説明

芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法

【課題】芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造すること。
【解決手段】初留点及び終点がともに17〜220℃の範囲内にあるガソリン留分をスチームと共に熱処理し、芳香族化合物及びオレフィン類を得る工程を備える、芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油化学工場では、原油の常圧蒸留等により得られるナフサ留分を原料としたスチーム存在下での熱分解により、エチレン、プロピレン等のオレフィン類を製造し、これらのオレフィン類を原料としてさらにポリエチレン、ポリプロピレン等の多種類の石油化学誘導品を製造している。
【0003】
しかしながら、近年では、中国や東南アジアで多数の石油化学工場が稼動し、アジア地域でのナフサの需要が増え、ナフサが入手困難な場合や、ナフサの価格が高騰する場合があり、代替原料によるオレフィン類の製造方法が検討されている。例えば、特許文献1には、原油から得られた水素化分解サイクル油又はワックスを熱分解して、オレフィン類を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石油化学誘導品の基幹原料としては、オレフィン類の他にベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物があるが、特許文献1にはナフサの代替原料から芳香族化合物を得る方法は開示されていない。
【0006】
本発明は、芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造することが可能な、芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、初留点及び終点がともに17〜220℃の範囲内にあるガソリン留分をスチームと共に熱処理し、芳香族化合物及びオレフィン類を得る工程を備える、芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、初留点及び終点がいずれも上記範囲内にあるガソリン留分を原料として用いることにより、芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造することができる。
【0009】
本発明に係る製造方法は、上記ガソリン留分が、上記ガソリン留分の総質量を基準として、オレフィン分を5〜45質量%含有し、芳香族分を0〜40質量%含有することが好ましい。
【0010】
ガソリン留分中のオレフィン分が多いと、芳香族化合物を高収率で得ることができる。一方、オレフィン分及び芳香族分は、上記熱処理における重縮合反応により、コークやタールと呼ばれる高分子量化合物を生成しやすく、生成した高分子量化合物は熱処理を行う分解炉や急冷熱交換器の内部に付着する。そして、高分子量化合物の生成量が多いと、熱処理を中断して分解炉や急冷熱交換器の内部に付着した高分子量化合物の除去を行う頻度が増加して作業効率が低下する場合がある。本実施形態に係る製造方法においては、ガソリン留分中のオレフィン分及び芳香族分の含有量をそれぞれ上記上限値以下とすることにより、熱処理時の高分子量化合物の生成を抑制することができる。すなわち、ガソリン留分中のオレフィン分及び芳香族分の含有量をそれぞれ上記範囲内とすることで、高分子量化合物の生成を抑制して作業効率を向上させるとともに、芳香族化合物を高収率で得ることができる。
【0011】
本発明に係る製造方法において、上記工程は、上記ガソリン留分とスチームとを混合する対流部と、上記対流部を経た上記ガソリン留分とスチームとの混合物が流通する輻射管及び当該輻射管内を流通する上記混合物を加熱する加熱手段を有し、上記ガソリン留分を熱処理する輻射部と、上記輻射部を経た上記ガソリン留分の熱処理物を冷却する冷却部と、を備える製造システムにおいて行われ、上記対流部におけるスチームの混合量が上記ガソリン留分100質量部に対して30〜60質量部であり、上記輻射管内における反応圧力が0.45MPa以下、反応時間が0.1〜0.7秒であり、上記輻射部を経た上記熱処理物の温度が790〜850℃であることが好ましい。このような条件で上記工程を行うことにより、コークやタール等の高分子量化合物の生成を抑制しつつ、芳香族化合物をより高収率で得ることができる。
【0012】
上記工程においては、上記ガソリン留分100質量部に対して、40質量部以上のナフサを、上記ガソリン留分及び上記スチームと共に熱処理することが好ましい。このような工程によれば、コークやタール等の高分子量化合物の生成を一層抑制しつつ、芳香族化合物をより高収率で得ることができる。また、スチームの使用量を低減し、エネルギー効率良く芳香族化合物及びオレフィン類を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガソリン留分を製造するための製造工程を例示する概略図である。
【図2】実施形態に係る製造システムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法の好適な実施形態について以下に説明する。
【0016】
本実施形態に係る製造方法は、初留点及び終点がともに17〜220℃の範囲内にあるガソリン留分をスチームと共に熱処理し、芳香族化合物及びオレフィン類を得る工程(以下、場合により「熱処理工程」と称する。)を備える。本実施形態に係る製造方法においては、初留点及び終点がいずれも上記範囲内にあるガソリン留分を原料として用いることにより、芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造することができる。
【0017】
ここで、「初留点及び終点がともに17〜220℃の範囲内にある」とは、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法蒸留試験方法」により測定される初留点及び終点が、いずれも17〜220℃の範囲内にあることを示す。
【0018】
ガソリン留分の初留点及び終点は、17〜220℃の範囲内にあることが好ましく、25〜200℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態に係る製造方法により得られる芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。また、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。
【0020】
図1は、ガソリン留分を製造するための製造工程を例示する概略図である。ガソリン留分は、例えば、図1に示すいずれかの製造工程を経て製造されたものでも、複数の製造工程を経てそれぞれ製造されたガソリン留分の混合物であってもよい。また、ガソリン留分としては、図1に示す製造工程以外の製造工程を経て製造されたガソリン留分を用いることもできる。
【0021】
ガソリン留分を製造する方法の一例は、接触分解法である。接触分解法は灯油以上の高沸点留分を原料として、固体酸触媒により分解し、高オクタン価のガソリン留分を製造する方法である。
【0022】
接触分解法では、分解反応の副反応として触媒上にコークスが付着するため、触媒活性が低下する。そのため、触媒上に付着したコークスを燃焼除去することによって触媒再生を行う必要がある。触媒としては、シリカアルミナ触媒又はゼオライト触媒が挙げられ、汎用性の観点からは、ゼオライト触媒が好ましい。
【0023】
接触分解法における原料は、灯油・軽質軽油から常圧残油までの範囲の石油留分が使用できるが、一般には、重質軽油、減圧軽油又はそれらを水素化脱硫した脱硫重油が多く使用される。また、常圧残油又は減圧残油を水素化脱硫した脱硫重油を原料とすることもできる。
【0024】
接触分解法は、触媒の再生方法と使用する触媒の流動状態により固定床式、移動床式、流動床式に分類されるが、流動床式が最も広く使用されている方法であり、この方式は一般に流動接触分解法と呼ばれる。
【0025】
流動接触分解法では、原料油はライザーと呼ばれる管路中で触媒と混合されて、分解反応が行われる。分解生成物と触媒は反応塔内で分離され、さらに分解生成物は精留塔に送られてガソリン留分、C4(B−B’)留分、C3以下のガス、分解軽油などの製品に分けられる。反応塔からの廃触媒は、スチームにより油分をストリッピングした後、再生塔に移送される。再生塔内で付着したコークスが燃焼して再生された触媒は再びライザーに送られて分解反応に用いられる。
【0026】
ガソリン留分は、通常、鎖状及び環状の飽和炭化水素である飽和分、芳香族環を有する炭化水素である芳香族分、鎖状の不飽和炭化水素であるオレフィン分を含有する。
【0027】
ガソリン留分は、ガソリン留分の総質量を基準として、オレフィン分を5質量%以上含有するものであることが好ましく、15質量%以上含有するものであることがより好ましい。ガソリン留分におけるオレフィン分の含有量を上記のようにすることにより、芳香族化合物をより高収率で得ることができるようになる。
【0028】
これまでスチーム熱分解の原料として用いられてきたナフサ、灯油、軽油、水素化分解サイクル油、ワックス、プロパン・ブタン等の液化石油ガスは、飽和分を主成分とするものであり、このような原料からは芳香族化合物を高収率で製造することが困難であった。これに対して、本実施形態に係る製造方法は、オレフィン分の含有量の多いガソリン留分を原料として用いることにより、芳香族化合物を高収率で得ることができるようになる。
【0029】
また、従来のスチーム熱分解では、多種多様な石油化学誘導品の原料となるオレフィン類や芳香族化合物を同時に生産し得たとしても、特定の化合物だけを選択的に生産することが困難であると考えられる。ところが、個々の石油化学誘導品の需要は一定ではなく、誘導品を原料として生産される最終製品の需要や工場の稼働によって変動する。従って、石油化学誘導品の生産に合わせてオレフィン類や芳香族化合物の収率を調節することが望まれる。
【0030】
本実施形態に係る製造方法においては、スチーム共存下での熱処理により、主にガソリン留分中の飽和分からオレフィン類が生成され、ガソリン留分中のオレフィン分から芳香族化合物が製造されるものと考えられる。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、ガソリン留分中の飽和分の含有量及びオレフィン分の含有量を適宜調整することにより、芳香族化合物の製造量及びオレフィン類の製造量を適宜変更することができる。
【0031】
また、ガソリン留分は、ガソリン留分の総質量を基準として、オレフィン分を5〜45質量%含有するものであることが好ましく、15〜40質量%含有するものであることがより好ましい。また、芳香族分を0〜40質量%含有するものであることが好ましく、0〜30質量%含有するものであることがより好ましい。
【0032】
ガソリン留分中のオレフィン分が多いと、上述のように芳香族化合物を高収率で得ることができる。一方、オレフィン分及び芳香族分は、上記熱処理における重縮合反応により、コークやタールと呼ばれる高分子量化合物を生成しやすく、生成した高分子量化合物は熱処理を行う分解炉や急冷熱交換器の内部に付着する。そして、高分子量化合物の生成量が多いと、熱処理を中断して分解炉や急冷熱交換器の内部に付着した高分子量化合物の除去を行う頻度が増加して作業効率が低下する場合がある。本実施形態に係る製造方法においては、ガソリン留分中のオレフィン分及び芳香族分の含有量をそれぞれ上記上限値以下とすることにより、熱処理時の高分子量化合物の生成を抑制することができる。すなわち、ガソリン留分中のオレフィン分及び芳香族分の含有量をそれぞれ上記範囲内とすることで、高分子量化合物の生成を抑制して作業効率を向上させるとともに、芳香族化合物を高収率で得ることができる。
【0033】
熱処理工程は、例えば、分解炉と急冷熱交換器とを備える製造システムにおいて行うことができる。図2は、本実施形態に係る製造システムの概略を示す図である。以下、熱処理工程の一実施形態について、説明する。
【0034】
分解炉1は、ガソリン留分A1とスチームB1とを混合する対流部2と、対流部2から供給されたガソリン留分とスチームとの混合物が流通する輻射管31及び当該輻射管31内を流通する混合物を加熱する図示しない加熱手段を有し、ガソリン留分を熱処理する輻射部3を備えるものとすることができる。また、急冷熱交換器4は、輻射部3から供給されたガソリン留分の熱処理物を冷却する冷却部を備えるものである。
【0035】
対流部2においては、ガソリン留分A1は、第一対流部21に供給され予備加熱される。次いで、第一対流部21で予備加熱されたガソリン留分は、第二対流部22に供給される。この際、第四対流部24で予備加熱されたスチームB1も供給され、ガソリン留分と共に第二対流部22に供給される。第二対流部22では、ガソリン留分とスチームとが混合され、予備加熱される。さらに、ガソリン留分とスチームとの混合物は、第三対流部23に供給され、さらに予備加熱される。対流部2においては、例えば輻射部から供される燃焼排ガスD1の熱を利用して、上記予備加熱を行うことができる。
【0036】
第三対流部23で予備加熱されたガソリン留分とスチームとの混合物は、ベンチュリー管5を介して、複数存在する輻射管31に等配分されることにより、輻射部3に供給される。そして、輻射部3において、輻射管31内を流通する混合物は図示しない加熱手段によって熱処理される。
【0037】
輻射部3で熱処理された熱処理物は、急冷熱交換器4に供給され、冷却される。急冷熱交換器4を経て得られる熱処理物C1は、芳香族化合物及びオレフィン類を含有するものであり、例えば、蒸留操作によって芳香族化合物及びオレフィン類を熱処理物C1から取り出すことができる。
【0038】
対流部2は、図2では第一から第四までの対流部を有するものとして記載したが、1つ又は2つ以上の対流部を有するものとすることができる。また、急冷熱交換器4でスチームを発生させる場合、そのスチームを対流部で加熱することがある。
【0039】
対流部2におけるスチームの混合量は、ガソリン留分100質量部に対して、30〜60質量部であることが好ましく、38〜50質量部であることがより好ましい。
【0040】
対流部2においてスチームを混合することにより、分圧が下がり原料であるガソリン留分の気化が促進される。また、スチームの混合により、熱処理によって生じる反応が促進され、芳香族化合物及びオレフィン類の収率が向上する。さらには、コークやタール生成の前駆体となり得る高沸点化合物の分圧を下げることで、コークやタールの生成が抑制される。
【0041】
このような効果を有するスチームの混合量が上記範囲より少ないと、芳香族化合物及びオレフィン類の収率が低下する場合がある。また、コークやタールの生成が促進されて伝熱性能の低下や流路の閉塞が急速に進行し、場合により分解炉への原料の導入を中断してコークやタールの除去を行う必要が生じ、作業効率が低下する。一方、スチームの混合量が上記範囲より多いと、スチームの流量が増えて管路の圧力損失が上昇するため、原料であるガソリン留分の投入量が制限され、芳香族化合物及びオレフィン類の製造効率が低下する場合がある。また、スチームの使用量が増えてスチーム生成に要するエネルギー消費が増加するため、エネルギー効率が低下する。したがって、スチームの混合量を上記範囲内とすることにより、良好な作業効率及び製造効率を維持しつつ、芳香族化合物及びオレフィン類を高収率で得ることができるようになる。
【0042】
輻射管31内における反応圧力は、0.45MPa以下であることが好ましく、0.35MPa以下であることがより好ましい。
【0043】
輻射部3における熱処理においては、スチームの存在によりガソリン留分及びその熱処理物の分圧が下がり、反応が促進される。輻射管31内における反応圧力が高すぎると、分圧が上昇して熱処理による反応が抑制され、芳香族化合物及びオレフィン類の収率が低下する場合がある。また、コークやタール生成の前駆体となる高沸点化合物の分圧が上昇し、重縮合反応であるコークやタール生成が促進される場合がある。したがって、輻射管31内における反応圧力を上記のようにすることで、作業効率を良好に維持しつつ、収率良く芳香族化合物及びオレフィン類を製造することができる。
【0044】
輻射管31内における反応時間は、0.1〜0.7秒であることが好ましく、0.2〜0.5秒であることがより好ましい。ここで「反応時間」とは、対流部2から供給されるガソリン留分とスチームとの混合物が、輻射部3に供給されてから急冷熱交換器4に到達するまでの時間を示す。
【0045】
反応時間が上記範囲より短いと、熱処理による反応が十分に進行せず、芳香族化合物及びオレフィン類の収率が低下する。一方、反応時間が上記範囲より長いと、熱処理による反応が進行しすぎて、生成したオレフィン類を熱分解してしまう場合がある。したがって、反応時間を上記範囲とすることにより、芳香族化合物及びオレフィン類を収率良く得ることができる。
【0046】
輻射部3から供給される熱処理物は、温度が790〜850℃であることが好ましく、800〜845℃であることがより好ましい。ここで、当該温度は、輻射管31の出口温度(すなわち、輻射部3出口における温度)を測定することにより得られる温度であり、分解温度とも呼ばれる。
【0047】
分解温度が上記範囲より低いと、熱処理による反応が十分に進行せず、芳香族化合物及びオレフィン類の収率が低下する場合がある。一方、分解温度が上記範囲より高いと、コークやタールが多く生成され、作業効率が低下する場合がある。したがって、分解温度を上記範囲内とすることにより、コークやタールの生成を抑制して作業効率の低下を防ぎつつ、芳香族化合物及びオレフィン類を収率良く得ることができるようになる。
【0048】
熱処理工程においては、ガソリン留分100質量部に対して40質量部以上のナフサを、ガソリン留分及びスチームと共に熱処理することもできる。ナフサと共に熱処理することにより、ガソリン留分から生成するコークやタールの生成量を低減することができる。例えば、ナフサと共に熱処理することにより、分解温度を800〜845℃としてもコークやタールの生成が十分に抑制される。そのため、スチームの混合量を少なくしてエネルギー効率を改善したり、ガソリン留分中のオレフィン分の含有量を多くして芳香族化合物の収率を向上させたり、分解温度を高くして芳香族化合物及びオレフィン類の収率を向上させたりしても、コークやタールの生成による作業効率の低下が起こりにくくなる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
重油・重質軽油を原料とする接触分解装置で製造されたガソリン留分(1)を、図2に示すような製造システムに供して、スチームと共に熱処理を行った。原料であるガソリン留分(1)の性状は、表1に示すとおりであった。また、熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物とを、表2に示す。なお、以下の表中、「収率」は、熱処理後に得られた熱処理物の総質量を100質量%としたときの、各化合物の含有割合を示したものである。また、表1中、IBPは、初留点を示す。表1中、組成は、JIS K2536−2「石油製品−成分試験法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定した。また、表2中、「その他」としては、C5以上のオレフィン類、C9以上の芳香族化合物等が挙げられる。
【0052】
(実施例2)
ガソリン留分(1)にかえて、重油・重質軽油を原料とする接触分解装置で製造されたガソリン留分(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に熱処理を行った。原料であるガソリン留分(2)の性状は、表1に示すとおりであった。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表2に示す。
【0053】
(実施例3)
ガソリン留分(1)にかえて、重油・重質軽油を原料とする接触分解装置で製造されたガソリン留分(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に熱処理を行った。原料であるガソリン留分(3)の性状は、表1に示すとおりであった。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表2に示す。
【0054】
(比較例1)
ガソリン留分(1)にかえて表1に示す性状の軽質ナフサを用いたこと以外は、実施例1と同様に熱処理を行った。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
(実施例4)
表1のガソリン留分(1)と軽質ナフサとを表3に示す原料比率で混合し、図2に示すような製造システムに供して、スチームと共に熱処理を行った。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表3に示す。
【0058】
(実施例5)
表1のガソリン留分(2)と軽質ナフサとを表4に示す原料比率で混合し、図2に示すような製造システムに供して、スチームと共に熱処理を行った。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表4に示す。
【0059】
(実施例6)
表1のガソリン留分(3)と軽質ナフサとを表5に示す原料比率で混合し、図2に示すような製造システムに供して、スチームと共に熱処理を行った。熱処理における条件と、熱処理により得られた化合物を、表5に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、芳香族化合物とオレフィン類とを同時に製造することができ、石油化学誘導品の基幹原料の供給方法として産業上有用である。
【符号の説明】
【0064】
1…分解炉、2…対流部、3…輻射部、4…急冷熱交換器、5…ベンチュリー管、21…第一対流部、22…第二対流部、23…第三対流部、24…第四対流部、31…輻射管、A1…ガソリン留分、B1…スチーム、C1…熱処理物、D1…燃焼排ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初留点及び終点がともに17〜220℃の範囲内にあるガソリン留分をスチームと共に熱処理し、芳香族化合物及びオレフィン類を得る工程を備える、芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法。
【請求項2】
前記ガソリン留分は、前記ガソリン留分の総質量を基準として、オレフィン分を5〜45質量%含有し、芳香族分を0〜40質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法。
【請求項3】
前記工程は、
前記ガソリン留分とスチームとを混合する対流部と、
前記対流部を経た前記ガソリン留分とスチームとの混合物が流通する輻射管及び当該輻射管内を流通する前記混合物を加熱する加熱手段を有し、前記ガソリン留分を熱処理する輻射部と、
前記輻射部を経た前記ガソリン留分の熱処理物を冷却する冷却部と、
を備える製造システムにおいて行われ、
前記対流部におけるスチームの混合量が前記ガソリン留分100質量部に対して30〜60質量部であり、
前記輻射管内における反応圧力が0.45MPa以下、反応時間が0.1〜0.7秒であり、
前記輻射部を経た前記熱処理物の温度が790〜850℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法。
【請求項4】
前記工程において、前記ガソリン留分100質量部に対して、40質量部以上のナフサを、前記ガソリン留分及び前記スチームと共に熱処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族化合物及びオレフィン類の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208071(P2011−208071A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78983(P2010−78983)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】