芳香族ポリアミド短繊維集束体
【課題】ゴム補強に際し、親和性に優れかつ取扱性が良好で、ゴム中に均一に分散する芳香族ポリアミド短繊維集束体を提供すること。
【解決手段】芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする芳香族ポリアミド短繊維集束体。さらには、該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維であることや、該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであること、該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexであること、該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmであることが好ましい。また、該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物であることや、該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。
【解決手段】芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする芳香族ポリアミド短繊維集束体。さらには、該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維であることや、該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであること、該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexであること、該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmであることが好ましい。また、該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物であることや、該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミド短繊維集束体に関し、特にはゴム補強用に適した、集束性に優れ、かつ機械的強度と耐摩耗性を向上させることが可能な芳香族ポリアミド短繊維集束体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムベルトなどの力学特性を向上させるため、加硫可能なゴムに短繊維を混入することによって力学的特性を向上させることが行われてきた。強力的にはスチール短繊維などで補強することも試みられてはいるものの重量の増加が大きく、またスチール短繊維の比重がマトリックスゴムに比べ大きいために均一にゴム中に分散できない、などの欠点があった。そこで短繊維補強の分野では、長繊維補強と異なり有機繊維材料での補強が主流となっている。
【0003】
このような有機繊維としては、機械的特性、耐疲労性、耐熱性および化学的性質に優れている芳香族ポリアミド短繊維が、補強する目的には適していると考えられてきた。しかし、他の有機繊維であるセルロース、ビニロン、ナイロン、ポリエステルなどに比較し、芳香族ポリアミド繊維は表面が不活性であるためにゴムとの接着力が低く、またゴムに配合するときの分散性が悪い、という問題があった。またマルチフィラメントの状態での集束性が乏しいために、短繊維にカットする際に短繊維が飛散しやすく、かつファイバーボールを形成しやすいという問題が有った。いくら物性的には優れていても、以上ように、ゴムとの混練時に繊維を均一に投入できない点や、繊維の分散性が不良となるために、ゴム補強用の短繊維としては、芳香族ポリアミド繊維の優れた特性を充分に発揮することが出来なかったのである。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1ないし3では、エポキシ化合物やレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系の接着剤を短繊維の表面に付着させてゴムと短繊維間の親和性及び接着性を向上する方法が開示されている。しかし、RFL接着剤のような粘着性を有する接着剤処理では、集束体同士が接着しファイバーボールを形成してしまうという問題があった。またエポキシ化合物のような反応性の化合物を用いた場合でも、単繊維同士が強固に接着され、いずれにせよゴム中での短繊維の分散性は満足のいくものではなかった。
【0005】
また、RFL接着剤処理、エポキシ化合物等の反応性処理では、剤処理後の乾燥時に、接触するローラー等に剤の脱落が多く、これら脱落した剤の塊が処理繊維に再付着し、短繊維集束体の品位や物性が低下するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−146221号公報
【特許文献2】特開平7−268771号公報
【特許文献3】特開平6−184932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、芳香族ポリアミド短繊維が有する前記問題点に鑑み、ゴム補強に際し、親和性に優れかつ取扱性が良好で、ゴム中に均一に分散する芳香族ポリアミド短繊維集束体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする。
【0009】
さらには、該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維であることや、該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであること、該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexであること、該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmであることが好ましい。また、該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物であることや、該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム補強に際し、親和性に優れかつ取扱性が良好で、ゴム中に均一に分散する芳香族ポリアミド短繊維集束体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体とは、芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が集束した集合体である。集束体としては、芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであることが好ましい。そしてこのような集束体は、ゴム中に混練する際の剪断力等により均一に分散し、補強材として有効な働きを有するものである。
【0012】
ここで芳香族ポリアミド繊維とは、ポリアミドを構成する繰返し単位の80モル%以上好ましくは90モル%以上が、芳香族ホモポリアミド、または、芳香族コポリアミドからなる繊維である。ここで繊維となる芳香族基は同一、または相異なる芳香族基からなるものでも構わない。また、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基で置換されていても良い。
【0013】
また本発明の集束体としては、このような芳香族ポリアミド繊維の中でも特にパラ型芳香族ポリアミド繊維であることが、耐熱性及び強度に優れており好ましい。ここでパラ型芳香族ポリアミド繊維とは、芳香族ポリアミドの延鎖結合が共軸または平行で、かつ、反対方向に向いているポリアミドからなる繊維である。
【0014】
具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、テイジンアラミドB.V.製、「トワロン」)や、共重合型の芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(例えば、帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラ」)等が例示され、特に共重合型である後者は、複合材料とした時の機械的強度、特に衝撃強度が高く好ましい。
【0015】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体を構成する各繊維の単繊維繊度としては、0.1〜30dtexであることが好ましい。さらには0.3dtex〜25dtexの範囲であることが好ましい。細すぎる場合には、製糸技術上困難な点が多く、断糸や毛羽が発生するために、良好な品質の繊維を安定して生産することが困難になるだけでなく、コストも高くなる傾向にある。一方、繊度が大きすぎる場合は、繊維の機械的物性、特に一定繊度当たりの強度低下が大きくなり、また補強材として短繊維を用いた場合にも、成形体中に均一に繊維を分散させることが困難となる傾向にある。
【0016】
また、本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体の各短繊維の繊維長としては、0.5〜12mmであることが好ましく、さらには1〜10mmであることが好ましい。繊維長が短すぎる場合には、複数本の単繊維が集束した、実質的に円柱状の短繊維を得る事が困難となり取扱性、作業性が困難となる傾向にある。また逆に繊維長が長すぎる場合には、補強対象のマトリックスと混合する際に単繊維同士が絡み合い、分散不良となりやすい傾向にある。
【0017】
そして本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、上記のような芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する繊維集束剤(以後集束剤と略称する場合がある)が付着している。
【0018】
そして本発明に用いられる繊維集束剤中のラテックスは、ガラス転移温度が−25〜+30℃であることが必要である。ガラス転移温度が−25℃未満では、柔らかすぎて、充分な集束性が得られないばかりではなく、粘着性が出てくるためにカット時に繊維の塊を生じ、均一分散ができない。逆に+30℃以上では柔軟性が低下し、短繊維とするために特定長にカット切断する際に、繊維束がバラけてしまい、均一な短繊維集束体を得ることができなくなる。さらに好ましいラテックスのガラス転移温度としては、−10〜+25℃が好ましく、より好ましくは10〜20℃である。
【0019】
本発明に用いられるラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス等、またこれらの変性物が好ましくは挙げられる。これらのラテックスは、補強ゴムの種類に応じて単独または併用して使用することができる。
【0020】
中でも、本発明の芳香族ポリアミド短繊維に用いるラテックスとしては、繊維との界面接着性、短繊維の集束性、ゴム混練時での繊維分散性、繊維強化ゴム組成物の機械的特性及び耐摩耗特性の点で、スチレンとブタジエンの共重合物あるいは本化合物の酸変性物のラテックス最適である。特には変性スチレン−ブタジエンラテックスであることが好ましい。
【0021】
なおこのようなラテックスのガラス転移温度を調整するためには、スチレン等の硬い成分の比率を増やすことによりガラス転移温度を上げることができ、逆にブタジエン等の柔らかい二重結合を多く含む成分の比率を増やすことにより、ガラス転移温度を下げることが可能である。
【0022】
また、本発明にて用いられる集束剤としては、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。集束剤にポリアルキレングリコール化合物を併用することにより、集束剤付与後の乾燥時における接触ローラー等への剤の脱落を、有効に防ぐことが出来るようになる。なお、ここでポリアルキレングリコールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合または共重合して得られるものである。通常平均分子量としては2000以下が好ましく、さらには700〜1000のものが好ましい。特にはアルキレンオキシドとして、エチレンオキシドの共重合割合が高いものが好ましい。
【0023】
本発明の集束剤におけるラテックスとポリオキシアルキレングリコール化合物との配合比としては、重量比で30/70〜85/15であることが好ましく、さらには50/50〜70/30の範囲であることが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの配合比が集束剤全重量中の70%を越えると、繊維の集束性が低下するため好ましくない。一方、ポリオキシアルキレングリコールの配合比が集束剤全重量中の15%未満では、集束剤処理時の剤の脱落を抑制する効果は、ラテックス単独の場合と同程度にしか発揮されない傾向にある。
【0024】
また、本発明の繊維集束剤としてエステル化合物を併用した場合、集束剤付与後の剤の脱落を抑制する点と、ゴム中での繊維の分散性向上効果を更に高める効果が向上する。本発明にて好ましくは使用されるエステル化合物としては、主に分子量が350〜1000の二塩基酸ジエステルが好ましい。特にはジオクチルアゼレートが最適である。
【0025】
本発明におけるラテックスとエステル化合物からなる集束剤の配合比としては、重量比で、30/70〜85/15が好ましく、さらには50/50〜70/30の範囲であることが好ましい。エステル化合物の配合比が集束剤全重量中の70%を越えると、繊維の集束性が低下する傾向にある。またエステル化合物の配合比が集束剤全重量中の15%未満では、集束剤処理時の剤の脱落を抑制する効果は、ラテックス単独の場合と同程度にしか発揮されない傾向にある。
【0026】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、集束剤に平滑剤、乳化剤、制電剤、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、抗菌剤、顔料、シランカップリング剤、無機系微粒子などの機能剤を包含してもよく、また、繊維製造工程で付与する処理剤(油剤など)を除去することは必須とされない。
【0027】
芳香族ポリアミド短繊維に、上記のような集束剤を付与する方法としては、混合水溶液処理剤として該処理剤溶液を満たした液浴に浸漬する方法、走行する糸に集束剤水溶液を付与した駆動ローラーを接触させる方法等が挙げられる。当然ながら、繊維製造工程中で付与しても良い。また一旦ラテックスのみで処理し、繊維集束体に付着させた後に、スプレー等の方法により、ポリアルキレングリコール化合物、エステル化合物等を付与する事も可能である。
【0028】
集束剤を付与した芳香族ポリアミド繊維集束体の乾燥方法としては、加熱した金属ロール等に接触させる方法、非接触のヒーター中に通す方法、高温のスチームを付与する方法等が挙げられる。また、円柱形状の短繊維集束体を得やすくする為に、乾燥工程の前に円形のノズルガイドを通したり、円柱状の穴を有する加熱された金型に通しても良い。いずれの方法を用いる場合でも温度は120℃〜200℃、滞留時間0.05〜10分の条件で乾燥させるのが好ましいが、集束剤水溶液の付着量に応じて適宜調整した上で条件は設定することができる。
【0029】
また本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、繊維の強度を向上させるためにも、一旦長繊維として製造した後に短繊維にカットすることが好ましい。カットの方法としては、芳香族ポリアミド繊維集束体の切断が可能ないずれのカッターを用いてカットしてもよく、具体的にはロータリーカッター、ギロチンカッター等を用いてカットすればよい。カットの時期としては、繊維に集束剤を付与、乾燥した後であることが作業性や品質の均一化のためには好ましい。
【0030】
このような本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴム等と混練り工程等にて複合する事により、製造時の取扱性が良好で、組成物中で繊維が均一に分散・配置され、機械的強度及び耐摩耗性にも優れた芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を提供する事ができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は
下記の通りである。
【0032】
(1)ガラス転移温度
動的粘弾性を測定し、’’Eのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0033】
(2)集束剤付着率
メタノール/アセトン=1/1の混合溶媒中に一定重量の短繊維集束体を投入し、80℃で1時間ソックスレー抽出した後の重量から、下記式を用いて算出した。また、繊維用油剤が付着した糸に処理剤を付与する場合は、繊維用油剤の付着量を差し引いて算出した。
(集束剤付着率)=
{(抽出前の短繊維集束体重量)−(抽出後の短繊維重量)}/(抽出後の短繊維重量)×100(%)
【0034】
(3)集束性
集束剤を処理した繊度1670detx、短繊維本数1000本の長繊維マルチフィラメントに荷重1kgfを掛けた状態で切断し、フィラメント切断後の短繊維のバラケの状態を下記の基準で判定した。
◎:短繊維のバラケが全く無し
△:1〜29本の単繊維がバラケている
×:30本以上の単繊維がバラケている。
【0035】
(4)短繊維補強ゴムの一次降伏点引張強度
JIS−K6301に従い、3号ダンベル状試験片を500mm/min.の引張速度で測定し、一次降伏点荷重を試験片の断面積で割った値を一次降伏点引張強度とした。
【0036】
(5)耐摩耗性
短繊維補強ゴムの表面を金属で摩擦し、この摩耗量を短繊維補強のないゴム板との対比でインデックス表示し、耐摩耗性とした。具体的には、オリエンテック株式会社の摩擦摩耗試験機を用い、荷重5kgを負荷した状態で、周速50cm/分の速度でスチールリングを、ゴム板表面で回転摩耗させ、24時間後の摩耗量を重量変化から求め比較する方法を用いた。なお、ゴム中に均一に分散されていれば、短繊維補強ゴムの表面を金属で摩擦しても、その摩耗速度は遅くなり、単位時間当たりの摩耗量が小さくなるため、この値は、短繊維の補強効果を判定する一つの目安となる。
【0037】
[実施例1]
集束剤として、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)を、イオン交換水にて希釈し、固形分濃度を10重量%に調製した処理液を準備した。この処理液に、繊度1670dtex、単繊維本数1000本のコポリパラフェニレン−3.4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド長繊維マルチフィラメント(帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラT−200H」)を連続的に浸漬させ、次いで温度150℃の乾燥機に1分間通し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド長繊維マルチフィラメントを得た。次いでこの長繊維マルチフィラメントをギロチンカッターにて長さ3mmにカットし、芳香族ポリアミド短繊維集束体(単に短繊維集束体と呼ぶことがある)を得た。
【0038】
得られた短繊維集束体を表1に示すクロロプレンゴムを主成分とする未加硫ゴム中に、短繊維集束体を5〜10容量%となるように配合し、MS加圧型ニーダー(DS3−10MHHS守山製作所株式会社製)で3分間混練した。その後、短繊維が配向するよう適当な厚さにシート出しを行い、プレス加硫によりゴムシートを作り、短繊維の配向方向にサンプルを切り出し、性能評価に供した。
短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
[実施例2]
実施例1のガラス転移点温度12℃のラテックスを、ガラス転移点温度0℃の変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol SX1105A」)とした以外は、実施例1と同様に実施し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0041】
[実施例3]
実施例1のラテックス単独の処理液の代わりに、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)とポリエチレングリコールを主とするポリアルキレングリコールとを、固形分比率が67/33の重量比になるように、イオン交換水中それぞれ攪拌しながら投入し、固形分濃度が10重量%である処理液を調整した。その処理液を集束剤として用いた以外は実施例1と同様に行い、集束剤付着量4.0重量%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0042】
[実施例4]
実施例1のラテックス単独の処理液の代わりに、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)とジオクチルアゼレートとを、固形分比率が67/33の重量比になるように、またこれら2成分の固形分重量に対し10重量%の硬化ひまし油エーテルを、イオン交換水にそれぞれ攪拌しながら投入し、最終的に固形分濃度が10重量%となる処理液を調製した。その処理液を集束剤として用いた以外は実施例1と同様に行い、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0043】
[比較例1]
実施例1のガラス転移点温度12℃のラテックスを、ガラス転移点温度−55℃の変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX479」)とした以外は、実施例1と同様に実施し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0044】
[比較例2]
実施例1におけるラテックス含有処理液の浸漬・乾燥処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に実施し、長さ3mmの芳香族ポリアミド短繊維を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴムに添加することにより芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を得ることができ、機械的強度、耐摩耗性に優れ、搬送用ベルト、伝導ベルトなどの用途に好適に使用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミド短繊維集束体に関し、特にはゴム補強用に適した、集束性に優れ、かつ機械的強度と耐摩耗性を向上させることが可能な芳香族ポリアミド短繊維集束体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムベルトなどの力学特性を向上させるため、加硫可能なゴムに短繊維を混入することによって力学的特性を向上させることが行われてきた。強力的にはスチール短繊維などで補強することも試みられてはいるものの重量の増加が大きく、またスチール短繊維の比重がマトリックスゴムに比べ大きいために均一にゴム中に分散できない、などの欠点があった。そこで短繊維補強の分野では、長繊維補強と異なり有機繊維材料での補強が主流となっている。
【0003】
このような有機繊維としては、機械的特性、耐疲労性、耐熱性および化学的性質に優れている芳香族ポリアミド短繊維が、補強する目的には適していると考えられてきた。しかし、他の有機繊維であるセルロース、ビニロン、ナイロン、ポリエステルなどに比較し、芳香族ポリアミド繊維は表面が不活性であるためにゴムとの接着力が低く、またゴムに配合するときの分散性が悪い、という問題があった。またマルチフィラメントの状態での集束性が乏しいために、短繊維にカットする際に短繊維が飛散しやすく、かつファイバーボールを形成しやすいという問題が有った。いくら物性的には優れていても、以上ように、ゴムとの混練時に繊維を均一に投入できない点や、繊維の分散性が不良となるために、ゴム補強用の短繊維としては、芳香族ポリアミド繊維の優れた特性を充分に発揮することが出来なかったのである。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1ないし3では、エポキシ化合物やレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系の接着剤を短繊維の表面に付着させてゴムと短繊維間の親和性及び接着性を向上する方法が開示されている。しかし、RFL接着剤のような粘着性を有する接着剤処理では、集束体同士が接着しファイバーボールを形成してしまうという問題があった。またエポキシ化合物のような反応性の化合物を用いた場合でも、単繊維同士が強固に接着され、いずれにせよゴム中での短繊維の分散性は満足のいくものではなかった。
【0005】
また、RFL接着剤処理、エポキシ化合物等の反応性処理では、剤処理後の乾燥時に、接触するローラー等に剤の脱落が多く、これら脱落した剤の塊が処理繊維に再付着し、短繊維集束体の品位や物性が低下するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−146221号公報
【特許文献2】特開平7−268771号公報
【特許文献3】特開平6−184932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、芳香族ポリアミド短繊維が有する前記問題点に鑑み、ゴム補強に際し、親和性に優れかつ取扱性が良好で、ゴム中に均一に分散する芳香族ポリアミド短繊維集束体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする。
【0009】
さらには、該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維であることや、該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであること、該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexであること、該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmであることが好ましい。また、該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物であることや、該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム補強に際し、親和性に優れかつ取扱性が良好で、ゴム中に均一に分散する芳香族ポリアミド短繊維集束体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体とは、芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が集束した集合体である。集束体としては、芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものであることが好ましい。そしてこのような集束体は、ゴム中に混練する際の剪断力等により均一に分散し、補強材として有効な働きを有するものである。
【0012】
ここで芳香族ポリアミド繊維とは、ポリアミドを構成する繰返し単位の80モル%以上好ましくは90モル%以上が、芳香族ホモポリアミド、または、芳香族コポリアミドからなる繊維である。ここで繊維となる芳香族基は同一、または相異なる芳香族基からなるものでも構わない。また、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基で置換されていても良い。
【0013】
また本発明の集束体としては、このような芳香族ポリアミド繊維の中でも特にパラ型芳香族ポリアミド繊維であることが、耐熱性及び強度に優れており好ましい。ここでパラ型芳香族ポリアミド繊維とは、芳香族ポリアミドの延鎖結合が共軸または平行で、かつ、反対方向に向いているポリアミドからなる繊維である。
【0014】
具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、テイジンアラミドB.V.製、「トワロン」)や、共重合型の芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(例えば、帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラ」)等が例示され、特に共重合型である後者は、複合材料とした時の機械的強度、特に衝撃強度が高く好ましい。
【0015】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体を構成する各繊維の単繊維繊度としては、0.1〜30dtexであることが好ましい。さらには0.3dtex〜25dtexの範囲であることが好ましい。細すぎる場合には、製糸技術上困難な点が多く、断糸や毛羽が発生するために、良好な品質の繊維を安定して生産することが困難になるだけでなく、コストも高くなる傾向にある。一方、繊度が大きすぎる場合は、繊維の機械的物性、特に一定繊度当たりの強度低下が大きくなり、また補強材として短繊維を用いた場合にも、成形体中に均一に繊維を分散させることが困難となる傾向にある。
【0016】
また、本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体の各短繊維の繊維長としては、0.5〜12mmであることが好ましく、さらには1〜10mmであることが好ましい。繊維長が短すぎる場合には、複数本の単繊維が集束した、実質的に円柱状の短繊維を得る事が困難となり取扱性、作業性が困難となる傾向にある。また逆に繊維長が長すぎる場合には、補強対象のマトリックスと混合する際に単繊維同士が絡み合い、分散不良となりやすい傾向にある。
【0017】
そして本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、上記のような芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する繊維集束剤(以後集束剤と略称する場合がある)が付着している。
【0018】
そして本発明に用いられる繊維集束剤中のラテックスは、ガラス転移温度が−25〜+30℃であることが必要である。ガラス転移温度が−25℃未満では、柔らかすぎて、充分な集束性が得られないばかりではなく、粘着性が出てくるためにカット時に繊維の塊を生じ、均一分散ができない。逆に+30℃以上では柔軟性が低下し、短繊維とするために特定長にカット切断する際に、繊維束がバラけてしまい、均一な短繊維集束体を得ることができなくなる。さらに好ましいラテックスのガラス転移温度としては、−10〜+25℃が好ましく、より好ましくは10〜20℃である。
【0019】
本発明に用いられるラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス等、またこれらの変性物が好ましくは挙げられる。これらのラテックスは、補強ゴムの種類に応じて単独または併用して使用することができる。
【0020】
中でも、本発明の芳香族ポリアミド短繊維に用いるラテックスとしては、繊維との界面接着性、短繊維の集束性、ゴム混練時での繊維分散性、繊維強化ゴム組成物の機械的特性及び耐摩耗特性の点で、スチレンとブタジエンの共重合物あるいは本化合物の酸変性物のラテックス最適である。特には変性スチレン−ブタジエンラテックスであることが好ましい。
【0021】
なおこのようなラテックスのガラス転移温度を調整するためには、スチレン等の硬い成分の比率を増やすことによりガラス転移温度を上げることができ、逆にブタジエン等の柔らかい二重結合を多く含む成分の比率を増やすことにより、ガラス転移温度を下げることが可能である。
【0022】
また、本発明にて用いられる集束剤としては、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有することが好ましい。集束剤にポリアルキレングリコール化合物を併用することにより、集束剤付与後の乾燥時における接触ローラー等への剤の脱落を、有効に防ぐことが出来るようになる。なお、ここでポリアルキレングリコールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合または共重合して得られるものである。通常平均分子量としては2000以下が好ましく、さらには700〜1000のものが好ましい。特にはアルキレンオキシドとして、エチレンオキシドの共重合割合が高いものが好ましい。
【0023】
本発明の集束剤におけるラテックスとポリオキシアルキレングリコール化合物との配合比としては、重量比で30/70〜85/15であることが好ましく、さらには50/50〜70/30の範囲であることが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの配合比が集束剤全重量中の70%を越えると、繊維の集束性が低下するため好ましくない。一方、ポリオキシアルキレングリコールの配合比が集束剤全重量中の15%未満では、集束剤処理時の剤の脱落を抑制する効果は、ラテックス単独の場合と同程度にしか発揮されない傾向にある。
【0024】
また、本発明の繊維集束剤としてエステル化合物を併用した場合、集束剤付与後の剤の脱落を抑制する点と、ゴム中での繊維の分散性向上効果を更に高める効果が向上する。本発明にて好ましくは使用されるエステル化合物としては、主に分子量が350〜1000の二塩基酸ジエステルが好ましい。特にはジオクチルアゼレートが最適である。
【0025】
本発明におけるラテックスとエステル化合物からなる集束剤の配合比としては、重量比で、30/70〜85/15が好ましく、さらには50/50〜70/30の範囲であることが好ましい。エステル化合物の配合比が集束剤全重量中の70%を越えると、繊維の集束性が低下する傾向にある。またエステル化合物の配合比が集束剤全重量中の15%未満では、集束剤処理時の剤の脱落を抑制する効果は、ラテックス単独の場合と同程度にしか発揮されない傾向にある。
【0026】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、集束剤に平滑剤、乳化剤、制電剤、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、抗菌剤、顔料、シランカップリング剤、無機系微粒子などの機能剤を包含してもよく、また、繊維製造工程で付与する処理剤(油剤など)を除去することは必須とされない。
【0027】
芳香族ポリアミド短繊維に、上記のような集束剤を付与する方法としては、混合水溶液処理剤として該処理剤溶液を満たした液浴に浸漬する方法、走行する糸に集束剤水溶液を付与した駆動ローラーを接触させる方法等が挙げられる。当然ながら、繊維製造工程中で付与しても良い。また一旦ラテックスのみで処理し、繊維集束体に付着させた後に、スプレー等の方法により、ポリアルキレングリコール化合物、エステル化合物等を付与する事も可能である。
【0028】
集束剤を付与した芳香族ポリアミド繊維集束体の乾燥方法としては、加熱した金属ロール等に接触させる方法、非接触のヒーター中に通す方法、高温のスチームを付与する方法等が挙げられる。また、円柱形状の短繊維集束体を得やすくする為に、乾燥工程の前に円形のノズルガイドを通したり、円柱状の穴を有する加熱された金型に通しても良い。いずれの方法を用いる場合でも温度は120℃〜200℃、滞留時間0.05〜10分の条件で乾燥させるのが好ましいが、集束剤水溶液の付着量に応じて適宜調整した上で条件は設定することができる。
【0029】
また本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、繊維の強度を向上させるためにも、一旦長繊維として製造した後に短繊維にカットすることが好ましい。カットの方法としては、芳香族ポリアミド繊維集束体の切断が可能ないずれのカッターを用いてカットしてもよく、具体的にはロータリーカッター、ギロチンカッター等を用いてカットすればよい。カットの時期としては、繊維に集束剤を付与、乾燥した後であることが作業性や品質の均一化のためには好ましい。
【0030】
このような本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴム等と混練り工程等にて複合する事により、製造時の取扱性が良好で、組成物中で繊維が均一に分散・配置され、機械的強度及び耐摩耗性にも優れた芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を提供する事ができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は
下記の通りである。
【0032】
(1)ガラス転移温度
動的粘弾性を測定し、’’Eのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0033】
(2)集束剤付着率
メタノール/アセトン=1/1の混合溶媒中に一定重量の短繊維集束体を投入し、80℃で1時間ソックスレー抽出した後の重量から、下記式を用いて算出した。また、繊維用油剤が付着した糸に処理剤を付与する場合は、繊維用油剤の付着量を差し引いて算出した。
(集束剤付着率)=
{(抽出前の短繊維集束体重量)−(抽出後の短繊維重量)}/(抽出後の短繊維重量)×100(%)
【0034】
(3)集束性
集束剤を処理した繊度1670detx、短繊維本数1000本の長繊維マルチフィラメントに荷重1kgfを掛けた状態で切断し、フィラメント切断後の短繊維のバラケの状態を下記の基準で判定した。
◎:短繊維のバラケが全く無し
△:1〜29本の単繊維がバラケている
×:30本以上の単繊維がバラケている。
【0035】
(4)短繊維補強ゴムの一次降伏点引張強度
JIS−K6301に従い、3号ダンベル状試験片を500mm/min.の引張速度で測定し、一次降伏点荷重を試験片の断面積で割った値を一次降伏点引張強度とした。
【0036】
(5)耐摩耗性
短繊維補強ゴムの表面を金属で摩擦し、この摩耗量を短繊維補強のないゴム板との対比でインデックス表示し、耐摩耗性とした。具体的には、オリエンテック株式会社の摩擦摩耗試験機を用い、荷重5kgを負荷した状態で、周速50cm/分の速度でスチールリングを、ゴム板表面で回転摩耗させ、24時間後の摩耗量を重量変化から求め比較する方法を用いた。なお、ゴム中に均一に分散されていれば、短繊維補強ゴムの表面を金属で摩擦しても、その摩耗速度は遅くなり、単位時間当たりの摩耗量が小さくなるため、この値は、短繊維の補強効果を判定する一つの目安となる。
【0037】
[実施例1]
集束剤として、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)を、イオン交換水にて希釈し、固形分濃度を10重量%に調製した処理液を準備した。この処理液に、繊度1670dtex、単繊維本数1000本のコポリパラフェニレン−3.4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド長繊維マルチフィラメント(帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラT−200H」)を連続的に浸漬させ、次いで温度150℃の乾燥機に1分間通し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド長繊維マルチフィラメントを得た。次いでこの長繊維マルチフィラメントをギロチンカッターにて長さ3mmにカットし、芳香族ポリアミド短繊維集束体(単に短繊維集束体と呼ぶことがある)を得た。
【0038】
得られた短繊維集束体を表1に示すクロロプレンゴムを主成分とする未加硫ゴム中に、短繊維集束体を5〜10容量%となるように配合し、MS加圧型ニーダー(DS3−10MHHS守山製作所株式会社製)で3分間混練した。その後、短繊維が配向するよう適当な厚さにシート出しを行い、プレス加硫によりゴムシートを作り、短繊維の配向方向にサンプルを切り出し、性能評価に供した。
短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
[実施例2]
実施例1のガラス転移点温度12℃のラテックスを、ガラス転移点温度0℃の変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol SX1105A」)とした以外は、実施例1と同様に実施し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0041】
[実施例3]
実施例1のラテックス単独の処理液の代わりに、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)とポリエチレングリコールを主とするポリアルキレングリコールとを、固形分比率が67/33の重量比になるように、イオン交換水中それぞれ攪拌しながら投入し、固形分濃度が10重量%である処理液を調整した。その処理液を集束剤として用いた以外は実施例1と同様に行い、集束剤付着量4.0重量%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0042】
[実施例4]
実施例1のラテックス単独の処理液の代わりに、変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX430」、ガラス転移温度12℃)とジオクチルアゼレートとを、固形分比率が67/33の重量比になるように、またこれら2成分の固形分重量に対し10重量%の硬化ひまし油エーテルを、イオン交換水にそれぞれ攪拌しながら投入し、最終的に固形分濃度が10重量%となる処理液を調製した。その処理液を集束剤として用いた以外は実施例1と同様に行い、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0043】
[比較例1]
実施例1のガラス転移点温度12℃のラテックスを、ガラス転移点温度−55℃の変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン株式会社製「Nipol LX479」)とした以外は、実施例1と同様に実施し、集束剤付着量4.0%の芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0044】
[比較例2]
実施例1におけるラテックス含有処理液の浸漬・乾燥処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に実施し、長さ3mmの芳香族ポリアミド短繊維を得た。
この短繊維集束体の作成条件を表2に、また、諸物性を表3に併せて示した。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴムに添加することにより芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を得ることができ、機械的強度、耐摩耗性に優れ、搬送用ベルト、伝導ベルトなどの用途に好適に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項2】
該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものである請求項1記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項3】
該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物である請求項1または2記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項4】
該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維である請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項5】
該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexである請求項1〜4のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項6】
該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmである請求項1〜5のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項7】
該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項1】
芳香族ポリアミド短繊維からなる集束体の表面に、ラテックスを含有する集束剤が付着しており、該ラテックスのガラス転移温度が−25℃〜+30℃であって、集束剤の短繊維重量に対する付着量が1〜20重量%であることを特徴とする芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項2】
該集束体が芳香族ポリアミド短繊維を10本〜5万本集束したものである請求項1記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項3】
該ラテックスがスチレンとブタジエンの共重合物である請求項1または2記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項4】
該芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維である請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項5】
該芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度が0.1〜30dtexである請求項1〜4のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項6】
該芳香族ポリアミド短繊維の長さが0.5〜12mmである請求項1〜5のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項7】
該集束剤が、ポリアルキレングリコール化合物またはエステル化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【公開番号】特開2011−241504(P2011−241504A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114180(P2010−114180)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】
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