説明

芳香族ポリアミドフィルムおよびそれを用いた光学部材およびディスプレイ。

【課題】 反射防止性を有する高強度かつ高耐熱の無色透明芳香族ポリアミドフィルムを提供すること、さらにこの芳香族ポリアミドフィルムを用いた光学部材およびディスプレイを提供すること。
【解決手段】 芳香族ポリアミドを含む層(基材層)の少なくとも片面に、基材層よりも低い屈折率を有する樹脂層を設けてなり、下記式(1)で定義される黄色度(YI)が3%以下であり、樹脂層を設けた側から波長550nmの光線を入射したときの光線反射率が6%以下である芳香族ポリアミドフィルムとする。
YI=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y ・・・(1)
(ただし、X、Y、ZはXYZ表色系における三刺激値である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止膜を有し光学部材に好適に使用できる芳香族ポリアミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止膜はディスプレイの外光反射を抑えて視認性を向上させる反射防止機能を有し、近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)など様々なディスプレイに使用されている。
【0003】
反射防止膜の成膜方法としては、一般的に乾式法と湿式法に大別される。乾式法とは、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などにより、プラスチックフィルムに金属酸化物を真空成膜する方法であり、湿式法とは有機材料やゾル−ゲル化合物を含む溶媒をプラスチックフィルムに塗布して、有機膜あるいは無機化合物膜を形成する方法である(反射防止膜の設計や成膜技術については、例えば非特許文献1に記載されている)。
【0004】
上記乾式法による反射防止膜は、均一性に優れ性能面では優れるものの、大型・大量生産を行う場合に大規模な設備が必要となるなど生産性に劣るという欠点があった。一方湿式法では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリルなどのプラスチックフィルム表面に高屈折率材料によるハードコート層を設け、その上に低屈折率有機材料を含む溶剤を塗布して反射防止膜を形成する方法(例えば、特許文献1〜4)、アルコキシシランのゾル−ゲル反応によって反射防止膜を形成する方法(例えば、特許文献5,6)、反射防止膜に帯電防止機能を付与して付着塵埃の低減を図る方法(例えば、特許文献7〜9)などが提案されている。
【0005】
しかし近年ディスプレイの高性能化にともない、反射防止フィルムにも性能向上はもとより、複合化、薄膜化などの要求が強くなってきた。こうした反射防止フィルムの複合化、薄膜化を図る場合は、フィルム自体の厚みを低減することが有効かつ簡便であるが、従来の基材フィルムでは強度不足によりフィルム寸法が変化したり、ハンドリング性が悪化するなどの問題が生じやすい。また反射防止フィルムに帯電防止性や防汚染性などの機能を湿式法で付与する場合には、基材フィルムの耐熱性が高いと使用できる溶媒や材料の種類が増え、乾燥温度や成形温度などの制御範囲が広くなるため有利である。
【0006】
こうした高強度かつ高耐熱フィルムとしては芳香族ポリアミドフィルムが知られており、磁気記録媒体用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、コンデンサー、プリンタリボン、音響振動板、太陽電池のベースフィルムなどの用途で使用されている。
【0007】
しかし一般的な芳香族ポリアミドフィルムは黄色に着色しているため、反射防止フィルムなどの光学用フィルムには適用が困難であった。また上記特許文献では反射防止フィルムの基材として芳香族ポリアミドフィルムが例示されているが、無色透明な芳香族ポリアミドフィルムを得るための具体的な方法は開示されていない。
【非特許文献1】「反射防止膜の特性と最適設計・膜作製」、株式会社技術情報協会、2001年10月
【特許文献1】特開2002−182005号公報
【特許文献2】特開2003−75603号公報
【特許文献3】特開2003−307601号公報
【特許文献4】特開2004−45486号公報
【特許文献5】特開2003−205581号公報
【特許文献6】特開2003−344608号公報
【特許文献7】特開2003−131009号公報
【特許文献8】特開2003−215306号公報
【特許文献9】特開2003−270405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、反射防止性を有する高強度かつ高耐熱の無色透明芳香族ポリアミドフィルムを提供すること、さらにこの芳香族ポリアミドフィルムを用いた光学部材およびディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、芳香族ポリアミドを含む層(基材層)の少なくとも片面に、基材層よりも低い屈折率を有する樹脂層を設けてなり、下記式(1)で定義される黄色度(YI)が3%以下であり、樹脂層を設けた側から波長550nmの光線を入射したときの光線反射率が6%以下である芳香族ポリアミドフィルムを特徴とする。
【0010】
YI=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y ・・・(1)
(ただし、X、Y、ZはXYZ表色系における三刺激値である)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、薄膜でも高強度で、外部応力や熱などによる寸法変化が小さく、複合化や薄膜化に適した反射防止性の芳香族ポリアミドフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の例を説明する。
【0013】
本発明に用いる芳香族ポリアミドとしては、たとえば、次の一般式(I)および/または一般式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上有するものを用いることができる。
【0014】
一般式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(II):
【0017】
【化2】

【0018】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3の基としては、例えば、
【0019】
【化3】

【0020】
フルオレン残基などが挙げられる。
【0021】
ここで、X、Yは芳香環の結合基であって、例えば、−O−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−S−、−C(CH32−、−CF2−、−C(CF32−などから選ばれるが、これらに限定されるものではない。さらにこれらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基(特にメチル基)、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。
【0022】
また本発明に用いる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の50モル%以上、より好ましくは75モル%以上占めていることが、フィルムの剛性や耐熱性が向上するため好ましい。ここでパラ配向性とは、芳香環上の主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。また芳香環上の水素原子の一部がハロゲンを含有する置換基で置換された芳香環が全体の30モル%以上であると耐湿性が向上するため好ましい。また耐熱性、透明性を損なわない範囲でAr1、Ar2、Ar3がフルオレン残基である構成、また、X、Yが−SO2−、−C(CH32−、−CF2−、−C(CF32−から選ばれた構成であると、短波長光線(波長400〜450nm)の透過率が向上し、無色透明性が良好となり、反射防止フィルムなどの光学用フィルムに適用できるため好ましい。このパラ配向性が50モル%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となることがある。
【0023】
本発明に用いる芳香族ポリアミドは、上述の一般式(I)および/または一般式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上含むものが好ましく、50モル%未満は他の繰り返し単位が共重合またはブレンドされていてもよい。
【0024】
上述の芳香族ポリアミドは、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、無機または有機の微粒子、充填剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0025】
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、少なくとも一方向のヤング率が4GPa以上であることが好ましく、より好ましくは8GPa以上、さらに好ましくは10Gpa以上である。またすべての方向のヤング率が4GPa以上であることが特に好ましい。芳香族ポリアミドフィルムのヤング率が4GPa以上であると、加工時あるいは使用時の応力によるフィルム歪みを抑制できるため好ましい。このようなフィルムのヤング率はJIS−C2318に準拠した方法で測定される。なおフィルムのヤング率の上限については、あまり大きすぎるとフィルムの靱性が低下し、製膜や加工が困難となる場合があることから、現実的には25GPa程度と考えられる。
【0026】
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、少なくとも一方向の破断伸度が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。フィルムの破断伸度が5%以上であると、フィルムが適度な柔軟性を有し、製膜時や加工時のフィルム破れが低減するため好ましい。このようなフィルムの破断伸度はJIS−C2318に準拠した方法で測定される。なお破断伸度の上限については、特に限定されるものではないが、現実的には250%程度であると考えられる。
【0027】
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、25℃、相対湿度75%での吸湿率が3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。フィルムの吸湿率が1%以下であると、加工時あるいは使用時の湿度変化による特性変化が抑制されるので好ましい。このようなフィルムの吸湿率は次の方法によって測定される。まずフィルム約0.5g採取し、脱湿のため120℃で3時間の加熱を行った後、窒素ガスを導入して除冷するなど吸湿しないように25℃まで降温して、フィルム重量を0.1mg単位まで正確に秤量する(この時の重量をW0とする)。次いで、フィルムを、25℃、相対湿度75%の雰囲気下に48時間静置し、その後の重量を正確に秤量して(この時の重量をW1とする)、以下の式で吸湿率を求める。
【0028】
吸湿率(%)=((W1−W0)/W1)×100
フィルムの吸湿率は低い方が好ましいが、現実的には下限は0.03%程度と考えられる。
【0029】
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、温度範囲25℃から80℃における熱膨張係数が50ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは40ppm/℃以下、さらに好ましくは30ppm/℃以下である。フィルムの25℃から80℃における熱膨張係数が50ppm/℃以下であると、加工時あるいは使用時の温度変化による寸法変化や特性変化が抑制されるので好ましい。このようなフィルムの熱膨張係数は、押し棒式示差熱膨張計(TMA)を用いて、フィルムを150℃まで昇温した後、降温過程において測定する。温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL0、温度T1(=80℃)におけるフィルム長さをL1、温度T2(=25℃)におけるフィルム長さをL2とし、以下の式で熱膨張係数を求める。
【0030】
熱膨張係数(ppm/℃)
=(((L1−L2)/L0)/(T1−T2))×106
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、環境温度25℃、湿度範囲30%RHから85%RHにおける湿度膨張係数が150ppm/%RH以下であることが好ましく、より好ましくは70ppm/%RH以下、さらに好ましくは50ppm/%RH以下である。フィルムの25℃、30%RHから85%RHにおける湿度膨張係数が150ppm/%RH以下であると、加工時あるいは使用時の湿度変化による寸法変化や特性変化が抑制されるので好ましい。このようなフィルムの湿度膨張係数は、フィルムを恒温恒湿槽内にセットして、一定湿度(30%RH)まで脱湿し24時間保持した後のフィルム長さと、湿度を上げた状態で(85%RH)、24時間フィルムを静置した後のフィルム長さを測定することで求めることができる。温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL0、加湿後の湿度M1(=85%RH)で24時間静置した後のフィルム長さをL1、脱湿後の湿度M2(=30%RH)におけるフィルム長さをL2とし、以下の式で湿度膨張係数を求める。
【0031】
湿度膨張係数(ppm/%RH)
={(L1−L2)/L0}/(M1−M2)×106
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、フィルム厚みとして1〜200μmの範囲内であることが好ましい。フィルム厚みは、フィルム特性、ハンドリング性、目標最終厚みなどによって適宜調整されるべきものであるが、フィルム厚みが1μm未満の場合には製膜時に破れが生じたり、湿式法による反射防止膜形成が困難になるなど歩留まりを悪化させることがあり、200μmを超える場合には透明性が低下したり、光学部材としての厚みが大きくなり過ぎる。フィルム厚みは、5〜150μmの範囲内がより好ましく、5〜100μmの範囲内がさらに好ましい。
【0032】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上述した芳香族ポリアミドのフィルム層(基材層)の少なくとも片面に、基材層よりも低い屈折率を有する樹脂層を設けることによって得ることができる(以下、樹脂層を樹脂膜ということがある)。
【0033】
樹脂膜を形成する有機材料については、基材層よりも低い屈折率を有すれば、また基材層に用いる芳香族ポリアミドの屈折率よりも低屈折率であれば特に限定されないが、一般的に芳香族ポリアミドは分子内に多くの芳香環を有し屈折率が高いため、多くの有機材料を選択できる。例えば基材層または芳香族ポリアミドの屈折率が1.7以上の場合は、ポリビニルカルバゾール(屈折率nd1.683)、ポリビニルナフタレン(屈折率nd1.682)、ポリ塩化ビニル(屈折率nd1.63)、ポリスチレン(屈折率nd1.59〜1.592)、ポリカーボネート(屈折率nd1.59)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率nd1.576)、ポリジアリルフタレート(屈折率nd1.572)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(屈折率nd1.57)、ポリベンジルメタクリレート(屈折率nd1.568)、ナイロン6(屈折率nd1.53)、ポリアクリロニトリル(屈折率nd1.52)、脂環式オレフィン樹脂(屈折率nd1.51〜1.54)、ポリエチレン(屈折率nd1.51)、ポリシクロヘキシルメタクリレート(屈折率nd1.5066)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(屈折率nd1.50)、ポリビニルアルコール(屈折率nd1.49〜1.53)、ポリメチルメタクリレート(屈折率nd1.4893)、トリアセチルセルロース(屈折率nd1.485)、ポリ−4−メチルペンテン−1(屈折率nd1.466)、ポリテトラフルオロエチレン(屈折率nd1.35〜1.38)などの単体や変性物および/または共重合物や混合物からなる有機材料を用いることができる(透明樹脂の屈折率については、例えば「ここまできた透明樹脂」、株式会社技術情報協会(発行者:志村幸雄)、2001年3月1日、p14−p27に記載されている)。ただし樹脂膜を形成する有機材料については、表面反射率を低減できることからできるだけ低屈折率材料を用いる方が好ましく、また成膜後の透明性や均一性、使用可能な溶媒への溶解性、塗布性なども考慮して適宜選択されるべきである。このような観点から、樹脂膜を形成する有機材料としては、溶剤溶解性の改良された非晶性のフッ素系樹脂や、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでいる有機材料を用いることが好ましい。
【0034】
湿式法で樹脂膜を形成する場合の有機材料の溶剤は、有機材料の溶解性、基材芳香族ポリアミドフィルムの耐薬品性、塗布膜の均一性、溶剤の乾燥性などにより適宜選択され特に限定されないが、トルエン、キシレン、N−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、アノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソウルブなどのエステル系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶剤、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、メチレンクロライド、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶剤、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフランなどの溶剤を、単独あるいは混合溶剤として用いることができる。
【0035】
樹脂膜の厚みについては、樹脂膜を形成する有機材料の屈折率や、反射率を低減する波長により適宜設計され特に限定されないが、厚みとして40〜300nmの範囲内が好ましく、50〜200nmの範囲内であることがより好ましい。樹脂膜の厚みが40nm未満であったり、300nmを超える場合は、反射防止効果が十分に発現しないことがある。
【0036】
上述の樹脂膜には、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、無機または有機の微粒子、充填剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0037】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの樹脂膜は、上記有機材料と溶剤を含有する塗液をフィルムの少なくとも片面に塗布することで形成できる。なお塗布方法については後述する。
【0038】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、下記式(1)で定義される黄色度(YI)が3%以下である。
【0039】
YI=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y ・・・(1)
(ただし、X、Y、ZはXYZ表色系における三刺激値である)
黄色度(YI)が3%を超えると、フィルムの黄色み度合いが高く無色透明性に劣るため、反射防止フィルムなどの光学用フィルムとして用いた場合に着色しているように見えることがある。フィルムの黄色度(YI)は、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。なおフィルムの黄色度(YI)は低いほど好ましいが、現実的には0.1%程度が下限であると考えられる。
【0040】
また本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、樹脂膜が配設された側から光線を入射させた場合の、波長550nmの光線に対する光線反射率が6%以下である。波長550nmにおける光線反射率が6%を超えると、表面反射による視認性が低下することにつながる。波長550nmの光線に対する光線反射率は、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。なお波長550nmの光線に対する光線反射率は低いほど好ましいが、現実的には1%が下限でると考えられる。
【0041】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フィルムの樹脂膜を配設された側から光線を入射させた場合の、波長400〜700nmの光線に対する光線透過率が85%以上であることが好ましい。波長400〜700nmの光線に対する光線透過率が85%未満であるとフィルムが着色しているように見えるため、無色透明性に劣ることを意味する。波長400〜700nmの光線に対する光線透過率は86%以上がより好ましく、87%以上がさらに好ましい。なお波長400〜700nmの光線に対する光線透過率は高いほど好ましいが、現実的には95%程度が上限であると考えられる。
【0042】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記芳香族ポリアミドを含む基材層と樹脂層との間にハードコート層(ハードコート膜)を設けると、耐擦傷性が向上するため好ましい。ハードコート膜を形成する有機材料としては、基材よりも硬度が高く透明であれば特に限定されないが、熱硬化性や紫外線硬化性の、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂などを用いることができる。また上述の樹脂には膜硬度を高めるための無機粒子を添加してもよい。ハードコート膜の硬度は、鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましい。またハードコート膜の厚みは、1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることが好ましい。特に本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムや、トリアセチルセルロースフィルムなど他のフィルムと比較して基材自体の硬度が高いため、ハードコート膜の厚みが薄くても耐擦傷性が高く有効である。
【0043】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、樹脂層として屈折率の異なる複数の層を積層した構成を採ることができる。この場合、低い屈折率を有する層と高い屈折率を有する層とを交互に積層した構成とすることにより反射率をより低減することができる。このように複数層の高屈折率膜と低屈折率膜を形成する場合には、上述の有機材料や溶剤を用いることができる。
【0044】
以下に本発明で用いる芳香族ポリアミドや樹脂膜を形成する例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であるが、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法で芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で、カルボン酸ジクロライドとジアミンの重合で合成される。
【0046】
カルボン酸ジクロライドとしては、テレフタル酸クロライド、2−クロロ−テレフタル酸クロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライドなどが挙げられるが、本発明の芳香族ポリアミドを得る場合には、2−クロロ−テレフタル酸ジクロライド、またはテレフタル酸ジクロライドを用いることが好ましい。
【0047】
単量体に酸ジクロライドとジアミンを用いて芳香族ポリアミド溶液を合成すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの周期律表I属かII属のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオンなどのアニオンからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなど有機の中和剤を使用することができる。
【0048】
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合には、ジアミンは1種類づつ添加して、添加したジアミンに対して10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させた後、他のジアミンを添加して、再び酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法や、すべてのジアミンを混合して添加した後、酸ジクロライドを添加して反応させる方法などを採ることができる。また2種類以上の酸ジクロライドを用いる場合も同様に、段階的な反応方法や、同時に添加する方法などを採ることができる。いずれの場合においても、全ジアミンと全酸クロライドのモル比は、95〜105:105〜95であることが好ましく、このモル比でない場合には、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難になる可能性がある。
【0049】
芳香族ポリアミドの製造に使用する非プロトン性有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチルラクトンなどの溶媒を挙げることができ、これらを単独または混合溶媒として用いることが望ましいが、さらにキシレンやトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒などを併用してもよい。またポリマーの溶解性を促進する目的で、上記溶媒には50重量%以下のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を添加してもよい。
【0050】
上記芳香族ポリアミドは、フィルムとした時の巻き取り性の改善などを目的として、無機や有機の突起形成剤を含有してもよい。このような無機や有機の突起形成剤としては、例えば、SiO2、TiO2、Al23、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、ゼオライト、その他の金属微粉末などの無機粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子などの有機粒子、さらに上記有機高分子で粒子の表面を被覆するなど特殊な処理を施した無機粒子が挙げられる。これらの突起形成剤を用いる場合には、無色であっても有色であっても構わないが、位相差フィルムとしては無色透明であることが望ましい。
【0051】
上記方法で得られた芳香族ポリアミドは、中和後のポリマー溶液をそのまま製膜原液として用いてもよいし、一旦単離したポリマーを硫酸などの無機溶媒や有機溶媒に再溶解したものを用いてもよい。
【0052】
次にフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行われる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0053】
乾湿式法で製膜する場合は、上記製膜原液を口金からドラムやエンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己支持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は、例えば室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で表面の平滑なドラム、エンドレスベルトを用いると、表面の平滑なフィルムが得られる。
【0054】
次いで、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。この湿式工程を通さずに剥離したゲルフィルムをそのまま延伸および熱処理するとポリマー内の塩が析出し、後の樹脂塗液の塗布工程で塗布斑が生じたり、粗大突起が多くなることがある。湿式工程の溶媒は一般的に水系であるが、水の他に少量の無機、有機の溶剤や無機塩などを含有していてもよい。なお溶媒温度は通常0〜100℃で使用される。更に必要に応じて、湿式工程中でフィルムを長手方向に延伸してもよい。
【0055】
ここで樹脂塗剤の塗布工程については、製膜工程中あるいは製膜後のいずれでもよいが、フィルム生産性の観点から、上記湿式工程と熱処理工程との間で塗布することが好ましい。例えば、上記ポリマー溶液を口金からキャストした後や支持体から剥離した後に樹脂塗液を塗布した場合にはフィルム表面が粗れ易く、また製膜後に塗布する場合には、再び塗液を乾燥、熱処理する工程が必要となるため経済的ではない。
【0056】
塗布方法としては、メタリングバー方式、ダイコート方式、グラビア方式、リバースロール方式、ドクターブレード方式などいずれの塗布方式であってもよい。ここで湿式工程を通したフィルムに塗布を行う場合は、塗布面の溶媒が極力取り除かれた状態で行うことが好ましい。フィルム表面に湿式工程の溶媒が付着した状態で塗布を行うと塗布斑が生じ、樹脂膜の均一性や厚みに悪影響を及ぼす可能性がある。このようなフィルム表面の溶媒を除去する方法は特に限定されないが、例えば、吸水性で多孔表面を有するロールとフィルムを接触させて溶媒を取り除く方法が好ましい。
【0057】
この後、乾燥、延伸、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
【0058】
塗液の乾燥、延伸、熱処理温度は、基材フィルムや樹脂膜の耐熱性、溶剤の沸点などで適宜調節されるが、50〜300℃の温度範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは100〜300℃である。乾燥温度が50℃未満の場合は十分な乾燥が行えず、300℃を超える場合には基材フィルムや樹脂膜が着色し、無色透明性が損なわれることがある。
【0059】
延伸倍率は面倍率で1.2〜4の範囲内、より好ましくは1.2〜3.5の範囲内とすることが、優れた機械物性のフィルムを安定して製膜できる点で好ましい。なお面倍率とは、延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。
【0060】
さらに延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが、フィルムの平面性を向上させるために有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0061】
上記したように、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などを用いればよいが、少なくとも片面に本発明の樹脂膜を設けることが必要である。
【0062】
また本発明の光学部材は、液晶ディスプレイ用電極基板フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、拡散シート、プリズムシートなどが挙げられ、上記方法で得られた樹脂膜を有する芳香族ポリアミドフィルムを他の光学部材と粘着剤を介して貼合したり、加工することで得られる。
【0063】
また本発明のディスプレイは、上記光学部材を、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)などのディスプレイに組み込むことで得られる。
【0064】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、耐熱性に優れ、薄膜でも強度に優れることから、外部応力や熱による寸法変化が極めて小さい、薄膜の反射防止フィルムあるいは無色透明性に優れたフィルム基板として光学部材に好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0066】
物性の測定、効果の評価は次の方法によった。
【0067】
(1)黄色度(YI)
JIS−Z8722に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000)を用いて、XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを測定し、次の式(1)より黄色度
(YI)を算出した。
【0068】
YI=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y ・・・(1)
(2)光線反射率
傾斜積分球付きの日立計測社製の分光光度計(UV測定器U−3410)を用いて、樹脂膜を配設した反対側の芳香族ポリアミドフィルム表面をスチールウールで粗面化し、黒マジックで塗りつぶして、樹脂膜配設面の各波長の光に対応する反射率を以下の条件で測定した。
【0069】
波長範囲:300〜800nm
測定速度:1,200nm/分
測定モード:反射
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
サンプル傾斜角:10°
(3)光線透過率
日立計測社製の分光光度計(UV測定器U−3410)を用いて、各波長の光に対応する透過率を以下の条件で測定した。
【0070】
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一距離の空気中を通過した光の強度である。
【0071】
波長範囲:300〜800nm
測定速度:1,200nm/分
測定モード:透過
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
(4)屈折率
JIS−K7105に従い、下記測定機を用いて測定した(測定範囲:〜1.87)。
【0072】
装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
光源:ナトリウムD線
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
マウント液:ヨウ化メチレン
(5)芳香族ポリアミドフィルムの引張りヤング率、破断伸度
オリエンテック(株)製のフィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、次の条件で測定した。
【0073】
試料サイズ:幅10mm、長さ150mm
チャック間距離50mm
引張速度:300mm/分
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。またフィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて伸度とした。
【0074】
(実施例1)
重合溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)に、芳香族ジアミン成分として100モル%に相当する2、2’−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル(以下、TFMBと略す)を溶解させ、これに酸クロリド成分として99モル%に相当する2−クロロテレフタル酸ジクロリド(以下、CTPCと略す)を添加し、2時間撹拌して重合を完了した。この溶液を炭酸リチウムで中和して、ポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
【0075】
次に日本シーダースサービス(株)製ベーカ式アプリケーターを用いて、芳香族ポリアミド溶液Aをガラス板上にキャストして、120℃のオーブンで7分間乾燥した。
【0076】
次に乾燥後のゲルフィルムを金枠に固定して、水浴に10分間浸し、脱溶媒および脱塩を行った。
【0077】
水抽出後のフィルムを取り出し、表面の水滴をガーゼで軽く拭き取った後、フィルムを金枠に固定したまま、280℃のオーブンで1分間熱処理して、未延伸の芳香族ポリアミドフィルムを得た。この未延伸フィルムの屈折率は1.64であり、引張りヤング率は9.1GPa、破断伸度は8%であった。
【0078】
次に樹脂膜形成材としてポリメチルメタクリレート(住友化学(株)製“スミペックス”MGSS、屈折率1.49)を用い、ポリメチルメタクリレート濃度が1.53重量%となるように塩化メチレン溶液に溶解し樹脂塗液Aを調製した。
【0079】
次に未延伸の芳香族ポリアミドフィルムをセロハンテープで厚紙に固定し、塗布厚み6μmのワイヤリングバーを用いて、樹脂塗液Aを芳香族ポリアミドフィルム表面に塗布した。
【0080】
次に塗布フィルムを80℃で1分間乾燥して樹脂膜を有する芳香族ポリアミドフィルムAを得た。
【0081】
この芳香族ポリアミドフィルムAの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0082】
(実施例2)
樹脂膜形成材としてトリアセチルセルロース(コニカミノルタ(株)製液晶偏光板用トリアセチルセルロースフィルムKC4UX2M、屈折率1.49)を用い、トリアセチルセルロース濃度が1.53重量%となるように塩化メチレン溶液に溶解した樹脂塗液Bを用いること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムBを得た。
【0083】
この芳香族ポリアミドフィルムBの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
樹脂膜形成材としてシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス(株)製“TOPAS”5013、屈折率1.53)を用い、シクロオレフィンコポリマー濃度が1.50重量%となるようにトルエン溶液に溶解した樹脂塗液Cを用いること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムCを得た。
【0085】
この芳香族ポリアミドフィルムCの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
樹脂膜形成材としてポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製“ユーピロン”FE2000、屈折率1.59)を用い、ポリカーボネート濃度が1.43重量%となるように塩化メチレン溶液に溶解した樹脂塗液Dを用いること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムDを得た。
【0087】
この芳香族ポリアミドフィルムDの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例5)
樹脂膜形成材としてポリスチレン(和光純薬工業(株)製スチレンポリマー(Mn=3,000)、屈折率1.59)を用い、ポリスチレン濃度が1.59重量%となるように塩化メチレン溶液に溶解した樹脂塗液Eを用いること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムEを得た。
【0089】
この芳香族ポリアミドフィルムEの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例6)
重合溶媒のNMPに、芳香族ジアミン成分として50モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、44’DDSと略す)と、50モル%に相当する3、3’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、33’DDSと略す)を溶解させ、これに酸クロリド成分として99モル%に相当するCTPCを添加し、2時間撹拌して重合を完了した。この溶液を炭酸リチウムで中和して、ポリマー濃度8重量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
【0091】
以下実施例1と同様にして未延伸の芳香族ポリアミドフィルムを得た。この未延伸の芳香族ポリアミドフィルムの屈折率は1.71であり、引張りヤング率は4.2GPa、破断伸度は70%であった。
【0092】
次に上記未延伸の芳香族ポリアミドフィルムの表面に、実施例1と同様にしてポリメチルメタクリレート樹脂膜を配設し、樹脂膜を有する芳香族ポリアミドフィルムFを得た。
【0093】
この芳香族ポリアミドフィルムFの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0094】
(比較例1)
ポリメチルメタクリレート樹脂膜を設けないこと以外は、実施例1と同様にして未延伸の芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0095】
この樹脂膜を設けていない芳香族ポリアミドフィルムの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0096】
(比較例2)
ポリメチルメタクリレート樹脂膜を設けないこと以外は、実施例6と同様にして未延伸の芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0097】
この樹脂膜を設けていない芳香族ポリアミドフィルムの、黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0098】
(比較例3)
重合溶媒のNMPに、芳香族ジアミン成分として85モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、15モル%に相当する4,4’ジアミノジフェニルエーテルを溶解させ、これに酸クロリド成分として98モル%に相当するCTPCを添加し、2時間撹拌して重合を完了した。この溶液を炭酸リチウムで中和して、ポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0099】
以下実施例1と同様にして未延伸の芳香族ポリアミドフィルムを得た。この未延伸フィルムの屈折率は1.83であり、ヤング率は10.2GPa、破断伸度は32%であった。
【0100】
この樹脂膜を設けていない芳香族ポリアミドフィルムの黄色度(YI)、光線反射率、光線透過率の評価結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、耐熱性、機械特性、可視光領域の光線透過性、反射防止性に優れ、薄膜の反射防止フィルムとして好適に用いることができ、偏光板や円偏光板などに粘着剤を介して該フィルムを貼合した光学部材は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)など様々なディスプレイに組み込まれ、外光反射による視認性の低下を抑制することができるが、その応用範囲がこれらディスプレイ分野に限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミドを含む層(基材層)の少なくとも片面に、基材層よりも低い屈折率を有する樹脂層を設けてなり、下記式(1)で定義される黄色度(YI)が3%以下であり、樹脂層を設けた側から波長550nmの光線を入射したときの光線反射率が6%以下である芳香族ポリアミドフィルム。
YI=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y ・・・(1)
(ただし、X、Y、ZはXYZ表色系における三刺激値である)
【請求項2】
樹脂層がフッ素系樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでいる、請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項3】
基材層と樹脂層との間にハードコート層を設けてなる、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項4】
樹脂層が、屈折率の異なる層が複数層配された構成を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項5】
屈折率の異なる層が、屈折率の高い層と低い層とが交互に配された構成を有している、請求項4に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルムを用いた光学部材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルムを用いたディスプレイ。

【公開番号】特開2006−51668(P2006−51668A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234376(P2004−234376)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】