説明

芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】反応条件の変更による切替運転により、異種グレードの芳香族ポリカーボネート(PC)樹脂を製造するに際し、切替運転を行った後の定常状態となる迄の期間を短縮し、PC樹脂を効率良く製造し得る方法を提供する。
【解決手段】粘度平均分子量Maを有するPC樹脂Aを製造後、同一の製造設備でMaより小さいMbを有するPC樹脂Bを製造する方法であって、エステル交換反応で得られた溶融状態のPC樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルター(P/F)を通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有し、P/Fは、PC樹脂Aを得る場合は開口径の大きなP/Fを使用し、PC樹脂Bを得る場合はそれよりも開口径の小さなP/Fを使用するようになされ、PC樹脂AからPC樹脂Bへの切り替えに際し、開口径の小さなP/Fに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ(FI)数と、切り替え1時間前のFI数との差が10個以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に関し、詳しくは、エステル交換法の反応条件の変更による切替運転により、粘度平均分子量(Mv)や分岐化度が異なる異種グレードの製品を得る芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、エステル交換法により、触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態で重縮合し、副生するフェノール類を脱離しながら製造される。そして、粘度平均分子量(Mv)や分岐化度が異なる異種グレードの製品を得る場合は、一つの製造設備を使用した一連のプロセスの中で反応(重縮合)条件を変更する切替運転が行われる。そして、例えば、Mvが大きい製品から小さい製品への切替運転を行った場合、定常状態(前の反応条件の影響が消失してMvの小さい製品の規格品が得られる状態)となる迄の期間を如何に短縮するかは、生産効率の観点から重要である。
【0003】
上記のような切替運転に言及した芳香族ポリカーボネート樹脂の製造法として、芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数を追跡し、その変化に基づき、反応器の気相部の洗浄操作の時期を決定するように改良された方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−31621号公報
【0004】
上記の方法によれば、反応器の気相部の洗浄操作の時期を適切に決定でき、フィッシュアイ数が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を効率良く製造することが出来るが、切替運転を行った後の定常状態となる迄の期間を如何に短縮するかについては何ら考慮されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、エステル交換法の反応条件の変更による切替運転により、粘度平均分子量(Mv)又は分岐化度が異なる異種グレードの製品を得る芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに際し、切替運転を行った後の定常状態となる迄の期間を短縮し、フィッシュアイ数が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を効率良く製造し得るように改良された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第1の要旨は、粘度平均分子量Maを有するポリカーボネート樹脂Aを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して粘度平均分子量Maより小さい粘度平均分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、当該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う重縮合工程と、得られた溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルターを通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有し、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Aを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Bを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Aからポリカーボネート樹脂Bへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【0007】
そして、本発明の第2の要旨は、分岐化度Ncを有するポリカーボネート樹脂Cを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して分岐化度Ncより小さい分岐化度Ndを有するポリカーボネート樹脂Dを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、当該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う重縮合工程と、得られた溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルターを通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有し、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Cを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Dを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Cからポリカーボネート樹脂Dへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘度平均分子量(Mv)や分岐化度が異なる異種グレードにおいて、フィッシュアイ数が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を効率良く製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを使用する。
【0010】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの中では、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点からビスフェノールAが好ましい。さらに、難燃性を高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物も使用することが出来る。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
炭酸ジエステルとしては、以下の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
ここで、一般式(1)中、A'は、置換されていてもよい、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の1価の炭化水素基である。2つのA'は、同一でも相互に異なっていてもよい。なお、A'上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などが例示される。
【0014】
炭酸ジエステルの具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの中では、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、2種以上を混合して使用することが出来る。
【0015】
また、上記の炭酸ジエステルは、その一部をジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換してもよく、その割合は、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。代表的なジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0016】
また、炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸またはジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用される。即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの割合(モル比)は、通常1.00〜1.30、好ましくは1.01〜1.20、更に好ましくは1.05〜1.20である。モル比が過度に小さい場合は、得られる芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が過度に大きい場合は、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となることがある。従って、末端ヒドロキシル基量は100ppm以上であることが好ましい。このような末端ヒドロキシル基量とすることにより、分子量の低下を抑制でき、色調もより良好となる。
【0017】
一般的に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調節したり、反応時の減圧度を調整したりすることにより、所望の分子量および末端ヒドロキシル基量を有するポリカーボネートが得られる。より積極的な方法として、反応時に、別途、末端停止剤を添加する周知の調節方法もある。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。末端ヒドロキシル基量は、製品ポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調などに大きな影響を及ぼす。末端ヒドロキシル基量は、用途にもよるが、実用的な物性を持たせるためには、通常1,000ppm以下、好ましくは700ppm以下である。
【0018】
エステル交換触媒は、特に制限されないが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用することも可能である。これらのエステル交換触媒の中では、実用的観点からアルカリ金属化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−3モル、更に好ましくは1×10−7〜1×10−6モルの範囲である。
【0019】
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物などの無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類(又はフェノール類)、有機カルボン酸類との塩などの有機アルカリ金属化合物が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属化合物の中では、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム又は水酸化セシウムが好ましい。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う重縮合工程と、得られた溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルターを通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有する。
【0021】
先ず、原料調製工程として、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を使用し、原料の混合溶融液を調製する。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用し、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用する場合は、通常120〜180℃、好ましくは125〜160℃の範囲である。
【0022】
次いで、重縮合工程として、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う。エステル交換反応は、通常2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。各槽の具体的な反応条件としては、温度:150〜320℃、圧力:常圧ないし減圧(1.01×10Pa〜1.3Pa)、平均滞留時間:5〜150分である。
【0023】
そして、多段方式の各反応器においては、重縮合反応の進行と共に副生するフェノールをより効果的に系外に除去するため、上記の反応条件内において、段階的により高温、より高真空に設定し、最終的には2Torr(266.6Pa)以下の減圧とする。これにより、芳香族ヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行うことが出来る。なお、得られる芳香族ポリカーボネートの色相などの品質低下を防止するため、上記の範囲内で出来るだけ低温かつ短滞留時間の設定が好ましい。
【0024】
溶融重縮合は、バッチ式または連続的に行うことが出来るが、本発明の樹脂組成物の安定性などを考慮すると、連続式が好ましい。触媒の失活剤としては、当該触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが出来る。触媒を中和する化合物の使用量は、当該触媒が含有するアルカリ金属に対し、通常0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲である。更に加えて、触媒を中和する化合物のポリカーボネートに対する使用割合は、通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲である。
【0025】
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、特に制限されないが、通常は10,000以上、好ましくは15,000以上である。
【0026】
異物を除去する精製工程で使用するポリマーフィルターとは、芳香族ポリカーボネート樹脂中に存在する異物を濾過して除去するフィルターであり、その形態は、一般には、キャンドル型、プリーツ型、リーフディスク型などの公知のものが使用できるが、特にリーフディスク型ポリマーフィルターが好ましい。リーフディスク型は、通常、円板形であり、種々の線径および開口率を有する織金網を1種以上使用して1層以上重ねたものが使用される。織りの種類は、平織、綾織、平畳織、綾畳織などがあり、また、不織布でもよい。材質は、通常、SUS−316、SUS−316L等のステンレス系が使用されるが、焼結金属や樹脂を使用することも可能である。また、絶対濾過精度は、通常0.5〜50μm、好ましくは0.5〜20μmである。なお、溶融押出機としては、通常、ベント式の単軸または多軸押出機が挙げられるが、特に、噛み合い型二軸押出機が好ましく、スクリュー回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。
【0027】
本発明は、粘度平均分子量Maを有するポリカーボネート樹脂Aを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して粘度平均分子量Maより小さい粘度平均分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法である。上記の粘度平均分子量Maは、通常15,000以上、好ましくは20,000以上、更に好ましくは23,000以上であり、その上限は通常100,000である。上記の粘度平均分子量Mbの下限は、通常10,000、好ましくは13,000、更に好ましくは15,000未満である。そして、粘度平均分子量MaとMbの差は、通常1,000以上、好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上である。
【0028】
また、本発明は、分岐化度Ncを有するポリカーボネート樹脂Cを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して分岐化度Ncより小さい分岐化度Ndを有するポリカーボネート樹脂Dを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法である。上記の分岐化度Ncは、通常0.2〜1モル%、好ましくは0.3〜1モル%、更に好ましくは0.4〜1モル%である。また、上記の分岐化度Ndは、通常0.05〜0.5モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%、更に好ましくは0.2〜0.5モル%である。そして、分岐化度NcとNdの差は、通常0.01モル%以上、好ましく0.05モル%以上、更に好ましくは0.10モル%以上である。
【0029】
斯かる切り替えは、前述の特開平2−153925号公報に記載された方法と同様であり、触媒濃度、重縮合温度、反応器内の滞留時間などの反応条件の変更によって行われる。エステル交換法による芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法では、重縮合時に分岐構造単位の生成を完全に回避することは困難であり、特に粘度平均分子量(Mv)の大きなグレードでは必然的に重縮合温度や触媒濃度を上げざるを得ず、分岐構造単位に由来すると推測されるフィッシュアイ数は増加する傾向にある。
【0030】
また、溶融押出機に装着されるポリマーフィルターが粘度平均分子量(Mv)によって選定される場合では、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Aを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Bを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Aからポリカーボネート樹脂Bへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下である。Mvが高い場合に開口径の大きなポリマーフィルターを使用する理由は、異物除去率の少しの低下と引き換えに、粘度に依存する圧力損失が過度に大きくなるのを防止し、ポリマーフィルターの破損を防止するためである。なお、上記の開口径の大小は相対的なものであり、具体的に使用するポリマーフィルターの開口径は目的とする樹脂の品質(フィッシュアイ含量など)によって決定される。
【0031】
一方、溶融押出機に装着されるポリマーフィルターが分岐化度によって選定される場合では、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Cを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Dを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Cからポリカーボネート樹脂Dへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下である。その理由は、分岐化度が高い場合には低剪断速度領域の溶融粘度が分岐化度が小さい場合に比べて大きくなるため結果的に上記のMvが高い場合と同様の現象が起こるからである。
【0032】
本発明の特徴は、粘度平均分子量(Mv)が大きい製品から小さい製品への切替運転や分岐化度が大きい製品から小さい製品への切替運転に際し、反応条件を変更した後に、直ちに開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えず、前述のように、ポリマーフィルターを通過した芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数を追跡し、その変化に基づいて開口径の小さなポリマーフィルターに切り替える点にある。
【0033】
粘度平均分子量(Mv)が大きい製品から小さい製品への切替運転に際し、反応条件を変更した後に、直ちに開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えた場合は次のような問題がある。すなわち、反応条件を切り替えた場合、比較的早い時期に反応系内の芳香族ポリカーボネート樹脂のMvは小さくなる(低粘度となる)ものの、切り替え前のMvが大きい製品を得ていた際に生じたフィッシュアイ数が増加した状態は暫くの間続き漸次に消滅する。そして、反応系が定常状態に到る。従って、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えることにより、濾過が困難となり、その結果、異物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂が長期間に亘ってポリマーフィルターから排出されこととなる。
【0034】
これに対し、上記のように反応条件を変更した後も開口径の大きなポリマーフィルターをそのまま使用した場合は、反応系内の芳香族ポリカーボネート樹脂のMvが小さくなる(低粘度となる)結果、異物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の濾過が促進される。
【0035】
分岐化度が大きい製品から小さい製品への切替運転に際し、反応条件を変更した後に、直ちに開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えた場合は次のような問題がある。すなわち、反応条件を切り替えた場合、比較的早い時期に反応系内の芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度は小さくなるものの、切り替え前の分岐化度が大きい製品を得ていた際に生じたフィッシュアイ数が増加した状態は暫くの間続き漸次に消滅する。そして、反応系が定常状態に到る。従って、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えることにより、濾過が困難となり、その結果、異物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂が長期間に亘ってポリマーフィルターから排出されこととなる。
【0036】
これに対し、上記のように反応条件を変更した後も開口径の大きなポリマーフィルターをそのまま使用した場合は、反応系内の芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度が小さくなる結果、異物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の濾過が促進される。
【0037】
本発明は、粘度平均分子量(Mv)或いは分岐化度が大きい製品から小さい製品への切替運転に際し、反応条件を変更した後にも変更前の開口径の大きなポリマーフィルターを暫くの間そのまま使用するが、斯かる状態が長くなると異物の除去率が低下したままとなり、Mv或いは分岐化度が小さい製品を得るための定常状態とならない。
【0038】
そこで、本発明においては、ポリマーフィルターを通過した芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数を追跡し、その変化に基づいて開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えることとしている。反応条件を変更すると次のように推移する。すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は低下し、溶融押出機の圧力損失は低下し、ポリマーフィルターを通過した芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数は漸次低下し、その後、略一定の値となる。
【0039】
本発明においては、上記のフィッシュアイ数の変動が減少し、略一定値となった時点をポリマーフィルターの切り替え時点として利用することが出来る。また、フィッシュアイ数の推移を示す蓄積されたデータに基づき予めポリマーフィルターの切り替え時点を求めておくことも出来る。ポリマーフィルターの切り替えは、溶融押出機の供給を一時停止して常法により行うことが出来る。上記の「フィッシュアイ数の変動が減少し、略一定値となる」とは、経時的にフィッシュアイ数を測定した場合、1時間前のフィッシュアイ数と現時点のフィッシュアイ数との差が10個以下であることを意味する。
【0040】
本発明によれば、粘度平均分子量(Mv)や分岐化度が異なる異種グレードにおいて、フィッシュアイ数が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を効率良く製造することが出来る。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂には、用途に応じ、従来公知の添加剤、例えば、他の熱可塑性樹脂、難燃剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤を適宜選択して使用することが出来る。そして、本発明の製造方法で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、機械部品、電気器具の部品、雑貨などの他、フィルム、シート、ボトル等として使用される。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。芳香族ポリカーボネート樹脂の分析は以下の方法により行った。
【0042】
(1)粘度平均分子量(Mv):
ウベローデ粘度計を使用し、芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット(試料)の塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式(1)及び(2)より求めた値を意味する。
【0043】
[数1]
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (1)
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (2)
(式(2)中、ηspは試料の塩化メチレン中20℃で測定した極限粘度[η]であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。)
【0044】
(2)分岐化度:
分岐化度は、ビスフェノールA構造単位1モルに対する下記の式(1)〜(5)で表される分岐化合物の合計モル数の比(mol%)として表した。具体的には、各々の化合物の含有量は下記のようにして求めた。すなわち、芳香族ポリカーボネート(試料)1gを、塩化メチレン100mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml及びメタノール80mlを加え、更に、純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1規定塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。加水分解物0.05gをアセトニトリル10mlに溶解し、逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し測定を行った。逆相液体クロマトグラフィーにおいては、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液とからなる混合溶媒を使用し、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液比率を20/80からスタートし80/20までグラジュエントする条件下、カラム温度40℃で測定を行った。検出は波長280nmのUV検出器((株)島津製作所製「SPD−6A」)を使用した。そして、下記の式(1)〜(5)で表される分岐化合物は、Agilent(株)製「LC−MS(Agilent−1100」)及び日本電子製「NMR(AL−400)」を使用して同定し、各含有量は、ビスフェノールAの検量線を作成し、ビスフェノールAのピーク面積に対する各々のピーク面積より算出した。
【0045】
【化2】

【0046】
(3)フィッシュアイ数:
先ず、130℃で5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを320℃で押出成形し、幅140mm、厚さ70μmのフィルムを得た。押出成形には、直径30mmの単軸押出機((株)いすず化工製)を使用した。次いで、光学式異物検査装置((株)ダイアインスツルメンツ製「GX40K」)を使用し、フィルムの中心から選択された幅(フィルムの中心から選択された幅)80mm×長さ1.7m×厚さ70μmのフィルム(体積952cm)のフィッシュアイ(サイズ50〜500μm)数を測定した。すなわち、800mVの光量を使用し、吸収された100〜300mVの光量の範囲におけるフィッシュアイ数を(A)、300mV以上の光量の範囲の数を(B)として、次の式(3)より算出した。測定は2回行い、その平均値を示した。
【0047】
[数2]
フィッシュアイ数=(A)−(B) (3)
【0048】
(4)色相:
芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを、120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製「J100SS−2」)を使用し、バレル温度300℃、金型温度90℃の条件下にて成形し、厚み3mm、一辺100mm角のシートを得た。そして、当該シートの色相を目視により判定した。
【0049】
実施例1:
窒素ガス雰囲気下、ジフェニルカーボネート(DPC)とビスフェノールA(BPA)とを一定のモル比(DPC/BPA=1.050)に混合して原料溶融液を調製した。この原料溶融液を、88.7kg/時の流量で、原料導入管を介して、220℃、1.33×10Paに制御した容量100Lの第1竪型撹拌反応器内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように、反応器底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、原料溶融液の供給を開始すると同時に、触媒として、ビスフェノールA1モルに対し、1.0μモル(金属量としてビスフェノールA1モルに対し2.0μモル)の割合で炭酸セシウム水溶液を連続供給した。
【0050】
反応器底部より排出された反応液は、引き続き、第2、第3の竪型攪拌反応器(容量100L)及び第4の横型反応器(容量150L)に逐次連続供給され、第4反応器底部のポリマー排出口から抜き出された。次に、溶融状態のままで、このポリマーをダイ出口にポリマーフィルターを設置した2軸押出機(スクリュー径0.046m、L/D=36)に送入し、p−トルエンスルホン酸ブチル(触媒として使用した炭酸セシウムに対して4倍モル量)を連続して混練し、ダイからストランド状で抜き出し、カッターで切断し、高分子量グレード(Mv:25,500)の芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。
【0051】
第2〜第4反応器での反応条件は、夫々、第2反応器(240℃、2.00×10Pa、75rpm)、第3反応器(270℃、66.7Pa、75rpm)、第4反応器(290℃、67Pa、5rpm)とし、反応の進行と共に、高温、高真空、低攪拌速度に条件設定した。また、反応の間は、第2と3反応器の平均滞留時間が60分、第4反応器の平均滞留時間が90分となるように液面レベルの制御を行い、また、同時に副生するフェノールの留去も行った。
【0052】
また、ポリマーフィルターとしては、リーフディスク型ポリマーフィルター市販品(長瀬産業(株)製、絶対濾過精度50μmの金属不織布型(材質:SUS316L)のリーフディスク90枚をセンターポストに装着したもの(ポリマーフィルターA)を使用した。
【0053】
上記運転を連続して1ヶ月間行い、その後、DPC/BPAモル比を徐々に1.090まで上昇し、炭酸セシウム水溶液の供給量を半分とし、かつ、第4反応器の温度を低下し、低分子量グレード(Mv:15,000)の製造条件に切り替えた。
【0054】
そして、1時間毎にポリマーフィルター(A)を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数を追跡し、フィッシュアイ数が略一定の値(140個)となった時点(反応条件の切り替え後18時間経過した時点)から1時間後にポリマーフィルターの切り替えを行い、低分子量グレード(Mv:15,000)の芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造を続行した。ポリマーフィルターとしては、リーフディスク型ポリマーフィルター市販品(日本ポール(株)製、絶対濾過精度10μmの金属不織布型(材質:SUS316L)のリーフディスク120枚をセンターポストに装着したもの(ポリマーフィルターB)を使用した。そして、ポリマーフィルター(B)を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を測定した。粘度平均分子量(Mv)は15,100、フィッシュアイ数は24個、色相は透明であった。
【0055】
比較例1:
実施例1において、高分子量グレードの芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造後、低分子量グレードの製造条件に切り替え、同時に、ポリマーフィルター(A)をポリマーフィルター(B)に変更した以外は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂の製造を行った。この場合、ポリマーフィルター(B)を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂の物性が実施例1と略同様(Mv:15,000、フィッシュアイ数:33個)となるまでには、反応条件の切り替え後92時間を要した。
【0056】
実施例2:
別途、実施例1と同様にして、高分子量(高分岐)グレード(分岐化度:0.48mol%)の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造を連続して1ケ月間行い、その後、炭酸セシウム水溶液の供給量を半分とし、かつ第4反応器の平均滞留時間を120分とし、低分岐グレード(分岐化度:0.27mol%、Mv:25,600)の製造条件に切り替えた。
【0057】
そして、1時間毎にポリマーフィルター(A)を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂のフィッシュアイ数を追跡し、フィッシュアイ数が略一定の値(427個)となった時点(反応条件の切り替え後11時間経過した時点)から1時間後にポリマーフィルターの切り替えを行い、低分岐グレード(分岐化度:0.27mol%、)の芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造を続行した。ポリマーフィルターとしては、リーフディスク型ポリマーフィルター市販品(長瀬産業(株)製、絶対濾過精度20μmの金属不織布型(材質:SUS316L)のリーフディスク90枚をセンターポストに装着したもの(ポリマーフィルターB')を使用した。そして、ポリマーフィルター(B')を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を測定した。粘度平均分子量(Mv)は25,500、分岐化度は0.27mol%、フィッシュアイ数は255個、色相は透明であった。
【0058】
比較例2:
実施例2において、高分岐グレードの芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造後、低分岐グレードの製造条件に切り替え、同時に、ポリマーフィルター(A)をポリマーフィルター(B')に変更した以外は、実施例2と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂の製造を行った。この場合、ポリマーフィルター(B')を通過した芳香族ポリカーボネート樹脂の物性が実施例2と略同様(Mv:25,600、フィッシュアイ数:263個)となるまでには、反応条件の切り替え後52時間を要した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量Maを有するポリカーボネート樹脂Aを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して粘度平均分子量Maより小さい粘度平均分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、当該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う重縮合工程と、得られた溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルターを通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有し、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Aを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Bを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Aからポリカーボネート樹脂Bへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
分岐化度Ncを有するポリカーボネート樹脂Cを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して分岐化度Ncより小さい分岐化度Ndを有するポリカーボネート樹脂Dを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、当該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う重縮合工程と、得られた溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出機によりポリマーフィルターを通過させて異物を除去する精製工程とを少なくとも有し、ポリマーフィルターは、ポリカーボネート樹脂Cを得る場合は開口径の大きなポリマーフィルターを使用し、ポリカーボネート樹脂Dを得る場合はそれよりも開口径の小さなポリマーフィルターを使用するようになされ、そして、ポリカーボネート樹脂Cからポリカーボネート樹脂Dへの切り替えに際し、開口径の小さなポリマーフィルターに切り替えると共に、切り替え2時間前のフィッシュアイ数と、切り替え1時間前のフィッシュアイ数との差が10個以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−74064(P2009−74064A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213873(P2008−213873)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】