説明

芳香族ポリエステルアミド共重合体、高分子フィルム、プリプレグ、プリプレグ積層体、金属箔積層板及びプリント配線板

芳香族ポリエステルアミド共重合体、高分子フィルム、プリプレグ、プリプレグ積層体、金属箔積層板及びプリント配線板を提供する。該芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ジオールから由来する反復単位(A)20ないし25モル%を含み、芳香族ジオールから由来する反復単位(A)は、レゾルシノールから由来する反復単位(RCN)、及びビフェノールとハイドロキノンのうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位(HQ)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエステルアミド共重合体、高分子フィルム、プリプレグ、プリプレグ積層体、金属箔積層板及びプリント配線板に関する。より詳しくは、全体の反復単位に対して、芳香族ジオールから由来する反復単位A
20ないし25モル%を含み、前記芳香族ジオールから由来する反復単位Aは、レゾルシノールから由来する反復単位RCN、及びビフェノールとハイドロキノンのうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位HQを含む芳香族ポリエステルアミド共重合体、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を採用した高分子フィルム、プリプレグ、プリプレグ積層体、及び前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化及び多機能化によって、プリント配線板の高密度化及び小型化が進められており、銅箔積層板は、スタンピング加工性及びドリル加工性に優れ、価格が低いので、電子機器のプリント配線板用の基板として広く利用されている。
【0003】
かかるプリント配線板用の銅箔積層板に利用されるプリプレグは、半導体の性能及び半導体パッケージング製造工程の条件に適するように、下記の主要特性を満足せねばならない。
(1)金属熱膨張率に対応可能な低熱膨脹率
(2)1GHz以上の高周波領域における低誘電率及び誘電安定性
(3)約270℃のリフロー工程に対する耐熱性
【0004】
前記プリプレグは、エポキシまたはビスマレイミドトリアジンから由来する樹脂をガラス織布に含浸させた後、半硬化させて製造する。次いで、前記プリプレグに銅箔を積層し、樹脂を硬化させて銅箔積層板を製造する。かかる銅箔積層板は薄膜化されて、270℃のリフロー工程など高温工程を経るが、かかる高温工程を経ることから、薄膜形態の銅箔積層板が熱変形し、結果として収率が低下するなどの問題点がある。また、エポキシまたはビスマレイミドトリアジン樹脂は、それ自体の高い吸湿性により、低吸収性への改善が要求されており、特に1GHz以上の高周波領域での誘電特性が劣化して、高周波及び高速処理を要求する半導体パッケージング用のプリント配線板に適用しがたいという問題点がある。したがって、かかる問題点を引き起こさない低誘電性のプリプレグが要求されている。
【0005】
また、最近、エポキシまたはビスマレイミドトリアジン樹脂の代替方案として、芳香族ポリエステルをプリプレグの形成に利用した例もある。かかるプリプレグは、芳香族ポリエステルを有機または無機の織布に含浸させて製造する。特に、芳香族ポリエステル樹脂と芳香族ポリエステル織布とを使用して、芳香族ポリエステルプリプレグを製造した場合もある。具体的に、芳香族ポリエステルを、塩素などのハロゲン元素を含有する溶剤に溶解させて溶液組成物を製造し、該溶液組成物を芳香族ポリエステル織布に含浸させた後に乾燥して、芳香族ポリエステルプリプレグを製造する。しかし、この方法は、ハロゲン元素を含有する溶剤を完全に除去しがたく、ハロゲン元素が銅箔を腐食するので、非ハロゲン溶剤の使用への改善が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、低熱膨脹率、低誘電率及び低誘電損失を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を採用したプリプレグ及びプリプレグ積層体を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例は、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、全体の反復単位に対して、芳香族ジオールから由来する反復単位A
20ないし25モル%を含み、前記芳香族ジオールから由来する反復単位Aは、レゾルシノールから由来する反復単位RCN、及びビフェノールとハイドロキノンのうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位HQを含む。
【0010】
前記反復単位RCNの含量と前記反復単位HQの含量とは、下記条件を満足する:
0<n(RCN)/[n(RCN)+n(HQ)]<1
ここで、n(RCN)及びn(HQ)は、それぞれ前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた反復単位RCN及び反復単位HQのモル数である。
【0011】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位B
2ないし25モル%をさらに含む。
【0012】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンから由来する反復単位C、及び芳香族ジアミンから由来する反復単位C′のうち少なくとも一つの反復単位20ないし25モル%をさらに含む。
【0013】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D
35ないし48モル%をさらに含む。
【0014】
本発明の他の側面は、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を含む高分子フィルムを提供する。
【0015】
本発明のさらに他の側面は、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を含浸させた基材を含むプリプレグを提供する。
【0016】
本発明のさらに他の側面は、前記プリプレグを二つ以上含むプリプレグ積層体を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の側面は、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体の少なくとも一面上に、金属薄膜を形成した金属箔積層板を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の側面は、前記金属箔積層板の金属薄膜をエッチングして得られるプリント配線板を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の側面は、前記高分子フィルムの少なくとも一面に金属回路パターンを印刷して形成されたプリント配線板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の一具現例による芳香族ポリエステルアミド共重合体、及び前記共重合体に含浸させた基材を含むプリプレグについて詳細に説明する。
【0021】
本具現例による芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ジオールから由来する反復単位A
20ないし25モル%を含み、前記芳香族ジオールから由来する反復単位Aは、レゾルシノールから由来する反復単位RCN、及びビフェノールとハイドロキノンのうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位HQを含む。前記反復単位Aの含量が20モル%未満であれば、溶剤への溶解度が低下して望ましくなく、25モル%を超えれば、溶融温度が上昇しすぎて望ましくない。
【0022】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた前記反復単位RCNのモル数n(RCN)と前記反復単位HQのモル数n(HQ)とは、下記条件を満足する:
0<n(RCN)/[n(RCN)+n(HQ)]<1
【0023】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位B
2ないし25モル%をさらに含む。
【0024】
前記反復単位Bの含量が2モル%未満であれば、芳香族ポリエステルアミド共重合体の機械的強度が低下して望ましくなく、25モル%を超えれば、芳香族ポリエステルアミド共重合体の熱的特性が低下して望ましくない。
【0025】
前記反復単位Bは、パラヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位を含む。
【0026】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンから由来する反復単位C、及び芳香族ジアミンから由来する反復単位C′のうち少なくとも一つの反復単位を20ないし25モル%さらに含む。
前記反復単位C及び反復単位C′の総含量が20モル%未満であれば、溶剤への溶解性が低下して望ましくなく、25モル%を超えれば、溶融温度が上昇しすぎて望ましくない。
【0027】
前記反復単位Cは、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール及び2−アミノ−6−ナフトールからなる群から選択される1種以上の化合物から由来する反復単位を含み、前記反復単位C′は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン及び2,6−ナフタレンジアミンからなる群から選択される1種以上の化合物から由来する反復単位を含む。
【0028】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、全体の反復単位に対して、芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位Dを35ないし48モル%さらに含む。
【0029】
前記反復単位Dの含量が35モル%未満であれば、溶解性が低下して望ましくなく、48モル%を超えれば、耐熱性、低熱膨張、低誘電特性が低下して望ましくない。
【0030】
前記反復単位Dは、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する反復単位を含む。
【0031】
具体的に、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれるそれぞれの反復単位は、下記の化学式のうちいずれか一つで表示される:
【0032】
(1)芳香族ジオールから由来する反復単位A:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0033】
(2)芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位B:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0034】
(3)フェノール性水酸基を有する芳香族アミンから由来する反復単位C:
【化10】

【化11】

【化12】

【0035】
(4)芳香族ジアミンから由来する反復単位C′:
【化13】

【化14】

【化15】

【0036】
(5)芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D:
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0037】
前記式中、R及びRは、同一または相異なり、それぞれハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換または非置換のCないしC20のアルキル基、置換または非置換のCないしC20のアルコキシ基、置換または非置換のCないしC20のアルケニル基、置換または非置換のCないしC20のアルキニル基、置換または非置換のCないしC20のヘテロアルキル基、置換または非置換のCないしC30のアリール基、置換または非置換のCないしC30のアリールアルキル基、置換または非置換のCないしC30のヘテロアリール基、あるいは置換または非置換のCないしC30のヘテロアリールアルキル基を表す。本明細書において、用語‘置換’とは、水素がハロゲン基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アミン基またはそれらのうち二つ以上に置換されたことを意味する。
【0038】
かかる芳香族ポリエステルアミド共重合体は、(1)レゾルシノール及びハイドロキノン及び/またはビフェノールを含む芳香族ジオール、またはそのエステル形成用の誘導体;(2)芳香族ヒドロキシカルボン酸、またはそのエステル形成用の誘導体;(3)フェノール性水酸基を有する芳香族アミン、またはそのアミド形成用の誘導体、及び芳香族ジアミンまたはそのアミド形成用の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種;及び(4)芳香族ジカルボン酸、またはそのエステル形成用の誘導体を重合することで得られる。
【0039】
前記芳香族ジオールのエステル形成用の誘導体は、それらのヒドロキシル基がカルボン酸類と反応して、エステル結合を形成するものでありうる。
【0040】
また、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸、または芳香族ジカルボン酸のエステル形成用の誘導体は、それが酸塩化物、酸無水物などの反応性の高い誘導体であるか、またはアルコール類やエチレングリコールなどとエステル結合を形成するものでありうる。
【0041】
また、前記芳香族アミンまたは芳香族ジアミンのアミド形成用の誘導体は、そのアミン基がカルボン酸類とアミド結合を形成するものでありうる。
【0042】
前記のように製造された芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶剤に溶解され、望ましくは、400℃以下で光学的異方性を表す溶融体を形成できるサーモトロピック(thermotropic)液晶ポリエステルアミド共重合体でありうる。具体的に、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶融温度が250℃ないし400℃であり、数平均分子量が1,000ないし20,000でありうる。
【0043】
前述したような芳香族ポリエステルアミド共重合体は、一般的な芳香族ポリエステルの製造方法を通じて製造され、例えば、前記反復単位RCN及び反復単位HQにそれぞれ対応する芳香族ジオール、前記反復単位Bに対応する芳香族ヒドロキシカルボン酸、前記反復単位C及び/または反復単位C′に対応する芳香族アミン及び/または芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミン基を過量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得て、得られたアシル化物と芳香族ジカルボン酸とをエステル交換反応させることで溶融重合する方法が挙げられる。
【0044】
前記アシル化反応において、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基及びアミン基の総当量の1.0ないし1.2倍の当量、例えば、1.04ないし1.07倍の当量でありうる。前記脂肪酸無水物の添加量が多ければ、芳香族ポリエステルアミド共重合体の着色が顕著になる傾向があり、少なければ、重合体で原料モノマーなどが昇華するか、またはフェノールガスの発生量が多くなる傾向がある。かかるアシル化反応は、130ないし170℃で30分ないし8時間反応させることが望ましく、140ないし160℃で2ないし4時間反応させることがさらに望ましい。
【0045】
前記アシル化反応に使われる脂肪酸無水物としては、酢酸無水物、無水プロピオン酸、無水イソブチル酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水ブチル酸などがあり、これらに特に限定されない。また、それらの2種類以上を混合して使用できる。経済性及び取扱性において、酢酸無水物を使用することが望ましい。
【0046】
前記エステル交換及びアミド交換反応は、130ないし400℃で、0.1ないし2℃/分の昇温速度で実行することが望ましく、140ないし350℃で、0.3ないし1℃/分の昇温速度で実行することがさらに望ましい。
【0047】
このようにアシル化して得た脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換反応及びアミド交換反応させる時に平衡を移動させるために、副生される脂肪酸と未反応の無水物とを蒸発または蒸留により反応系外に排出させることができる。
【0048】
前記アシル化反応、エステル交換反応及びアミド交換反応は、触媒の存在下で進められる。前記触媒は、従来からポリエステル用の触媒として公知されたものであって、酢酸マグネシウム、酢酸第1スズ、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどがある。前記触媒は、通常単量体の投入時に単量体と同時に投入され、前記触媒の存在下でアシル化及びエステル交換反応が起こる。
【0049】
前記エステル交換反応及びアミド交換反応による重縮合は、通常溶融重合により実行されるが、溶融重合と固相重合とを併用することができる。
【0050】
前記溶融重合に使われる重合器は、特に限定されるものではなく、高粘度反応に一般的に使われる攪拌設備を装着した反応器でありうる。この時、アシル化工程の反応器及び溶融重合工程の重合器として同じ反応器が使われてもよく、各工程に相異なる反応器が使われてもよい。
【0051】
前記固相重合は、溶融重合工程で排出されたプレポリマーを粉砕してフレーク状またはパウダー状にした後、重合を進行させることで実行される。かかる固相重合は、例えば、窒素などの非活性雰囲気で200ないし350℃で1ないし30時間固相状態で熱処理することで実行される。また、前記固相重合は、攪拌下で実行されてもよく、無攪拌状態で実行されてもよい。また、適当な攪拌設備を装着した反応器を溶融重合槽と固相重合槽として併用することもできる。
【0052】
前記のように製造された芳香族ポリエステルアミド共重合体は、3ppm/K以下の熱膨張率を有する。
【0053】
得られた芳香族ポリエステルアミド共重合体は、公知の方法によりペレット化された後に成形されるか、または公知の方法によって繊維化されることもある。また、かかる芳香族ポリエステルアミド共重合体は、後述するように溶剤に溶解された後、金属薄膜に塗布された後、乾燥及び熱処理されて高分子フィルムを形成でき、織布または不織布の製造に使われることもある。
【0054】
本具現例によるプリプレグは、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を含浸させた基材を含む。
【0055】
前記プリプレグは、前記芳香族ポリエステルアミド重合体を溶剤に溶解させた組成物溶液を、有機または無機の織布及び/または不織布の基材に含浸させるか、または前記組成物溶液を前記織布及び/または不織布の基材に塗布することで成形した後、溶剤を除去することで製造される。この時、使用可能な成形法としては、溶液含浸法またはワニス含浸法を例として挙げられる。
【0056】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶解させる溶剤は、前記芳香族ポリエステルアミド重合体100重量部に対して、100ないし100,000重量部の含量で使用でき、前記溶剤の含量が100重量部未満であれば、溶液粘性が上昇して加工時に問題があり、100,000重量部を超える場合には、芳香族ポリエステルアミド共重合体の量が少ないので、生産性が低下する傾向があって望ましくない。
【0057】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶解する溶剤としては、非ハロゲン溶剤が使われることが望ましい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、その他に極性非プロトン系化合物、ハロゲン化フェノール、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタンなどが、単独にまたは2種以上が共に使われる。特に、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、非ハロゲン溶剤にもよく溶解されて、ハロゲン元素を含有する溶剤を使用しなくてもよいので、それを含む金属箔積層板またはプリント配線板の金属箔がハロゲン元素を含有する溶剤を使用する場合、ハロゲン元素により腐食されるような問題点を事前に防止できる。
【0058】
前記基材としては、芳香族ポリエステルファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ、ガラス紙、またはそれらの混合物のような織布及び/または不織布が使われる。
【0059】
前記プリプレグ製造工程で含浸法を使用する場合、芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸する時間は、通常0.001分ないし1時間が望ましい。前記含浸時間が0.001分未満であれば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体が均一に含浸されず、1時間を超えれば、生産性が低下する。
【0060】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸させる温度は、20ないし190℃の範囲で可能であり、室温で実行することが望ましい。
【0061】
また、前記基材は5ないし200μmの厚さを有し、この基材の単位面積当たり含浸される前記芳香族ポリエステルアミド共重合体の量は、0.1ないし1,000g/mの範囲であることが望ましい。前記含浸量が0.1g/m未満である場合には、生産性が低下して望ましくなく、1,000g/mを超える場合には、プリント配線板の小型化に適していない。
【0062】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶剤に溶解させた組成物溶液には、発明の目的を損傷させない範囲で、誘電率及び熱膨張率を調節するために、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムの無機フィラー、硬化エポキシ、架橋アクリルなどの有機フィラーが添加される。特に、高誘電率の無機フィラーを添加してもよい。かかる無機フィラーとしては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸塩、チタン酸バリウムのチタンまたはバリウムの一部を他の金属に代替したものなどを利用できる。かかる無機フィラーまたは有機フィラーの含有量は、芳香族ポリエステルアミド共重合体100重量部に対して、0.0001ないし100重量部の比率であることが望ましい。前記無機フィラーまたは有機フィラーの添加量が0.0001重量部未満であれば、プリプレグの誘電率を十分に高めがたかったり、熱膨張率を低めがたい傾向があり、100重量部を超えれば、芳香族ポリエステルアミド共重合体のバインダーとしての効果が低下する傾向がある。
【0063】
本具現例によるプリプレグは、低吸湿性及び低誘電特性を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体と、機械的強度に優れた有機または無機織布及び/または不織布とを使用するので、寸法安定性に優れ、熱変形が少なく、硬いので、ビアホールドリル加工及び積層加工に有利である。
【0064】
前記プリプレグを製造する含浸法において、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸させるか、または前記組成物溶液を前記基材に塗布した後、前記溶剤を除去する方法は、特に限定されないが、溶剤の蒸発によることが望ましい。例えば、加熱、減圧、通風などの方法による蒸発が挙げられる。そのうち、既存のプリプレグ製造工程への適用性、生産効率、取扱面で溶剤加熱蒸発が望ましく、通風加熱により蒸発することがさらに望ましい。
【0065】
前記溶剤除去工程において、加熱温度は、本発明の製造方法で得られる芳香族ポリエステルアミド共重合体の組成物溶液に対して、20ないし190℃の範囲で1分ないし2時間予備乾燥し、190ないし350℃の範囲で1分ないし10時間まで熱処理を実行することが望ましい。
【0066】
このように得られた本具現例によるプリプレグは、約5ないし200μm、望ましくは、約30ないし150μmの厚さを有する。また、前記プリプレグは、一方向の熱膨張率が10ppm/K以下であり、誘電定数が3.5以下であり、誘電損失が0.01以下である。ここで、誘電損失とは、誘電体に交流電場を印加した場合に、誘電体中で熱により消失されるエネルギー損失を意味する。前記熱膨張率が10ppm/Kを超えれば、プリプレグの剥離現象が発生して望ましくない。また、前記誘電定数が3.5を超えるか、または誘電損失が0.01を超えれば、高周波領域での絶縁基材として適していなくて望ましくない。
【0067】
前記プリプレグを所定の枚数積層し、それを加熱及び加圧することで、プリプレグ積層体を製造できる。
【0068】
また、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体の一面または両面に、銅箔、銀箔、アルミ箔などの金属薄膜を配置し、前記と同様に加熱及び加圧することで、金属箔積層板を製造できる。
【0069】
前記金属箔積層板において、プリプレグまたはプリプレグ積層体及び金属薄膜それぞれの厚さは、特に限定されないが、0.1ないし300μmであることが望ましい。前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の厚さが0.1μm未満であれば、巻取方式の加工時にクラックが発生しやすくて望ましくなく、300μmを超えれば、限定された厚さの多層積層の層数に限定があって望ましくない。前記金属薄膜の厚さが0.1μm未満であれば、金属薄膜の積層時にクラックが発生しやすくて望ましくなく、300μmを超えれば、多層積層に不利であって望ましくない。
【0070】
前記金属箔積層板の製造時に適用される加熱及び加圧工程は、望ましくは、温度150ないし180℃、圧力約9ないし20MPaで行うが、プリプレグ特性や芳香族ポリエステルアミド共重合体組成物の反応性、プレス器の能力、目的とする金属箔積層板の厚さなどを考慮して適当に決定できるので、特に限定されない。
【0071】
また、本具現例による金属箔積層板は、プリプレグ積層体と金属薄膜との接合強度を高めるために、それらの間に介在された接着剤層をさらに備える。前記接着剤層としては、熱可塑性の樹脂組成物または熱硬化性の樹脂組成物が使われる。また、前記接着剤層は、厚さが0.1ないし100μmであることが望ましい。前記厚さが0.1μm未満であれば、接着強度が低くて望ましくなく、100μmを超えれば、厚さが過度に厚くなって望ましくない。
【0072】
また、前記金属箔積層板の金属薄膜をエッチングし、回路を形成することで、プリント配線板を製造できる。また、前記高分子フィルムの少なくとも一面に、金属回路パターンを印刷することで、プリント配線板を製造することもできる。また、必要に応じて、前記プリント配線板にスルーホールなどを形成することもできる。本具現例の多層プリント配線板は、例えば、目的とする絶縁層の厚さに合わせて、内層基材や金属薄膜などの構成材の間に前記プリプレグを所定の枚数配置し、加熱及び加圧下で成形して製造できる。この時の加熱及び加圧条件は、前記金属箔積層板の製造時の条件と同様に適切に決定される。また、前記内層基材としては、電気絶縁材料として使われるプリプレグ積層体、金属箔積層板またはプリント配線板などが例として挙げられ、それらを2種類以上併用してもよい。
【0073】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0074】
実施例1
攪拌装置、トルクメーター、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸138.1g(1.0モル)、4−アミノフェノール245.54g(2.3モル)、ハイドロキノン185.8g(1.7モル)、レゾルシノール61.9g(0.6モル)、イソフタル酸747.6g(4.5モル)及び酢酸無水物1,123g(11モル)を投入した。
【0075】
前記反応器の内部を窒素ガスに十分に置換させた後、窒素ガス気流下で30分にわたって150℃まで昇温し、この温度を維持しつつ3時間還流させた。
【0076】
次いで、流出される酢酸及び未反応の酢酸無水物を蒸留除去しつつ、180分間320℃まで昇温し、トルクが上昇する時点を反応終了と見なし、内容物を排出させた。得られた固形分を室温まで冷却させ、微粉砕器で粉砕した後、窒素雰囲気下で260℃で5時間維持しつつ固相重合を実行して、芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末を得た。
【0077】
このように得られた芳香族ポリエステルアミド共重合体の粉末400gを、N−メチルピロリジノン(NMP)600gに添加し、常温で4時間攪拌して、芳香族ポリエステルアミド共重合体の組成物溶液を得た。
【0078】
この組成物溶液にガラス織布(IPC
1078)を常温で含浸させ、ダブルローラ間に通過させて余分の組成物溶液を除去し、厚さを一定にした。次いで、内容物を高温熱風乾燥器に入れて120℃で溶剤を除去した後、300℃で60分間熱処理して、芳香族ポリエステルアミド共重合体をガラス織布に含浸させた形態のプリプレグを得た。
【0079】
比較例1
芳香族ジオールとしてハイドロキノンを全く使用せず、レゾルシノール253.23g(2.3モル)のみを使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法で芳香族ポリエステルアミド共重合体を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、芳香族ポリエステルアミド共重合体組成物溶液及びプリプレグを製造した。
【0080】
比較例2
芳香族ジオールとしてレゾルシノールを全く使用せず、ハイドロキノン253.23g(2.3モル)のみを使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法で芳香族ポリエステルアミド共重合体を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、芳香族ポリエステルアミド共重合体組成物溶液及びプリプレグを製造した。
【0081】
比較例3
パラヒドロキシ安息香酸138.1g(1.0モル)、4−アミノフェノール109.1g(1.0モル)、ハイドロキノン289.6g(2.63モル)、レゾルシノール95.8g(0.87モル)、イソフタル酸747.6g(4.5モル)及び酢酸無水物1,123g(11モル)を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法で芳香族ポリエステルアミド共重合体を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、芳香族ポリエステルアミド共重合体組成物溶液及びプリプレグを製造した。
【0082】
前記実施例1で製造したプリプレグの樹脂粉末脱落及び電気的特性評価を、比較例1ないし3に対比させて次のように実施した。
【0083】
まず、前記実施例1で得られたプリプレグと、比較例1ないし3で製造したプリプレグとをそれぞれハンダ付け温度290℃のハンダ付けバスに10秒ずつ3回浸漬させ、表面状態を観察した。実施例1で製造されたプリプレグは、変形やブリスターが発生しなかったが、比較例1ないし3で製造したプリプレグは、表面の一部が脱落し、プリプレグ自体の変形も発生したことを確認した。
【0084】
また、実施例1で得られたプリプレグ、及び比較例1ないし3で製造したプリプレグに対して、インピーダンス分析器を利用してそれぞれの誘電率及び誘電損失を測定した結果、実施例1で得られたプリプレグの誘電率(1GHz)が3.0、誘電損失が0.005と表れ、高周波領域で低い値を表した。しかし、比較例1で得られたプリプレグの誘電率(1GHz)が3.4、誘電損失が0.007、比較例2で得られたプリプレグの誘電率(1GHz)が3.6、誘電損失が0.008、比較例3で得られたプリプレグの誘電率(1GHz)が3.4、誘電損失が0.007と表れ、実施例1の場合より高い値を表した。
【0085】
また、実施例1で得られたプリプレグ、及び比較例1ないし3で製造したプリプレグに対して、TMA(TMA社製、Q400)を利用してそれぞれの熱膨張率を測定した結果、実施例1で得られたプリプレグの熱膨張率が温度範囲50ないし120℃で9.2ppm/Kと表れた。しかし、比較例1で得られたプリプレグの熱膨張率が14.5ppm/K、比較例2で得られたプリプレグの熱膨張率が11.5ppm/K、比較例3で得られたプリプレグの熱膨張率が12.4ppm/Kと表れ、実施例1の場合より高い値(>10ppm/K)を表した。
【0086】
ここで、前述したように、プリプレグを使用してプリプレグ積層体、金属箔積層板及びプリント配線板を製造する従来の製造方法によって、前記実施例で製造したプリプレグを利用してプリプレグ積層体、金属箔積層板及びプリント配線板を製造できる。
【0087】
本発明は、実施例を参考にして説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想により決まらねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の反復単位に対して、芳香族ジオールから由来する反復単位(A)20ないし25モル%を含み、前記芳香族ジオールから由来する反復単位(A)は、レゾルシノールから由来する反復単位(RCN)、及びビフェノールとハイドロキノンのうち少なくとも1種の化合物から由来する反復単位(HQ)を含む芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項2】
前記反復単位(RCN)の含量と前記反復単位(HQ)の含量とは、下記条件を満足する請求項1に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体;
0<n(RCN)/[n(RCN)+n(HQ)]<1
ここで、n(RCN)及びn(HQ)は、それぞれ前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた反復単位(RCN)及び反復単位(HQ)のモル数である。
【請求項3】
全体の反復単位に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(B)2ないし25モル%をさらに含む請求項1に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項4】
前記反復単位(B)は、パラヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のうち少なくとも1種の化合物から由来する請求項3に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項5】
全体の反復単位に対して、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンから由来する反復単位(C)、及び芳香族ジアミンから由来する反復単位(C′)のうち少なくとも一つの反復単位20ないし25モル%をさらに含む請求項1に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項6】
前記反復単位(C)は、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール及び2−アミノ−6−ナフトールからなる群から選択される1種以上の化合物から由来し、前記反復単位(C′)は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン及び2,6−ナフタレンジアミンからなる群から選択される1種以上の化合物から由来する請求項5に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項7】
全体の反復単位に対して、芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(D)35ないし48モル%をさらに含む請求項1に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項8】
前記反復単位(D)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する請求項7に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項9】
数平均分子量が1,000ないし20,000であり、溶融温度が250ないし400℃である請求項1に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちいずれか一項に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体を含む高分子フィルム。
【請求項11】
請求項1ないし9のうちいずれか一項に記載の芳香族ポリエステルアミド共重合体を含浸させた基材を含むプリプレグ。
【請求項12】
前記基材は5ないし200μmの厚さを有し、この基材の単位面積当たり含浸された前記芳香族ポリエステルアミド共重合体の量が0.1ないし1,000g/mの範囲である請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
前記基材は、芳香族ポリエステルファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ及びガラス紙からなる群から選択された少なくとも一つを含む請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項14】
前記基材に添加された有機または無機フィラーを、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体100重量部に対して、0.0001ないし100重量部の割合でさらに含む請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項15】
一方向の熱膨張率が10ppm/K以下である請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項16】
誘電定数が3.5以下であり、誘電損失が0.01以下である請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項17】
請求項11に記載のプリプレグを二つ以上含むプリプレグ積層体。
【請求項18】
請求項11に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一面に配置された少なくとも一枚の金属薄膜と、を備える金属箔積層板。
【請求項19】
前記プリプレグは、少なくとも二枚のプリプレグ積層体である請求項18に記載の金属箔積層板。
【請求項20】
請求項18に記載の金属箔積層板の金属薄膜をエッチングして得られるプリント配線板。
【請求項21】
請求項10に記載の高分子フィルムの少なくとも一面に金属回路パターンを印刷して形成されたプリント配線板。

【公表番号】特表2012−514066(P2012−514066A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543429(P2011−543429)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007763
【国際公開番号】WO2010/077014
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】