説明

芽もの野菜種子の殺菌方法及び芽もの野菜の栽培方法

【課題】
芽もの野菜の栽培で腐食を起こす腐敗菌を殺菌するとともに、病原性大腸菌O157,サルモネラ、リステリアなどの食中毒菌をも完全に除菌して、安心して生食が可能な芽もの野菜を育成できる芽もの野菜種子が得られる殺菌方法を提供する。
【解決手段】
芽もの野菜種子を殺菌水槽2で80−90℃の高温熱水に10−50秒間浸したのち冷却水槽4で冷水に浸して急冷することによる腐敗菌に対する殺菌処理を行い引き続いて、塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬することにより、食中毒菌をも完全に殺菌する処理を行う芽もの野菜種子の殺菌方法である。この殺菌処理を行った芽もの野菜種子を栽培することにより生食可能な芽もの野菜の栽培を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒緑豆もやし、緑豆もやし、大豆もやし、アルファルファもやし等の各種もやし、かいわれ大根、その他の芽もの野菜で近年問題となっている食中毒を防ぐ為に、育成前の原料種子に対する殺菌方法及び食中毒の恐れのない芽もの野菜の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種もやし、かいわれ大根に代表される芽もの野菜は、その栄養価の高さから、アジアから欧米まで、世界的に広まったが、近年、サルモネラや病原性大腸菌O157による食中毒が問題となっている。アメリカ合衆国では、子供や老人などの胃腸系が弱い消費者に対して、もやし類の摂食に、注意を促している状況である。また、その対策として、アメリカFDAは、もやし生産業者に対し、種子の殺菌や、栽培途中での散水排水の微生物検査としてサルモネラと病原性大腸菌O157の検査を推奨している(U.S. Food and Drug Administration 1999, Docket Nos.99D-4488 and 99D-4489)。このような芽もの野菜による食中毒を防止するために行われる種子の殺菌方法として、有効塩素濃度20,000ppmの次亜塩素酸での殺菌を推奨しているが、この方法は、高濃度の次亜塩素酸を使用するので、作業者にとって危険な作業であるのみならず、必ずしも有効な殺菌効果が得られていない。
【0003】
一方、各種もやし等、種子を発芽させて少し育てた段階で食用とする、いわゆる芽もの野菜では生育を如何に促進するかが重要である。従って、芽もの野菜は発芽と生育に適した温度と湿度のもとで栽培されるが、そのような生育環境は各種微生物や細菌にとっても繁殖に適した環境となる。一般に種子はその種皮外面はもとより、場合によっては内面が微生物によって汚染されており、そのような微生物が、栽培時において芽もの野菜が腐敗する原因となる。特に、もやしの場合は高温・多湿の環境で、かつ、給水を行いつつ発芽と成育を行わせるので微生物繁殖を抑さえることが極めて難しい状況にある。
【0004】
このような状況のもとで本出願人は先に、芽もの野菜種子の殺菌を危険な薬剤を使わない物理的な方法として、芽もの野菜種子を70°C以上の高温水に10から30秒間浸したのち急冷することからなる、熱湯による殺菌方法を提案した(特許文献1)。この殺菌方法においては、芽もの野菜の種子を70℃以上の高温水に10から30秒間浸すことによって、種子の生物としての機能を損なうことなく所定の高温度に所定時間だけ正確に晒して効果的に殺菌させることができる。この芽もの野菜種子に対する殺菌方法によれば、芽もの野菜の種子に付着している腐敗菌を殺菌して芽もの野菜の腐敗を抑えて栽培することが可能である。
【0005】
また、その後、実験室レベルでの研究として、危険な病原菌であるサルモネラ、病原性大腸菌O157に対する緑豆種子の熱湯処理による殺菌条件を提示した(Journal of Food Protection Vol. 71, No.4. 2008, Pages 830-834)。
しかしながら、実際のもやし栽培においては、より大量の原料種子を連続的に殺菌処理しなければならず、また、殺菌処理後の種子が正常にもやしなどの製品になるかは確認されていなかった。
従って、生物体としての種子の発芽、成長という生命活動を損なわずに腐敗菌のみならず病原性大腸菌O157,サルモネラ、リステリアなどを含めて食中毒の原因となる微生物を完全に死滅させ、生食して安全な芽もの野菜を栽培することができる芽もの野菜種子の殺菌方法が求められている。
【特許文献1】特許第3225474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、芽もの野菜の栽培で腐敗を起こす原因となる腐敗菌を殺菌するとともに、病原性大腸菌O157,サルモネラ、リステリアなどの食中毒菌をも殺菌して、安心して生食が可能な芽もの野菜を育成できる芽もの野菜種子の効果的な殺菌方法を提供することを課題としている。特に、本発明は生食に障害となるような強い濃度の化学薬品等を使用することなく腐敗菌、食中毒菌を共に死滅させることのできる芽もの野菜種子の殺菌方法を提供することを課題としている。また、本発明は微生物繁殖による腐敗の発生を押さえつつ、食中毒菌による食中毒の恐れなく生食可能な芽もの野菜を育成できる芽もの野菜の栽培方法を提供することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芽もの野菜種子の殺菌処理における前記課題を解決するため、種子の胚の生命機能を損なうことなく、種子の表面そして場合によっては種子の外傷、割れ部より侵入して種子に存在している微生物の殺菌に有効な80−90℃の高温熱水に10−50秒間浸したあと急冷することによりに正確に、適正な時間だけ接触させ、引き続いて塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸すことにより、残存した食中毒菌をも完全に殺菌することからなる芽もの野菜種子の殺菌方法を採用する。
【0008】
本発明により、芽もの野菜種子を晒す80−90℃の熱水の具体的温度と、10−50秒間の具体的時間は、対象とする芽もの野菜種子に応じて最適の値を選定する。また、種子が80−90℃の最適温度に対し、予め定めた時間、正確に晒され生命体としての種子に熱による障害が残らないよう、熱水への浸漬後は急速に冷却する。また、80−90℃の最適温度に対し、予め定めた時間、正確に芽もの野菜種子を晒すという目的から、所定の高温熱水に浸す前の種子に対し予熱処理を行うのも有効である。
【0009】
また本発明は、芽もの野菜の栽培についての前記課題を解決するため、育成前の芽もの野菜種子を80−90℃の熱水に10−50秒間浸漬して急冷する殺菌処理のあと、引き続いて塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬して食中毒菌をも完全に殺菌する殺菌処理した芽もの野菜種子を栽培する方法を採用する。80−90℃の高温熱水に対する種子の浸漬のし方、及び次亜塩素酸水溶液に対する浸漬時間の設定などは、対象とする芽もの野菜種子に応じて最適のやり方を選定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の芽もの野菜種子の殺菌方法においては、前記したように芽もの野菜種子を80−90℃の高温熱水に10−50秒間浸したのち急冷することにより、生命体としての芽もの野菜種子に障害を与えることなく細菌を殺菌できる高温に晒し芽もの野菜種子に付着している細菌を殺菌し、その処理に引き続いて、塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬することにより、残存している食中毒菌をも完全に殺菌処理する。2段階の殺菌処理を芽もの野菜種子に対して施すことにより、微生物繁殖による腐敗を起こすことなく栽培して、食中毒菌が付着していない生食しても安全な芽もの野菜を育成することができる。また、本発明による方法では、80−90℃の高温の熱水に浸したのち急冷することにより、種子の生命活動に影響させることなく所定の高温度に所定時間だけ正確に晒して、引き続き塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬することにより、残存している食中毒菌をも完全に殺菌処理するという、殺菌処理の悪影響が後に残る処理を行わないので、この殺菌処理を施した種子を用いて芽もの野菜を育成すると、得られた芽もの野菜には、取り扱い上、これらの殺菌処理による問題が殆どないことはもとより、栽培したあとの芽もの野菜を生食しても安全である。このように本発明により殺菌処理した芽もの野菜種子は発芽率を低下させることなく発芽して腐敗を起こすことなく成育し、生食しても安全な芽もの野菜を得ることができる。
【0011】
更にまた、本発明による栽培方法で育成した芽もの野菜は微生物繁殖の少ない状態となっているので本発明によれば、日持ちのよい芽もの野菜を収穫することができる。また、本発明による芽もの野菜の栽培方法によれば80−90℃の高温の熱水に浸したあとの種子に対して、引き続き塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬するという食中毒菌をも完全に殺菌する処理を施した芽もの野菜種子を使って栽培するので、その2段階の漬込みにより、殺菌処理の効果が効いて、安全性の高い芽もの野菜を腐敗なく生育させて生食して安全な芽もの野菜を収穫することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は、高温熱水による芽もの野菜種子の殺菌研究を更に発展させ、食中毒菌に対する殺菌処理の効果を、実際のもやし栽培工場での実用化を考慮し探索し本発明を得たのである。危険な食中毒菌を扱った試験は、法律により特定の実験施設内(P2、P3レベル)でしか扱えないので、その実験施設で使用可能なように縮小した実機のテスト機(1/10サイズ)を製作し、殺菌条件を探した。
また、処理後の種子が、正常に発芽し、正常なもやしとして生産できる処理条件と照らし合わせ、もやし栽培において実用可能な高温熱水による浸漬処理条件についてきめ細かく探求した。本発明による高温熱水処理条件は、安全に食中毒菌が殺菌される条件からすれば、概ね80−90℃で10−50秒間である。この高温熱水による熱湯処理は、種子の発芽とその後のもやしへの生育に対する生命力を損なわないために、正確な熱湯温度により、決められた秒数の間、に行う必要がある。また、高温熱水処理後はできるだけすみやかに冷却する必要がある。また、殺菌条件としての再現性を保つ為にも、正確な処理温度と時間が繰り返される事が必要である。
【0013】
以上の事から、また、大量な種子を毎日処理する事を考えると、高温熱水による殺菌は機械による処理が必要となる。本出願人は、先に発明した特許文献1記載の方法による、芽もの野菜種子の熱湯殺菌機を開発したが、その実機を縮小したテスト機により、これらの処理を行って効果を検証した。また、実際に栽培試験を行い、もやし生産において生産に支障をきたさない範囲で問題ない処理条件であることを確かめた。高温熱水による殺菌機の実機の構成を図1に、それを縮小した殺菌テスト機の構成を図2に示してある。実機は、図1に示すように、原料ホッパー1、殺菌水槽2、殺菌水槽2内で所定温度の熱湯に芽もの野菜種子を所定時間浸漬させるための網目のバスケット3、殺菌水槽2内で所定の殺菌処理を終えた芽もの野菜種子を急冷するための冷却水槽4を備えている。殺菌処理を施す定められた重量(3−5kg)の芽もの野菜種子を原料ホッパー1からバスケット3に受け入れて殺菌水槽2に浸漬して殺菌処理を終えた後の種子は、バスケット3を反転して冷却水槽4内に速やかに移されるように構成している。また、実機は殺菌水槽2の上部を覆う排気フード5と制御盤6を備えている。
【0014】
テスト機の構成は図2に示すように、殺菌処理を施す芽もの野菜種子(300−500g)を入れる網目のバスケット11と、このバスケット11を支持する支持部12を有し、支持部に支持されたバスケット11を殺菌水槽10に対して上下動させ、バスケット11内の芽もの野菜種子を殺菌水槽10内の高温熱水に所定時間浸漬させて引き上げるアクチュエータ13が設けられている。14は、殺菌水槽2内の水を所定の高温に加熱するヒータであり、15は殺菌水槽10内の高温熱水の温度を測定する温度計である。16は殺菌水槽10内の水を排水するドレンバルブを示している。17は制御盤を示し、18はスタートボタン、19は自動制御モニターである。
【0015】
また、高温熱水処理による殺菌後の種子に対して行う増菌検査や、発芽処理後の検査から、高温熱水処理後に、殺菌効果のある薬剤を含む水溶液に浸漬する事が有効であることを確かめ、その処理条件として、次亜塩素酸による有効塩素濃度として1500ppm以上、2時間以上が望ましいとの知見を得た。
本発明の知見獲得の過程では、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムの他、塩素系の殺菌剤である亜塩素酸や、塩素ガスなども利用した。また、より安全な薬剤として、電解水、オゾン水も使用して殺菌処理する事も行い殺菌効果があることを見出している。これらの薬剤による浸漬は、通常のもやし栽培における種子の漬け込み工程に組み込めば良い。また、この漬け込み工程での2次汚染の防止の点からも、安全性から考えて許容範囲の濃度での薬剤の使用が薦められる。
【0016】
以上のように、本発明による高温熱水への浸漬処理とそれにつづく次亜塩素酸水溶液による漬け込みにより、もやし栽培で問題となる腐敗菌と食中毒菌は、完全に殺菌され、原料から持ち込まれる食中毒菌のもやしへの汚染の恐れがなくなる。本発明は、アメリカFDAが推奨する、芽物野菜の原料種子の殺菌方法として、実用可能な有効な手段の一つとして提唱するものである。
図1、図2に示した高温熱水による処理装置による熱殺菌処理の後に行う次亜塩素酸水溶液による浸漬処理を行う水槽は、適宜の水槽でよいので、その図示を省略している。
【0017】
[実験例1]
緑豆種子を、芽物野菜用種子の熱湯処理用に開発した図2に示されている実機の縮小テスト機により、表1に示す温度と時間で処理し、発芽率と正常に生育したものの割合を確かめた。水温設定(精度:±0.5℃)されたテスト機によりそれぞれの時間、自動的に熱湯処理を行った。原料種子(300g)を、機械のバスケット11に入れ、スイッチを押すことにより、自動的にバスケットが熱湯が入った殺菌水槽2に降下する。それぞれの処理時間、熱湯で種子が殺菌された後、また自動的にバスケット11が上昇するので、そのバスケット11を、すばやく、冷却槽3内の水道水に浸し、種子を冷却した。本実験の結果の一部を表1に示してある。85℃では、40秒間まで、88℃では20秒間の処理まで、ほぼ、生育に問題ない殺菌処理が行われるとの知見が得られた。
【表1】

【0018】
[実施例1]
食中毒菌(大腸菌O157:H7)を植菌した緑豆種子(500g)を、高温熱水で処理し、さらに次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に浸漬した。すなわち、先ず、予め大腸菌O157による植菌処理した種子を次の条件で高温熱水により殺菌し、その後、更に次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬して殺菌処理後の種子の残存大腸菌O157数を検査した。さらに、残りの種子の一部は、ペプトン水中で一晩増菌培養し、植菌した大腸菌O157の残存の有無を検査した。また、他の残りの種子を72時間室温(約20℃)で栽培した後、同じく、植菌した大腸菌O157の有無を調べた。これらのテストはすべてP2レベル以上の施設内で行った。
高温熱水による処理は、85℃で40秒間、及び88℃で20秒間とした。
水温設定(精度±0.5℃)されたテスト機によりそれぞれの時間、自動的に熱湯処理を行った。植菌処理した原料種子を、バスケット11に入れ、スイッチを押すことにより、自動的にバスケット11が殺菌水槽2内に低下し、それぞれの処理時間、高温熱水で種子を殺菌した後、また自動的にバスケット11が上昇するので、そのバスケット11を、すばやく、冷水(約0℃)の入った冷却槽3内の冷却水に浸し、種子を冷却した。
次亜塩素酸による漬け込み処理を有効塩素濃度2,000ppmで2時間(室温約20℃)、種子の倍量程度の水溶液で行った。本実験結果の一部を表2に示してある。どちらの熱湯処理後も、植菌した大腸菌O157は検出されなかったが、ペプトン水による増菌検査あるいは、72時間の発芽処理後の検査では、菌の残存が認められた。85℃40秒の高温熱水処理後、さらに塩素濃度2,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で2時間浸けた場合は、増菌後も、発芽処理後の検査からも、菌の残存は認められなかった。この処理では、植菌した大腸菌O157が完全に殺菌されたと判断された。
【表2】

【0019】
[実施例2]
植菌する食中毒菌として、サルモネラを用いて実施例1と同様の検査を行った。その結果を表3に示してある。サルモネラの場合も、大腸菌O157の結果と同様に、高温熱水処理後の検査では菌の出現は認められなかったが、増菌後あるいは、発芽処理後の検査では、残存が認められた。85℃40秒の熱湯処理後に、塩素濃度2,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で2時間、浸けた場合は、増菌後も、発芽処理後も菌の残存は認められず、完全に殺菌されたと判断された。
【表3】

【0020】
[実施例3]
高温熱水処理による緑豆種子の発芽率の低下を調べた。植菌していない種子に対して、高温熱水処理を行い、さらに、塩素濃度2,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で浸けた場合の発芽率及び正常生育率は表4に記載のとおりであった。実験例1と同様に、高温熱水処理しても発芽率の低下はほとんど見られなかったが、生育率としては若干の低下が見られた。高温熱水処理後の次亜塩素酸ナトリウムによる漬け込みによる発芽率、生育率への影響はほとんど見られなかった。
【表4】

【0021】
[実施例4]
85℃の熱湯に40秒間浸漬する高温加熱処理後に行う殺菌処理に用いる次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を検討する為に、実施例1, 2と同様のテストを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を変えて行った。その結果を表5に示してある。有効塩素濃度1500ppm以上では、植菌した大腸菌O157とサルモネラは完全に殺菌されたと判断された。
【表5】

【0022】
[実施例5]
85℃の熱湯に40秒間浸漬する高温熱水処理後に、塩素濃度2,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液による浸漬時間を検討した。実施例1,2と同様のテストを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸け込む時間を変えて行った。その結果は表6に示してある。90分の浸漬処理では大腸菌O157は殺菌されたが、サルモネラは残存する恐れがあると思われた。120分(2時間)の浸け込み処理で、完全に殺菌されたと判断された。
【表6】

【0023】
[実施例6]
実施例3と同じ処理条件で、種子の殺菌処理を行った後、もやしを通常に栽培した。熱湯処理は実機により1.5kgずつの原料種子で行った。その結果を表7に示してある。収穫後のもやしの重量及び、倍率を比較した。無処理の原料により栽培した場合に比べ、若干(約5%)の収量の低下が見られた。これは、熱湯処理による未発芽や発芽不良によるものと考えられたが、他の正常に発芽した種子は正常なもやしに生育し、製品として問題ないと考えられた。
【表7】

【0024】
以上の実施例に見られるように、人工的に食中毒菌により植菌させた種子でも本発明により完全に殺菌できることが示された。実際のもやし栽培においても、本発明の手法により原料種子が有効に殺菌され、もやし栽培において問題となる食中毒の危険性が極めて低く抑えられることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】芽もの野菜種子の熱湯殺菌のために開発した実機の全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明による芽もの野菜種子の殺菌方法を検証するために使用したテスト機の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 原料ホッパー
2 殺菌水槽
3 バスケット
4 冷却水槽
5 排気フード
6 制御盤
10 殺菌水槽
11 バスケット
12 支持部
13 アクチュエータ
14 ヒータ
15 温度計
16 ドレンバルブ
17 制御盤
18 スタートボタン
19 自動制御モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芽もの野菜種子を80−90℃の高温熱水に10−50秒間浸したのち急冷することによる殺菌処理を行い、引き続いて、塩素濃度1500ppm以上の次亜塩素酸水溶液に2時間以上浸漬することにより、残存した食中毒菌をも完全に殺菌処理することを特徴とする芽もの野菜種子の殺菌方法。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌処理を行った芽もの野菜種子を栽培することを特徴とする芽もの野菜の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−298750(P2009−298750A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157719(P2008−157719)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000149273)株式会社大生機械 (35)
【Fターム(参考)】