説明

芳香用品およびその製造方法

【課題】初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、目的とする効果を発揮し、使用後には芳香が残らない、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】基材、芳香成分含有層、芳香成分透過層を含む芳香用品であって、塗布またはラミネートにより芳香成分透過層を形成することを特徴とする芳香用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香用品およびその製造方法に関する。より詳しくは、芳香が短時間に揮発して効果を発揮し、使用後には芳香が残らない、携帯可能かつ使用の簡便な芳香製品およびその安価な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香浴は、精油の香りを嗅ぐことにより種々の効果を得る方法である。精油およびその含有成分は、種類により、鎮静効果、入眠効果、覚醒効果、鎮痛効果、抗菌効果、消臭効果などをもつことが知られており、目的とする効果にあわせて、使用されている。近年、外出先でも簡易に芳香浴を行い、目的とする効果を得ることができるような、携帯可能かつ簡便かつ安価な芳香浴用品が求められている。
【0003】
芳香成分を保持したシートを用いたり、ハンカチなどに精油を散布する方法はよく知られているが、初期の芳香が強すぎて不快感をもよおしたり、芳香が持続しない欠点があった。そこで、芳香を持続させる技術として、芳香成分を多孔質無機質粒子に坦持させる方法や、芳香成分をゲル状物質に含有させる方法が開発されている。
【0004】
しかしながら、上記の方法でも、初期の芳香の強さは、若干緩和されるものの、強すぎて不快感をもよおすものであった。また、芳香が長時間持続すると、違う芳香の芳香浴を行いたい場合に、残存する芳香を消臭する手間がかかるという問題や、公共の場(ホテルの個室等)においては、他の利用者のために消臭する必要があるという問題点があった。芳香剤の量を減らすと、初期の芳香を緩和されるが、結局、持続の点では不十分であった。
【0005】
上記の問題点を解決するために、機械的な方法により、芳香の揮散をコントロールする方法が考えられる。たとえば、ディフューザーにタイマーを組み合わせ、所望の時間に芳香の揮散を停止する製品(例えばaroscent、air aroma社製)が知られている。しかしながら、この方法では、ディフューザーにタイマーを設置することにより大型化し、携帯には著しく不便であったり、高価であるという問題点があった。
【0006】
また、上記の問題点を解決するため、物理的な方法により、芳香の揮散をコントロールする方法が考えられる。例えば、芳香成分を含浸可能なカードを、多数の通気孔と、その通気孔を閉塞可能な閉塞手段を備えたホルダに収容する構成が開発されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この方法では、芳香を遮蔽するための操作が必要であるため、面倒であったり、たとえば睡眠中であっては操作ができなかったり、カードとホルダの二部構成であるためにコストアップにつながるという問題点があった。
【0007】
このため、初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、目的とする効果を発揮し、使用後には芳香が残らない、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法は提供されておらず、その開発が強く望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−295439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、目的とする効果を発揮し、使用後には芳香が残らない、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは芳香成分の芳香成分透過層への拡散速度と、芳香成分透過層の表面からの芳香成分の揮発速度を変化させる要因を鋭意検討することにより、少なくとも1層の芳香成分含有層と、該芳香成分含有層に積層する少なくとも1層の芳香成分透過層を含む芳香用品によれば、短時間に芳香成分が揮発してその効果を発揮し、使用後には芳香が残らないという効果が得られるという知見を得て、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.基材、芳香成分含有層および芳香成分透過層を含み、芳香成分透過層が塗布により形成されることを特徴とする芳香用品。
2.基材、芳香成分含有層および芳香成分透過層を含み、芳香成分透過層がラミネートにより形成されることを特徴とする芳香用品。
3.芳香成分透過層が水溶性高分子化合物を含有する、前項1または2に記載の芳香用品。
4.芳香成分含有層が水溶性高分子化合物を含有する前項1〜3のいずれか1項に記載の芳香用品。
5.芳香成分含有層と芳香成分透過層の総厚みが1mm以下である、前項1〜4のいずれか1項に記載の芳香用品。
6.芳香成分含有層が、芳香成分を含有しない層を形成後、芳香成分を含浸させることにより形成される、前項1〜5のいずれか1項に記載の芳香用品。
7.芳香成分が精油である、前項1〜6のいずれか1項に記載の芳香用品。
8.芳香用品に芳香を遮蔽するフイルムを貼付し、該芳香用品を芳香を遮蔽する袋に収容してなる、前項1〜7のいずれか1項に記載の芳香用品。
9.におい測定装置による測定値(常温・常圧下、測定空間87m)が、該芳香用品の使用前の測定値(S1)、該芳香用品使用開始後5分の測定値(S2)、該芳香用品使用開始後2時間の測定値(S3)、該芳香用品の使用開始後2時間以降8時間以内の測定値の最低値(S4)とすると、
S3≧S2×0.75>S1×1.1≧S4
である、前項1〜8のいずれか1項に記載の芳香用品。
10.前項1〜9のいずれか1項に記載の芳香用品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、効果を発揮し、使用後には芳香が残らない、携帯可能かつ使用の簡便な芳香製品およびその安価な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、基材に積層する少なくとも1層の芳香成分含有層と、該芳香成分含有層に積層する少なくとも1層の芳香成分透過層を含む芳香用品を提供する。
【0014】
<芳香成分含有層>
本発明において芳香成分含有層とは、芳香成分が液滴の状態で分散している層を示す。本発明の芳香用品において、芳香成分含有層は高分子化合物を含有することが好ましく、水溶性高分子化合物を含むことが特に好ましい。芳香成分含有層における高分子化合物の含有量は、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
【0015】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、などの水溶性天然高分子化合物類も使用できる。特に、好ましいものは、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチンである。これらの水溶性高分子化合物を単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0016】
芳香成分含有層は、必要に応じて無機微粒子を含有することができる。該無機微粒子としては、例えば、シリカ、珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム等の珪酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、合成ヘクトライト等各種スメクタイト粘土などが挙げられる。無機微粒子を芳香成分含有層に含有させる場合、該無機微粒子の含有量は、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。
【0017】
芳香成分含有層は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含むことができる。該添加剤として、例えば、界面活性剤(乳化剤、可溶化剤等)、紫外線吸収剤、pH調整剤、防腐・殺菌剤(オルトフェニルフェノール、安息香酸、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール等)、抗菌剤、防虫剤(パラジクロールベンゼン、ナフタリン、カンファー等)、誘引剤(アセトキシフェニルブタノン、メチルオイゲノール等)、忌避剤、色素、塩類、架橋剤等などが挙げられる。
【0018】
芳香成分含有層は塗布、接着、ラミネート等様々な方法で形成することができる。本発明において塗布とは、皮膜を形成する方法で、皮膜を形成する成分を含有する液体を基材上に広げることで、皮膜を形成することを示す。芳香成分含有層を塗布によって形成する装置としては、例えば、リップコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スライドコーター、バーコーターなどが挙げられ、好ましくはスライドコーターであり、より好ましくは、複数のスリットを有するスライドコーターである。
【0019】
芳香成分含有層に芳香成分を含ませる方法として、特に制限はないが、例えば、芳香成分含有層中に芳香成分を液滴の状態で分散させることが好ましい。そして、使用時、該液滴から芳香成分は液体状態で芳香成分透過層に拡散し、芳香成分透過層の表面より揮発する。
【0020】
本発明の芳香用品の製造時に、例えば芳香成分含有層に分散させる芳香成分の液滴の大きさを適宜調節することにより、芳香成分透過層の表面からの芳香成分の揮発速度を制御することができる。また、該液滴の大きさは通常は平均粒径0.1〜100μm、好ましくは1〜80μm、より好ましくは5〜50μmとすることが好ましい。液滴の大きさは、粒径分析器(LA−950 堀場製作所社製)、光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製)で計測することができる。また、界面活性剤を使用することによっても芳香成分透過層の表面からの芳香成分の揮発速度を制御することができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0021】
芳香成分を液滴の状態で芳香成分含有層に分散する手段としては、例えば、水溶性高分子化合物中に芳香成分を含有させて、超音波処理、ホモジナイザー処理する方法等が挙げられる。超音波処理する場合、超音波時間は、超音波発振器のマイクロチップ端で1〜60分、好ましくは10〜50分、より好ましくは20〜40分とすることが好ましい。
【0022】
また、芳香成分を含有しない層を基材上に形成後、芳香成分を該芳香成分を含有しない層に含浸させることにより、芳香成分含有層を形成することもできる。該芳香成分を含有しない層としては、たとえば水溶性高分子を含む層、無機微粒子と水溶性高分子を含む層が好適に挙げられる。
【0023】
芳香成分を含有しない層に芳香成分を含浸させる方法としては、グラビアコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、カーテンコート、ノズルからの筋塗布などが挙げられ、マイヤーバーコート、スプレーコートが好適に挙げられる。芳香成分は原液のまま含浸させることもできるし、有機溶剤に希釈して含浸させることもできる。該有機溶剤としては、エタノールが好適に挙げられる。
【0024】
芳香成分含有層における芳香成分の含有量は目的にあわせて適宜調整することができるが、20〜85質量%が好ましく、40〜85質量%がより好ましく、50〜85質量%が特に好ましい。
【0025】
本発明に使用する芳香成分としては、例えば、精油、合成香料、動物性香料、これらの有効成分や単体化合物などが好適に挙げられ、精油または精油に含まれる有効成分が好ましい。
【0026】
本発明に使用する精油としては、例えば、イランイラン精油、ゼラニウム精油、ラベンダー精油、ジャスミン精油、カモミール精油、ラベンティン精油、ヒソップ精油、ローズ精油、ネロリ精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、ヒノキ精油、サンダルウッド精油、ジュニパー精油、ティートリー精油、パイン精油、パチュリ精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、レモングラス精油、レモン精油、シトロネラ精油、ベルガモット精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油、クラリセージ精油、クローブ精油、タイム精油、フェンネル精油、マジョラム精油、メリッサ精油、ローズウッド精油、バジル精油、バテ精油、シナモン精油等の天然の精油が挙げられる。このなかでも特に、イランイラン精油、ゼラニウム精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油が好ましい。また、これらの精油を複数組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記精油に含まれる有効成分としては、例えば、リナロール、酢酸リナリル、1‐リモネン、1‐メントール、α‐ピネン、β‐ピネン、シトラール、シネオール、d‐カンファー、チモール、オイゲノール、ケイヒアルデヒド、カマズレン、ツヤノール‐4、ボルネオール、α‐テルピネオール、β‐テルピネオール、テルピネノール‐4、ゲラニオール、ネロール、α‐サンタロールβ‐サンタロール、カロトール、セドロール、ビリジフロロール、スクラレオール、サフロール、アピオール、ミリスチシン、メチルカビコール、アネトール、スクラレオールオキサイド、マノイルオキサイド、シトロネラールなどが挙げられる。また、これらの有効成分を複数組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<芳香成分透過層>
本発明において芳香成分透過層とは、芳香成分を透過する均質な連続層を示す。該均質な連続層とは、例えば、不織布、紙、布、連通する孔(例えば孔径100nm以上の孔)を有する膜等は除く。本発明の芳香用品において、芳香成分透過層は高分子化合物を含有することが好ましく、水溶性高分子化合物を含むことが特に好ましい。芳香成分透過層における高分子化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0029】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、などの水溶性天然高分子化合物類も使用できる。特に、好ましいものは、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチンである。
【0030】
芳香成分透過層は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含むことができる。該添加剤として、例えば、界面活性剤(乳化剤、可溶化剤等)、紫外線吸収剤、pH調整剤、防腐・殺菌剤(オルトフェニルフェノール、安息香酸、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール等)、抗菌剤、防虫剤(パラジクロールベンゼン、ナフタリン、カンファー等)、誘引剤(アセトキシフェニルブタノン、メチルオイゲノール等)、忌避剤、色素、塩類、架橋剤等などが挙げられる。
【0031】
本発明の芳香用品における芳香成分透過層は、塗布またはラミネート、より好ましくは塗布により形成できる。塗布方式のメリットとして、厚みの制御が容易である点が挙げられる。例えば、芳香成分の種類を変更する場合、芳香成分透過層の厚みは、任意の芳香成分に合わせた厚みにする必要がある。ラミネート方式の場合、ラミネートするフイルム自体を切り替える必要があるが、塗布方式であれば、塗布量の変更により厚みの変更をより容易に行えるため、生産性に優れている。
【0032】
芳香成分透過層を塗布によって形成する装置としては、例えば、リップコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スライドコーター、バーコーターなどが挙げられ、好ましくはスライドコーターであり、より好ましくは、複数のスリットを有するスライドコーターである。
【0033】
本発明においてラミネートとは、フイルムを貼り付けて積層することを示す。芳香成分透過層をラミネートによって形成する装置としては、例えば、ホットメルトラミネーター、コールドラミネーターなどが挙げられ、好ましくはコールドラミネーターである。
【0034】
前記フイルムとしては、無孔質フイルム、孔径が100nm未満の微多孔質フイルム等を用いることができる。該微多孔質フイルムの孔径は好ましくは50nm未満、より好ましくは孔径30nm未満とする。該孔径が100nm以下であることで、使用初期において芳香成分の揮発が過度とならず、本発明の効果を発揮することができる。無孔質フイルム、孔径が100nm未満の微多孔質フイルムは、多層フイルムであってもよい。
【0035】
前記無孔質フイルムとしては、公知のものを使用することができ、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリスチレンフイルム等が好適に挙げられ、ポリスチレンフイルムが好ましい。また、前記孔径が100nm以下の微多孔質フイルムとしては、公知のものを使用することができ、ポリエチレン微多孔質フイルム、ポリプロピレン微多孔質フイルム、ポリテトラフロロエチレン微多孔質フイルム、ポリイミド微多孔質フイルムが好適に挙げられ、ポリテトラフロロエチレン微多孔質フイルムが好ましい。該無孔質フイルムおよび微多孔質フイルムの厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0036】
本発明の芳香用品において、芳香成分含有層および芳香成分透過層の厚みは、目的に合わせて各々適宜調整することにより、芳香成分の芳香成分透過層への拡散速度を制御することができる。芳香成分含有層および芳香成分透過層の総厚みは好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.5mm以下とする。また、芳香成分透過層の厚みを好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下とする。
また、本発明の芳香用品において、芳香成分含有層の体積に対する芳香成分透過層の比表面積は好ましくは1000m-1以上であり、より好ましくは1500m-1以上であり、特に好ましくは2000m-1以上とする。
【0037】
<基材>
本発明において基材とは、芳香成分含有層および芳香成分透過層を支持する要素であり、100μm以上の厚みを持ち、孔径100nm以上の孔を持たない層を有する構造物である。基材の形状は板状が好ましい。
本発明に使用する基材としては、例えば、本発明の芳香用品を塗設できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフイルム、ポリエステルフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、ポリエチレンコート紙、ポリエチレンコート不織布などが挙げられる。
【0038】
<実施態様>
本発明の一実施態様としては、図1に示すように、基材の少なくとも片面に芳香成分含有層が積層し、該芳香成分含有層に芳香成分透過層が積層し、該芳香成分透過層が外部空気に接触する構造をとる芳香用品が挙げられる。
【0039】
本発明の芳香用品は、例えば、図2に示すように芳香を遮蔽するフイルム(以下、芳香遮蔽フイルムとも言う)を貼付し、該芳香用品を芳香を遮蔽する袋(以下、芳香遮断袋とも言う)に収容して用いることができる。該芳香遮蔽フイルムは、芳香を遮蔽できれば特に限定されないが、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、アルミニウムフイルムなどが、好適に使用される。また、これらを組み合わせた多層フイルムも好適に使用される。また、該芳香を遮蔽する袋は、芳香を遮蔽できれば特に限定されないが、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、アルミニウムフイルムなどを袋状に加工した袋が、好適に使用される。また、これらを組み合わせた多層フイルムを袋状に加工した袋も、好適に使用される。
【0040】
<芳香成分の検出>
本発明の芳香用品から大気中に揮発した芳香成分は、においセンサによって検出することができる。該においセンサとしては、例えば、酸化物半導体ガスセンサ、水晶振動子ガスセンサ、導電性ポリマーガスセンサ、ガスクロマトグラフ、質量分析などが挙げられる。中でも、市販されている測定容易な酸化物半導体ガスセンサが好ましく、例えば、XP‐329III(新コスモス電機社製)、ОMX‐SR(日本シンテック社製)が挙げられる。
【0041】
本発明の芳香用品は、におい測定装置により測定される値(常温・常圧下、測定空間87m)が、
該芳香製品の使用前に測定した値(S1)、
該芳香用品使用開始後10分で測定した値(S2)、
該芳香製品使用開始後2時間で測定した値(S3)、
該芳香製品の使用開始後後2時間以降8時間以内に測定した値の最低値(S4)、
使用開始後2時間以降6時間以内に測定した値の最低値(S5)、
使用開始後2時間以降5時間以内に測定した値の最低値(S6)とすると、
S3≧S2×0.75>S1.1≧S4
であることが好ましく、
S3≧S2×0.75>S1.1≧S5
であることがより好ましく、
S3≧S2×0.75>S1.1≧S6
であることが特に好ましい。
【0042】
このように、本発明の芳香用品の構成によれば、芳香成分が短時間に揮発して効果を発揮し、使用後には芳香が残らないという効果を達成することができる。
【0043】
本発明の芳香用品は、芳香成分の揮散を物理的に停止する方法を持たない構造をとることが好ましい。ここで、芳香成分の揮散を物理的に停止する方法を持たないとは、例えば、揮散部分を開閉できるシャッター構造のような機構を持たないことをいう。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
まず、芳香成分含有層を構成する芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)を調製した。ビーカー中において、ゼラチン(新田ゼラチン社製)6.25質量%のゼラチン水溶液 10gを調製し、芳香成分としてラベンダー精油 2.5gを添加した。続いて、超音波洗浄機(卓上超音波洗浄器VS−25 アズワン社製)中で超音波(40kHz、25W)を室温にて30分間照射し、芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)を調製した。芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)中の芳香成分の平均粒径を光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製)で計測した結果、35μmであった。
【0046】
次に、芳香成分透過層を構成するポリビニルピロリドン2.5質量%のポリビニルピロリドン水溶液(2)を調製した。
【0047】
基材として6cm×9cmのポリエチレンコート紙を使用して、ポリエチレン樹脂ラミネート紙に芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)を塗布した後、ポリビニルピロリドン水溶液(2)を塗布し、表1に示す構成からなる芳香シート101を作製した。
【0048】
【表1】

【0049】
(実施例2)
芳香成分透過層を構成する水溶液をゼラチン2.5質量%のゼラチン水溶液(3)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、以下の構成からなる芳香シート102を作製した。
【0050】
【表2】

【0051】
(実施例3)
芳香成分透過層の塗布量を変化させたこと以外は実施例2と同様の方法で、以下の構成からなる芳香シート103を作製した。
【0052】
【表3】

【0053】
(実施例4)
まず、芳香成分含有層を構成する、無機粒子分散物(4)を以下の方法により調整した。
(1)乾式シリカ微粒子 10質量部 エアロジルA300(日本アエロジル社製)
(2)ポリビニルアルコール 3.3質量部 PVA235(クラレ社製))
(3)イオン交換水 136.0質量部
(1)の乾式シリカ微粒子を、(3)のイオン交換水(73.3質量部)中に添加して、高速回転湿式コロイドミル(クレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて、10000rpmの条件で20分間分散させた。その後、ポリビニルアルコール水溶液(イオン交換水の残り62.7質量部に(2)のポリビニルアルコールを溶解させたもの)を加えて、更に上記と同じ条件で分散させた後にpHを4〜5に調整して無機粒子分散物(4)を得た。
【0054】
前記無機粒子分散物(4)を6cm×9cmポリエチレンコート紙に塗布し、熱風乾燥機により70℃(風速5m/秒)で1分間乾燥した後、更に150℃で10分間乾燥した。これにより乾燥膜厚が30μmの層を形成した。さらにラベンダー精油0.14gを滴下し、金属ヘラを用いて全面に広げ、芳香成分含有層を形成した。その後、実施例3と同様の方法で、芳香成分透過層を形成し、芳香シート104とした。
【0055】
【表4】

【0056】
(実施例5)
芳香成分透過層をポリスチレンフイルム(セロマー 厚さ16μm 大倉工業社製)のラミネートに変更した以外は実施例2と同様の方法で、以下の構成からなる芳香シート105を作製した。
【0057】
【表5】

【0058】
(比較例1)
芳香成分含有層に芳香成分透過層を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、以下の構成からなる芳香シート106を作製した。
【0059】
【表6】

【0060】
(比較例2)
直径2mmの円形通気孔を30個と、通気孔を閉塞可能なフラップを持つ、6cm×9cmのカードホルダと、該カードホルダに収容可能な不織布カードを調製した。不織布カードにラベンダー精油135mgを散布し、カードホルダに収容し、芳香シート107とした。
【0061】
(試験例1)
芳香シート101〜107の芳香を測定した。芳香の測定は、においセンサ(XP‐329III、新コスモス電機社製)を用いて、常温・常圧下、体積87m中でにおい値を測定することにより行った。におい値の測定は測定時間の5分前から5分後まで、1分間隔で行い、平均値を測定値とした。
【0062】
芳香シートを使用前のにおい値を測定した後に、芳香シートを各々設置し、使用開始後10分、2時間、4時間、6時間、8時間のにおい値を測定した。
【0063】
また、芳香シート107を、使用後3時間の時点でフラップによって全ての通気孔を閉塞する実験も行い、芳香シート108としてにおい値を測定した。これらの結果を表5に示す。
【0064】
【表7】



【0065】
芳香製品の使用前に測定した値(S1)、
該芳香用品使用開始後10分で測定した値(S2)、
該芳香製品使用開始後2時間で測定した値(S3)、
該芳香製品の使用開始後後2時間以降8時間以内に測定した値の最低値(S4)、
使用開始後2時間以降6時間以内に測定した値の最低値(S5)、
使用開始後2時間以降5時間以内に測定した値の最低値(S6)とすると、
S3≧S2×0.75>S1×1.1≧S4
を満たすのは本発明の芳香シート101、102、103、104、および、比較例の108であり、
S3≧S2×0.75>S1×1.1≧S5
を満たすのは本発明の芳香シート102、103、および、比較例の108であり、
S3≧S2×0.75>S1×1.1≧S6
を満たすのは本発明の芳香シート103、105、および比較例の108であった。しかしながら、芳香シート108は使用後3時間にフラップを操作しており、余分な手間がかかった。
【0066】
(試験例2)
不眠症の自覚症状がある10人に、試験例1で用いた芳香用品を用いて、入眠効果を得られるかを調べた。芳香シート108については、被験者自身に、3時間後に起床してもらい、フラップを操作してもらった。
【0067】
評価を、A:よく眠れ、起きた後もすっきりしていた、B:よく眠れたが、起きた後に不快感があった、C:眠れなかった、に分けて評価した。その結果を表8に示す。
【0068】
【表8】



【0069】
表6に示したように、本発明の芳香シート101〜105は、不眠症の人に対して、明らかな入眠効果があり、使用後も不快感を持つ人はほとんどいなかった。これに対して、芳香シート106ではほとんどの人が眠れなかった。これは、ラベンダーの香りが強すぎて、不快感を催し、かえって入眠を妨げてしまったためと考えられた。
【0070】
また、芳香シート107では入眠効果は認められたものの、起床後に不快感を持つ人がほとんどだった。これは、起床後もラベンダーの香りが持続しており、被験者が香りに飽きていたか、別の香りもしくは無香を求めていたためであると考えられた。
【0071】
さらに、芳香シート108では全員が眠れなかった。これは、被験者に使用後3時間で起きてもらうようにしたため、中途半端な時間で眠りが中断されてしまったためであると考えられた。
【0072】
試験例1、試験例2の結果から、本発明の芳香用品は、使用が簡便であるとともに、初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、効果を発揮し、使用後には芳香が残らないという効果を達成することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施態様の模式図を示す。
【図2】本発明の一実施態様の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、芳香成分含有層および芳香成分透過層を含み、芳香成分透過層が塗布により形成されることを特徴とする芳香用品。
【請求項2】
基材、芳香成分含有層および芳香成分透過層を含み、芳香成分透過層がラミネートにより形成されることを特徴とする芳香用品。
【請求項3】
芳香成分透過層が水溶性高分子化合物を含有する、請求項1または2に記載の芳香用品。
【請求項4】
芳香成分含有層が水溶性高分子化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項5】
芳香成分含有層と芳香成分透過層の総厚みが1mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項6】
芳香成分含有層が、芳香成分を含有しない層を形成後、芳香成分を含浸させることにより形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項7】
芳香成分が精油である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項8】
芳香用品に芳香を遮蔽するフイルムを貼付し、該芳香用品を芳香を遮蔽する袋に収容してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項9】
におい測定装置による測定値(常温・常圧下、測定空間87m)が、該芳香用品の使用前の測定値(S1)、該芳香用品使用開始後5分の測定値(S2)、該芳香用品使用開始後2時間の測定値(S3)、該芳香用品の使用開始後2時間以降8時間以内の測定値の最低値(S4)とすると、
S3≧S2×0.75>S1×1.1≧S4
である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の芳香用品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−56594(P2008−56594A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234109(P2006−234109)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】