説明

芳香族酸のフッ素化エーテルを合成する方法

芳香族酸のフッ素化エーテルは、銅(I)源または銅(II)源と銅に配位結合するジアミン配位子を含有する反応混合物中のハロゲン化芳香族酸から製造される。本明細書において記載された方法を用いて製造された芳香族酸のフッ素化エーテルは、防汚性、耐水性および耐油性を付与するために、例えば、繊維、ヤーン、カーペット、衣料品、フィルム、成形品、紙および厚紙、石およびタイルに塗布することが可能である。芳香族酸のフッ素化エーテルまたはそのジエステルをポリマー主鎖に導入することにより、改善された難燃性のみでなく、より耐久力のある防汚性、耐水性および耐油性を達成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される、2009年9月2日出願の米国仮特許出願第61/239,102号明細書からの米国特許法§119(e)に基づく優先権を主張し、その利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、界面活性剤、中間体として、またはポリマーを製造するためのモノマーとしての用途などの多様な目的のために価値のあるヒドロキシ芳香族酸のフッ素化エーテルの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化有機化合物は、多様な用途において、例えば、表面処理において、例えば、医薬品の合成における中間体として、および非常に貴重な特性を有するポリマーの合成におけるモノマーとして、用いられてきた。特に、化合物として、またはポリマーの成分として、フッ素化有機化合物は、特に繊維関連産業における材料に防汚性、耐水性および耐油性ならびに改善された難燃性を付与するために用いられる。一般に、フッ素化化合物は局所治療として塗布されるが、フッ素化化合物の有効性は、磨耗および洗浄から生じる材料損失のゆえに経時的に減少する。
【0004】
従って、改善された、より耐久性の防汚性および耐油性を有する高分子材料を提供することが必要とされ続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書における開示は、芳香族酸の新規フッ素化エーテル、芳香族酸のフッ素化エーテルを調製する方法、こうしたフッ素化エーテルを転化できる生産物を調製する方法、こうした方法の使用、およびこうした方法によって得られ且つ得ることができる生産物を含む。
【0006】
本明細書の方法の一実施形態は、以下の式I
【化1】

(式中、Arは、C〜C20単環式または多環式の芳香族核であり、nおよびmは、それぞれ独立して非零値であり、n+mは8以下であり、Rは、RがCF基またはCFCHCH基を介して式I中のエーテル酸素に結合されていないことを条件として、1個以上のエーテル連結−O−を場合により含むフッ素化されたアルキル基、アルカリール基、アラルキル基またはアリール基である)
の構造によって表される、芳香族酸のフッ素化エーテルを調製する方法であって、
【0007】
(a)以下の式II
【化2】

(式中、各Xは独立してCl、BrまたはIであり、Ar、nおよびmは、前述した通りである)
の構造によって表されるハロゲン化芳香族酸を
(i)溶媒として極性非プロトン性溶媒中の、またはROH中の、ハロゲン化芳香族酸の当量当たり合計で約n+m当量〜約n+m+1当量のアルコラートR(式中、MはNaまたはKである)、
(ii)銅(I)源または銅(II)源および
(iii)銅に配位結合するジアミン配位子
に接触させて、反応混合物を生成させ、
【0008】
(b)反応混合物を加熱して、以下の式III
【化3】

の構造によって表されるような、工程(a)の生成物のm−塩基性塩を生成させ、
(c)場合により、式IIIm−塩基性塩を生成させる反応混合物から式IIIm−塩基性塩を分離し、
(d)式IIIm−塩基性塩を酸に接触させて、芳香族酸のフッ素化エーテルを式IIIm−塩基性塩から生成させることを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の実施形態において、以下の式IV
【化4】

の構造によって表されるような新規化合物または組成物およびそのジエステルが提供される。
【0010】
本発明の第3の実施形態において、式V
【化5】

の新規化合物または組成物およびそれらのジエステルが提供される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、式Iの構造によって表現される芳香族酸のフッ素化エーテルを調製し、その後、こうして製造されたエーテルを(多工程反応を含む)反応に供して、エーテルから化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーを調製することによって化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーを調製する方法を提供する。
【0012】
フッ素化芳香族ジエステルをポリマー主鎖に導入することにより、改善された難燃性のみでなく、より耐久力のある防汚性、耐水性および耐油性を達成することが可能であることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、以下の式I
【化6】

(式中、Arは、C〜C20単環式または多環式の芳香族核であり、nおよびmは、それぞれ独立して非零値であり、n+mは8以下であり、Rは、RがCF基またはCFCHCH基を介して式I中のエーテル酸素に結合されていないことを条件として、1個以上のエーテル連結−O−を場合により含むフッ素化されたアルキル基、アルカリール基、アラルキル基またはアリール基である)
の構造によって表される、芳香族酸のフッ素化エーテルを調製する方法であって、
【0014】
(a)以下の式II
【化7】

(式中、各Xは独立してCl、BrまたはIであり、Ar、nおよびmは、前述した通りである)
の構造によって表されるハロゲン化芳香族酸を
(i)溶媒として極性非プロトン性溶媒中の、またはROH中の、ハロゲン化芳香族酸の当量当たり合計で約n+m当量〜約n+m+1当量のアルコラートR(式中、MはNaまたはKである)、
(ii)銅(I)源または銅(II)源および
(iii)銅に配位結合するジアミン配位子
に接触させて、反応混合物を生成させ、
【0015】
(b)反応混合物を加熱して、以下の式III
【化8】

の構造によって表されるような、工程(a)の生成物のm−塩基性塩を生成させ、
(c)場合により、式IIIm−塩基性塩を生成させる反応混合物から式IIIm−塩基性塩を分離し、
(d)式IIIm−塩基性塩を酸に接触させて、芳香族酸のフッ素化エーテルを式IIIm−塩基性塩から生成させることを含む方法を提供する。
【0016】
本明細書において用いられる「アルキル」という用語は、いずれかの炭素原子から水素原子を除去することによりアルカンから誘導される一価基を表す。−C2x+1、式中、x≧1
【0017】
本明細書において用いられる「アリール」という用語は、その自由原子価が芳香族環の炭素原子に対して一価の基を表す。
【0018】
本明細書において用いられる「アラルキル」という用語は、アリール基を有するアルキル基を表す。1つのこうした例は、ベンジル基、すなわち、基
【化9】

である。
【0019】
本明細書において用いられる「アルカリール」という用語は、アルキル基を有するアリール基を表す。幾つかの例は、4−メチルフェニル基、
【化10】

メシチル基(すなわち、2,4,6−トリメチルフェニル基)および2,6−ジイソプロピルフェニル基(すなわち、(CHCHCH−基)である。
【0020】
の例は、
CF(CF(CH−(式中、a=0〜15の整数およびb=1、3または4)
HCF(CF(CH−(式中、c=0〜15の整数およびd=1、3または4)
CFCFCFOCFHCF(OCHCH−および
CFCFCFOCFCF(OCHCH−、(式中、e=1〜12の整数)
(CFCH−、
(CFCFCFH)(F)(CF)C−、
(CFCFCFH)(F)(CF)CCH−、
(CF(H)C(CFCF)(F)C−、および
(CF(H)C(CFCF)(F)CCH−、ならびに
ペンタフルオロフェニルを含むがこれらに限定されない。
【0021】
式I、IIおよびIIIにおいて、Arは、C〜C20単環式または多環式の芳香族核であり、nおよびmは、それぞれ独立して非零値であり、n+mは8以下である。式IIにおいて、各Xは独立してCl、BrまたはIである。
【0022】
【化11】

によって表される基は、芳香族環上の、または構造が多環式である時に芳香族環上の異なる炭素原子からn+m個の水素を除去することにより形成されたn+m価のC〜C20単環式または多環式の芳香族核である。基「Ar」は、置換または非置換であってもよい。非置換である時、基「Ar」は、炭素および水素のみを含む。
【0023】
適するAr基の一例は、以下に示したようなフェニレンである。ここで、n=m=1
【化12】

【0024】
好ましいAr基を以下に示す。ここで、n=m=2である。
【化13】

【0025】
用語として本明細書において用いられるような「m−塩基性塩」は、置換可能な水素原子を有するm個の酸基を各分子中に含む酸から形成された塩である。
【0026】
本発明の方法において出発材料として用いられるべき種々のハロゲン化芳香族酸は市販されている。例えば、2−ブロモ安息香酸は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手できる。しかし、それは、Sassonら、Journal of Organic Chemistry(1986年)、51(15)、2880〜2883において記載された通りブロモメチルベンゼンの酸化によって合成することができる。使用できる他のハロゲン化芳香族酸は、2,5−ジブロモ安息香酸、2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸、2−ブロモ−5−メチル安息香酸、2−クロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸、2−クロロ−5−メチル安息香酸、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸、5−ブロモ−2−クロロ安息香酸、2,3−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−4−ニトロ安息香酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−クロロ−5−ニトロ安息香酸、2,5−ジブロモテレフタル酸および2,5−ジクロロテレフタル酸を、これらに限定することなく含み、それらのすべては市販されている。好ましくは、ハロゲン化芳香族酸は、2,5−ジブロモテレフタル酸または2,5−ジクロロテレフタル酸である。
【0027】
本発明の方法における出発材料として有用な他のハロゲン化芳香族酸は、以下の表(表において、X=Cl、BrまたはI、本発明の方法によってこれらのハロゲン化芳香族酸から製造される芳香族酸の対応するエーテルを右欄において示している)の左欄において示されたハロゲン化芳香族酸を含む。
【0028】
【化14】

【0029】
工程(a)において、ハロゲン化芳香族酸を、溶媒として極性非プロトン性溶媒中の、
またはROH中のアルコラートR(式中、Rは上で定義された通りであり、MはNaまたはKである)、銅(I)源または銅(II)源および銅に配位結合するジアミン配位子に接触させる。
【0030】
アルコールはROHであってもよく、それが好ましく、またはアルコールはROHより酸性ではないアルコールであってもよい。適するアルコールの例は、ROHより酸性ではないことを条件として、メタノール、エタノール、i−プロパノール、i−ブタノールおよびフェノールを含むがこれらに限定されない。
【0031】
溶媒は、極性プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒もしくはプロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の混合物であってもよい。本明細書において用いられる極性溶媒は、その成分分子が非零の双極子モーメントを示す溶媒である。本明細書において用いられる極性プロトン性溶媒は、その成分分子がO−H結合またはN−H結合を含む極性溶媒である。本明細書において用いられる極性非プロトン性溶媒は、その成分分子がO−H結合またはN−H結合を含まない極性溶媒である。本明細書において用いるために適するアルコール以外の極性溶媒の非限定的な例は、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドを含む。
【0032】
工程(a)において、好ましくは、ハロゲン化芳香族酸の当量当たり合計で約n+m当量〜n+m+1当量のアルコラートROにハロゲン化芳香族酸を接触させる。m当量〜m+1当量の間がm−塩基性塩を形成するために用いられ、n当量〜n+1当量の間が、置換反応のために用いられる。アルコラートの全量がm+n+1を超えないことが好ましい。アルコラートの全量が、還元反応を回避するためにm+n未満でないことも好ましい。この文脈において用いられるような1「当量」は、1モルの水素イオンと反応するアルコラートROのモル数であり、酸に関して、1当量は、1モルの水素イオンを供給する酸のモル数である。
【0033】
上述した通り、工程(a)において、銅に配位結合するジアミン配位子の存在下で銅(I)源または銅(II)源にもハロゲン化芳香族酸を接触させる。銅源および配位子は、反応混合物に逐次に添加してもよいか、または(例えば、水の溶液またはアセトニトリルの溶液中で)別個に組み合わせ、一緒に添加してもよい。
【0034】
銅源は、銅(I)塩、銅(II)塩またはそれらの混合物である。例は、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSOおよびCu(NOを含むがこれらに限定されない。銅源の選択は、用いられるハロゲン化芳香族酸の種類に対して行ってもよい。例えば、出発ハロゲン化芳香族酸がブロモ安息香酸である場合、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSOおよびCu(NOが有用な選択の中に含まれる。出発ハロゲン化芳香族酸がクロロ安息香酸である場合、CuBr、CuI、CuBrおよびCuIが有用な選択の中に含まれる。場合により、工程(a)の前に、測定された量(約0.25モルO/CuIモル)をジアミン/アルコール溶液にCuIを溶解させるために添加してもよい。CuBrおよびCuBrは、殆どの系に対して一般に好ましい選択である。用いられる銅の量は、ハロゲン化芳香族酸のモルを基準として典型的には約0.1〜約5モル%である。
【0035】
配位子は、直鎖、分枝鎖、環式、脂肪族、芳香族、置換または非置換のジアミンもしくは2種以上のこうした配位子の混合物であってもよい。非置換形態において、配位子は、炭素原子、窒素原子および水素原子のみを含むジアミンであってもよい。置換形態において、アミン配位子は、酸素または硫黄などのヘテロ原子を含んでもよい。種々の実施形態において、アミンは、少なくとも1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基を含んでもよい。
【0036】
配位子として本明細書において用いるために適する第一級ジアミンまたは第二級ジアミンは、以下の式VI
【化15】

(式中、各Rおよび各Rは、独立して、
H、
〜C10の直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、置換または非置換のヒドロカルビル基、
〜C12の環式脂肪族の飽和または不飽和、置換または非置換のヒドロカルビル基もしくは
〜C12の芳香族の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、
およびRは、それぞれ独立して、
H、
〜C10の直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、置換または非置換のヒドロカルビル基、
〜C12の環式脂肪族の飽和または不飽和、置換または非置換のヒドロカルビル基もしくは
〜C12の芳香族の置換または非置換ヒドロカルビル基であるか、もしくはRおよびRは合して、
〜C12の脂肪族の飽和または不飽和、置換または非置換のヒドロカルビル環構造もしくは
〜C12の芳香族の置換または非置換ヒドロカルビル環構造である環構造を形成し、a、b、cは、それぞれ独立して0〜4である)
によって一般に表現されるジアミンを含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、Rの1方または両方はHである。他の実施形態において、Rの1方または両方もHである。他の実施形態において、R〜Rのいずれか1つ以上は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはフェニル基であってもよい。
【0038】
種々の特定の実施形態において、a、bおよびcは、すべて0に等しくてもよく、R=R=Hであるか、またはRおよびRは合して、脂肪族環構造を形成する、のいずれかである。特にb=0である時、脂肪族環構造は、以下で示すような二価基−C10
【化16】

であるシクロヘキシレン基であってもよく、従ってシクロヘキシルジアミンを提供する。
【0039】
およびRからのシクロヘキシレン基の形成は、以下の構造(VII)
【化17】

(式中、R、R、aおよびcは上述した通りである)
によって一般に例示してもよい。
しかし、代替実施形態において、1つのアミノ基、または1つのアミノ基が上に位置するアルキル基は、他のアミノ基を基準にしてシクロアルキル環または芳香族環上のメタ位またはパラ位にあってもよい。
【0040】
特に適する脂肪族ジアミンは、N,N’−ジ−n−アルキルエチレンジアミンおよびN,N’−ジ−n−アルキルシクロヘキサン−1,2−ジアミンを含む。特定の例は、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミンおよびN,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンを含むがこれらに限定されない。適する芳香族ジアミンの例は、1,2−フェニレンジアミン、およびN,N’−ジメチル−1,2−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジエチル−1,2−フェニレンジアミンなどのN,N’−ジアルキルフェニレンジアミン、ならびにベンジジンを含むがこれらに限定されない。
【0041】
本明細書において用いるために適する配位子の記述において上で言及された「ヒドロカルビル」基は、非置換である時、炭素および水素のみを含む1価基である。同様に、非置換アミンは、窒素原子、炭素原子および水素原子のみを構造中に含む化合物である。
【0042】
特定の汎用性の配位子は、RNH−(CHRCHR)−NHR(式中、RおよびRはそれぞれ独立してC〜C第一級アルキル基の群から選択され、RおよびRはそれぞれ独立してHおよびC〜Cアルキル基の群から選択され、および/またはRおよびRは合して、環構造を形成してもよい)として表現してもよいジアミンを含む、第二級アミン、特にN,N’−置換1,2−ジアミンを含む。
【0043】
式VIIにおいて、RおよびRが合して芳香族環構造を形成する時、および/または環式アミン配位子が1個以上の芳香族環構造を含む時、より厳しい反応条件(例えば、より高い温度または、より大量の銅および/または配位子)が、反応において高い転化率、選択性、収率および/または純度を達成するために必要な場合がある。
【0044】
本明細書において用いるために適する配位子は、上の名称または構造によって表現された配位子の全母集団のメンバーのいずれか1つ以上または全部として選択してもよい。
【0045】
本明細書において用いるために適する種々の銅源および配位子は、当該技術分野において知られている方法によって製造してもよいか、またはAlfa Aeser(Ward Hill,Massachusetts)、City Chemical(West Haven,Connecticut)、Fisher Scientific(Fairlawn,New Jersey)、Sigma−Aldrich(St.Louis,Missouri)またはStanford Materials(Aliso Viejo,California)などの供給業者から市販されている。
【0046】
種々の実施形態において、配位子は、銅モル当たり配位子約1〜約8モル当量、好ましくは約1〜約2モル当量の量で提供してもよい。それらおよび他の実施形態において、配位子のモル当量対ハロゲン化芳香族酸のモル当量の比は、約0.1以下であってもよい。本明細書において用いられる「モル当量」という用語は、銅1モルと相互作用する配位子のモル数を示す。
【0047】
工程(b)において、反応混合物は加熱されて、以下の式III
【化18】

の構造によって表されるようなm−塩基性塩を形成する。
【0048】
工程(a)および(b)に関する反応温度は、好ましくは約40℃〜約120℃の間、より好ましくは約50℃〜約90℃の間である。典型的には、工程(a)のために要する時間は約0.1時間〜約1時間である。工程(b)のために要する時間は、典型的には約1時間〜約100時間である。最適な時間および温度は、特定の材料に応じて異なる場合がある。酸素は、反応中に望ましくは排除してもよい。溶液は、任意選択の工程(c)の前および工程(d)において酸性化が行われる前に、典型的には、放置して冷却する。
【0049】
芳香族酸のエーテルのm−塩基性塩をその後工程(d)において酸に接触させて、ヒドロキシ芳香族酸生成物に転化させる。m−塩基性塩をプロトン化するのに十分な強度のいかなる酸も適する。例は、塩酸、硫酸および燐酸を含むがこれらに限定されない。
【0050】
一実施形態において、銅(I)源または銅(II)源は、CuBr、CuBrおよびそれらの混合物からなる群から選択される。配位子は、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミンおよびN,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンからなる群から選択され、銅(I)源または銅(II)源は、配位子の2モル当量と組み合わされる。
【0051】
本明細書において記載された方法を用いて製造された芳香族酸のフッ素化エーテルは、繊維、ヤーン、カーペット、衣料品、フィルム、成形品、紙および厚紙、石およびタイルとして製作して、防汚性、耐水性および耐油性を付与することが可能である。芳香族酸のフッ素化エーテルまたはそれらのジエステルをポリマー主鎖に導入することにより、改善された難燃性のみでなく、より耐久力のある防汚性、耐水性および耐油性を達成することが可能である。
【0052】
上で記載された方法は、化合物、モノマー、もしくはそのオリゴマーまたはポリマーなどの芳香族酸の得られたフッ素化エーテルから製造された生成物の効果的且つ効率的な合成も見込んでいる。製造されたこれらの材料は、エステル官能性、エーテル官能性、アミド官能性、イミド官能性、イミダゾール官能性、チアゾール官能性、オキサゾール官能性、カーボネート官能性、アクリレート官能性、エポキシド官能性、ウレタン官能性、アセタール官能性または酸無水物官能性の1つ以上を有する場合がある。
【0053】
式Iの化合物は、望みに応じて、上述したように分離し、回収してもよい。式Iの化合物は、反応混合物から回収して、または回収せずに後続の工程に供して、式Iの化合物を別の化合物(例えば、モノマー)またはオリゴマーもしくはポリマーなどの別の生成物に転化してもよい。本明細書の方法の別の実施形態は、従って、1つ以上の反応を通して、別の化合物、またはオリゴマーもしくはポリマーに式Iの化合物を転化する方法も提供する。式Iの化合物は、上述したような方法によって製造してもよく、その後例えば重合反応に供して、エステル官能性またはアミド官能性を有するようなオリゴマーまたはポリマーもしくはピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーを式Iの化合物から調製してもよい。
【0054】
本明細書において開示された方法によって製造された式Iの化合物、または化合物のジエステル、特にジメチルエステルは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドおよびポリベンズイミダゾールを含むがこれらに限定されないフッ素化縮合ポリマーを製造するために縮重合において用いることが可能である。本発明の材料、またはジエステルなどのこうした材料の誘導体が関わる代表的な反応は、例えば、(その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される)米国特許第3,047,536号明細書において教示された方法に従い、窒素下で1−メチルナフタレン中で0.1%のZn(BOの存在下で、式Iの1種以上の化合物およびジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールのいずれかからポリエステルを製造することを含む。同様に、芳香族酸のフッ素化エーテルは、代表的な条件が200℃〜250℃でブタノール中でチタニウムテトライソプロポキシドの存在下でプレポリマーを形成し、その後、0.08mmHgの圧力で280℃で固相重合することを含む(その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される)米国特許第3,227,680号明細書において教示された方法に従い、熱安定化フッ素化ポリエステルを調製するための二塩基性酸およびグリコールとの共重合のために適する。
【0055】
式Iの化合物からポリエステルを製造するために有用な他のジオールは、発酵法から誘導されるジオールであり、本発明の別の実施形態は、従って、発酵法からこうした方法にジオールを提供する工程を更に含むオリゴマーまたはポリマーを式Iの化合物から製造する方法を含む。
【0056】
例えば、式Iの化合物とジアミンの両方のための溶媒であるとともに高分子生成物上で膨潤作用または部分保護作用を有する、反応の条件下で液体である有機化合物中の溶液中で重合が起きる方法においてジアミンとの反応によって式Iの化合物をポリアミドオリゴマーまたはポリマーに転化してもよい。反応は、中程度の温度、例えば、100℃下で行ってもよく、好ましくは、選択された溶媒に可溶性でもある酸受容体の存在下で行われる。適する溶媒は、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、5%の塩化リチウムを含有するジメチルホルムアミド、およびメチルトリ−n−ブチルアンモニウムクロリドまたはメチル−トリ−n−プロピルアンモニウムクロリドなどの第四級アンモニウムクロリドを含有するN−メチルピロリドンを含む。反応物成分の組合せは、相当な熱および攪拌の発生を引き起こし、熱エネルギーの発生ももたらす。こうした理由で、溶媒系および他の材料は、所望の温度を維持するために冷却が必要である時、プロセス中に常に冷却される。前述した方法と似た方法は、米国特許第3,554,966号明細書、米国特許第4,737,571号明細書およびCA第2,355,316号明細書において記載されている。
【0057】
例えば、2相の界面で重合を行うために第1の溶媒と混和性である第2の溶媒中の式Iの化合物の溶液に溶媒中のジアミンの溶液を酸受容体の存在下で接触させることができる方法においてジアミンとの反応によって式Iの化合物をポリアミドオリゴマーまたはポリマーに転化させてもよい。ジアミンは、例えば、重合中に発生した酸を中和するのに十分な量において用いられる塩基を含有する水に溶解または分散させてもよい。水酸化ナトリウムを酸受容体として用いてもよい。二酸(ハロゲン化)のための好ましい溶媒は、テトラクロロエチレン、塩化メチレン、ナフサおよびクロロホルムである。式Iの化合物のための溶媒は、アミド反応生成物に対して相対非溶媒であるべきであり、アミン溶媒中で比較的不混和性であるべきである。不混和性の好ましい論理限界は次の通りである。有機溶媒は多くても0.01重量%〜1.0重量%の間でアミン溶媒に可溶性であるべきである。ジアミン、塩基および水は一緒に添加され、激しく攪拌される。スターラーの高剪断作用は重要である。酸塩化物の溶液を水性スラリーに添加する。接触は、一般に0℃〜60℃で例えば約1秒〜10分にわたり、好ましくは室温で5秒〜5分にわたり行われる。重合は急速に起きる。前述した方法に似た方法は、米国特許第3,554,966号明細書および米国特許第5,693,227号明細書において記載されている。
【0058】
芳香族酸のフッ素化エーテルは、減圧下で100℃超〜約180℃までの緩やかな加熱下で強ポリ燐酸中での縮重合においてテトラアミノピリジンの三塩酸塩−一水和物と重合させることも可能であり、その後、(その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される)米国特許第5,674,969号明細書において開示された通り水中に沈殿させるか、または約50℃〜約110℃、その後オリゴマーを生成させるために145℃の温度でモノマーを混合し、その後、国際公開第2006/104974号パンフレットとして公表された(その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される)2005年3月28日出願の米国仮特許出願第60/665,737号明細書において開示された通り、約160℃〜約250℃の温度でオリゴマーを反応させる。こうして製造してもよいポリマーは、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)ポリマーまたはポリ(1,4−(2,5−ジアレーンオキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)ポリマーなどのピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアレーンオキシ−p−フェニレン)ポリマーであってもよい。しかし、それらのピリドビスイミダゾール部分は、ベンゾビスイミダゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ピリドビスチアゾールおよびピリドビスオキサゾールのいずれか1種以上よって取り替えてもよく、それらの2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン部分は、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸および2,6−ビス−(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾールの1種以上のアルキルエーテルまたはアリールエーテルよって取り替えてもよい。ここで、こうしたフッ素化エーテルは、本明細書において開示された方法により製造される。
【0059】
こうした方式で調製されたポリマーは、例えば、1個以上の以下の単位を含む。
ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、
ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
ピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、
ピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびピリドビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
ピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、
ピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびピリドビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
ベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、
ベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびベンゾビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
ベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、
ベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびベンゾビスチアゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
ベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)単位および/またはベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)単位、および/または
ベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジエトキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジプロポキシ−p−フェニレン)、ベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジブトキシ−p−フェニレン)およびベンゾビスオキサゾール−2,6−ジイル(2,5−ジフェノキシ−p−フェニレン)からなる群から選択された単位、
【実施例】
【0060】
本明細書の方法の有利な特性および効果は、以下に記載するような実験室の実施例において見ることができる。実施例が基づくこれらの方法の実施形態は代表例にすぎず、本発明を例示するための実施形態の選択は、実施例において記載されなかった条件、設備、アプローチ、工程、技法、構成または反応物がこれらの方法を実施するために適さないことを示すものではなく、実施例において記載されなかった主題が、本発明の添付クレームおよびクレームの均等物の範囲から除外されることを示すわけではない。
【0061】
材料
すべての試薬は受領したままで用いた。1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサン(純度97%)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI、USA)から得た。ナトリウム水和物(純度95%)は、会社Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin、USA)から得た。2,5−ジブロモテレフタル酸(純度98+%)は、国際公開第2008082501A1号パンフレットにおいて記載された手順に従い調製した。銅(II)臭化物(「CuBr」)は、Alfa Aesar(WardHill、Massachusetts、USA)から得た。2,2,2−トリフルオロエタノール(純度99%)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin、USA)から得た。2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールは、純度99%であった。
【0062】
略語の意味は次の通りである。「mL」はミリリットルを意味し、「g」はグラムを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「N」はノルマルを意味し、「NMR」は核磁気共鳴分光分析を意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
【0063】
【化19】

【0064】
実施例1
2,5−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)テレフタル酸の調製
THF15mL中の8mLの2,2,2−トリフルオロエタノール(CFCHOH
)の溶液にナトリウム水和物0.19g(7.9ミリモル)を注意深く添加した。ガス発生が完了した時、2.5−ジブロモテレフタル酸0.448g(1.5ミリモル)を溶液に添加し、その後、CFCHOH1.5mL中のCuBr(0.092ミリモル)および1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサン(0.19ミリモル)の溶液を添加した。得られた薄青色のスラリーを4日にわたり60℃で加熱した。水性HCl(1N)を添加して生成物を沈殿させた。生成物を水で洗浄し、その後、メタノールに溶解させ、得られた溶液を濾過した。メタノールを真空下で除去して、無色微結晶として生成物を得た。収率:0.384g、71%
元素分析:C12に対する計算値:C:39.80%、H:2.23%、検出:C:39.93%、2.31%
NMR分析:H(CDOD):7.53(s、2H)、4.57(q、8.5Hz、4H)
13C(CDOD):167.7、152.9、128.2、124.9(q、277Hz)、120.4、69.1(q、35.4Hz)
【0065】
実施例2
2,5−ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)テレフタル酸の調製
フラスコに無水THF5mLおよびナトリウム水和物8.1ミリモルを投入した。THF5mL中の2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノール(HCFCFCHOH)1.5g(11.4ミリモル)の溶液を滴下した。ガス発生が完了した時、2,5−ジブロモテレフタル酸(1.51ミリモル)を無色溶液に添加した。次に、HCFCFCHOH0.5g中のCuBr(0.13ミリモル)と1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサン(0.22ミリモル)の混合物を溶液に添加した。得られた薄青色のスラリーを2日にわたり60℃で加熱した。冷却された反応生成物を0.5NのHCLで、次に水で処理し、沈殿物を水で洗浄することにより生成物を分離した。収率:0.465g、72%
NMR分析:H(CDOD):7.56(s、2H)、6.39(tt、52.8および5.7Hz、2H)、4.52(tt、12.0および1.3Hz、4H)
【0066】
本明細書において示された式の各々は、(1)他の可変の基、置換基または数値係数を一定に保持しつつ、可変の基、置換基または数値係数の1つのために規定された範囲内から選択し、(2)他のものを一定に保持しつつ、他の可変の基、置換基または数値係数の各々に関する規定された範囲内から同じ選択を順に実施することにより当該式において形成され得る別個の個々の化合物の各々およびすべてを表現している。範囲によって記載された群のメンバーの1つのみの可変の基、置換基または数値係数のいずれかのために規定された範囲内で行われる選択に加えて、複数の化合物は、基、置換基または数値係数の全群の1つより多いが、すべてより少ないメンバーを選択することにより記載してもよい。可変の基、置換基または数値係数のいずれかのために規定された範囲内で行われる選択が、(i)範囲によって記載された全群のメンバーの1つのみ、または(ii)全群の1つより多いが、すべてより少ないメンバーを含む下位群である時、選択されたメンバーは、下位群を形成するために選択されない全群のメンバーを省くことにより選択される。化合物または複数の化合物は、こうした事態において、下位群を形成するために省かれたメンバーが全群には存在しない場合を除き、当該可変の基のために規定された範囲の全群に言及する可変の基、置換基または数値係数の1つ以上の定義によって特徴付けられ得る。
【0067】
数値の範囲を本明細書において挙げる場合、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての個々の整数および端数を含み、より狭い範囲の各々が明示的に挙げられるならば、同じ程度に指定範囲内の値のより大きい群の下位群を形成するために終点、内部の整数および端数の種々の可能なすべての組み合わせによって形成されるより狭い範囲の各々も範囲内に含む。指定値より大きいとして数値の範囲を本明細書において指定する場合、その範囲は、それにもかかわらず有限であり、本明細書に記載された本発明の文脈内で使用できる値によってその上限について制限される。指定値より小さいとして数値の範囲を本明細書において指定する場合、その範囲は、それにもかかわらず非零値によってその下限について制限される。
【0068】
本明細書において、明示的に別段に規定されない限り、または本明細書において挙げられた使用法、量、サイズ、範囲および他の量ならびに特徴の文脈によって逆に指示されないかぎり、特に「約」という用語によって修飾された時、「約」という用語は、正確であってもよいが、正確である必要がなく、許容差、換算係数、丸めおよび測定誤差など、ならびに本発明の文脈内で指定値に機能的なおよび/または実施可能な同等性を有する指定値外の値を指定値内に含めることを反映して、近似および/または規定より(所望に応じて)大きくても、またはより小さくてもよい。
【0069】
幾つかの特徴を含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)、有する(having)、幾つかの特徴から構成される(being composed of)、または、幾つかの特徴によって構成される(being constituted by)として本発明の実施形態を陳述するか、または説明する場合、陳述または説明が明示的逆に規定しない限り、明示的に陳述または説明された本明細書の特徴に加えて1つ以上の特徴が本実施形態の中に存在してもよいことが理解されるべきである。しかしながら、本明細書の代替実施形態は、幾つかの特徴から本質的になる(consisting essentially of)として陳述または説明されてもよく、その実施形態において、動作原理を、あるいは実施形態の際立った特徴を、著しく変更するであろう特徴はそこに存在しない。本発明の更なる代替実施形態は、幾つかの特徴からなる(consisting of)として陳述または説明されてもよく、その実施形態において、あるいはその実体のない変形において、明確に陳述または説明された特徴のみが存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I
【化1】

(式中、Arは、C〜C20単環式または多環式の芳香族核であり、nおよびmは、それぞれ独立して非零値であり、n+mは8またはそれ以下であり、Rは、RがCF基またはCFCHCH基を介して式I中のエーテル酸素に結合されていないことを条件として、1個またはそれ以上のエーテル結合−O−を場合により含むフッ素化されたアルキル基、アルカリール基、アラルキル基またはアリール基である)
の構造によって表される、芳香族酸のフッ素化エーテルを製造する方法であって、
(a)以下の式II
【化2】

(式中、各Xは独立してCl、BrまたはIであり、Ar、nおよびmは前述した通りである)
の構造によって表されるハロゲン化芳香族酸を
(i)溶媒として極性非プロトン性溶媒中の、またはROH中の、ハロゲン化芳香族酸の当量当たり合計で約n+m当量〜約n+m+1当量のアルコラートR(式中、MはNaまたはKである)、
(ii)銅(I)源または銅(II)源、および
(iii)銅に配位結合するジアミン配位子
に接触させて、反応混合物を生成させ、
(b)前記反応混合物を加熱して、以下の式III
【化3】

の構造によって表されるような、工程(a)の生成物のm−塩基性塩を生成させ、
(c)場合により、式IIIm−塩基性塩を生成させる前記反応混合物から前記式IIIm−塩基性塩を分離し、
(d)前記式IIIm−塩基性塩を酸に接触させて、芳香族酸のフッ素化エーテルを前記式IIIm−塩基性塩から生成させることを含む方法。
【請求項2】
が、
CF(CF(CH
(式中、a=0〜15の整数、および、b=1、3または4);
HCF(CF(CH
(式中、c=0〜15の整数、および、d=1、3または4);
CFCFCFOCFHCF(OCHCH−および
CFCFCFOCFCF(OCHCH−、
(式中、e=1〜12の整数);
(CFCH−、
(CFCFCFH)(F)(CF)C−、
(CFCFCFH)(F)(CF)CCH−、
(CF(H)C(CFCF)(F)C−、および
(CF(H)C(CFCF)(F)CCH−;ならびに
ペンタフルオロフェニル
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化芳香族酸が、2−ブロモ安息香酸、2,5−ジブロモ安息香酸、2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸、2−ブロモ−5−メチル安息香酸、2−クロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸、2−クロロ−5−メチル安息香酸、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸、5−ブロモ−2−クロロ安息香酸、2,3−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−4−ニトロ安息香酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−クロロ−5−ニトロ安息香酸、2,5−ジブロモテレフタル酸および2,5−ジクロロテレフタル酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において、前記ハロゲン化芳香族酸の当量当たり合計で約n+m〜n+m+1規定当量のRが前記反応混合物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記銅源が、Cu(I)塩、Cu(II)塩またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記銅源が、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、Cu(NOおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記配位子がシクロヘキシルジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記配位子がN,N’−置換ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記配位子が、N,N’−ジ−n−アルキルエチレンジアミンまたはN,N’−ジ−n−アルキルシクロヘキサン−1,2−ジアミンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記配位子が、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミンおよびN,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記銅源と前記配位子とを、前記反応混合物に添加する前に化合させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記銅源がCuBrまたはCuBrを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
銅が、ハロゲン化芳香族酸のモルを基準にして約0.1モル%〜約5モル%の量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記配位子が、銅のモル当たり約1モル当量〜約2モル当量の量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化芳香族ヒドロキシ酸が2,5−ジブロモテレフタル酸または2,5−ジクロロテレフタル酸を含み、前記銅源がCuBr、CuBrまたはCuBrとCuBrの混合物を含み、前記銅源がハロゲン化芳香族酸のモルを基準にして約0.1モル%〜約5モル%の量で提供され、前記配位子が、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンからなる群から選択され、前記配位子が銅のモル当たり約1モル当量〜約2モル当量の量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記芳香族酸の前記エーテルを反応に供して、前記芳香族酸の前記エーテルから化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーを製造する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
製造されたポリマーが、ピリドビスイミダゾール部分、ピリドビスチアゾール部分、ピリドビスオキサゾール部分、ベンゾビスイミダゾール部分、ベンゾビスチアゾール部分およびベンゾビスオキサゾール部分からなる群の少なくとも1つのメンバーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
製造されたポリマーが、フッ素化ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアルコキシ−p−フェニレン)ポリマーまたはフッ素化ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジアレーンオキシ−p−フェニレン)ポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法によって製造された組成物を含む物品。
【請求項20】
請求項16に記載の方法によって製造された組成物を含む物品。

【公表番号】特表2013−503892(P2013−503892A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528035(P2012−528035)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047632
【国際公開番号】WO2011/028872
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】