説明

苗保護カバー

【課題】地面に安定的に固定することができ、風で飛ばされるのを防止でき、内部を効果的に通気できると共に降雨を内部に良好に導入させ得る苗保護カバーを提供する。
【解決手段】苗に被せて地面70に載置される苗保護カバーである。透明で薄肉の樹脂製であり、苗を収容するドーム部3の上端側の部分5に、周方向に連続する円環状凹部6が設けられている。円環状凹部6の底面部7に、周方向に間隔を置いて、通気孔又は通水孔として機能し得る透孔9が設けられている。ドーム部3の頂面部10には、支柱11を上下方向で挿通させるための支柱挿通部12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するに際し、苗を保温し、苗を霜の被害から防ぎ、或いは苗を鳥等の野生動物や虫の被害から保護する等の目的で苗に被せて地面に載置して使用される苗保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物や園芸作物等の植物を栽培するに際し、苗を保温し、苗を霜の被害から防ぎ、或いは、苗を鳥等の野生動物の被害や虫の被害から保護する等の目的で、透明保護カバーで苗を被うことが行われている。
【0003】
その一例として、実用新案登録第3104682号公報が開示するものが提案されている。該苗保護カバーaは、例えば図21(A)に示すように、合成樹脂により一体成形された下端解放の透明なコップ状の筒体bを具え、該筒体bの側面部cの下端部dの周上に、土中に比較的深く突き刺すための突出部eが間隔を置いて形成されていた。そして該筒体bは、下方に向かって増径されテーパ状に形成されると共に該筒体bの頂部fに、図21(B)に鎖線で示し、又、図22に示すように大きめの開口部gが一箇所設けられた構成を有していた。或いは図21(B)に実線で示すように、該開口部gに代えて、フラットな頂部fに複数個の孔部hが設けられることもあった。
【0004】
かかる構成を有する苗保護カバーaは、図22に示すように、前記突出部eを土中jに比較的深く突き刺すことによって地面に固定されるものであり、該突出部eは、風等により苗保護カバーaが飛ばされるのを防止するものであった。又、前記開口部gや前記孔部hは、苗保護カバーaの内部の温度や湿度を調節したり、防鳥や防虫を図らんとするものであった。
【0005】
しかしながら、かかる苗保護カバーaによるときは、前記突出部eを土中に突き刺しにくい場合が生じ、又、突き刺された突出部eが抜ける恐れもあって、苗保護カバーaの設置状態が不安定化し易い問題があった。又、前記頂部fに前記大き目の開口部gを設ける場合は、該開口部gを通しての通気性は良好であったとしても、該大き目の開口部gを通して外気が苗保護カバーaの内部kに進入しやすく、従って、苗保護カバーaの保温性を損ない易い問題があった。又、前記苗保護カバーaを地面jに固定するに際しては前記のように、突出部eを土中に突き刺すこととしていたため、筒体bの周方向に間隔を置いて突設されて土中に比較的深く突き刺された状態にある複数個の突出部eの遮水作用によって、苗保護カバーaの内部の水捌けが損なわれる問題があった。そのため、降雨が激しいときは、前記大きめの開口部gを通して苗保護カバーaの内部に多量の降雨が進入し易く、この進入した雨水が外部に排水されにくかった。その結果、苗保護カバー内で水位が上昇することがあり、苗に根腐れが発生する恐れがあった。
【0006】
一方、前記のように、筒体bの頂部fに複数の孔部hを設ける場合は、かかる大きめの開口部gを設ける場合のような保温性や通気性に関しての問題点や、多量の降雨の流入に伴う問題点はないとしても、前記突出部eを土中に突き刺しにくく、又、土中に突き刺した突出部eが抜け易い前記問題点について、改善の余地があった。又、複数個の孔部hがフラットな頂部fに設けられていたために、該頂部fに降った雨水を筒体bの内部に必ずしも良好に導入させ得るとは限らない問題があった。
【0007】
又、この種の苗保護カバーの他の態様としては、特開2007−43977号公報が開示する植物被い具が提案されている。該植物被い具nは、透明の樹脂製のものであり、一例としては図23〜24に示すように、土に当接する当接面部pと、該当接面部pの内周縁qから立ち上がり且つ該内周縁qに沿って一巡する側壁rとを有する被い部sとを具えており、該被い部sは、透明若しくは半透明でドーム型或いは釣鐘型の形状を呈していた。そして該被い部sの側壁rの外側には、該側壁rの周方向に一巡する貯水溝tが設けられていた。又、前記被い部sの頂部uには空気抜き孔vが設けられていた。
【0008】
かかる構成を有する植物被い具nは、苗に被せて地面mに載置された後、前記貯水溝rに水が貯留されることにより、該貯留水の重量で、植物被い具nが風で飛ばされるのを防止せんとするものであった。しかしながら、貯水溝tに貯留された水だけでは大した重量は得られず、植物被い具nを地面jに安定的に固定しにくい問題があった他、このように載置された植物被い具nを地面jに固定するためには、貯水溝tに常に水が貯留されていることが必須であるが、貯水溝tへの水の供給管理に面倒さが伴う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3104682号公報
【特許文献2】特開2007−43977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、苗を保温し苗を霜の被害から防ぎ、或いは鳥等の野生動物や虫の被害から苗を保護できるのは元より、苗に被せて地面に載置された状態で地面に安定的に固定することができ、風で飛ばされるのを防止でき、しかも、内部を効果的に通気できると共に降雨を内部に良好に導入させ得る苗保護カバーの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る苗保護カバーは、苗に被せて地面に載置して使用されるものであって、透明の樹脂製であり、苗を収容する、下端開放で上方に突のドーム部の上端側の部分には、周方向に連続する円環状凹部が設けられており、該円環状凹部の水平な底面部に、周方向に間隔を置いて、通気孔又は通水孔として機能し得る透孔が設けられており、又、前記ドーム部の頂面部には、支柱を上下方向で挿通させるための支柱挿通部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
前記苗保護カバーにおいて、前記ドーム部の下端周縁に、水平鍔部を、外方に突出する如く設け、前記ドーム部を挾んで対向する固定用の水平鍔部分には、地面に突き刺されるアンカー片を挿通させるアンカー孔を設け、又、該両水平鍔部分には、その何れか一方のみをアンカー片で地面に固定した状態で前記ドーム部を開閉させる際に蝶番として機能し得る折曲用溝線を設けるのがよい。該折曲用溝線は、前記対向する固定用の水平鍔部分を結ぶ直線と直交する状態で設け、該折曲用溝線の端部が前記水平鍔部の周縁部で開放されたものとするのがよい。
【0013】
前記の各苗保護カバーにおいて、前記支柱挿通部は、十字状の切り込みを以て構成するのがよい。
【0014】
又、前記各苗保護カバーにおいて、前記支柱は、その表面に、引っ掛り用の突部が支柱長さ方向に不連続状態で設けられたものとするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
本発明に係る苗保護カバーは、苗に被せて地面に載置されることにより、苗を保温し苗を霜の被害から防ぎ、或いは鳥等の野生動物や虫の被害から植物を保護できるのは元より、以下の如き優れた効果を奏する。
【0016】
(1) 本発明に係る苗保護カバーは、ドーム部の上端側の部分に、周方向に連続する円環状凹部を設け、該円環状凹部の水平な底面部に、通気孔や通水孔として機能し得る透孔を設ける構成を採用するため、該透孔が通気孔として機能することにより、ドーム部の内部を効果的に通気できる。又、該円環状凹部に雨水を貯留できるため、該透孔が通水孔として機能することにより、雨水をドーム部の内部に円滑に導入できることになる。そして、該苗保護カバーは、苗に被せて地面に載置されるものであるため、ドーム部の内部の水捌けが損なわれることもない。
【0017】
(2) 又、前記ドーム部の頂面部に、支柱を上下方向で挿通させるための支柱挿通部が設けられているため、該支柱挿通部に支柱を挿通させて支柱の下端側の部分を土中に押し込むことにより、該支柱がドーム部の上部を支持できる。これにより、苗に被せられた状態の苗保護カバーが風で飛ばされるのを防止できることになる。
【0018】
(3) 前記円環状凹部の堤防面部や前記上下の隆起面部を形成する複数段の環状の凹凸部がリブ作用を発揮するため、ドーム部の上端側の部分の剛性が向上されている。従って、前記支柱挿通部に支柱を密接に挿通させる場合であっても該ドーム部の上端側の部分が変形しにくい。
【0019】
(4) 前記ドーム部の下端周縁に水平鍔部を設け、該ドーム部を挾んで対向する固定用の水平鍔部分に、アンカー片を挿通させるアンカー孔を設けると共に、該水平鍔部分に折曲用溝線を設ける場合は、該水平鍔部分の何れか一方のみをアンカー片で地面に固定した状態で、該折曲用溝線を蝶番として機能させて前記苗保護カバーを容易に開閉させることができる。これによって、ドーム部を開放した状態で、苗に対する水やりや追肥、除草等を行うことができる。
【0020】
(5) 前記支柱挿通部を十字状の切り込みを以て形成する場合は、支柱を上下方向で密接に挿通させるための支柱挿通部を容易に形成できる。又、挿通させる支柱が比較的太いものであっても或いは比較的細いものであっても、該十字状の切り込みによって形成される三角形状の係合突出片が該支柱の太さに追随して容易に弾性変形できるため、支柱挿通部に支柱を容易に挿通させることができる。又、該支柱を該支柱挿通部に密接に挿通された状態となし得るため、支柱による苗保護カバーの支持をより安定化させることができる。
【0021】
(6) 前記支柱がその表面に、引っ掛り用の突部が支柱長さ方向に不連続状態で設けられてなるときは、該支柱挿通部が支柱の該引っ掛り用の突部に引っ掛ることにより、風による苗保護カバーの浮き上がりを抑制できる。又、苗保護カバーを支柱に沿って持ち上げたときには、該支柱挿通部が引っ掛り用の突部に引っ掛ることにより、その持ち上げられた状態が維持され易いため、苗に水やりや追肥を行う際、その作業を容易化し得る。
特に、前記支柱挿通部を十字状の切り込みを以て構成するときは、該十字状の切り込みを押し拡げて支柱が挿通された状態で、該十字状の切り込みによって形成された三角形状の係合突出片の先端が、該支柱の表面に弾性的に押し付けられた状態となるので、前記支柱挿通部の前記引っ掛り用の突部に対する引っ掛りがより確実に行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る苗保護カバーを、支柱の一部分及び苗と共に示す斜視図である。
【図2】苗保護カバーの断面図である。
【図3】その下側部分の拡大図である。
【図4】その上側部分の拡大図である。
【図5】その平面図である。
【図6】苗保護カバーを、地面に立設した支柱で支持した状態を示す断面図である。
【図7】その斜視図である。
【図8】支柱を示す拡大部分斜視図と平面図である。
【図9】苗保護カバーの下側部分を示す部分斜視図である。
【図10】アンカー部材で水平鍔部分を固定する作業工程を説明する斜視図である。
【図11】複数枚の苗保護カバーを結着具で結着一体化した状態を示す斜視図である。
【図12】苗保護カバーに対する支柱の取り付け要領の一例を示す説明図である。
【図13】苗保護カバーに対する支柱の取り付け要領の他の例を説明する説明図である。
【図14】円環状凹部に貯留された貯留水が透孔で滴下している状態を示す説明図である。
【図15】支柱に沿わせて苗保護カバーを持ち上げた状態を説明する説明図である。
【図16】苗保護カバーを、折曲用溝線を蝶番として開いた状態を説明する説明図である。
【図17】支柱挿通部の内縁部分が引っ掛り用の突部に引っ掛った状態を示す断面図である。
【図18】支柱挿通部の内縁部分が引っ掛り用の突部に引っ掛かった他の態様を示す断面図である。
【図19】支柱挿通部の他の態様を示す平面図である。
【図20】支柱挿通部のその他の態様を示す斜視図である。
【図21】従来の苗保護カバーを示す正面図と平面図である。
【図22】その苗保護カバーを地面に固定した状態を示す斜視図である。
【図23】従来の苗保護カバーの他の態様を示す斜視図である。
【図24】その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
図1〜2において本発明に係る苗保護カバー1は、苗Pに被せて使用されるものであり、透明な樹脂製のものである。苗を収容するドーム部3の上端側の部分5には、周方向に連続する円環状凹部6が設けられており、該円環状凹部6の水平な底面部7には、周方向に間隔を置いて、通気孔9aや通水孔9bとして機能し得る透孔9が設けられている。又、前記ドーム部3の頂面部10には、支柱11を上下方向で密接に挿通させるための支柱挿通部12が設けられている。
【0024】
前記ドーム部3は、本実施例においては、肉厚が0.3〜0.5mm程度の薄肉の透明な樹脂製のものであり、下端2開放で且つ上方に突のドーム型や釣り鐘型等を呈しており、その下端2の直径は例えば280〜350mm程度に形成され、その高さは210〜250mm程度に形成されている。ここで透明とは、苗の成長に必要な日照量を確保できるものである限り、無色透明の他、有色透明を含むものである。
【0025】
該ドーム部3は、より具体的には図1〜5に示すように、平面視で円環状を呈する円環状台座側面部13の上端15に、外方に突の円弧状周面部16を介して水平段差面部17が内方に連設されており、該水平段差面部17の内端縁19で球状側面部20が連設されると共に該球状側面部20の上端縁21には、上に突の円弧状の堤防面部22が連設され、該堤防面部22の下端縁23には、水平な前記底面部7が内方に向けて連設されている。又、該底面部7の内端縁26で、上方に向けて内方に傾斜する傾斜側面部29が連設されると共に、該傾斜側面部29の上端で、緩く上方に湾曲する略水平面部32が内方に向けて連設されることにより、平面視で円形を呈する下の隆起面部33が形成されている。又、該下の隆起面部33の前記略水平面部32の内端縁35で、斜め上方に向けて傾斜する傾斜面部36が連設されると共に該傾斜面部36の上端で、上に突の円弧状面部を介して、緩く上方に湾曲する、平面視で円形を呈する上の隆起面部40が連設されており、該上の隆起面部40が前記ドーム部3の前記頂面部10を構成している。
【0026】
そして、前記堤防面部22と前記下の隆起面部33との間に、図1、図4〜5に示すように、水平な前記底面部7を有する前記円環状凹部6が形成されており、該底面部7に、その周方向に間隔を置いて、通気孔9aや通水孔9bとして機能し得る前記透孔9が設けられている。該透孔9は、例えば、直径が8mm程度の円形孔であり、例えば、平面視で20度の角度ピッチで設けられている。このように、水平な底面部7に透孔9を設けることとしているため、プレス加工によって該透孔9を設ける場合、該プレス加工を安定的に行うことができる。
【0027】
そして、平面視で円形を呈する上の隆起面部40(頂面部10)の中央部位には、図1、図5に示すように、前記支柱11を上下方向で密接に挿通させるための支柱挿通部12が設けられている。該支柱11としては、例えば図6〜8に示すように、直径が11mm程度で長さが1000mm程度の直線状丸パイプ41の上下端42,43に、外径が12mm程度のキャップ部材45,46を装着してなるものを用いることとしている。そして本実施例においては図8に拡大して示すように、該直線状丸パイプ41の外周面34に、支柱長さ方向に延長する不連続突部列38の4本が、周方向に略90度の角度を置いて設けられている。該不連続突部列38は、例えば、長さが4.6mm程度で幅が1.2mm程度、突出量が0.7mm程度の縦長(支柱長さ方向に長い)の樹脂製の引っ掛り用の突部44を支柱長さ方向に9.6mm程度の間隔を置いて不連続状態に突設して形成されている。
【0028】
又、前記支柱挿通部12は、本実施例においては図1、図5に示すように、長さが例えば35mm程度の直線状の切り込み線47,47を十字状に組み合わせて形成した十字状の切り込み49を以て形成されており、その十字の中心50が前記頂面部10の中心51と略合致されている。
【0029】
前記支柱挿通部12が、このように十字状の切り込み49を以て形成されていることから、前記支柱11を該十字状の切り込み49に挿通させる際、該切り込み線47,47によって形成された4つの三角形状の係合突出片52,52,52,52が、図6〜7に示すように、前記キャップ部材45,46や前記直線状丸パイプ41の直径に追随して容易に弾性変形できる。かかることから、前記支柱11は、前記支柱挿通部12に密接に挿通された状態となり得る。
【0030】
又、前記円環状台座側面部13には、図1、図9に示すように、下端53が下方に開放し且つ外面55と内面56が、外方に向けて凸に形成された補強リブ57が周方向に小間隔で並設されている。
【0031】
又、前記球状側面部20の下側部分59には、図1、図9に示すように、該球状側面部20の外方に向けて、外面60と内面61が凸であり且つ、上端部分62(図1)が徐々に細く形成された樋状を呈する樋状縦補強リブ63が、球状側面部20の周方向に所要間隔で(例えば平面視で10度の角度ピッチで)設けられており、各樋状縦補強リブ63の下端64は前記水平段差面部17で開放している。
【0032】
又本実施例においては、図1、図5に示すように、かかる構成を有するドーム部3の下端周縁65に、平面視で外形が例えば正方形状を呈する水平鍔部66が、該ドーム部3に一連状態で且つ略等肉厚で外方に突出する如く設けられており、4つのコーナ部分には、幅広円弧状の水平鍔部分67,67,67,67が設けられている。この4つの水平鍔部分67,67,67,67の内、前記ドーム部3を挾んで対向する2つの水平鍔部分(固定用の水平鍔部分)67a,67aに、図10に示すアンカー部材69の両アンカー片70a,70bを挿通させるアンカー孔68,68が、所要間隔を置いて設けられており、該両水平鍔部分67a,67aには、該アンカー孔68,68の内側に位置させて折曲用溝線71が設けられている。該折曲用溝線71,71は、本実施例においては、前記対向する水平鍔部分67a,67aを結ぶ直線72(図5)と直交する状態で設けられ、その両端部73,73,73,73は、図1、図10に示すように、前記水平鍔部分67a,67aの周縁部75で開放状態とされている。
【0033】
本実施例においては、前記アンカー部材69を構成する前記アンカー片70a,70bの内の一方70aは他方70bに比して長く形成されている。これは、長いアンカー片70aの下端部分70a1を前記一方のアンカー孔68aに挿通させて地面79に突き刺して後に、該アンカー片70aの軸線L回りにアンカー部材69を、図10(B)に矢印F1、F2で示すように適宜回動させ得るようにし、他方のアンカー片70bを他方のアンカー孔68bに位置決めして挿通させ易くするためである。
【0034】
又、前記ドーム部3を挾んで対向する他の2つの水平鍔部分(結束用の水平鍔部分)67b,67bには、図1、図5に示すように、前記苗保護カバー1の複数枚(例えば5枚)を重ね合わせて全体を、樹脂被覆鉄線等の結着具76で、図11に示すように結着一体化するための結着孔77が設けられている。
【0035】
かかる構成を有する苗保護カバー1は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂等の透明な樹脂を用いて、真空成形によって形成できる。該苗保護カバーは、射出成形やブロー成形等により形成することもできる。
【0036】
然して、かかる構成を有する苗保護カバー1を、図6に示すように、図示しない苗に被せて前記水平鍔部66を地面79に載置することにより、該苗保護カバー1の内部の温度や湿度を調節でき、苗を保温し苗を霜の被害から防ぐことができると共に、鳥等の野生動物の被害や虫の被害から苗を保護することができる。
【0037】
苗保護カバー1は、このようにして苗に被せて使用されるものであり、前記固定用の水平鍔部分67a,67aのアンカー孔68,68に前記アンカー部材69の両アンカー片70a,70bを挿通させて該アンカー片70a,70bを土中に突き刺す。これによって、苗保護カバー1を地面79に固定できることになる。このようにアンカー片70a,70bを土中に突き刺した後、該苗保護カバー1の設置の安定性を向上させるために、水平鍔部分67,67,67,67上に適宜土を被せるのがよい。
【0038】
これによって該苗保護カバー1の設置状態を安定化させ得るのであるが、該苗保護カバー1は薄肉に形成されて軽量であるために風で飛ばされる恐れがある。このような恐れのあるときは、地面79に対する苗保護カバー1の固定を一層確実に行うために、図6に示すように、前記頂面部10に設けられている前記十字状の切り込み49からなる前記支柱挿通部12に支柱11を上下方向で密接に挿通させ、該支柱11の下端側の部分80を20〜30cm程度、地面79に押し込んで該支柱11を立設状態とする。
【0039】
本実施例においては図1に示すように、前記ドーム部3の上端側の部分5に、前記上下の隆起面部40,33が設けられると共に前記堤防面部22が設けられていて、該ドーム部3の上端側の部分5が、複数の環状の凹凸部の形成によって補強された状態にある。従って、苗保護カバー1は薄肉に形成されているものではあっても、前記支柱11を前記十字状の切り込み49に挿通させる際に該上端側の部分5を変形させにくい。又、前記のように、ドーム部3の前記球状側面部20に樋状縦補強リブ63が設けられているため、該ドーム部3は全体として変形しにくい。
【0040】
このようにして支柱挿通部12に支柱11を密接に挿通させると共に支柱の下端側の部分80を地面79に押し込んだ状態で、該支柱11の上端側の部分81が、前記ドーム部3の上端82の上方に突出状態となる。そして、このように立設された支柱11の上端側の部分81が前記ドーム部3の頂面部10を支持するために、しかも、該支柱11が該ドーム部3をその中心部分において支持するために、苗保護カバー1が風で飛ばされる恐れを回避できることになる。なお必要であれば、苗を該支柱11に結び付けることにより該支柱11を苗の添え木としても利用できることとなる。このようにして支柱11を植物の支持にも用いるときは、苗が成長した後に前記苗保護カバー1を支柱11に沿って持ち上げて支柱から取り外せば、支柱11は、その後、成長した植物を支持する役割も果たすことになる。
【0041】
苗保護カバー1に対する支柱11の取り付け要領は、例えば図12に示すように、苗(図示せず)に近接させて、支柱11の下端側の部分80を地面70に押し込んだ後、地面70の上方に突出する支柱部分11aの上側部分83を、前記ドーム部3の内側から前記支柱挿通部(十字状の切り込み49)12に、上方に向けて挿通させ、その後、図12に矢印F3、F4で示すように該苗保護カバー1を支柱11に沿わせて下降させ、最終的には図6に示すように、前記水平鍔部66を地面70に載置して行うことができる。このようにする場合は、必要に応じて苗を支柱11に結び付けた状態として後、苗保護カバー1を下方向に降ろせばよい。或いは図13に示すように、苗保護カバー1を苗に被せてその水平鍔部66を地面70に載置した状態で、支柱11の下端部分85を前記支柱挿通部(十字状の切り込み49)12に上から下に向けて挿通させ、最終的には図6に示すように、該支柱11の下端側の部分80を地面70に押し込むこととしてもよい。
【0042】
このようにして苗保護カバー1を苗に被せた状態においては、前記円環状凹部6の水平な底面部7に設けられている前記透孔9が通気孔9aとして機能し、苗保護カバー1の内部85を通気でき、該苗保護カバー1内の温度や湿度を調整できることとなる。通気孔9aがこのように、ドーム部3の上端側の部分5に設けられており、しかも水平な底面部7に設けられているため、図6に矢印で示すように、ドーム部3の内部を上昇した湿気を円滑に外部に排出することが可能となる等、ドーム部3の内部86の通気を効果的に行うことができる。
【0043】
又、降雨時においては、前記透孔9が通水孔9bとして機能し、図14に示すように、降雨が、前記ドーム部3の上端側の部分5の表面5aを流下して前記円環状凹部6に貯留されて後、その貯留水が、該透孔9で滴下する等してドーム部3の内部86に導入されることになる。これにより、苗の周囲部分への水やりを効果的に行うことができる。そして、苗保護カバー1の設置は、前記水平鍔部66を地面79に載置して行われているため、苗保護カバー1の内部の水捌けは良好である。
【0044】
支柱11を挿通した状態において、苗に対する水やりや追肥、除草等を行わんとするときは、前記固定用の水平鍔部分67a,67aを固定する前記アンカー部材69,69を取り外した後、図15に示すように、前記苗保護カバー1を支柱11に沿わせて持ち上げてこれらの作業を行うことができる。その後、苗保護カバー1を支柱11に沿わせて降ろし、前記固定用の水平鍔部分67a,67aを前記アンカー部材69で地面79に固定する。
【0045】
なお、前記支柱11を挿通していない状態においては、図16に示すように、前記対向する固定用の水平鍔部分67a,67aの何れか一方のみを前記アンカー部材69で地面79に固定した状態で、該苗保護カバー1を、前記折曲用溝線71を蝶番として機能させて開くことにより、苗に対する水やりや追肥、除草等を行うことができる。
【0046】
本実施例においては、図8に示すように、支柱11の表面91に、支柱長さ方向に延長する不連続突部列38が設けられてなる(例えば周方向に略90度の角度を置いて設けられてなる)ため、該支柱11が前記支柱挿通部12に上下方向で挿通された状態で、図17に拡大して示すように、該支柱挿通部12の前記三角形状の係合突出片52の内縁部分84が該不連続突部列38の引っ掛り用の突部44に引っ掛ることにより、風による苗保護カバー1の浮き上がりを抑制できる。又、苗に水やりや追肥を行うに際して苗保護カバー1を支柱11に沿って持ち上げるときには、該係合突出片52の弾性変形によって持ち上げることができると共に、持ち上げた状態では、図18に示すように、該支柱挿通部12の内縁部分84が該不連続突部列38の引っ掛り用の突部44に引っ掛ることにより、その持ち上げられた状態が維持される。
【0047】
特に、前記支柱挿通部12を十字状の切り込みを以て構成するときは、該十字状の切り込みを押し拡げて支柱11が挿通された状態で、該十字状の切り込みによって形成された係合突出片89の先端84aとしての内縁部分84が、例えば、図17、図18に示すように該支柱11の表面9に弾性的に押し付けられた状態となるので、前記支柱挿通部12の内縁部分84の前記引っ掛り用の突部44に対する引っ掛りがより確実に行われることとなる。
【実施例2】
【0048】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0049】
(1) 前記支柱挿通部12は、支柱11を上下方向で挿通させることができて、風等によって苗保護カバーが飛ばされるのを防止できるものである限り、各種に構成され得る。
例えば、該支柱挿通部12を、直線状の切り込み線を組み合わせて設ける場合は、前記十字状の切り込み49の他、3本以上の切り込み線の組み合わせによって、各種形態に構成できる。
【0050】
又、該支柱挿通部12は、図19に示すように、円周方向に所要間隔を置いて三角形状等の係合突出片89を設け、各係合突出片89の弾性変形によって前記支柱11を該支柱挿通部12に密接に挿通させ得るように構成することもできる。
【0051】
更に該支柱挿通部12は、図20に示すように円形孔90として構成することもできる。このように構成する場合、前記支柱11として、例えば図6〜8に示すような、直線状丸パイプ41の上下端にキャップ部材45,46を装着したものを用いる場合は、該円形孔90の直径を、該キャップ部材45,46を無理なく通過させ得るように設定される。このように構成する場合は、支柱11の下端側の部分80を地面79に押し込んだ状態で、前記直線状丸パイプ41が前記円形孔90に遊挿状態となるが、風等によって苗保護カバーが飛ばされるのを防止できる限り、該円形孔90の直径が支柱11の直径よりも大きいこともある。
【0052】
(2) 前記頂面部10にミシン目状の切り取り線を適宜設けることによって、該切り取り線の切り離しにより、円形状や十字状等の支柱挿通部12を形成することもできる。
【0053】
(3) 前記固定用の水平鍔部分67a,67aは、ドーム部3を挾んで対向状態で設けることの他、120度等の適宜の角度を置いて周方向に間隔を置いて設けることもある。又、該固定用の水平鍔部分67aに設けるアンカー孔68は、1個のこともある。
【0054】
(4) 前記支柱11の長さは、前記支柱挿通部12を上下方向で挿通して下端側の部分80が地面に押し込まれた状態で該支柱11の上端側の部分81が、少なくとも、前記ドーム部3の上端82の上方に突出する程度に設定されることが必要である。苗保護カバー1を支柱11から取り外した後も該支柱11が植物の支持機能を発揮するようになす場合は、該植物の支持に適した長さの支柱を用いればよい。
【0055】
(5) 本発明に係る苗保護カバー1は、その使用状態において、前記アンカー部材69を用いることなく、前記支柱挿通部12を上下方向で挿通して下端側の部分80が地面に押し込まれた状態の支柱11だけによって、ドーム部3の上部だけが支持された状態とされることもある。
【0056】
(6) 本発明に係る苗保護カバー1は、前記ドーム部3の下端周縁に前記水平鍔部66が設けられないこともある。
【0057】
(7) 前記ドーム部3は、その周面部が四角形や、五角形、六角形等の多角形状に形成されることもある。
【0058】
(8) 前記固定用の水平鍔部分を設ける場合、前記折曲用溝線71は省略されることもある。
【0059】
(9) 前記円環状凹部6の水平な底面部7に設けられる前記透孔9は、前記ドーム部3の内部86に前記貯留水を所要に導入させることができる限り、2個以上の複数個が設けられるものであればよい。
【0060】
(10) 前記支柱11が、その表面91に、引っ掛り用の突部44が支柱長さ方向に不連続状態で設けられてなる場合、図8においては、該突部44が周方向で隣り合うように設けられているが、周方向に配置されている突部44は上下に位置ずれして設けられることもある。
【符号の説明】
【0061】
1 苗保護カバー
2 下端
3 ドーム部
5 上端側の部分
6 円環状凹部
7 底面部
9 透孔
10 頂面部
11 支柱
12 支柱挿通部
13 円環状台座側面部
17 水平段差面部
20 球状側面部
22 堤防面部
29 傾斜側面部
38 不連続突部列
40 上の隆起面部
44 引っ掛り用の突部
47 切り込み線
49 十字状の切り込み
52 係合突出片
63 樋状縦補強リブ
66 水平鍔部
67 水平鍔部分
68 アンカー孔
69 アンカー部材
71 折曲用溝線
79 地面
84 支柱挿通部の内縁部分
89 係合突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗に被せて地面に載置される苗保護カバーであって、透明の樹脂製であり、苗を収容する、下端開放で上方に突のドーム部の上端側の部分には、周方向に連続する円環状凹部が設けられており、該円環状凹部の水平な底面部に、周方向に間隔を置いて、通気孔又は通水孔として機能し得る透孔が設けられており、又、前記ドーム部の頂面部には、支柱を上下方向で挿通させるための支柱挿通部が設けられていることを特徴とする苗保護カバー。
【請求項2】
前記ドーム部の下端周縁には、水平鍔部が、外方に突出する如く設けられており、前記ドーム部を挾んで対向する固定用の水平鍔部分には、地面に突き刺されるアンカー片を挿通させるアンカー孔が設けられており、又、該両水平鍔部分には、その何れか一方のみをアンカー片で地面に固定した状態で前記ドーム部を開閉させる際に蝶番として機能し得る折曲用溝線が設けられていることを特徴とする請求項1記載の苗保護カバー。
【請求項3】
前記ドーム部の下端周縁には、水平鍔部が、外方に突出する如く設けられており、前記ドーム部を挾んで対向する固定用の水平鍔部分には、地面に突き刺されるアンカー片を挿通させるアンカー孔が設けられており、又、該両水平鍔部分には、その何れか一方のみをアンカー片で地面に固定した状態で前記ドーム部を開閉させる際に蝶番として機能し得る折曲用溝線が、前記対向する固定用の水平鍔部分を結ぶ直線と直交する状態で設けられ、該折曲用溝線の端部が前記水平鍔部の周縁部で開放されていることを特徴とする請求項1記載の苗保護カバー。
【請求項4】
前記支柱挿通部は、十字状の切り込みを以て構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の苗保護カバー。
【請求項5】
前記支柱は、その表面に、引っ掛り用の突部が支柱長さ方向に不連続状態で設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の苗保護カバー。
【請求項6】
前記支柱は、その表面に、引っ掛り用の突部が支柱長さ方向に不連続状態で設けられていることを特徴とする請求項4記載の苗保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−234696(P2011−234696A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110950(P2010−110950)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(392003225)第一ビニール株式会社 (27)
【Fターム(参考)】