説明

芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法

【課題】簡単な工程により、各種の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物を、低コストで効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中で、アルデヒド化合物(1)を、還元剤の存在下に、フッ素含有エステル化合物(2)、及びケイ素化合物(3)と反応させて、アセタール化合物(4)を製造し、得られたアセタール化合物(4)を、脱シリル化剤で処理することを特徴とする、芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物(5)の製造方法。


(Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環、Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基;Rは炭素数1〜8のアルキル基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の新規で効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素有機化合物は耐熱性、耐薬品性、撥水性、撥油性、特異な生理活性などの性質から、医薬品、色素材料、高分子材料などに広く利用されている。また、近年はポリフルオロアルキル鎖を有する化合物は含フッ素化合物の効率的な分離精製に利用できることが示され、ポリフルオロアルキル鎖を有する化合物が数多く市販されている。
【0003】
低コストで、安全に、効率良くかつ位置選択的に有機化合物へフッ素原子を導入することは必ずしも容易ではない。本発明で目的とする芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物については、これまでいくつかの製造方法が提案されている。(例えば、非特許文献1〜5参照)
しかしながら、従来の製造方法では(1)特殊な原料を使用するために、原料となる化合物を合成する必要がある(非特許文献1〜3)、(2)複雑な製造工程を必要とするために、製造条件の制御が困難であり製造コストが高くなる(非特許文献4,5)、といった問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R. P. Singh et al., J. Org. Chem., 2001, 66, 1436-1440
【非特許文献2】J. Iskra et al., Eur. J. Org. Chem., 2002, 3402-3410
【非特許文献3】M. Kawase, Tetrahedron Letters, 1994, 35, 149-152
【非特許文献4】Y. Kamitori et al., Synthesis, 1988, 208-209
【非特許文献5】W. R. Nes et al., J. Am. Chem. Soc., 1950, 72, 5409-5413
【非特許文献6】I. Nishiguchi et al., Tetrahedron Letters 2002, 43 635-637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、簡単な工程により、各種の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物を、低コストで効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、これまでマグネシウム金属を用いた芳香族アルデヒド及びケトンの炭素アシル化反応について、報告してきた(非特許文献6参照)。本発明者等は、このマグネシウム金属からの電子移動型反応を応用することによって、芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物を、低コストで効率良く製造できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明はつぎの1〜4の構成を採用するものである。
1.有機溶媒中で、次の式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環を表す。)
で表されるアルデヒド化合物を、還元剤の存在下に、次の式(2)
RfCOOR (2)
(式中、Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基を表し;Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
で表されるフッ素含有エステル化合物、及び次の式(3)
SiCl (3)
(式中、R〜Rは、各独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
で表されるケイ素化合物と反応させて次の式(4)で表されるアセタール化合物を製造し、
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Ar、R〜R及びRfは上記と同じものを表す。)
得られたアセタール化合物(4)を、脱シリル化剤で処理することを特徴とする、下記の式(5)で表される芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環を表し;Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基を表す。)
2.還元剤が金属マグネシウムであることを特徴とする1に記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
3.脱シリル化剤がテトラアルキルアンモニウムフルオリドであることを特徴とする1又は2に記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
4.反応温度を氷冷〜還流条件下で行うことを特徴とする1〜3のいずれかに記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価な原料を使用し、温和な反応条件を用いて、各種の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物を低コストで効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、原料として次の式(1)で表されるアルデヒド化合物を使用する。
【化4】

【0016】
式(1)において、Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環を表す。好ましいArとしては、フェニル基、−Cで表される置換フェニル基(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子から選択された基を表す)、ナフチル基又はチオフェン−2−イル基が挙げられる。
好ましいアルデヒド化合物(1)の具体例としては、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、3−クロロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−チオフェンカルボキシアルデヒド等が挙げられる。
【0017】
また、本発明では他の原料として、次の式(2)で表されるフッ素含有エステル化合物を使用する。
RfCOOR (2)
上記式(2)において、Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又は式C2n+1(nは1〜4の整数)で示されるペルフルオロアルキル基を表し;Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。
好ましいRfとしては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる。また、好ましいRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の低級アルキル基が挙げられる。
好ましいフッ素含有エステル化合物(2)の具体例としては、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、ペルフルオロプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明では他の原料として、次の式(3)で表されるケイ素化合物を使用する。
SiCl (3)
(式中、R〜Rは、各独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
上記式(3)において、R〜Rは同一又は異なるものであり、各独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の低級アルキル基が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。
好ましいケイ素化合物(3)の具体例としては、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、エチルジメチルシリルクロリド等が挙げられる。
【0019】
本発明では、有機溶媒中で、上記の式(1)で表されるアルデヒド化合物と、上記の式(2)で表される含フッ素エステル化合物及び上記の式(3)で表されるケイ素化合物を、還元剤の存在下に反応させることによって、下記の反応式にしたがって、式(4)で表されるアセタール化合物を製造する。そして、このアセタール化合物(4)を脱シリル化剤で処理することによって、対応する芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物(5)を得ることができる。アセタール化合物(4)は単離して脱シリル化剤で処理してもよいが、単離せずにアセタール化合物(4)を含む反応液を脱シリル化剤で処理して直接芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物(5)を得るようにしてもよい。
脱シリル化剤としては、テトラアルキルアンモニウムフルオリド、金属フルオリド、酸又はアルカリを使用することができる。好ましい脱シリル化剤としては、フッ化テトラブチルアンモニウムのようなテトラアルキルアンモニウムフルオリドが挙げられる。
【0020】
【化5】

【0021】
上記反応式において、Ar、R〜R及びRfは上記と同じものを表す。
上記の反応において、反応に用いる化合物は全ての成分を予め混合させて反応させることができ、また一部の反応成分を後から滴下又は添加するようにしてもよい。各反応成分の好ましい使用割合は、アルデヒド化合物(1)1当量に対して、還元剤(Mg)1〜15当量、含フッ素エステル化合物(2)1〜20当量、ケイ素化合物(3)1〜15当量程度である。
【0022】
還元剤としては、金属、或いはサマリウム、イッテルビウム塩のような還元力のある金属塩を使用することができる。また、還元剤に代えて電極を用いて電気的に還元してもよい。特に好ましい還元剤としては、グリニヤール反応用の削状マグネシウムのような金属マグネシウムが挙げられる。
また、アセタール化合物を処理する好ましい脱シリル化剤としては、例えばフッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化セシウム、硫酸等を使用することができる。
【0023】
本発明によれば、安価で入手が容易な原料化合物を使用して、上記式(5)で表される芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物を、温和な反応条件下にて低コストで効率良く製造することができる。
この反応は、通常は有機溶媒中で行われるが、好ましい有機溶媒としては非プロトン性極性溶媒、特にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
また、反応温度は氷冷〜還流条件の範囲で、使用する原料等に応じて選択することができる。
【実施例】
【0024】
次に実施例により本発明をさらに説明するが,以下の実施例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−フェニルプロパン−1−オンの合成
【0025】
【化6】

【0026】
窒素雰囲気下で100mL四つ口フラスコにN−メチル−2−ピロリドン(10mL)、金属マグネシウム(0.25g、10mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(7.8g、55mmol)、トリメチルシリルクロリド(2.2g、20mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。その後、滴下ロートを用いてベンズアルデヒド(0.53g、5mmol)のN−メチル−2−ピロリドン(40mL)溶液を反応溶液の温度が−10〜−15℃に保たれるように冷却しながら2時間かけて滴下し、ベンズアルデヒドが消失するまで−10〜−15℃で撹拌した。反応終了後、飽和重曹水(200mL)に反応混合溶液を注ぎ、ジエチルエーテルで2回抽出し、水及び飽和食塩水にてそれぞれ洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、無色透明液体のアセタール(収率73%)を得た。得られたアセタール(2mmol)とテトラヒドロフラン(20mL)を三つ口フラスコに加えた後、0〜5℃でフッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液(0.5eq.mol)を加えアセタールが消失するまで撹拌した。反応終了後、水(10mL)を注ぎ酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、無色固体の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−フェニルプロパン−1−オン(収率71%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 4.32 (1H, d, J=8.2Hz), 5.45 (1H, m), 7.55 (2H, t, J=7.6Hz), 7.71 (1H, t, J=7.6Hz), 7.99 (2H, d, J=7.6Hz)
13C-NMR (100MHz, CDCl3)δ(ppm): 70.94 (q, 2JCF=31.5Hz), 122.31 (q, 1JCF=284.7Hz), 129.00, 129.44, 133.34, 135.26, 193.07
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -73.83 (d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3345, 3077, 2955, 1685, 1597, 1401, 1323, 1224, 1169, 1126, 976, 853(cm-1)
【0027】
(実施例2)1−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−オンの合成
【0028】
【化7】

【0029】
実施例1と同様の手順で、アルデヒドとして4−クロロベンズアルデヒド(0.71g、5mmol)を用いて無色透明液体のアセタール(収率68%)を得た。また、得られたアセタール(2mmol)を実施例1と同様に反応させることにより、無色固体の1−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−オン(収率59%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 4.30 (1H, d, J=6.8Hz), 5.40 (1H, m), 7.53 (2H, d, J=8.3Hz), 7.93 (2H, d, J=8.3Hz)
13C-NMR (100MHz, CDCl3)δ(ppm): 71.00 (q, 2JCF=31.4Hz), 122.20 (q, 1JCF=284.7Hz), 129.41, 130.74, 131.60, 142.09, 191.97
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -73.81 (d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3445, 3044, 2983, 1687, 1591, 1492, 1400, 1315, 1219, 1127, 972,860(cm-1)
【0030】
(実施例3)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(4−メチルフェニル)−プロパン−1−オンの合成
【0031】
【化8】

【0032】
実施例1と同様の手順で、アルデヒドとして4−メチルベンズアルデヒド(0.60g、5mmol)を用いて無色透明液体のアセタール(収率50%)を得た。また、得られたアセタール(2mmol)を実施例1と同様に反応させることにより、無色固体の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(4−メチルフェニル)−プロパン−1−オン(収率65%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 2.47 (3H, s), 4.31(1H, d, J=8.3Hz), 5.40 (1H, m), 7.53 (2H, d, J=7.8Hz), 7.89 (2H, d, J=7.8Hz)
13C-NMR (100MHz, CDCl3)δ(ppm): 21.88, 70.75 (q, 2JCF=31.4Hz), 122.37(q, 1JCF=284.7Hz), 129.62, 129.70, 130.78, 146.78, 192.37
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -76.00(d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3443, 3049, 2976, 1680, 1605, 1570, 1403, 1317, 1187, 1122, 971, 862(cm-1)
【0033】
(実施例4)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(ナフタレン−1−イル)−プロパン−1−オンの合成
【0034】
【化9】

【0035】
実施例1と同様の手順で、アルデヒドとして1−ナフトアルデヒド(0.78g、5mmol)を用いて無色透明液体のアセタール(収率41%)を得た。また、得られたアセタール(1.3mmol)を実施例1と同様に反応させることにより、黄色固体の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(ナフタレン−1−イル)−プロパン−1−オン(収率18%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 4.50(1H, d, J=5.8Hz), 5.40(1H,m), 7.56-7.71 (3H, m), 7.90-7.96(2H, m), 8.14(1H, d, J=8.3Hz), 8.56(1H, d, J=8.8Hz)
13C-NMR (100MHz, CDCl3)δ(ppm): 72.50(q, 2JCF=30.6Hz), 122.37(q, 1JCF=284.7Hz), 123.79, 125.05, 127.21, 128.72, 129.10, 129.99, 130.28, 131.21, 133.90, 135.21, 195.12
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -73.65(d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3477, 3064, 2942, 1684, 1508, 1238, 864, 783(cm-1)
【0036】
(実施例5)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(チオフェン−2−イル)−プロパン−1−オンの合成
【0037】
【化10】

【0038】
実施例1と同様の手順で、アルデヒドとして2−チオフェンカルボキシアルデヒド(0.56g、5mmol)を用いて無色透明液体のアセタール(収率30%)を得た。また、得られたアセタール(1.3mmol)を実施例1と同様に反応させることにより、無色固体の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−(チオフェン−2−イル)−プロパン−1−オン(収率67%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 4.20(1H, broad, s), 5.22(1H, q, J=6.8Hz), 7.26 (t, 1H, J=3.9Hz), 7.88(d, 1H, J=3.9Hz), 7.89(d, 1H, J=3.9Hz)
13C-NMR (100MHz, CDCl3)δ(ppm): 71.20(q, 2JCF=31.4Hz), 122.23(q, 1JCF=283.9Hz), 128.85, 135.46, 137.45, 139.54, 184.59
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -74.69(d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3353, 3120, 3107, 2953, 1837, 1655, 1519, 1415, 1325, 1245, 1125, 873, 813 (cm-1)
【0039】
(実施例6)1−(3−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−オンの合成
【0040】
【化11】

【0041】
実施例1と同様の手順で、アルデヒドとして3−クロロベンズアルデヒド(0.71g、5mmol)を用いて無色透明液体のアセタール(収率77%)を得た。また、得られたアセタール(2mmol)を実施例1と同様に反応させることにより、無色固体の1−(3−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−オン(収率63%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ(ppm): 4.24(1H, broad, s), 5.22(1H,m), 7.50(1H, t, J=7.8Hz), 7.68(1H, d, J=7.8Hz), 7.85(1H, d, J=7.8Hz), 7.97(1H, s)
13C-NMR (100MHz,CDCl3)δ(ppm): 71.20(q, 2JCF=31.4Hz), 122.15(q, 1JCF=284.7Hz), 127.50, 129.28, 130.27, 134.83, 135.15, 135.48, 192.24
19F-NMR (376MHz, CDCl3)δ(ppm): -73.91(d, 3F, J=6.1Hz)
IR (KBr): 3438, 3187, 3076, 2960, 1694, 1595, 1576, 1480, 1040, 977 (cm-1)
MS (EI): 238 (M+)








【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中で、次の式(1)
【化1】


(式中、Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環を表す。)
で表されるアルデヒド化合物を、還元剤の存在下に、次の式(2)
RfCOOR (2)
(式中、Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基を表し;Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
で表されるフッ素含有エステル化合物、及び次の式(3)
SiCl (3)
(式中、R〜Rは、各独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
で表されるケイ素化合物と反応させて次の式(4)で表されるアセタール化合物を製造し、
【化2】


(式中、Ar、R〜R及びRfは上記と同じものを表す。)
得られたアセタール化合物(4)を、脱シリル化剤で処理することを特徴とする、下記の式(5)で表される芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
【化3】


(式中、Arはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基又は5員環の複素芳香環を表し;Rfは炭素数1〜4のポリフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基を表す。)
【請求項2】
還元剤が金属マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
【請求項3】
脱シリル化剤がテトラアルキルアンモニウムフルオリドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。
【請求項4】
反応温度を氷冷〜還流条件下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族含フッ素非対称アシロイン化合物の製造方法。




【公開番号】特開2012−51812(P2012−51812A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193236(P2010−193236)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第90春季年会 2010年講演予稿集▼4▲」に発表
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】