説明

芳香族ポリエステルの製造方法

【課題】本発明の課題は、ボトルの透明性を損なうことなく、アセトアルデヒドの副生成を抑え、かつ、生産性の向上を達成することができる芳香族ポリエステル組成物およびその芳香族ポリエステル組成物の製造方法を提供することである。
【解決手段】上記課題は、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸ジエステルと、グリコール化合物を用いて触媒の存在下、溶融重縮合反応を行い芳香族ポリエステルを得た後、
該芳香族ポリエステルに親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートと、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の混合物を配合させる芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、該親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートの配合量を該芳香族ポリエステルに対して1.0〜100ppmとし、該アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の配合量を該芳香族ポリエステルに対して0.1〜100ppmとする芳香族ポリエステル組成物の製造方法により解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、風味の保持性・生産性に優れ、透明性も兼ね備えた、一般に飲料用ボトルに用いられる芳香族ポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを中心とするポリエステル製容器は、その優れた透明性、卓越した力学的物性、均衡のとれたガスバリヤ性及び優れた衛生性に着目され、醤油、ソース、食油、ジュース、ビール、炭酸飲料等の食品容器や洗剤、化粧品、医薬品等の容器に使用され、目覚しい展開がなされている。
【0003】
しかし、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルは、ポリエステルの溶融重合時に副生するホルムアルデヒド(以下FAと省略することがある。)やアセトアルデヒド(以下AAと省略することがある。)をペレット中に包含している。そして、このペレットがビンやフィルム等の容器に成形された際に残存するFAやAAに加え、成形加工時にもFAやAAが再生され、しかも容器材質中に封じ込まれる結果、このびんやフィルム容器に炭酸飲料、食用油、ジュース等の液体食品を充填すると、これら液体食品中にFA及びAAが溶出し、風味や臭いに影響を及ぼすという弊害が生じ、ポリエステル容器の大きな欠点になっている。飲料用金属缶に対しても、工程簡略化、衛生性、揮発性有機化合物排出量削減等の目的から、金属板にポリエステルフィルムを被覆し、製缶する方法が広まっている。この場合にも、十分にアルデヒド類の含有量の少ないフィルムを使用することが、内容物の風味や臭いの改善に必須である。
【0004】
アセトアルデヒドの抑制技術として、例えばアルカリ金属塩及び又はアルカリ土類金属塩の水溶液と接触させる方法が公開されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この技術は、アンチモン(以下Sbと省略すること有り)触媒には効果が薄いという問題があった。さらに、上記の方法で製造されたチップをボトルにした場合、ヘーズが悪化する傾向が認められる。
【0005】
また、ボトルを作成する方法として、二軸延伸法とダイレクトブロー法という2種が広く採用されている。飲料用PETボトルを製造するに当たっては、一般的に、予め射出成形により製造したプリフォームを、ブロー金型内で延伸ブロー成形するという二軸延伸法が採用されている。その中で、高い衛生性を求められる用途や、高熱状態の中身を充填する必要がある用途では、耐熱性ボトルが使用されている。例えば、果汁飲料やお茶などの飲料では、加熱殺菌した中身を、高温度(85℃)で充填・密封を行う事ため、ボトル容器は、特にその口部において十分な耐熱性が要求される。
【0006】
また、炭酸入りの乳性飲料や果汁飲料などの容器では、中身を詰めた状態で熱殺菌処理が必要である。炭酸入り飲料であるため耐圧性が必要となるが、中身を詰めてから熱殺菌を行うため、更に高い耐熱性・耐圧性が求められる。上記のような、耐熱性ボトルや耐熱圧性ボトルを生産するにあたっては、耐熱性や密封性を確保するため、口部を熱に耐えられるよう結晶化する必要がある。口部はキャプ密栓部分となるため高い寸法精度が要求される。そして、十分な寸法精度を得るためには、成形プリフォームの結晶性が極めて重要な因子となる。近年、コスト圧力が高まるにつれ、生産性が一層重視されるようになっている。耐熱性ボトルや耐熱圧性ボトルの生産性向上ためには、口部結晶化の速度を向上させることが、重要なポイントであり、そのための技術も開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
一方で、良好な透明性を得る観点から、また安全性の観点から、例えば、ゲルマニウム化合物やチタン化合物などの非重金属化合物を触媒として用いることが好ましい。しかし、例えば、ゲルマニウム化合物やチタン化合物を重合触媒として製造されたポリエチレンテレフタレートは、従来使用されてきた、アンチモン化合物よりも、結晶化温度が高く、結晶化は進みにくい。特に、チタン化合物の場合は、より結晶性が低いことがある。
【0008】
結晶化を促進する方法として、無機核剤を添加する方法、高級脂肪族化合物、ポリエーテル系化合物をブレンドまたは共重合する方法が従来技術として知られている(例えば、特許文献3〜7参照。)。しかし、これらの従来技術では、透明性の低下、熱安定性の低下、分解成分の発生による内容物のフレーバー性の低下の問題と食品の安全上の問題が懸念され、ボトル容器の素材としては、不十分なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3809131号公報
【特許文献2】特許第3605018号公報
【特許文献3】特開平08−302168号公報
【特許文献4】特開平09−183430号公報
【特許文献5】特開平09−071639号公報
【特許文献6】特開平09−151308号公報
【特許文献7】特開平09−194697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ボトルの透明性を損なうことなく、アセトアルデヒドの副生成を抑え、かつ、ボトル生産性の向上を達成することができる芳香族ポリエステル組成物およびその芳香族ポリエステル組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸ジエステルと、グリコール化合物を用いて触媒の存在下、溶融重縮合反応を行い芳香族ポリエステルを得た後、
該芳香族ポリエステルに親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートと、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の混合物を配合させる芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、該親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートの配合量を該芳香族ポリエステルに対して1.0〜100ppmとし、該アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の配合量を該芳香族ポリエステルに対して0.1〜100ppmとする芳香族ポリエステル組成物の製造方法によって解決することを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アセトアルデヒドの副生成を抑え、透明性を損なわず口部結晶化度の高いボトルを得ることができ、ボトルの生産性の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.グリコール化合物
本発明の製造方法において用いられるグリコール化合物としてはアルキレングリコールを挙げる事ができ、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール、トリメチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコールを挙げる事ができる。その中でも特に、エチレングリコールを主たる対象とする場合が好ましく、この時には例えば1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、へキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0014】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えばデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−フェニルエタノールなどを用いても良い。
【0015】
2.芳香族カルボン酸成分
本発明において用いられるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸(カルボキシル基の位置が4,4’−に限定されず、カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(同前)、ジフェノキシエタンジカルボン酸(同前)、ジフェニルスルホンジカルボン酸(同前)、ジフェニルケトンジカルボン酸(同前)、フランジカルボン酸(同前)等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。その中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸を主たる対象とする場合が好ましく、この時には、例えばイソフタル酸や、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸(シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸)、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等のごとき脂環族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等のごとき脂肪族ジカルボン酸等で示されるジカルボン酸成分の1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。また芳香族ジカルボン酸の代わりに、芳香族ジカルボン酸ジエステルを用いることもできる。これらのジエステル化合物とは上記の芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜6個の炭化水素基のジエステルを挙げることができ、より具体的にはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジペンチルエステル、ジヘキシルエステル、ジフェニルエステルを挙げることができる。
【0016】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸又は没食子酸等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えば安息香酸、トルイル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、о−ベンゾイル安息香酸などを用いても良い。他にも、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル等を少量使用しても良い。
【0017】
3.第三成分
また、共重合成分として、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪酸ジカルボン酸;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール;ナフタレンジオール、ビスフェノールA、レゾルシン、ヒドロキノンまたはこれらとエチレンオキサイドを反応させヒドロキシル基をヒドロキシエチル基に置換した化合物などの芳香族ジオール;p−オキシ安息香酸、m−オキシ安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、ヒドロアクリル酸、グリコール酸、3−オキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸などのオキシカルボン酸を例示することができる。
【0018】
これらの成分を重合して得られる本発明の芳香族ポリエステルとしては、ポリ(アルキレン芳香族ジカルボキシレートエステル)が好ましく、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)またはポリブチレンナフタレート(PBN)であり、最も好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートである。
【0019】
4.製造方法
4−1.溶融重縮合反応
上記芳香族ポリエステルは、従来公知の製造方法を用いて製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル若しくは低級ジアリールエステルとグリコール化合物を用いて、エステル交換触媒の存在下エステル交換反応を行い、得られた反応生成物を更に高温、高真空(減圧下)、溶融下で重縮合を進める製造方法である(エステル交換法)。または、芳香族ジカルボン酸とグリコール化合物をエステル化反応させ、得られた反応生成物を更に高温、高真空(減圧下)、溶融下で重縮合を進める製造方法である(エステル化法)。より好ましい態様であるPETの場合には以下の方法を採用することもできる。すなわち、テレフタル酸及びエチレングリコールを用いてエステル化反応を行い、又はテレフタル酸の低級アルキルエステル(例えばジメチルエステル)及びエチレングリコールを用いてエステル交換反応を行って、得られた反応生成物を更に重縮合反応させることによって製造できる。
【0020】
4−2.固相重合反応
また、溶融重縮合工程で溶融重合反応を行い得られたポリ(アルキレン芳香族ジカルボキシレートエステル)はペレット化されたのち、必要に応じて、さらなる分子量増加あるいは、アセトアルデヒドやオリゴマー類等不純物の低減の為、本発明における芳香族ポリエステル組成物の製造方法においては、固相重合反応を行う工程を含んでいてもよい。固相重合反応を行う工程により行う重縮合反応の実施方法に関しては、公知のいずれの方法を採用してもよい。もちろんPET、PENに限定されず、他の芳香族ポリエステルの場合であっても必要に応じて固相重合を行っても良い。
【0021】
4−3.触媒について
これらの製造方法により共重合芳香族ポリエステルを製造する際に、エステル交換触媒、重縮合触媒、及び必要であれば安定剤などを使用することが好ましい。これらの触媒、安定剤などは共重合芳香族ポリエステル、特に公知のポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの触媒、安定剤などとして知られているものを用いることができる。
【0022】
4−3−1.エステル交換触媒
例えば、エステル交換触媒としては、チタン化合物や、一般的なアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を挙げることができ、またマンガン化合物、スズ化合物を用いることもできる。これらのエステル交換触媒は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよいが、ボトル用のポリエステルを合成するにあたっては、チタン化合物を用いることが望ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒をエステル交換触媒として用いるには、チタン化合物と対比し大量に添加する必要があるが、ボトルに成形した際、ボトル胴部の結晶化度が高くなり、白化を引き起こす原因となり好ましくない。その点チタン化合物は、活性が極めて高いため、少量で済み、ボトル胴部の白化を避けることができる。
【0023】
4−3−2.重縮合触媒
重縮合触媒としてはゲルマニウム化合物、アンチモン化合物又はチタン化合物などを用いることができる。ゲルマニウム化合物では、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシドなどが例示される。アンチモン化合物では、三酸化アンチモン、又は酢酸アンチモンが例示される。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0024】
4−3−3.チタン化合物による重縮合触媒
本発明は、重合触媒として、チタン化合物を使用することも可能である。本発明において、用いられるチタン化合物は、触媒起因の異物低減の点で、ポリマー中に可溶なチタン化合物を使用することがより好ましい。チタン化合物としては、ポリエステル中に可溶であるという条件を満たせば特に限定されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタン、チタンテトラブトキシド及びそれらの縮合体、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、オクタアルキルトリチタネートなどが挙げられる。より好ましくは下記式(2)で表されるチタン化合物の中から選択することである。
【0025】
【化1】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一もしくは異なった、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示す。更にmが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR及びRは、それぞれ同一の基であっても異なった基であってもどちらでもよい。]
【0026】
ここでR〜Rを表す官能基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基が好ましく、mは1または2であることがより好ましい。すなわち上記式(2)で表されるチタン化合物としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサ−n−プロピルジチタネート、ヘキサイソプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネートまたはヘキサヘキシルジチタネートが好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。また上述のテトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物であっても好ましい。その芳香族多価カルボン酸またはその無水物としてはイソフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸を挙げることができる。
【0027】
また上記式(2)で表されるチタン化合物と下記式(1)で表されるリン化合物の反応生成物であることの好ましい一態様である。
【0028】
【化2】

[上記式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または8個以下の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
【0029】
ここで、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または8個以下の炭素原子を有するアルキル基であるが、具体的には水素原子、メチル基、エチル基メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基を挙げることができ、上記式(1)で表される化合物としては、モノメチルアシッドホスフェート(モノメチルホスフェート)、モノエチルアシッドホスフェート(モノエチルホスフェート)、モノ−n−プロピルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート(モノイソプロピルホスフェート)、モノブチルアシッドホスフェート(モノブチルホスフェート)、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート(モノオクチルホスフェート)、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。特に、上記式(2)で表されるチタン化合物と上記式(1)で表されるリン化合物の組合せとしてはチタン化合物はテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートのいずれかを選択し、リン化合物としてはモノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、モノオクチルホスフェートまたはジオクチルホスフェートのいずれかを選択する組合せが好ましい。
【0030】
更にこのような上記式(2)で表されるチタン化合物と上記式(1)で表されるリン化合物の反応生成物を得るには、これらのチタン化合物とリン化合物とをグリコールを媒体として加熱することにより製造することが好ましく、その場合反応生成物はグリコール中に懸濁物として得られる。ここでのグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを例示することができる。触媒の製造に用いるグリコールには、触媒を用いて製造するポリエステルと同じグリコールを使用することが好ましい。触媒を製造する際の反応温度は常温では、反応が不十分であったり、反応に過大に時間を要する問題があるため、通常50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は、1分〜4時間で完結させるのが好ましい。例えば、グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合50℃〜150℃が好ましく、ヘキサメチレングリコールを用いる場合100℃〜200℃が好ましい範囲であり、又、反応時間は、30分〜2時間がより好ましい範囲となる。反応温度が高すぎたり、時間が長すぎると、触媒の劣化が起こるため好ましくない。
【0031】
又、本触媒を製造するに当り、チタン化合物とリン化合物との配合割合(反応生成物中の割合)が、チタン原子に対するリン原子のモル比率として2.0以上2.2以下であることが必要である。2.0未満では、未反応チタン化合物の存在しポリマーの色相悪化などの問題が起こり、逆に2.2超過では、過剰な未反応のリン化合物の存在が多く存在し重合活性の低下が起きる。また「反応生成物」とはそのものが固体である場合だけでなく、反応生成物そのものが溶媒に溶解した溶液状態又は懸濁液状態である場合も含むものである。
【0032】
またこのようにして得られた触媒反応液には、時間経過に伴い触媒粒子が沈殿・凝結することを防ぐと言った安定性を増すために酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルイル酸等の有機カルボン酸化合物を添加しても良い。その濃度は触媒溶液に対して0.1〜5重量%が好ましい。なお、上記反応生成物を触媒として用いるに当っては、エステル交換反応初期、または重縮合反応初期に反応槽内に存在していればよい。このため触媒の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0033】
これらのポリエステル中に可溶なチタン化合物を触媒として用いる場合には、全ジカルボン酸成分に対し、チタン金属元素として2〜15ミリモル%含有する用に用いることが好ましい。該チタン金属元素が2ミリモル%未満ではポリエステルの生産性が低下し、目標の分子量のポリエステルが得られないことがある。また、該チタン金属元素が10ミリモル%を超える場合は熱安定性が逆に低下し、繊維製造時の分子量低下が大きくなり品質の優れたポリエステル繊維が得られないことがある。チタン金属元素量は全ジカルボン酸成分に対して2.5〜12ミリモル%の範囲が好ましく、3〜10ミリモル%の範囲が更に好ましい。
【0034】
その他のチタン元素を含む重合触媒として、アリールチタン酸エステル類、アルキルチタン酸エステル類若しくはアリールチタン酸エステル類と亜リン酸エステルとの反応生成物、アルキルチタン酸エステル類若しくはアリールチタン酸エステル類とトリメリット酸との反応生成物と亜リン酸エステル化合物からなる反応生成物、水酸化チタン、又はα−チタン酸などが例示される。
【0035】
4−4.アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物処理
本発明の製造方法においては、上記の方法で得られた溶融重縮合反応後の芳香族ポリエステルをアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物が0.1〜100ppmとなるように配合させることが必要である。より好ましくはそれらのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物に含まれるアルカリ金属原子またはアルカリ土塁金属原子の芳香族ポリエステル中の含有量として0.1〜100ppmとなるようにアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を配合させることである。含有量のより好ましい範囲は0.5〜20ppm、更に好ましい範囲は1.0〜10ppm、もっとも好ましい範囲は1.5〜5ppmである。
【0036】
本願芳香族ポリエステル組成物の製造方法においてこれらの化合物を配合させる手法としては、対象となる芳香族ポリエステルに対して、1)溶融重縮合終了後芳香族ポリエステルを溶融してこれらの化合物を直接固体として添加または溶媒等に溶解・分散して液体として添加・混練する方法、4)固体状の芳香族ポリエステルに対してこれらのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の溶液もしくは分散液を接触させる方法等によって配合させることができる。中でも、水や極性溶媒中にこれらのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を溶解させ、水溶液等として接触させる方法は処理が比較的容易であることや、微少量のこれらの化合物を均一に配合させることができるので、好ましい態様の1つである。その水溶液等の溶媒としてはそれらの化合物が適切な濃度で溶解・分散することができ、更に溶媒を乾燥させることが比較的容易な化合物であれば特段の制限はない。具体的には水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、THF、ジオキサンなどを挙げることができるが、溶解性・取り扱い易さの観点から水を選択することがより好ましい。
【0037】
本発明において使用されるアルカリ金属塩は、水溶性または上記溶媒に溶解・分散可能であれば特に制限されるものではないが、具体的には、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、水酸化リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、ステアリン酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、マロン酸リチウム、グルタル酸リチウム、アジピン酸リチウム、スベリン酸リチウム、アゼライン酸リチウム、セバシン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、イソフタル酸リチウム、イソフタル酸水素リチウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、マロン酸ナトリウム、グルタル酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、スベリン酸ナトリウム、アゼライン酸ナトリウム、セバシン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、イソフタル酸ナトリウム、イソフタル酸水素ナトリウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、カリウムミョウバン、水酸化カリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸カリウム、ステアリン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、マロン酸カリウム、グルタル酸カリウム、アジピン酸カリウム、スベリン酸カリウム、アゼライン酸カリウム、セバシン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、イソフタル酸カリウム、イソフタル酸水素カリウム、テレフタル酸カリウム、テレフタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重シュウ酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、フッ化ルビジウム、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、水酸化ルビジウム、ギ酸ルビジウム、酢酸ルビジウム、プロピオン酸ルビジウム、ステアリン酸ルビジウム、クエン酸三ルビジウム、クエン酸水素二ルビジウム、クエン酸二水素ルビジウム、グルコン酸ルビジウム、コハク酸ルビジウム、シュウ酸二ルビジウム、シュウ酸水素ルビジウム、フタル酸ルビジウム、イソフタル酸ルビジウム、テレフタル酸ルビジウム、リン酸三ルビジウム、リン酸水素二ルビジウム、リン酸二水素ルビジウム、亜硝酸ルビジウム、安息香酸ルビジウム、硝酸ルビジウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素ルビジウム、乳酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、硫酸水素ルビジウム、塩化セシウム、水酸化セシウム、酢酸セシウム、炭酸セシウム、安息香酸セシウム、硝酸セシウム、硫酸セシウムまたは乳酸セシウム等を例示することができる。これらの化合物群からは、単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。またその中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、酢酸リチウム、炭酸二リチウム又は炭酸水素リチウムが好ましく用いることができ、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩を、特に好ましくカリウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩及び/又は炭酸塩が好ましい。
【0038】
本発明において使用されるアルカリ土類金属塩は、上述する観点と同様な観点から選択できる範囲内であれば特に制限されるものではないが、具体的には塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム又は硫酸マグネシウム等を例示することができる。これらは単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。その中でも、好ましくはナトリウム原子またはカリウム原子を含む化合物、より詳細にはナトリウム塩またはカリウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩及び/又は炭酸塩が好ましい。またアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩を併用しても構わない。すなわち、上記の化合物群の中でもアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを用いることが最も好ましい。このような化合物を芳香族ポリエステル中に一定量含有させることにより、溶融重縮合、固相重合に重縮合触媒の失活処理を行うことができ、芳香族ポリエステル中のAA含有量を増加させる反応や、ヘーズを低下させる原因となる化合物の生成反応を抑制することができる。同時に芳香族ポリエステルとしての物性を損なうことが無いので、上述したように飲料用ボトル等の用途に好適に使用することができる。
【0039】
これらの金属化合物成分を接触させることによって、触媒を失活させることが可能となり、その結果成形時の熱劣化を抑えることができる。固形分として練り込むことも可能であるが、PES中に微量且つ均一に分散させるために、固形分として練り込むよりこれらの化合物の良溶媒で溶液にして接触させたほうが効果的である。
【0040】
4−5.結晶化促進処理
4−5−1.結晶化促進剤:成分(種類)
本発明の製造方法においては、上記の方法で得られた芳香族ポリエステルに、親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレート(以下、変性ポリエステルということがある。)を1.0〜100ppm配合させる必要がある。この化合物は芳香族ポリエステルの結晶化促進剤として作用し、この化合物を配合させることにより、加熱結晶化促進を図ることができ、口部結晶化時の生産性を高めることができる。結晶化促進剤としては、塩化ビニルやポリスチレン、テフロン(登録商標)など各種ポリマーを使用することが可能である。しかし、衛生性や透明性を確保するという観点から、特に食品用容器に適用する場合は、類似の組成の化合物、具体的には後述するような変性ポリエステルが好ましい。口部結晶化工程の生産性を高めることは、本発明で得られた芳香族ポリエステル組成物を用いて、背景技術の項において述べたような耐熱性ボトルを生産する際の生産性を高めるために重要である。
【0041】
この変性ポリエステルを製造するに当たっては、グリコール成分は、その主成分はヘキサメチレングリコールを用いる必要があるが、他の成分として例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。更に3価以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えばデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−フェニルエタノールなどを用いても良い。これらの中でも、直鎖状かつ炭素数が2個以上10個以下のグリコール化合物が主たる成分であることが好ましい。
【0042】
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、主成分としてはテレフタル酸(またはその誘導体)を用いる必要があるが、他の成分として具体的にはイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸等のごとき脂環族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等のごとき脂肪族ジカルボン酸等で示されるジカルボン酸成分の1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。更に3価以上の多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸又は没食子酸等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えば安息香酸、トルイル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、о−ベンゾイル安息香酸などを用いても良い。他にも、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル等を使用することができる。これらの中でも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が主たるジカルボン酸成分であることが好ましい。
【0043】
加熱結晶化促進として作用し、更に芳香族ポリエステルへの配合時での均一分散性などの観点を考慮すると、変性ポリエステルの主たる繰り返し単位は配合される芳香族ポリエステルと単位繰り返し単位が類似しており、且つ芳香族ポリエステルより加熱等による結晶化速度が速い繰り返し単位であることが好ましい。我々は種々の検討を繰り返した結果、その変性ポリエステルの主たる繰り返し単位としてヘキサメチレンテレフタレートが好ましいことを見出し、本発明の製造方法を発明するに至った。
【0044】
さらに、上記の変性ポリエステルは、水や極性溶媒への溶解性・分散性を得るために、親水基を有することが必要であり、具体的には変性ポリエステルの主鎖を構成するアリール基またはアルキル基に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基を有することが挙げられる。これらの中でも変性ポリエステルの製造が容易であり、上記目的を達成することが容易である点から変性ポリエステルがアリールスルホン酸塩基を含むポリヘキサメチレンテレフタレートであることが好ましく、より好ましくは変性ポリエステルが、そのアリールスルホン酸塩基を含む化合物が共重合されたポリヘキサメチレンテレフタレートであることである。より具体的には変性ポリエステルには、スルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分あたり1.0〜10.0mol%、さらに3.0〜5.0mol%を共重合成分として含有することが好ましい。具体的には、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。
【0045】
上述の変性ポリエステルは、芳香族ポリエステルに対し、1.0〜100ppm、好ましくは2.0〜90ppm、更に好ましくは5.0〜80ppmの割合で配合される。1.0ppm未満では結晶性の向上効果がなく、100ppmを超えるとチップの乾燥時にチップ同士の融着が発生したり、成形時にチップの落下不良が発生したりして成形の安定性が阻害される。
【0046】
4−5−2.結晶化促進剤:配合方法
上記の変性ポリエステルは、ポリエステルに対し、0.05wt%〜2.0wt%の濃度で含有する水分散体をポリエステルのチップに付着させることにより配合することが好ましい。変性ポリエステルを、水分散体の状態で配合せず、例えば、粉体ブレンドで配合することも可能であるが、不均一な配合となり、結晶化の促進効果を安定して得ることが困難な場合がある。
【0047】
変性ポリエステルの水分散体を用いる場合、その濃度は、通常0.05〜2.0wt%であるが、好ましくは0.1〜1.0wt%である。0.1wt%未満であると適正量をポリエステルチップに付着させることが困難であり、また処理後の乾燥で極限粘度数が大きく低下することがあり好ましくない。2.0wt%を超える場合、溶液をポリエステルチップに均一に付着させることが困難であり好ましくない。ただし、上記好適範囲は、設備により対応することが可能であり、必ずしも上記範囲に限定されるわけではない。
【0048】
なお、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物と、変性ポリエステルを混合物として芳香族ポリエステルに対して配合させることによって、芳香族ポリエステルを溶融成形して得られる飲料ボトル等のポリエステル成形品におけるヘーズの悪化を抑制する事ができる。より好ましくは双方の化合物を一つの溶液中で混合して芳香族ポリエステルと接触処理を行うことで、ポリエステル成形品のヘーズの悪化を抑制することが可能となる。また双方のアルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物と、変性ポリエステルを混合し、一つの溶液として処理する際には一の容器内で、これら双方の化合物を含む溶液・分散液を調製して、この溶液・分散液を芳香族ポリエステルと接触させても良い。
【0049】
この化合物(変性ポリエステル)は芳香族ポリエステルの結晶化促進剤として作用し、この化合物を配合させることにより、加熱結晶化促進を図ることができ、ボトルなどの成形品において口部結晶化工程時の生産性を高めることができる。換言すると、短時間の加熱処理により十分な結晶化処理が可能となる。結晶化促進剤としては、塩化ビニルやポリスチレン、テフロン(登録商標)など各種ポリマーを使用することが可能である。しかし、衛生性や透明性を確保するという観点から、特に食品用容器に適用する場合は、上述した変性ポリエステルが好ましい。口部結晶化工程の生産性を高めることは、本発明で得られた芳香族ポリエステル組成物を用いて、背景技術の項において述べたような耐熱性ボトルを生産する際の生産性を高めるために重要である。
【0050】
4−6.安定剤
重縮合反応は、必要に応じて安定剤の共存下に実施することができる。安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル及びリン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0051】
安定剤の添加量は、全重合原料に対する安定剤中のリン元素の重量として、通常5.0〜1000ppm、好ましくは10〜500ppmである。5.0ppm以下であれば、たとえば、再溶融し、成形する際の熱安定性効果に乏しく、副生成物の発生量が増加や、色相が悪化する。1000ppm以上であれば、リン元素による分解反応のため、逆に熱安定性が悪化するなどの問題が生じる。
【0052】
4−7.その他の添加剤
必要に応じて他の添加剤、例えば、整色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびその化合物から選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。これらのエステル交換触媒、重縮合触媒、安定剤および添加剤は、前記のようなエステル化工程において供給することもできるし、重縮合反応工程に供給することもできる。
【0053】
5.ポリエステルの成形
本発明の製造方法により得られた芳香族ポリエステル組成物は、種々の成形体を製造することができる。たとえば、ボトルなどの中空成形体を成形するには、まず乾燥工程を経た芳香族ポリエステル組成物を射出成形機などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形する。この中空成形体用プリフォームのホルムアルデヒド含有率は、通常1.0ppm以下、好ましくは0.5ppm以下であり、アセトアルデヒド含有率は、通常30.0ppm以下、好ましくは15ppm以下である。次に、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形して中空成形体を成形する。この中空成形体のホルムアルデヒド含有率は、通常1.0ppm以下、好ましくは0.5ppm以下であり、アセトアルデヒド含有率は、通常10.0ppm以下、好ましくは7.5ppm以下、より好ましくは6.0ppm以下である。もちろん成形体とは中空成形体用プリフォームに限定される事はなく、フィルム、シート、繊維、角柱、平板、チップ等も含まれる。
【0054】
本発明の方法により製造された中空成形体用プリフォームは、該中空成形体用プリフォームを形成するポリエステル中アセトアルデヒド含有率が極めて低いため、飲料充填用容器形成用プリフォーム材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により求めた。
【0056】
1)固有粘度数(IV)
固有粘度数は、チップまたはプリフォームのボトル口部(口栓部と同義である。)天面に相当する部分から切り出した試料を一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
【0057】
2)金属含有濃度分析
ポリエステル中の触媒金属濃度は、粒状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。
【0058】
3)ボトルヘーズ
成形したポリエステルボトル胴部より50mm×50mmの大きさに切り出した試料(330μm厚み)について、日本電色工業製Color and color difference meter MODEL1001DPにて測定した。
【0059】
4)チップ密度・結晶化度
日本工業規格、JIS−L−1013(2004)に基づいて、密度が1.288〜1.450g/cm3の範囲内になるように調整した硝酸カルシウム水溶液を使用し、密度勾配管法により密度を測定し、下式を用い結晶化度に換算した。
結晶化度=(0.7491−1/密度)/0.06178
【0060】
5)アセトアルデヒド含有量測定
ポリエステル中のアセトアルデヒド(以下、AAと略記することがある。)含有量は、サンプルを凍結粉砕しバイアル瓶に仕込み、島津GC−14Aにて測定した。カラムは、ボラッパクQ80/100を充填したインサート用ガラスカラムを、キャリアーガスは窒素を用いた。
【0061】
6)DSC測定
得られたポリエステルチップを示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定した。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。得られたサーモグラムから昇温結晶化温度(Tci)を算出した。
【0062】
[実施例1]
攪拌機、窒素流通配管及び加熱装置を備えた触媒調製槽中にエチレングリコール21重量部を入れて混合攪拌した中に、酢酸0.023重量部、チタンテトラブトキシド0.162重量部を徐々に添加した。触媒調整槽を50℃で2時間保持し透明なチタン化合物のエチレングリコール溶液を得た。以下、この溶液を「TBT/EG溶液」と称する。このTBT/EG溶液中のチタン濃度を、蛍光X線を用い測定したところ、チタン含有量は1.0重量%であった。
【0063】
更に、別の攪拌機、窒素流通配管及び加熱装置を備えた触媒調製槽中にエチレングレコール17.57重量部を入れて攪拌しながら120℃まで加熱し、モノ−n−ブチルホスフェート0.147重量部を添加した。内容物を攪拌しながら加熱混合して溶解した。その触媒調整槽へ、先に準備したTBT/EG溶液全量を徐々に添加した。その後、120℃の温度で1時間攪拌保持し、チタン化合物とリン化合物の反応を完結させた。その反応物は白濁状態で微細な析出物として存在した。以下、この溶液を「TBMBP触媒液」と称する。この溶液の一部から、溶液中の微細な析出物を分離・精製を行い、各種の分析を行った結果、この微細な析出物は一般式(I)で表される化合物であってRがノルマルブチル基である化合物であることを確認した。
【0064】
単位時間当たり平均450質量部のエチレンテレフタレートオリゴマーが滞留する完全混合反応器内に、攪拌下、窒素雰囲気下で274.5℃、常圧下に維持された条件下に、単位時間当たり358質量部の高純度テレフタル酸と単位時間当たり190質量部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続して供給した。エステル化反応で発生する水とエチレングリコールを反応器外に留去しながら、反応器内の理論滞留時間が4時間でエステル化反応を完結させた。この時のエステル化反応で発生した水量から計算したエステル化率は98%以上で、生成したエチレンテレフタレートオリゴマーの重合度は、約5〜9であった。
【0065】
このエステル化反応で得られたエチレンテレフタレートオリゴマー450質量部を順次、重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、参考例1で調製したTBMBP触媒液を単位時間当たり4質量部投入した。重縮合反応槽内の反応温度を276.5℃、反応圧力を60Paに保ち、重縮合反応で発生する水、エチレングリコールを重縮合反応槽外に除去しながら溶融状態で重縮合反応を行った。この時の重縮合反応槽内の滞留時間は、180分であった。その後、重縮合反応槽内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、水で冷却、次いで切断して、大きさが約3mm程度の粒状ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリエチレンテレフタレート(溶融重縮合ポリエチレンテレフタレート)のIVは0.492dL/gであった。
この溶融重縮合ポリエチレンテレフタレートを窒素流通下、160℃で5時間結晶化及び乾燥させた。続いてタンブラー式固相重縮合装置に結晶化したポリエチレンテレフタレートを投入して0.13kPaの減圧下、225℃で27時間固相重縮合反応を行った。
【0066】
結晶化促進剤として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを共重合したポリヘキサメチレンテレフタレート0.30wt%(水分散体状態として購入)、酢酸カリウム0.20wt%とを含む水溶液を用意した。この水溶液を、酸成分に対し重縮合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに0.50gを付着させた。
次いで、上記処理を施したポリエチレンテレフタレート5kgを日精樹脂製、成形機FN2000を用い、280℃の成形温度で、プリフォームを得た。その後、このプリフォームを、フロンティア製、成形機FDB−1Bにてボトルにブロー成形した。ポリエチレンテレフタレートの製造条件、ボトルプリフォームおよびボトルの評価結果を表1に示した。
【0067】
[実施例2]
結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレートの濃度を0.61wt%にした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0068】
[実施例3]
結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレートの濃度を1.52wt%にした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0069】
[比較例1]
結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレートと酢酸カリウムを使用しなかった以外は、実施例1と同様に実施した。
【0070】
[比較例2]
IVが異なるポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、比較例1と同様に実施した。
【0071】
[比較例3]
酢酸カリウム0.20wt%水溶液を、酸成分に対し重縮合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに0.75g付着させた以外、比較例2と同様に実施した。
【0072】
[比較例4]
酢酸カリウム0.20wt%水溶液を、酸成分に対し重縮合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに1.50g付着させた以外は、比較例2と同様に実施した。
【0073】
[比較例5]
酢酸カリウム0.20wt%とを含む水溶液を、酸成分に対し重縮合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに0.50gを付着させた以外は、比較例1と同様に実施した。
【0074】
[比較例6]
酢酸カリウム0.20wt%水溶液を、酸成分に対し重縮合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに0.50g付着させ、乾燥した。その後、結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレート0.30wt%を含む水溶液を、酸成分に対し重合触媒としてのチタン原子4mmol%含むポリエチレンテレフタレート100gあたりに0.50gを付着させ、乾燥した。
次いで、上記処理を施したポリエチレンテレフタレート5kgを日精樹脂製、成形機FN2000を用い、280℃の成形温度で、プリフォームを得た。その後、このプリフォームを、フロンティア製、成形機FDB−1Bにてボトルにブロー成形した。
【0075】
[比較例7]
結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレートの濃度を0.61wt%とした以外は、比較例6と同様に実施した。
【0076】
[比較例8]
結晶化促進剤ポリヘキサメチレンテレフタレートの濃度を0.91wt%とした以外は、比較例6と同様に実施した。
上記実施例1〜3、比較例1〜8の条件及び結果を下記表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
上記表1に示したように、比較例1〜5に示したように、結晶化促進剤を配合しない実験例においてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物の配合量が多い、つまりボトルプリフォーム中のK元素含有量が多い場合には、AA含有量は低く抑えられる場合もあるものの、ボトルのヘーズが悪化する。一方ボトルプリフォーム中のK元素含有量が少ない場合には、ボトルのヘーズは実施例と同等の値を示す場合もあるものの、ボトルプリフォーム中のAA含有量が増加する。また比較例6−8に示したように、結晶化促進剤を配合した場合であって、親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートと、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を混合物として配合していない場合には、結晶化促進剤の付与量が同じレベルの実施例・比較例を対比すると、実施例はボトルプリフォーム中のAA含有量とボトルのヘーズの双方の抑制を両立させることが達成できるのに対して、比較例は両立が達成できていない。また結晶化促進剤の付与量が多い場合にはボトル口部の結晶化度を高めることも達成することができる。以上のことから、本発明の芳香族ポリエステルの製造方法によれば、また、ボトルに成形した時の口部の結晶化度の高いボトルを成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、加熱殺菌した中身を、高温度(85℃)で充填・密封を行う事が必要であり、その口部において十分な耐熱性が要求される飲料用ボトルに適するポリエステル組成物の製造方法を提供することができる。さらに、その製造方法で得られた芳香族ポリエステルを用いて製造されたポリエステル製ボトルは、その透明性を損なうことなく、アセトアルデヒドの副生成を抑え、かつ、生産性の向上を達成することができる。これらの目的が同時に達成できることの工業的な意義は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸ジエステルと、グリコール化合物を用いて触媒の存在下、溶融重縮合反応を行い芳香族ポリエステルを得た後、
該芳香族ポリエステルに親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートと、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の混合物を配合させる芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、該親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートの配合量を該芳香族ポリエステルに対して1.0〜100ppmとし、該アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の配合量を該芳香族ポリエステルに対して0.1〜100ppmとする芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項2】
親水基がアリールスルホン酸塩基を含むものである請求項1に記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属化合物がナトリウム原子またはカリウム原子を含むアルカリ金属化合物である請求項1〜2のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属化合物が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項5】
芳香族ポリエステルがポリ(アルキレン芳香族ジカルボキシレートエステル)である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項6】
芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートである請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項7】
親水基を有するポリヘキサメチレンテレフタレートが、アリールスルホン酸塩基を有する官能基が共重合されたポリヘキサメチレンテレフタレートである請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項8】
触媒としてチタン化合物を用いる請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項9】
触媒として、下記式(1)で表されるリン化合物と下記式(2)で表されるチタン化合物の反応生成物を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【化1】

[上記式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または8個以下の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
【化2】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一もしくは異なった、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示す。更にmが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR及びRは、それぞれ同一の基であっても異なった基であってもどちらでもよい。]
【請求項10】
芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸ジエステルと、グリコール化合物を用いて触媒の存在下、芳香族ポリエステルを得る工程において、固相重縮合反応を行う工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載の芳香族ポリエステル組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−53270(P2013−53270A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193976(P2011−193976)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】