、2,5−ジクロロ−4'−ブロモベンゾフェノン115.5g(0.35mol)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール60.5g(0.58mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物6.66g(0.04mol)を加え、130℃で加熱還流して生成する水を除きながら反応させた。約20時間後、理論量(約6.3g)の水を回収したことを確認し、反応液を1Lのビーカーに移した。塩氷浴で反応液を冷却し、析出した結晶をろ過回収した後、エタノールですすぎ、白色結晶120gを得た。
【0067】
三口フラスコに窒素雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン500mlを取り、上記白色結晶41.2g(0.1mol)を加えて溶解させた後、ドライアイス/アセトン浴で−7
5℃まで冷却した。n−ブチルリチウムの10Mヘキサン溶液を10.5ml(0.105mol)シリンジを用いてゆっくりと滴下し、−65℃で1時間反応させた。ついでほう酸トリメチル15.5g(0.15mol)を滴下し、−60℃で1時間反応させた。その後冷却浴を取り除き、室温までゆっくりと昇温した。次に反応溶液に塩酸溶液を加えて70℃に加熱して反応させた。冷却後、アセトンを加えて撹拌した後、エバポレーターで溶媒を除き、析出した粗結晶をろ過で回収した。酢酸エチル/ヘキサン溶液から再結晶し、目的物の白色結晶23gを得た。
(3)4’−(2,5−ジクロロベンゾイル)ビフェニル−2,4−ジスルホン酸ネオペンチルの合成
ジムロート、温度計を取り付けた三口フラスコにトルエン77mlをとり、ブロモベンゼン−2,4−ジスルホン酸ネオペンチル14.0g(0.03mol)、テトラキスト
リフェニルホスフィンパラジウム1.06g(0.9mmol)を加え撹拌した。さらに2mol/l炭酸カリウム水溶液32gを加えた後、4−(2,5−ジクロロベンゾイル
)−ベンゼンボロン酸−2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールエステルをエタノール16mlに分散させたものを加え、加熱還流して6時間反応させた。反応溶液に30%過酸化水素水1.8gを加え1時間撹拌後、反応液に酢酸エチルを加え抽出した。有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を留去、得られた粗結晶をアセトン/ヘキサン溶液から再結晶し、下記式(I)に示される構造の目的物12gを得た。得られた化合物のNMRチャートを図1に示す。
【0068】
【化14】

【0069】
<実施例2>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル54.5g(86.8mmol)、下記構造式(II)で示すMn11,200の疎水性ユニット34.3g(3.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.77g(3.0mmol)、ヨウ化ナトリウム0.41g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.44g(36.0mmol)、亜鉛14.1g(216mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0070】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)270mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc480mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0071】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム23g(260mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体70gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は235,000であった。得られた重合体は式(III)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0072】
【化15】

【0073】
<実施例3>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル54.4g(86.8mmol)、下記構造式(IV)で示すMn8,200の疎水性ユニット34.3g(4.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.38g(3.6mmol)、ヨウ化ナトリウム0.41g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.55g(36.4mmol)、亜鉛14.3g(218mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0074】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)270mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc480mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0075】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム23g(260mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体70gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は235,000であった。得られた重合体は式(III)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0076】
【化16】

【0077】
<実施例4>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル54.0g(86.0mmol)、下記構造式(VI)で示すMn9,000の疎水性ユニット35.6g(4.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.36g(3.6mmol)、ヨウ化ナトリウム0.40g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.44g(36.0mmol)、亜鉛14.1g(216mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0078】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)290mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc500mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0079】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム22.4g(258mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体68gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は250,000であった。得られた重合体は式(VII)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0080】
【化17】

【0081】
<実施例5>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル53.3g(85.0mmol)、下記構造式(VIII)で示すMn7,000の疎水性ユニット35.6g(5.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.36g(3.6mmol)、ヨウ化ナトリウム0.40g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.44g(36.0mmol)、亜鉛14.1g(216mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0082】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)290mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc500mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0083】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム22.1g(255mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体68gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は250,000であった。得られた重合体は式(IX)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0084】
【化18】

【0085】
<実施例6>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル53.3g(85.0mmol)、下記構造式(X)で示すMn7,
000の疎水性ユニット35.6g(5.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.36g(3.6mmol)、ヨウ化ナトリウム0.40g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.44g(36.0mmol)、亜鉛14.1g(216mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0086】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)290mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc500mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0087】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム22.1g(255mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体68gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は250,000であった。得られた重合体は式(XI)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0088】
【化19】

【0089】
<比較例1>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、下記構造式(XII)
で示す4’−(2,5−ジクロロベンゾイル)−ビフェニル−4−スルホン酸ネオペンチル68.8g(144mmol)、上記構造式(II)で示したMn11,200の疎水性ユニット11.0g(1.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.79g(5.8mmol)、ヨウ化ナトリウム0.65g(4.4mmol)、トリフェニルホスフィン15.2g(58.0mmol)、亜鉛22.75g(348mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0090】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)255mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc480mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0091】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム37.5g(432mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体70gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は335,000であった。得られた重合体は式(XIII)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0092】
【化20】

【0093】
<比較例2>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、下記構造式(XIV)
で示す4’−(2,5−ジクロロベンゾイル)−ビフェニル−2',4−ジスルホン酸ネオペンチル54.5g(86.8mmol)、上記構造式(II)で示したMn11,200の疎水性ユニット34.3g(3.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.77g(3.0mmol)、ヨウ化ナトリウム0.41g(2.7mmol)、トリフェニルホスフィン9.44g(36.0mmol)、亜鉛14.1g(216mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0094】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)270mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc480mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0095】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた
。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム23g(260mmol)を加えた。7時間攪拌後、イオン交換水7Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、アセトン、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体70gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は240,000であった。得られた重合体は式(XV)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0096】
【化21】

【0097】
(評価用フィルムの作製)
実施例1〜6および比較例1,2で得られたポリマーをそれぞれ濃度14〜16%でN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、ガラス板上にキャストした後、乾燥して膜厚40μmのフィルムを得た。
(評価)
得られたフィルムを用い、耐水性試験およびプロトン伝導度の測定を実施した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示すとおり、本発明の芳香族スルホン酸エステル誘導体(実施例1)を用いて合成されたスルホン化ポリマー(実施例2〜6)からなる膜は、高温加湿環境化における寸法安定性が優れており、高温低湿度環境下でのプロトン伝導性の低下も低く抑えられ、優れた電気的特性を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は実施例1で得られた化合物のNMRチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸エステル誘導体。
【化1】

[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、Yは−CO−または−S
2−を示す。Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは
2〜5の整数を示す。Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。]
【請求項2】
下記一般式(1’)で表される構成単位を有することを特徴とするポリアリーレン系重合体。
【化2】

[式(1’)中、Yは−CO−または−SO2−を示す。Zは直接結合または−CO−または
−SO2−または−SO−を示す。nは2〜5の整数を示す。]
【請求項3】
さらに、一般式(2)で表される構成単位を有することを特徴とする請求項2に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化3】

[式(2)中、A、Dはそれぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2
、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2)j−(jは1〜10の整数である)、−CR’’2−(R’’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、sおよびtはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
【請求項4】
上記一般式(1’)が下記一般式(1’a)で表される構成単位であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化4】

[式(1’a)中、Zは直接結合または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。n
は2〜5の整数を示す。]
【請求項5】
請求項3および4に記載のポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。

【図1】
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【公開番号】特開2008−247857(P2008−247857A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93759(P2007−93759)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】