説明

芳香族ポリアミンの製造方法

【課題】工業的な実施が容易で、かつ、酸の中和処理を必要としない芳香族ポリアミンの製造方法を提供する。
【解決手段】アルデヒド化合物と、下記一般式(I)のアミンとの反応により、下記一般式(II)の芳香族ポリアミンを得る製造方法で、反応の触媒又は溶媒として、酸性基含有イオン液体を用いる。下記式中、A及びAは有機基等、qは0〜5の数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミンのうち、メチレンジアニリン(MDA)及びその高級類似体は、プラスチック製造用の原料であるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びその高級類似体(ポリメリックMDI等)の前駆体である。MDI及びその高級類似体は工業的に多量に製造され、ポリウレタンの製造のために使用される。MDIは一般に、スパンデックスや塗料などの非発泡用途で使用され、MDI及びその高級類似体の混合物は軟質及び硬質フォームなどの発泡用途で使用される。
【0003】
MDA及びその高級類似体は一般に、触媒の存在下にアニリン及びホルムアルデヒドから製造される。工業的な製造方法では、触媒として塩酸が使用されるが、この場合、反応後の精製処理において、塩酸を中和する必要がある。中和処理は、例えば、塩酸に対して等モル量以上の塩基を添加する方法によって行われる。そして、塩基としては、通常、安価な水酸化ナトリウムが使用されるが、このような中和処理を施した場合、中和後に大量の塩化ナトリウムが発生する。したがって、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の観点から、反応後に酸を中和処理する必要のない製造法の開発が望まれている。
【0004】
反応後に中和すべき酸が存在しないMDA及びその高級類似体の製造方法としては、例えば、塩酸の代わりに固体酸を触媒として用いる方法が提案されている(特許文献1〜7及び非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭58−83658号公報
【特許文献2】特表2003−522748号公報
【特許文献3】特表2003−529577号公報
【特許文献4】特開2004−300085号公報
【特許文献5】特表2004−532232号公報
【特許文献6】特表2005−521722号公報
【特許文献7】特開2006−83103号公報
【非特許文献1】Applied Catalysis A: General 221(2001)p318−319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような固体酸を用いる方法は、反応性が低かったり、触媒活性の持続が困難であるなど、工業的に実施するには種々の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、工業的な実施が容易で、かつ、酸の中和処理を必要としない芳香族ポリアミンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物と、下記一般式(I)で表されるアミンとの反応(以下「ポリアミン化反応」と呼ぶ場合がある。)により、下記一般式(II)で表される芳香族ポリアミンを得る製造方法であって、上記反応の触媒又は溶媒として、酸性基含有イオン液体を用いる製造方法を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
なお、式(I)及び(II)中、Aは有機基又は水素原子、Aは有機基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、qは0〜5の数を示す。
【0011】
酸性基含有イオン液体は、その酸性基の働きにより、アルデヒド化合物と一般式(I)で表されるアミンとを反応させるための酸触媒として機能し、また反応溶媒としても機能する。なお、酸性基含有イオン液体は系内でのリサイクルが容易である上、酸の中和処理を必ずしも必要とせず、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有利である。さらに、反応性が高く、かつ、反応性の低下が生じ難く、工業的に実施が容易である。
【0012】
また、本発明の製造方法によれば、分子内にスルホン酸基を有するイオン交換樹脂を固体酸として用いる方法と比較し、反応性を向上させることができる。さらに、上記イオン交換樹脂を用いた場合に生じる、樹脂の耐熱性の低下という問題が生じ難い。また、分子内にプロトン酸を有し反応促進に適した細孔部を持つゼオライト又は有機珪酸塩を固体酸として用いる方法と比較し、反応原料中の水分量や不純物量などに起因する触媒活性低下が生じ難いため、厳しい原料組成制限の必要がなく工業的に実施が容易である。
【0013】
酸性基含有イオン液体は、3価のホスフィノ基を有する化合物及びイミダゾール化合物から選ばれる極性化合物と、1,3−プロパンスルトン及び1,4−ブタンスルトンから選ばれるスルトン化合物との反応物である双性イオン化合物と、有機スルホン酸と、を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0014】
酸性基含有イオン液体として好適なものとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0015】
【化3】

【0016】
ここで、式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。
【0017】
酸性基含有イオン液体は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
ここで、式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示す。nは3又は4を示す。
【0020】
式(1)又は(2)で表される酸性基含有イオン液体は、高い触媒作用を有し、工業的な使用に有利である。また、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさという面でも有利である。
【0021】
本発明の製造方法においては、ポリアミン化反応を、上記アルデヒド化合物、一般式(I)で表されるアミン及び酸性基含有イオン液体を共存させて行うか、上記アルデヒド化合物と一般式(I)で表されるアミンの反応物と、酸性基含有イオン液体とを共存させて行うことができる。
【0022】
いずれの方法によっても、酸性基含有イオン液体は、触媒又は溶媒として機能し、所望の芳香族ポリアミンを得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法においては、ポリアミン化反応の後に、この反応で得られた反応物に疎水性の有機溶媒を添加することが好ましい。ポリアミン化反応で得られた反応物に疎水性の有機溶媒を添加した場合、酸性基含有イオン液体は疎水性の有機溶媒にはほとんど溶解せず、かつ、反応生成物である芳香族ポリアミンは疎水性の有機溶媒側に溶解するため、酸性基含有イオン液体と芳香族ポリアミンを容易に分離することができる。また、このように分離された酸性基含有イオン液体はリサイクルして再度用いることができる。
【0024】
本発明の製造方法においては、ポリアミン化反応の終了後、酸性基含有イオン液体を回収し、回収した当該液体を、上記アルデヒド化合物及び一般式(I)で表されるアミンの反応の、触媒又は溶媒の少なくとも一部として用いることができる。このように、酸性基含有イオン液体をリサイクルすれば、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、工業的な実施が容易で、かつ、酸の中和処理を必要としない芳香族ポリアミンの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、厳しい原料組成制限も必ずしも必要としない芳香族ポリアミンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明の製造方法は、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物と、下記一般式(I)で表されるアミンとの反応により、下記一般式(II)で表される芳香族ポリアミンを得る製造方法であって、反応の触媒又は溶媒として、酸性基含有イオン液体を用いる製造方法である。
【0028】
【化5】

【0029】
ここで、式(I)中、Aは有機基又は水素原子、Aは有機基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。Aである有機基としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、更には炭素数1〜3)のアルキル基、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、更には炭素数1〜3)のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基等が挙げられる。Aである有機基としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、更には炭素数1〜3)のアルキル基;炭素数6から12のアリール基;炭素数7〜15のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。Aであるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子が例示できる。なお、式(I)で表される化合物としては、Aが水素原子であり、Aが水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。式(I)で表される化合物として特に好ましいのは、アニリンである。
【0030】
【化6】

【0031】
式(II)中、A及びAの定義は、上記と同義であり、qは0〜5の数を示す。qとしては0〜4が好ましく、0〜3がより好ましい。なお、式(II)において好ましいA及びAは上記と同様である。式(I)で表される化合物としてアニリンが好ましいことから、式(II)で表される化合物としては、メチレンジアニリンが好ましい。
【0032】
式(II)で表される芳香族ポリアミンとしては、例えば、下記式(IIa)で表される芳香族ポリアミンが挙げられる。なお、式(IIa)中、A、A及びqの定義及び好適例は、上記と同義である。
【0033】
【化7】

【0034】
上述の製造方法においては、ポリアミン化反応を、ホルマリン法又はアミナール法で行うことが好ましい。
【0035】
ここで、ホルマリン法とは、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)、一般式(I)で表されるアミン及び酸性基含有イオン液体を共存させて行う方法であり、アミナール法とは、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)と一般式(I)で表されるアミンの反応物と酸性基含有イオン液体を共存させて行う方法である。
【0036】
ポリアミン化反応を、ホルマリン法で行う場合、その反応温度は60〜120℃(好ましくは65〜115℃、さらには70〜110℃)が好ましい。60℃より低い温度で加熱処理した場合は転位反応の完結に時間を要し、生産性が低下する傾向にある。また、反応は120℃で十分速やかに進行するため、120℃より高い温度で加熱処理しても、生産性は必ずしも大きくならない。なお、反応は、常圧から、上記反応温度での反応混合物の個々の蒸気圧に相当する圧力の範囲で行われる。反応は上記圧力の範囲内で十分速やかに進行するため、これ以上の圧力で加圧しても、生産性は必ずしも大きくならない。
【0037】
ポリアミン化反応を、アミナール法で行う場合、一般式(I)で表されるアミン2分子がアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)により縮合してアミナールが生じ、このアミナールが異性化して一般式(II)で表される芳香族ポリアミンが形成されると考えられる。
【0038】
アルデヒド化合物と一般式(I)で表されるアミンから形成されるアミナールを、酸性基含有イオン液体と共存させ、ポリアミン化反応を行う方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0039】
まず、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)に対して一般式(I)で表されるアミンをモル比で2倍以上、好ましくは3〜6倍程度の割合で混合し、0〜40℃において縮合させる。縮合によって得られた反応物を、水相と有機相を分離する。そして、その有機相を酸性基含有イオン液体と共存させて、縮合によって得られた反応物を異性化させ、一般式(II)で表される芳香族ポリアミンを得る。ここで、有機相中に含まれる水分量は低い方が好ましいが、通常は上記操作で得られる有機相をそのまま利用できる。
【0040】
なお、異性化させる場合の温度は、60〜120℃(好ましくは80〜115℃、さらには90〜110℃)が好ましい。60℃より低い温度で加熱処理した場合は転位反応の完結に時間を要し、生産性が低下する傾向にある。また、反応は120℃で十分速やかに進行するため、120℃より高い温度で加熱処理しても、生産性は必ずしも大きくならない。なお、反応は、常圧から、上記反応温度での反応混合物の個々の蒸気圧に相当する圧力の範囲で行われる。反応は上記圧力の範囲内で十分速やかに進行するため、これ以上の圧力で加圧しても、生産性は必ずしも大きくならない。
【0041】
酸性基含有イオン液体は、分子内に酸性基を有するイオン液体であり、かつ、上記アルデヒド化合物と一般式(I)で表されるアミンとの反応において、酸触媒として機能する。酸性基含有イオン液体は反応時に液状であるものであれば特に制限なく使用できるが、酸性度が強いものが好ましく、例えば、pH3以下であることが好ましい。
【0042】
酸性基は、酸性基含有イオン液体に酸性度を与えるものであれば特に制限なくできるが、酸性度の強さの観点からは、スルホン酸基及びカルボン酸基が好ましい。
【0043】
酸性基含有イオン液体は公知の方法で合成できる。例えば、「J.Am.Chem.,124,5962(2002)」に記載の、N置換イミダゾール化合物やトリフェニルホスフィンと1,3−プロパンスルトンを反応させ、次にトリフルオロメタンスルホン酸やパラトルエンスルホン酸などを反応させる方法によっても得ることができる。
【0044】
反応性の高さや、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさの観点から、酸性基含有イオン液体は、3価のホスフィノ基を有する化合物又はイミダゾール化合物と、1,3−プロパンスルトン又は1,4−ブタンスルトンと、を反応させ得られる双性イオン化合物と、有機スルホン酸と、を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0045】
イミダゾール化合物としては、例えば、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1−エチル−2,4−ジメチルイミダゾール及び1,2,4,5−テトラメチルイミダゾールが挙げられる。3価のホスフィノ基を有する化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン及びブチルジフェニルホスフィンが挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び10−カンファースルホン酸が挙げられる。
【0046】
反応性の高さや、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさの観点からは、酸性基含有イオン液体は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物であることも好ましい。
【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
ここで、式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。また、式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示す。nは3又は4を示す。
【0050】
炭素数が1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、2−ブチル基及び1−ブチル基が挙げられる。炭素数が1以上の有機基としては、例えば、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、4−メチルフェニル基、フェニル基及び10−カンファ基が挙げられる。
【0051】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート及び3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートが挙げられる。一般式(2)で表される化合物としては、例えば、トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートが挙げられる。
【0052】
また、酸性基含有イオン液体の使用量は、原料として使用する一般式(I)で表されるアミンの使用量に対して、モル比で、0.1〜1.0が好ましく、0.2〜0.8が更に好ましい。この使用量が0.1より小さいと、転移反応が遅くなる傾向にある。また、この使用量が1で十分速やかに反応が進行するため、1より大きい使用量で反応しても生産性向上効果は小さい。
【0053】
なお、上述の製造方法においては、ポリアミン化反応で得られた反応物、すなわち、一般式(II)で表される芳香族ポリアミンを含む反応物に、疎水性の有機溶媒を添加することが好ましい。
【0054】
酸性基含有イオン液体は疎水性の有機溶媒にはほとんど溶解せず、かつ、反応生成物である芳香族ポリアミンは疎水性の有機溶媒側に溶解するため、疎水性の有機溶媒を反応液に添加することで、酸性基含有イオン液体と反応生成物である芳香族ポリアミンを容易に分離することができる。
【0055】
また、上述の製造方法においては、ポリアミン化反応の終了後、酸性基含有イオン液体を回収し、回収した当該液体を、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)及び一般式(I)で表されるアミンの反応の、触媒又は溶媒の少なくとも一部として用いることもできる。上記酸性基含有イオン液体は、複数回回収した場合でも、反応速度の低下などが小さく、問題なく再利用できる。
【0056】
疎水性の有機溶媒は一般的に用いられる溶媒であればよく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロルトルエン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類及びメチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられるが、トルエン、キシレン、クロルトルエン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼンが特に好ましい。このような溶媒は、一般式(II)で表される芳香族ポリアミンに対して高い安定性を有する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(酸性基含有イオン液体の合成)
酸性基含有イオン液体として、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネート、を合成した。以下に、それぞれの合成方法を示す。
【0059】
<3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに16.8gの1−メチルイミダゾール(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下で、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、25gの1,3−プロパンスルトン(東京化成社製)を2時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエン(キシダ化学社製)を加えて60℃で3時間攪拌した後に固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。得られた固体を真空乾燥し中間生成物1を40g得た。
【0060】
100mLの三角フラスコに34gの中間生成物1と25.1gのトリフルオロメタンスルホン酸(キシダ化学社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で8時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを混合し、抽出分離し下相を分取した。この下相を真空乾燥し53gの目的化合物を得た。
【0061】
<トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに25.0gのトリフェニルホスフィン(東京化成社製)と11.6gの1,3−プロパンスルトンと70gのトルエンを秤量し、窒素雰囲気下、液温110℃で3時間攪拌した。次にろ過し固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し29.2gの中間生成物2を得た。
【0062】
100mLの三角フラスコに20gの中間生成物2と7.8gのトリフルオロメタンスルホン酸と20gのトルエンを秤量し、窒素雰囲気下、液温110℃で24時間激しく攪拌した。次に抽出分離し下相を得て真空乾燥し、目的化合物を26g得た。
【0063】
<3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに13.4gの1−ブチルイミダゾール(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、13.2gの1,3−プロパンスルトンを1時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエンを加えて110℃で3時間攪拌した。次にろ過し固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し、25.5gの中間生成物3を得た。
【0064】
100mLの三角フラスコに15gの中間生成物3と9.1gのトリフルオロメタンスルホン酸を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で7時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し、抽出分離し下相を得て、真空乾燥し23gの目的化合物を得た。
【0065】
<3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに7.2gの1−メチルイミダゾールを秤量し、窒素雰囲気下、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、12gの1,4−ブタンスルトン(東京化成社製)を1時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエンを加えて110℃で3時間攪拌した。次に固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し18.7gの中間生成物4を得た。
【0066】
100mLの三角フラスコに10gの中間生成物4と6.9gのトリフルオロメタンスルホン酸を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で7時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し抽出分離し下相を得た。この下相を真空乾燥し、15.3gの目的化合物を得た。
【0067】
<3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに5gの中間生成物1と4.7gのp−トルエンスルホン酸1水和物(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温100℃で6時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し抽出分離し下相を得た。この下相を真空乾燥し7.7gの目的化合物を得た。
【0068】
(N,N’−ジフェニルメチレンジアミン(アニリン及びホルマリンの縮合物)とアニリンの混合液の合成)
留出口を備えた1000mLの4つ口セパラブルフラスコに450gのアニリン(東ソー社製)を入れ、窒素雰囲気下、液温を5〜10℃に保ちながら80.5gの37%ホルマリン水溶液(日本ポリウレタン社製)を2時間かけて滴下した。次に液温を30℃として4時間攪拌した。これを分液ロートへ移液し、水相を取り除いた。次に50mLのイオン交換水を加え、分液ロートを軽く振り、静置後、水相を取り除いた。得られた有機相に硫酸ナトリウムを加え1時間放置後ろ過し、N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液(転位反応の原料)を作製した。当該混合液は、液体クロマトグラフィー及び水分含有量測定による計測を行った結果、N,N’−ジフェニルメチレンジアミン57.3重量%、アニリン41.1%、水分1%、不明成分0.6%を含有していた。この混合物を、転位反応(異性化反応)の原料として、以下の実施例1〜6及び比較例1〜3に使用した。
【0069】
<実施例1>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に分析した。分析は、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーを用いて行い、「MDA及びその高級類似体の核体分布」、「MDA中の異性体の存在比」及び「不完全な転位反応生成物の存在比」を計算した。分析項目の詳細を以下に示す。
【0070】
[分析項目の詳細]
MDA及びその高級類似体の核体分布(液体クロマトグラフィーによる測定);
二核体、三核体及び四核体以上の合計を100PA%としたときの、二核体、三核体及び四核体以上のPA%を求めた。なお、核体とは分子中のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有するMDAを示す。ここで、三核体及び四核体以上はMDAの高級類似体と称される。
【0071】
MDA中の異性体の存在比(ガスクロマトグラフィーによる測定);
「(2,2’−MDA+2,4’−MDA)/(2,2’−MDA+2,4’−MDA+4,4’−MDA)(ピーク面積比)×100」を、MDA中の異性体の存在比とした。
【0072】
不完全な転位反応生成物の存在比(ガスクロマトグラフィーによる測定);
「不完全な転位反応生成物/(2,2’−MDA+2,4’−MDA+4,4’−MDA)(ピーク面積比)×100」を、不完全な転位反応生成物の存在比とした。ここで、不完全な転位反応生成物の存在比が大きいことは、反応が不十分であることを表す。
【0073】
[反応2バッチ目から20バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加え、液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は上述と同様の方法で行った。
【0074】
<実施例2>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gのトリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0075】
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加え、液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0076】
<実施例3>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0077】
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0078】
<実施例4>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0080】
<実施例5>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0081】
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0082】
<実施例6>
[反応1バッチ目]
50mLの2つ口セパラブルフラスコに5gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと4.5gのアニリンを秤量した。次に液温100℃で3.5gの8.5%ホルマリン水溶液(日本ポリウレタン社製の37%ホルマリン水溶液をイオン交換水で希釈した)を5分間掛けて滴下した後、2時間攪拌した。次に20gのトルエンを加え、脱水しながら110℃で60分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相と下相(イオン液体相)を分取した。上相に4gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相及び下相(水相)を分取した。上相の溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0083】
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に4.5gのアニリンを加えた。次に液温100℃で3.5gの8.5%ホルマリン水溶液を5分間掛けて滴下した後、2時間攪拌した。次に20gのトルエンと前バッチで回収した下相(水相)を加え、脱水しながら110℃で60分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相と下相(イオン液体相)を分取した。上相に4gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相及び下相(水相)を分取した。上相の溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0084】
<比較例1>一般縮合例
25mLの2つ口セパラブルフラスコに10gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液と4.7gの35%塩酸水溶液(日本ポリウレタン社製)を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した。次に10gの24%水酸化ナトリウム水溶液(東ソー社製水酸化ナトリウムをイオン交換水で希釈した)を加え中和し抽出分離し上相を分取した。これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0085】
<比較例2>固体酸触媒
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに5gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液と0.1gの脱アルミニウム型Y型ゼオライトHSZ360HUAのペレット品(東ソー社製)を秤量した。次に液温100℃で7時間攪拌した。次に10gのトルエンを加え100℃で10分間攪拌しろ過し、ろ液に2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。なお、ろ過時に回収したゼオライトは次のバッチに用いた。
【0086】
[反応2バッチ目と3バッチ目]
前バッチで回収したゼオライトに5gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した次に液温100℃で7時間攪拌した。次に10gのトルエンを加え100℃で10分間攪拌しろ過し、ろ液に2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【0087】
<比較例3>分子内にスルホン酸基を有しないイオン液体
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液とを秤量した。次に液温100℃で7時間攪拌した後に、10gのトルエンを加えで10分間激しく攪拌した。10分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0088】
[反応2バッチ目から3バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で7時間攪拌した後に、10gのトルエンを加え10分間激しく攪拌した。10分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0089】
(評価結果)
実施例1〜6及び比較例1〜2について、上述の分析による結果を、表1〜4に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
実施例1〜5は出発原料にN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を用い、分子内にスルホン酸基(−SO3H)を有するイオン液体の存在下で反応を行った例であるが、反応バッチを10又は20回繰り返しても、問題なく反応が進行した。尚、反応2バッチ目まではイオン液体と塩を形成しトルエン中に抽出されなかった為、反応3バッチ目以降の分析値について表記する。
【0095】
比較例1は一般的なMDA及びその高級類似体の製造及び精製方法であるが、反応後の後処理工程で塩化ナトリウムが副生した。
【0096】
比較例2は良好な反応性能を示すとされるゼオライトを触媒として用いた例であるが、反応2バッチ目以降にMDA及びその高級類似体の生成率が低下した。
【0097】
比較例3は出発原料にN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を用い、分子内にスルホン酸基(−SO3H)を有しないイオン液体の存在下で反応を行った例であるが、MDA及びその高級類似体が全く得られなかった。
【0098】
以上より、実施例1〜5は、酸の中和処理を必要とせず、かつ、比較例1〜3に比較し工業的な実施が容易であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の芳香族ポリアミンの製造方法は、例えば、酸の中和処理及び原料組成の制限を必ずしも必要としないMDA及びその高級類似体の製造方法として採用できる。なお、該MDA及びその高級類似体はポリイソシアネートの原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物と、下記一般式(I)で表されるアミンとの反応により、下記一般式(II)で表される芳香族ポリアミンを得る製造方法であって、
前記反応の触媒又は溶媒として、酸性基含有イオン液体を用いる製造方法。
【化1】


【化2】


[式(I)及び(II)中、Aは有機基又は水素原子、Aは有機基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、qは0〜5の数を示す。]
【請求項2】
前記酸性基含有イオン液体は、
3価のホスフィノ基を有する化合物及びイミダゾール化合物から選ばれる極性化合物と、1,3−プロパンスルトン及び1,4−ブタンスルトンから選ばれるスルトン化合物との反応物である双性イオン化合物と、
有機スルホン酸と、を反応させて得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【化3】


[式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。]
【請求項4】
前記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【化4】


[式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示し、nは3又は4を示す。]
【請求項5】
前記反応を、
前記アルデヒド化合物、一般式(I)で表されるアミン及び前記酸性基含有イオン液体を共存させて行うか、
前記アルデヒド化合物と一般式(I)で表されるアミンの反応物と、前記酸性基含有イオン液体とを共存させて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応の後に、前記反応で得られた反応物に疎水性の有機溶媒を添加する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応の終了後、前記酸性基含有イオン液体を回収し、回収した当該液体を、前記アルデヒド化合物及び一般式(I)で表されるアミンの反応の、触媒又は溶媒の少なくとも一部として用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−298755(P2009−298755A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158365(P2008−158365)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】