説明

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品および成形品の製造方法

【課題】高硬度且つ高光沢で、流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体を1〜30質量部と、(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体を1〜20質量部と、(D)鉛筆硬度がFより高いアクリル系(共)重合体を10〜50質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品および成形品の製造方法に関し、詳しくは、高硬度で高光沢で、かつ流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品、および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性などに優れ、しかも、得られる成形品は寸法安定性などにも優れることから、電気・電子機器のハウジング類、自動車用部品類、または、光ディスク関連の部品などの精密成形品類の製造用原料樹脂として広く使用されている。特に、家電機器、電子機器、画像表示機器の筐体などにおいては、その美麗な外観を活かし、商品価値の高い商品が得られる。
しかし、芳香族ポリカーボネート樹脂単独の成形品類は、金属製やガラス製などの製品類に比べると表面硬度が低いため、耐擦傷性に劣り、布で拭いたり、手荒に扱った場合は、表面に傷が付き易い欠点を有している。
【0003】
これに対し、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した製品の表面に、表面硬度の高い塗膜を形成する方法が提案され、膜材料としては、例えば、シリコン系樹脂やアクリル系樹脂のコーティング剤が知られているが、これらは、コーティング膜の密着性に問題があり、複雑な形状の製品にはコーティングが難しく、価格も高価であり、工業的な使用には制限がある。また、製品表面を塗装する方法も知られているが、この方法は、コーティングと同様に、製品形状によっては均一な塗膜を得ることが難しく、有機溶剤を使用するために、ポリカーボネート樹脂の溶剤劣化を招き易く、しかも、塗装膜厚が厚くないと、表面硬度の改良効果が低い。さらには、コーティング面や塗膜面の剥がれにより、外観を損なう欠点がある。
【0004】
また、ポリカーボネート樹脂に硬度の高い無機化合物を配合する方法も知られているが、この方法は、表面硬度の改良効果が僅かであり、しかも、無機化合物を添加した場合は、添加物の屈折率と芳香族ポリカーボネート樹脂の屈折率が異なるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の大きな特徴である透明性が損なわれるという欠点がある。
【0005】
一方、透明性および剛性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得るため、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ビフェニル化合物、ターフェニル化合物、ポリカプロラクトンの群から選ばれる化合物を添加する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、この方法は、本発明者らの検討の結果によれば、高い耐擦傷性の要求を満足することが出来ず、上述の工業製品に利用するには未だ不十分である。
【0006】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂に、メチルメタアクリレート等のアクリレートやABS樹脂を配合した耐擦傷性の組成物も多数提案されている。
例えば、特許文献4では、シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル化合物共重合体とメチルメタアクリレートを配合することが記載されている。また、特許文献5には、ポリエステル樹脂とABS樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリメチルメタアクリレートからなる樹脂組成物が記載されている。また、特許文献6には、(メタ)アルキルアクリレート−芳香族ビニル−ポリカーボネート樹脂と反応性のあるビニルモノマーからなる共重合体を配合することが記載されている。さらに、特許文献7では、ABS樹脂等のゴム変性グラフト共重合体とポリメチルメタアクリレート等のビニルモノマー共重合体を配合することが提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法は、耐衝撃性、難燃性のバランスは十分ではなく、また硬度と光沢が共に優れた樹脂組成物とは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平03−143950号公報
【特許文献2】特開平05−257002号公報
【特許文献3】特開2000−169695号公報
【特許文献4】特開2001−49072号公報
【特許文献5】特開2001−234040号公報
【特許文献6】特開2008−56798号公報
【特許文献7】WO2009/128601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、高硬度かつ高光沢で、さらに流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品、および成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体とアクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系樹脂と、特定の硬度を有するアクリル系樹脂をポリカーボネート樹脂にそれぞれ特定量配合すると、高硬度で高光沢で、かつ流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体を5〜30質量部と、(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体を1〜20質量部と、(D)鉛筆硬度がFより高いアクリル系(共)重合体を10〜50質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(D)アクリル系(共)重合体が、ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体が、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系(共)重合体であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、(E)エラストマーを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1〜10質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、(E)エラストマーが、コア/シェル型グラフト共重合体であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、(F)紫外線吸収剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.1〜1質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、(G)縮合リン酸エステル系難燃剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5〜40質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、(H)ポリテトラフルオロエチレンを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5〜2質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第7または第8の発明において、(I)平均粒径10〜30μmのガラスビーズを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、10〜40質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明の樹脂組成物から得られたポリカーボネート樹脂成形品が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、成形品が筐体であるポリカーボネート樹脂成形品が提供される。
【0022】
また、本発明の第12の発明によれば、第10または第11の発明において、溶融樹脂充填直前の金型表面を樹脂組成物のガラス転移温度以上に加熱して、射出成形することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0023】
さらに、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、金型表面の加熱を高周波電磁誘導加熱により行うことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品およびその製造方法によれば、高硬度かつ高光沢で、さらに流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0026】
[1.概要]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体を5〜30質量部と、(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体を1〜20質量部と、(D)鉛筆硬度がFより高いアクリル系(共)重合体を10〜50質量部含有することを特徴とする。
【0027】
[2.芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、その種類に制限は無く、また、1種のみを用いてもよく、2種以上を、任意の組み合わせ及び任意の比率で、併用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式−(−O−X−O−C(=O)−)−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネート樹脂をいう。芳香族ポリカーボネートは、各種ポリカーボネートのなかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、優れている。
【0028】
芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限は無いが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしても良い。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いても良い。また芳香族ポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0029】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、以下のとおりである。
【0030】
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0031】
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0032】
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0033】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0034】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0035】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
【0036】
これらのなかでもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、なかでもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0037】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0038】
・芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて、具体的に説明する。
【0039】
・・界面重合法
まず、芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体のなかでもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
【0040】
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0041】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になるようにコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0042】
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0043】
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0044】
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
【0045】
・・溶融エステル交換法
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
【0046】
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0047】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0048】
芳香族ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が、熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率、エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
【0049】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0050】
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0051】
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0052】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
【0053】
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]で10,000〜40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が10,000未満では、機械的強度が十分ではなくなる傾向があり、粘度平均分子量が40,000を超えると、流動性が悪く成形性が悪くなる傾向にある。粘度平均分子量は、より好ましくは16,000〜40,000であり、さらに好ましくは18,000〜30,000である。分子量をこのような範囲に調節するには、後記するような分子量調節剤の量を制御する等の公知の方法で可能である。
【0054】
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【0055】
【数1】

【0056】
・芳香族ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)にて行われる。
【0057】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、モノマー組成、分子量、末端水酸基濃度等が異なる芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して使用してもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に他の熱可塑性樹脂を混合したアロイ(混合物)として組み合わせて用いてもよい。
【0058】
さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、芳香族ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0059】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0060】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0061】
[3.グラフト共重合体(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(B)(以下、重合体(B)または(B)成分もしくは成分(B)ということがある。)を、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜30質量部含有する。
【0062】
本発明における(a)芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン及びo,p−ジクロロスチレン等が挙げられ、剛性や耐衝撃性の面からスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
(b)シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられる。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
【0063】
(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート及びベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート及びベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミド等のα−またはβ−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物、アクリルアミド及びメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等が挙げられる。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
【0064】
本発明における(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体の割合としては、(a)芳香族ビニル系単量体15〜90質量%と(b)シアン化ビニル単量体2〜60質量%と(c)メタクリル酸メチル単量体8〜60質量%及び(d)共重合可能なその他の単量体0〜70質量%であることが好ましい。この範囲外では、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と後述の鉛筆硬度がFより高いアクリル系(共)重合体(D)の相溶性に劣るため外観が損なわれたり、流動性と耐衝撃性、鉛筆硬度のバランスに欠ける傾向がある。
【0065】
[4.アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)(以下、重合体(C)または(C)成分もしくは成分(C)ということがある。)を、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜20質量部含有する。
このような重合体(C)を、前記のグラフト共重合体(B)及び後記するアクリル系(共)重合体(D)と共に、このような量で配合することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の優れた硬度と光沢を維持した高耐衝撃性のバランスを達成することができる。
【0066】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に使用するアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)は、少なくともアクリロニトリルとエチレンとプロピレンとスチレンを共重合して得られる熱可塑性(共)重合体である。
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)は、さらに他のビニル単量体を使用しても良く、他に使用するビニル単量体としては、メタクリロニトリル等の他のシアン化ビニル、1−ブテン等のオレフィン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、これらは、2種以上を追加混合して使用することもできる。
【0067】
以上のうち、好ましい追加の(共)重合用ビニル単量体としては、CH=CR−COOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはアルキル基を示す。)で表されるアクリレートまたはメタクリレート化合物が挙げられ、Rのアルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、メタアクリル酸メチル、すなわちメチルメタアクリレートを使用したアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系(共)重合体が特に好ましい。
【0068】
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造され、また共重合反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、公知のものが使用可能である。
【0069】
上記したアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)を使用することにより、高硬度でかつ高光沢の組成物とすることができ、かつ流動性、耐衝撃性、難燃性等を低下させることなく、これらのバランスの取れた、優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とすることが可能になる。
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜20質量部であり、好ましくは3〜10質量部である。含有量が1質量部未満の場合は、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性を維持する効果が充分に得られず、使用割合が20質量部を超える場合は、ポリカーボネート樹脂の硬度が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0070】
[5.アクリル系(共)重合体(D)]
アクリル系(共)重合体(D)(以下、重合体(D)または(D)成分もしくは成分(D)ということがある。)としては、アクリル系モノマーを使用した重合体または共重合体であって、上記した重合体(C)と同じもの以外であり、鉛筆硬度がFより高いものであれば、いずれも使用できる。
(共)重合体成分(D)は、アクリル系単量体を主な構成単位として有するものであり、具体的には、アルキル基の炭素数が通常1〜18のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの単独重合、両者の共重合、メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと共重合可能なビニル系単量体とを共重合してなるものが好ましい。アルキル基の炭素数が19以上であると、共重合反応が難しくなる。
【0071】
このようなメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0072】
また、これらと共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと、それと共重合可能なビニル系単量体との好ましい混合割合は、メタクリル酸アルキルを40〜95質量%とアクリル酸アルキル5〜60質量%、および共重合可能な他の単量体0〜30質量%である。
【0073】
特に、本発明に使用されるアクリル系(共)重合体(D)として好ましいのは、アルキル基の炭素数が1〜18、特には1〜8の、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを、必要により上記ビニル系単量体とを、共重合してなるメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル系共重合体である。
【0074】
また、アクリル系(共)重合体(D)としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合し得る1分子当たり2個以上の非共役2重結合を有する多官能性単量体を、好ましくは0.1〜20重量%程度加えて、共重合させて製造した架橋タイプのものであってもよい。
【0075】
2個以上の非共役2重結合を有する多官能性単量体は、主として弾性体成分を架橋させ、架橋弾性体とするために用いられるものである。その具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が、好ましく挙げられる。
【0076】
アクリル系(共)重合体(D)は、上記した単量体を懸濁重合させることにより製造できる。例えば、ポリビニルアルコールを分散剤として懸濁させて重合を行い、ろ過、洗浄、篩がけ、乾燥することにより得られる。
【0077】
本発明において、アクリル系(共)重合体(D)としては、その表面硬度が鉛筆硬度で「F」より高いものを使用する。重合体(D)がFより高い鉛筆硬度を有することで、本発明の樹脂組成物を成形品とした場合に擦過しても擦過痕が残らず、成形品は耐擦傷性に優れる。ここで鉛筆硬度は、前記したとおりである。
重合体(D)の鉛筆硬度は、好ましくはF以上であり、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが特に好ましい。
【0078】
このような硬度の重合体(D)は、使用する単量体の種類、その使用割合、分子量等を適宜調整することにより可能であり、また市販品の中から選定することも可能である。
【0079】
アクリル系(共)重合体(D)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10〜50質量部であり、好ましくは13〜50質量部である。アクリル系(共)重合体(D)の使用割合が10質量部未満の場合は、ポリカーボネート樹脂の高硬度および高光沢を向上させる効果が充分に得られず、使用割合が50質量部を超える場合は、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性等が低下する傾向にあり、また、難燃性を得ることが困難となり、さらにはポリカーボネート樹脂とアクリル系(共)重合体が層状に剥離しやすくなるため好ましくない。
【0080】
[6.エラストマー(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その他の成分としてエラストマー(E)を含有することが好ましい。エラストマーを含有することで、ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0081】
本発明に用いるエラストマーは、なかでもゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0082】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−αオレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0083】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0084】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。
【0085】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0086】
このようなコア/シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
【0087】
エラストマーの好ましい含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、1〜10質量部である。1質量部より少ないと、エラストマーによる耐衝撃性向上効果は不十分であり、10質量部を超えると、ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や耐熱性の低下が生じる。含有量の下限は、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、また、含有量の上限は、好ましくは9質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。
【0088】
[7.紫外線吸収剤(F)]
本発明の組成物には、紫外線吸収剤(F)を配合するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらのうち、有機紫外線吸収剤が好ましく、中でもベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0089】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0090】
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバスペシャルティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0091】
紫外線吸収剤(F)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、また、その上限は好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0092】
[8.縮合リン酸エステル系難燃剤(G)]
本発明の組成物には、縮合リン酸エステル(G)を配合するのが好ましい。縮合リン酸エステル(G)は、下記の一般式で表されるものであるのが好ましい。
【0093】
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。ただし、R、R、RおよびRが全て水素原子の場合を除く。Xは2価の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数、rは0または1以上の整数を表す。)
【0094】
上記の一般式において、有機基とは、例えば、置換基を有する、または有しない、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられ、該置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。またこれらの置換基を組み合わせた基、あるいは、これらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子などにより結合して組み合わせた基などでもよい。また2価の有機基とは、上記の有機基から炭素原子1個を除いてできる2価以上の基をいう。例えば、アルキレン基、フェニレン基、置換フェニレン基、ビスフェノール類から誘導されるような多核フェニレン基などが挙げられる。
【0095】
上記の一般式で示される縮合リン酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリクレジルフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルフォスフェート、トリス(クロルエチル)フォスフェート、トリス(ジクロルプロピル)フォスフェート、トリス(クロルプロピル)フォスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロルフォスフェート、ビス(クロルプロピル)モノオクチルフォスフェート、ビスフェノールAテトラフェニルフォスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジフォスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルフォスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジフォスフェート等の種々のものが例示される。
【0096】
縮合リン酸エステル化合物の好ましい含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、5〜40質量部、より好ましくは7〜35質量部、特には10〜30質量部である。含有量が5質量部を下回る場合は難燃性が不十分となりやすく、40質量部を超えると耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こしやすい為、好ましくない。
【0097】
[9.ポリテトラフルオロエチレン(H)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリフルオロエチレン(H)を含有することも好ましい。ポリテトラフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L、FA500B、FA500Cが挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として、ダイキン化学工業(株)製のフルオンD−1や、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリテトラフルオロエチレン化合物が挙げられる。いずれのタイプも本発明の樹脂組成物に用いることができる。
【0098】
ポリテトラフルオロエチレンを含有した難燃性樹脂組成物を射出成形した成形品の外観をより向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリテトラフルオロエチレン(以下、被覆ポリテトラフルオロエチレンと略記することがある)を使用することができる。特定の被覆ポリテトラフルオロエチレンとは、被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有比率が40〜95質量%の範囲内となるものであり、中でも、43〜80質量%、更には45〜70質量%、特には47〜60質量%となるものが好ましい。特定の被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン社製のメタブレンA−3800、A−3700、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が使用できる。
【0099】
ポリテトラフルオロエチレン(H)の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜2質量部であり、0.6〜1.5質量部がより好ましく、0.7〜1.3質量部が特に好ましい。なお、被覆ポリテトラフルオロエチレンの場合、添加量はポリテトラフルオロエチレン純分の量に相当する。ポリテトラフルオロエチレンの配合量が0.5質量部未満の場合には、難燃効果としては不十分であり、一方2質量部を超えると成形品外観の低下が起こる場合がある。
【0100】
[10.ガラスビーズ(I)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスビーズ(I)を含有することも好ましい。使用するガラスビーズ(I)としては、通常、平均粒径が3〜100μmの球状のものである。ガラスビーズの配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部あたり、10〜40質量部であることが好ましい。
ガラスビーズの配合量が10質量部未満では、表面光沢と耐傷付き性の改良効果、剛性の向上、補強効果が不十分であり、40質量部を超えると分子量が低く溶融粘度の低いポリカーボネート樹脂を使用しても流動性が悪く成形性が悪化し、また難燃性に難が生じるので好ましくない。ガラスビーズのより好ましい配合量は、15〜35質量部である。
【0101】
ガラスビーズのより好ましい粒径は、平均粒径が10〜30μmである。平均粒径が10μm未満では、ポリカーボネート樹脂組成物の成形加工性が損なわれやすく、30μmを超えると成形品の表面外観が損なわれやすく、耐傷付き性も不十分となりやすい。
ガラスビーズは、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性を損なわない限り、ポリカーボネート樹脂との親和性を向上させるために、例えばシラン化合物、エポキシ系化合物などで表面処理をしたものであってもよい。
【0102】
[11.その他の添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、酸化防止剤、離型剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0103】
・安定剤
安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
【0104】
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機ホスファイトが好ましい。
【0105】
安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0106】
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0107】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0108】
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0109】
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0110】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0111】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0112】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0113】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0114】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0115】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0116】
・染顔料
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
【0117】
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0118】
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
【0119】
染顔料の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0120】
[12.ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及びグラフト共重合体(B)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体(C)、アクリル系(共)重合体(D)、並びに、必要に応じて配合される上記したその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0121】
[13.成形方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
成形方法の例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
【0122】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が前記したガラスビーズを含有する場合には、ガラスビーズを含む各成分を配合したポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する際、溶融樹脂を金型に充填する直前の金型表面を、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上に加熱しておき、それから金型キャビティ内に溶融した樹脂組成物を射出注入して成形することが好ましい。
金型表面の加熱は、金型のキャビティ表面のみを加熱すればよく、金型全体を加熱する必要はない。このような加熱方法としては、金型内部のキャビティ表面近傍に伝熱ヒーターを組み込み加熱する方法、雌雄金型が開いた状態でキャビティ側にヒーターを挿入して赤外線加熱等での加熱をする方法、あるいは、雌雄両金型の間に高温のスチームを注入して加熱する方法等が挙げられる。
【0123】
好ましい加熱手段としては、高周波電磁誘導加熱を用いることが挙げられ、特に雌雄金型の開放時の両金型間に、高周波電磁誘導加熱用の、たとえばドーナッツ状の高周波誘導コイルを挿入して、キャビティ表面のみを急速に加熱することが好ましい。電磁誘導により金型表面には誘導電流が発生し、ジュール熱を発生して、短時間に金型表面のみが発熱する。加熱は、温度センサーにより温度検知しながら加熱出力と時間の調整を行えばよいが、通常、加熱の時間は、1秒〜1分程度、好ましくは1秒〜30秒である。
樹脂充填直前の金型表面の温度は、芳香族ポリカーボネート樹脂単独のガラス転移温度ではなく、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上とする。ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、周知のとおり、示差熱分析装置(DSC)で測定されるが、本発明の上記した組成物は、本発明者の検討する限り、単一の吸熱ピークを示すので、そのピーク温度から決定される。
【0124】
充填直前の金型表面温度は、樹脂組成物のTgに従ってそれ以上に設定されるが、樹脂組成物のTgより5℃〜60℃以上、より好ましくは10℃〜50℃、特には20℃〜40℃高くするのが好ましい。
また、金型キャビティ表面以外の金型温度は、そのポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する際の最適な金型温度、通常40℃〜120℃程度とするのが好ましい。
充填直前の金型表面温度を樹脂組成物のTg以上に高くすることにより、射出注入時に金型表面へのガラスパールの浮きが抑制され、表面光沢と耐傷付き性に優れた成形品が得られる。金型温度が高すぎると金型表面と密着しやすくなって、離型不良や離型後の変形を起こしやすいというのが、射出成形分野での常識であるが、本発明においては、射出充填時の温度は金型表面のみ高く保持するが、その他は通常の温度であるので、充填後は通常どおり金型は冷却され、成形品は取り出される。
【0125】
[14.成形品]
本発明の組成物を成形した好ましい成形品は、高硬度かつ高光沢で、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた樹脂組成物であるので、カーナビゲーションやカーオディオの筐体、インストルメントパネル、コンソールボックス、センタークラスター、メータークラスターなどの自動車内装部品、フラットディプレイパネル、パソコン、PDA、テレビ、ビデオ、カメラ、プリンター、FAX等の電気・電子・OA機器筐体として好適に使用することができる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法は、以下のとおりである。
【0127】
[測定・評価法]
[1.流動性評価]
後述の製造方法で得られたペレットを80℃で4時間以上乾燥した後、高荷式フローテスターを用いて、240℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10−2cc/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。なお、表中、「流動性」と表記する。
【0128】
[2.耐衝撃性評価]
耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)(単位:J/m):
ASTM D256に準拠して、後述の方法で成形した厚さ3.2mmのノッチ付き試験片について、23℃の温度でアイゾット衝撃強度(単位:J/m)を測定した。数値が大きいほど、耐衝撃性が優れていることを意味する。なお、表中、「Izod」と表記する。
【0129】
[3.耐熱性評価]
DTUL(荷重たわみ温度):
後述の方法で成形したISO多目的試験片を用い、ISO75−1&2に従い、荷重1.80MPaの条件(A法)にて測定を行った。なお、表中、「DTUL」と表記する。
【0130】
[4.表面硬度評価]
鉛筆硬度:
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片に、JIS K5400に準じ、5回の引掻き試験を行い硬度の評価を行った。なお、表中、「鉛筆硬度」と表記する。
【0131】
[5.外観評価]
表面外観:
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片を、目視にて以下の基準で判定し、外観の評価を行った。
○: 良好
△: シルバーの発生、層剥離の発生が少し見られる。
×: シルバーの発生、層剥離の発生があり光沢性に劣る。
【0132】
[6.難燃性評価]
各ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、後述の方法で得られたUL試験用試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
【0133】
【表1】

【0134】
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。なお、表中、「難燃性」と表記する。
【0135】
(実施例1〜8、比較例1〜5)
後述する各材料を後記各表の含有量(特に明記しない場合は全て質量部)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0136】
[試験片の成形]
得られたペレットを、80℃で5時間乾燥後、射出成形機(名機製作所製「M150AII−SJ」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度75℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、3.2mm厚のアイゾット衝撃試験片、および50×90×3mm厚の平板試験片を作製した。
さらに、得られたペレットを80℃、5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75T)にて、シリンダー温度260℃、金型温度75℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片を作製し、DTUL(耐熱性)評価に用いた。
また燃焼性の試験においては、得られたペレットを80℃、5時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所製「J50−EP」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度75℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ2mmのUL試験用試験片を成形した。
これら試験片に対する測定結果を、後記表2〜4に示した。
【0137】
使用した使用材料は以下のとおりである。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、アクリル系共重合体(D)およびその他の共重合体(N)として使用した各材料の鉛筆硬度は、上記[4.表面硬度評価]と同様にして測定した。
【0138】
[使用材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂:
(A−1)三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000」、粘度平均分子量 22,000、鉛筆硬度 2B
(A−2)三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製商品名「ユーピロン(登録商標)E−2000」、粘度平均分子量 28,000、鉛筆硬度 2B
【0139】
(B)アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体:
ユーエムジー・エービーエス(株)製商品名「S900N」
(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体:
ユーエムジー・エービーエス(株)製商品名「E700N」
(B+C)アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体33質量%、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体17質量%、アクリル系共重合体50質量%を含有する混合物。鉛筆硬度 2H
(D)メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体:
三菱レイヨン(株)製商品名「アクリペットVH001」、鉛筆硬度 2H
【0140】
(E)エラストマー
(E−1)アクリル酸アルキル重合体(コア)/メタクリル酸アルキル重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
ローム・アンド・ハース(株)製商品名「パラロイドEXL−2315」
(E−2)ブタジエン重合体(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
ローム・アンド・ハース(株)製商品名「パラロイドEXL−2633」
(E−3)ジメチルシロキサン重合体とアクリル酸アルキル重合体から成る複合ゴム(コア)/メタクリル酸アルキル重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
三菱レイヨン(株)製商品名「メタブレンS−2001」
【0141】
(F)紫外線吸収剤:
2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール シプロ化成(株)製商品名「シーソーブ709」
(G)難燃剤:
縮合リン酸エステル:レゾルシノール(ジキシレニルホスフェート)
大八化学(株)製商品名「PX200」
【0142】
(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):
ダイキン工業(株)製商品名「ポリフロンF−201L」
(I)ガラスビーズ:
ポッターズ・バロティーニ(株)製商品名「EGB731B」平均粒子径20μm
【0143】
(J)リン系熱安定剤:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
旭電化工業(株)製商品名「アデカスタブ2112」
(K)フェノール系酸化防止剤:
ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、「商品名:イルガノックス1010」
(L)離型剤:
ペンタエリスリトールテトラステアレート
コグニスジャパン(株)商品名「ロキシオールVPG861」
(M)着色剤:カーボンブラック
三菱化学(株)製商品名「#900」
【0144】
また、本発明の共重合体成分(B)、(C)、(D)の規定を満たさない共重合体成分として、以下の(N−1)、(N−2)を比較例において使用した。
(N−1)メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体:
電気化学工業(株)製商品名「デンカTPポリマー TH−23」、鉛筆硬度 3B
(N−2)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体:
旭化成(株)製商品名「スタイラック(登録商標)T9701」、鉛筆硬度 2H
【0145】
(実施例9〜10)
後記表3に示したガラスビーズを含む各材料を表3に示す割合で配合して、実施例1〜8と同様にして、ペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、SEIKO Instrument社製の示差熱分析(DSC)装置にて、ガラス転移温度(Tg)の測定を行った。測定はキャリアーガスが60ml/minの窒素ガスで、測定温度変化が30℃(20℃/min)→250℃、3分間ホールド(20℃/min)→30℃、3分間ホールド(20℃/min)→250℃の条件で実施した。各ペレットのTgは、105℃(実施例9)、120℃(実施例10)であった。
【0146】
上記ペレットを使用し、射出充填直前の金型キャビティ表面温度を130℃にして、前記した各種試験片をそれぞれ前記方法で射出成形した。
なお、金型の加熱は、開放状態の雌雄金型間に、高周波電磁誘導加熱装置の高周波誘導コイルを挿入し、雌型のキャビティ面に、周波数20KHz、出力15KWにて、キャビティ表面を加熱することで行った。金型表面温度の調節は、照射時間を1秒〜20秒の間で調整することによって行った。
誘導コイルを直ちに抜き出し、金型を所定のクリアランスまで閉じ、金型キャビティ内に溶融状態の樹脂組成物を直ちに射出充填し、金型が80℃に冷えるまで水冷を行った。
冷却終了後、型開きして成形品を取り出した。
評価結果を表3に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
【表4】

【0150】
上記実施例と比較例の結果から、以下のことが分かる。
実施例1〜5(表2)は、(B)、(C)、(D)成分の配合比率を本発明の規定の範囲内で変更したものであるが、いずれも表面硬度はF、HBであり、これらを処方していない比較例3〜4(表4)の表面硬度2Bに比べ、格段に高上しており、また衝撃強度も外観にも優れていることが分かる。実施例2〜3は、エラストマーの種類を変えたものであるが、硬度はやや低下したものの耐衝撃性が向上している。
実施例6〜10(表3)は、難燃剤を処方したものであるが、ULはV−0と非常に高い難燃性を示しながら硬度はF〜2Hと高く、強度・外観にも優れる。実施例9〜10は、ガラスビーズを配合した場合、金型表面加熱により外観の悪化は△と抑制でき、硬度は格段に向上した。
【0151】
本発明の範囲外の(B)、(C)、(D)成分を使用した比較例1、2及び(B)、(C)、(D)成分ではない共重合体N−1、N−2を使用した比較例3、4では、表面硬度がB〜2Bと悪いことが分かる。ポリカーボネート樹脂組成物は、全光線透過率と分散度が劣り、耐衝撃性も良くないことがわかる。また、比較例2〜5では、難燃処方にも拘わらず、ULは、V−2、NRと悪く、耐衝撃性も外観も悪いことが理解できる。
したがって、上記の実施例及び比較例から、高硬度かつ高光沢で、流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた樹脂組成物あるいは成形品は、本発明の構成によりはじめて得られるものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、高硬度かつ高光沢で、流動性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた樹脂材料であるので、これを成形した製品は、カーナビゲーションやカーオディオの筐体、インストルメントパネル、コンソールボックス、センタークラスター、メータークラスターなどの自動車内装部品、フラットディプレイパネル、パソコン、PDA、テレビ、ビデオ、カメラ、プリンター、FAX等の電気・電子・OA機器筐体などの広範囲の分野に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)(a)芳香族ビニル系単量体、(b)シアン化ビニル単量体、(c)メタクリル酸メチル単量体及び(d)共重合可能なその他の単量体から選ばれた単量体を(a)、(b)、(c)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体を1〜30質量部と、(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体を1〜20質量部と、(D)鉛筆硬度がFより高いアクリル系(共)重合体を10〜50質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)アクリル系(共)重合体が、ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系(共)重合体が、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
(E)エラストマーを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
(E)エラストマーが、コア/シェル型グラフト共重合体であることを特徴とする請求項4に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
(F)紫外線吸収剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.1〜1質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
(G)縮合リン酸エステル系難燃剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5〜40質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
(H)ポリテトラフルオロエチレンを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5〜2質量部含有することを特徴とする請求項7に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
(I)平均粒径10〜30μmのガラスビーズを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、10〜40質量部含有することを特徴とする請求項7または8に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られたポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項11】
成形品が筐体であることを特徴とする請求項10に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項12】
溶融樹脂充填直前の金型表面を樹脂組成物のガラス転移温度以上に加熱して、射出成形することを特徴とする請求項10または11に記載のポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
金型表面の加熱を高周波電磁誘導加熱により行うことを特徴とする請求項12に記載のポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。

【公開番号】特開2012−131908(P2012−131908A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285403(P2010−285403)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】