説明

芳香族ポリカーボネートの製造方法

【課題】本発明は、重合器を多段で用いて重合を行う際に、最終段重合器より前の段の重合器での分子量の変動を吸収し、最終段重合器から分子量の安定したポリマーを得る芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの混合物を溶融状態で重合させて芳香族ポリカーボネートを製造する方法に用いる重合設備であって、該重合設備が、複数の重合器が直列につながった多段式であり、最終段重合器が、該混合物とその混合物の重合体との混合である重合混合体をガイドに沿わせて落下させながら重合させる重合器であり、最終段重合器とそれより一つ前の重合器の間に中間タンクを有する重合設備を使用して重合させることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合器を多段で用いて重合を行う際に、最終段重合器より前の段の重合器での分子量の変動を吸収し、最終段重合器から分子量の安定したポリマーを得る芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックスとして、多くの分野において幅広く用いられている。この芳香族ポリカーボネートの製造方法については、従来種々の研究が行われ、その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという。)とホスゲンとの界面重縮合法が工業化されている。
しかしながら、この界面重縮合法においては、有毒なホスゲンを用いなければならないこと、副生する塩化水素や塩化ナトリウム及び、溶媒として大量に用いる塩化メチレンなどの含塩素化合物により装置が腐食すること、ポリマー物性劣化に悪影響を及ぼす塩化ナトリウムなどの不純物や、残留塩化メチレンの分離が困難なことなどの問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、ホスゲンの替わりにジアリールカーボネートやジアルキルカーボネートを用いて芳香族ポリカーボネートを製造する方法が数多く提案されている。ジアルキルカーボネートを用いて芳香族ポリカーボネートを製造する方法として、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応による方法や(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物の脂肪酸エステルとのエステル交換反応による方法(特許文献4参照)等が提案されている。このジアルキルカーボネートを用いる方法では、反応の際に、重合系内から脂肪族モノヒドロキシ化合物やその誘導体、及びジアルキルカーボネート等が蒸溜塔の塔頂溜分として溜出するが、これらは通常常温25℃で液体であるため、上記ジアリールカーボネートを用いる方法に比べ、その取扱いは容易である。
【0004】
しかしながら、これらの方法においては、前者の方法は反応が遅くて、高分子量体を得るのが困難である等の欠点を有し、後者の方法は、原料製造時にケテンの様な不安定かつ有毒物質が生成する上に工程が複雑であって、工業プロセスとして満足しうる方法とはいえない。又、ジアルキルカーボネートを用いる方法では、得られる芳香族ポリカーボネートの末端にはアルキルカーボネート基が導入されるが、このアルキルカーボネートを有するポリマーは熱安定性に劣るという品質上の問題も有していた。
一方、ジアリールカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とからエステル交換反応により芳香族ポリカーボネートを製造する反応(以下しばしば本反応と略記する)は以前から知られており、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートを溶融状態で重合して、芳香族ポリカーボネートを得ることができる。この方法は、高粘度ポリカーボネートの溶融体中から、芳香族モノヒドロキシ化合物(フェノール等)を留去しなければ重合度が上がらないことから、(1)高温で重合するため、副反応によって分岐や架橋が起こりやすく、品質の良好なポリマーが得にくいこと、(2)着色を免れないこと等、種々の欠点を有していた(非特許文献1参照)。
【0005】
これらの欠点を克服するため、触媒や安定剤、重合方法等に関して数多くの試みがなされている。特に本出願人等は、特許文献5の明細書において、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの溶融混合物、または芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを反応して得られる重合中間体を、自由に落下させながら重合する方法を開示しており(以下しばしばワイヤー型重合器と略記する)、この方法によれば着色のない高品質のポリカーボネートを製造することが可能である。
このガイドに沿わせて落下させながら重合させる方法では、芳香族モノヒドロキシ化合物の除去が速やかに行われるため、従来の攪拌型反応器に比べて重合速度が高いのであるが、それでも、本反応は非常に遅い反応であり、1基の重合器で所望の分子量まで重合を進めるためには、工業的には実現の難しいほどに大きな重合器が必要となってしまい、実用上は重合器を2段以上用いて重合させる場合がほとんどである。実際、特許文献5やそれに続く特許文献6〜15において本発明者らは、ワイヤー型重合器に関する詳細な技術開示を行っている訳であるが、いずれの技術開示においても、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを予めある程度重合させたプレポリマーをまず製造し、このプレポリマーをワイヤー型重合器に供することによって、重合の進行が困難になる高分子量領域での重合を速やかに進めている。
【0006】
このように多段で重合を行う場合には、前の段から払い出される重合物の重合度、末端水酸基比率、払い出し量などの諸条件が決まらないと、後の段重合器の運転条件が決まらないし、前の段の諸条件が安定しないと、当然のことながら、引き続く後の段も安定して運転することができないことは言うまでもない。
しかしながら、本反応の場合、各段の重合時間は場合によっては数時間に及び、前段の反応条件を決めてから、後段で製品ポリマーの分子量を知るまでに、極めて長い時間が過ぎてしまい、後ろの重合器から払い出された重合物を分析してから前の重合器の運転条件を変更したのでは、遅きに失して重合反応を制御できなくなってしまう欠点があり、その対策が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開昭57−2334号公報
【特許文献2】特開昭60−169444号公報
【特許文献3】特開昭60−169445号公報
【特許文献4】特開昭59−210938号公報
【非特許文献1】松金幹夫他、プラスチック材料講座〔5〕「ポリカーボネート樹脂」日刊工業新聞社刊行(昭和44年)、第62〜67ページ参照
【特許文献5】国際公開第95/03351号
【特許文献6】特開平10−298279号公報
【特許文献7】特開平08−325373号公報
【特許文献8】特開平08−225643号公報
【特許文献9】特許第3200345号公報
【特許文献10】特許第3199644号公報
【特許文献11】特開平10−176045号公報
【特許文献12】特開平10−279678号公報
【特許文献13】特開平10−324742号公報
【特許文献14】国際公開第99/64492号
【特許文献15】国際公開第99/65970号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、重合器を多段で用いて重合を行う際に、最終段重合器より前の段の重合器での分子量の変動を吸収し、最終段重合器から分子量の安定したポリマーを得る芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、例えば、2段重合器を用いて重合を行う場合、前段重合器と最終段重合器の間に中間タンクを設けることで、前段重合器の分子量変動を吸収できる(バッファー効果)ことが判り、本発明の端緒とした。さらに、該中間タンクの運転方法について検討を重ねた結果、中間タンクでの平均滞留時間を特定の範囲に絞ることで、適切なバッファー効果を得られることが判り、さらに機器や運転方法を改良して、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを溶融状態で重合させて芳香族ポリカーボネートを製造する方法に用いる重合設備であって、該重合設備が、複数の重合器が直列につながった多段式であり、最終段重合器がガイドに沿わせて落下させながら重合させる重合器であり、最終段重合器とそれより一つ前の重合器の間に中間タンクを有する重合設備を用いることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法に関わる。
2.該中間タンクにおけるポリマーの平均滞留時間T[hr]が、該最終段重合器におけるポリマーの落下時間t[hr]に対して、0.5倍以上、20倍以下である上記1記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法に関わる。
3.該中間タンクが、攪拌設備を有することを特徴とする上記1あるいは2記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法に関わる。
4.該最終段重合器より一つ前の重合器から該中間タンクへのポリマーの受け入れと、該中間タンクから最終段重合器へのポリマーの払い出しが連続的に行われることを特徴とする上記1から3のいずれか記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法に関わる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、重合器を多段で用いて重合を行う際に、最終段重合器より前の段の重合器での分子量の変動を吸収し、最終段重合器から分子量の安定したポリマーを得る芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を具体的に説明する。
本発明において、芳香族ジヒドロキシ化合物とは、HO−Ar−OHで示される化合物である(式中、Arは2価の芳香族基を表す。)。芳香族基Arは、例えば好ましくは−Ar−Y−Ar−で示される2価の芳香族基である(式中、Ar及びArは、各々独立にそれぞれ炭素数5〜70を有する2価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表し、Yは炭素数1〜30を有する2価のアルカン基を表す。)。
2価の芳香族基Ar、Arにおいて、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。
複素環式芳香族基の好ましい具体例としては、1ないし複数の環形成窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族基を挙げることができる。
2価の芳香族基Ar、Arは、例えば、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のビフェニレン、置換または非置換のピリジレンなどの基を表す。ここでの置換基は前述のとおりである。
2価のアルカン基Yは、例えば、下記式(1)で示される有機基である。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R、R、R、Rは、各々独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基、環構成炭素数5〜10の炭素環式芳香族基、炭素数6〜10の炭素環式アラルキル基を表す。kは3〜11の整数を表し、RおよびRは、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素を表す。また、R、R、R、R、R、Rにおいて、一つ以上の水素原子が反応に悪影響を及ぼさない範囲で他の置換基、例えばハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等によって置換されたものであっても良い。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記式(2)で示されるものが挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R、Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基またはフェニル基であって、mおよびnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各Rはそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合には各Rはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。)
さらに、2価の芳香族基Arは、−Ar−Z−Ar−で示されるものであっても良い。(式中、Ar、Arは前述の通りで、Zは単結合又は−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−COO−、−CON(R)−などの2価の基を表す。ただし、Rは前述のとおりである。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記式(3)で示されるものが挙げられる。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R、R、mおよびnは、前述のとおりである。)
さらに、2価の芳香族基Arの具体例としては、置換または非置換のフェニレン、置換または非置換のナフチレン、置換または非置換のピリジレン等が挙げられる。ここでの置換基は前述のとおりである。
本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、単一種類でも2種類以上でもかまわないが、製造される複数のポリカーボネートの内全てに共通で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物であることが必要である。現在は一般に、ビスフェノールAポリカーボネートが主流であることから、ビスフェノールAを単独で用いることが好ましい。
本発明で用いられるジアリールカーボネートは、下記式(4)で表される。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Ar、Arはそれぞれ1価の芳香族基を表す。)
Ar及びArは、1価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表すが、このAr、Arにおいて、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。ArとArは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。
1価の芳香族基Ar及びArの代表例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピリジル基を挙げることができる。これらは、上述の1種以上の置換基で置換されたものでも良い。
好ましいAr及びArとしては、それぞれ例えば、下記式(5)などが挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
ジアリールカーボネートの代表的な例としては、下記式(6)で示される置換または非置換のジフェニルカーボネート類を挙げることができる。
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1〜10を有するアルキル基、炭素数1〜10を有するアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には、各Rはそれぞれ異なるものであっても良いし、qが2以上の場合には、各R10は、それぞれ異なるものであっても良い。)
【0025】
このジフェニルカーボネート類の中でも、非置換のジフェニルカーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましいが、特にもっとも簡単な構造のジアリールカーボネートである非置換のジフェニルカーボネートが好適である。
これらのジアリールカーボネート類は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明における芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの使用割合(仕込比率)は、目標とするポリカーボネートの分子量範囲や末端基比率、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの種類、重合温度その他の重合条件によって異なるが、ジアリールカーボネートが、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常上限は2.5モル、好ましくは2.0モル、さらに好ましくは1.5モルである。該モル比の下限は0.9モル、好ましくは0.95モル、さらに好ましくは0.98モルである。
得られる芳香族ポリカーボネートの数平均分子量は500〜100000であり、好ましくは2000〜30000である。
【0026】
本発明に用いる重合設備は、複数の重合器が直列につながったものである。なお、以下しばしば最終段重合器よりも前の重合器を総称して前段重合器と呼ぶ。
本発明における前段重合器は、ポリカーボネートの反応器として広く使用されているものが使用でき、例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ガイドとも呼ばれるワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が用いられ、これらを組み合わせて用いることも好ましい。これらの反応器の材質は、鉄を20%以上含む材質、例えばSUS304,SUS316,SUS316Lが、入手や加工が容易であり好ましく、また、鉄含有量が20%以下の材質、例えば、ニッケルやチタン等の非鉄材料を用いた反応器も、着色を防止する効果が期待できて好ましい。
各段重合器での重合温度は、用いる芳香族ヒドロキシ化合物やジアリールカーボネートの種類、所望の分子量や水酸基末端比率、等によって異なり、通常上限は350℃、好ましくは290℃、さらに好ましくは280℃であり、通常下限は100℃、好ましくは150℃、さらに好ましくは180℃である。
【0027】
反応の進行にともなって、芳香族モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、これを反応系外へ除去することによって反応速度が高められる。従って、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガスなど反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを導入して、生成してくる該芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方法や、減圧下に反応を行う方法などが好ましく用いられる。好ましい反応圧力は、分子量によっても異なり、比較的低分子量のポリマーを所望する場合には10Torr〜常圧の範囲が好ましく、比較的高分子量のポリマーを所望する場合には、20Torr以下、特に10Torr以下が好ましく、2Torr以下とすることが更に好ましい。具体的には、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートから芳香族ポリカーボネートを製造する場合、数平均分子量が1000以下の範囲では、50Torr〜常圧の範囲が好ましく、数平均分子量が1000〜2000の範囲では、3Torr〜50Torrの範囲が好ましく、数平均分子量が2000以上の範囲では、20Torr以下が好ましく、10Torr以下がより好ましく、特に2Torr以下が好ましい。
各段における重合は、不活性ガス存在下に行うことがほとんどで、該不活性ガスとしては、窒素、炭酸ガス、アルゴンやヘリウムなどの希ガス類、低級炭化水素ガスなど反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスが挙げられるが、窒素が工業的に大量に容易に入手でき好ましい。
【0028】
本発明で各段重合器に用いる触媒は、この分野で用いられているものであれば種々のものを例示でき、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−OLi、NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレートなど(R)NB(R)で表されるアンモニウムボレート類、(R)PB(R)で表されるホスホニウムボレート類(R、R、R、Rは前記式(1)の説明通りである。)などのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシドまたはアリーロキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドまたはアリーロキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム化合物類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などのアンモニウムヒドロオキシド類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミンなどの三級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジフェニルアミン、エチルフェニルアミンなどの二級アミン類;メチルアミン、エチルアミン、フェニルアミン、トルイルなどの一級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどの イミダゾール類などの触媒を挙げることができる。
【0029】
これらの触媒は1種だけで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中で、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩類、アンモニウムヒドロオキシド類等の含窒素化合物、ホウ素化合物が単独もしくは併用で好ましく用いられる。また、これらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物100質量部に対して、通常10−8〜1質量部、好ましくは10−7〜10−2質量部、特に好ましくは10−6〜10−4質量部の範囲で選ばれる。
本発明で用いる最終段重合器はガイドに沿わせて前段重合器の混合物を沿わせて落下させながら重合させるワイヤー型重合器である。
【0030】
本発明では、内装物に沿わせて落下させながら重合させる重合器を最終段重合器に用いて芳香族ポリカーボネートを製造する。本発明において内装物とは、その内装物の表面に沿ってポリマーが落下できるものを言う。例えば内装物を重合器に固定するためのサポート類は、そのサポート表面に沿ってポリマーが落下できる場合は内装物とみなし、そのサポート表面に沿ってポリマーが落下できない場合は内装物とはみなさない。
内装物の中でも、特に重合器の上部から下部へ鉛直方向につながっている内装物が好ましい。この場合、つながっているというのは内装物が直接重合器上部及び下部に接していてもよいし、単に重合器上部の空間と重合器下部の空間をつなげているだけで、重合器に直接接していなくてもかまわない。このような内装物としては、例えば重合器の上部から下部へ鉛直方向につながって設置されているワイヤー、チューブ、チェーン、ワイヤーロープ、スプリング、平板等が挙げられる。このような内装物は、重合器内に複数設置されていることが好ましい。内装物に沿わせてポリマーを落下させるために、重合器上部にポリマーを供給するための多孔板を設け、多孔板の各孔と内装物を接続させておくことも好ましい方法である。その他の内装物としては、充填剤タイプのものが挙げられる。この様な内装物としては、例えばラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等が挙げられる。
【0031】
前段重合器同様、最終段重合器の材質は、鉄を20%以上含む材質、例えばSUS304,SUS316,SUS316Lが、入手や加工が容易であり好ましく、また、鉄含有量が20%以下の材質、例えば、ニッケルやチタン等の非鉄材料を用いた反応器も、着色を防止する効果が期待できて好ましい。
本発明で用いる中間タンクは、上記前段重合器の場合の攪拌型重合器に準じる設備であって、最終段重合器の一つ前の重合器から重合物を受け入れる設備、および、最終段重合器に重合物を払い出す設備が必要である。
中間タンクの使用条件は、温度として50℃〜350℃、好ましくは100℃〜290℃の範囲から選ばれる場合が多く、最終段重合器の重合温度と同一の温度に制御しておくことは、温度変化を無くすることで、本発明の主旨である安定した重合反応を進める一助になることが期待できて好ましい。圧力は常圧で使用することが、設備が簡便で好ましいし、減圧で使用することも、本反応に伴って副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を除去できて、少しでも重合を進めることが期待できるため好ましく、窒素などの不活性ガスによって微加圧条件で使用することも、空気などの漏れ込みを防げるために好ましい。
【0032】
本発明におけるバッファー効果とは、一定の分子量のポリマーを定常的に製造する場合に、原料の重合器への流量や反応温度が僅かに変動しても、製品の分子量が大きく変動しないようにする効果のことである。変動の許容幅は、樹脂を使用する目的によって異なるが、例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブックに拠れば(ポリカーボネート樹脂ハンドブック 本間 精一著 1992年8月28日 日刊工業新聞社 75〜85頁)、ハイフローグレードのポリカーボネート樹脂とは、数平均分子量として、18000〜20000を指し、これが分子量変動の許容幅と考えることができる。他にも、同ハンドブックに拠れば、押出しグレードは29000〜33000、光ディスクグレードは15000〜16000となっている。これに倣い、本発明では、変動の幅を±5%まで許容する。
【0033】
中間タンクにおける平均滞留時間Tは、適切なバッファー効果を得るために重要であり、最終段重合器におけるポリマーの落下時間t(上記反応器内装物の上端から下端までの落下の時間)に対して、上限は20倍以下、好ましくは15倍以下、さらに好ましくは10倍以下である。平均滞留時間Tがtに対して20倍よりも長い場合には、前段重合器の分子量変動が大きくても、中間タンクで充分に変動を吸収できるため好ましい面もあるのだが、ポリマーの着色やゲル状物の発生が顕著になったり、樹脂の粘度低下が見られる場合があったりするため好ましくない。平均滞留時間Tの下限は、0.5倍以上、好ましくは0.8倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。平均滞留時間Tがtに対して0.5倍よりも小さい場合には、適切なバッファー効果が得られないため好ましくない。
【0034】
さらに、該中間タンクには攪拌設備を設けておくことが好ましい。本発明を工業的に実施する場合には、前段、最終段重合器、ならびに該中間タンクも含めて、設備が大きくなることは避けられず、中間タンク内で温度分布が生じて分子量分布が所定値よりも広がったり、タンク内に樹脂溜りが発生して、長期滞留した樹脂が異物になったりする場合があり、これらの障害を防ぐために、中間タンクを攪拌しておくことが好ましい。
該中間タンクは、バッチ式、連続式のいずれの方式でも運転することができる。
バッチ式で運転する場合には、前段重合器から一旦ポリマーを受け入れたのち、請求項3で規定する平均滞留時間内で保持し、好ましくは攪拌した状態で保持し、最終段重合器に払い出す。
【0035】
連続式で運転する場合には、受け入れ、払い出しとも連続して行い、本発明を工業的実施する場合には好ましい方式である。
連続式の場合、平均滞留時間の定義は、中間タンク内のポリマー溶融液部体積[m]を前段重合器からのポリマー受け入れ速度[m/hr]で割り返した値を以って定義する。
最終段重合器におけるポリマーの平均滞留時間は、公知の方法で測定することが可能であり、例えば、重合器入口において、投入ポリマーに色素や電解質などマーカーを微量パルス投入し、重合器出口でマーカーの色濃度やポリマーの電気伝導度を測定する方法、最終段重合器の運転開始時に、供給口に最初のポリマーを投入してから、排出口から最初にポリマーが出てくるまでの時間を測定する方法、最終段重合器の運転終了時に、ポリマーの投入を停止してから、最後にポリマーが出終わるまでの時間を測定する方法などが例示される。
【0036】
いずれの測定方法でも、ある程度の誤差を含むことは避けられないし、測定方法間での値も違うことが懸念されるが、本発明者らが工夫を重ねて検討した結果では、それらの誤差や違いは思ったほど大きくはなく、1〜数時間の平均滞留時間に対して、高々2〜3分程度であり、中間タンクの設計上なんら問題とはならなかった。
本発明では、重合工程の温度や減圧度、平均滞留時間等を変更することで、分子量が異なるポリカーボネートを製造できる。また、重合工程に前述の芳香族ジヒドロキシ化合物や、水酸基末端のポリカーボネートプレポリマー(低重合度ポリカーボネート)、前述のジアリールカーボネート類やアリールカーボネート末端のポリカーボネートプレポリマー、t−ブチルフェノールやt−オクチルフェノール等の単官能置換フェノール類等公知の末端調節剤を添加することで、水酸基末端比率や末端構造の異なるポリカーボネートを製造することができる。
さらに、重合工程に前述の芳香族ジヒドロキシ化合物類やそれらの重合体や、両末端にヒドロキシル基やカルボシキル基を有する化合物等の共重合成分を添加することで、繰り返し単位や比率の異なるポリカーボネートを製造することができる。
【0037】
本発明で得られたポリカーボネートに触媒失活剤を添加することもできる。
本発明に使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、就中、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0038】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当たり0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
更に、重合工程にABSやPET等の他樹脂や、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料、難燃剤等の添加剤等を添加することで、さまざまな用途に合わせたポリカーボネート組成物を製造することができる。
更に、これらを組み合わせることで、多様なポリカーボネートを製造できる。
耐熱安定剤や酸化防止剤として、例えば、燐化合物、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等を挙げることができ、光安定剤や紫外線吸収剤として、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0039】
離型剤としては一般的に知られた離型剤を用いることができ、例えば、パラフィン類などの炭化水素系離型剤、ステアリン酸等の脂肪酸系離型剤、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、ペンタエリスリトール等のアルコール系離型剤、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸エステル系離型剤、シリコーンオイル等のシリコーン系離型剤等を挙げることができる。
有機系や無機系の顔料や染料を使用することができる。
その他にも、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤など、目的に応じて使用することができる。
これらはいずれも2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの添加剤は、直接に、または適当な溶剤またはポリマーに溶解または分散させて、あるいはマスターペレットとして、溶融状態のポリカーボネートに添加、混練する。このような操作を実施するのに用いられる設備に特に制限は無いが、例えば2軸押出機等が好ましく、添加剤を溶液の形で供給する場合はプランジャーポンプ等の定量ポンプが用いられ、添加剤をマスターポリマーの形で供給する場合はサイドフィーダー等が一般に使用される。添加剤を溶剤に溶解または分散させた場合はベント付きの2軸押出機が特に好ましく使用される。
次に、本発明を実施例および比較例によって説明する。
【実施例】
【0040】
数平均分子量(以下、Mnと略す)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行った。テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求めた。
PC=0.3591MPS1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
水酸基末端比率の測定は、ポリカーボネートポリマー0.3gを5mlの重水素置換クロロホルムに溶解し、23℃で1H−NMR(バルカー社製EX−400)を用いて末端基を測定した。水酸基末端比率(モル%)は全末端数に対する水酸基の割合により計算した。
【0041】
次に、本発明を実施するプロセスの概略を図1に示す。
原料である芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートと触媒は、調合槽に投入され混合される。ここまではバッチ操作で行った。混合された調合液は前段重合器に送られて重合し、さらに、ワイヤー型最終段重合器に送られて所望の分子量まで重合反応を進行させた後、ワイヤー型最終段重合器より取り出される。攪拌型前段重合器以降の操作は連続式で行った。
攪拌型重合器は攪拌槽型重合器で、前段攪拌型重合器は内液量20リットルを維持するように運転する。ワイヤー型前段重合器はワイヤー付多孔板型重合器で、孔径5mmの孔を20個有する多孔板を備えており、孔の中心から鉛直に2mm径のSUS製ワイヤーを重合器下部の液溜めまで垂らしてあり、落下する高さは8mである。
【0042】
ワイヤー型最終段重合器は、重合器下部の液溜めの液量が20リットルに達したら、液量20リットルを保つように溶融ポリマーを払い出した。
本発明では、攪拌型前段重合器以降の温度圧力条件は以下のように決めて運転した。
攪拌型前段重合器は、反応温度235℃、反応圧力98Torrである。
ワイヤー型最終段重合器は、反応温度272℃、反応圧力0.8Torrである。
用いた芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートはそれぞれ、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートで、いずれも、50Torrで真空脱気し、窒素ガスで置換する不活性ガス処理を行った。
【0043】
[実施例1]
調合槽の温度を140℃に設定し、窒素ガスを用いて常圧よりも50Torr微加圧した。ジフェニルカーボネート粉体40.8kgを投入し、溶融させた。次に、ビスフェノールA粉体39.2kgを調合槽に投入した。投入したビスフェノールAに対する投入したジフェニルカーボネートのモル比は1.11であった。
このようにして調合した溶融ポリマーを、10kg/hrで前段攪拌型重合槽へ移送し、重合に供した。前段攪拌型重合器出口でのポリマーの分子量変動は、表1に示す通りであった。
この樹脂を連続的に中間タンクへ移送した。最終段ワイヤー型重合器の平均滞留時間は2時間だったので、中間タンクでの滞留時間は4hで設計した。タンクの温度は270℃、窒素で約50Torrに微加圧し、攪拌しながらポリマーを保持した。
中間タンクの樹脂は、連続的に最終段ワイヤー型重合器に送り、重合に供し、主に光ディスク向け射出成型グレード(数平均分子量11,000〜13,000)の芳香族ポリカーボネートを製造した。
製造の途中で意図的に調合槽の温度を1時間だけ100℃に下げて、またもとの140℃に戻し、最終段反応器に供給するポリマーの分子量を変化させた。
前段重合器、および最終段ワイヤー型重合器出口の分子量の変動は表1に示した通りである。
前段重合器出口では、分子量の変動が5%を越えていたのに、最終段重合器の出口では、分子量変動が5%以内に収まっていた。
【0044】
[比較例1]
中間タンクを設置しなかった以外は、実施例1と同様の実験を行った。前段攪拌型反応器、最終段ワイヤー型反応器それぞれ出口での分子量変動を表1に示した。最終段重合器の出口でも、分子量変動は5%を越えて、さらに悪化していた。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、多段重合における前段ポリマーの予期せぬ分子量変動に対しても、それを補償して分子量の変動の少ない芳香族ポリカーボネートを得る製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例1のプロセス図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの混合物を溶融状態で重合させて芳香族ポリカーボネートを製造する方法に用いる重合設備であって、該重合設備が、複数の重合器が直列につながった多段式であり、最終段重合器が、該混合物とその混合物の重合体との混合である重合混合体をガイドに沿わせて落下させながら重合させる重合器であり、最終段重合器とそれより一つ前の重合器の間に中間タンクを有する重合設備を使用して重合させることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項2】
該重合混合物が、その該中間タンクにおける平均滞留時間T[hr]が、該最終段重合器におけるポリマーの落下時間t[hr]に対して、0.5倍以上、20倍以下である請求項1記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項3】
該中間タンクが、攪拌設備を有することを特徴とする請求項1あるいは2記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
該重合が、該最終段重合器より一つ前の重合器から該中間タンクへのポリマー(重合体)の受け入れと、該中間タンクから最終段重合器へのポリマー(重合体)の払い出しが連続的に行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−96959(P2006−96959A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288045(P2004−288045)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】