説明

芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物および成形体

【課題】 難燃性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ、成形加工時に材料の劣化が
少なく安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびその成形
体を提供する。
【解決手段】 芳香族ポリカ−ボネ−ト(A)100重量部に対して、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(B)0.001〜1重量部、平均粒子径0.5〜30μmの高分子透明微粒子(C)0.01〜5重量部、フルオロポリマ−(D)0.01〜1重量部を含む芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ、成形加工時に材料の劣化
が少なく安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびそれを
成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカ−ボネ−トは透明性、耐衝撃性、低吸水特性、耐熱性、耐侯性等の特性に
優れるため、光拡散機能を目的とする様々な用途に使用されている。
光拡散機能が求められる用途としては、例えば、照明器具カバ−、透過型ディスプレイ
用スクリ−ン、液晶バックライト用光拡散板、採光窓、腰窓、目隠し板、間仕切り、看板
、等が挙げられる。
芳香族ポリカ−ボネ−トに光拡散機能を付与する方法としての従来技術としては、芳香
族ポリカ−ボネ−トに、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化チタン、部分架橋ポリマ−微粒子
等の光拡散剤を添加し分散させる方法等が提案されている。これら従来技術は、例えば、
特許文献1〜7に開示の通りである。
最近、光拡散機能を有する種々の用途において難燃性が要望されつつある。難燃性と光
拡散機能の双方の特性を有する芳香族ポリカ−ボネ−トに関する従来技術としては、特許
文献8や特許文献9が提案されているが、これらの従来技術による樹脂組成物は樹脂組成
物の着色が起こりやすく、更に成形加工を行うに当たり樹脂組成物の溶融安定性が不十分
であるために製品の強度が低下しやすいという欠点があった。また、拡散板としては光拡
散性と共に高い光透過性も同時に求められるが、光拡散性と光透過性という相反する性質
が共に優れた難燃性の光拡散板は未だ不十分なものであった。
従って、難燃性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ、成形加工時に材料の劣化が
少なく安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびそれを成
形してなる成形体がつよく望まれている。
【0003】
【特許文献1】特公昭57−024186号公報
【特許文献2】特開平03−143950号公報
【特許文献3】特開平06−032973号公報
【特許文献4】特開平06−107939号公報
【特許文献5】特開平06−306266号公報
【特許文献6】特開平09−048911号公報
【特許文献7】特開平10−017761号公報
【特許文献8】特開平01−209402号公報
【特許文献9】特開平02−099560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、難燃性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ、成形加工時に材料の劣化
が少なく安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびそれを
成形してなる成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、芳香族ポリカ−ボネ−ト(A)1
00重量部に対して、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(B)0.001〜1重量部、平均粒子径0.5〜30μmの高分子透明微粒子(C)0.01〜5重量部、フルオロポリマ−(D)0.01〜1重量部を含む芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物が、従来困難とされていた課題、即ち、難燃性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ様々な成形加工方法(射出成形方法や押出成形方法)に対して成形加工時に材料の劣化が少なく安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびその成形体を得ることができるという驚くべき事実を見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記[1]〜[10]である。
[1]芳香族ポリカ−ボネ−ト(A)100重量部に対して、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(B)0.001〜1重量部、平均粒子径0.5〜30μmの高分子透明微粒子(C)0.01〜5重量部、フルオロポリマ−(D)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
[2]更に、ヒュ−ムドシリカ(E)0.01〜3重量部を含むことを特徴とする前記[1]に記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
[3]更に、有機リン系安定剤(F)0.001〜0.5重量部を含むことを特徴とす
る前記[1]又は[2]に記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
[4]更に、紫外線吸収剤(G)0.001〜1重量部を含むことを特徴とする前記[
1]〜[3]のいずれかに記載の該芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
[5]更に、蛍光増白剤(H)0.0005〜0.1重量部を含むことを特徴とする前
記[1]〜[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物を成
形してなる成形体。
[7]該成形体が、光拡散機能が求められる成形体であって、該成形体において実質的
に光拡散機能を発現する部位に対してJIS−K−7105に準じて全光線透過率(T)
(単位:%)、拡散透過率(D)(単位:%)、およびHaze[(D/T)×100](単位:%)を測定した場合に、Tが50%以上であり、かつHazeが60%以上であることを特徴とする前記[6]に記載の成形体。
[8]該成形体が光拡散板であることを特徴とする前記[7]に記載の成形体。
[9]該成形体が液晶ディスプレイ用光拡散板であることを特徴とする前記[8]に記
載の成形体。
[10]該成形体が、UL94規格に準ずる試験法にてV−0、V−1のいずれかの難燃性を有することを特徴とする前記[6]〜[9]のいずれかに記載の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体は、難燃
性と光拡散/光透過性バランスに優れ、かつ、成形加工時に材料の劣化が少なく安定した
成形加工性が得られるので、各種の光拡散機能が求められる用途、例えば、照明器具カバ
−、透過型ディスプレイ用スクリ−ン、液晶バックライト用光拡散板、採光窓、腰窓、目
隠し板、間仕切り、看板、等に有用であり、産業的意義はきわめて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明において成分(A)は、芳香族ポリカ−ボネ−トである。
本発明の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカ−ボネ−トは、芳香族ジヒ
ドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカ−ボネ−トであり、芳香族ジヒドロキシ化合
物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)アル
カン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−
ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)シクロアルカン類
、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジ
メチルフェニルエ−テル等のジヒドロキシアリ−ルエ−テル類、4,4′−ジヒドロキシ
ジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィ
ド等のジヒドロキシアリ−ルスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキ
シド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロ
キシアリ−ルスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−
ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリ−ルスルホン
類、等を挙げることができる。
これらの中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノ
−ルA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または2種以上を組
み合わせて用いることができる。
【0009】
本発明の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカ−ボネ−トは、公知の方法
で製造したものを使用することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカ−
ボネ−ト前駆体とを反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカ−
ボネ−ト前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存
在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジ
エステル(例えばジフェニルカ−ボネ−ト)などを反応させるエステル交換法(溶融法)
、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カ−ボネ−トプレポリマ−を固相重合する方
法〔特開平01−158033号公報(米国特許第4,948,871号明細書に対応)
、特開平01−271426号公報、特開平3−68627号公報(米国特許第5,20
4,377号明細書に対応)〕などの方法により製造されたものを用いることができる。
本発明の成分(A)として使用される芳香族ポリカ−ボネ−トとして特に好ましいもの
は、二価フェノ−ル(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換
法にて製造された実質的に塩素原子を含まない芳香族ポリカ−ボネ−トである。
【0010】
前記芳香族ポリカ−ボネ−トの重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500
,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13
,000〜50,000、特に好ましくは15,000〜30,000、とりわけ好まし
くは17,000〜25,000である。
本発明において、芳香族ポリカ−ボネ−トの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・
パ−ミエ−ション・クロマトグラフィ−(GPC)を用いて行うことができ、測定条件は
以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒として、ポリスチレンゲルを使
用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求
められる。
pc=0.3591Mps1.0388
(Mpcは芳香族ポリカ−ボネ−トの分子量、Mpsはポリスチレンの分子量)
また、本発明の(A)として使用される芳香族ポリカ−ボネ−トは、分子量が異なる2
種以上の芳香族ポリカ−ボネ−トを組み合わせて使用することも好ましい実施態様である
。例えば、Mwが通常14,000〜16,000の範囲にある光学ディスク用材料の芳
香族ポリカ−ボネ−トと、Mwが通常20,000〜50,000の範囲にある射出成形
用あるいは押出成形用の芳香族ポリカ−ボネ−トを組み合わせて使用することもできる。
【0011】
本発明で用いられる成分(B)は、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金
属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩である。
本発明の成分(B)として好ましく使用できる有機酸金属塩は、有機スルホン酸の金属
塩、及び/又は、硫酸エステルの金属塩であり、これらは単独の使用だけでなく2種以上
を混合して使用することも可能である。
本発明の成分(B)に含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウ
ム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネ
シウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。
本発明において、特に好ましいアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムであり
、最も好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0012】
本発明で好ましく使用することができる上記有機スルホン酸の金属塩としては、脂肪族
スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土
類金属塩などが挙げられる。尚、本明細書中で「アルカリ/アルカリ土類金属塩」は、ア
ルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する。
脂肪族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、炭素数1〜8のアルカン
スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、またはかかるアルカンスルホン酸のアルカ
リ/アルカリ土類金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換されたスルホン酸のアル
カリ/アルカリ土類金属塩、さらには炭素数1〜8のパ−フルオロアルカンスルホン酸の
アルカリ/アルカリ土類金属塩を好ましく使用することができ、特に好ましい具体例とし
て、パ−フルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩、パ−フルオロブタンスルホン酸カリウ
ム塩を挙げることができる。
【0013】
また、芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、芳香族スルホン酸
として、モノマ−状またはポリマ−状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボ
ン酸およびそのエステルのスルホン酸、モノマ−状またはポリマ−状の芳香族エ−テルの
スルホン酸、芳香族スルホネ−トのスルホン酸、モノマ−状またはポリマ−状の芳香族ス
ルホン酸、モノマ−状またはポリマ−状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのス
ルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸
のメチレン型結合による縮合体、からなる群から選ばれる少なくとも1種を芳香族スルホ
ン酸とする芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
上記、モノマ−状またはポリマ−状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ/アル
カリ土類金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスル
ホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙
げることができる。
【0014】
また、上記芳香族カルボン酸およびそのエステルのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類
金属塩は、その好ましい例として、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフ
タル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムを挙げるこ
とができる。
また、上記モノマ−状またはポリマ−状の芳香族エ−テルのスルホン酸アルカリ/アル
カリ土類金属塩は、その好ましい例として、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カ
ルシウム、4−ドデシルフェニルエ−テルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジ
メチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレン
オキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリス
ルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン
酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸
リチウムを挙げることができる。
また、上記芳香族スルホネ−トのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好
ましい例として、ベンゼンスルホネ−トのスルホン酸カリウムを挙げることができる。
【0015】
また、上記モノマ−状またはポリマ−状の芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金
属塩は、その好ましい例として、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カ
リウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベ
ンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェ
ニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンス
ルホン酸カリウム、キシレンスルホン酸カリウムを挙げることができる。
また、上記モノマ−状またはポリマ−状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ/アルカ
リ土類金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウ
ム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジ
スルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げ
ることができる。
【0016】
上記芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例とし
て、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェ
ノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
上記複素環式スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、チ
オフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカ
リウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナ
トリウムを挙げることができる。
上記芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好まし
い例として、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムを挙げることができる

上記芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩のメチレン型結合による縮合体は
、その好ましい例として、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アント
ラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物を挙げることができる。
【0017】
一方、硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、本発明では一価および
/または多価アルコ−ル類の硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩を好ましく使
用することができ、かかる一価および/または多価アルコ−ル類の硫酸エステルとしては
、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸
エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テルの硫酸エステル、ペンタエリス
リト−ルのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エ
ステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド
の硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ/アルカリ
土類金属塩として、特に好ましいものとして、ラウリル硫酸エステルのアルカリ/アルカ
リ土類金属塩を挙げることができる。
また、その他のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアル
カリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができ、例えば、サッカリン、N−(p−トリル
スルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)ス
ルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ
/アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0018】
上記に挙げた成分(B)の中で、より好ましいアルカリ/アルカリ土類金属塩として、
芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩およびパ−フルオロアルカンスルホン
酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
本発明において成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.001〜
1重量部であり、0.005〜0.8重量部が好ましく、0.01〜0.7重量部がより
好ましく、0.03〜0.5重量部が更に好ましく、0.05〜0.3重量部が特に好ま
しく、0.06〜0.2重量部が最も好ましい。
成分(B)の使用量が1重量部を超えると、樹脂組成物の溶融安定性が低下し、溶融混
練で着色しやすくなる傾向にあり、一方、0.001重量部未満の場合は難燃性が不十分
となる傾向にある。
【0019】
本発明で用いられる成分(C)は、平均粒子径が0.5〜30μmである高分子透明微
粒子である。
かかる高分子透明微粒子としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共
重合樹脂(MS樹脂)、(メタ)アクリル樹脂、シリコ−ン樹脂等の高分子透明微粒子を
挙げることができ、特に架橋した高分子透明微粒子が好ましい。特に好ましいものは、架
橋した(メタ)アクリル樹脂、シリコ−ン樹脂の高分子透明微粒子である。
かかる成分(C)の屈折率は、成分(A)の芳香族ポリカ−ネ−トの屈折率との差の絶
対値が0.02〜0.2であることが好ましく、成分(C)の屈折率は、1.4〜1.8
の範囲であることが好ましい。さらに成分(C)の形状は球状であるものが特に好ましい

【0020】
本発明の成分(C)として好ましい具体例として、部分架橋したメタクリル酸メチルを
ベ−スとした高分子透明微粒子、ポリ(ブチルアクリレ−ト)のコアにポリ(メチルメタ
クリレ−ト)のシェルを有するコア/シェル型の高分子透明微粒子、ゴム状ビニルポリマ
−のコアとシェルを含んだコア/シェル型の高分子透明微粒子、架橋シロキサン結合を有
するシリコ−ン樹脂からなる高分子透明微粒子を挙げることができ、工業的に入手可能な
具体例としては、積水化成品工業株式会社製の「テクポリマ−(登録商標)」(グレ−ド
としては、MBX−8、MBX−12、MBX−15、MBX−20等が挙げられる)、
ロ−ム・アンド・ハ−ス・カンパニ−製の「パラロイドEXL−5136(登録商標)」
、東芝シリコ−ン(株)製の「トスパ−ル120(登録商標)」、信越化学工業株式会社
製のシリコ−ンレジンパウダ−「KMP−590(登録商標)」などを好ましく使用する
ことができる。
【0021】
本発明において成分(C)の粒径は0.5〜30μmであり、1〜20μmが好ましく
、2〜10μmが特に好ましい。かかる透明微粒子の粒径は、コ−ルカウンタ−法で測定
した重量平均粒径である。成分(C)の重量平均粒子径が0.5μm未満であると光拡散
特性の向上効果が低下する傾向にあり、一方、30μmを越える場合は光拡散特性が低下
すると共に材料強度的が低下する傾向がある。
本発明において成分(C)の配合量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜5
重量部であり、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましく、0.
1〜1重量部が特に好ましい。成分(C)の使用量が5重量部を超えると、樹脂組成物の
溶融安定性と難燃性が低下する傾向にあり、一方、0.01重量部未満の場合は光拡散特性が不十分となる傾向にある。
【0022】
本発明で用いられる成分(D)はフルオロポリマ−であり、燃焼物の滴下を防止する目
的で使用される。本発明で好ましく使用することができる成分(D)は、フィブリル形成
能力を有するフルオロポリマ−であり、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエ
チレン・プロピレン共重合体等のテトラフルオロエチレンポリマ−、を好ましく使用する
ことができ、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
成分(D)は、ファインパウダ−状のフルオロポリマ−、フルオロポリマ−の水性ディ
スパ−ジョン、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオ
ロポリマ−を使用することができる。
本発明で好ましく使用できるフルオロポリマ−の水性ディスパ−ジョンとして、三井デ
ュポンフロロケミカル(株)製「テフロン30J(登録商標)」、ダイキン工業(株)製
「ポリフロンD−1(登録商標)」、「ポリフロンD−2(登録商標)」、「ポリフロン
D−2C(登録商標)」、「ポリフロンD−2CE(登録商標)」を例示することができ
る。
【0023】
また、本発明では成分(D)として、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物
としたフルオロポリマ−も好適に使用することができるが、これら第2の樹脂との粉体状
混合物としたフルオロポリマ−に関する技術は、特開平9−95583号公報(米国特許
第5,804,654号明細書に対応)、特開平11−49912号公報(米国特許第6
,040,370号明細書に対応)、特開2000−143966号公報、特開2000
−297189号公報等に開示されている。本発明において好ましく使用できる、これら
第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマ−として、GEスペシャリティケミカ
ルズ社製「Blendex 449(登録商標)」、三菱レ−ヨン(株)製「メタブレン
A−3800(登録商標)」を例示することができる。
本発明において成分(D)の配合量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1
重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、より好ましくは0.1〜0.6重量
部、さらに好ましくは0.1〜0.4重量部である。成分(D)の使用量が1重量部を超
えると、光透過性が低下する傾向にあり、一方、0.01重量部未満の場合は難燃性が不
十分となる傾向にある。
【0024】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物は、ヒュ−ムドシリカ(成分(E))を含むことが好ましい。成分(E)の配合により、樹脂組成物の難燃性や光拡散性を向上させることができる。かかる成分(E)としてのヒュ−ムドシリカとしては、通常、ハロゲン化珪素の酸水素炎中での高温加水分解(乾式法)により合成されるものである。
本発明にかかわる樹脂組成物において成分(E)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用
いて樹脂組成物の超薄切片を観察するか、あるいは走査型プロ−ブ顕微鏡(SPM)を用
いて樹脂組成物の成形体表面もしくは切出面を観察した際(TEM及びSPMでの観察は
通常1万〜10万倍で行う)に、観察することができる。本発明にかかわる成分(E)は
、通常、樹脂組成物中で複数の球状の非晶質シリカ一次粒子が鎖状に結合してなる凝集粒
子(aggregate)及び/又は集塊粒子(agglomerate)として存在する。
本発明において、成分(E)の粒子径は、上記した透過型電子顕微鏡(TEM)、ある
いは走査型プロ−ブ顕微鏡(SPM)により行うことができる。すなわち、上記の顕微鏡
観察において写真撮影を行ない、得られた顕微鏡写真から樹脂組成物中における30個以
上の凝集粒子(aggregate)及び/又は集塊粒子(agglomerate)に対して個々の粒子径を計測
する。粒子径は粒子の面積Sを求め、(4S/ π)0.5を各粒子の粒子径とする。また、本発明において、平均粒子径とは、数平均粒子径を表すものとする。
【0025】
本発明にかかわる成分(E)の平均粒子径は、通常、10〜500nmの範囲であり、
30nm〜400nmが好ましく、40nm〜300nmが特に好ましく、50nm〜2
00nmが最も好ましい。平均粒子径が10nm以下では組成物の滞留安定性が不充分と
なる傾向にあり、一方、平均粒子径が500nmを超えると薄肉の成形体における難燃性
が不充分となる傾向にある。
また、本発明にかかわる成分(E)は、窒素ガス吸着によるBET法で求められる比表
面積が50〜400m2/gであることが好ましく、60〜350m2/gであることがよ
り好ましく、100〜300m2/gであることがさらに好ましい。
また、本発明にかかわる成分(E)は、珪素含有化合物で表面修飾されていてもよい。
ここで、珪素含有化合物とは、クロロシラン、アルコキシシラン、ヒドロシラン、シリ
ルアミン、シランカップリング剤、ポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる1種
または2種以上の珪素含有化合物である。
該ヒュ−ムドシリカの粒子表面は、3〜4個/nm2のシラノ−ル基が存在するが、該
表面シラノ−ル基を介して、前記の珪素含有化合物による表面修飾を粒子表面に対して効
率よく行うことが可能である。珪素含有化合物で表面修飾されたヒュ−ムドシリカは、表
面が疎水性となり、樹脂組成物中での分散が容易となり、粒子径分布がシャ−プであるた
め、特に好ましい。
【0026】
成分(E)が珪素含有化合物により表面修飾された場合、表面修飾する珪素含有化合物
の量は、成分(E)全量に対して、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0
.05〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%である。
また、成分(E)であるヒュ−ムドシリカは、一次粒子が多孔質構造でなく、緻密な球
状粒子であるために、吸水性が低く、このために樹脂の加水分解等の悪影響を及ぼすこと
が少なく、特に溶融混練や成形の過程で樹脂に与える悪影響が極めて少ないので好ましい

該多孔質構造を判断する尺度として、窒素吸着法や水銀圧入法により測定される「細孔
容積」があるが、本発明では、該細孔容積が0.3ml/g以下である非晶質ヒュ−ムド
シリカが特に好ましい。
また、非晶質ヒュ−ムドシリカの含有水分量は、5%以下が好ましく、より好ましくは
3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは、0.5%以下、最も好ましくは
0.3%以下である。
【0027】
本発明に係る成分(E)として好ましく使用できるものの具体例としては、日本アエロ
ジル(株)より入手可能な、「アエロジルRY200(登録商標)」、「アエロジルRX
200(登録商標)」、「アエロジルR805(登録商標)」、「アエロジルR202(
登録商標)」、「アエロジルR974(登録商標)」、及び「アエロジル200(登録商
標)」等を挙げることができる。
本発明に係る樹脂素組成物において成分(E)を使用する場合、その配合量は、成分(A)100重量部に対して、0. 01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.08〜1重量部がさらに好ましく、0.1〜0.5重量部が特に好ましい。
【0028】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物は、有機リン系安定剤(成分(F))を含
むことが好ましい。成分(F)の配合により、樹脂組成物の熱安定性が向上し、色調安定
性、耐湿熱性、耐熱変色性、成形加工特性を向上させることができる。かかる成分(F)
としての有機リン系安定剤としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エ
ステル等を使用することができる。
前記リン酸エステルの具体例としては、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ
−ト、トリメチルホスフェ−ト、トリフェニルホスフェ−ト、ジフェニルモノオキソキセ
ニルホスフェ−ト、ジブチルホスフェ−ト、ジオクチルホスフェ−ト、ジイソプロピルホ
スフェ−トを例示することができる。
【0029】
また、亜リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニ
ルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリ
オクダデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニ
ルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホス
ファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t
ert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、2,2−
メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(
ノニルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−
ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト
−ルジホスファイトを例示することができる。
【0030】
また、ホスホン酸エステルの具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロ
ピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n
−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ
−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(
2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テ
トラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホ
ナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレ
ンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェ
ニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4
’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル
)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチ
ルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−
ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイト、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホ
スホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルを例示することができる。
【0031】
成分(F)の中で特に好ましく使用できるものは、トリス(2,4−ジ−tert−ブ
チルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−
4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェ
ニル)−ビフェニルホスホナイトである。
成分(F)の使用量は成分(A)100重量部に対して、通常、0.001〜0.5重
量部が好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましく、0.02〜0.2重量部がさ
らに好ましい。また、成分(F)は、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい

【0032】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物は、更に、紫外線吸収剤(成分(G))を
含むことができる。成分(G)の配合により、耐光性を向上させるこができる。
かかる成分(G)としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに
代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−ト
リアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノ−ルに代表されるトリアジン系紫外線
吸収剤、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−メチルフェノ−ル、2−(
2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−tert−オクチルフェノ−ル、2−(2
H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル
)フェノ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ジ−tert−
ペンチルフェノ−ル、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−
メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−
ル−2−イル)−2,4−tert−ブチルフェノ−ルおよび2,2’−メチレンビス[
6−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブ
チル)フェノ−ル]等に代表されるベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤が例示され、これ
らは単独で用いても、2種以上併用してもよい。
成分(G)の使用量は成分(A)100重量部に対して、通常、0.001〜1重量部
が好ましく、0.01〜0.8重量部がより好ましく、0.05〜0.5重量部がさらに
好ましい。
【0033】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物は、更に、蛍光増白剤(成分(H))を含
むことができる。成分(H)は光線の紫外部のエネルギ−を吸収し、このエネルギ−を可
視部に放射する作用を有するものであり、成分(H)の配合により樹脂組成物の色調を白
色あるいは青白色に改善することができる。
かかる成分(H)としては、例えばスチルベンゼン系、ベンズイミダゾ−ル系、ベンズ
オキサゾ−ル系、ナフタルイミド系、ロ−ダミン系、クマリン系、オキサジン系化合物等
が挙げられる。
成分(H)の使用量は成分(A)100重量部に対して、通常、0.0005〜0.1
重量部が好ましく、0.001〜0.05重量部がより好ましく、0.003〜0.03
重量部が更に好ましい。
また、本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂では、更に必要に応じて、着色剤(ブル−
イング剤を含む)、滑剤、離型剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを添加することもできる

【0034】
次に、本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は前記の各成分(A)〜(D)、必要に応じて成分(E)〜(H)
およびその他の成分を本明細書記載の組成割合で配合し、押出機等の溶融混練装置を用い
て溶融混練することにより得ることが出来る。このときの各構成成分の配合、及び溶融混
練は一般に使用されている装置、例えば、タンブラ−、リボンブレンダ−等の予備混合装
置、単軸押出機や二軸押出機、コニ−ダ−等の溶融混練装置を使用することが出来る。ま
た、溶融混練装置への原材料の供給は、予め各成分を混合した後に供給することも可能で
あるが、それぞれの成分を独立して溶融混練装置に供給することも可能である。
【0035】
本発明の樹脂組成物を製造するための溶融混練装置として、通常は押出機、好ましくは
2軸押出機が使用される。溶融混練は通常、押出機のシリンダ−設定温度を200〜300℃、好ましくは220〜270℃とし、押出機スクリュ−回転数100〜700rpm、好ましくは200〜500rpmの範囲で適宜選択して行うことができるが、溶融混練に際し、過剰の発熱を与えないように配慮する。さらに、押出機の後段部分に開口部を設けて、開放脱揮、必要に応じて減圧脱揮を行うことも有効である。また、原料樹脂の押出機内滞留時間は通常、10〜60秒の範囲で適宜選択される。
【0036】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物からなる成形品を得るための成形方法は特
に限定されないが、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、回転成形、ブロ−成形等が
挙げられるが、中でも射出成形と押出成形が好ましく用いられる。
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物を射出成形によって成形する場合には、通
常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡
成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサ−ト成形、インモ−ルドコ−ティン
グ成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射
出成形等の射出成形法を用いて成形品を得ることができる。射出成形はコ−ルドランナ−
方式およびホットランナ−方式のいずれも選択することができる。
【0037】
射出成形の場合、樹脂の流動性を上げる特殊な手法として溶融樹脂内に窒素又は二酸化
炭素を可塑剤として溶解させ、溶融樹脂の流動性を向上させる方法を用いても良い。窒素
や二酸化炭素は、適宜射出成形機シリンダ−にベント部を設けてそこから注入しても良い
。また、成形品の転写性の向上、あるいは前記窒素や二酸化炭酸を溶融樹脂に溶解した樹
脂を金型内に充填するときの外観上の不具合(スワ−ルマ−ク)を防止するために溶融樹
脂を金型内に充填する前に、予め金型内に窒素ガスや二酸化炭素を充填しておいても良い
。この場合、転写性を向上させる目的では、二酸化炭素が好ましく用いられる。
また、本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物を押出成形により成形する場合には
。各種の異形押出成形品、シ−ト、フィルム等の形で使用することもできる。シ−ト、フ
ィルムの成形にはインフレ−ション法や、カレンダ−法、キャスティング法等も使用可能
である。
また、本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物からなる成形体では、表面にフレネ
ルレンズ形状、シリンドリカルレンズ形状、等の凹凸表面形状を付与することも好ましく
、またかかる形状を別途他の材料によって積層した積層板とすることも可能である。
【0038】
光拡散機能が求められる成形体では、光拡散性能と光透過性能が共に優れる成形体が望
ましい。従って、本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物からなる成形体では、該成
形体において実質的に光拡散機能を発現する部位に対して、JIS−K−7105に準じ
て全光線透過率(T)(単位:%)、拡散透過率(D)(単位:%)、およびHaze[
(D/T)×100](単位:%)を測定した場合において、好ましくはTが50%以上でありかつHazeが60%以上、より好ましくはTが55%以上でありかつHazeが70%以上、さらに好ましくはTが60%以上でありかつHazeが80%以上、特に好ましくはTが60%以上でありかつHazeが90%以上の成形体である。
【0039】
更に本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物からなる成形体は、UL94規格に準
ずる試験法にてV−0、V−1のいずれかの難燃性を達成することが好ましく、特にV−
0を達成することが好ましい。
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物は、難燃性と光拡散/光透過性バランスに
優れ、かつ、安定した成形加工性が得られる芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物であり、
その成形体の例としては、照明器具部品、看板、樹脂製窓、腰窓、カ−ポ−ト用屋根材、
道路用壁板、輸送機械用部材、住宅用屋根材、各種電子・電気機器、OA機器、容器、雑
貨等をはじめとし、液晶表示装置用の光拡散板、画像読取装置、プロジェクタ−用スクリ
−ン、等を挙げることができ、幅広い分野において使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分(A)〜(D)、およびその他の成分を
使用し、芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物を製造した。
1.成分(A):芳香族ポリカ−ボネ−ト
(A−1)
ビスフェノ−ルAとジフェニルカ−ボネ−トから、溶融エステル交換法により製造され
た、ビスフェノ−ルA系ポリカ−ボネ−トであり、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤と
してオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネ−トを300ppm、および、ホスファイト系熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t
−ブチルフェニル)ホスファイト(本発明の成分(F)に対応)を300ppm含むもの

重量平均分子量(Mw)=23,000
フェノ−ル性末端基比率(フェノ−ル性末端基が全末端基数に占める割合)=35モル

【0041】
2.成分(B):有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少
なくとも1種の有機酸金属塩
(B−1)
パ−フルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ工業(株)製「メガファック
F114(登録商標)」)
3.成分(C):高分子透明微粒子
(C−1)
シリコ−ンレジンパウダ−(信越化学工業(株)製「KMP−590(登録商標)」)
(C−2)
架橋ポリメタクリル酸メチル(積水化成品工業(株)製「テクポリマ− MBX−12
(登録商標)」)
【0042】
4.成分(D):フルロポリマ−
(D−1)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)の
50/50(重量比)粉体状混合物(三菱レ−ヨン株式会社製「メタブレンA−3800
(登録商標)」)
5.成分(E):ヒュ−ムドシリカ
(E−1)
日本アエロジル(株)製「アエロジルRY200(登録商標)」
6.成分(G):紫外線吸収剤
(G−1)
日本チバガイギ−(株)製「Tinuvin329(登録商標)」
【0043】
7.成分(H):蛍光増白剤
(H−1)
2,2−(2,5−チオフェンジイル)ビス(5−(1,1−ジメチルエチル))ベン
ゾオキサゾル(日本チバガイギ−(株)製「UVITEX OB(登録商標)」)
8.その他の成分:
(PETS)
ペンタエリスリト−ルテトラステアレ−ト(日本油脂(株)製「ユニスタ−H476(
登録商標)」)
(CaCO3
平均粒子径4.5〜5μmの炭酸カルシウム粒子(根本特殊化学(株)製「ルミパ−ル
DSN−30(登録商標)」
【0044】
〔実施例1〜6、及び、比較例1〜6〕
成分(A)〜(D)、並びに成分(E)、(G)、(H)およびその他成分を表1に示
す量(単位は重量部)で二軸押出機を用いて溶融混練して芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組
成物を得た。
成分(A)を除く成分、すなわち、成分(B)、(C)、(D)、(E)、(G)、(
H)、およびその他の成分(これらはいずれも粉体である)を予めタンブラ−を用いて5
分間予備混合を行って粉体原料混合物とした。しかる後に、該粉体原料混合物と成分(A
)(成分(A)はペレット形状である)を更にタンブラ−で5分間混合して原料予備混合
物を調製した。
溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)
を使用した。
前記原料予備混合物を2軸押出機に重量フィ−ダ−を介して投入し、シリンダ−設定温
度250℃、スクリュ−回転数150rpm、混練樹脂の吐出速度12kg/Hrの条件
で溶融混練を行った。溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温
度は260〜270℃であった。また、押出機の後段部分にベント口を設けて、開放脱揮
を行った。
溶融混練された芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物はストランド状に押出され、ペレタ
イズされる。得られたペレットを120℃で4時間乾燥し、成形に用いた。
【0045】
成形体は、射出成形もしくは押出成形により成形し、以下の評価を行った。
押出成形は、得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間乾燥し、Tダイを装着
した65mm単軸押出機(GMエンジニアリング株式会社製 GM65−25)により、
シリンダ−設定温度270℃、スクリュ−回転数15rpm、吐出量10〜15kg/h
r、の条件で2mm厚のシ−トを成形した。
(1)全光線透過率(T)、拡散光透過率(D)、ヘイズ[(D/T)×100]
シリンダ−温度300℃、金型温度80℃に設定した射出成形機(オ−トショット10
0D、ファナック社製)により、50mm(幅)×90mm(長さ)であり、厚みが3m
m、2mm、及び1mmの3段プレ−トを成形した。
該3段プレ−トの厚み2mm部分に対して、全光線透過率(T)[単位%]、拡散光透
過率(D)[単位%]、ヘイズ[単位%]は、日本電色工業(株)製COLOR AND COLOR DIFFERENCE METER MODEL 1001DPを用いて測定した。
【0046】
(2)難燃性
燃焼試験用の短冊状成形体(厚さ2.0mm)を射出成形機により、シリンダ−設定温
度260℃、金型温度70℃の条件で成形し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日間
保持した後、UL94規格に準じて50W(20mm)垂直燃焼試験を行い、V−0、V
−1、V−2に分類した。
また、押出成形体は、成形体よりUL94規格に準じる寸法の試験片を切り出して燃焼
試験を行い、射出成形体と同様に燃焼性を評価した。
【0047】
(3)滞留安定性
シリンダ−温度を300℃に設定した射出成形機(オ−トショット100D、ファナッ
ク社製)により、4mm厚のISO規格引っ張り試験用ダンベル片を連続的に成形し、該
試験片を小片に切り出して、該小片を120℃で4時間乾燥させた後、JIS K721
0に準じて、炉体温度300℃、荷重1.2kgにてメルトインデックス(MI)値(表1中においてMI(1)と表す)(単位:g/10min)を測定した。
また、同じ樹脂組成物を、同じ射出成形機を用いて同じシリンダ−設定温度(300℃
)で射出成形内部に10分間滞留させた後に、同様に4mm厚のISO規格引っ張り試験
用ダンベル片を成形し、該試験片を小片に切り出して、上記と同様にMI値(表1中にお
いてMI(2)と表す)を測定した。
成形機内部に10分滞留させた後に成形した試験片のMI値(MI(2))の増大が小さいものほど滞留安定性に優れると判断した。
結果を表1および表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体は、各種
の光拡散機能が求められる用途、例えば、照明器具カバ−、透過型ディスプレイ用スクリ
−ン、液晶バックライト用光拡散板、採光窓、腰窓、目隠し板、間仕切り、看板、等に有
用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカ−ボネ−ト(A)100重量部に対して、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(B)0.001〜1重量部、平均粒子径0.5〜30μmの高分子透明微粒子(C)0.01〜5重量部、フルオロポリマ−(D)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
【請求項2】
更に、ヒュ−ムドシリカ(E)0.01〜3重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
【請求項3】
更に、有機リン系安定剤(F)0.001〜0.5重量部を含むことを特徴とする請求
項1又は2に記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
【請求項4】
更に、紫外線吸収剤(G)0.001〜1重量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
【請求項5】
更に、蛍光増白剤(H)0.0005〜0.1重量部を含むことを特徴とする請求項1
〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物を成形してなる成
形体。
【請求項7】
該成形体が、光拡散機能が求められる成形体であって、該成形体において実質的に光拡
散機能を発現する部位に対してJIS−K−7105に準じて全光線透過率(T)(単位
:%)、拡散透過率(D)(単位:%)、およびHaze[(D/T)×100](単位:%)を測定した場合に、Tが50%以上であり、かつHazeが60%以上であることを特徴とする請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
該成形体が光拡散板であることを特徴とする請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
該成形体が液晶ディスプレイ用光拡散板であることを特徴とする請求項8に記載の成形
体。
【請求項10】
該成形体が、UL94規格に準ずる試験法にてV−0、V−1のいずれかの難燃性を有
することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の成形体。

【公開番号】特開2006−143949(P2006−143949A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338636(P2004−338636)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】