説明

芳香族ポリエステルならびにそのフィルムおよび製造方法

【課題】ポリエステル樹脂組成物およびポリエステルフィルムを製造する際、その生産効率を低下させる事なく、ポリエステルフィルムからのオリゴマー溶出量を低減させたポリエステル樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからな芳香族ポリエステルであって、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とし、ホウ素化合物をホウ素元素量で、芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.001〜0.1質量%含有する芳香族ポリエステルおよび、重合工程でホウ素化合物を、得られる芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.005〜0.5質量%の範囲で添加する芳香族ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルならびにそれを用いたフィルムおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、固相重合のような特別な処理をしなくても、含有するオリゴマー量が極めて少ない1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルならびにそれを用いたフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表される芳香族ポリエステルフィルムは、優れた物理的、化学的性質を有する事から磁気テープ、電気絶縁、コンデンサー、写真、包装等の多岐にわたる用途に用いられている。
【0003】
これら多岐の用途にポリエステルフィルムが使用される際、乾熱高温下での加工あるいは溶媒との接触があるために、フィルム中からオリゴマーが析出されさまざまなトラブルの原因となる。例えば空調機や冷凍機用のモーターの電気絶縁材料として使用すると、モーター中の冷媒や潤滑剤によってオリゴマーが抽出され系内に析出する為、装置の円滑な運転ができなくなる。そのため析出オリゴマーの抑制は非常に重要であり、特開平4−276443(特許文献1)や特開平6−73214(特許文献2)ではポリエステルフィルムの表面に特定組成を有する塗膜層を設ける事が提案されている。また、特開平4−164627(特許文献3)では固相重合により重合中に生成する低分子量物や熱分解物の発生を抑制する方法が提案されている。しかしながら、前者の塗膜層を設ける方法は、別途塗膜層を設ける工程が必要で、また用途により塗膜層の組成を使い分けなければならないなどの問題があり、一方後者の方法は、別途固相重合工程が必要など、根本的な問題を解決するものではなかった。
【0004】
ところで、特開2000−17062(特許文献4)では、ポリエステルの中でもポリトリメチレンー2,6−ナフタレート樹脂を使用するとオリゴマー量が低減できることが提案されている。しかしながら、近年の市場の要求はますます厳しくなっており、更なるオリゴマーの低減が求められていた。また、ポリトリメチレンー2,6−ナフタレート樹脂など、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするものは、前述の固相重合によるオリゴマー低減をさらに組合せようとすると、結晶化が進みにくい特性を有することから、樹脂同士が融着しやすいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−276443号公報
【特許文献2】特開平6−73214号公報
【特許文献3】特開平4−164627号公報
【特許文献4】特開2000−17062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、生産効率を低下させることなく、オリゴマー量を低減させた芳香族ポリエステルおよびそれを用いたフィルムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、オリゴマーの低減された芳香族ポリエステルを、生産効率よく製造できる芳香族ポリエステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意研究した結果、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルを樹脂として選択し、かつその重合工程において、オルトホウ酸を極めて少量添加することで、その生産効率を低下させることなく、芳香族ポリエステルおよびそれを用いたフィルムのオリゴマー量を低減させうることを見出し、本発明に至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる芳香族ポリエステルであって、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とし、ホウ素化合物をホウ素元素量で、芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.001〜0.1質量%含有する芳香族ポリエステルが提供される。
【0009】
また、本発明の好ましい態様として、固有粘度が0.4〜0.75dl/gの範囲である芳香族ポリエステルおよび本発明の芳香族ポリエステルからなるフィルムも提供される。
【0010】
また、もう一つの本発明として、芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、1,3−プロパンジオールとをエステル化反応もしくはエステル交換反応させた後、重縮合反応させる芳香族ポリエステルの溶融重合方法において、重縮合反応が終了するまでの間に、ホウ素化合物を、得られる芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.005〜0.5質量%の範囲で添加する芳香族ポリエステルの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、芳香族ポリエステルおよびそれを用いたフィルムを、その生産効率を低下させる事なく、極めてオリゴマー量の低減されたものとすることができ、その工業的価値は極めて顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなり、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とする。グリコール成分が、1,3−プロパンジオール成分以外のものでは、オリゴマーの低減効果が小さい。
【0013】
また、本発明の芳香族ポリエステルの固有粘度は0.4〜0.75dl/gであることが好ましく、特に好ましい範囲は0.5〜0.70dl/gである。固有粘度が0.4dl/g未満の場合、該樹脂組成物を用いて製造されたフィルムの強度が劣りやすく、また含有するオリゴマー量が増加しやすい。一方、固有粘度が0.75dl/gを超えると、溶融重合方法だけでは到達が困難になり、別途固相重合などが必要となる。もちろん、よりオリゴマーを低減する必要がある場合は固相重合をさらに行っても良く、その場合も、本発明の芳香族ポリエステルを用いることで、よりオリゴマーの少ない芳香族ポリエステルを得られることは明らかであろう。
【0014】
ところで、本発明の芳香族ポリエステルは、重合工程で添加されたホウ素化合物を含んでいることが重要である。このホウ素化合物の存在によるオリゴマー低減の理由は、ホウ素化合物にはアルコール類と錯形成しやすいという特徴があり、オリゴマーとホウ素化合物が反応することで環状オリゴマー形成を抑制するためと考えられる。そのような観点から、ホウ素化合物としては、オルトホウ酸が好ましく、また芳香族ポリエステル中のホウ素化合物の含有量は、ホウ素元素量で、芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.001〜0.1質量%の範囲であることが必要であり、0.0012〜0.05質量%、さらに0.0015〜0.03質量%の範囲にあることが好ましい。含有量が下限未満の場合、オリゴマー低減効果が十分に発揮されず、他方含有量が上限を超える場合、重合工程の遅延が生じ、また、非晶性のポリマーになる傾向があり、かえってオリゴマーが増加したり、溶融熱安定性が損なわれたりする。
【0015】
このような含有するホウ素元素量は、重合工程で添加するホウ素化合物の添加量を、調整すればよい。具体的な芳香族ポリエステルの製造方法について、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを例に挙げて、以下説明する。
【0016】
まず、重合に用いる原料とその反応については、2,6−ナフタレンジカルボン酸と1,3−プロパンジオールとを直接エステル化反応させるか、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルの如き2,6−ナフタレンジカルボン酸の低級アルキルエステルと1,3−プロパンジオールとをエステル交換反応させるかなどして2,6−ナフタレンジカルボン酸のグリコールエステルもしくはその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段階の反応とを有する溶融重合によって製造される。この際、触媒等の添加剤は、それ自体公知のものを任意に使用できる。また、さらに重合度を高めるために、溶融重合に続いて、固相重合をおこなってもよい。
【0017】
そして、本発明の製造方法で重要な点は、重合工程で添加するホウ素化合物の添加量を、得られる芳香族ポリエステルの質量に対し、0.005〜0.5質量%の範囲とすること、好ましくは0.006〜0.25質量%、さらに好ましくは0.008〜0.20質量%とすることである。添加量が下限未満の場合、オリゴマー低減効果は十分に発揮されず、一方、添加量が上限を超える場合は重合遅延が生じ、また、非晶性のポリマーになる傾向があり、かえってオリゴマーが増加したりする。ホウ素化合物の添加時期は、重合工程中ならいつでも良く、エステル化反応もしくはエステル交換反応の反応前、反応途中および反応終了後、ならびに重縮合反応の反応前および反応途中のいずれでも良く、添加時期によって効果に差が出るものではない。
【0018】
本発明の芳香族ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸)、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸)、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、フェニレンジオキシジ酢酸、3,5−ジカルボキシメトキシベンゼンスルホン酸が挙げられ、これらの中でもベンゼンジカルボン酸またはナフタレンジカルボン酸が主たる芳香族ジカルボン酸成分であることが好ましい。特に好ましいのは、得られる芳香族ポリエステルおよびそれから得られるフィルムのオリゴマー量をより低減しやすいことから、芳香族ジカルボン酸成分の80モル%以上が、テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸であることが好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であることが好ましい。以上の芳香族ジカルボン酸成分は、原料として酸のまま用いてもよいし、エステル形成性誘導体の形で用いてもよい。エステル形成性誘導体としては、上記芳香族ジカルボン酸とメタノールやエタノールの如き低級アルコールとのエステルが一般的に使用されるが、エチレングリコールのようなグリコールとのエステルを使用しても良い。
【0019】
もちろん、本発明の芳香族ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸などのオキシカルボン酸を共重合成分として使用してもよい。
【0020】
また、本発明の芳香族ポリエステルを構成するグリコール成分は、主たるグリコール成分が1,3−プロパンジオールであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、それ以外のグリコール成分を、例えばグリコール成分のモル数基準として、20モル%以下、好ましくは15モル%以下の範囲で、共重合してもよい。具体的な共重合に用いるグリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、オクタメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、1,3−ビス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(βーヒドロキシエトキシ)ビスフェノールS、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどの芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子グリコールが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分以外の共重合成分として、本発明の芳香族ポリエステルが実質的に線状である範囲で、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で3官能以上のポリカルボン酸(トリメリット酸など)またはポリヒドロキシ化合物(ペンタエリスリトールなど)を共重合させてもよい。
【0021】
以上、本発明の芳香族ポリエステルを説明してきたが、本発明の芳香族ポリエステルは、実質的に分子鎖が線状であって、フィルム形成性、特に溶融状態によるフィルム形成性を有することが好ましく、本発明の効果の点から、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレン−2,6−ナフタレートが好ましく、特にポリトリメチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0022】
ところで、本発明の芳香族ポリエステルは、用いる用途の要求に応じて、例えば顔料、染料、酸化防止剤、光安定剤、遮光剤の如き添加剤や他の熱可塑性樹脂を含有させた樹脂組成物としてもよい。
【0023】
本発明の芳香族ポリエステルをフィルムへと成形加工する方法は、例えば芳香族ポリエステルもしくはそれに各種添加剤などを添加した樹脂組成物のチップ状物を、(Tc)〜(Tc+40)℃(Tcはポリエステルの昇温時の結晶化温度)の温度範囲で1〜3時間乾燥した後、融点(Tm)℃ないし(Tm+70)℃の温度で回転冷却ドラム上にシート状に押出して急冷し、例えば厚さ20〜500μの未延伸フィルムとし、ついで該未延伸フィルムを一軸方向(製膜方向または製膜方向および厚み方向に直交する方向(横方向))に(Tg−10)℃〜(Tg+70)℃の温度(但しTg;ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜5.0倍の倍率で延伸し、続いて上記延伸方向と直角方向に(Tg)℃〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜5.0倍の倍率で延伸することで二軸延伸フィルムをえることができる。延伸方法は逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれでもよい。更に得られたフィルムは(Tg+70)℃〜(Tm)℃の温度で熱固定することが好ましく、そのときの熱固定時間は例えば1〜30秒が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、本発明の芳香族ポリエステルおよびフィルムの特性は、以下の方法で測定・評価した。
【0025】
(1)固有粘度(チップ、フィルム)
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した。なお、単位はdl/gである。
【0026】
(2)オリゴマー量の定量(チップ、フィルム)
高速液体クロマトグラフィー(Waters社製アライアンス2695)にて分析した。
芳香族ポリエステルおよびそれから成形したフィルムを、それぞれ冷凍粉砕し、これらの試料10mgを5mgのHFIPに溶解しクロロホルム10mLにて希釈したものを測定サンプルとした。なおフィルムは粉砕前に純水中で数回振り洗いし、表面に析出したオリゴマーや付着した不純物を除去した。
カラムは日本分析工業社製JAI GELの1H/2Hを直列につないで使用し、移動相は、HEIPとクロロホルムを1:10の割合で混合したものを使用した。
そして、オリゴマー量は、芳香族ポリエステルを形成する繰り返し単位の2量体〜5量体の合計量を、分析した芳香族ポリエステルの質量で割った質量%として算出した。
【0027】
(3)ホウ素化合物の含有量
芳香族ポリエステルおよびそれを成形したフィルムのホウ素含有量は原子吸光法により測定した。
【0028】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部と1,3−プロパンジオール53部の混合物にテトラブチルチタネート0.014部を添加し、150℃から210℃に徐々に昇温しながら100分間エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、得られる芳香族ポリエステルに対して、0.1質量%となるようにオルトホウ酸を添加し、反応生成物を250℃まで昇温した後、0.2mmHg以下の高真空下で重縮合反応を行い、固有粘度0.55の芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルの特性を表1に示す。
【0029】
この芳香族ポリエステルのペレットを140℃で4時間乾燥後、押出し機ホッパーに供給し、溶融温度260℃で1mmのスリット状ダイを通して400μmに溶融押出しし、線状電極を用いて表面温度20℃の回転冷却ドラム上に密着固化した。次いで、この未延伸フィルムを75℃にて予熱し、低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒーター1本にて加熱し縦方向に3.0倍に延伸し、続いてこの一軸延伸フィルムをステンターに供給し105℃にて横方向に3.6倍に延伸し、これを150℃で3秒間熱固定処理し、厚み35μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0030】
[実施例2、比較例1および2]
オルトホウ酸の添加量を表1のとおり変更する以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた芳香族ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
【0031】
[実施例3]
テレフタル酸ジメチル100部と1,3−プロパンジオール53部の混合物にテトラブチルチタネート0.014部を添加し、150℃から210℃に徐々に昇温しながら150分間エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、得られる芳香族ポリエステルの質量に対して、0.1質量%となるようにオルトホウ酸を添加し、反応生成物を250℃まで昇温した後、0.2mmHg以下の高真空下で重縮合反応を行い、固有粘度0.69の芳香族ポリエステルを得た。また、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られた芳香族ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
【0032】
[実施例4、比較例3]
オルトホウ酸の添加量を表1のとおり変更する以外は実施例3と同様な操作を繰り返した。得られた芳香族ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
【0033】
[比較例4]
1,3−プロパンジオールをエチレングリコールに変更した以外は、実施例3と同様な操作を繰り返した。得られた芳香族ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、表1中の、G成分はグリコール成分、NDCは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、TAはテレフタル酸成分、C3Gはトリメチレングリコール成分、C2Gはエチレングリコール成分を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のポリエステル樹脂組成物およびポリエステルフィルムは、オリゴマー量が低減できることからフィルム製膜時の吐出部汚れを起こしにくく、清掃周期を長くすることが可能である。また、フィルム自体のオリゴマーを抑制できることから、例えば空調機や冷凍機用のモーターの電気絶縁材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからな芳香族ポリエステルであって、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とし、ホウ素化合物をホウ素元素量で、芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする芳香族ポリエステル。
【請求項2】
固有粘度が0.4〜0.75dl/gの範囲である請求項1記載の芳香族ポリエステル。
【請求項3】
請求項1記載の芳香族ポリエステルからなることを特徴とするフィルム。
【請求項4】
芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、1,3−プロパンジオールとをエステル化反応もしくはエステル交換反応させた後、重縮合反応させる芳香族ポリエステルの溶融重合方法において、重縮合反応が終了するまでの間に、ホウ素化合物を、得られる芳香族ポリエステルの質量を基準として、0.005〜0.5質量%の範囲で添加することを特徴とする芳香族ポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2011−127068(P2011−127068A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289112(P2009−289112)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】